JP3792294B2 - 表面外観の優れたシリコーンオイル含有着色樹脂成形品及びその製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコーンオイルを含有した着色熱可塑性樹脂を用いた、シルバーストリーク、黒条痕、熱変色の無い表面外観の優れた着色成形品及びその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂は電機・電子機器及びOA機器のハウジング、日用品、玩具、自動車部品等の幅広い分野で利用されているが、近年、その熱可塑性樹脂にシリコーンオイルを含有させた耐傷性及び耐摩耗性の優れた樹脂成形品が提供されるようになった。
【0003】
しかしながら、そのシリコーンオイル含有熱可塑性樹脂には、成形加工時に黒条痕、シルバーストリーク、樹脂焼け、色ムラといった外観不良現象が発生し易いという欠点があり、特に着色した場合には、上記外観不良現象の発生がより顕著となり、さらに、成形温度等を変えると色目が異なる(熱変色)という問題点があった。加えて、射出成形機で熱可塑性樹脂とシリコーンオイル及び着色剤の3成分を直接成形するとサージングが発生して成形できないという問題点もあった。
そして、上記の外観不良現象は用いる成形機の種類にもよるが、シリコーンオイルの耐熱性が低いので、一般的には成形温度が高い、成形機のスクリュウ回転数をアップしてせん断力を強くして成形した場合に発生し易いことが知られている。
【0004】
そこで、黒条痕、樹脂焼けを防止する方法として、例えば、シリコーンオイルの耐熱性を向上させるためにアルコール性水酸基を有する化合物(特開平2−145635号公報)や、スズ系安定剤(特開平1−201351号公報)、耐熱性向上剤(特開平5−163438号公報)、フェノール系抗酸化剤(特開平2−145637号公報)等を添加する方法が提案されている。又、特開平2−91158号公報にはシルバーストリーク又は樹脂焼けを防止するために熱可塑性樹脂に近い粘度のシリコーンオイルを添加する方法が開示されており、特開平5−179095号公報にはシリコーンガムを添加する方法が開示されている。さらに、特開平4−185662号公報には25℃における粘度が2万CS以上の高粘度のシリコーンオイルを配合した平均粒子径1〜2000μシリコーンオイルマスターバッチを使用する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、熱可塑性樹脂を着色した場合には、安定剤をシリコーンオイルの耐熱性を向上させるために添加しても、或いは高粘度のシリコーンオイル又はシリコーンガムを使用してみても成形温度が高いとシルバーストリーク、黒条痕が発生するという問題点がある。又、着色した熱可塑性樹脂の種類によっては熱変色が大きいという問題もある。その他、射出成形機で熱可塑性樹脂とシリコーンオイルと着色剤の3成分を直接成形するとサージングが発生して成形できないという問題がある。
【0006】
本発明は、成形温度を高くし、且つ熱可塑性樹脂に近い粘度のシリコーンオイル又はシリコーンガムに限定することなく比較的低粘度のシリコーンオイルを使用した場合でも成形加工時に、黒条痕、シルバーストリーク、熱変色といった外観不良現象が発生しないシリコーンオイル含有着色樹脂成形品、及び射出成形時にサージングが発生しない該成形品の製法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のシリコーンオイルを含有した熱可塑性樹脂を特定の着色剤、即ち顔料で着色した樹脂組成物を用いる事により、成形加工時に黒条痕、シルバーストリーク、熱変色の外観不良現象の発生が抑制されるということと射出成形する場合にはシリコーンオイル含有着色熱可塑性樹脂を造粒して成形する事により成形時にサージングの発生が無いということを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は染料で着色可能なABS、PS、PMMA、AS、PPE、PA、PC及びPETから選ばれた熱可塑性樹脂(a)に粘度が25℃において500〜20000CSであり、その含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して0.05〜10重量部であるシリコーンオイル(b)を含有せしめ、顔料で着色した樹脂組成物を用いて成形した表面外観の優れたシリコーンオイル含有着色樹脂成形品を提供するものである。
ここでいう染料とは特に制限はなく、下記の熱可塑性樹脂(a)に、従来から使用されている染料、例えば、モノアゾ・ジスアゾのアゾ系、キノフタロン系、ペリレン系、アントラキノン系、メチン系等の染料を意味する。
【0009】
熱可塑性樹脂としては、染料で着色可能な樹脂で、例えばスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂が挙げられる。好適には、染料がブリードアウトし難いスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0010】
スチレン系樹脂としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン等の単独重合体又はこれらの共重合体、あるいはこれらと共重合可能な不飽和単量体との共重合体が挙げられる。具体的には、一般用ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、耐熱性ポリスチレン(α−メチルスチレン重合体)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体(AES)、アクリルゴム−アクリロニトリル−スチレン共重合体(AAS)等が挙げられる。又、ポリマーブレンドで作ることも可能である。
【0011】
ポリアミド系樹脂(PA)としては、例えば6−ナイロンや12−ナイロン等の環状脂肪族ラクタムを開環重合したもの、6・6−ナイロン、6・10−ナイロン、6・12−ナイロン等の脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とを縮重合させたもの、11−ナイロン等のアミン酸を縮重合させたものなどを挙げることができる。
【0012】
ポリエステル系樹脂としては、芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールとを縮重合させたものが挙げられる。具体例としてはポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0013】
ポリカーボネート系樹脂としては、4・4’−ジヒドロキシジアリールアルカン系ポリカーボネートが挙げられる。具体的にはビスフェノールA系ポリカーボネート、変性ビスフェノールA系ポリカーボネート、難燃化ビスフェノールA系ポリカーボネート等を用いることができる。
【0014】
アクリル系樹脂としては、例えばメタクリル酸エステル重合体やアクリル酸エステル重合体等が挙げられ、これらの単量体としては、メタクリル酸又はアクリル酸ノメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチルエステル等が用いられ、代表的にはメチルメタクリレート樹脂(PMMA)が挙げられる。
【0015】
ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂としては、例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル1,4−フェニレン)エーテル、等のホモポリマーが挙げられが、スチレン系樹脂で変性したものも用いることができる。
これらの熱可塑性樹脂の中で、具体的にはHIPS、ABS、AS、PPE、PMMA等が好適である。又、これらの熱可塑性樹脂を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせてもちいてもよい。
【0016】
本発明の組成物を構成する成分としてのシリコーンオイルは特に限定されないが、その一般式が−Si(R)2 −O−(Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のC1 〜6 のアルキル基及びフェニル基を示す)の構造単位を有している、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル等が使用できる。それらのなかでは耐傷性に優れ、コスト的にも最も安いジメチルシリコーンオイルが好ましい。
【0017】
シリコーンオイルの粘度は、25℃において、100〜100000CSであり、100CS未満であると揮発性が高く、引火点が低いために火災などの危険があるため不適当である。一方、100000CSを越える場合は耐傷性の効果を発揮するためには多量添加する必要があり好ましくない。当該シリコーンオイルの添加量は耐傷性及び耐摩耗性を発揮する程度で良く、通常、樹脂100重量部に対して0.05〜10重量部であり、好ましくは0.5〜5重量部を配合する。0.05重量部以下ではシリコーンオイルの耐摩耗性及び耐傷性が小さくなり、10重量部を越えて添加するとシリコーンオイルが成形品の表面へ多量にブリードアウトし好ましくない。
【0018】
本発明において着色に顔料を用いる点は特に重要であり、無機顔料又は/及び有機顔料が使用される。無機顔料としては例えば、カーボンブラック、チタンホワイト、チタンイエロー、弁柄、群青、コバルトブルー、焼成顔料等が挙げられる。有機顔料としては縮合アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリン、ジオキサジン、不溶性モノアゾ、不溶性ジスアゾ、溶性アゾレーキ、ベンズイミダゾロンが使用でき、アントラキノン系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系の建染染料系有機顔料等も使用できる。これらの中で無機顔料が最も好適であり、有機顔料の縮合アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、ペリノン系・ペリレン系の建染染料系有機顔料、ベンズイミダゾロンもブリードアウトし難く好適である。使用に際しては、無機顔料と有機顔料を併用することもでき、2種類以上の顔料を組み合わせることもできる。
【0019】
本発明のシリコーンオイル含有熱可塑性樹脂を製造する方法には特に制約はなく、具体的には塊状重合又は塊状・懸濁重合等の重合段階の重合液にシリコーンオイルを添加する方法も使用できるが、着色工程を含めると樹脂の分野において一般に使用されているヘンシェルミキサー又はタンブラー等の混合機を用いてシリコーンオイルと樹脂及び顔料を混合し、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等のバッチ式溶融混練機で混練造粒する方法、スクリュウ式押出機の連続式溶融混練機で混練造粒する方法が良い。
【0020】
又、本発明のシリコーンオイル含有着色樹脂には、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤等を添加することも可能である。
【0021】
本発明の成形品を得る方法は、射出成形の場合はシリコーンオイル含有着色樹脂を一度上記混練方法で造粒し成形する必要がある。その他の成形方法、例えば、押出成形、ブロー成形に関しては特に制限はない。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例により具体的に説明する。
なお、実施例、比較例において使用した装置と材料は下記に示す通りである。
<シリコーンオイル含有着色樹脂製造装置>
タンブラー:ツインコーン型 回転数20〜40RPM 日榮電気(株)製
2軸押出機:TEMー35B 東芝機械(株)製
<成形品外観評価装置>
射出成形機−1:IS55EPN 東芝機械(株)製
射出成形機−2:IP1050 小松製作所(株)製
分光光度計:MS2020 マクベス社製
【0023】
<熱可塑性樹脂>
HIPS:スタイロン(登録商標) EXG11 旭化成工業(株)製
PMMA:デルペット(登録商標) 80N 旭化成工業(株)製
AS:スタイラック(登録商標) AS783 旭化成工業(株)製
ABS:スタイラック(登録商標) ABS220B 旭化成工業(株)製
PPE:ザイロン(登録商標) 100Z 旭化成工業(株)製
PA:レオナ(登録商標) 1300S 旭化成工業(株)製
PC:K1400 帝人(株)製
PET:TR855T 帝人(株)製
【0024】
<シリコーンオイル>
ジメチルシリコーンオイル :TSF451 東芝シリコーン(株)製
メチルフェニルシリコーンオイル:KF50 信越化学工業(株)製
アルキル変性シリコーンオイル:KF410 信越化学工業(株)製
アミノ変性シリコーンオイル:KF861 信越化学工業(株)製
【0025】
<染料>
アゾ:スミプラスト レッド HFG 住友化学(株)
キノフタロン:プラスト イエロー 8005 有本化学(株)
アンスラキノン:オイルブルー 5502 有本化学(株)
<顔料>
チタンホワイト:タイオキサイド R−TC30 タイオキサイド(株)
カーボンブラック:三菱カーボン MCF88 三菱化学(株)
ペリレン:PVファースト レッド B ヘキスト(株)
弁柄:トダカラー KN−0 戸田工業(株)
チタンイエロー:フェロカラー 42ー120B 戸田工業(株)
群青:ウルトラマリンブルー 1500 第一化成(株)
フタロシアニン:パリオゲンブルー K6470 BASF(株)
【0026】
成形品の黒条痕、シルバーストリーク、熱変色の表面外観不良現象の評価方法は以下の方法にて判定した。
<評価方法>
(1)黒条痕の発生評価
射出成形機−1を用いて、シリンダー温度を各々の着色樹脂に適した成形温度にし、乾燥が必要な樹脂は乾燥ペレットをシリンダー内に供給したまま、10分間滞留させ、次いで通常の成形サイクルに従い、鏡面プレート(50mm×90mm×2.5mm)を50枚成形する。
採取した鏡面プレートの内、黒条痕の発生しているプレートの枚数を合計する。
【0027】
(2)シルバーストリークの発生評価
射出成形機−2を用いて、各々着色樹脂に適した成形温度にし、乾燥に関しては前記と同様にし、図1の様な箱形の形状を有する鏡面金型で成形し、シルバーストリークの発生の有無を目視で判断し、(発生無し)を○、(少々発生)を△、(多数発生有り)を×とした。
【0028】
(3)熱変色の評価
射出成形機−1を用いて、シリンダー温度を各々の着色樹脂に適した成形温度にし、乾燥が必要な樹脂は乾燥ペレットにて鏡面プレート(50mm×90mm×2.5mm)を成形する。次に、各々の着色樹脂に関し、それぞれシリンダー温度を更に40℃アップして鏡面プレートを成形する。
各々の着色樹脂に関して成形温度の異なる2種類のプレートの色差を分光光度計で測定する。
【0029】
【実施例】
実施例1〜15、比較例1〜4
表1に示す色目と着色剤配合処方にて、表2に示す熱可塑性樹脂とシリコーンオイルに着色剤を添加してタンブラーで10分間混合し、取り出した後、2軸押出機を用いて混練造粒してペレットを作製した。
次に、得られたペレットで、乾燥の必要な樹脂は乾燥し、各々の評価方法に従って成形し、評価した結果を表2に示した。
【0030】
表1の実施例1〜3ではシシリコーンオイルの添加量を8重量部まで増やしても無機顔料又は有機顔料で着色すれば黒条痕、シルバーストリーク、熱変色ともに全て問題なく、表面外観の優れた成形品が得られているのに対して、比較例1〜3の場合はシリコーンオイルの添加量が2重量部でも染料で着色すると表面外観が大幅に低下することがわかる。
【0031】
シリコーンオイルの粘度に関しては、実施例4〜5のように500〜20000CSの低粘度のシリコーンオイルを添加しても、無機顔料着色成形品の表面外観は良好であるのに対して、比較例4の200000CSのシリコーンオイルを用いても、染料で着色すると黒条痕、シルバーストリーク、熱変色の外観不良が発生する。
【0032】
一方、実施例6〜8はメチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーンも同様に顔料で着色すれば、表面外観の優れた成形品が得られることを示している。又、実施例9〜15に示す如く、ABS以外の樹脂、PS、PMMA、AS、PPE、PAに関しても同様な効果が得られる。
【0033】
比較例5
実施例1に示すABS(乾燥品)とシリコーンオイル及び着色剤をタンブラーで10分間混合し、タンブラーから取り出した後、射出成形機−1にて直接成形した。その結果、成形機にてサージングが発生し、安定した成形ができなかった。
しかし、樹脂とシリコーンオイル及び着色剤の混合を一度押出機にて混練造粒したペレットでは安定した成形ができた。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】
本発明により、成形加工時に生ずる黒条痕、シルバーストリーク、及び熱変色の表面外観不良を同時に解決したシリコーンオイル含有熱可塑性樹脂成形品を工業的に製造することが可能となり、そのため、表面外観の優れた大型成形品が効率よく提供できるという効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】シルバーストリークの評価に用いた成形品の斜視図である。
Claims (2)
- 染料で着色可能なABS、PS、PMMA、AS、PPE、PA、PC及びPETから選ばれた熱可塑性樹脂(a)に粘度が25℃において500〜20000CSであり、その含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して0.05〜10重量部であるシリコーンオイル(b)を含有せしめ、顔料(c)で着色した樹脂組成物を用いて成形した表面外観の優れたシリコーンオイル含有着色樹脂成形品。
- 請求項1に記載されているシリコーンオイル含有着色樹脂組成物を造粒し、射出成形機で成形することを特徴とするシリコーンオイル含有着色樹脂成形品の製法。
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