JP3791777B2 - 電子内視鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子内視鏡システムに関し、特に、仕様や用途の異なる複数種の内視鏡を接続し、被写体の画像をモニタで観察するための電子内視鏡システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
内視鏡は、周知の通り、直接目視できない生体内等を観察することができ、医療分野を中心に診断、治療に広く使用されている。そして、近年、被写体像をCCD等の固体撮像素子によって電気信号に変換し、モニタにて観察可能とした電子内視鏡が普及している。このような内視鏡は、観察する部位に応じて種々の内視鏡が用いられる。内視鏡は、光源装置や信号処理回路を含むカメラコントローラ(信号処理装置)等に接続されて使用される。また、信号処理回路には、画質向上や被写体の強調を目的とした画像処理回路が搭載されており、コントラスト改善のために、例えば、次に示すような、対称な2次元ディジタルフィルタが用いられている。この次に示すマトリックスは、中心画素とその周囲の画素の値に対する係数を決定するものである。
【0003】
−1 −5 −1
−5 25 −5
−1 −5 −1
一方、内視鏡光学系には、光学系の簡易さ、操作性の良さから、固定焦点光学系が一般的に用いられ、その観察部位に応じて必要な被写界深度が得られるように設計されている。
【0004】
しかしながら、固定焦点光学系で被写界深度を広くすると光学系のFナンバーを大きくする必要があり、明るさが低下するといった問題が生じる。さらに、光の回折限界の理由から被写界深度の拡大には限界がある。
これに対し、光学系の被写界深度を拡大する手法は、例えば、米国特許5,748,371号や「Edward R.Dowski, Jr., W.Thomas Cathey, ”Extended depth of fieldthrough wave−front coding”, Appl.Opt.Vol.34, 1859−1866(1995)」等に開示されている。図22は、 従来例による拡大被写界深度光学系の構成を概略的に示す図である。この手法による装置は図22に示されるように、CCD等の撮像手段104と、物体101の像を撮像手段104の受光面に結像させるレンズ系103である光学系の瞳位置に配置されたキュービック位相変調マスク102と、撮像手段104からの画像データに基づいて画像を構築する画像処理装置105とを有している。
【0005】
キュービック位相変調マスク102は、一方の面は平面で、他方の面は図23に示されるようにZ=A(X3+Y3)で表される形状をなしている。図23は、このキュービック位相変調マスクの外観形状を説明するための図である。Aは、任意の係数である。すなわち、一方の面は、XY平面上の平面であり、他方の面は、XY平面に直交するZ軸方向に上記の式を満たす三次元曲面である。図23は、X及びYが−1から+1の範囲における三次元曲面の状態を説明するための図である。従って、三次元曲面形状は、係数Aに応じて変化する。
【0006】
キュービック位相変調マスク102は、これを通過する光の位相にP(X,Y)=exp(jα(X3+Y3))のずれを与える。ここで、係数αは、20よりも十分に大きな値が好ましく、これにより光学的伝達関数(以下、OTFともいう。)のレスポンスは0.2以下となり、回転非対称な収差(ボケ)による点像の大きさは、撮像手段104の画素に比べ十分に大きくなる。
【0007】
このようなキュービック位相変調マスク102を持たない通常の光学系の場合、物体101が合焦位置からずれるに従って光学的伝達関数のレスポンスの様子は、図24から図25へ変化し、物体101がさらにずれると図25から図26へと変化する。図24は、通常の光学系において物体が焦点位置にあるときの光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。図25は、通常の光学系において物体が焦点位置から外れたときの光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。図26は、通常の光学系において物体が焦点位置から図25のときよりも更に外れたときの光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。
【0008】
これに対してキュービック位相変調マスク102を持つ拡大被写界深度光学系の場合、同じずれに対するOTFのレスポンスはそれぞれ図27から図29に示されるようになり、合焦位置においてもOTFのレスポンスに低下が見られるが、合焦位置からのずれに対する変化は少ない。図27は、拡大被写界深度光学系において物体が焦点位置にあるときの光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。図28は、拡大被写界深度光学系において物体が焦点位置から外れたときの光学的伝達関数(OTF)の強度分布を示すグラフである。図29は、拡大被写界深度光学系において物体が焦点位置から図28のときよりも更に外れたときの光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。
【0009】
この光学系によって結像された画像は、画像処理装置105によって、図30に示されるキュービック位相変調マスク102のOTF特性の逆フィルタによる処理が行われることによって、図27から図29に示されるOTFに対してそれぞれ図31から図33に示されるOTFのレスポンスが得られる。図30は、拡大被写界深度光学系において光学的伝達関数(OTF)のレスポンスに対して行なわれる処理の逆フィルタの特性を示すグラフである。図31は、図27の光学的伝達関数(OTF)のレスポンスに対して図30の特性を持つ逆フィルタによる処理を行なって得られる光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。図32は、図28の光学的伝達関数(OTF)のレスポンスに対して図30の特性を持つ逆フィルタによる処理を行なって得られる光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。図33は、図29の光学的伝達関数(OTF)のレスポンスに対して図30の特性を持つ逆フィルタによる処理を行なって得られる光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。
【0010】
図31から図33に示されるOTFのレスポンスは、いずれも、通常の光学系の合焦時のOTFのレスポンスに近い形を有している。その逆フィルタとして、例えば次に示すような非対称な2次元ディジタルフィルタが用いられる。次に示すマトリックスは、中心画素とその周囲の画素の値に対する係数を決定するものである。
【0011】
次に、実際の画像を用いて説明する。通常の光学系では、物体の焦点位置からずれるにつれて、焦点ずれによるボケが生じてくる。
【0012】
これに対して、拡大被写界深度光学系では、同じずれに対して撮像手段104で得られる画像すなわち画像処理前の画像は、いずれもボケているが、キュービック位相マスク102による大きな回転非対称な収差(ボケ)が発生しているためであり、そのボケの程度はほぼ一定となっている。これらの画像に対して前述の逆フィルタによる画像処理を行うと、通常の光学系に近い焦点ずれの少ない画像となっている。つまり、図22の装置は焦点深度を拡大していることがわかる。
【0013】
さらに、これを内視鏡に応用したものが、特開2000−5127号明細書に開示されている。開示された内視鏡システムは、図34に示すように、複数種の内視鏡を接続し、被写体の画像をモニタ116で観察するための内視鏡システムである。複数種の内視鏡の内、少なくとも1つの内視鏡111は、光学系112の中にキュービック位相変調マスク等のような光位相変調マスク113を有する。さらに、内視鏡111は、撮像装置114の出力側に内視鏡の光位相変調マスク113に対応した光学的伝達関数復元手段115が備えられている。
【0014】
光学的伝達関数復元手段115は、光学系112内の光位相変調マスク113の逆フィルタに相当する復元手段を含んでいる必要がある。光学的伝達関数復元手段115は、図34に示されるように内視鏡111内部に設けられても良いし、内視鏡111が接続されかつモニタ116に映像を表示するカメラコントローラ(信号処理装置)117内に設けられても良い。118は、光源装置である。これによれば、光位相変調マスク113の種類や有無に関わらず、様々な内視鏡を接続しても、被写界深度の拡大や、高解像の画像を生成することができる。
【0015】
さらに、特開2000−266979号明細書には、内視鏡対物光学系への光位相変調マスクの実装手段が開示されている。ここでは、光学系の光位相変調マスクとして、前記光学系の被写界深度の拡大を目的としたキュービック位相変調マスク等の回転非対称な光学素子を用いている。その回転非対称な光学素子と、回転非対称な開口形状を有する明るさ絞りと、固体撮像素子との光軸に対する回転方向の位置出し手段が設けられている。これらの構成によって、回転方向の正確な位置決めを可能とし、回転非対称なボケの方向を決定することで、画像処理による正確な像の回復をすることができる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、米国特許5,748,371号や、特開2000−5127号等に示されるように、光学系に光位相変調マスクを用いて、被写界深度を拡大する技術を内視鏡に適用する場合、光位相変調マスクによる光学的伝達関数の悪化を回復し、高解像の画像を得るための光学的伝達関数復元手段が必要になる。従って、個々の光位相変調マスクに一対一に応じた復元手段が、カメラコントローラ(信号処理装置)内の画像処理回路、もしくは内視鏡内部に搭載されている必要がある。
【0017】
しかしながら、現状の一般的な内視鏡システムにおけるカメラコントローラ内の画像処理回路においては、撮像光学系を介して得られた画像の光学的伝達関数のレスポンスに対し、特定の周波数帯域を強調することによって画像の見えを調整する画像処理回路は搭載されているものの、例えば被写界深度拡大を目的とした、内視鏡光学系内に搭載した光位相変調マスクに応じた復元手段は有していないため、前記内視鏡光学系内に光位相変調マスクを有する内視鏡を接続すると、解像した画像を得ることができず、互換性を確保できない。
また、互換性を確保するために、内視鏡内部に光学的伝達関数復元手段を設ける場合、画像信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、ディジタル信号化された画像信号を映像信号に変換する信号変換部と、光学的伝達関数復元のための画像処理部と、再び映像信号から画像信号に信号変換するための信号変換部と、D/A変換部が内視鏡内部に必要となる。これらの処理のための回路は複雑であり、回路規模も大きくなるため、内視鏡本体の肥大化を招き、操作性が悪くなるという問題が生じる。
【0018】
さらに、前述したような高解像な画像を得るためには、光位相変調マスクと光学的伝達関数復元手段が一対一に対応している必要があるが、例えば、回転非対称な光学素子を光位相変調マスクとして用いた場合、光軸に対して回転するような組立上のばらつきが発生すると、光学的伝達関数復元手段との対応をとることができなくなり、高解像な画像を得ることができないという問題がある。この解決手段として、特開2000−266979号明細書に示されるように、回転非対称な光学素子の回転方向の正確な位置決めを行うための手段が開示されているが、撮像光学系の構成が複雑になるという欠点が生じる。
【0019】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、内視鏡光学系に配置した光位相変調マスクに応じた復元処理手段が搭載されていない内視鏡システムの信号処理回路に、光位相変調マスクを有した内視鏡を接続しても、被写界深度の拡大、ならびに高解像の画像を生成できる内視鏡システムを提供することを目的とする。
【0020】
本発明の電子内視鏡システムは、対物光学系の光学像を固体撮像素子によって撮像する、複数種の内視鏡が接続される電子内視鏡システムであって、少なくとも1つの内視鏡の対物光学系は、光位相変調マスクを有し、光位相変調マスクは、物体距離に応じた光学的伝達関数の変化が、光位相変調マスクを持たない対物光学系よりも小さくなるように作用するよう配置され、光位相変調マスクを有する内視鏡に対し、光位相変調マスクを有さない内視鏡と同一の信号処理装置が接続される。
【0021】
このような構成によれば、光位相変調マスクを含む対物光学系は、光位相変調マスクを含まない通常の対物光学系に対し光学的伝達関数を変更し、通常の撮像光学系よりも大きな被写界深度にわたって、光の強度にはほとんど影響しないように光学的伝達関数を変更する。そして、光位相変調マスクを含む対物光学系を用いた内視鏡の固体撮像素子からの画像信号を、信号処理装置によってモニタに映し出す映像信号に変換する。従って、本内視鏡システムによれば、内視鏡光学系に配置した光位相変調マスクに応じた復元処理手段が搭載されていない内視鏡システムの信号処理回路に、光位相変調マスクを有した内視鏡を接続しても、被写界深度の拡大、ならびに高解像の画像を生成することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1ないし図14に、本発明の内視鏡システムの第1の実施の形態を示す。
【0024】
図1は、第1の実施の形態に係る内視鏡システムの概略の構成を示す構成図である。図2は、第1の実施の形態に係る光位相変調マスクを含む撮像ユニットの構成を説明するための図である。図3は、第1の実施の形態に係る、明るさ絞りを配置した瞳変調素子の構造を説明するための概略説明図である。図4は、第1の実施の形態に係るカメラコントローラ(信号処理装置)の構成を示すブロック図である。図5ないし図8は、第1の実施の形態に係る瞳変調素子を含む撮像ユニットの物体距離71mm、13.5mm、7.2mm、4mmのときに得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。図9は、瞳変調素子を含む撮像ユニットの各物体距離の光学的伝達関数のレスポンスのシミュレーション結果を説明するための図である。図10ないし図13は、通常の光学系における撮像ユニットの物体距離71mm、13.5mm、7.2mm、4mmのときに得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。図14は、通常の光学系における各物体距離についての光学的伝達関数のレスポンスのシミュレーション結果を説明するための図である。
【0025】
本実施の形態は次のように構成されている。
【0026】
図1に示すように、固体撮像素子5と、その固体撮像素子5上の被写体の像を結像する対物光学系6とを有する内視鏡1と、内視鏡1で得られた画像信号を処理して映像信号を出力するカメラコントローラ(信号処理装置)2と、観察用の照明光を発生する光源装置3と、カメラコントローラ2からの映像信号を表示するモニタ4とを備えている。そして、本実施の形態の内視鏡システムでは、複数の種類の内視鏡1を接続することができるようになっており、複数の種類の内視鏡1のうち、少なくとも1つの内視鏡1は、その対物光学系6内に、回転非対称な対象な表面形状を有する光学素子である光位相変調マスク7が設けられている。
【0027】
撮像ユニット25は、図2に示すように、固体撮像素子5と固体撮像素子5に被写体像を結像する対物光学系6により構成される。図3(a)は、光が入射する方向から見たときの瞳変調素子7aと明るさ絞り部材8の外観を示す図である。入射光に垂直なXY平面に平行に明るさ絞り部材8が設けられ、絞り部材8の開口部を通して入射した光が瞳変調素子7aに入射する。また、図3(b)に示すように、光が入射する方向から見て明るさ絞り部材8の背面の位置に、光位相変調マスク7として、瞳変調素子7aが配置されている。
本実施の形態で用いられる固体撮像素子5は、例えば、画素ピッチが7μmのものが用いられる。
また、光位相変調マスク7として用いた瞳変調素子7aは、例えば屈折率1.523の光学的に透明なガラスで形成されており、広い被写界深度にわたって光学的伝達関数がほぼ一定となる変換手段である。さらに該瞳変調素子7aは、図3(b)に示すように、対物光学系6の光軸をZ軸とし、Z軸と直交する面内にX、Y軸としたときに、Z=A(X3+Y3)の形状をした自由曲面を有していて、本実施の形態ではA=0.051とする。
【0028】
光位相変調マスク7は、物体距離に応じた光学的伝達関数の変化が、前記光位相変調マスクを持たない対物光学系よりも小さくなるように作用し、かつ、点像の前記固体撮像素子受光面上の面積が最も小さくなる物体距離において、前記光位相変調マスクを有する前記内視鏡の対物光学系の前記点像の固体撮像素子受光面上の面積が、光位相変調マスクを持たない内視鏡の対物光学系の点像の固体撮像素子受光面上の面積よりも大きくなるよう配置されている。
【0029】
図2に示される前記撮像ユニット25のレンズデータを表1に示す。この光学系の焦点距離は1.61mm、Fナンバーは8.722であり、明るさ絞り8は第6面に、瞳変調素子7aの自由曲面部は第7面に相当する。
【0030】
【表1】
図3(a)に示すように、明るさ絞り部材8の絞りは、正方形の開口形状を有し、その形状は一辺0.408mmである。また、瞳変調素子7aのX軸と、明るさ絞り8の正方形開口の一辺は平行となるよう配置されている。
【0031】
カメラコントローラ2は、図4に示すように、接続された内視鏡1からの画像信号をディジタル信号に変換するA/D変換部9と、前記ディジタル信号を映像信号に変換する信号変換部10と、前記映像信号をモニタ4で表示可能なアナログ信号に変換するD/A変換部11とで構成されている。
【0032】
本実施の形態は、瞳変調素子7aにガラス材料を用いているが、樹脂材料を用いても良い。また、本実施の形態では瞳変調素子7aは光学的に透明なガラスが用いられているが、特定の波長のみ透過する光学フィルタ材料を用いても良い。また、本実施の形態に係る瞳変調素子7aの形状は、X軸方向、Y軸方向の光学的伝達関数の変換量を同一としているが、X軸方向、Y軸方向でその変換量が異なる構成にしても良い。例えば、明るさ絞り8の開口形状を長方形に設定しても良いし、瞳変調素子7aの自由曲面の形状をX軸方向、Y軸方向で異なる係数を使用しても良い。さらに、明るさ絞り8の形状は円形開口としても良い。また、明るさ絞り8は瞳変調素子7aと別体でなくとも良く、瞳変調素子7aに蒸着等により直接形成されていても良い。
【0033】
上述した形状の瞳変調素子7aは、波長587.56nmの平行光に対し、exp{i×2.414(X3+Y3)/0.2043}の位相変調を行う。
【0034】
観察する被写体は、前記瞳変調素子7aを含む対物光学系を通して、前記画素ピッチ7μmの固体撮像素子5上の受光面に結像し、固体撮像素子5によって電気信号(画像信号)に変換される。前記電気信号はカメラコントローラ2内のA/D変換器9にてディジタル信号に変換され、信号変換部10にて映像信号に変換される。前記映像信号はD/A変換器によってモニタ4に表示可能なアナログ信号に変換され、モニタ4に被写体が映し出される。
【0035】
前記撮像ユニット25に対し、物体距離13.5mmの位置での固体撮素子5の受光面上での点像強度分布関数(PSF)の面積がもっとも小さくなるようにピント調整を行った。このときの、物体距離を71mm、13.5mm、7.2mm、4mmとしたときの固体撮像素子5の受光面上での点像、および各物体距離での光軸上の光学的伝達関数のレスポンスについて、光学シミュレーションソフトCode-V(商品名)を用いて計算をおこなった。この結果、各物体距離における固体撮像素子受光面上での点像の面積は、それぞれ1辺を22μm、14μm、20μm、31μmとした正方形の領域内の大きさの点像として得られた。前記点像について固体撮像素子受光面をXY平面とし、各画素における光の強度(パーセント)をZ軸とした結果を図5ないし図8に示す。また、各物体距離での光軸上の光学的伝達関数のレスポンスを図9に示す。
【0036】
図5は、第1の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの物体距離71mmの時に得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。図6は、第1の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの物体距離13.5mmの時に得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。図7は、第1の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの物体距離7.2mmの時に得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。図8は、第1の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの物体距離4mmの時に得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。図9は、これらの各物体距離での光軸上の光学的伝達関数のレスポンスの計算結果を説明するための図である。
【0037】
図5から図8において、XY平面は固体撮像素子受光面に相当し、Z軸は光の強度(パーセント)である。ここで、X軸は、1、2、3、・・の画素番号を示し、Y軸は、1、2、3、・・・で画素番号を示す。なお、XYZ軸は、図10から図13、図15から図18においても同様の意味である。図9においては、Aは物体距離71mm、Bは物体距離13.5mm、Cは物体距離7.2mm、Dは物体距離4mmの時の、それぞれの光学的伝達関数のレスポンスである。なお、図14及び図19においても同様である。
【0038】
物体距離が13.5mmの場合の点像は、1辺が14μmの正方領域、つまり画素ピッチ7μmの固体撮像素子の一辺が2画素分、面積にして4画素分に相当する、図6に示される光の強度分布を持つ点像として得られる。また、物体距離が71mm、7.2mm、4mmの場合の点像は、それぞれ1辺が22μm、20μm、31μm、つまり、一辺が3.1画素分、2.9画素分、4.4画素分に相当する正方領域に、図5、7、8に示される光の強度分布を持つ点像として得られる。さらに、画素ピッチ7μmの固体撮像素子8では、ナイキスト周波数は71ラインペア/mmとなるが、図9に示したように、物体距離が4mmの位置におけるナイキスト周波数での光学的伝達関数のレスポンスが0.2以上であり、解像していることがわかる。
【0039】
比較例として、図2の撮像ユニット25で瞳変調素子7aの代わりに同材質の平行平板を用いた通常の光学系の場合について説明する。前記通常の光学系のレンズデータは表1の第7面の形状を自由曲面から平面に変更したものである。前記の瞳変調素子7aが配置された撮像ユニット25の場合と同様に、物体距離13.5mmの位置での固体撮像素子5の受光面上での点像強度分布関数(PSF)の面積がもっとも小さくなるようにピント調整を行った。このときの物体距離を71mm、13.5mm、7.2mm、4mmとしたときの固体撮像素子5の受光面上での点像、および各物体距離での光軸上の光学的伝達関数のレスポンスについて、光学シミュレーションソフトCode-V(商品名)を用いて計算をおこなった。この結果、各物体距離における固体撮像素子受光面上での点像の面積は、それぞれ1辺を16μm、1μm、14μm、36μmとした正方形の領域内の大きさの点像として得られた。前記点像について固体撮像素子受光面をXY平面とし、各画素における光の強度(パーセント)をZ軸とした結果を図10ないし図13に示す。また、各物体距離での光軸上の光学的伝達関数のレスポンスを図14に示す。
【0040】
図10は、通常の対物光学系における撮像ユニットでの物体距離71mmの時に得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。図11は、通常の対物光学系における撮像ユニットでの物体距離13.5mmの時に得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。図12は、通常の対物光学系における撮像ユニットでの物体距離7.2mmの時に得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。図13は、通常の対物光学系における撮像ユニットでの物体距離4mmの時に得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。図14において、Aは物体距離71mm、Bは物体距離13.5mm、Cは物体距離7.2mm、Dは物体距離4mmの時の光学的伝達関数のレスポンスである。
【0041】
物体距離が13.5mmの場合の点像は、1辺が1μmの正方領域、つまり画素ピッチ7μmの固体撮像素子の一辺が1画素分、面積にして1画素分に相当する、図11に示される光の強度分布を持つ点像として得られる。また、物体距離が71mm、7.2mm、4mmの場合の点像は、それぞれ1辺が16μm、14μm、36μm、つまり、一辺が2.3画素分、2画素分、5.1画素分に相当する正方領域に、図10、12、13に示される光の強度分布を持つ点像として得られる。
【0042】
さらに、図14に示したように、ナイキスト周波数での光学的伝達関数のレスポンスが0.2以上となるのは物体距離が7.2mm以上71mm未満のときであることがわかる。
【0043】
上述したように、本実施の形態における瞳変調素子7aを含む対物光学系6と、瞳変調素子7aを含まない通常の対物光学系を比較すると、通常の対物光学系の場合、物体距離7.2mmより近接すると、ナイキスト周波数における光学的伝達関数のレスポンスが0.2より下回るため解像しないが、本実施の形態における瞳変調素子7aを含む対物光学系の場合、物体距離4mmでもナイキスト周波数における光学的伝達関数のレスポンスが0.2を上回っているため解像することがわかり、被写界深度が拡大されていることがわかる。
【0044】
また、本実施の形態における瞳変調素子7aと明るさ絞り8による位相変調量αは2.414と十分小さな値に設定されているため、ナイキスト周波数における光学的伝達関数のレスポンスが0.2以上となる被写界深度内において、瞳変調素子7aによって発生する回転非対称な収差(ボケ)は最大でも数画素程度となり回転非対称な収差はモニタ上で認識できないレベルとなる。このため、例えば回転非対称なディジタルフィルタのような前記回転非対称な瞳変調素子に対応した復元手段は必要ない。
【0045】
さらに、上述したように前記瞳変調素子7aに対応した光学的伝達関数復元手段が必要ないため、前記瞳変調素子7aで発生する回転非対称なボケの方向が決定されている必要がない。つまり、明るさ絞りは正方開口でなくともよく、固体撮像素子5と瞳変調素子7aとの回転位置関係を位置決めする必要もない。そのため、対物光学系6を含む撮像ユニット25の構成は複雑な構成、調整を必要とせず、円形開口の明るさ絞りを用いた通常の対物光学系を含む撮像ユニットと同様の構成で良い。
【0046】
ここで、本実施の形態では固体撮像素子の画素ピッチを7μmのものとしたが、これに限ったものではなく、固体撮像素子5の受光面上での点像の面積が最も小さくなるピント位置における点像の大きさが、一辺を画素ピッチの2画素分、面積にして4画素分となるように明るさ絞り8の開口寸法、および瞳変調素子7aの形状を調整することで、同様の被写界深度の拡大が可能となる。
【0047】
さらに、内視鏡はその用途に応じて要求される被写界深度が異なるため、複数の撮像光学系を用意する必要があるが、本実施の形態では、通常の撮像光学系に比べ被写界深度が拡大されるため、ピント調整位置を前後することによって、同一の撮像光学系で所望の被写界深度を実現することが可能となる。
【0048】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、基本的な構成は第1の実施の形態と同じであるので、同じ構成についての説明を省略し、第1の実施の形態と異なる瞳変調素子の形状、ならびにカメラコントローラ内の信号処理回路について重点的に説明する。
【0049】
図15ないし図20は、本発明の内視鏡システムの第2の実施の形態を示す。
【0050】
図15ないし図18は、第2の実施の形態における瞳変調素子を含む撮像ユニットでの物体距離71mm、13.5mm、7.2mm、4mmのときに得られる点像のシミュレーションの結果を示す図である。図19は第2の実施の形態における瞳変調素子を含む撮像ユニットの各物体距離の光学的伝達関数のレスポンスのシミュレーション結果を示す図である。図20は第2の実施の形態におけるカメラコントローラの構成を示すブロック図である。図21は第2の実施の形態におけるカメラコントローラの変形例の構成を示すブロック図である。
【0051】
本実施の形態における瞳変調素子7bは、対物光学系6の光軸をZ軸としたときに、Z軸と直行する面内にX,Y軸を座標とし、Z=A(X3+Y3)の形状をした自由曲面を有していて、本実施の形態ではA=0.153とする。本実施の形態における光学系のレンズデータは、表1の第7面の形状を前記係数A=0.153とした自由曲面に変更したものである。
【0052】
また、図20に示す本実施の形態におけるカメラコントローラ2では、画像信号はA/D変換部9によりディジタル信号に変換され、そのディジタル信号は映像信号に変換するために信号変換部10へ与えられる。カメラコントローラ2は、信号変換部10から出力される映像信号に対し、特定の周波数帯域を強調する画像処理部12を有する。画像処理部12は、複数の画像処理回路14a、14b、・・・、14nと、映像信号を複数の画像処理回路の内の一つに接続するための選択回路15と、内視鏡内に搭載される判別手段(図示せず)あるいはユーザインターフェースからの判別手段(図示せず)によって、選択回路15を制御する制御回路13とで構成される。
【0053】
また、図21に示す本実施の形態の変形例における別のカメラコントローラ2では、画像信号はA/D変換部9によりディジタル信号に変換され、そのディジタル信号は映像信号に変換するために信号変換部10へ与えられる。カメラコントローラ2は、信号変換部10から出力される映像信号に対して画像処理を行う色相画像処理部17を有する。色相画像処理部17は、R、G、Bの各映像信号に対しそれぞれ異なった画像処理を施す、R信号用画像処理回路18a、G信号用画像処理回路18b及びB信号用画像処理回路18cと、各信号用画像処理回路18aないし18cに対し、画像処理量を制御する色相制御回路19で構成される。
【0054】
上述した形状の瞳変調素子7bは、波長587.6nmの平行光に対し、exp{i×7.243(X3+Y3)/0.2043}の位相変調を行う。
【0055】
前記撮像ユニット25に対し、物体距離13.5mmの位置ででの固体撮像素子5の受光面上での点像強度分布関数(PSF)の面積がもっとも小さくなるようにピント調整を行った。このときの、物体距離を71mm、13.5mm、7.2mm、4mmとしたときの固体撮像素子5の受光面上での点像、および各物体距離での光軸上の光学的伝達関数のレスポンスについて、光学シミュレーションソフトCode-V(商品名)を用いて計算をおこなった。この結果、各物体距離における固体撮像素子受光面上での点像の大きさは、それぞれ1辺を48μm、40μm、47μm、58μmとした正方形の領域内の大きさの点像として得られた。前記点像について固体撮像素子受光面をXY平面とし、各画素における光の強度(パーセント)をZ軸とした結果を図15ないし図18に示す。また、各物体距離での光軸上の光学的伝達関数のレスポンスを図19に示す。図19において、Aは物体距離71mm、Bは物体距離13.5mm、Cは物体距離7.2mm、Dは物体距離4mmの時の光学的伝達関数のレスポンスである。
【0056】
物体距離が13.5mmの場合の点像は、1辺が40μmの正方領域、つまり画素ピッチ7μmの固体撮像素子の一辺が5.7画素分、面積にして32.7画素分に相当する、図6に示される光の強度分布を持つ点像として得られる。また、物体距離が71mm、7.2mm、4mmの場合の点像は、それぞれ1辺か48μm、47μm、58μm、つまり、一辺が6.9画素分、6.7画素分、8.3画素分に相当する正方領域に、図15、17、18に示される光の強度分布を持つ点像として得られる。
【0057】
さらに、図19に示したように、物体距離が4mmの位置におけるナイキスト周波数での光学的伝達関数のレスポンスが0.2以上あり、解像していることがわかる。
【0058】
本実施の形態では、第1の実施の形態と比較して、瞳変調素子の形状を変更したが、瞳変調素子の形状を変更せずに、明るさ絞りの正方開口の一辺を0.72mmとしても、物体距離13.5mmでの点像は同様の効果が得られる。
【0059】
図20に示すカメラコントローラ2内の画像処理回路14の内、少なくとも一つの画像処理回路14aは、本実施の形態における対物光学系6にて得られる光学的伝達関数に対し、特定の周波数帯域のレスポンスを強調する画像処理を行い、好ましくは中から高周波数領域におけるレスポンスを強調するものである。さらに、中から高周波数領域のレスポンスの強調量は2倍から3倍である方が好ましい。
【0060】
中周波数から高周波数領域のレスポンス強調を行う画像処理回路14は、内視鏡1内に設けられる判別手段(図示せず)によって制御回路13を介し選択回路15にて選択されるが、ユーザが任意に選択できるように、ユーザインターフェースに判別手段(図示せず)を設けてもよい。
【0061】
また、図21に示す色相画像処理部17内の、R、G、Bの各信号に対する各信号用画像処理回路18aないし18cは、R、G、Bの各色ごとに光学的伝達関数のレスポンスを強調するものである。色相制御回路19はユーザの任意の選択によって各色の光学的伝達関数のレスポンスの強調量を制御し、例えば、R信号とB信号のみ光学的伝達関数のレスポンスを強調する画像処理を施し、G信号には画像処理を施さない等の画像処理がなされる。
【0062】
上述したように、本実施の形態における瞳変調素子7bを含む対物光学系6においても、物体距離4mmでのナイキスト周波数における光学的伝達関数のレスポンスが0.2を上回っているため解像することがわかり、被写界深度が拡大されていることがわかる。
【0063】
また、瞳変調素子7bの形状を変更せずに、明るさ絞りの開口寸法を変更することで、前記同様の効果を得ようとする場合、瞳変調素子7bを複数種用意する必要がない。
【0064】
さらに、図19に示したように、本実施の形態で得られる光学的伝達関数は中から高周波数領域におけるレスポンスが、図14で示される通常の対物光学系における光学的伝達関数に比べ低くなるため、カメラコントローラ2内の中から高周波数用画像処理回路14aによって中から高周波数領域を2倍から3倍強調することにより、画質の向上が図れる。
【0065】
さらに、中高周波数用画像処理回路14aによる中から高周波数領域を2倍から3倍強調する画像処理は、通常の対物光学系における光学的伝達関数に対し画像処理を行っても画質の向上を図れるものであり、通常の対物光学系を有する内視鏡を接続しても問題がなく、互換性が図れる。
【0066】
さらに、本実施の形態では中から高周波数領域に対し強調量を2倍から3倍としたが、例えば、第1の実施の形態で示した構成においては図9に示したような光学的伝達関数をもっているため、高周波数領域のみ2倍から3倍強調する画像処理を行う高周波数用画像処理回路14bを用意しても良い。
【0067】
さらに、図21で示される色相画像処理部17により、例えば、血管等を観察しやすくするために、R信号、B信号のみ強調する、または、暗部のノイズを低減するためにG信号のみ強調する等の、各色の光学的伝達関数のレスポンスを個別に強調することができるため、被写体をより詳細に観察することが可能となる。
【0068】
以上の2つの実施の形態により説明したように、本発明によれば、内視鏡光学系に配置した光位相変調マスクに応じた復元処理手段が搭載されていない内視鏡システムの信号処理回路に、光位相変調マスクを有した内視鏡を接続しても被写界深度の拡大と、高解像度の画像の生成をすることができる。
【0069】
なお、以上説明した構成から、次の付記に示す構成に特徴がある。
【0070】
[付記項]
(1)対物光学系の光学像を固体撮像素子によって撮像する、複数種の内視鏡が接続される電子内視鏡システムであって、
少なくとも1つの内視鏡の対物光学系は、光位相変調マスクを有し、
前記光位相変調マスクは、物体距離に応じた光学的伝達関数の変化が、前記光位相変調マスクを持たない対物光学系よりも小さくなるように作用するよう配置され、
前記光位相変調マスクを有する前記内視鏡に対し、前記光位相変調マスクを有さない内視鏡と同一の信号処理装置が接続されることを特徴とした電子内視鏡システム。
【0071】
このような構成によれば、光位相変調マスクを有する対物光学系は、光位相変調マスクを持たない通常の対物光学系に比べ、物体距離に応じた光学的伝達関数の変化が小さくなるように作用する。そして、光位相変調マスクを含む対物光学系を用いた内視鏡の固体撮像素子からの画像信号を、信号処理装置によってモニタに映し出す映像信号に変換する。従って、本内視鏡システムによれば内視鏡対物光学系に配置した光位相変調マスクに応じた復元処理手段が搭載されていない内視鏡システムの信号処理回路に、光位相変調マスクを有した内視鏡を接続しても、被写界深度の拡大、ならびに高解像の画像を得ることができる。
【0072】
(2)対物光学系の光学像を固体撮像素子によって撮像する、複数種の内視鏡が接続される電子内視鏡システムであって、
少なくとも1つの内視鏡の対物光学系は、光位相変調マスクを有し、
前記光位相変調マスクは、物体距離に応じた光学的伝達関数の変化が、前記光位相変調マスクを持たない対物光学系よりも小さくなるように作用するよう配置され、
前記光位相変調マスクを有する前記内視鏡と、前記光位相変調マスクを持たない内視鏡に同一の画像処理を適用することを特徴とした電子内視鏡システム。
【0073】
このような構成によれば、光位相変調マスクを有する対物光学系は、光位相変調マスクを持たない通常の対物光学系に比べ、物体距離に応じた光学的伝達関数の変化が小さくなるように作用する。そして、光位相変調マスクを持たない内視鏡に対する画像処理と同一の画像処理を、光位相変調マスクを有する内視鏡に施す。従って、本内視鏡システムによれば内視鏡対物光学系に配置した光位相変調マスクに応じた復元処理手段が搭載されていない内視鏡システムの信号処理回路に、光位相変調マスクを有した内視鏡を接続しても、被写界深度の拡大、ならびに高解像の画像を得ることができる。
【0074】
(3)前記光位相変調マスクを有する対物光学系の光学的伝達関数のレスポンスは、前記光位相変調マスクを含まない場合の対物光学系の被写界深度よりも広い物体距離にわたって、前記固体撮像素子のナイキスト周波数まで0.2以上あることを特徴とする付記項1もしくは2記載の電子内視鏡システム。
【0075】
光位相変調マスクの位相変調量によって、通常の対物光学系と比較して、光位相変調マスクを有する対物光学系の光学的伝達関数のレスポンスが、広い物体距離にわたって、固体撮像素子のナイキスト周波数まで0.2以上となる。これにより、光位相変調マスクを有する対物光学系を用いた内視鏡システムでは、広い物体距離にわたって解像した画像を得ることが可能となる。
【0076】
(4)点像の前記固体撮像素子受光面上の面積が最も小さくなる物体距離において、前記光位相変調マスクを有する前記内視鏡の対物光学系の前記点像の固体撮像素子受光面上の面積Wは、前記固体撮像素子の画素ピッチをPとしたときに、W≦36×P2を満たすことを特徴とする付記項1もしくは2、もしくは3記載の電子内視鏡システム。
【0077】
光位相変調マスクの位相変調量によって、光位相変調マスクを有する対物光学系の光学的伝達関数の固体撮像素子受光面上の点像の面積Wは、W≦36×P2となる。これにより、光位相変調マスクを有する対物光学系の光学的伝達関数のレスポンスが、広い物体距離にわたって、固体撮像素子のナイキスト周波数まで0.2以上となる。また、光位相変調マスクによって発生する非対称なボケの大きさは固体撮像素子の数画素程度と十分に小さいため、非対称ディジタルフィルタのような光学的伝達関数復元手段を必要としない。
【0078】
(5)前記光位相変調マスクは、前記対物光学系の光軸をZ軸とし、互いに直交する2軸をX、Yとしたとき、波長587.56nmの光に対して
exp{i×α(X3+Y3)} (但し、|X|≦1、|Y|≦1)
の位相の変換を行うものであり、前記αは8以下の係数であることを特徴とする付記項1もしくは2、もしくは3もしくは4記載の電子内視鏡システム。
【0079】
光位相変調マスクによって変換される位相は、前記対物光学系の光軸をZ軸としたときに互いに直交する2軸をX、Yとした場合、波長587.56nmの光に対してexp{i×α(X3+Y3)}において、係数αが8以下となる。これにより、光位相変調マスクによって変更された光学的伝達関数のレスポンスが、固体撮像素子のナイキスト周波数まで0.2以上となる。
【0080】
(6)前記画像処理は、回転対称なディジタルフィルタであることを特徴とする付記項2記載の電子内視鏡システム。
【0081】
光位相変調マスクに対応した回転非対称なディジタルフィルタではなく、光位相変調マスクを持たない内視鏡に対して適用されている回転対称なディジタルフィルタを、光位相変調マスクを有する内視鏡に対し施す。これにより、光位相変調マスクを持たない内視鏡用に構成されたディジタルフィルタを有する信号処理装置に対し、光位相変調マスクを有する内視鏡を接続しても複写界深度の拡大、高画質な画像を得られる。
【0082】
(7)前記位相変調マスクと前記固体撮像素子の対物光学系の光軸に対する回転方向の制限を行わないことを特徴とする付記項1もしくは2記載の電子内視鏡システム。
【0083】
光位相変調マスクに対応した光学的伝達関数復元手段が必要ないため、光位相変調マスクの光軸に対する回転方向の位置決めが必要なくなる。例えば光位相変調マスクに、光軸に対して直交する平面に互いに直交するX、Y軸としたとき光軸方向に自由局面を有する光学素子を用いた場合、固体撮像素子の縦、横方向に対し、前記光学素子の自由曲面部のX、Y軸は、光軸に対して回転方向の制限を設ける必要が無い。これにより、前記光位相変調マスクと固体撮像素子を含む撮像光学系の構成に、光軸方向の回転規制機構、あるいは回転調整機構といった複雑な構成を必要としない。
【0084】
(8)前記対物光学系内に配置される明るさ絞りの開口形状は円形であること特徴とする付記項1もしくは2記載の電子内視鏡システム。
【0085】
光位相変調マスクに対応した光学的伝達関数復元手段が必要ないため、光位相変調マスクの光軸に対する回転方向の位置決めが必要なくなり、明るさ絞りの開口は円形でよい。これにより、前記明るさ絞りと前記光位相変調マスクの光軸方向に対する回転規制が必要なくなり、固体撮像素子を含む撮像光学系の構成に、光軸方向の回転規制機構、あるいは回転調整機構といった複雑な構成を必要としない。
【0086】
(9)点像の前記固体撮像素子受光面上の面積が最も小さくなる物体距離において、前記光位相変調マスクを有する前記内視鏡の対物光学系の前記点像の固体撮像素子受光面上の面積が、光位相変調マスクを持たない内視鏡の対物光学系の点像の固体撮像素子受光面上の面積よりも大きいことを特徴とする付記項4記載の電子内視鏡システム。
【0087】
光位相変調マスクの位相変調量によって、光位相変調マスクを有する対物光学系の固体撮像素子受光面上の点像の面積は、光位相変調マスクを持たない対物光学系の固体撮像素子受光面上の点像の面積に比べ大きくなる。これにより、光位相変調マスクを有する対物光学系の光学的伝達関数のレスポンスが、広い物体距離にわたって、固体撮像素子のナイキスト周波数まで0.2以上となる。
【0088】
(10)前記画像処理は、特定の空間周波数帯域における前記光学的伝達関数のレスポンスを強調する画像処理であることを特徴とする付記項2記載の電子内視鏡システム。
【0089】
光位相変調マスクによって光学的伝達関数のレスポンスが低下した空間周波数に対し、レスポンスを強調する画像処理がなされる。これにより、画質の向上が図れる。
【0090】
(11)前記画像処理は中周波数領域から高周波数領域にかけて前記光学的伝達関数のレスポンスを2倍ないし3倍強調することを特徴とする付記項10記載の電子内視鏡システム。
【0091】
光位相変調マスクによって光学的伝達関数のレスポンスが低下する中周波数域から高周波数域にかけて、レスポンス強調する画像処理がなされる。これにより、画質の向上が図れる。
【0092】
(12)前記画像処理は前記点像の前記固体撮像素子受光面上の面積によって、前記光学的伝達関数のレスポンス強調する周波数帯域を決定することを特徴とする付記項4もしくは10記載の電子内視鏡システム。
【0093】
前記点像の大きさによって光学的伝達関数のレスポンスが低下する空間周波数帯域が異なるため、低下した周波数帯域に対し、レスポンス強調する画像処理がなされる。これにより、画質の向上が図れる。
【0094】
(13)前記画像処理は、R、G、Bの各信号に対し個別に光学的伝達関数のレスポンスを強調することを特徴とする付記項10記載の電子内視鏡システム。
【0095】
光位相変調マスクによって光学的伝達関数のレスポンスが低下した空間周波数に対し、色を選択してレスポンス強調する画像処理がなされる。これにより、被写体の色により画像強調の効果が図れる。
【0096】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【0097】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、内視鏡光学系に配置した光位相変調マスクに応じた復元処理手段が搭載されていない内視鏡システムの信号処理回路に、光位相変調マスクを有した内視鏡を接続しても、被写界深度の拡大、ならびに高解像の画像を生成できる内視鏡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態を示す内視鏡システムの概略の構成を示す構成図である。
【図2】 第1の実施の形態に係る光位相変調マスクを含む撮像ユニットの構成を説明するための図である。
【図3】 第1の実施の形態に係る、明るさ絞りを配置した瞳変調素子の構造を説明するための概略説明図である。
【図4】 第1の実施の形態に係るカメラコントローラの構成を示すブロック図である。
【図5】 第1の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの物体距離71mmの時に得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。
【図6】 第1の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの物体距離13.5mmの時に得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。
【図7】 第1の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの物体距離7.2mmの時に得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。
【図8】 第1の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの物体距離4mmの時に得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。
【図9】 第1の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの各物体距離における光学的伝達関数のレスポンスのシミュレーション結果を説明するための図である。
【図10】 通常の対物光学系における撮像ユニットでの物体距離71mmの時に得られる点像のシミュレーション結果を説明するための図である。
【図11】 通常の対物光学系における撮像ユニットでの物体距離13.5mmの時に得られる点像のシミュレーション結果するための図である。
【図12】 通常の対物光学系における撮像ユニットでの物体距離7.2mmの時に得られる点像のシミュレーション結果するための図である。
【図13】 通常の対物光学系における撮像ユニットでの物体距離4mmの時に得られる点像のシミュレーション結果するための図である。
【図14】 図14は、通常の光学系における各物体距離の光学的伝達関数のレスポンスのシミュレーション結果を説明するための図である。
【図15】 第2の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの物体距離71mmの時に得られる点像のシミュレーション結果の図である。
【図16】 第2の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの物体距離13.5mmの時に得られる点像のシミュレーション結果の図である。
【図17】 第2の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの物体距離7.2mmの時に得られる点像のシミュレーション結果の図である。
【図18】 第2の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの物体距離4mmの時に得られる点像のシミュレーション結果の図である。
【図19】 第2の実施の形態を示す瞳変調素子を含む撮像ユニットでの各物体距離における光学的伝達関数のレスポンスのシミュレーション結果の図である。
【図20】 第2の実施の形態におけるカメラコントローラの構成を示すブロック図である。
【図21】 第2の実施の形態におけるカメラコントローラの変形例の構成を示すブロック図である。
【図22】 従来例による拡大被写界深度光学系の構成を概略的に示す図である。
【図23】 従来例によるキュービック位相変調マスクの外観形状を説明するための図である。
【図24】 通常の光学系において物体が焦点位置にあるときの光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。
【図25】 通常の光学系において物体が焦点位置から外れたときの光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。
【図26】 通常の光学系において物体が焦点位置から図25のときよりも更に外れたときの光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。
【図27】 拡大被写界深度光学系において物体が焦点位置にあるときの光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。
【図28】 拡大被写界深度光学系において物体が焦点位置から外れたときの光学的伝達関数(OTF)の強度分布を示すグラフである。
【図29】 拡大被写界深度光学系において物体が焦点位置から図20のときよりも更に外れたときの光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。
【図30】 拡大被写界深度光学系において光学的伝達関数(OTF)のレスポンスに対して行なわれる処理の逆フィルタの特性を示すグラフである。
【図31】 図27の光学的伝達関数(OTF)のレスポンスに対して図30の特性を持つ逆フィルタによる処理を行なって得られる光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。
【図32】 図28の光学的伝達関数(OTF)のレスポンスに対して図30の特性を持つ逆フィルタによる処理を行なって得られる光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。
【図33】 図29の光学的伝達関数(OTF)のレスポンスに対して図30の特性を持つ逆フィルタによる処理を行なって得られる光学的伝達関数(OTF)のレスポンスを示すグラフである。
【図34】 複数種の内視鏡を接続し、被写体の画像をモニタで観察するための従来の内視鏡システムの概略の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
1、111・・・内視鏡
2、117・・・カメラコントローラ
3、118・・・光源装置
4、116・・・モニタ
5・・・固体撮像素子
6・・・対物光学系
7・・・光位相変調マスク
7a・・・瞳変調素子
8・・・明るさ絞り部材
12・・・画像処理部
14・・・画像処理回路
17・・・色相画像処理部
25・・・撮像ユニット
101・・・物体
103・・・レンズ系
112・・・光学系
113・・・光位相変調マスク
114・・・撮像装置
115・・・光学的伝達関数復元手段
Claims (3)
- 光位相変調マスクを有さない対物光学系を備える電子内視鏡を接続可能な信号処理装置に接続可能な、光位相変調マスクを有する対物光学系を備える電子内視鏡であって、
前記光位相変調マスクは、物体距離に応じた光学的伝達関数の変化が、前記光位相変調マスクを有さない対物光学系よりも小さくなるように作用するよう配置され、
前記光位相変調マスクを有する対物光学系の光学的伝達関数のレスポンスは、前記光位相変調マスクを有さない対物光学系の被写界深度よりも広い物体距離にわたって、前記固体撮像素子のナイキスト周波数まで0.2以上あることを特徴とする電子内視鏡。 - 点像の前記固体撮像素子受光面上の面積が最も小さくなる物体距離において、前記光位相変調マスクを有する対物光学系の前記点像の固体撮像素子受光面上の面積Wは、前記固体撮像素子の画素ピッチをPとしたときに、W≦36×P 2 を満たすことを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡。
- 前記光位相変調マスクは、前記対物光学系の光軸をZ軸とし、互いに直交する2軸をX、Yとしたとき、波長587.56nmの光に対して
exp{i×α(X 3 +Y 3 )} (但し、|X|≦1、|Y|≦1)
の位相の変換を行うものであり、前記αは8以下の係数であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子内視鏡。
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