JP3790976B2 - 水性絵具組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水性絵具組成物に関する。さらに詳しくは描画時において着色した不純物が基底材や重色した上部の絵具などに滲み出し作品が汚染することを防止できる水性絵具組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水性絵具等の水性描画材は、描画時において、染料や顔料の不純物が溶け出し塗膜の周りに滲み出す(以下、ブリードという。)性質を有していた。
【0003】
かかるブリードに対しては、特に解決手段は講じられておらず、わずかにインクジェット用インキにおいてポリエチレンイミンを添加することによってブリードを防止する手段が開示されている。この技術では、インキに配合されているアニオン系界面活性剤とポリエチレンイミンとの反応により、インキがゲル化することを防止するためにインキ製造時において最初にノニオン系界面活性剤と顔料(アニリンブラック)を混合してから添加する必要があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アニリンブラックの不純物は界面活性剤により溶出しているため、ブリードを防止するためにはポリエチレンイミンの配合量を増大させる必要があった。このことは、同時にさらにノニオン系界面活性剤も多量に添加する必要があり、さらに不純物の溶出を引き起こす原因となっていた。その結果としてこの技術はブリードの問題を解決するものとして、満足できるものではなかった。
【0005】
このように現在に至るまでブリードを抑える技術として有効なものは特に開示されておらず、まして水性絵具についてはその技術は皆無に等しいものであった。したがって、染料をレーキ化させたレーキ顔料やアニリンブラックを使用した水性絵具は描画時において、紙などの基底材あるいはメジウムに顔料の製造時に生成する着色した不純物がにじみ出るため、作品を汚染する問題は未だ解決されていないのが現状である。
【0006】
本発明の課題は、かかるブリードに対する問題を解消した水性絵具組成物を提供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者はかかる問題を解決しようと鋭意検討した結果、水性絵具にモンモリロナイト系の粘土鉱物を配合し、顔料と一緒に分散させることによりブリードを防止できることを見いだした。請求項1の発明は、ブリード防止成分としてモンモリロナイト系の粘土鉱物を含む水性絵具組成物である。
【0008】
本発明に係る水性絵具がブリードを防止できる理由としては、モンモリロナイト系の粘土鉱物の吸着能が顔料の不純物を吸着し、基底材などに不純物が溶出することを防止するためであると思料される。また、モンモリロナイト系の粘土鉱物は絵具の増粘剤としても効果を有し、描画性能に影響を及ぼすものではなく、絵具の配合成分としても優れたものである。
【0009】
また、本発明者は、顔料としてレーキ顔料またはアニリンブラックを使用した場合であってもブリードを防止する効果が有効に発揮されることを見いだした。
すなわち、レーキ顔料をベースにしている水性絵具組成物は、色が鮮明であるという利点を有する。また、アニリンブラックはカーボンブラックでは表現できない黒色を表現することができるという利点を有する。この様に、これらの顔料は絵具組成物の顔料としての性質として優れた特徴を有するものの、実際にはほとんど用いられていなかった。この最大の理由は、これらの顔料等を水性絵具組成物の着色材として使用した場合に、これらの顔料に不純物が多く含まれていることから、絵具組成物がブリードしやすくなるという問題を有していたためである。本発明はこれらのレーキ顔料またはアニリンブラックを用いた場合であっても、配合される粘土鉱物の吸着能によって効果的にブリードを防止することができる。請求項2の発明は、顔料としてレーキ顔料またはアニリンブラックのうち少なくとも一方を含む請求項1記載の水性絵具組成物である。
【0010】
また、本発明で用いられるモンモリロナイト系の粘土鉱物としては活性白土またはベントナイトを好適に使用することができる。特に、活性白土が好適である。請求項3の発明は、モンモリロナイト系の粘土鉱物として活性白土及び/又はベントナイトである請求項1又は2に記載の水性絵具組成物である。
【0011】
さらに、本発明者は、顔料とモンモリロナイト系粘土鉱物との組み合わせを鋭意検討した結果、レーキ顔料及びアニリンブラックとの組み合わせにおいて好適なものを見いだした。請求項4の発明は、少なくともレーキ顔料とモンモリロナイト系の粘土鉱物として活性白土を含む請求項1記載の水性絵具組成物である。また、請求項5の発明は、少なくともアニリンブラックとモンモリロナイト系の粘土鉱物としてベントナイト及び/又は活性白土である請求項1記載の水性絵具組成物である。請求項6の発明は、少なくともアニリンブラックとモンモリロナイト系の粘土鉱物として活性白土を含む請求項1記載の水性絵具組成物である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、モンモリロナイト系粘土鉱物を含有することを特徴とする水性絵具組成物である。本発明でいう水性絵具とは水彩絵具及びエマルジョン絵具が含まれるが限定されない。しかし水彩絵具(ポスターカラーを含む。)及びエマルジョン絵具に好適に使用される水性絵具である。ここで、水彩絵具とは、例えば、水性溶媒に水溶性樹脂を溶解し、顔料などを分散させ、水溶性の塗膜を形成することができる絵具をいう。ここで、添加する樹脂の量を調整することにより、ポスターカラーや水彩絵具などの多種の性質を有する絵具とすることができる。一方、エマルジョン絵具とは、例えば、水溶性溶媒と合成樹脂エマルジョンを含有し、描画後塗膜の溶媒が蒸発した後はエマルジョンに含まれる樹脂が造膜し、塗膜となる耐水性の絵具である。エマルジョン絵具はその耐水性より、壁画用絵具として使用されることが多く、雨などに長期間さらされると塗膜の端からブリードを起こし、壁画用絵具としての役割を担うことが難しくなるという問題を有していた。本発明のエマルジョン絵具は耐水性を発揮することができ、かかる点が改善されている。
【0013】
本発明の水彩絵具は、顔料、モンモリロナイト系粘土鉱物、水溶性樹脂、及び水を主要成分とし、一方、エマルジョン絵具は、顔料、モンモリロナイト系粘土鉱物、合成樹脂エマルジョン、水を主要成分とする組成物である。
【0014】
顔料は絵具を着色するために配合されるものである。顔料は特に限定されるものではないが、本発明においては、ブリードが基底材などに不純物が溶出することに起因する現象であるから、ブリードの防止という本発明の効果を奏するためには不純物を含む顔料であっても効果的にブリードを防止することができる。具体的には各種顔料の他、従来ブリードがおこりやすいとして水性絵具への使用が控えられていたアニリンブラック、レーキ顔料であっても使用可能であり、効果的にブリードを防止することができる。
【0015】
顔料の配合量は60重量%(以下、単に%と略記する。)以下であることが好ましい。特に最適な範囲としては10〜40%の配合量が最適である。この量より過剰に配合すると粘度が上がりすぎ描画性に影響を及ぼすのみならず、塗面への定着性が悪くなる傾向があるため必ずしも最適であるとはいい難い。一方、この範囲より少ない場合は着色力に欠け、絵具としての用途には必ずしも最適であるとはいい難い。なお、顔料の配合量は水彩絵具とエマルジョン絵具の双方ともこの配合量であることが好ましい。
【0016】
モンモリロナイト系粘土鉱物は基底材などに溶出している不純物を吸着させ、ブリードを防止するために配合するものであり、吸着能を有することが必要である。本発明でいうモンモリロナイト系粘土鉱物とは、スメクタイト群粘土鉱物の一つとしてのモンモリロナイトを意味する広義のものをいう。具体的には活性白土、ベントナイト、ソジウムモンモリロナイト、有機ベントナイトなどが好適に使用できる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用しても特に問題はない。中でも特に吸着能に優れた、活性白土及びベントナイトが最適である。活性白土としては商品名「フロナイト101」、「フロナイト113」(日本活性白土社製)が、ベントナイトとしては商品名「ベントナイト特印」(豊順洋行社製)が好適に使用できる。
【0017】
モンモリロナイト系粘土鉱物の配合量は、格別限定されないが、顔料に対して40%以上200%以下であることが最適である。モンモリロナイト系粘土鉱物は顔料の不純物を吸着させるために配合するものであるから、ブリードを防止し得る量を勘案して、顔料に対しての添加量にて適宜配合すればよい。具体的には絵具全量に対して4〜20%が最適である。この範囲より過剰に配合した場合は粘度が上がりすぎ描画性に影響を与えるのみならず、着色力が低下する。また絵具の経時安定性が悪くなる。一方、この範囲より少ない場合は、溶出した不純物の全量を吸着せずブリードを最適かつ効果的に防止することが困難である。
【0018】
水溶性樹脂は顔料を定着させ、顔料を分散させるために水彩絵具に用いられるものである。水溶性樹脂は各種水溶性樹脂として市販されているものを有効に使用することができるが、具体的にはアラビアガム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが好適に使用可能である。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用しても特に問題はない。これらの中でも特にアラビアガムが、顔料の分散性、描画性に与える影響等の点において最適である。アラビアガムは特にそのグレードは問わないが、分子量22万〜30万程度のものが好ましい。
【0019】
水溶性樹脂の配合量は0.1〜60.0%が好ましい。但し、水彩絵具はその性質により樹脂の配合量を調整することによりポスターカラーや一般描画用水彩絵具など異なる特徴を有する絵具とすることができる。あらゆる種類の水彩絵具の場合、この範囲より過剰に配合した場合は着色力がなくなり塗膜に光沢が出る点で好ましくない。一方、この範囲より少ない場合は塗面への定着性が悪くなる。また、エマルジョン絵具の場合は、合成樹脂エマルジョンの一部として絵具組成物に配合される場合があり、この範囲より過剰に配合した場合、耐水性が悪くなる。中でも0.5〜40%が最適な配合量である。
【0020】
エマルジョン絵具に用いる合成樹脂エマルジョンは顔料を定着させ、顔料を分散させるために配合するもので、特に乾燥後塗膜が耐水性になる点で好ましい。合成樹脂エマルジョンとしては特に限定されるものではないが、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−ベオバ樹脂、エチレン−塩化ビニル樹脂、アクリル−ベオバ樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン樹脂、スチレン樹脂の合成樹脂エマルジョンが好適に使用できる。特に顔料の分散性、製造コストなどを考慮すると、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂が最適である。アクリル樹脂としては「モビニール700」(ヘキスト合成化学社製)、酢酸ビニル樹脂としては「RX−638A」(日本カーバイド社製)、酢酸ビニル−アクリル樹脂としては「PL−667」(日本カーバイド社製)が好適に使用可能である。
【0021】
水性エマルジョンの配合量は7〜80%が好適な範囲である。この範囲より過剰に配合した場合は着色力がなくなり、光沢が出る点で好ましくない。一方、この範囲より少ない場合は塗面への定着性が悪くなり、塗膜がひび割れるおそれがある。また塗膜の耐水性が悪くなる点で好ましくない。特に10〜65%が最適な配合量である。
【0022】
水は水溶性高分子の溶解及び絵具の粘度調節のために必要に応じて配合するものである。この配合量は70%までに抑えることが好ましい。中でも10〜50%が最適である。これらの範囲より過剰に配合した場合は着色力がなくなり粘度が下がりすぎる点で好ましくない。一方、配合量を少なくしすぎた場合は他の成分の配合量との関係において粘度が上がりすぎ、描画性に影響を及ぼす場合がある。
【0023】
本発明の絵具組成物には上記成分の他に必要に応じて防腐剤、界面活性剤、消泡剤等を適宜配合してもよい。防腐剤としては「プロクセルXL−2」(ベンゾイソチアゾリン系、ゼネカ社製)、界面活性剤としては「ラベリンFW」(アニオン系界面活性剤、第一工業製薬社製)が例示できる。これらは必要に応じて、1.0%程度までの量でそれぞれ配合すればよい。また、消泡剤としては「ノプコ8034L」(シリコン系、サンノプコ社製)等が好適に使用できるものとして例示できる。これは必要に応じて0.5%程度までの量を配合すればよい。
【0024】
本発明に係る水性絵具は例えば次の手順により製造することができる。水彩絵具の製造方法としては、
1.水溶性樹脂を水に溶解する。
2.1.と顔料、モンモリロナイト系粘土鉱物、水を秤量し、均一になるまでデゾルバーで攪拌する。
3.2.を3本ロールミルに3回通過させ分散させる。
方法が例示できる。
【0025】
また、エマルジョン絵具の製造方法としては、
1.顔料、モンモリロナイト系粘土鉱物、水性エマルジョン、水を秤量し均一になるまでデゾルバーで攪拌する。
2.1.を3本ロールミルに3回通過させ、分散させる。
方法が例示できる。
【0026】
本発明は、ブリード防止成分としてモンモリロナイト系の粘土鉱物を含む水性絵具組成物であるから、ブリードを引き起こす不純物を吸着し溶出させないことからブリードを極めて効果的に防止することができる。従って、例えば、エマルジョン絵具の使用用途として、本発明の水性絵具を壁画用絵具として使用した場合、雨等の水分に当たっても経時によるブリードを発生させることがない耐雨性に優れた壁画用絵具を提供することができる。
【0027】
【実施例】
次の実施例1乃至13、比較例1乃至7の組成を有する水性絵具組成物を調整した。なお、各実施例、比較例で使用した各材料の詳細は下記の通りであり、%は重量%を意味する。
アニリンブラック・・・・商品名「アニリンブラックNO.25」(C.I.50440,東京色材(株)社製)
レーキ顔料・・・・商品名「バイオレットOS」(C.I.148070,野間化学(株)社製)
活性白土・・・・商品名「フロナイト101」(日本活性白土(株)製)
・・・・商品名「フロナイト113」(日本活性白土(株)製)
合成樹脂エマルジョン・・・・商品名「モビニール700」(アクリル樹脂エマルジョン,ヘキスト合成(株)製)
界面活性剤・・・・商品名「ラベリンFW」(アニオン系界面活性剤,第一工業化学社製)
防腐剤・・・・商品名「プロクセルXL−2」(ゼネカ社製)
消泡剤・・・・商品名「ノプコ8034L」(サンノプコ(株)製)
【0028】
(実施例1)
アニリンブラック 14.7%
フロナイト101 5.9%
アラビアガム 9.6%
デキストリン 12.5%
グリセリン 5.2%
水 51.7%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.2%
水に溶解させたアラビアガム、デキストリンに上記のその他の材料を追加し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させて水彩絵具を得た。
【0029】
(実施例2)
アニリンブラック 14.7%
フロナイト113 5.9%
アラビアガム 9.6%
デキストリン 12.5%
グリセリン 5.2%
水 51.7%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.2%
水に溶解させたアラビアガム、デキストリンに上記のその他の材料を追加し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させて水彩絵具を得た。
【0030】
(実施例3)
アニリンブラック 14.7%
ベントナイト 5.9%
アラビアガム 9.6%
デキストリン 12.5%
グリセリン 5.2%
水 51.7%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.2%
水に溶解させたアラビアガム、デキストリンに上記のその他の材料を追加し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させて水彩絵具を得た。
【0031】
(実施例4)
バイオレッドOS 14.7%
フロナイト101 5.9%
アラビアガム 9.6%
デキストリン 12.5%
グリセリン 5.2%
水 51.7%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.2%
水に溶解させたアラビアガム、デキストリンに上記のその他の材料を追加し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させて水彩絵具を得た。
【0032】
(実施例5)
バイオレッドOS 14.7%
フロナイト113 5.9%
アラビアガム 9.6%
デキストリン 12.5%
グリセリン 5.2%
水 51.7%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.2%
水に溶解させたアラビアガム、デキストリンに上記のその他の材料を追加し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させて水彩絵具を得た。
【0033】
(実施例6)
バイオレッドOS 14.7%
ベントナイト 5.9%
アラビアガム 9.6%
デキストリン 12.5%
グリセリン 5.2%
水 51.7%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.2%
水に溶解させたアラビアガム、デキストリンに上記のその他の材料を追加し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させて水彩絵具を得た。
【0034】
(実施例7)
アニリンブラック 21.5%
フロナイト101 8.6%
ヒドロキシエチルセルロース 0.4%
プロピレングリコール 6.8%
防腐剤 0.1%
界面活性剤 0.7%
モビニール700 25.8%
消泡剤 0.2%
水 35.9%
各材料を混合し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させてエマルジョン絵具を得た。
【0035】
(実施例8)
アニリンブラック 21.5%
フロナイト113 8.6%
ヒドロキシエチルセルロース 0.4%
プロピレングリコール 6.8%
防腐剤 0.1%
界面活性剤 0.7%
モビニール700 25.8%
消泡剤 0.2%
水 35.9%
各材料を混合し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させてエマルジョン絵具を得た。
【0036】
(実施例9)
アニリンブラック 21.5%
ベントナイト 8.6%
ヒドロキシエチルセルロース 0.4%
プロピレングリコール 6.8%
防腐剤 0.1%
界面活性剤 0.7%
モビニール700 25.8%
消泡剤 0.2%
水 35.9%
各材料を混合し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させてエマルジョン絵具を得た。
【0037】
(実施例10)
バイオレットOS 21.5%
フロナイト101 8.6%
ヒドロキシエチルセルロース 0.4%
プロピレングリコール 6.8%
防腐剤 0.1%
界面活性剤 0.7%
モビニール700 25.8%
消泡剤 0.2%
水 35.9%
各材料を混合し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させてエマルジョン絵具を得た。
【0038】
(実施例11)
バイオレットOS 21.5%
フロナイト113 8.6%
ヒドロキシエチルセルロース 0.4%
プロピレングリコール 6.8%
防腐剤 0.1%
界面活性剤 0.7%
モビニール700 25.8%
消泡剤 0.2%
水 35.9%
各材料を混合し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させてエマルジョン絵具を得た。
【0039】
(実施例12)
バイオレットOS 21.5%
ベントナイト 8.6%
ヒドロキシエチルセルロース 0.4%
プロピレングリコール 6.8%
防腐剤 0.1%
界面活性剤 0.7%
モビニール700 25.8%
消泡剤 0.2%
水 35.9%
各材料を混合し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させてエマルジョン絵具を得た。
【0040】
(実施例13)
アニリンブラック 14.7%
フロナイト101 26.4%
アラビアガム 10.2%
デキストリン 10.0%
グリセリン 5.0%
水 33.3%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.2%
水に溶解させたアラビアガム、デキストリンに上記のその他の材料を追加し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させて水彩絵具を得た。
【0041】
(比較例1)
アニリンブラック25 15.7%
アラビアガム 10.2%
デキストリン 13.3%
グリセリン 5.5%
水 54.9%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.2%
水に溶解させたアラビアガム、デキストリンに上記のその他の材料を追加し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させて水彩絵具を得た。
【0042】
(比較例2)
アニリンブラック25 23.5%
ヒドロキシエチルセルロース 0.4%
プロピレングリコール 7.5%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.8%
モビニール700 28.2%
消泡剤 0.2%
水 39.2%
各材料を混合し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させてエマルジョン絵具を得た。
【0043】
(比較例3)
バイオレットOS 15.7%
アラビアガム 10.2%
デキストリン 13.3%
グリセリン 5.5%
水 54.9%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.2%
水に溶解させたアラビアガム、デキストリンに上記のその他の材料を追加し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させて水彩絵具を得た。
【0044】
(比較例4)
バイオレットOS 23.5%
ヒドロキシエチルセルロース 0.4%
プロピレングリコール 7.5%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.8%
モビニール700 28.2%
消泡剤 0.2%
水 39.2%
各材料を混合し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させてエマルジョン絵具を得た。
【0045】
(比較例5)
アニリンブラック 15.4%
フロナイト101 1.5%
アラビアガム 10.0%
デキストリン 13.1%
グリセリン 5.4%
水 54.2%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.2%
水に溶解させたアラビアガム、デキストリンに上記のその他の材料を追加し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させて水彩絵具を得た。
【0046】
(比較例6)
アニリンブラック 15.2%
フロナイト101 3.0%
アラビアガム 9.9%
デキストリン 12.9%
グリセリン 5.3%
水 53.3%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.2%
水に溶解させたアラビアガム、デキストリンに上記のその他の材料を追加し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させて水彩絵具を得た。
【0047】
(比較例7)
アニリンブラック 11.8%
フロナイト101 25.0%
アラビアガム 7.6%
デキストリン 10.0%
グリセリン 4.1%
水 41.1%
防腐剤 0.2%
界面活性剤 0.2%
水に溶解させたアラビアガム、デキストリンに上記のその他の材料を追加し均一になるまでデゾルバーで攪拌した後、3本ロールミルに3回通過させ分散させて水彩絵具を得た。
【0048】
(滲み防止試験)
各実施例及び比較例に係る水性絵具のブリードを調べるために、絵具1に対し水0.3の割合で希釈した絵具水溶液を濾紙(東洋濾紙(株)製、No.5C)に滴下して滲みの色の色差により判別した。評価はLab表色系で色差ΔEが1.1以下であるものを◎、1.2〜3.1であるものを○、3.2〜4.3であるものを△、4.4以上であるものを×としてその結果を表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
モンモリロナイト系粘土鉱物の顔料との配合割合を検討すべく、実施例1、実施例13、比較例1、比較例5及び比較例7について、また、モンモリロナイト系粘土鉱物の絵具全量に対する配合量を検討すべく実施例1、比較例1、比較例6及び比較例7については、さらに次の手順で筆記性試験、着色性試験、経時安定性試験を行った。
【0051】
(筆記性試験)
10名のモニターが上記実施例及び比較例の水性絵具組成物1に対して水0.3の割合で希釈したものを用いて上質紙に筆(平筆4号)で描画し、筆記性の良否について判断した。評価は8名以上のものがよいと判断したものを◎、5〜7名がよいと判断したものを△、よいと判断したものが4名以下の場合は×で表し、その結果を表2及び表3に示した。
【0052】
(着色性試験)
10名のモニターが上記実施例及び比較例の水性絵具組成物1に対して水0.3の割合で希釈したものを用いて上質紙に筆(平筆4号)で描画し、絵具の着色性を濃度の濃淡について判断した。評価は8名以上が濃淡の程度が適当であると判断したものを◎、7〜5名のものが適当であると判断したものを△、濃淡の程度が適当であると判断したものが4名以下の場合を×として表し、その結果を表2及び3に示した。
【0053】
(経時安定性試験)
10名のモニターが上記実施例及び比較例の水性絵具組成物を50℃で1ヶ月保存したものを用いてスパチュラで攪拌することにより絵具が固化せずペースト状を維持しているかを基準として、その粘度の変化及び、ゲル粒状物の有無を判断した。評価は保存前と比較して、経時安定性が確保されていると判断したものが8名以上を◎、7〜5名の場合が△、4名以下の場合が×として表し、その結果を表2及び表3に示した。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
表1から明らかなように、アニリンブラックを用いた水性絵具の場合、モンモリロナイト系の粘土鉱物を所定の配合量で含む実施例はいずれも滲みの評価がよく、ブリードを効果的に防止できることが明らかとなった。特に「フロナイト101」を用いた場合は水彩絵具及びエマルジョン絵具を問わずに滲みに対する効果は顕著である。また、顔料としてレーキ顔料を用いた場合でもモンモリロナイト系の粘土鉱物を所定の配合量で含む実施例は滲みに対する効果が見受けられた。特にレーキ顔料とフロナイト113との組み合わせにおいてその効果は顕著であり、ブリードを全く発生させることがなかった。
【0057】
また、表2及び表3においてモンモリロナイト系粘土鉱物の配合量が所定の範囲を逸脱する場合は筆記性などの絵具としての性能に影響を及ぼし、妥当でないことが見受けられた。
【0058】
【発明の効果】
本発明の水性絵具組成物はモンモリロナイト系粘土鉱物の吸着能により、ブリードを効果的に防止することができるため、従来の絵具が有していた描画時における作品の汚染を有効に防止することができる。
Claims (8)
- ブリード防止成分としてモンモリロナイト系の粘土鉱物である活性白土を含む水性絵具組成物。
- 顔料としてレーキ顔料またはアニリンブラックのうち少なくとも一方を含む請求項1記載の水性絵具組成物。
- 少なくともレーキ顔料とモンモリロナイト系の粘土鉱物として活性白土を含む請求項1記載の水性絵具組成物。
- 少なくともアニリンブラックとモンモリロナイト系の粘土鉱物として活性白土を含む請求項1記載の水性絵具組成物。
- 前記モンモリロナイト系の粘土鉱物が顔料に対して40〜200重量%の配合量で配合されている請求項1乃至4のいずれかに記載の水性絵具組成物。
- 前記モンモリロナイト系の粘土鉱物が絵具全量に対して4〜20重量%の配合量で配合されている請求項1乃至5のいずれかに記載の水性絵具組成物。
- 前記水性絵具組成物が水彩絵具組成物又は水性エマルジョン絵具組成物である請求項1乃至6のいずれかに記載の水性絵具組成物。
- 前記水性絵具組成物が壁画用水性絵具組成物である請求項7記載の水性エマルジョン絵具組成物。
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