JP3794129B2 - 内燃機関用点火装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関用点火装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関用点火装置は、点火信号が与えられたときに点火コイルの一次電流を制御して該点火コイルの二次側に点火用の高電圧を誘起させる点火回路と、該点火回路に点火エネルギを与える点火電源と、機関の上死点より進角した位置に設定された基準回転角度位置及び機関の上死点付近に設定された設定位置でそれぞれ第1の極性のパルス信号及び第2の極性のパルス信号を発生する信号発電機と、第1の極性のパルス信号及び第2の極性のパルス信号をそれぞれ波形整形して第1の回転検出信号及び第2の回転検出信号に変換する波形整形回路と、該第1の回転検出信号及び第2の回転検出信号を入力として両回転検出信号に基づいて決定した内燃機関の点火位置で点火回路に点火信号を与える点火位置制御装置とを備えている。点火回路が発生する点火用高電圧は、内燃機関の気筒に取り付けられた点火プラグに印加され、該点火用高電圧が発生した時に点火プラグに発生する火花により機関が点火される。
【0003】
この種の点火装置において、点火回路に点火エネルギを与える点火電源としては、内燃機関により駆動されるフライホイール磁石発電機内に設けられたエキサイタコイルが多く用いられている。
【0004】
また2サイクル機関のように、逆転し易い内燃機関を点火する点火装置においては、機関が逆転した際に波形整形回路から点火位置制御装置に回転検出信号が与えられるのを阻止する点火阻止回路を設けて、機関の逆転時に点火位置制御装置に回転検出信号が与えられるのを阻止することにより点火動作を停止させて、機関の逆転を防止するようにしている。
【0005】
図9は従来のこの種の点火装置の構成例を示したもので、同図において1は点火回路、2は磁石式交流発電機、3´は信号発電機、4は波形整形回路、5は点火位置制御装置、6は点火阻止回路、7は各部に直流電源電圧を供給する直流電源回路である。
【0006】
図示の点火回路1は周知のコンデンサ放電式の回路で、一端が接地された一次コイルW1 及び一次コイルW1 の他端に一端が共通接続された二次コイルW2 を有する点火コイルIGと、点火コイルIGの一次側に設けられて一次コイルW1 の他端に一端が接続された点火用コンデンサCi と、点火用コンデンサCi の他端と接地間にカソードを接地側に向けた状態で接続された放電用スイッチとしてのサイリスタThiと、点火用コンデンサCi の他端とサイリスタThiのアノードとの共通接続点にカソードが接続されたダイオードDi とを備えている。点火コイルの二次コイルW2 の他端は、機関の気筒に取り付けられた点火プラグPLの非接地側端子に高圧コードを通して接続されている。
【0007】
磁石式交流発電機2は、鉄板をプレス加工(絞り加工)することによりカップ状に形成されたフライホイール201と、該フライホイール201の周壁部の内周に固定されて複数極(図示の例では8極)に着磁された永久磁石202とを備えた磁石回転子203と、複数極(図示の例では8極)の星形環状鉄心204の1個または複数個(図示の例では1個)の突極部にエキサイタコイルWexを巻回してなる固定子205とからなっている。磁石回転子203は図示しない内燃機関の回転軸(通常はクランク軸)8に取り付けられ、固定子205は機関のケースなどに設けられた固定子台板に固定されている。固定子の鉄心204の各磁極部は磁石回転子203の磁極に所定のギャップを介して対向させられている。図示の例では、機関が正回転する際に磁石回転子203が図示の矢印UCL方向に回転する。
【0008】
磁石回転子203が回転すると、エキサイタコイルWexに鎖交する磁束が変化するため、該エキサイタコイルには、図10(A)に示すような交流電圧Vexが誘起する。図示の例では、磁石回転子203が8極に構成されているため、エキサイタコイルWexには、機関が1回転する間に4サイクルの交流電圧Vexが誘起する。
【0009】
なお図10において、実線で示した波形は内燃機関が正回転している時の波形であり、破線で示した波形は機関が逆回転している時の波形である。
【0010】
図示してないが、固定子の鉄心204のエキサイタコイルWexが巻かれた突極部以外の他の突極部には、バッテリの充電や、ヘッドランプの駆動等に用いられる発電コイルが巻回されている。
【0011】
エキサイタコイルWexの一端は、ダイオードDi のアノードに接続され、該エキサイタコイルの他端は、直流電源回路7の入力端子に接続されている。直流電源回路7は、エキサイタコイルWexの負の半サイクルの電圧により充電される電源コンデンサと、該電源コンデンサの両端の電圧を一定値に制限する定電圧回路とを備えていて、その出力端子7aと接地間に一定の直流電圧Ec を出力する。この直流電圧Ec は、後記する波形整形回路4、点火位置制御装置5及び点火阻止回路6の電源端子にそれぞれ電源電圧として与えられている。
【0012】
信号発電機3´は、機関と同期回転するロータ3A´と、ロータ3A´の近傍に配置されて機関のケースなどに固定された信号発電子3Bとからなっている。図示の例では、フライホイール201の周壁部の一部を径方向の外側に打ち出すことによりフライホイール201の回転方向に長く伸びる円弧状のリラクタ3a´が形成され、該フライホイールにより信号発電機のロータ3A´が構成されている。
【0013】
信号発電子3Bは、リラクタ3a´に対向する磁極部301aを先端に有する鉄心301と、該鉄心301に巻回された信号コイルWsと、鉄心301に磁気結合された永久磁石302とを備えた公知のもので、信号コイルWsは、機関のロータ3A´のリラクタ3a´の回転方向の前端縁(正回転時には図示の端縁3a1´)を検出した時(リラクタ3a´が磁極部301aとの対向を開始する際)、及びロータ3A´のリラクタ3a´の回転方向の後端縁(正回転時には図示の端縁3a2´)を検出した時(リラクタ3a´が磁極部301aとの対向を終了する際)にそれぞれ第1の極性のパルス信号Vsn及び第2の極性のパルス信号Vspを出力する。
【0014】
なお本明細書において、リラクタの前端縁及び後端縁という場合の「前端縁」及び「後端縁」は常に機関の回転方向に対する前端縁及び後端縁を意味する。従って、機関の正回転時と逆回転時とでは、リラクタの前端縁及び後端縁の位置が入れ替わる。
【0015】
図示の例では、機関の正回転時にロータ3A´のリラクタ3a´が磁極部301aとの対向を開始する回転角度位置(機関のクランク軸の回転角度位置)が機関の上死点よりも進角側に設定された基準回転角度位置θs に一致し、機関の正回転時にロータ3A´のリラクタ3a´が磁極部301aとの対向を終了する回転角度位置が機関の上死点付近に設定された設定位置θo に一致するように、かつ機関の正回転時にエキサイタコイルWexが負の半サイクルの出力電圧を発生している時に信号Vsn及びVspが発生するように、磁石式交流発電機2及び信号発電機3´の出力の位相関係が設定されている。
【0016】
上記基準回転角度位置θs は機関の点火位置の計測を開始する回転角度位置で、機関の点火位置の最大進角位置、または該最大進角位置よりも更に進角した位置に設定される。また設定位置θo は機関の回転速度が設定値以下の領域にあるときの点火位置である。
【0017】
なお本明細書において、内燃機関の各回転角度位置は、機関の上死点に相当する回転角度位置を基準にして(0°として)進角側に測った角度で表わすものとし、進角側に測った角度を正の角度とする。
【0018】
波形整形回路4は、信号コイルWsが発生する第1の極性のパルス信号Vsn及び第2の極性のパルス信号Vspの波形をそれぞれ点火位置制御装置5が認識し得る波形の第1の回転検出信号Vp1及び第2の回転検出信号Vp2に変換して、これらの回転検出信号Vp1及びVp2をそれぞれ第1及び第2の出力端子4a及び4bから出力する。
【0019】
点火位置制御装置5は通常マイクロコンピュータを備えていて、第1の回転検出信号Vp1及び第2の回転検出信号Vp2の発生間隔から機関の回転速度を演算し、演算された回転速度に対する点火位置を演算する。この点火位置は、基準回転角度位置θs から点火位置まで機関が回転する間にマイクロコンピュータ内のタイマに計数させるクロックパルスの数(点火位置計数値)の形で演算される。点火位置制御装置5は、基準回転角度位置θs で第1の回転検出信号Vp1が発生したことを検出したときにタイマに点火位置計数値をセットして、その計数を開始させ、該計数値の計数が完了した時に点火回路1に点火信号Vi を与える。
【0020】
また機関の回転速度が設定値以下の領域にあるとき(特に機関の始動時)には、機関の回転速度が機関のクランク軸の回転角度の変化(機関の行程変化)に伴って大きく変化するため、機関の回転速度の演算を正確に行うことができない。また回転速度を正確に演算できたとしても、タイマの計数動作により演算された点火位置を正確に検出することは困難である。そのため機関の回転速度が設定値以下になっている低速領域では、機関の上死点付近に設定された設定位置θo で第2の回転検出信号Vp2が発生したときに、点火回路1に点火信号Vi を与えるように、点火位置制御装置5が構成されている。
【0021】
図示の点火阻止回路6は、エキサイタコイルWexの一端とダイオードDi との接続点にカソードが接続されたダイオードD1 と、該ダイオードD1 のアノードにベースが接続され、エミッタが接地されたNPNトランジスタTR1 と、トランジスタTR1 のベースと直流電源回路7の出力端子との間及び該トランジスタTR1 のベースと接地間にそれぞれ接続された抵抗R1 及びR2 とからなっていて、トランジスタTR1 のコレクタが波形整形回路4の第2の出力端子4bに接続されている。
【0022】
なお図9においてD2 は点火用コンデンサCi を充電する電流をエキサイタコイルWexに帰すための帰路を構成するダイオードであり、D3 は直流電源回路7内の電源コンデンサの充電電流をエキサイタコイルWexに帰すための帰路を構成するダイオードである。
【0023】
図10は、図9の点火装置の各部の電圧波形を示したもので、図10(A)はエキサイタコイルの出力電圧Vexの波形を示している。図10(A)に実線で示した波形は機関が正回転する時の波形であり、破線で示した波形は機関が逆回転する時の波形である。図10図(B)は機関の正回転時に信号コイルWs が発生する第1の極性のパルス信号Vsn及び第2の極性のパルス信号Vspの波形を示し、同図(C)及び(D)はそれぞれ点火位置制御装置5に与えられる第1の回転検出信号Vp1及び第2の回転検出信号Vp2の波形を示している。また図10(B´)は、機関が逆回転した時に信号コイルWs が発生する第1の極性のパルス信号Vsn及び第2の極性のパルス信号Vspの波形を示し、同図(C´)及び(D´)はそれぞれ機関が逆回転している時に点火位置制御装置5に与えられる第1の回転検出信号Vp1の波形及び第2の回転検出信号Vp2の状態を示している。
【0024】
機関が正回転する時の図9の点火装置の動作は次の通りである。機関を始動させるため、該機関のクランク軸が正方向に回転させられると、エキサイタコイルWexが、機関の回転角度θに対して図10(A)に実線で示したような波形を示す交流電圧Vexを誘起する。エキサイタコイルWexが正の半サイクルの誘起電圧Vexを発生すると、エキサイタコイルWex−ダイオードDi −点火用コンデンサCi −点火コイルの一次コイルW1 −接地回路−ダイオードD2 −エキサイタコイルWexの経路で電流が流れ、点火用コンデンサCi が図示の極性に充電される。機関の始動時には、設定位置θo で信号発電機3が第2の極性のパルス信号Vspを発生したときに(第2の回転検出信号Vp2が発生したときに)、点火位置制御装置5から点火回路1に点火信号Vi が与えられる。点火回路に点火信号Vi が与えられると、サイリスタThiが導通するため、コンデンサCi の電荷がサイリスタThiと点火コイルIGの一次コイルW1 とを通して放電し、該点火コイルの二次コイルW2 に点火用の高電圧を誘起させる。この高電圧は点火プラグPLに印加されるため、該点火プラグで火花が生じて機関が点火され、機関が始動する。機関が始動した後、その回転速度が上昇して設定値を超えると、点火位置制御装置5は各回転速度に対して演算した点火位置で点火信号Vi を発生するようになり、機関の点火位置は回転速度に応じて制御される。
【0025】
機関が正回転しているときには、エキサイタコイルWexが負の半サイクルの電圧を誘起している間に信号発電機が第1の極性のパルス信号Vsn及び第2の極性のパルス信号Vspを出力する。エキサイタコイルWexが負の半サイクルの電圧を誘起している時には、電源回路7から点火阻止回路6の抵抗R1 を通してトランジスタTR1 のベース側に流れる電流の殆どがダイオードD1 とエキサイタコイルWexとを通して流れるため、トランジスタTR1 が遮断状態になる。そのため、図10(C)及び(D)に示すように第1及び第2の回転検出信号Vp1及びVp2は点火位置制御装置5に支障なく与えられ、内燃機関の点火動作は支障なく行われる。
【0026】
これに対し、機関が逆回転した時には、図10(A)に破線で示したように、エキサイタコイルWexの出力電圧の位相が反転する。また機関が逆回転した時には、図10(B´)に示したように、信号コイルWs が、設定位置θo よりも進んだ位置(設定位置よりも更に機関の上死点に近い回転角度位置)θo ´で第1の極性のパルス信号Vsnを発生し、正回転時の基準回転角度位置θs よりも進んだ位置θs ´で第2の極性のパルス信号Vspを出力する。
【0027】
機関の始動時には、点火位置制御装置5が、第2の回転検出信号Vp2の発生時に点火信号Vi を点火回路に与えようとするが、このとき、図10(A)に破線で示したように、エキサイタコイルWexが正の半サイクルの出力電圧Vexを発生していて、点火阻止回路6のダイオードD1 が逆バイアスされているため、トランジスタTR1 にベース電流が流れて該トランジスタが導通し、第2の回転検出信号Vp2がトランジスタTR1 を通して点火位置制御装置5から側路される。従って、点火位置制御装置5は機関の始動時に点火回路1に点火信号Vi を与えることができず、機関は失火する。また万一外力により機関の逆方向への回転速度が上昇させられたとしても、点火位置制御装置5は、第2の回転検出信号Vp2が与えられないことにより、点火位置の演算を行うことができないため、機関の点火動作は行われない。このように、機関の回転方向が逆方向の時には、点火動作が行われないため、機関の逆回転は維持されない。
【0028】
なお、図9に示した例では、正回転時にエキサイタコイルWexが負の半サイクルの電圧を誘起している間に第1及び第2の回転検出信号Vp1及びVp2を発生させ、機関の逆転時にはエキサイタコイルが正の半サイクルの電圧を誘起している間に第1及び第2の回転検出信号を発生させるように信号発電機を構成するとともに、エキサイタコイルが正の半サイクルの出力電圧を発生している状態で第2の極性のパルス信号が発生した時に、該第2の極性のパルス信号により点火位置制御装置に第2の回転検出信号が与えられるのを阻止する点火阻止回路を設けて、機関の逆転時に点火動作を停止させるようにしているが、正回転時にエキサイタコイルWexが正の半サイクルの電圧を誘起している間に第1及び第2の回転検出信号Vp1及びVp2を発生させ、機関の逆転時にはエキサイタコイルが負の半サイクルの電圧を誘起している間に第1及び第2の回転検出信号を発生させるように構成して、エキサイタコイルが負の半サイクルの出力電圧を発生している状態で第2の極性のパルス信号が発生した時に該第2の極性のパルス信号により点火位置制御装置に第2の回転検出信号が与えられるのを阻止するように点火阻止回路を構成しても、上記と同様の動作を行わせることができる。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
内燃機関用点火装置では、機関の始動時にケッチン(ピストンが押し戻される現象)が生じて、運転者が怪我をするのを防止するため、機関の始動時の点火位置である設定位置θo を、機関の始動性を損なわない範囲で上死点TDCに近付けている。
【0030】
また機関の出力を向上させるため、機関の点火位置の進角幅を大きくすることが要求される。図9に示した点火装置では、基準回転角度位置θs から点火位置の計測を開始するため、基準回転角度位置θs が点火位置の進角側の限界位置となる。そのため、点火位置の進角幅はθs とθo との差(θs −θo =α)により決まる。すなわち、進角幅は信号発電機のロータに設けるリラクタの極弧角α(図9参照)により決まる。したがって、点火位置の進角幅を大きくするためには、リラクタの極弧角αを大きくする必要があるが、図9に示すように磁石回転子のヨークを構成するフライホイール201の周壁部を内側から外側に打ち出すことによりリラクタ3aを形成する場合には、リラクタの極弧角を大きくしようとすると、その打ち出しのために大きな力が必要になるため、フライホイールが変形するおそれがある。そのため、リラクタ3aの極弧角αを大きくすることには限界があり、一般には極弧角αが30度以上のリラクタを形成することは困難である。
【0031】
また図9に示した点火装置では、機関の逆回転を防止するために、エキサイタコイルが一方の極性の半サイクルの出力電圧を誘起している間に、基準回転角度位置θs 及び設定位置θo でそれぞれ第1の極性のパルス信号Vsn及び第2の極性のパルス信号Vspを発生させる必要がある。そのため、基準回転角度位置θs と設定位置θo との間の角度αは、エキサイタコイルの出力電圧の半サイクルの区間に相当する角度(図9に示した例では、磁石発電機の回転子が8極に構成されているため、45度)よりも小さく設定する必要がある。
【0032】
上記の理由から、図9に示したような従来の内燃機関用点火装置では、点火位置の進角幅が30度程度に制限され、これ以上の進角幅を要求される用途には使用することができなかった。
【0033】
本発明の目的は、従来よりも更に進角幅を広くとることができる内燃機関用点火装置を提供することにある。
【0034】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内燃機関により駆動される磁石式交流発電機内に設けられて機関の回転に同期して交流電圧を誘起するエキサイタコイルを点火電源とし、点火信号が与えられたときに点火コイルの一次電流を制御して該点火コイルの二次側に点火用の高電圧を誘起させる点火回路と、内燃機関の正回転時に該機関の上死点よりも進角側に設定された基準回転角度位置で第1の極性のパルス信号を発生し、機関の上死点付近に設定された設定位置で第2の極性のパルス信号を発生する信号発電機と、第1の極性のパルス信号及び第2の極性のパルス信号をそれぞれ波形整形して第1の回転検出信号及び第2の回転検出信号に変換する波形整形回路と、第1の回転検出信号及び第2の回転検出信号を入力として両回転検出信号に基づいて決定した機関の点火位置で点火回路に点火信号を与える点火位置制御装置と、エキサイタコイルが一方の極性の半サイクルの出力電圧を発生している間に発生した第2の極性のパルス信号により点火位置制御装置に第2の回転検出信号が与えられるのを阻止して点火回路に点火信号が与えられるのを阻止する点火阻止回路とを備えた内燃機関用点火装置を対象とする。
【0035】
本発明が対象とする点火装置では、内燃機関の正回転時に、エキサイタコイルが他方の極性の半サイクルの出力電圧を発生している間に第2の回転検出信号が発生し、内燃機関の逆回転時にはエキサイタコイルが一方の半サイクルの出力電圧を発生している間に第2の回転検出信号が発生するように、信号発電機の出力と磁石発電機の出力との位相関係が設定されている。また内燃機関の回転速度が設定値以下の領域では第2の極性のパルス信号が発生した時に点火回路に点火信号を与えるように点火位置制御装置が構成されている。
【0036】
本発明においては、上記信号発電機が、内燃機関の回転軸に取り付けられていて、第1のリラクタと該第1のリラクタよりも機関の正回転方向に対して遅れ側に位置するように設けられた第2のリラクタとを有するロータと、該ロータの第1及び第2のリラクタに対向し得るように配置されて各リラクタの回転方向の前端縁を検出したとき及び各リラクタの回転方向の後端縁を検出したときにそれぞれ第1の極性のパルス信号及び第2の極性のパルス信号を発生する信号発電子とを備えている。そして、内燃機関の正回転時には、信号発電子が第1のリラクタの前端縁を検出する位置及び第2のリラクタの後端縁を検出する位置がそれぞれ基準回転角度位置及び設定位置に一致し、かつエキサイタコイルが一方の半サイクルの出力電圧を発生している間に信号発電子が第1のリラクタの前端縁及び後端縁を検出し、エキサイタコイルが他方の半サイクルの出力電圧を発生している間に信号発電子が第2のリラクタの前端縁及び後端縁を検出するように、第1及び第2のリラクタの極弧角と、第1及び第2のリラクタの角度間隔と、信号発電子とロータとの間の位置関係とが設定されている。
【0037】
上記のように構成すると、機関の正回転方向に対して進み側に位置する第1のリラクタの前端縁と、正回転方向に対して遅れ側に位置する第2のリラクタの後端縁との間の角度を最大進角幅とすることができるので、第1及び第2のリラクタの角度間隔を大きくすることにより進角幅を従来より広くとることができる。この場合、各リラクタの極弧角は特に大きくする必要はないため、リラクタの形成を容易にすることができる。
【0038】
また信号発電機が出力するパルス信号とエキサイタコイルの出力電圧との位相関係を上記のように設定しておくと、点火阻止回路の働きにより無駄な信号を消去して、機関の正回転時に、基準回転角度位置及び設定位置でそれぞれ第1の回転検出信号及び第2の回転検出信号を点火位置制御装置に与えることができるため、点火位置制御装置に点火位置の演算に必要な機関の回転情報を与えることができる。
【0039】
また上記のように構成すると、機関の逆回転時には、点火阻止回路の働きにより、機関の上死点の直後の位置(正回転時の設定位置の直後の位置)で発生する第2の極性のパルス信号により点火位置制御装置に第2の回転検出信号が与えられるのを阻止することができるため、機関が逆転しようとしたときに、その逆転が維持されるのが防止される。機関の逆転時には、正回転時の基準回転角度位置の直後の位置に相当する回転角度位置で発生する第2の極性のパルス信号により、点火位置制御装置に第2の回転検出信号が与えられるが、この位置では機関が既に排気行程に入っているため、点火が行われても燃焼は起らない。
【0040】
なお上記のように構成した場合には、内燃機関の正回転時に基準回転角度位置で第1の回転検出信号が発生した後、設定位置の直前の位置でも第1の回転検出信号が発生するが、点火位置制御装置を構成するマイクロコンピュータが実行するソフトウェア上で、1回目に発生した第1の回転検出信号のみを基準回転角度位置を示す信号として認識し、2回目に発生した第1の回転検出信号を無視するようにしておけば、2回目に発生する第1の回転検出信号は点火位置の演算に何等影響を与えないので問題はない。このような信号処理はソフトウェア上で容易に行うことができるので、該信号処理を行う過程をマイクロコンピュータに実行させるプログラムに組み込んでもプログラムが特に複雑になることはない。
【0041】
上記の構成では、エキサイタコイルが一方の半サイクルの出力電圧を発生している間に信号発電子が第1のリラクタの前端縁及び後端縁を検出し、エキサイタコイルが他方の半サイクルの出力電圧を発生している間に信号発電子が第2のリラクタの前端縁及び後端縁を検出するように、第1及び第2のリラクタの極弧角と、第1及び第2のリラクタの角度間隔と、信号発電子とロータとの間の位置関係とを設定したが、第1のリラクタの極弧角を第2のリラクタの極弧角よりも大きくしておいて、エキサイタコイルの出力電圧の他方の半サイクルの期間及び該他方の半サイクルの期間の後に現れる一方の半サイクルの期間にそれぞれ信号発電子が第1のリラクタの前端縁及び後端縁を検出し、信号発電子が第1のリラクタの後端縁を検出した後に現れるエキサイタコイルの他方の半サイクルの期間に信号発電子が第2のリラクタの回転方向の前端縁及び後端縁を検出するように、第1及び第2のリラクタの極弧角と、第1及び第2のリラクタの角度間隔と、信号発電子とロータとの間の位置関係とを設定するようにしてもよい。
【0042】
このように構成した場合には、機関の逆転時に点火位置制御装置に回転検出信号が全く与えられなくなるので、機関の逆転時に機関を完全に失火させることができ、機関に無駄火が飛ぶのを防ぐことができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係わる内燃機関用点火装置の構成例を示したもので、同図において、図9に示した従来の点火装置の各部と同等の部分にはそれぞれ同一の符号を付してある。
【0044】
図1に示した例では、磁石式交流発電機2の回転子ヨークを構成するフライホイール201の周壁部の一部を内側から外側に打ち出すことにより、第1のリラクタ3aと該第1のリラクタ3aよりも機関の正回転方向(図示の矢印UCL方向)に対して遅れ側に位置する第2のリラクタ3bとが形成されている。リラクタ3a及び3bは機関の回転方向に延びる円弧状の突起からなっていて、フライホイール201により信号発電機3のロータ3Aが構成されている。
【0045】
ロータ3Aの近傍には、図9に示したものと同様の信号発電子3Bが配置されて機関のケース等に固定され、該信号発電子3Bの鉄心の磁極部301aがロータ3Aの外周に対向させられている。機関が正回転する時には、図2(B)に示したように、信号発電子3は、第1のリラクタ3aが磁極部301aとの対向を開始する際(磁極部3aの回転方向の前端縁3a1を検出した際)に、第1の極性(図示の例では負極性)のパルス信号Vs1n を発生し、第1のリラクタ3aが磁極部301aとの対向を終了する際(第1のリラクタの回転方向の後端縁3a2を検出した際)に第1の極性と異極性の第2の極性(図示の例では正極性)のパルス信号Vs1p を発生する。
【0046】
信号発電子3はまた、機関の正回転時に、第2のリラクタ3bが磁極部301aとの対向を開始する際(磁極部3bの前端縁3b1を検出した際)に、第1の極性(負極性)のパルス信号Vs2n を発生し、第2のリラクタ3bとの対向を終了する際(第2のリラクタ3bの後端縁3b2を検出した際)に第2の極性(正極性)のパルス信号Vs2p を発生する。
【0047】
そして、内燃機関の正回転時には、信号発電子3Bが第1のリラクタ3aの前端縁3a1を検出する位置及び第2のリラクタの後端縁3a2を検出する位置がそれぞれ内燃機関の上死点より進角した位置に設定された基準回転角度位置及び上死点付近に設定された設定位置に一致し、かつエキサイタコイルWexが一方の半サイクルの出力電圧(図2に示した例では負の半サイクル)を発生している間に信号発電子3Bが第1のリラクタの前端縁3a1及び後端縁3a2を検出し、エキサイタコイルが他方の半サイクルの出力電圧を発生している間に信号発電子3Bが第2のリラクタの前端縁3b1及び後端縁3b2を検出するように、第1及び第2のリラクタ3a及び3bの極弧角と、第1及び第2のリラクタ3a及び3bの角度間隔と、信号発電子3Bとロータ3Aとの間の位置関係とが設定されている。その他の点は、図9に示した従来の点火装置と全く同様に構成されている。
【0048】
図2は図1の点火装置の各部の電圧または信号波形を示したもので、(A)はエキサイタコイルの出力電圧波形を示している。同図において実線で示した波形は機関が正回転する際にエキサイタコイルに誘起する電圧波形を示し、破線で示した波形は機関が逆回転する際にエキサイタコイルに誘起する電圧波形を示している。また図2(B)は機関の正回転時に信号発電子3Bが出力するパルス信号の波形を示し、同図(C)及び(D)はそれぞれ機関の正回転時に点火位置制御装置5に与えられる第1の回転検出信号Vp1及び第2の回転検出信号Vp2の波形を示している。
【0049】
また図2(B´)は機関の逆回転時に信号発電子3Bが出力するパルス信号の波形を示し、同図(C´)及び(D´)はそれぞれ機関の逆回転時に点火位置制御装置5に与えられる第1の回転検出信号Vp1及び第2の回転検出信号Vp2の波形を示している。
【0050】
図1に示した点火装置においては、図9に示した従来の点火装置と同様に、エキサイタコイルWexが正の半サイクルの出力電圧(一方の半サイクルの出力電圧)Vexを発生している状態で波形整形回路4が第2の回転検出信号Vp2を発生したときに点火阻止回路6が該第2の回転検出信号Vp2を点火位置制御装置5から側路するようになっている。エキサイタコイルWexが負の半サイクルの出力電圧(他方の半サイクルの出力電圧)Vexを発生している状態で波形整形回路4が第2の回転検出信号Vp2を発生したときには、点火阻止回路6が第2の回転検出信号Vp2を点火位置制御装置5から側路することはなく、該回転検出信号Vp2はそのまま点火位置制御装置5に与えられる。
【0051】
図1に示した点火装置において、内燃機関が正回転すると、エキサイタコイルWexが図2(A)に実線で示した波形の交流電圧Vexを誘起する。内燃機関の正回転時には、機関の上死点TDCに対して十分に進角した位置に設定された図2の角度θ1 の位置で第1のリラクタ3aが信号発電子3Bの磁極部301aとの対向を開始する。第1のリラクタ3aが信号発電子の磁極部との対向を開始すると、信号コイルWsに鎖交する磁束が増加し、信号コイルWsに第1の極性(負極性)のパルス信号Vs1n が発生する。この第1の極性のパルス信号は、図2(C)に示すように波形整形回路4によりきれいなパルス波形の第1の回転検出信号Vp1に変換されて基準回転角度位置を示す信号として点火位置検出装置5に与えられる。
【0052】
信号発電子3Bは、角度θ2 の位置で第1のリラクタとの対向を終了する際に、図2(B)に示すように第2の極性(正極性)のパルス信号Vs1p を発生する。この第2の極性のパルス信号は波形整形回路4により第2の回転検出信号Vp2に変換されるが、このときエキサイタコイルWexは一方の半サイクル(この例では正の半サイクル)の電圧を誘起していて、点火阻止回路6が波形整形回路4から出力される第2の回転検出信号Vp2を点火位置制御装置5から側路する状態にあるため、図2(D)に示したように、第1のリラクタ3aが信号発電子の磁極部との対向を終了する際に発生する回転検出信号Vp2は点火位置制御装置5に与えられない。
【0053】
次いで図2に示した角度θ5 の位置で第2のリラクタ3bが信号発電子の磁極部との対向を開始すると、信号発電子3Bが第1の極性のパルス信号Vs2n を発生する。この第1の極性のパルス信号Vs2n は波形整形回路4により波形整形されて第1の回転検出信号Vp1´として点火位置制御装置5に与えられる。
【0054】
次いで信号発電子3Bは、機関の上死点に近い角度θ6 の位置で第2のリラクタ3bが該信号発電子の磁極部との対向を終了する際に、第2の極性のパルス信号Vs2p を発生する。この第2の極性のパルス信号は波形整形回路4により波形整形されて第2の回転検出信号Vp2に変換される。このときエキサイタコイルWexは負の半サイクルの出力電圧を誘起しているため、点火阻止回路6は波形整形回路4が出力する第2の回転検出信号Vp2を点火位置制御装置から側路することができない状態にある。したがって、図2(D)に示したように、角度θ6 の位置で波形整形回路4が出力した第2の回転検出信号Vp2はそのまま点火位置制御装置5に与えられる。この例では角度θ6 の位置が設定位置となる。
【0055】
点火位置制御装置5は、角度θ1 の位置で第1の回転検出信号Vp1が与えられた時に、その時の機関の回転角度位置を基準回転角度位置であると認識する。また角度θ6 の位置で第2の回転検出信号Vp2が与えられた時に、機関の回転角度位置が設定位置であると認識する。点火位置制御装置5は、第1の回転検出信号Vp1が与えられた時刻から第2の回転検出信号Vp2が与えられた時刻までの間タイマにクロックパルスを計数させることにより、基準回転確度位置θ1 から設定位置θ6 まで機関が回転する間に要した時間を計測し、この時間から機関の回転速度を演算する。点火位置制御装置5はまた、回転速度が演算される毎に、ROMに記憶された点火位置演算用マップ(回転速度と点火位置との関係を与える特性の折れ線の各屈曲点の座標をテーブルの形で記憶したもの)を用いて、補間法により、その回転速度における最適の点火位置を演算する。この点火位置は、そのときの回転速度で基準回転角度位置θ1 から点火位置まで機関が回転する間にタイマに計数させるクロックパルスの数(点火位置計測用計数値)の形で演算される。点火位置制御装置5は、基準回転確度位置θ1 で第1の回転検出信号Vp1が与えられた時に、タイマに点火位置計測用計数値の計数を開始させ、その計数が終了したときに点火回路1に点火信号Vi を与える。
【0056】
機関の始動時には、点火位置制御装置5が点火位置を演算することはなく、設定位置θ6 で第2の回転検出信号Vp2が与えられた時に点火回路1に点火信号を与える。したがって、設定位置θ6 は、機関の始動を容易にする位置で、かつケッチンを生じさせない位置に設定される。図示の例では、設定位置θ6 を機関の上死点よりも僅かに進んだ位置に設定しているが、ケッチンを生じ易い機関の場合には、設定位置θ6 を上死点より僅かに遅れた位置に設定することもある。
【0057】
なお図1に示した点火装置において、第1の極性のパルス信号Vs1n が零になる位置と、第2の極性のパルス信号Vs1p が立上がる位置とは必ずしも一致しないが、図2においては、便宜上リラクタ3aの極弧角が十分に小さいとして、第1の極性のパルス信号Vs1n が零になる位置で第2の極性のパルス信号Vs1p が立上がるように図示してある。同様に、第2のリラクタ3bの極弧角を十分に小さいとして、第1の極性のパルス信号Vs2n が零になる位置で第2の極性のパルス信号Vs2p が立上がるように図示してある。
【0058】
上記のように構成した場合、機関の正回転時に基準回転角度位置θ1 で第1の回転検出信号Vp1が発生した後、設定位置θ6 の直前の位置θ5 でも第1の回転検出信号Vp1´が発生するが、点火位置制御装置5を構成するマイクロコンピュータが実行するソフトウェア上で、1回目に発生した第1の回転検出信号Vp1のみを基準回転角度位置を示す信号として認識し、2回目に発生した第1の回転検出信号Vp1´を無視するようにしておけば、2回目に発生する第1の回転検出信号Vp1´は回転速度の演算や点火位置の計測に何等影響を与えないので問題はない。
【0059】
基準回転角度位置θ1 で発生する回転検出信号Vp1とその後に発生する回転検出信号Vp1´とを識別するには、例えば、第2の回転検出信号Vp2が発生した後に始めて入力される回転検出信号Vp1を第1の回転検出信号として認識し、2回目に入力された回転検出信号Vp1´を無視するような信号処理を行う信号処理過程をソフトウェアに組み込んで、該信号処理過程により回転検出信号識別手段を実現するようにすればよい。このような信号処理はソフトウェア上で容易に行うことができるので、該信号処理過程をマイクロコンピュータに実行させるプログラムに組み込んでもプログラムが特に複雑になることはない。
【0060】
なお場合によっては(例えば機関の始動時には、ケッチンを防止するために上死点付近で点火を行わせ、機関が始動し後の低速領域では、機関の回転を安定させるために点火位置を僅かに進角させる場合には)、2回目に発生する第1の回転検出信号Vp1´を機関の低速領域の点火位置を定めるための信号として利用することもできる。
【0061】
また機関が逆回転した際には、エキサイタコイルに誘起する電圧の波形が図2(A)に破線で示したように反転する。機関の逆回転時には、先ず上記角度θ6 よりも更に機関の上死点TDCに近い角度θ7 の位置で第2のリラクタ3bが信号発電子3Bの磁極部301aとの対向を開始(第2のリラクタの回転方向の前端縁を検出)する。第2のリラクタ3bが信号発電子の磁極部との対向を開始すると、信号発電子が図2(B´)に示すように、第1の極性のパルス信号Vs2n を発生する。この信号は、図2(C´)に示すように、波形整形回路4により第1の回転検出信号Vp1に変換されて点火位置制御装置5に与えられる。次いで角度θ6 の位置で第2のリラクタ3bが信号発電子の磁極との対向を終了する際に、第2の極性のパルス信号Vs2p が発生し、このパルス信号が波形整形回路4により第2の回転検出信号Vp2に変換されるが、このときエキサイタコイルWexは図2(A)に破線で示したように、正の半サイクルの電圧を誘起しているので、該第2の回転検出信号Vp2は点火阻止回路6により点火位置制御装置5から側路される。従って、図2(D´)に示すように、角度θ6 の位置では、点火位置制御装置5に回転検出信号Vp2が与えられない。そのため、機関が逆転を開始しようとしても、点火回路1には点火信号が与えられず、機関は失火する。
【0062】
機関が逆方向に更に回転して角度θ2 の位置に達すると第2の極性のパルス信号Vs1p が発生するため、波形整形回路4が第2の回転検出信号Vp2を出力する。このときエキサイタコイルは負の半サイクルの出力電圧を発生していて、点火阻止回路6は該回転検出信号Vp2を点火位置制御装置から側路しないため、角度θ2 の位置で発生した第2の回転検出信号Vp2は点火位置制御装置5に与えられる。従って、角度θ2 の位置で、点火位置制御装置5から点火回路1に点火信号が与えられるが、角度θ2 の位置は、上死点から大幅に遅れた位置で、この位置では機関が既に排気行程に入っているので、この角度θ2 の位置で発生する点火火花は無駄火となり、機関の燃焼は行われない。したがって、機関は逆転することができず、やがて停止する。
【0063】
上記のように、図1に示した点火装置では、機関の正回転方向に対して進み側に位置する第1のリラクタの端縁3a1と、正回転方向に対して遅れ側に位置する第2のリラクタの端縁3b2との間の角度を最大進角幅αとすることができる。この最大進角幅αは、第1及び第2のリラクタ3a及び3bの角度間隔を大きくすることにより従来よりも広くとることができる。この場合、各リラクタの極弧角は特に大きくする必要はないため、各リラクタは打ち出しにより容易に形成することができる。
【0064】
また信号発電機が出力するパルス信号とエキサイタコイルの出力電圧との位相関係を上記の例(図2)のように設定しておくと、点火阻止回路6の働きにより無駄な信号を消去して、機関の正回転時に、基準回転角度位置及び設定位置でそれぞれ第1の回転検出信号及び第2の回転検出信号を点火位置制御装置に与えることができるため、点火装置の構成を何ら複雑にすることなく(余分の信号を消去するための複雑な回路を追加したり、余分の信号を消去するためにソフトウェアの構成を複雑にしたりすることなく)、点火位置制御装置に点火位置の演算に必要な機関の回転情報を与えることができる。
【0065】
上記の点火装置では、信号発電機のロータ3Aに設ける第1及び第2のリラクタ3a及び3bを設ける位置と、両リラクタの間の角度間隔とを変えることにより、基準回転角度位置及び設定位置と、進角幅とを変えることができる。
【0066】
点火阻止回路6を利用して余分な信号を消去するためには、エキサイタコイルが正の半サイクル(一方の半サイクル)の出力電圧を発生している間に第1のリラクタ3aと信号発電子の磁極との対向を終了させ、エキサイタコイルが負の半サイクル(他方の半サイクル)の出力電圧を発生している間に第2のリラクタ3bが信号発電子の磁極部との対向を終了させるようにすればよいので、理論的には、基準回転角度位置は、図3(C)に示すように、エキサイタコイルの正の半サイクルの出力電圧が立上がる位置の直前の角度θ1 ´の位置まで進角させることができ、設定位置は、図3(C)に示すように、エキサイタコイルの負の半サイクルの出力電圧が零になる位置の直前の位置θ6 ´まで遅らせることができる。磁石発電機の回転子が8極に構成されている場合、進角幅は最大90度まで広げることができる。
【0067】
図4の折れ線aは、信号発電子が図3(B)に示すように角度θ1 の位置でパルス信号Vs1n を発生し、角度θ5 の位置でパルス信号Vs2n を発生するように構成されている場合に得られる点火特性(点火位置θi の回転速度Nに対する特性)の一例を示したものである。この特性では、機関の始動時に点火位置が設定位置θ6 の位置となり、回転速度が設定値N1 に達したときに点火位置がステップ状に角度θ1 の位置(基準回転角度位置)まで進角させられる。次いで回転速度が設定値N2 からN3 まで上昇する間点火位置が徐々に遅角させられ、回転速度が設定値N3 からN4 まで上昇する間点火位置が徐々に進角させられる。回転速度がN4 を超える領域では、点火位置が最大進角位置(この例では基準回転角度位置θ1 )に固定される。このような特性は、2サイクル機関を点火する場合にしばしば採用される特性である。
【0068】
図4の折れ線aに示した特性では、基準回転角度位置θ1 を最大進角位置に一致させているが、基準回転角度位置を最大進角位置よりも更に進角した位置に設定するようにしてもよい。例えば、図4の折れ線aに示すような点火特性を得る場合に、図3(C)に示すように基準回転角度位置をθ1 ´の位置まで進角させて、図4に直線bで示した位置を基準回転角度位置として、この基準回転角度位置θ1 ´の位置から点火位置の計測を開始させるようにしてもよい。
【0069】
機関の逆転時に無駄火が発生する位置は正回転時の基準回転角度位置よりも僅かに上死点よりに寄った位置となるので、図4に直線bで示した位置θ1 ´まで基準回転角度位置を進めておくと、機関の逆転時に無駄火が発生する位置は図4に直線cで示した位置θ2 ´となり、機関の逆転開始時の火花の発生位置は、機関の正転時の基準回転角度位置を最大進角位置に一致させた場合よりも更に遅れることになる。このように設定しておくと、機関の逆転をより確実に防止することができる。
【0070】
図5は本発明に係わる点火装置の他の構成例を示したもので、この例では、波形整形回路4及び点火位置制御装置5の構成が図1に示した例よりも更に具体的に示されている。
【0071】
図5に示された波形整形回路4は、トランジスタTR2 ないしTR4 と、抵抗R3 ないしR13と、コンデンサC1 ないしC5 と、ダイオードD2 ないしD4 とにより構成されている。この波形整形回路4においては、信号コイルWsが信号を発生していない状態で、トランジスタTR2 が導通状態にあり、トランジスタTR3 及びTR4 が遮断状態にある。信号コイルWsが負極性のパルス信号Vs1n またはVs2n を発生し、該信号がコンデンサC1 の両端の電圧によりほぼ決まるしきい値を超えると、信号コイルWs−ダイオードD2 −ダイオードD3 −抵抗R3 及びコンデンサC1 −信号コイルWsの経路で電流が流れ、この電流によりダイオードD2 の両端に生じる電圧降下によってトランジスタTR2 のベースエミッタ間が逆バイアスされる。そのため、パルス信号Vs1n またはVs2n がしきい値を超えている間トランジスタTR2 が遮断状態になり、該トランジスタTR2 のコレクタにパルス波形の第1の回転検出信号Vp1が得られる。
【0072】
また信号コイルWsが正極性のパルス信号Vs1p またはVs2p を発生し、該信号がコンデンサC2 の両端の電圧によりほぼ決まるしきい値を超えると、トランジスタTR3 及びTR4 が導通して、トランジスタTR4 のコレクタと接地間に接続された抵抗R12の両端に電圧降下が現れる。したがって、正極性のパルス信号Vs1p またはVs2p がしきい値を超えている間、抵抗R12の両端にパルス波形の電圧が現れる。
【0073】
点火位置制御装置5は、マイクロコンピュータ501と、第1の点火信号出力回路502と、トランジスタTR5 ,抵抗R14〜R16及びコンデンサC6 からなる第2の点火信号出力回路503と、ダイオードD5 ,D6 及び抵抗R17からなるオア回路504とからなっていて、波形整形回路4が出力する第1及び第2の回転検出信号Vp1及びVp2がそれぞれマイクロコンピュータのCPUの入力ポートA及びBに入力されている。第1の点火信号出力回路502は、マイクロコンピュータのCPUから信号が与えられたときに導通するスイッチ回路からなっている。
【0074】
図5に示した点火装置においては、信号コイルWsが設定位置で正極性のパルス信号Vs2p を発生して、波形整形回路4のトランジスタTR3 が導通したときにトランジスタTR5 が導通する。これにより電源回路7からトランジスタTR5 と抵抗R14とオア回路504のダイオードD6 とを通して点火回路1に点火信号が与えられる。
【0075】
またマイクロコンピュータに設けられたCPUは、図示しないタイマが点火位置計測用計数値の計数を完了したときに、出力ポートCの電位を上昇させる。この電位の上昇により点火信号出力回路502内に設けられたスイッチ素子が導通状態になって、電源回路7から点火信号出力回路502と抵抗R17とダイオードD5 とを通して点火回路1に点火信号が与えられる。
【0076】
機関の始動時においては、エキサイタコイルWexの出力電圧が低く、電源回路7が十分な出力を発生しないため、マイクロコンピュータは正常に動作することができず、点火位置の演算を行うことができない。この状態では、信号コイルWsが設定位置で第2の極性のパルス信号Vs2p を発生した時に第2の点火信号出力回路503とオア回路504とを通して点火回路1に点火信号が与えられる。したがって機関の始動時の点火位置は設定位置となる。機関の回転速度が設定値を超える領域では、マイクロコンピュータが演算した点火位置で第1の点火信号出力回路502とオア回路504とを通して点火回路1に点火信号が与えられる。
【0077】
また図5に示した例では、信号発電機のロータ3Aの第1のリラクタ3aの極弧角が第2のリラクタ3bの極弧角よりも大きく設定されていて、信号発電子が第1のリラクタ3aの回転方向の前端縁を検出する位置と、該第1のリラクタの回転方向の後端縁を検出する位置とが、エキサイタコイルの隣り合う半サイクルに跨るようになっている。
【0078】
即ちこの例では、内燃機関の正回転時に、信号発電子3Bが第1のリラクタ3aの前端縁3a1を検出する位置及び第2のリラクタ3bの後端縁3b2を検出する位置がそれぞれ基準回転角度位置及び設定位置に一致し、かつエキサイタコイルの出力電圧の他方の半サイクル(図示の例では負の半サイクル)の期間及び該他方の半サイクルの期間の後に現れる一方の半サイクル(図示の例では正の半サイクル)の期間にそれぞれ信号発電子3Bが第1のリラクタ3aの前端縁3a1及び後端縁3a2を検出し、信号発電子3Bが第1のリラクタ3aの後端縁3a2を検出した後に現れるエキサイタコイルの他方の半サイクル(図示の例では負の半サイクル)の期間に信号発電子3Bが第2のリラクタ3bの回転方向の前端縁3b1及び後端縁3b2を検出するように、第1及び第2のリラクタ3a及び3bの極弧角と、第1及び第2のリラクタ3a及び3bの角度間隔と、信号発電子3Bとロータ3Aとの間の位置関係とが設定されている。
【0079】
また図1に示した例では、点火阻止回路6が、波形整形回路4から出力される第2の回転検出信号を点火位置制御装置5から側路して、第2の極性のパルス信号で点火位置制御装置5に第2の回転検出信号が与えられるのを阻止することにより、点火回路に点火信号が与えられるのを阻止するようにしているが、図5に示した例では、エキサイタコイルが正の半サイクルの出力電圧を発生しているときに発生した第2の極性のパルス信号を波形整形回路から側路することにより、点火位置制御装置に第2の回転検出信号が与えられるのを阻止するようにしている。
【0080】
即ち、図5の点火装置では、点火阻止回路6のトランジスタTR1 のコレクタが波形整形回路4内のダイオードD4 のカソードに接続されていて、エキサイタコイルWexが正の半サイクルの電圧を発生している状態で、信号コイルWsが正極性のパルス信号Vs1p またはVs2p を出力したときに、該正極性のパルス信号Vs1p またはVs2p をトランジスタTR1 を通して側路することにより、正極性のパルス信号Vs1p またはVs2p でトランジスタTR3 にベース電流が与えられるのを阻止して、第2の回転検出信号Vp2が出力されるのを阻止すると同時に、第2の点火信号出力回路503を通して点火回路1に点火信号が与えられるのを阻止するようにしている。
【0081】
図5に示した点火装置のその他の部分の構成は図1に示した点火装置と同様である。
【0082】
図6は、図5に示した点火装置の各部の電圧波形または信号波形を示したもので、(A)はエキサイタコイルの出力電圧波形を示している。同図において実線で示した波形は機関が正回転する際にエキサイタコイルに誘起する電圧波形を示し、破線で示した波形は機関が逆回転する際にエキサイタコイルに誘起する電圧波形を示している。また図6(B)は機関の正回転時に信号発電子3Bが出力するパルス信号の波形を示し、同図(C)及び(D)はそれぞれ機関の正回転時に点火位置制御装置5に与えられる第1の回転検出信号Vp1及び第2の回転検出信号Vp2の波形を示している。
【0083】
また図6(B´)は機関の逆回転時に信号発電子3Bが出力するパルス信号の波形を示し、同図(C´)及び(D´)はそれぞれ機関の逆回転時に点火位置制御装置5に与えられる第1の回転検出信号Vp1及び第2の回転検出信号Vp2の波形を示している。
【0084】
図5に示した点火装置において、機関が正回転するときには、図6(B)に示す角度θ1 の位置で信号発電子が第1のリラクタ3aの回転方向の前端縁3a1を検出したときに信号コイルWsが第1の極性のパルス信号Vs1n を出力する。この信号は波形整形回路4により第1の回転検出信号Vp1に変換されて点火位置制御装置5に与えられる。上記角度θ1 の位置を基準回転角度位置とする。
【0085】
信号コイルWsはまた、信号発電子が角度θ3 の位置で第1のリラクタの回転方向の後端縁を検出したときに第2の極性のパルス信号Vs1p を発生する。このときエキサイタコイルは正の半サイクルの電圧を発生しているので、該パルス信号Vs1p は、点火阻止回路6を通してトランジスタTR3 から側路される。したがって、角度θ3 の位置で第2の極性のパルス信号Vs1p が発生しても、波形整形回路4は第2の回転検出信号Vp2を発生しない(図6D参照)。
【0086】
次に信号コイルWsは、信号発電子が角度θ5 の位置で第2のリラクタ3bの前端縁を検出したときに第1の極性のパルス信号Vs2n を出力する。このパルス信号は波形整形回路4により第1の回転検出信号Vp1´に変換されて点火位置制御装置5に与えられる(図6C参照)。
【0087】
信号コイルWsはまた、信号発電子が角度θ6 の位置で第2のリラクタ3bの後端縁を検出したときに第2の極性のパルス信号Vs2p を発生する。このパルス信号は波形整形回路4により第2の回転検出信号Vp2に変換されて点火位置制御装置5に与えられる。この第2の回転検出信号Vp2が発生する位置θ6 を設定位置とする。
【0088】
内燃機関が逆転したときには、エキサイタコイルの出力電圧が図6(A)に破線で示したように反転する。信号コイルWsは、信号発電子が上死点TDCの直後の角度θ7 の位置で第2のリラクタ3bの回転方向の前端縁3b2を検出したときに第1の極性のパルス信号Vs2n を出力する。この信号は波形整形回路4により第1の回転検出信号Vp1に変換されて点火位置制御装置5に与えられる。信号コイルWsは、続いて信号発電子が角度θ6 の位置で第2のリラクタ3bの後端縁3b1を検出したときに、第2の極性のパルス信号Vs2p を発生する。このときエキサイタコイルは正の半サイクルの電圧を発生しているので、この第2の極性のパルス信号は点火阻止回路6によりトランジスタTR3 から側路される。したがって角度θ6 の位置で第2の極性のパルス信号が発生しても、波形整形回路4は回転検出信号Vp2を出力しない[図6(D´)参照]。
【0089】
信号コイルWsは、次いで信号発電子が角度θ4 の位置で第1のリラクタ3aの回転方向の前端縁3a2を検出したときに第1の極性のパルス信号Vs1n を発生する。このパルス信号は波形整形回路4により第1の回転検出信号Vp1´に変換されて点火位置制御装置5に与えられる。
【0090】
次に信号コイルWsは、信号発電子が角度θ2 の位置で第1のリラクタ3aの回転方向の後端縁3a1を検出したときに第2の極性のパルス信号Vs1p を発生する。このときエキサイタコイルWexは正の半サイクルの電圧を発生しているので、該第2の極性のパルス信号Vs1p は点火阻止回路6によりトランジスタTR3 から側路される。したがって、この第2の極性のパルス信号Vs1p により波形整形回路4から点火位置制御装置5に第2の回転検出信号が与えられるのが阻止される。
【0091】
このように、図5に示した点火装置においては、機関が逆回転した際に点火位置制御装置5に第2の回転検出信号Vp2が全く与えられないため、点火位置制御装置は点火位置の演算を行うことができず、点火回路1に点火信号を与えることができない。したがって、図5に示した点火装置は、機関の逆転時に点火動作を完全に停止した状態になり、図1に示した点火装置のように、機関の逆転時に無駄火を飛ばすことがない。
【0092】
図7は、図5に示した点火装置により得られる点火特性の一例を示したもので、この例では、機関の始動時に点火位置θi が設定位置θ6 とされ、機関が始動した後、回転速度がN1 を超えたときに点火位置が第1の極性のパルス信号Vs2n の発生位置θ5 まで進角させられる。次いで回転速度が設定値N2 を超える領域で、点火位置が最大進角位置θa まで徐々に進角させられ、回転速度が設定値N3 を超える領域では点火位置が最大進角位置θa に固定される。この場合、基準回転角度位置θ1 はもっぱら点火位置の計測を開始する位置として用いられ、最大進角位置θa はマイクロコンピュータにより演算される。
【0093】
即ち、図7に示した例では、波形整形回路4が2回目に発生する第1の回転検出信号Vp1´を回転速度N1 〜N2 の領域の点火位置を決定するための信号として用いている。
【0094】
点火阻止回路6は、上記の各例に示された構成のものに限定されるものではなく、エキサイタコイルが一方の極性の半サイクルの出力電圧を発生している間に発生した第2の極性のパルス信号により点火位置制御装置5に第2の回転検出信号が与えられるのを阻止して点火回路に点火信号が与えられるのを阻止する回路であればよい。例えば図5に示した例において、図8に示したように、波形整形回路4のダイオードD4 のカソードとダイオードDi のアノードとの間に、アノードをダイオードD4 側に向けた接続したダイオードD10を接続することにより点火阻止回路6を構成することもできる。この場合は、エキサイタコイルWexの出力の負の半サイクルを一方の半サイクルとし、エキサイタコイルWexが負の半サイクルの出力電圧を発生している状態で、第1の極性(正極性)のパルス信号Vs1p またはVs2p が発生した時に該パルス信号がダイオードD10とエキサイタコイルWexとを通してトランジスタTR3 から側路されるようにする。
【0095】
上記の各例では、各リラクタが信号発電子の磁極部との対向を開始して信号コイルWsに鎖交する磁束が増加したときに該信号コイルに負極性のパルスが発生するように信号コイルが巻かれているため、負極性のパルスを第1の極性のパルスとしているが、信号コイルを逆に巻いて、各リラクタの回転方向の前端縁が信号発電子の磁極との対向を開始する際に発生する正極性のパルス信号を第1の極性のパルス信号とし、各リラクタの回転方向の後端縁が信号発電子の磁極との対向を終了する際に発生する負極性のパルス信号を第2の極性のパルス信号とするようにしてもよい。
【0096】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、信号発電機のロータに第1のリラクタと第2のリラクタとを設けて、機関の正転時に、信号発電子が第1のリラクタの回転方向の前端縁を検出する位置を基準回転角度位置とし、信号発電子が第2のリラクタの回転方向の後端縁を検出する位置を正回転時の設定位置としたので、第1のリラクタと第2のリラクタとの間の角度間隔を適宜に設定することにより進角幅を従来よりも広範囲に変えることができる。したがって、従来よりも広い進角幅を必要とする場合にも対応することができ、機関の特性を引き出すために最適な点火特性を容易に得ることができる。
【0097】
また本発明では、機関の逆転時に点火動作を停止させるために従来から設けられている点火阻止回路を利用して信号処理を行うことにより、点火位置制御装置に無用の信号が与えられるのを阻止するようにしたので、点火装置の構成を複雑にしたり、点火装置を構成するマイクロコンピュータが実行するソフトウェアの構成を複雑にしたりすることなく、進角幅を拡大する要請に応えることができる利点がある。
【0098】
特に請求項2に記載した発明によれば、機関の逆転時に点火回路に点火信号が全く与えられることがないため、機関を完全に失火させて無駄火が飛ぶのを防ぐことができ、無駄火の発生により機関に悪影響が及ぶのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる点火装置の構成例を示した回路図である。
【図2】図1の各部の電圧波形または信号波形を示した波形図である。
【図3】本発明の作用を説明するための波形図である。
【図4】図1の点火装置により得られる点火特性の一例を示した線図である。
【図5】本発明に係わる点火装置の他の構成例を示した回路図である。
【図6】図5の点火装置の各部の電圧波形または信号波形を示した波形図である。
【図7】図5の点火装置により得られる点火特性の一例を示した線図である。
【図8】図5に示した点火装置で用いる点火阻止回路の変形例を示した回路図である。
【図9】従来の点火装置の構成を示した回路図である。
【図10】図9の各部の電圧波形または信号波形を示した波形図である。
【符号の説明】
1 点火回路
2 磁石式交流発電機
3 信号発電機
3A ロータ
3a 第1のリラクタ
3b 第2のリラクタ
3B 信号発電子
4 波形整形回路
5 点火位置制御装置
6 点火阻止回路
Claims (1)
- 内燃機関により駆動される磁石式交流発電機内に設けられて機関の回転に同期して交流電圧を誘起するエキサイタコイルを点火電源とし、点火信号が与えられたときに点火コイルの一次電流を制御して該点火コイルの二次側に点火用の高電圧を誘起させる点火回路と、前記内燃機関の正回転時に該機関の上死点よりも進角側に設定された基準回転角度位置で第1の極性のパルス信号を発生し、前記上死点付近に設定された設定位置で第2の極性のパルス信号を発生する信号発電機と、前記第1の極性のパルス信号及び第2の極性のパルス信号をそれぞれ波形整形して第1の回転検出信号及び第2の回転検出信号に変換する波形整形回路と、前記第1の回転検出信号及び第2の回転検出信号を入力として両回転検出信号に基づいて決定した機関の点火位置で前記点火回路に点火信号を与える点火位置制御装置と、前記エキサイタコイルが一方の極性の半サイクルの出力電圧を発生している間に発生した第2の極性のパルス信号により前記点火位置制御装置に第2の回転検出信号が与えられるのを阻止して前記点火回路に点火信号が与えられるのを阻止する点火阻止回路とを備え、
前記内燃機関の正回転時には前記エキサイタコイルが他方の極性の半サイクルの出力電圧を発生している間に前記第2の回転検出信号が発生し、前記内燃機関の逆回転時には前記エキサイタコイルが前記一方の半サイクルの出力電圧を発生している間に前記第2の回転検出信号が発生するように、前記信号発電機の出力と磁石発電機の出力との位相関係が設定され、
内燃機関の回転速度が設定値以下の領域では前記第2の極性のパルス信号が発生した時に前記点火回路に点火信号を与えるように前記点火位置制御装置が構成されている内燃機関用点火装置において、
前記信号発電機は、
前記内燃機関の回転軸に取り付けられ、第1のリラクタと該第1のリラクタよりも機関の正回転方向に対して遅れ側に位置するように設けられた第2のリラクタとを有して、第1のリラクタの極弧角が第2のリラクタの極弧角よりも大きく設定されたロータと、
前記ロータの第1及び第2のリラクタに対向し得るように配置されていて、各リラクタの回転方向の前端縁を検出したとき及び各リラクタの回転方向の後端縁を検出したときにそれぞれ第1の極性のパルス信号及び第2の極性のパルス信号を発生する信号発電子とを備えてなり、
前記内燃機関の正回転時には、前記信号発電子が第1のリラクタの前端縁を検出する位置及び第2のリラクタの後端縁を検出する位置がそれぞれ前記基準回転角度位置及び設定位置に一致し、かつ前記エキサイタコイルの出力電圧の他方の半サイクルの期間及び該他方の半サイクルの期間の後に現れる一方の半サイクルの期間にそれぞれ前記信号発電子が前記第1のリラクタの前端縁及び後端縁を検出し、前記信号発電子が前記第1のリラクタの後端縁を検出した後に現れる前記エキサイタコイルの他方の半サイクルの期間に前記信号発電子が前記第2のリラクタの回転方向の前端縁及び後端縁を検出するように、前記第1及び第2のリラクタの極弧角と、前記第1及び第2のリラクタの角度間隔と、前記信号発電子と前記ロータとの間の位置関係とが設定されていることを特徴とする内燃機関用点火装置。
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