JP3790609B2 - 射出成形機の温度制御方法および温度制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出成形機の加熱シリンダが軸方向に複数個の温度制御ゾーンに分割され、分割された各温度制御ゾーンに対応して複数個設けられている加熱手段を制御する、射出成形機の温度制御方法およびこの方法の実施に使用される温度制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
射出成形機は、周知のように、樹脂材料が供給される加熱シリンダを備えている。そして、その内部には供給される樹脂材料を混練溶融するためのスクリュウが設けられている。このような加熱シリンダ30は、図4に示されているように、軸方向に複数個の第1、第2、…の温度制御ゾーンk1、k2、…に分けられている。そして、第1の温度制御ゾーンk1に属する加熱シリンダ30の外周部には複数個例えば2個の第1、2の加熱ヒータh1-1、h1-2が設けられている。以下同様に、第2、第3、…の温度制御ゾーンk2、k3、…にも第1、2の加熱ヒータh2-1、h2-2、h3-1、h3-2、…が2個宛設けられている。また、加熱シリンダ30の所定深さ位置には、第1、第2、…の温度制御ゾーンk1、k2、…に対応して第1、第2、…の熱電対s1、s2、…が設けられている。
【0003】
図4には、第1の温度制御ゾーンk1に設けられている第1、2の加熱ヒータh1-1、h1-2のみを制御する例が示されているが、上記の各加熱ヒータh1-1、h1-2、h2-1、h2-2、…は、制御装置により一般にフィードバック制御により制御されるようになっている。この制御装置は、周知のように、加え合わせ点40とPID制御演算器41とから構成されている。そして、加え合わせ点40には、設定器で設定される設定温度r11と、第1の温度制御ゾーンk1の温度を検出する熱電対s1で検出される第1の温度制御ゾーンk1の加熱シリンダ30の温度すなわち制御量y11とが入力され、その偏差e11はPID制御演算器41において比例積分微分(PID)演算により操作量u11が演算され、そして第1、2の加熱ヒータh1-1、h1-2へ同じ操作量が出力されるようになっている。
【0004】
したがって、各温度制御ゾーンk1、k2、…の加熱温度を設定し、各温度制御ゾーンにおける比例(P)定数、積分(I)定数、微分(D)定数等を調節して、第1、第2、…の温度制御ゾーンk1、k2、…第1、2の加熱ヒータh1-1、h1-2、h2-1、h2-2、…を加熱すると共に、加熱シリンダ30にホッパ31から樹脂材料を供給し、スクリュウを回転駆動すると、第1、2の加熱ヒータh1-1、h1-2、h2-1、h2-2、…から加えられる熱と、スクリュウの回転による剪断力、摩擦力等による発熱作用とにより樹脂材料は、可塑化される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の各加熱ヒータも、フィードバックにより制御されているので、一応可塑化はできるが、冷却部33に隣接している第1の温度制御ゾーンk1では問題がある。すなわち、樹脂材料は、ホッパ31から加熱シリンダ30に供給されるようになっているが、ホッパ31の下部の樹脂材料投入口近傍において樹脂材料が軟化すると、架橋が生じスムーズな供給ができなくなる。そこで、樹脂材料投入口近傍には、ジャケット32、32、…が設けられ、例えば水などで冷却されるようになっている。これらのジャケット32、32、…は冷却部33となり、これに隣接している第1の温度制御ゾーンk1は、冷却部33により奪われる熱量を補償するようにフィードバック制御されて設定温度に維持される。その結果、第1の温度制御ゾーンk1の冷却部33側では奪われる熱量と、第1の加熱ヒータh1-1の発熱量とがつり合う。しかしながら、第2の温度制御ゾーンk2側では、第2の温度制御ゾーンk2の第1の加熱ヒータh2-1の熱の影響を受けて、第1の温度制御ゾーンk1の第2の加熱ヒータh1-2により供給される熱は、余剰となる。その結果第1の温度制御ゾーンk1と第2の温度制御ゾーンk2との間に設定温度以上になる部分すなわち過昇温部が生じることになる。
【0006】
実験により生じた過昇温部Ohは、図5に示されている。なお、実験には加熱シリンダと同様な構造を有するテスト装置を使用し、設定温度は第1、第2、…の温度制御ゾーンk1、k2、…の全ゾーンにおいて120°Cに設定した。第1の温度制御ゾーンk1と第2の温度制御ゾーンk2との間に設けた熱電対sで計測された、この過昇温部Ohの温度は、約128°Cであった。
【0007】
このように過昇温部Ohが生じると、加熱シリンダ30の内部に存在する樹脂材料にヤケが生じたり、スクリュの表面、加熱シリンダ30の内周面等にヤケた樹脂が付着し、成形不良の原因にもなる。また、過昇温部Ohが生じると、この熱が隣接する第2の温度制御ゾーンk2にも伝わるが、この第2の温度制御ゾーンk2は、隣の第3の温度制御ゾーンk3からも加熱されるので、第2の温度制御ゾーンk2は、これらの熱により設定温度が満たされ、設定温度の高低如何によっては、第2の温度制御ゾーンk2の第1、2の加熱ヒータh2-1、2-2は、常にオフの、無制御状態になる問題もある。
【0008】
そこで、この過昇温部Ohの発生を抑制した加熱シリンダの温度制御方法が、例えば特開平3ー1920号により提案されている。この温度制御方法は、冷却部に隣接した温度制御ゾーンの実測温度と設定温度との間に「カイリ」が生じたとき、この温度制御ゾーンの設定温度を実測値にほぼ合致するように設定温度を再設定するようにしたもので、この温度制御方法により過昇温部Ohの発生は抑制されるにしても、隣接温度制御ゾーンの補償動作が考慮されていないので、当該温度制御ゾーンの温度全体が下がり、設定通りの軸方向の温度パターンが得られないことが予想される。
【0009】
また、この過昇温部Ohは、第1の温度制御ゾーンk1の第2の加熱ヒータh1-2の操作量を、冷却部33側の第1の加熱ヒータh1-1の操作量よりも低く設定することにより解消することはできる。しかしながら、成形中止中と成形中、使用樹脂材料の種類、成形条件等の多種多様な条件変更に対し、一意の操作量で最適な条件を維持することは困難である。さらには、第1の温度制御ゾーンk1の第1の加熱ヒータh1-1と、第2の加熱ヒータh1-2とを独立したゾーンとして制御すると、過昇温部Ohの温度上昇をある程度抑えることはできる。しかしながら、この制御方法も温度制御ゾーンを細分化しただけのことで、隣接温度制御ゾーンの補償動作が考慮されていないので、過昇温部の実質的な解消にはならない。このような、過昇温部はノズル先端部の温度制御ゾーンにおいても発生するし、同様な成形不良の問題がある。
本発明は、上記したような、未だ充分に解決されていない従来の問題点を解決した、射出成形機の温度制御方法および温度制御装置を提供することを目的とし、具体的には、局部的な過昇温部の発生がなく、しかも設定通りの軸方向の温度パターンが得られる射出成形機の温度制御方法およびこの方法の実施に使用される温度制御装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、対象とする温度制御ゾーンに設けられている加熱ヒータの内、低温部に近い方の加熱ヒータへは、フィードバック制御により得られる主操作量を印加し、高温部に近い方の加熱ヒータへは、この主操作量から操作量上限値または任意の設定値を減じた補償操作量を印加するように構成される。すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、射出成形機の加熱シリンダが軸方向に複数個の温度制御ゾーンに分割され、分割された各温度制御ゾーンに対応して複数個設けられている加熱手段を制御する、射出成形機の温度制御方法において、一方が、冷却フランジ、金型等の低温部に隣接し、他方が加熱手段等により加熱される高温部に隣接している温度制御ゾーンに設けられている加熱手段を制御するとき、前記低温部に隣接している加熱手段は、前記温度制御ゾーンに設けられている温度センサの検出温度によるフイードバック制御により得られる主操作量で制御し、前記高温部に隣接している加熱手段は、前記主操作量と、操作量上限値又は任意の設定値との偏差である余裕量算出値を、前記主操作量から減じた補償操作量で制御するように構成される。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の温度制御方法において、操作量上限値又は任意の設定値が、対象とする温度制御ゾーンと、該温度制御ゾーンに隣接している高温部との間の過昇温部の設定温度と、該過昇温部の検出温度との偏差から演算により求められ、そして請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の温度制御方法において、過昇温部の設定温度が、対象とする温度制御ゾーンの設定温度と該温度制御ゾーンに隣接した高温部の設定温度とから補間演算により求められ、そして過昇温部の検出温度が前記対象とする温度制御ゾーンの検出温度と該温度制御ゾーンに隣接した高温部の検出温度に基づいた定常伝熱計算により求められるように構成される。
請求項4に記載の発明は、射出成形機の加熱シリンダが軸方向に複数個の温度制御ゾーンに分割され、分割された温度制御ゾーンの一方が冷却フランジ、金型等の低温部に隣接し、他方が加熱手段等により加熱される高温部に隣接している温度制御ゾーンに設けられている複数個の加熱手段を制御する温度制御装置であって、該温度制御装置は、第1、2、3の加え合わせ部と、調節操作部とからなり、前記第1の加え合わせ部には、設定温度と対象とする温度制御ゾーンの検出温度とが入力され、前記調節操作部は、前記第1の加え合わせ部により得られる偏差に基づいて対象とする温度制御ゾーンの低温部に近い方の第1の加熱手段の主操作量を演算し、前記第2の加え合わせ部には、操作量上限値又は任意の設定値と前記調節操作部で得られた主操作量とが入力され、前記第3の加え合わせ部には、前記第2の加え合わせ部により得られる偏差である余裕量算出値と前記調節操作部で得られた主操作量とが入力されて、対象とする温度制御ゾーンの高温部に近い方の第2の加熱手段の補償操作量を出力するように構成される。そして請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の温度制御装置において、第2の加え合わせ部の一方の入力端子には、対象とする温度制御ゾーンと、該温度制御ゾーンに隣接している高温部との間の過昇温部の設定温度と、前記過昇温部の検出温度との偏差に基づいて演算された演算値が入力されるようになっている。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1により、本発明の第1の実施の形態を説明する。本実施の形態に係わる射出成形機1は、従来周知のように、加熱シリンダ2を備えている。そして、この加熱シリンダ2は、軸方向に複数個例えば4個の第1〜第4の温度制御ゾーンK1、K2、K3およびKNに便宜上分割されている。分割された第1の温度制御ゾーンK1の加熱シリンダ2の外周部には、第1、2の加熱ヒータH1−1、H1-2が設けられ、第2の温度制御ゾーンK2の加熱シリンダ2の外周部にも、同様に第1、2の加熱ヒータH2−1、H2-2が設けられ、以下同様に他のゾーンにおける加熱シリンダ2の外周部にも加熱ヒータが適宜設けられている。また、各温度制御ゾーンK1、K2、K3およびKNの加熱シリンダ2の所定深さ位置には温度センサS1、S2、S3、SNが取り付けられている。各温度制御ゾーンK1、K2、K3、KNに設けられている加熱ヒータH1-1、H2−1、H2-2、…は、第1の温度制御ゾーンK1の第2の加熱ヒータH1-2以外は、これらの温度センサS1、S2、S3、SNで検出される検出温度が設定温度になるように、例えばフィードバック制御により制御されるが、図1には、対象としている第1の温度制御ゾーンK1に設けられている加熱ヒータH1-1、H1-2を制御する例のみが示されている。
【0012】
加熱シリンダ2の、図1の右方には樹脂材料Jを加熱シリンダ2に供給するホッパ5が設けられている。ホッパ5の絞部は、加熱シリンダ2に連通しているが、この近傍を取り囲むようにして水ジャケット6が取り付けられ、冷却用流体例えば水により樹脂材料Jの軟化点以下に維持されている。これにより、樹脂材料Jは軟化することなく、スムーズに加熱シリンダ2に供給され、そしてスクリュに噛み込めれる。この水ジャケット6が、第1の温度制御ゾーンK1に隣接して低温部7となっている。
【0013】
図1に示されている、第1の実施の形態に係わる温度制御装置10は、第1の加え合わせ点11、調節操作部すなわちPID制御演算器12、第2、3の加え合わせ点13、14等から構成されている。そして、第1の加え合わせ点11の一方の入力端子は、温度設定器16と信号ラインaにより、他方の入力端子は、温度センサS1と信号ラインbにより接続されている。第1の加え合わせ点11の出力端子は、信号ラインcによりPID制御演算器12に接続され、PID制御演算器12の出力端子は、第1の温度制御ゾーンK1の第1の加熱ヒータH1−1に信号ラインdにより接続され、PID制御演算器12で得られる主操作量は、直接第1の加熱ヒータH1-1に印加されるようになっている。信号ラインdからは、信号ラインeが分岐し、この信号ラインeは、さらに分岐して第2、3の加え合わせ点13、14の一方の入力端子にそれぞれ接続されている。ハードウェアの上限設定器17と第3の加え合わせ点13は、信号ラインfにより、第2の加え合わせ点13の出力端子と第3の加え合わせ点14の他方の入力端子は、信号ラインgによりそれぞれ接続されている。そして、第3の加え合わせ点14の出力端子は、信号ラインhにより第2の加熱ヒータH1−2に接続され、演算された補償操作量が印加されるようになっている。
【0014】
次に、上記実施の形態の作用について説明する。各温度制御ゾーンK2〜KNに設けられている加熱ヒータH2-1、H2−2、…は、前述したように従来のフィードバック制御により制御されるので、以下第1の温度制御ゾーンK1に設けられている第1、2の加熱ヒータH1-1、H1−2の制御について説明する。PID制御演算器12の比例定数、積分定数、微分定数等を調節する。温度設定器16により加熱ヒータH1-1、H1−2の加熱温度r(k)を設定する。また、ハードウェアの上限設定器17により100%または任意の定数をUmaxとして設定する。そして、加熱シリンダ2にホッパ5から樹脂材料Jを供給し、スクリュウを回転駆動すると、加熱ヒータH1-1、H2−1、H2-2、…から加えられる熱と、スクリュウの回転による剪断力、摩擦力等による発熱作用とにより樹脂材料は、従来周知のようにして、可塑化される。
【0015】
このとき、第1の温度制御ゾーンK1における温度y(k)は、温度センサS1により検出され、そして第1の加え合わせ点11に入力される。この加え合わせ点11において、r(k)−y(k)により偏差e(k)が得られ、PID制御演算器12において周知のようにして、主操作量u11(k)が演算される。この主操作量u11(k)が、第1の加熱ヒータH1-1に印加され、第1の加熱ヒータH1-1は設定温度r(k)になるように制御される。
【0016】
また、第2、第3のの加え合わせ点13、14において、次式のようにして第2の加熱ヒータH1-2に印加される補償操作量u12(k)が演算される。
u12(k)=u11(k)ー{Umaxーu11(k)} (1)
ここに、u11(k):k時点での第1の加熱ヒータH1-1の主操作量
u12(k):k時点での第2の加熱ヒータH1-2の補償操作量
Umax :第1、2の加熱ヒータH1-1、1−2の操作量の 上限値または任意の定数
上記(1)式中の偏差{Umaxーu11(k)}は、k時点での加熱ヒータの余裕量に相当する。この余裕量が大きいときは、主操作量u11(k)から大きな値が減じられて補償操作量u12(k)が得られ、これとは逆に余裕量が小さくなるにしたがって、補償操作量u12(k)は主操作量u11(k)に近づく。したがって、設定値を満足するために大きな操作量が必要なときには第1、2の加熱ヒータH1-1、H1-2は積極的に動作し、小さい操作量で充分なときには第2の加熱ヒータH1-2の補償操作量u12(k)も小さくなるように自動調節される。これにより、第1、2の温度制御ゾーンK1、K2の間に生じる過昇温部の発生が抑制される。また、加熱シリンダ2の軸方向の温度パターンも設定通りになる。
【0017】
第1の実施の形態では加熱ヒータの操作量の上限値あるいは任意の設定値Umaxは、ハードウェアの上限設定器17により設定されたが、演算により求めることもできる。演算により求める第2の実施の形態が図2に示されている。なお、図1に示されている第1の実施の形態の構成要素と同じ同じ要素には同じ参照数字を付けて重複説明はしない。第2の実施の形態によると、制御装置10’は、さらに第4の加え合わせ点11’と、第2のPID制御演算器12’とを備えている。また、温度設定器16は、過昇温部の温度を設定する設定器17’も兼ねている。第4の加え合わせ点11’の一方の入力端子は、温度設定器17’と信号ラインa’により接続されている。第1の温度制御ゾーンK1と、第2の温度制御ゾーンK2との間には過昇温部の温度を検出する温度センサS1’が設けられ、この温度センサS1’と第4の加え合わせ点11’の他方の入力端子は、信号ラインb’で接続されている。第4の加え合わせ点11’の出力端子は、信号ラインc’により第2のPID制御演算器12’に接続されている。
【0018】
次に、第2の実施の形態の作用を説明する。なお、第2の実施の形態によっても、第1の加熱ヒータH1-1の主操作量u11(k)が、第1の実施の形態により得られた主操作量u11(k)に対応していることは明らかである。温度設定器17’により過昇温部の温度r(k)’を設定する。過昇温部の温度y(k)’は、温度センサS1’により検出され、そして第4の加え合わせ点11’に入力される。この加え合わせ点11’において、r(k)’−y(k)’により偏差e(k)’が得られ、第2のPID制御演算器12’において周知のようにして、加熱ヒータの操作量の上限値すなわち余裕量算出値Umax(k)が演算される。
【0019】
第2、第3のの加え合わせ点13、14において、次式のようにして第2の加熱ヒータH1-2に印加される補償操作量u12(k)’が演算される。
u12(k)’=u11(k)ー{Umax(k)ーu11(k)} (1’)
ここに、u11(k):k時点での第1の加熱ヒータH1-1の主操作量
u12(k):k時点での第2の加熱ヒータH1-2の補償操作量
Umax(k) :k時点での第1、2の加熱ヒータH1-1、1−2の操作量の上限値
上記(1’)式中の{Umax(k)ーu11(k)}が、k時点での、第1の実施の形態の加熱ヒータの余裕量に相当することは明らかである。また、第1、2の温度制御ゾーンK1、K2の間に生じる過昇温部の発生が抑制されることも明らかである。
【0020】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、色々な形で実施できる。例えば射出成形機1のノズルが含まれる温度制御ゾーンKNは、一方は冷却されている金型に接し、あるいは大気へ放熱されているので低温部に接し、他方は加熱シリンダ2の他の温度制御ゾーンK3に連なってるので、この温度制御ゾーンKNにも、同様に適用できる。また、加熱ヒータが設けられていない部分は、低温部になっているので、この低温部に隣接している加熱ヒータが設けら温度制御ゾーンにも同様に適用できることも明らかである。
【0021】
加熱ヒータの操作量の上限値あるいは余裕量算出値Umax(k)は、第2の実施の形態ではPID制御演算器12’により求められているが、PID演算する代わりに、PI演算、ファジイ演算等によって求めることもできる。また、第2の実施の形態では、第1の温度制御ゾーンK1と、第2の温度制御ゾーンK2との間に、過昇温部の温度を検出する温度センサS1’が設けられているが、この過昇温部の温度は、温度センサS1’により直接計測することなく、第1、第2の温度センサS1、S2で計測される温度に基づき定常伝熱計算により導出される軸方向の温度分布式から求めた温度を検出温度とすることもできる。また、過昇温部の設定温度は、第1の温度制御ゾーンK1の設定温度と、第2の温度制御ゾーンK2の設定温度とから、線形補間して求めることもできる。
【0022】
実施例1:加熱ヒータの操作量の操作量上限値または任意の設定値Umaxを一定にした、第1の実施の形態に相当する制御方法のテストをした。なお、本テストには加熱シリンダ2と同様なテスト装置を使用して、第1の温度制御ゾーンK1と第2の温度制御ゾーンK2との間には温度センサSを格別に取り付けて、各温度制御ゾーンK1、K2、…の温度を測定した。また、簡単のため、全ての温度制御ゾーンK1、K2、…の設定温度を120°Cにした。その結果を図3に示す。図3において、ノズル先端からの距離は、加熱シリンダ2の軸方向の長さに対応している。図3に示されているように、図5に示されている従来の過昇温部Ohは、略解消されていることが分かる。また、加熱シリンダ2の軸方向の温度分布も略設定値通りになっていることも分かる。
【0023】
実施例2:加熱ヒータの操作量の上限値すなわち余裕量算出値Umax(k)をPID制御演算器12’により求めた、第2の実施の形態に相当する制御方法のテストをした。なお、他の条件は実施例1と同じにした。図には示されていないが、実施例1と略同一な温度分布が得られ、過昇温部Ohも解消され、実施例1との実質的な差異は認められなかった。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると、射出成形機の加熱シリンダが軸方向に複数個の温度制御ゾーンに分割され、分割された各温度制御ゾーンに対応して複数個設けられている加熱手段を制御する、射出成形機の温度制御方法において、一方が、冷却フランジ、金型等の低温部に隣接し、他方が加熱手段等により加熱される高温部に隣接している温度制御ゾーンに設けられている加熱手段を制御するとき、低温部に隣接している加熱手段は、温度制御ゾーンに設けられている温度センサの検出温度によるフイードバック制御により得られる主操作量で制御し、高温部に隣接している加熱手段は、主操作量と、操作量上限値又は任意の設定値との偏差である余裕量算出値を、主操作量から減じた補償操作量で制御するように構成されているので、局部的な過昇温部の発生を抑制することができ、また設定通りの軸方向の温度パターンが得られる。したがって、本発明によると、温度変化に敏感な樹脂材料からもヤケや熱分解を起こすことなく、微妙な変色も成形不良の原因になる例えば光学部品のような高精度の成形品も得ることができる。また、射出成形機は、一般に制御装置を備えているが、この備わっている制御装置に演算部を設けるだけで、本発明を実施できる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係わる射出機と制御装置とを示し、制御装置部分はブロック線図で示す模式図である。
【図2】 本発明の第2の実施の形態係わる射出機と、制御装置とを示し、制御装置部分は部分はブロック線図で示す模式図である。
【図3】 第1の実施の形態に相当する制御方法の実験結果を示すグラフである。
【図4】 従来の射出機と制御装置とを示す模式図である。
【図5】 従来の制御方法の実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 射出機
2 加熱シリンダ
7 低温部
10、10’ 制御装置
11、13、14 第1〜3の加え合わせ部
11’ 第4の加え合わせ点
12 PID制御演算器
12’ 第2のPID制御演算器
K1、K2、… 第1、第2、…の温度制御ゾーン
H1-1、H1-2 第1、第2の加熱ヒータ
S1、S2、… 第1、第2、…の温度センサ
Claims (5)
- 射出成形機(1)の加熱シリンダ(2)が軸方向に複数個の温度制御ゾーン(K1、K2、…)に分割され、分割された各温度制御ゾーンに対応して複数個設けられている加熱手段(H1-1、H1-2)を制御する、射出成形機の温度制御方法において、
一方が、冷却フランジの低温部(7)に隣接し、他方が加熱手段等により加熱される高温部(K2)に隣接している温度制御ゾーン(K1)に設けられている加熱手段(H1-1、H1-2)を制御するとき、
前記低温部(7)に隣接している加熱手段(H1-1)は、前記温度制御ゾーン(K1)に設けられている温度センサ(S1)の検出温度{y(k)}によるフイードバック制御により得られる主操作量{u11(k)}で制御し、
前記高温部(K2)に隣接している加熱手段(H1-2)は、前記主操作量{u11(k)}と、操作量上限値又は任意の設定値(Umax)との偏差である余裕量算出値{Umaxーu11(k)}を、前記主操作量{u11(k)}から減じた補償操作量{u12(k)}で制御することを特徴とする射出成形機の温度制御方法。 - 請求項1に記載の温度制御方法において、操作量上限値又は任意の設定値(Umax)が、対象とする温度制御ゾーン(K1)と、該温度制御ゾーン(K1)に隣接している高温部(K2)との間の過昇温部の設定温度{r(k)’}と、該過昇温部の検出温度{y(k)’}との偏差から演算により求められる射出成形機の温度制御方法。
- 請求項2に記載の温度制御方法において、過昇温部の設定温度{r(k)’}が、対象とする温度制御ゾーン(K1)の設定温度{r(k)}と該温度制御ゾーン(K1)に隣接した高温部(K2)の設定温度とから補間演算により求められ、そして過昇温部の検出温度{y(k)’}が前記対象とする温度制御ゾーン(K1)の検出温度{y(k)}と該温度制御ゾーン(K1)に隣接した高温部(K2)の検出温度に基づいた定常伝熱計算により求められる、射出成形機の温度制御方法。
- 射出成形機(1)の加熱シリンダ(2)が軸方向に複数個の温度制御ゾーン(K1、K2、…)に分割され、分割された温度制御ゾーン(K1)の一方が冷却フランジの低温部(7)に隣接し、他方が加熱手段等により加熱される高温部(K2)に隣接している温度制御ゾーン(K1)に設けられている複数個の加熱手段(H1-1、H1-2)を制御する温度制御装置(10)であって、
該温度制御装置(10)は、第1、2、3の加え合わせ部(11、13、14)と、調節操作部(12)とからなり、前記第1の加え合わせ部(11)には、設定温度{r(k)}と対象とする温度制御ゾーン(11)の検出温度{y(k)}とが入力され、前記調節操作部(12)は、前記第1の加え合わせ部(11)により得られる偏差{e(k)}に基づいて対象とする温度制御ゾーン(K1)の低温部(7)に近い方の第1の加熱手段(H1-1)の主操作量{u11(k)}を演算し、前記第2の加え合わせ部(13)には、操作量上限値又は任意の設定値(Umax)と前記調節操作部(12)で得られた主操作量{u11(k)}とが入力され、前記第3の加え合わせ部(14)には、前記第2の加え合わせ部(13)により得られる偏差である余裕量算出値{Umaxーu11(k)}と前記調節操作部(12)で得られた主操作量{u11(k)}とが入力されて、対象とする温度制御ゾーン(K1)の高温部(K2)に近い方の第2の加熱手段(H1-2)の補償操作量{u12(k)}を出力することを特徴とする、射出成形機の温度制御装置。 - 請求項4に記載の温度制御装置において、第2の加え合わせ部(13)の一方の入力端子には、対象とする温度制御ゾーン(K1)と、該温度制御ゾーン(K1)に隣接している高温部(K2)との間の過昇温部の設定温度{r(k)’}と、前記過昇温部の検出温度{y(k)’}との偏差{e(k)’}に基づいて演算された演算値{Umax(k)}が入力されるようになっている射出成形機の温度制御装置。
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