JPH07268607A - ダイヤモンドライクカーボン薄膜を有する物品およびその製造方法 - Google Patents

ダイヤモンドライクカーボン薄膜を有する物品およびその製造方法

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JPH07268607A
JPH07268607A JP8785794A JP8785794A JPH07268607A JP H07268607 A JPH07268607 A JP H07268607A JP 8785794 A JP8785794 A JP 8785794A JP 8785794 A JP8785794 A JP 8785794A JP H07268607 A JPH07268607 A JP H07268607A
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carbon
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JP8785794A
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Masatoshi Nakayama
正俊 中山
Atsuhiro Tsuyoshi
淳弘 津吉
Yasuhiro Matsuba
康浩 松場
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Original Assignee
TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、WCを含む合金層の表面を持ち、
しかもその表面上に、十分な耐久性のダイヤモンドライ
クカーボン薄膜を備える物品を提供することを目的とす
るものである。 【構成】 本発明の物品は、少なくとも表面の一部に設
けられた炭化タングステンを含む合金層、この合金層の
上に設けられ、前記合金層の組成に対し炭素含有量のみ
が多い組成か、実質的に炭素からなる下地層、およびこ
の下地層上に設けられたダイヤモンドライクカーボン薄
膜を備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、物品表面に対するダイ
ヤモンドライクカーボン(以下、DLCと称することも
ある。)薄膜の接着性ないし結合性を向上させる技術に
関する。
【0002】
【従来技術】気相法により製造されるDLC薄膜は硬度
が高く、耐摩耗性、耐久性、耐薬品性、耐食性等に優れ
ており、また任意形状の物品に被着できるため、こうし
た特性の一つ以上が必要な物品の保護膜として有用であ
る。
【0003】気相法によるDLC薄膜製造方法には各種
の形式がある(例えば「表面化学」第5巻第108号
(1984年)第108−115頁の各種の方法参
照)。DLC薄膜は任意形状の保護すべき物品の表面に
被覆され、耐食性、耐摩耗性などの保護膜として広く利
用される。
【0004】DLC薄膜はシリコン等の基体には強固に
結合し得るが、物品の種類によっては基体に対する結合
力が弱く、外力の作用で基体から剥離し易い問題があっ
た。そのため保護被覆として耐食性、耐摩耗性等が必要
な用途において十分に効果を発揮できない。特にFe系
の金属または合金(例えば軟鋼(STC)、ステンレス
鋼、焼き入れ鋼(SKD、SKS)等)、その他、C
o、Niなどの金属の合金、ガラス、セラミックス等は
DLC薄膜に対する結合力が弱いことが知られている。
鉄を主成分とする基体は例えば機構部材、摺動部材等最
も工業的価値の高いものであるし、またガラスやセラミ
ックスではサーマルヘッド等の摺動部分などに使用され
るなど、広い用途を有するので、これらの基体の表面に
形成されるDLC薄膜の基体への接着性を向上させるこ
とが重要である。
【0005】基体に前処理を行って接着性を向上するこ
とは特開昭60−200898号、同60−20469
5号、同61−174376号等で提案されている。
【0006】特開昭60−200898号ではCo−W
C合金を基体とし、その表面にDLC薄膜を高硬度膜と
して付けるに当たり、基体の表面に予めグロー放電を直
接作用させることによりイオンエッチングすることを提
案しているが、加速電圧は印加されていないからエッチ
ング効率は接着性向上の面からは十分でなく本発明が目
的とする接着性の向上は十分に得られない。特開昭60
−204695号も上記技術と同様に成膜速度の向上を
意図してArガスを減圧室内に導入し正負電極間に電圧
を加えてプラズマを作りこれを基体に作用させるのであ
るが、プラズマのイオン濃度は低いのでエッチング効果
は接着性向上の観点からは低い。特開昭61−1743
76号は基体の接着性を向上するためにプラズマガスで
基体を処理した後、酸化処理して酸化物被膜を形成する
ことを記載している。しかし、プラズマはまず拡散によ
って正イオンが正電位のグリッドを通り抜ける必要があ
り、成膜に必要な十分な量の正イオンが基体に到達でき
ないので結果として効率の悪い方法である。従って、従
来公知の技術では基体とDLC薄膜との間の接着力が十
分に高い成膜は可能でなかった。また特開平3−801
90号にはイオンを加速して基体表面を衝撃する方法が
記載され、上記の各方法よりは優れているが必ずしも十
分な結合力が得られていない。
【0007】そこで、本発明者らは特開平5−1170
87号、同5−124875号、同5−124825
号、同5−117856号等の公報で、プラズマCVD
やイオン化蒸着法によるSiC系の薄膜の下地層を設
け、この上にDLC薄膜を設ける旨を提案している。ま
た、本発明者らは、特開平4−344211号公報で、
DLC薄膜の下地層としてMoが好ましい旨を開示し、
更に特開平5−117087号公報では、上記DLC薄
膜の下地層の硬度傾斜構造を提案している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年、硬い
材料としてWCを含有する合金が提案され、金型材料、
刃先、打抜き型などの用途にWCを含む合金、特にCo
を5〜30wt%含有するいわゆる超硬合金が盛んに用い
られている。超硬合金でも、硬度、耐摩耗性が十分でな
く、DLC保護膜のニーズは高い。このようなWCを含
む合金の表面にあっては、DLC薄膜が付きにくく、上
記のような下地層を設けても、耐久性が必ずしも十分で
ない。そこで、本発明は、WCを含む合金層の表面を持
ち、しかもその表面上に、十分な耐久性のダイヤモンド
ライクカーボン薄膜を備える物品を提供することを目的
とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(17)の本発明により達成される。 (1)少なくとも表面の一部に設けられた炭化タングス
テンを含む合金層、この合金層の上に設けられ、前記合
金層の組成に対し炭素含有量のみが多い組成か、実質的
に炭素からなる下地層、およびこの下地層上に設けられ
たダイヤモンドライクカーボン薄膜を備える物品。 (2)前記下地層が、炭化タングステンを含む合金層へ
の炭素のイオン注入によって形成されたものである上記
(1)の物品。 (3)前記下地層の厚さが、0.5nm〜1μm である上
記(2)の物品。 (4)前記下地層が、炭素をターゲットとするスパッ
タ、炭素を蒸着源とするイオンプレーティング、または
炭素を蒸着源とするイオンビームデポジションによって
形成されたカーボン膜である上記(1)の物品。 (5)前記下地層の厚さが、0.02〜5μm である上
記(4)の物品。 (6)前記下地層の形成前に、前記合金層表面にイオン
ボンバート処理を行なった上記(1)ないし(5)のい
ずれかの物品。 (7)前記下地層と前記ダイヤモンドライクカーボン薄
膜の間に形成されたけい素と炭素の非晶質混合物からな
る中間層を有する上記(1)ないし(6)のいずれかの
物品。 (8)前記中間層が、バイアス印加プラズマCVDまた
はイオン化蒸着法により形成されたものである上記
(7)の物品。 (9)前記中間層の厚さが、0.02〜3.0μm であ
る上記(7)または(8)の物品。 (10)前記中間層のけい素濃度が下地層側からダイヤ
モンドライクカーボン薄膜に向けて減少し、炭素濃度が
これに伴って増大している上記(7)ないし(9)のい
ずれかの物品。 (11)前記下地層と前記ダイヤモンドライクカーボン
薄膜の間に形成され、前記下地層よりは硬度が大きく、
前記ダイヤモンドライクカーボン薄膜よりは硬度が小さ
いビッカース硬度Hv=300〜5000kg/mm2の炭素
中間層を有する上記(1)ないし(6)のいずれかの物
品。 (12)前記中間層は、その硬度が、前記下地層から前
記ダイヤモンドライクカーボン薄膜に向かって段階的ま
たは連続的に増大されている上記(11)の物品。 (13)前記中間層が、イオン化蒸着法により形成され
たものである上記(11)または(12)の物品。 (14)前記中間層の厚さが、0.02〜3.0μm で
ある上記(11)ないし(13)のいずれかの物品。 (15)前記ダイヤモンドライクカーボン膜の屈折率が
1.9〜2.4であり、ビッカース硬度が800〜80
00である上記(1)ないし(14)のいずれかの物品。 (16)前記ダイヤモンドライクカーボン薄膜が、金属
元素、Si,N,B,P,OおよびFの1種以上を含有
する上記(1)ないし(15)のいずれかの物品。 (17)前記炭化タングステンを含む合金層が、5〜3
0wt%のCoを含む上記(1)ないし(16)のいずれか
の物品。
【0010】
【作用および効果】本発明によれば、WCを含む合金層
に対して、組成元素は同じであるが、炭素含有量の多い
組成か、実質的に炭素である下地層を形成し、この下地
層上にDLC薄膜を形成するようにしたので、DLC薄
膜はきわめて強固に接着する。
【0011】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細
に説明する。本発明の物品においては、少なくともDL
C薄膜が形成される表面層が、炭化タングステンを含む
合金層から形成されている。この合金層において、炭化
タングステン以外には、Co、TaC、TiC、Ni、
Crを含有し、特に、WCを50〜98wt%、Coを
0.5〜50wt%を含む、いわゆる超硬合金に用いるこ
とが好ましい。
【0012】この合金層上に下地層が設けられる。この
下地層は、上記合金層と組成元素は同じで炭素を多く含
有する組成か、実質的に炭素からなる組成のものであ
る。
【0013】上記下地層を、上記合金層と組成元素は同
じで炭素を多く含有する組成とする場合には、この下地
層は、一般に上記合金層への炭素のイオン注入によって
形成される。このとき、上記超硬合金の一般的な炭素の
含有量が25〜50wt%であるので、この下地層におい
ては、これ以上の炭素含有量、例えば65〜100wt%
程度とすることが好ましい。この場合、この下地層の厚
さ(深さ)は、物品本体の表面から0.5nm〜1μm 、
より好ましくは、1nm〜0.2μm 程度とされる。薄す
ぎると実効がないし、厚すぎると物品本来の特性に影響
を与える。このような深さ方向の炭素の分布は、オージ
ェ分光分析やXPS(X線プローブ分光分析)を用いて
確認すればよい。
【0014】上記下地層をCのイオン注入によって行な
う場合には、イオン注入装置に物品本体を入れ、Cを2
0〜250keV 程度に加速し、物品本体の表面に炭素イ
オンを注入すればよい。
【0015】上記下地層を、実質的に炭素からなる組成
のものとする場合には、炭素をターゲットとするスパッ
タ、炭素を蒸着源とするイオンプレーティング、または
炭素を蒸着源とするイオンビームデポジションによって
形成されたカーボン膜とすることが好ましい。
【0016】下地層はその実効をもたせるために0.0
2〜5μm 、より好ましくは0.05〜3μm の厚さと
することが好ましい。
【0017】上記下地層を、炭素をターゲットとするス
パッタによって形成する場合には、Ar、Ne等の不活
性ガスを導入してスパッタ圧力0.01〜0.5Torrに
てRF(13.56MHz )等の電源を用いて、10W 〜
2kW程度印加してカーボンターゲットをスパッタし、下
地層を形成する。
【0018】上記下地層を、炭素を蒸着源とするイオン
プレーティングによって形成する場合には、アーク方
式、RF励起方式、多陰極方式、ホローカット方式、バ
イアスプローブ方式、クラスターイオンビーム方式など
が利用できる。
【0019】上記下地層を、炭素を蒸着源とするイオン
ビームデポジションによって形成する場合には、イオン
源を用いて10-3〜10-5TorrにてAr、Ne等のイオ
ンビームをカーボンターゲットあて成膜する。イオン源
としてはカウフマン型などが用いられる。
【0020】このような下地層上には、DLC薄膜が形
成される。DLC薄膜は炭化水素を励起し、分解して得
た高硬度炭素膜である。炭化水素としては、CH4 、C
2 6 、C3 8 等の飽和炭化水素、C2 4 、C3
6 、C2 2 等の不飽和炭化水素のいずれを用いてもよ
い。
【0021】炭化水素を分解するには、例えば特開平4
−41672号等に記載されたプラズマCVD法や、特
開平1−234396号、同1−234397号、同2
−196093号等に記載されたイオン化蒸着法を用い
ることが好ましいが、この他熱フィラメント法、スパッ
タ法、イオンビーム蒸着法、熱CVD法などを用いても
よく、これらの詳細はダイヤモンド薄膜技術(総合技術
センター発行)のP73等に記載されている。なお、プ
ラズマCVD法におけるプラズマは、直流、交流いずれ
であってもよく、交流としては数Hzからマイクロ波まで
可能である。また、ダイヤモンド薄膜技術に記載のEC
Rプラズマも使用可能である。
【0022】このようにして活性種、より好ましくはイ
オンに分解された炭化水素を堆積する際には、基板とし
ての非堆積物に負のバイアス電圧を印加することが好ま
しい。バイアス電圧には直流でも交流(例えば50Hz〜
2.45GHz )でもよい。さらには電圧を印加した電極
はプラズマ中のエレクトロンが表面に付着し負の電圧と
なる。これをセルフバイアス電圧といい、これを利用す
ることもできる。すなわち、電源を印加した電極に発生
するセルフバイアスを用いてもよく、電気的に絶縁され
ている電極に直流または交流の電源を印加すればよい。
この方法は、例えば本発明者らの M.Nakayama et al, J
ournal of the Ceramic Society of Japan lin. Editio
n Vol 98 607-609 (1990) 等に詳細に記載されている。
【0023】バイアス電圧を例えば−50〜−2000
V の範囲で変化させることにより屈折率nが変化する。
用いるDLC薄膜の屈折率は1.8〜2.4程度、消衰
係数kは0〜0.02(いずれも波長632.8nm)が
好ましい。
【0024】このようにして得られたDLC膜は、巨視
的にはアモルファスであるが、微視的にはダイヤモンド
に近い結合をもつ。そして、高いビッカース硬度Hvを
もつ。本発明ではHvは800〜8000であることが
好ましい。なお、DLC膜中のH量(FTIRから測定
されるCH2 量、CH3 量は、通常0〜4×104 cm-2
程度である。これについては本発明者らの M.Nakayama
et al, Jpanese Journal of Applied Phyeics Vol.30 L
924-L926 (1991) に説明されてある。
【0025】このようなDLC膜中には、金属元素、例
えばFe、Co、Ni、Al、Cu、Ti、Cr、M
n、Mo、Ta等や、Si、N、B、P、O、Fなどの
1種以上が総計35at% 以下含有されていてもよい。こ
れらは各種有機金属化合物、シラン化合物、シロキサン
化合物、アンモニア、アミン化合物、NOx、O2 、C
2 、フッ化炭化水素、SiF4 、フォスフィン、ジボ
ラン等を用いてDLC薄膜中に導入可能である。また、
金属は電極材料から膜中に導入することも可能である。
これらの添加物によっても屈折率を制御することが可能
であり、特に屈折率を大きくするためには金属の混入は
有効である。
【0026】DLC薄膜の膜厚は0.1〜10μm の範
囲、特に0.2〜2μm の範囲であることが好ましい。
【0027】上記物品本体のDLC薄膜形成面には、下
地層の形成前に、ArまたはAr−H2 のイオンボンバ
ート処理を行なうことが望ましい。ここで、Arまたは
Ar−H2 のイオンボンバート処理とは、Arと水素の
混合ガスをチャンバーに入れ電源を入れプラズマを発生
させ、基板を処理することである。基板にバイアスを印
加するとその効果が大きい。
【0028】イオンボンバート処理は、例えば、Ar2
0SCCM、H2 5SCCMを入れ、0.05TorrにてRF(1
3.56MHz )50W を入れ、基板に−100V を印加
し、10分間程度処理する。
【0029】また、DLC薄膜は、上記のように、下地
層上に直接形成してもよいが、DLC薄膜の耐久性の向
上を更に図るため、下地層上に中間層を設け、この中間
層上にDLC薄膜を設けてもよい。
【0030】上記中間層としては、けい素と炭素の非晶
質混合物からなる層(以下、SiC非晶質層と称するこ
とがある。)、あるいは上記下地層よりは硬度が大き
く、上記ダイヤモンドライクカーボン薄膜よりは硬度が
小さいビッカース硬度Hv=300〜5000kg/mm2
炭素層(以下、硬度傾斜炭素層と称することがある。)
を設けることが望ましい。
【0031】本発明に使用するSiC非晶質層の物質
は、例えば次の3種の物質のガスより誘導される非晶質
の混合物である。ここにガスとは次の1の炭素およびけ
い素を共に含有する低分子量の化合物とガス、2と3、
1と2、1と3、または1と2と3の低分子量の物質の
混合ガスである。DLC薄膜を支持するので中間層も十
分な硬度が必要である。
【0032】(1)有機けい素化合物−メチルシランC
3 SiH3 、ジメチルシラン(CH32 SiH2
トリメチルシラン(CH33 SiH、テトラメチルシ
ランSi(CH34
【0033】(2)けい素化合物−シランSiH4 、ジ
シランSi26 、四フッ化けい素SiF4
【0034】(3)炭素化合物−メタンCH4 、エタン
26 、プロピレンC38 、エチレンC24 、ア
セチレンC22
【0035】中間層を形成するための方法は、特願平2
−14480号に記載されているバイアス印加プラズマ
CVD法、または特開昭58−174507号および特
開平1−234396号に記載されたイオン化蒸着法が
使用できる。ここで中間層の成膜後、その膜を空気にさ
らすことなく次のDLC薄膜の形成工程に移行すること
が望ましい。このため同じ真空槽を使用することが必要
である。なお、好ましくはこの工程に先立って、成膜装
置の真空室内に前記基体を配置し、Ar等のボンバード
用ガスを前記真空室内に導入し、熱陰極フィラメントと
その周りに設けられた対陰極とよりなるイオン化手段に
より電離してイオンの流れを形成し、これを前記対陰極
よりも低電位にあるグリッドにより加速して基体の表面
をボンバードして活性化する前工程を採用してもよい。
【0036】得られる中間層は結晶質ではなく非晶質で
ある。後で比較するように結晶質の中間層に比して大き
い結合力を生じる。また、中間層は最初はけい素成分を
多くし、成膜に従ってけい素成分を減少させ、炭素成分
を多くすることが望ましい。これにより結合力をさらに
向上させることができる。中間層の膜厚は0.02〜3
μm が好適であり、さらに好ましくは0.05〜0.5
μm である。あまり薄いと効果がなく、あまり厚過ぎて
も効果が飽和する。
【0037】イオン化蒸着法およびバイアス印加CVD
法による中間層の形成にあっては、前記の単独または混
合ガスを用いる。
【0038】中間層としての炭素層は、基体の硬度より
大きく且つDLC薄膜の硬度よりは小さい一定の組成の
膜でもよいが、好ましくは基体側で低硬度、ダイヤモン
ド側で高硬度にする。これにより結合性密着性を改善す
ることができる。中間層とDLC薄膜の成膜は同一のイ
オン化蒸着装置を使用し、同一の原料を使用し、単に蒸
着条件を連続的または段階的に変化させるだけでよい。
上記炭素層を形成するための方法は、特開昭58−17
4507号および特開平1−234396号に記載され
たイオン化蒸着法を使用する。この方法によれば、中間
層の成膜後に、その層を空気にさらすことなく、あるい
は作業自体を中断することなく条件をDLC薄膜の成膜
条件に変更することにより、次のDLC薄膜の形成工程
に移行することができる。炭素層は膜厚0.02〜3μ
m が好適であり、さらに好ましくは0.05〜0.5μ
m である。あまり薄いと効果がなく、あまり厚過ぎても
効果が飽和する。
【0039】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明
をさらに詳細に説明する。
【0040】物品基体 WC90wt%およびCo10wt%の合金からなる物品基
体A、WC80wt%、TaC10wt%およびCo10wt
%の合金からなる物品基体B、およびWC80wt%、T
aC5wt%およびCo15wt%の合金からなる物品基体
Cを準備した。
【0041】前処理 1)前処理D(Ar−H2 イオンボンバード) イオン化蒸着装置に物品基体をいれ、イオンボンバード
用ガスであるArを20SCCM、H2 を5SCCM導入し、
0.1Torr、DCバイアス−500V の条件で、上記物
品基体のDLC薄膜形成面をイオンボンバードした。処
理時間は、1〜20分程度とした。
【0042】2)前処理E(Arイオンボンバード) イオンボンバード用ガスであるArのみを20SCCM導入
したこと以外は、上記前処理Bと同様にして前処理を行
なった。
【0043】下地層 1)イオン注入膜 イオン注入装置に物品基体を入れ、カーボンを蒸発源と
して、50keV に加速し、物品基体の表面にCのイオン
注入を行なった。下地層は、Cが85wt% であり、その
厚さは500A であった。
【0044】2)Cスパッタ膜 Cをターゲットとし、スパッタガスとしてArを用い、
RF300W 、0.05Torrで10分スパッタした。C
スパッタ膜の膜厚は1000A であった。
【0045】3)Cイオンプレーティング膜 RF励起方式イオン化蒸着装置にカーボンを蒸発源とし
て0.1Torr、DCバイアス−500V の条件で、上記
物品基体の表面に10分間成膜した。膜厚は1500A
であった。
【0046】4)Cイオンビームデポジション膜 カーボンを蒸発源として10-5Torr、DCバイアス−5
00V の条件で、上記物品基体の表面に120分間成膜
した。膜厚は1200A であった。
【0047】中間層 1)硬度傾斜炭素膜−中間層F CH4 を原料として10SCCM導入し反応圧力0.05To
rr、RF500W の条件で基板に−250V を印加して
15分成膜した。
【0048】膜厚は2000A で、そのビッカース硬度
Hvは2000kg/mm2であった。
【0049】2)非晶質SiC膜−中間層G Si26 およびCH4 を用いてバイアス印加プラズマ
法で成膜した。バイアス電圧−250V 、RF500W
、圧力0.025Torrの条件で10分間成膜した。膜
厚は1000A であった。
【0050】X線で測定したところ、どこにもピークが
検出されず、中間層は非晶質であった。
【0051】また、DLC膜としては下記のものを成膜
した。
【0052】CH4 を原料として10SCCM導入し、反応
圧力0.05Torr、RF500W の条件で、基板にDC
バイアス−500V を印加しながら時間を変えて成膜し
た。膜厚およびビッカース硬度Hvを表1に示した。
【0053】これらの物品基体、前処理、下地層、中間
層およびDLC薄膜を表1のように組み合わせて各種物
品のサンプルを得た。得られた物品のサンプルの各々に
つき、スクラッチ力の評価を行なった。スクラッチ力
は、RHESCA社製の薄膜スクラッチ試験機SCR−
02にてダイヤモンド圧子5μm を用いた条件で測定し
た。
【0054】
【表1】
【0055】表1に示される結果から、本発明による下
地層の効果があきらかである。すなわち、本発明のCを
多く含有する下地層が形成されたサンプルについては、
スクラッチ力が2.2以上であるのに対して、上記下地
層が形成されていないサンプルについては、スクラッチ
力が、硬度傾斜炭素膜や非晶質SiC膜を設けたもので
さえ最高1.2と低かった。
【0056】なお、DLC膜中に、各種金属元素、S
i,N,B,P,O,F等を導入したところ、上記と同
等な結果を得た。

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも表面の一部に設けられた炭化
    タングステンを含む合金層、この合金層の上に設けら
    れ、前記合金層の組成に対し炭素含有量のみが多い組成
    か、実質的に炭素からなる下地層、およびこの下地層上
    に設けられたダイヤモンドライクカーボン薄膜を備える
    物品。
  2. 【請求項2】 前記下地層が、炭化タングステンを含む
    合金層への炭素のイオン注入によって形成されたもので
    ある請求項1の物品。
  3. 【請求項3】 前記下地層の厚さが、0.5nm〜1μm
    である請求項2の物品。
  4. 【請求項4】 前記下地層が、炭素をターゲットとする
    スパッタ、炭素を蒸着源とするイオンプレーティング、
    または炭素を蒸着源とするイオンビームデポジションに
    よって形成されたカーボン膜である請求項1の物品。
  5. 【請求項5】 前記下地層の厚さが、0.02〜5μm
    である請求項4の物品。
  6. 【請求項6】 前記下地層の形成前に、前記合金層表面
    にイオンボンバート処理を行なった請求項1ないし5の
    いずれかの物品。
  7. 【請求項7】 前記下地層と前記ダイヤモンドライクカ
    ーボン薄膜の間に形成されたけい素と炭素の非晶質混合
    物からなる中間層を有する請求項1ないし6のいずれか
    の物品。
  8. 【請求項8】 前記中間層が、バイアス印加プラズマC
    VDまたはイオン化蒸着法により形成されたものである
    請求項7の物品。
  9. 【請求項9】 前記中間層の厚さが、0.02〜3.0
    μm である請求項7または8の物品。
  10. 【請求項10】 前記中間層のけい素濃度が下地層側か
    らダイヤモンドライクカーボン薄膜に向けて減少し、炭
    素濃度がこれに伴って増大している請求項7ないし9の
    いずれかの物品。
  11. 【請求項11】 前記下地層と前記ダイヤモンドライク
    カーボン薄膜の間に形成され、前記下地層よりは硬度が
    大きく、前記ダイヤモンドライクカーボン薄膜よりは硬
    度が小さいビッカース硬度Hv=300〜5000kg/m
    m2の炭素中間層を有する請求項1ないし6のいずれかの
    物品。
  12. 【請求項12】 前記中間層は、その硬度が、前記下地
    層から前記ダイヤモンドライクカーボン薄膜に向かって
    段階的または連続的に増大されている請求項11の物
    品。
  13. 【請求項13】 前記中間層が、イオン化蒸着法により
    形成されたものである請求項11または12の物品。
  14. 【請求項14】 前記中間層の厚さが、0.02〜3.
    0μm である請求項11ないし13のいずれかの物品。
  15. 【請求項15】 前記ダイヤモンドライクカーボン膜の
    屈折率が1.9〜2.4であり、ビッカース硬度が80
    0〜8000である請求項1ないし14のいずれかの物
    品。
  16. 【請求項16】 前記ダイヤモンドライクカーボン薄膜
    が、金属元素、Si,N,B,P,OおよびFの1種以
    上を含有する請求項1ないし15のいずれかの物品。
  17. 【請求項17】 前記炭化タングステンを含む合金層
    が、5〜30wt%のCoを含む請求項1ないし16のい
    ずれかの物品。
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