JP3792529B2 - ワイヤ式ウィンドレギュレータ - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、ワイヤ式ウィンドレギュレータに関し、特に、その非回転ワイヤガイド部材の取付構造及び非回転ワイヤガイド部材と窓ガラスの緩衝装置に関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】
本出願人は、窓ガラスの昇降ガイドとしてのスライドレールを不要としたワイヤ式ウィンドレギュレータとして、車両用ドア内の上方位置の前方と後方、及び下方位置の前方と後方にそれぞれワイヤガイド部材を設けるとともに、これらの上下のワイヤガイド部材間に、上下方向部分が形成されるように駆動ワイヤを巻回して、この駆動ワイヤをその上下方向部分において窓ガラス側に固定し、この駆動ワイヤを正逆巻取駆動装置により一方で巻き取り他方で繰り出すことで窓ガラスを昇降させるワイヤ式ウインドレギュレータを開発している。窓ガラスの前後位置は、例えばドアサッシュ等のガイド部材で案内する。
【0003】
このワイヤ式ウィンドレギュレータでは、その下方位置に位置するワイヤガイド部材の少なくとも一方を非回転ワイヤガイド部材となし、下方のワイヤガイド部材の上部に、窓ガラスが下限位置に達したときに、窓ガラス側固定ブラケットの下面が接触するゴム等の緩衝部材を取り付けて、窓ガラスを下限位置に確実に停止させるようにすることがある。
【0004】
この場合、緩衝部材が窓ガラスの荷重を確実に受け止めるようにするため、下方のワイヤガイド部材はピン回りに回動できないようにする必要があり、従来は、下方のワイヤガイド部材を断面形状が非円形をなす異形ピンによりブラケットに固定していた。
【0005】
しかし、上方のワイヤガイド部材がプーリの場合、プーリは断面形状が円形をなすピン(固定ボルト)によりブラケットに枢着されるため、上方のワイヤガイド部材と下方のワイヤガイド部材に共通のピン(ボルト)を使用できなくなり、部品の種類が増加するとともに、組付作業が複雑化し、ひいては製造コストが上昇してしまう。
【0006】
また、1個の異形ピンにより下方のワイヤガイド部材をブラケットに支持した場合に、緩衝部材と異形ピンの前後方向の位置がずれていると、窓ガラスが下限位置に達して窓ガラス用ブラケットが緩衝部材に接触した際に、異形ピンが窓ガラスの荷重を完全には受け止めることができないので、下方のワイヤガイド部材が回転してしまい、その結果、緩衝部材が窓ガラス側固定ブラケットと接触できない位置に移動したり、駆動ワイヤが下方のワイヤガイド部材の溝から外れてしまい、駆動ワイヤを円滑に案内できなくなるおそれがある。
【0007】
さらに、下方のワイヤガイド部材に前後方向の位置をずらせて2個の固定孔を設け、各固定孔にピンを挿入して下方のワイヤガイド部材をブラケットに支持した場合にも、緩衝部材の前後方向の位置が、前方のピンより前側の場合や後方のピンより後側の場合には、ピンが窓ガラスの荷重を受け止めることができず、下方のワイヤガイド部材が回転してしまうおそれがある。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、上方のワイヤガイド部材と下方のワイヤガイド部材に共通のボルトを使用できるようにして、部品の種類が増加したり、組付作業が複雑化しないようにし、製造コストの上昇を抑えるとともに、窓ガラスが下限位置に達したときに、窓ガラス側固定ブラケットまたは非回転ワイヤガイド部材を緩衝部材に接触させても、その衝撃力により非回転ワイヤガイド部材が回転しないようにしたワイヤ式ウィンドレギュレータを提供することを目的とする。
【0009】
【発明の概要】
本発明のワイヤ式ウィンドレギュレータは、車両用ドア内の上方位置の前方と後方、及び下方位置の前方と後方にそれぞれ備えられるワイヤガイド部材;これらの上下のワイヤガイド部材間に渡る一対の上下方向部分を有し、該上下方向部分において窓ガラス側に固定される駆動ワイヤ;及びこの駆動ワイヤを一方で巻き取り他方で繰り出して窓ガラスを昇降させる正逆巻取駆動装置;を備え、上記ワイヤガイド部材のうち、下方位置に位置するワイヤガイド部材の少なくとも一方は非回転ワイヤガイド部材からなり、上記非回転ワイヤガイド部材を固定するブラケットに、車両の側面方向から見て離隔した一対の固定穴を設け、上記非回転ワイヤガイド部材に、上記一対の固定穴の一方に対応するボルト挿通穴と、他方の固定穴に挿入されるボスとを形成したことを特徴としている。
【0010】
上記非回転ワイヤガイド部材と窓ガラス下縁に固定した窓ガラス側固定ブラケットとのいずれか一方に、窓ガラスの下降端において他方に接触する緩衝部材を設けるのが好ましい。
【0011】
さらに、緩衝部材の前後方向の位置が、非回転ワイヤガイドの上記ボルト挿通穴と上記ボスの一方と同じ、または、上記ボルト挿通穴と上記ボスの間となるように、上記緩衝部材を上記非回転ワイヤガイドまたは窓ガラス側固定ブラケットに設けるのが好ましい。
【0012】
別の態様によると、本発明のワイヤ式ウィンドレギュレータは、車両用ドア内の上方位置の前方と後方、及び下方位置の前方と後方にそれぞれ備えられるワイヤガイド部材;これらの上下のワイヤガイド部材間に渡る一対の上下方向部分を有し、該上下方向部分において窓ガラス側に固定される駆動ワイヤ;及びこの駆動ワイヤを一方で巻き取り他方で繰り出して窓ガラスを昇降させる正逆巻取駆動装置;を備え、上記ワイヤガイド部材のうち、下方位置に位置するワイヤガイド部材の少なくとも一方は非回転ワイヤガイド部材からなり、上記非回転ワイヤガイド部材を固定するブラケットに、車両の側面方向から見て離隔した一対の固定部を設け、上記非回転ワイヤガイド部材に、この一対の固定部に固定される一対の固定部を形成し、上記非回転ワイヤガイド部材と窓ガラス下縁に固定した窓ガラス側固定ブラケットとのいずれか一方に、窓ガラスの下降端において他方に接触する緩衝部材を設け、該緩衝部材の前後方向の位置を、非回転ワイヤガイドの一対の固定部と同じ、または、非回転ワイヤガイドの一対の固定部の間となるように設定したことを特徴としている
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明中の方向は、図1の左側を「前方」とし、右側を「後方」とする。
【0014】
車両ドア1の内部には、ドアサッシュ等により図示を省略した前後一対のガラスガイドが設けられている。窓ガラス2の前後両縁部はこの前後のガラスガイドに係合し、該ガラスガイドに沿って車両ドア1に対して昇降することができる。
【0015】
前後方向を向くブラケット3の前後両端部には、ボルト5により円形のプーリ(ワイヤガイド部材)6が枢着されており、ボルト5は図示を省略したインナーパネルの取付孔(図示略)を貫通しており、インナーパネルの内側において、ボルト5の先端部にナット5aを螺合することにより、ブラケット3はインナーパネルの上部に固定されている。
また、ブラケット4の前端部には、プーリ6と同様に、ボルト7により円形のプーリ(ワイヤガイド部材)8が枢着されており、ボルト7はインナーパネルの取付孔(図示略)を貫通しており、インナーパネルの内側において、ボルト7の先端部にナット7aを螺合することにより、ブラケット4はインナーパネルの下部に固定されている。
プーリ6、8は同一仕様の合成樹脂材料の成形品からなっている。
【0016】
図2、図3に拡大して示すように、ブラケット4の後端部には非回転ワイヤガイド部材11を取り付けるための取付部4aが凹設されており、また、この取付部4aに対応させて一対の固定穴(固定部)9、10が穿設されている。
【0017】
ほぼ半円形をなす非回転ワイヤガイド部材11は、合成樹脂材料の成形品からなっていて、その上面を除く周縁部には、駆動ワイヤWが係合する溝11aが形成されている。また、この非回転ワイヤガイド部材11の側面には、ボルト挿通穴(固定部)12と、ブラケット4側に向かって突出する円柱状のボス(固定部)13とが、前後方向に並べて設けられている。非回転ワイヤガイド部材11を取付部4aに嵌めて、ボス13を後方の固定穴10に嵌合するとともに、ボルト挿通穴12と前方の固定穴9とインナーパネルに穿設された取付孔(図示略)に、ボルト14を挿入して、インナーパネルの内側において、このボルト14にナット15を螺合することにより、非回転ワイヤガイド部材11はブラケット4の後端部に回転不能に固定されている。ボルト5、7、14は、それぞれ同一仕様である。
【0018】
非回転ワイヤガイド部材11のボス13と反対側の側面には、前後方向の位置がボス13とほぼ同じになるようにして、上面が開口する有底箱状の支持部材16が一体に成形されている。この支持部材16にはゴム等の弾性体からなる緩衝部材17が嵌合され、緩衝部材17の上端は非回転ワイヤガイド部材11の上面より上方に位置している(図2参照)。
【0019】
車両ドア1の内部には、図示を省略した電動駆動ユニットまたは手動ハンドルによって回転駆動される巻取ドラム(正逆巻取駆動装置)18が固定されており、この巻取ドラム18、各プーリ6、8、及び非回転ワイヤガイド部材11には、無端状の駆動ワイヤWが巻回されている。この駆動ワイヤWは、巻取ドラム18の回転方向に拘わらず、前方の上下のプーリ6と8の間の上下方向部分、及び後方のプーリ6と非回転ワイヤガイド部材11との間の上下方向部分が常に同一の方向に移動するように巻回(配索)されている。
【0020】
この駆動ワイヤWの前後の上下方向部分にはそれぞれ、互いに同じ高さに位置させて前後一対のワイヤ固定部材19、20が固着されている(図1参照)。この前方のワイヤ固定部材19は、窓ガラス2の下端部に直接固定されており、後方のワイヤ固定部材20は、図2に示すように、窓ガラス2の下端部に嵌合固定された窓ガラス側固定ブラケット21に固定されている。この窓ガラス側固定ブラケット21は、非回転ワイヤガイド部材11(緩衝部材17)に対応している。
【0021】
以上のような構成からなるワイヤ式ウィンドレギュレータは、巻取ドラム18を繰出方向及び巻取方向に回転することにより、窓ガラス2を、車両ドア1の窓開口1aを全閉する上限位置と、窓開口1aを全開する下限位置との間を昇降させることができる。
【0022】
窓ガラス2が下限位置に達すると、図5に示すように、窓ガラス側固定ブラケット21の下面が緩衝部材17の上面に接触するので、窓ガラス2は下限位置に確実に停止させられるとともに、窓ガラス2の荷重による衝撃力は緩衝部材17によって緩和される。
【0023】
また、非回転ワイヤガイド部材11が、ボルト14とボス13の2箇所でブラケット4に取り付けられているので、緩衝部材17に窓ガラス側固定ブラケット21が衝突しても、非回転ワイヤガイド部材11が、その衝撃によって回転することはなく、常に、窓ガラス2が下限位置に達したときは窓ガラス2の衝撃力を緩衝部材17で緩和でき、かつ、非回転ワイヤガイド部材11により駆動ワイヤWを円滑に案内することができる。
【0024】
さらに、図示実施形態では、緩衝部材17の前後方向の位置がボス13の前後方向の位置とほぼ同じなので、窓ガラス2が下限位置に達したときに窓ガラス側固定ブラケット21から緩衝部材17に伝わった力が非回転ワイヤガイド部材11に伝わっても、この力はボス13によって確実に受け止められるので、非回転ワイヤガイド部材11が回転することはない。
【0025】
支持部材16(緩衝部材17)の前後方向の位置は、ボルト14とほぼ同じとなるようにしてもよい。このように支持部材16(緩衝部材17)の位置を定めれば、窓ガラス2が下限位置に達したときに窓ガラス2(窓ガラス側固定ブラケット21)から緩衝部材17に伝わった力は、ボルト14によって確実に受け止められるので、非回転ワイヤガイド部材11が回転することはない。
【0026】
さらに、支持部材16(緩衝部材17)の前後方向の位置は、ボルト14とボス13との間としてもよい。このように支持部材16(緩衝部材17)の位置を定めれば、窓ガラス2が下限位置に達したときに窓ガラス2から緩衝部材17を介して非回転ワイヤガイド部材11に伝わった力は、ボス13側とボルト14側に分散され、ボス13とボルト14により確実に受け止められるので、この場合も、非回転ワイヤガイド部材11が回転することはない。
【0027】
緩衝部材17は、非回転ワイヤガイド部材11に設けることなく、窓ガラス側固定ブラケット21に設けてもよい。この態様でも、緩衝部材17の前後方向の位置がボス13とボルト14の間となるようにして、非回転ワイヤガイド部材11の上面に衝突させる。
【0028】
また、本実施形態のように、プーリ6、8及びボルト5、7、14をそれぞれ同一仕様とすれば、部品の共通化を通じ製造コストを抑えることができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、上方のワイヤガイド部材と下方のワイヤガイド部材に共通のボルトを使用できるようにして、部品の種類が増加したり、組付作業が複雑化しないようにし、製造コストの上昇を抑えるとともに、窓ガラスが下限位置に達したときに、窓ガラス側固定ブラケットまたは非回転ワイヤガイド部材を緩衝部材に接触させても、その衝撃力により非回転ワイヤガイド部材が回転しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の全体構造を示す側面図である。
【図2】同じく、ワイヤ式ウィンドレギュレータの要部の拡大側面図である。
【図3】同じく、下部ブラケットと非回転ワイヤガイドの拡大分解斜視図である。
【図4】同じく、図2をY方向から見た、一部を破断した平面図である。
【図5】同じく、窓ガラスが下限位置に達したときに、ワイヤ式ウィンドレギュレータを図2のX方向から見た図である。
【符号の説明】
1 車両ドア
1a 窓開口
2 窓ガラス
3 ブラケット
4 ブラケット
4a 取付部
5 ボルト
5a ナット
6 プーリ(ワイヤガイド部材)
7 ボルト
7a ナット
8 プーリ(ワイヤガイド部材)
9 固定穴(固定部)
10 固定穴(固定部)
11 非回転ワイヤガイド部材
11a 溝
12 ボルト挿通穴(固定部)
13 ボス(固定部)
14 ボルト
15 ナット
16 支持部材
17 緩衝部材
18 巻取ドラム(正逆巻取駆動装置)
19 ワイヤ固定部材
20 ワイヤ固定部材
21 窓ガラス側固定ブラケット
W 駆動ワイヤ

Claims (4)

  1. 車両用ドア内の上方位置の前方と後方、及び下方位置の前方と後方にそれぞれ備えられるワイヤガイド部材;
    これらの上下のワイヤガイド部材間に渡る一対の上下方向部分を有し、該上下方向部分において窓ガラス側に固定される駆動ワイヤ;及び
    この駆動ワイヤを一方で巻き取り他方で繰り出して窓ガラスを昇降させる正逆巻取駆動装置;
    を備え、
    上記ワイヤガイド部材のうち、下方位置に位置するワイヤガイド部材の少なくとも一方は非回転ワイヤガイド部材からなり、
    上記非回転ワイヤガイド部材を固定するブラケットに、車両の側面方向から見て離隔した一対の固定穴を設け、
    上記非回転ワイヤガイド部材に、上記一対の固定穴の一方に対応するボルト挿通穴と、他方の固定穴に挿入されるボスとを形成したことを特徴とするワイヤ式ウィンドレギュレータ。
  2. 請求項1記載のワイヤ式ウィンドレギュレータにおいて、上記非回転ワイヤガイド部材と窓ガラス下縁に固定した窓ガラス側固定ブラケットとのいずれか一方に、窓ガラスの下降端において他方に接触する緩衝部材を設けたワイヤ式ウィンドレギュレータ。
  3. 請求項2記載のワイヤ式ウィンドレギュレータにおいて、上記緩衝部材の前後方向の位置が、非回転ワイヤガイドの上記ボルト挿通穴と上記ボスの一方と同じ、または、上記ボルト挿通穴と上記ボスの間となるように、上記緩衝部材を上記非回転ワイヤガイドまたは窓ガラス側固定ブラケットに設けたワイヤ式ウィンドレギュレータ。
  4. 車両用ドア内の上方位置の前方と後方、及び下方位置の前方と後方にそれぞれ備えられるワイヤガイド部材;
    これらの上下のワイヤガイド部材間に渡る一対の上下方向部分を有し、該上下方向部分において窓ガラス側に固定される駆動ワイヤ;及び
    この駆動ワイヤを一方で巻き取り他方で繰り出して窓ガラスを昇降させる正逆巻取駆動装置;
    を備え、
    上記ワイヤガイド部材のうち、下方位置に位置するワイヤガイド部材の少なくとも一方は非回転ワイヤガイド部材からなり、
    上記非回転ワイヤガイド部材を固定するブラケットに、車両の側面方向から見て離隔した一対の固定部を設け、
    上記非回転ワイヤガイド部材に、この一対の固定部に固定される一対の固定部を形成し、
    上記非回転ワイヤガイド部材と窓ガラス下縁に固定した窓ガラス側固定ブラケットとのいずれか一方に、窓ガラスの下降端において他方に接触する緩衝部材を設け、
    該緩衝部材の前後方向の位置を、非回転ワイヤガイドの一対の固定部と同じ、または、非回転ワイヤガイドの一対の固定部の間となるように設定したことを特徴とするワイヤ式ウィンドレギュレータ。
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