JP3772235B2 - 絵具組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性絵具等に用いられる新規な絵具組成物に関する。
【0002】
【従来技術】
瓶型の容器に充填された水性絵具(液状)は、長期間攪拌されることなく静置されると、その表面にひび割れを起こすことが多い。このような状態の絵具は、品質的には何の問題もなく、攪拌すれば流動性が概ね回復し、支障なく使用することができる。ところが、表面のひび割れを起こすと外観が悪くなり、あたかも品質が低下したかのようなイメージを与えかねず、結果として商品価値を低下させるおそれがある。
【0003】
これに関し、顔料、水溶性高分子、アセチレングリコール系の非イオン界面活性剤等を含有する水彩絵具が知られている(特開昭57−176号公報)。この水彩絵具によれば、特に上記非イオン界面活性剤を使用していることから分散効果と消泡効果とを得ることができる。
【0004】
しかしながら、長期保存によって生じる絵具表面のひび割れを防止するという点では、上記技術においてもさらなる改善が必要とされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、保存中の絵具表面におけるひび割れの発生が抑制ないしは防止された絵具組成物を提供することを主な目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、上記ひび割れの原因が、水分の蒸発による体積減少のほかに構造粘性の発現による流動性の低下にもあることを突き止め、かかる構造粘性の発現も効果的に抑制することによって上記目的を達成できることを見出し、ついに本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、水溶性高分子、顔料、湿潤剤及び水を含み、さらにHLBが10以上のノニオン系界面活性剤を含有する絵具組成物に係るものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態とともに説明する。
【0009】
本発明で用いるノニオン系界面活性剤としては、そのHLBが10以上であればその種類は特に制限されない。本発明では、特にポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジル化オルトフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルスチレン化フェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルマリン縮合物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの少なくとも1種が好ましく、この中でもポリオキシエチレンスチレン化フェノールエーテル及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの少なくとも1種がより好ましい。
【0010】
なお、本発明では、アセチレングリコール系のノニオン系界面活性剤は、絵具組成物の浸透性が大きくなりすぎるおそれがあるので、特に浸透性の制御を必要とする製品においては使用しない方が好ましい。
【0011】
本発明では、これらノニオン系界面活性剤のうちHLBが10以上のものを用いる。HLBが10未満のノニオン性界面活性剤を用いると、ひび割れの抑制効果が不十分となり好ましくない。なお、HLBの上限値は、特に制限されないが、一般的には20程度までのものを好ましく用いることができる。
【0012】
上記ノニオン系界面活性剤の含有量は、他の成分等との関係で適宜設定すれば良いが、通常は0.05〜5重量%程度、好ましくは0.2〜2重量%程度とすれば良い。上記含有量が多すぎると塗膜の耐水性が不良となり、紙への浸透性が増し、にじみやすくなる場合がある。また、上記含有量が少なすぎると十分なひび割れ抑制効果が得られない。
【0013】
水溶性高分子は、水に可溶であって成膜性を有するものであれば特に限定されることなく、公知の水彩絵具等で使用されている水溶性高分子もそのまま使用できる。例えば、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、デキストリン、ヒドロキシプロピル化澱粉等の化工澱粉、アラビアゴム、トラガカントゴム等の天然高分子等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。これらの中でも、カルボキシルメチルセルロース、デキストリン、アラビアゴム等が好ましい。
【0014】
水溶性高分子の含有量は、他の成分等との関係で適宜設定すれば良いが、通常は1〜40重量%程度、好ましくは4〜25重量%程度とすれば良い。水溶性高分子が多すぎると粘度が高くなりすぎ、また少なすぎると接着性が低下するおそれがある。
【0015】
顔料としては、特に制限されず、公知の顔料をいずれも使用できる。例えば、酸化チタン、イエローオーカー、雲母チタン等の公知の無機系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット、DPPレッド等の有機系顔料等のほか、蛍光顔料等も使用できる。また、炭酸カルシウム、クレー、亜鉛華、ベントナイト等の公知の体質顔料、その他にも蓄光顔料、合成雲母、金属粉末、カーボンブラック、アルミノシリケート等も使用できる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0016】
顔料の含有量は、使用する顔料の種類、他の成分等との関係で適宜設定すれば良いが、通常は1〜50重量%程度、好ましくは5〜30重量%程度とすれば良い。顔料が多すぎると絵具の流動性、塗膜の光沢が損なわれるおそれがあり、少なすぎると十分な発色性が得られない。
【0017】
湿潤剤としては、保水性を有する限りは特に限定されず、公知の水彩絵具に添加されている湿潤剤もそのまま使用できる。例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0018】
湿潤剤の含有量は、用いる湿潤剤の種類、他の成分等との関係で適宜設定すれば良いが、通常は0.05〜10重量%程度、好ましくは0.05〜5重量%程度とすれば良い。湿潤剤が多すぎると絵具の使用時における乾燥が遅くなり、また少なすぎると凍結しやすくなる。
【0019】
本発明では、上記原料に水を配合する。水の配合量は、最終製品の用途等に応じて適宜設定すれば良いが、通常10〜50重量%程度、好ましくは15〜30重量%程度とすれば良い。
【0020】
本発明では、さらに陰イオン系界面活性剤を上記ノニオン系界面活性剤と併用することもできる。これにより、ひび割れを一層有効に抑制ないしは防止することができる。陰イオン系界面活性剤としては、特に制限されず、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩ホルマリン重縮合物、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等の公知のもの又は市販品を適宜使用できる。本発明では、特に、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物(例えば、β−ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物)等を用いることが好ましい。陰イオン系界面活性剤の含有量は、通常0.05〜5重量%程度、好ましくは0.1〜0.7重量%程度とすれば良い。
【0021】
また、本発明では、その効果を妨げない範囲でさらに他の成分が含まれていても良い。例えば、防腐剤、防黴剤等の各種添加剤が使用できる。
【0022】
本発明の絵具組成物は、例えばこれらの原料を公知の攪拌装置(ディゾルバー、ミキサー、ロールミル等)を適宜用いて攪拌した後、各種のロールミル、ビーズミル等で分散させれば製造することができる。なお、各原料を配合する順序についても特に制限されない。
【0023】
【発明の効果】
本発明の絵具組成物は、特に一定のHLB値をもつノニオン系界面活性剤が含まれていることから、構造粘性の発現を効果的に抑制できる。このため、容器中で長期間静置していてもその表面にひび割れが発生しにくく、品質のみならず良好な外観も長期間にわたって維持することができる。
【0024】
このような特長を有する本発明の絵具組成物は、水彩絵具、ポスターカラー等に好適に用いることができる。
【0025】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。
【0026】
実施例1
表1に示す原料をディゾルバーにより混合攪拌した後、3本ロールミルにより均一に分散させて水性絵具を調製した。得られた水性絵具を瓶型の容器に詰めて、蓋をして、50℃で静置した。1ヶ月経過後の絵具表面のひび割れ状態を肉眼で観察した。その結果を表2に示す。
【0027】
なお、表2中、「1」は容器全周にわたりひび割れが生じたもの、「2」は容器半周にわたりひび割れが生じたもの、「3」は部分的にひび割れが生じたもの、「4」はわずかにひび割れが認められるもの、「5」はひび割れがないものをそれぞれ示す。
【0028】
【表1】
Figure 0003772235
【0029】
【表2】
Figure 0003772235
【0030】
実施例2〜7
表1に示す原料を用いた以外は、実施例1と同様にして水性絵具を調製し、実施例1と同様にして試験を行った。その結果を表2に示す。
【0031】
比較例1〜3
表3に示す原料を用いた以外は、実施例1と同様にして水性絵具を調製し、実施例1と同様にして試験を行った。その結果を表2に示す。
【0032】
【表3】
Figure 0003772235
【0033】
実施例8〜14
実施例1〜7において陰イオン系界面活性剤(β−ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物)を使用しない以外は、実施例1〜7と同様の原料をそれぞれ用いて各実施例に対応する水性絵具を調製し、実施例1と同様の試験を行った。その結果、いずれも「3」であった。すなわち、これらは、陰イオン系界面活性剤を併用する実施例1〜7よりも若干劣るものの、比較例1〜3よりも優れた性能を発揮できることがわかる。

Claims (3)

  1. 水溶性高分子、顔料、湿潤剤及び水を含み、さらにHLBが10以上のノニオン系界面活性剤及び陰イオン系界面活性剤を含有し、前記陰イオン系界面活性剤がナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物である絵具組成物。
  2. ノニオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジル化オルトフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルスチレン化フェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルマリン縮合物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの少なくとも1種である請求項1記載の絵具組成物。
  3. 前記ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物が、β−ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物である、請求項1又は2に記載の絵具組成物。
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