JP3787872B2 - 硬質部材およびその製造方法 - Google Patents

硬質部材およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は硬質部材およびその製造方法に関し、より特定的には、耐摩耗性部品、摺動部品、電気・電子部品、赤外線光学部品、および成形・成型部品として用いられ、高い耐剥離性を有する硬質部材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
硬質基材を被覆する硬質炭素被膜は、アモルファス状の水素化炭素膜または炭素膜で、a−C:H(アモルファス炭化水素)、i−C(イオン炭素)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)とも呼ばれている。硬質炭素被膜は、高硬度で平面平滑性に優れ、低摩擦係数で赤外線に対して高い透過性を持つなどの特徴を有する。現在、硬質炭素被膜のこれらの優れた特性を活かして種々の分野への応用が期待されており、特に、耐摩耗性部品、摺動部品、電気・電子部品、赤外線光学部品および成形・成型部品等への応用に関し研究開発が進められている。しかしながら、硬質炭素被膜は硬質基材に対する密着力(付着力)が低いために、成膜後すぐに膜が剥離したり、成膜後すぐには剥離しなくても上記用途で使用中に膜が剥離するという問題があった。
【0003】
硬質基材から剥離することなく、密着性よく、硬質炭素被膜を形成する方法は、たとえば、特開昭64−31976号公報に記載されている。この公報に記載された方法では、炭素源ガスと90モル%以下の不活性ガスとを含む混合ガスを励起して得られるガスを硬質基材に接触させることにより、硬質炭素被膜を形成する。この方法においては、基材とその表面に形成される硬質炭素被膜との結合が良好になることの理由の1つとしては、混合ガス中の不活性ガスが硬質基材表面を洗浄しかつ活性化することが考えられている。しかし、この方法において製造された硬質炭素被膜は、ある程度の耐剥離性は有するが、実用に供することができるほどの耐剥離性を得ることができないという問題があった。
【0004】
特開昭63−286576号には、硬質基材表面に中間層を形成し、その中間層の上に硬質炭素被膜を形成する方法が示されている。図5は、この方法によって硬質炭素被膜が形成された硬質部材を示す断面図である。図5を参照して、硬質部材101は硬質炭素被膜102と、中間層103と、硬質基材104とを備えている。硬質基材104に中間層103が接している。硬質基材104の材質としては、シリコン、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタン、タングステン、モリブデン、コバルト、クロムなどの金属およびこれらの合金、前記金属酸化物、窒化物および炭化物、Al2 3 −Fe系、TiC−Ni系、TiC−Co系およびB4 C−Fe系等のサーメット、ならびに各種セラミックスからなるものが挙げられる。中間層103は、硬質基材104と硬質炭素被膜102に接合性のよい炭化珪素を主成分とする。中間層103に接するように硬質炭素被膜102が形成されている。硬質炭素被膜は炭素を主成分とする。また、硬質炭素被膜102、中間層103は非晶質であり、硬質基材104は結晶質である。
【0005】
このように構成された硬質部材においては、硬質炭素被膜102と中間層103との接合性がよい。また、中間層103と硬質基材104との接合性もよい。そのため、硬質炭素被膜102と基材104との接合性をある程度向上させることができる。その結果、中間層103がない場合に比べて、中間層103を介在させることにより、硬質炭素被膜102の耐剥離性をある程度向上させることができる。しかし、中間層103上に接する硬質炭素被膜102に極めて強い応力が加わったときには、その応力は中間層103と硬質基材104との界面にも伝わる。ここで、中間層103は非晶質であり、硬質基材104は結晶質である。そのため、中間層103と硬質基材104との界面の結合は強固ではないため、この界面にて剥離が生じる。その結果、耐剥離性に関しては十分な効果が得られないという問題があった。
【0006】
さらに、特開平2−250967には、硬質基材表面にイオンを注入し、その上に硬質炭素被膜を形成する方法が示されている。図6は、この方法により製造された硬質部材を示す断面図である。図6を参照して、硬質部材201は硬質炭素被膜202と硬質基材203とを備えている。また、硬質基材203の表面部分に注入領域204が形成されている。注入領域204と硬質炭素被膜202は接している。硬質炭素被膜202の主成分は炭素である。硬質基材203の主成分は、たとえばWC系、TiC系、WC−Co系、WC−TiC−Co系、WC−TiC−TaC−Co系などの超硬合金などの非Si系材料または炭化珪素(SiC)、窒化珪素(Si3 4 )、酸窒化珪素(SiON)などのセラミックスなどのSi系材料を挙げることができる。注入領域204は硬質基材203の表面にチタン、ジルコニウム、ハウニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンおよび珪素からなる群より選ばれた少なくとも1種が注入された領域である。
【0007】
このように構成された硬質部材201においては、硬質炭素被膜202の主成分である炭素と注入領域204に注入された金属原子とが反応することにより、金属炭化物が形成される。そのため、硬質炭素被膜202と注入領域204の中の金属原子が強力に結合している。また、注入領域204中の金属原子は硬質基材203へのアンカー効果により硬質基材203と強力に結合している。そのため、硬質炭素被膜202と硬質基材203との結合は強力なものとなる。
【0008】
次に、図6に示す硬質部材201の製造方法について、以下に説明する。まず、硬質基材203に前述の金属をイオン注入法により注入する。ここで、イオンの注入における注入エネルギは、通常5keV〜3MeV、好ましくは数十keV〜数百keV程度である。また、イオン注入量は、通常1010イオン/cm2 以上、好ましくは1016〜1017イオン/cm2 である。このようにして、硬質基材203の表面に注入領域204を形成する。
【0009】
次に、その表面に注入領域が形成された硬質基材を反応室内に設置して、炭素源ガスを含有する原料ガスを反応室内に導入する。この原料ガスを励起して得られるガスを硬質基材の注入領域に接触させることにより、注入領域上に硬質炭素被膜を形成する。このようにして、図6に示す硬質部材201が形成される。
【0010】
このように構成された硬質部材の製造方法においては、注入領域を形成する際に、数十keV〜数百keV程度の注入エネルギでイオン注入を行なう必要がある。そのため、高電圧を発生させるための装置が大掛かりなものとなり、製造コストが高くつくという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、硬質基材と硬質炭素被膜との接合が強力であり、かつ製造コストの低い硬質部材およびその製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の硬質部材は、硬質基材の表面に硬質炭素被膜が形成された硬質部材であって、硬質炭素被膜と接合する硬質基材の表面部分には、改質層が形成されており、その改質層は、炭素および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種が非晶質化した非晶質部分が存在し、かつ硬質基材の成分が結晶化した結晶質部分と非晶質部分とが混在していることを特徴とするものである。
【0013】
また、硬質基材は、炭化タングステンを主成分とする超硬合金、サーメット、セラミックスおよび工具鋼からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0014】
このように構成された硬質部材においては、硬質基材の表面部分では、炭素や窒素が非晶質化した非晶質部分が存在する。また、この硬質基材の表面部分に接する硬質炭素被膜は炭素が非晶質化したものである。よって、硬質炭素被膜の構造と、硬質基材の表面部分に形成される非晶質部分の構造は非常に似ているため、硬質炭素被膜と硬質基材の非晶質部分とが強力に結合する。さらに、硬質基材の表面部分において、上記の非晶質部分と基材の主成分が結晶化した結晶質部分とが混在している。そのため、非晶質部分と結晶質部分との結合も強力なものとなる。
【0015】
その結果、硬質炭素被膜と硬質基材は非晶質部分を介在させて強力に結合されることとなる。そのため、耐剥離性の優れた硬質部材を得ることができる。
【0016】
また、本発明の硬質部材の製造方法においては、硬質基材の表面に炭素および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種のイオンを注入することにより、硬質基材の表面部分に炭素および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種が非晶質化した非晶質部分が存在し、かつ硬質基材の主成分が結晶化した結晶質部分と非晶質部分とが混在している改質層を形成する工程と、改質層に接するように硬質炭素被膜を形成する工程とを備えたものである。
【0017】
本発明の硬質部材の製造方法においては、硬質基材の表面に炭素および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種のイオンを注入することにより、硬質基材の表面部分に、炭素および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種が非晶質化した非晶質部分が存在し、かつ硬質基材の主成分が結晶化した結晶質部分と非晶質部分とが混在している改質層を形成する工程と、アルゴンガスプラズマおよびアルゴンイオンからなる群より選ばれた少なくとも1種を用いて改質層の表面をスパッタリングする工程と、スパッタリング後、アルゴンガスプラズマおよびアルゴンイオンのない状態で改質層に接するように硬質炭素被膜を形成する工程とを備えたものである。
【0018】
また、硬質基材は、炭化タングステンを主成分とする超硬合金、サーメット、セラミックスおよび工具鋼からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0019】
このように構成された硬質部材の製造方法においては、改質層の中に炭素や窒素が非晶質化した非晶質部分が存在する。また、改質層の表面に形成される硬質炭素被膜は炭素が非晶質化したものである。そのため、改質層中の非晶質部分と硬質炭素被膜の構造は非常に似ているので、硬質炭素被膜と非晶質部分が強く結合する。また、改質層中に形成された非晶質部分はアンカー効果により改質層中の基材の主成分が結晶化した結晶質部分と強く結合している。そのため、硬質炭素被膜と硬質基材非晶質部分を介在して強力に結合することとなる。
【0020】
この発明に従った硬質部材の製造方法は、アルゴンガスプラズマおよびアルゴンイオンからなる群より選ばれた少なくとも1種を用いて改質層の表面をスパッタリングし、スパッタリング後に改質層に接するように硬質炭素被膜を形成するため、改質層の表面をクリーニングすることになる。そのため、改質層中に形成された非晶質部分と硬質炭素被膜との結合をより確実なものとすることができる。
【0022】
また、改質層を形成する工程では、硬質基材の表面にイオンを注入する際の注入量が5×1016/cm2 以上であることが好ましい。
【0023】
このように構成された硬質部材の製造方法においては、硬質基材と硬質炭素被膜との間に中間層を形成する従来の硬質部材よりも耐剥離性に優れた硬質部材を得ることができる。
【0024】
また、改質層を形成する工程では、硬質基材の表面にイオンを注入する際の注入エネルギが500eV以上10keV以下であることが好ましい。このように構成された硬質部材の製造方法においては、硬質基材にチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モルブデン、タングステンおよび珪素からなる群より選ばれた少なくとも1種をイオン注入する従来の硬質部材の製造方法よりも小さい注入エネルギで耐剥離性に優れた硬質部材を得ることができる。その結果、高電圧を発生させる必要がないので、製造コストを低下させることができる。
本発明の硬質部材の製造方法においては、硬質基材の表面に炭素および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種のイオンを注入することにより、硬質基材の表面部分に炭素および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種が非晶質化した非晶質部分が存在し、かつ硬質基材の主成分が結晶化した結晶質部分と非晶質部分とが混在している改質層を形成する工程と、改質層に接するように硬質炭素被膜を形成する工程とを備え、改質層を形成する工程では、硬質基材の表面にイオンを注入する際の注入量が5×10 16 /cm 2 以上であり、注入エネルギが500eV以上10keV以下である。
【0025】
【実施例】
(実施例1)
硬質基材として組成がJIS規格K10で、平板状(20mm×20mm×2mmt)の超硬合金を用意した。ここで、JIS規格K10とは、Co(コバルト)を4〜7重量%含み、W(タングステン)を主体とした硬質層を93〜96重量%含み、硬質層中のTi(チタン)、Ta(タンタル)またはNb(ニオブ)を0〜3重量%含む超硬合金である。
【0026】
図1は、本発明の硬質部材の製造方法で用いるイオン注入装置の模式図である。図1を参照して、イオン注入装置7は、真空容器2と、ホルダ3と、イオン源4と、排気ポンプ5とを備えている。真空容器2に排気ポンプ5は接続されている。排気ポンプ5が作動することによって、真空容器2中の圧力を調整することができる。真空容器2にホルダ3が設けられており、ホルダ3の表面に組成がJIS規格K10の超硬合金からなる硬質基材1が設けられている。真空容器2にイオン源4が設けられている。イオン源4からは矢印6で示すイオンビームが発生する。矢印6で示すイオンビームは窒素イオンまたは炭素イオンのどちらのビームでもよい。矢印6で示すイオンビームが硬質基材1に接触することにより、硬質基材1にイオンが注入される。
【0027】
図2は、本発明の硬質部材の製造方法で用いる高周波プラズマCVD装置を示す模式図である。図2を参照して、高周波プラズマCVD装置12は、真空容器13と、電極14、15と、排気ポンプ16と、高周波電源17と、ガスタンク18a,bと、マスフローコントローラ19と、バルブ20とを備えている。真空容器13に排気ポンプ16が接続されており、排気ポンプが作動することにより真空容器13の内圧は調整される。電極14と高周波電源17は電気的に接続されている。電極15と高周波電源17とは電気的に接続されている。電極15に図1で示すイオン注入装置によりイオン注入が施された硬質基材11が設けられている。ガスの流量を調整するためのマスフローコントローラ19が真空容器13に接続されている。マスフローコントローラ19はバルブ20と接続されている。バルブ20はアルゴンガスが充填されているガスタンク18aと、メタンガスが充填されているガスタンク18bとに接続されている。高周波電源17の周波数は13.56MHzである。
【0028】
このように構成された装置を用いて、硬質基材への成膜を行なった。まず、図1に示すように構成されたイオン注入装置7において、真空容器2の内圧を1.0×10-5Torrとし、硬質基材1に炭素、窒素イオンを注入した。このとき、注入エネルギを一定とし、イオンの注入量をさまざまなに変化させた。
【0029】
次に、図2で示すように構成された高周波プラズマCVD装置12において、まず、真空容器13の側壁および硬質基材11を200℃として排気ポンプ16により真空容器13の内圧を10-7Torrとした。次に、ガスタンク18aに充填されたアルゴンガスをバルブ20、マスフローコントローラ19を介して真空容器13に導入して真空容器13中を10-2Torrの圧力に維持した。このとき、電極15に高周波電力(300W)を印加してアルゴンガスをプラズマ化し、硬質基材11の表面をアルゴンガスのプラズマによりクリーニングした。次に、真空容器13中のアルゴンガスを排気ポンプ16により排気した。次に、ガスタンク18bに充填されたメタンガスをバルブ20、マスフローコントローラ19を介して真空容器13に導入し、真空容器13の内圧が10-2Torrとなるようにした。次に、電極15に高周波電力(300W)を印加してメタンガスをプラズマ化し、硬質基材11の表面に炭素原子を蓄積することにより、硬質炭素被膜を形成した。なお、ここで、場合によってはアルゴンガスによる硬質基材11表面のクリーニング処理を省いてもよい。
【0030】
以上の手順で成膜した硬質部材において、硬質基材と硬質炭素被膜との密着力を評価した。密着力の評価は、CSEM社レベテスト自動スクラッチ試験器により行なった。測定方法としては、ダイヤモンド針を硬質炭素被膜に押付けて横に引き、引きながら針の荷重を増していった。このとき、膜が剥離する荷重を臨界荷重とした。膜の剥離は、膜が硬質基材から剥離する際の破壊音(アコースティックエミッション)で検出した。このような手法を用いた評価結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
Figure 0003787872
【0032】
表1において、サンプルNo.15は、硬質基材の表面をアルゴンガスのプラズマによりスパッタリングし、その上に直接、硬質炭素被膜を形成したサンプルである。サンプルNo.16は、硬質基材の表面にSiC(炭化珪素)を主成分とする中間層を形成し、その中間層の上に硬質炭素被膜を形成したサンプルである。サンプルNo.17は、硬質基材の表面にSi(珪素)を主成分とする中間層を形成し、その中間層の上に硬質炭素被膜を形成したサンプルである。サンプルNo.1において、注入量の「1E+15」は1×1015であることを意味する。サンプルNo.2〜14についても同様である。「密着力」は臨界荷重を意味する。表1からわかるように、イオン注入量を5×1016イオン/cm2 以上とすれば、サンプルNo.15〜17の従来品に比べ、高密着力が得られることが確認できた。
【0033】
(実施例2)
この実施例では、実施例1の図1で示すイオン注入装置を用いて、JIS規格K10の組成の硬質基材に炭素、窒素イオンを注入する際に、注入量を一定とし、注入エネルギをさまざまに変化させ、硬質基材を形成した。次に、このように形成した硬質基材を実施例1の図2に示す装置を用いて、実施例1と同様に基材の表面に硬質炭素被膜を形成した。
【0034】
このような手順で形成した硬質部材について、硬質基材と硬質炭素被膜との密着力を実施例1と同様の手法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
Figure 0003787872
【0036】
表2において、サンプルNo.29は、硬質基材の表面をアルゴンガスのプラズマによってスパッタリングした後、硬質基材に直接、硬質炭素被膜を形成したサンプルである。サンプルNo.30は、硬質基材の上にSiC(炭化珪素)を主成分とする中間層を形成し、その中間層の上に硬質炭素被膜を形成したサンプルである。サンプルNo.31は、硬質基材の表面にSi(珪素)を主成分とする中間層を形成し、その中間層の上に硬質炭素被膜を形成したサンプルである。注入量の「5E+17」は、5×1017であることを意味する。表2からわかるように、イオン注入エネルギを500eV以上100keV以下とすれば、従来品(サンプルNo.29〜31)に比べ、高密着力が得られることが確認できた。また、イオン注入エネルギは、500eV以上10keV以下でも十分な密着力が得られるため、高電圧を発生させる装置は必要がないことがわかった。そのため、製造コストを低減できることが予想される。
【0037】
(実施例3)
この実施例では、図1で示すイオン注入装置により、JIS規格K10の組成の硬質基材に炭素イオンを注入エネルギ40keV、注入量を5×1017イオン/cm2 でイオン注入した。次に、このイオン注入を施した硬質基材を図2で示す高周波プラズマCVD装置を用いて、アルゴンプラズマによってスパッタリングした。スパッタリングの深さは約10ナノメートルであった。次に、実施例1と同様の方法にて硬質基材の表面に硬質炭素被膜を形成した。
【0038】
図3は、実施例3において形成された硬質部材の模式的な断面図である。図3を参照して、硬質部材21は硬質基材23と硬質炭素被膜22を備えている。硬質基材23に硬質炭素被膜22が接している。
【0039】
このように構成された硬質部材の断面を透過型電子顕微鏡(日立製H−9000UHR)により加速電圧300kVで観察した。図4は、実施例3において形成された硬質部材の断面を透過型電子顕微鏡で観察したときの組織を模式的に示す図である。図4を参照して、図中の点線より上の部分が硬質炭素被膜22である。また、図中の点線より下の部分が硬質基材23である。硬質炭素被膜22の主成分はアモルファス状の炭素からなる非晶質部部24である。また、図中点線で示す硬質炭素被膜22と硬質基材23との界面からの距離をDで示す。硬質基材23において、界面からの距離Dが約10ナノメートルまでの範囲では、炭素が非晶質化した非晶質部分26と炭化タングステンが結晶化した結晶出力部分25とが混在した改質層27である。この硬質基材23中の非晶質部分26は炭素イオンのイオン注入により形成されたものである。
【0040】
このような構造を有する硬質部材においては、硬質炭素被膜22を形成する非晶質部分24と硬質基材23中のイオン注入により形成された非晶質部分26とは、ほぼ同一の構造となっている。そのため、硬質炭素被膜22を構成する非晶質部分24と硬質基材23中の非晶質部分26とが強力に結合する。また、硬質基材23中の非晶質部分26と硬質基材23中の結晶質部分25とが混在している。そのため、硬質基材23中においては、非晶質部分26と結晶質部分25が強力に結合している。
【0041】
つまり、硬質炭素被膜22を構成する非晶質部分24と硬質基材23中の非晶質部分26とが強力に結合しており、この非晶質部分26と硬質基材23中の主成分である結晶質部分25とが強力に結合している。そのため、硬質炭素被膜22と硬質基材23とが非晶質部分26を介在させて強力に結合していることとなる。その結果、図4で示すような構造を有する硬質部材は、非常に優れた耐剥離性を有する。なお、この実施例において製造した硬質部材の密着力は実施例1と同様の評価方法によると50Nであり、従来の製品に比べて高密着力が得られることがわかった。
【0042】
今回開示された実施例はすべての点で提示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の硬質部材の製造方法の第1工程に用いるイオン注入装置の模式図である。
【図2】本発明の硬質部材の製造方法の第2工程に用いる高周波プラズマCVD装置の模式図である。
【図3】本発明の硬質部材の概略断面図である。
【図4】本発明の実施例により製造された硬質部材の断面を透過型電子顕微鏡で観察したときの組織を模式的に示す図である。
【図5】従来の硬質部材の概略断面図である。
【図6】従来の硬質部材の概略断面図である。
【符号の説明】
21 硬質部材
22 硬質炭素被膜
23 硬質基材
25 結晶質部分
26 非晶質部分
27 改質層

Claims (8)

  1. 硬質基材の表面に硬質炭素被膜が形成された硬質部材であって、
    前記硬質炭素被膜と接合する前記硬質基材の表面部分には、改質層が形成されており、その改質層には、炭素および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種が非晶質化した非晶質部分が存在し、かつ前記硬質基材の主成分が結晶化した結晶質部分と前記非晶質部分とが混在していることを特徴とする、硬質部材。
  2. 前記硬質部材は、炭化タングステンを主成分とする超硬合金、サーメット、セラミックスおよび工具鋼からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の硬質部材。
  3. 硬質基材の表面に硬質炭素被膜が形成された硬質部材の製造方法において、
    前記硬質基材の表面に窒素および炭素からなる群より選ばれた少なくとも1種のイオンを注入することにより、前記硬質基材の表面部分に、炭素および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種が非晶質化した非晶質部分が存在しかつ前記硬質基材の主成分が結晶化した結晶質部分と前記非晶質部分とが混在している改質層を形成する工程と、
    前記改質層に接するように前記硬質炭素被膜を形成する工程とを備えたことを特徴とする、硬質部材の製造方法。
  4. 硬質基材の表面に硬質炭素被膜が形成された硬質部材の製造方法において、
    前記硬質基材の表面に窒素および炭素からなる群より選ばれた少なくとも1種のイオンを注入することにより、前記硬質基材の表面部分に、炭素および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種が非晶質化した非晶質部分が存在しかつ前記硬質基材の主成分が結晶化した結晶質部分と前記非晶質部分とが混在している改質層を形成する工程と、
    アルゴンガスプラズマおよびアルゴンイオンからなる群より選ばれた少なくとも1種を用いて前記改質層の表面をスパッタリングする工程と、
    前記スパッタリング後、アルゴンガスプラズマおよびアルゴンイオンのない状態で前記改質層に接するように前記硬質炭素被膜を形成する工程とを備えたことを特徴とする、硬質部材の製造方法。
  5. 前記硬質基材は、炭化タングステンを主成分とする超硬合金、サーメット、セラミックスおよび工具鋼からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項3または4に記載の硬質部材の製造方法。
  6. 前記改質層を形成する工程において、前記硬質基材の表面に前記イオンを注入する際の注入量が5×10 16 イオン/cm 2 以上であることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の超硬部材の製造方法。
  7. 前記改質層を形成する工程において、前記硬質基材の表面に前記イオンを500eV以上10keV以下の注入エネルギで注入することを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の硬質部材の製造方法。
  8. 硬質基材の表面に硬質炭素被膜が形成された硬質部材の製造方法において、
    前記硬質基材の表面に窒素および炭素からなる群より選ばれた少なくとも1種のイオンを注入することにより、前記硬質基材の表面部分に、炭素および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種が非晶質化した非晶質部分が存在しかつ前記硬質基材の主成分が結晶化した結晶質部分と前記非晶質部分とが混在している改質層を形成する工程と、
    前記改質層に接するように前記硬質炭素被膜を形成する工程とを備え、
    前記改質層を形成する工程において、前記硬質基材の表面に前記イオンを注入する際の注入量が5×10 16 イオン/cm 2 以上であり、前記イオンを500eV以上10keV以下の注入エネルギで注入することを特徴とする、硬質部材の製造方法。
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