JP2000087218A - 高密着性炭素皮膜形成材及びその製法 - Google Patents

高密着性炭素皮膜形成材及びその製法

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JP2000087218A
JP2000087218A JP25729898A JP25729898A JP2000087218A JP 2000087218 A JP2000087218 A JP 2000087218A JP 25729898 A JP25729898 A JP 25729898A JP 25729898 A JP25729898 A JP 25729898A JP 2000087218 A JP2000087218 A JP 2000087218A
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forming
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carbon film
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Kenji Yamamoto
兼司 山本
Toshiki Sato
俊樹 佐藤
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属またはセラミックからなる基材の表面
に、比較的簡単な装置及び工程で高硬度・低摩耗係数の
DLC膜を密着性よく形成し、摺動部材等として耐久寿
命の著しく改善された硬質皮膜形成材を提供すること。 【解決手段】 金属またはセラミックからなる基材の表
面に、カーボンターゲットを用いてカソード放電型アー
クイオンプレーティング法により非晶質炭素膜を形成す
ると共に、該炭素皮膜と基材の界面に、これら基材構成
元素と皮膜構成元素とからなる厚さ10〜500Åの混
合層を形成し、高密着性非晶質炭素皮膜形成材を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属もしくはセラ
ミックスよりなる基材の表面に、高硬度で且つ低摩耗係
数の非晶質炭素皮膜を形成してなる高密着性炭素皮膜形
成材とその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】非晶質炭素膜(ダイヤモンドライクカー
ボン、以下、DLC膜と略記する)は、高硬度で低摩擦
係数を有していることから、摺動部材等の摺動面に該皮
膜を形成することによって摩耗低減を図ることが検討さ
れている。
【0003】ところでDLC膜の形成法としては、これ
までメタンガスを利用したイオンビーム法やプラズマC
VD法、或いはベンゼンガスを利用したイオンプレーテ
ィング法等が検討されてきた。ところがこれらの方法
は、真空中で0.1〜1mtorr程度の希薄真空中で
成膜を行なうため成膜速度が遅く(高々1μm/h程
度)、実操業レベルの生産に適しているとは言えない。
【0004】そこで最近では、TiNやCrNなどの窒
化物の形成に多用されている成膜速度の速いカソード放
電型アークイオンプレーティング法(以下、AIP法と
いう)によってDLC膜を形成することが検討されてお
り、この方法によれば、皮膜形成源としてガスを用いる
上記方法に比べて皮膜形成速度を5倍程度に高め得るこ
とが報告されている。
【0005】しかしながらDLC膜は、TiNの如き従
来の硬質金属窒化物に比べて基材との密着性が劣るた
め、密着性の向上を期して次の様な方法が検討されてい
る。即ち、特開昭58−213872号、特開平5−1
69459号、同5−311444号などの公報には、
基材上にTi、Zr等の炭化物を形成した後、その上に
DLC膜を形成する方法、特開昭63−262467号
や特開平4−45287号公報には、中間層としてC
o、Ni、Cr等の金属層を設ける方法、特開平1−1
32779号公報には、中間層としてSi、炭素、酸素
等の化合物層を設ける方法、特開平5−117856号
公報には、基体表面に軟質のDLC膜を形成した後、そ
の上に高硬度の表面層を設ける方法、特開平7−625
41号公報には、WやTiと炭素の混合層を皮膜全体の
55〜90%厚みで形成した後、この上にDLC膜を形
成する方法、特開平7−90553号公報には、基材と
硬質カーボンの界面付近に成膜後のイオン注入によって
混合層を形成する方法、等が提案されている。
【0006】上記公知技術のうち、特開昭58-213872
号、同63-262467 号、特開平5-169459号、同5-311444
号、同4-45287 号、同5-117856号等の公報には、単純に
DLC膜と基材間に中間層を形成することは記載されて
いるが、密着性等の向上に最適のDLC膜と中間層の構
造に関する詳細な検討まではなされていない。また、特
開平7-62541 号公報には混合層に関する記述がなされて
いるが、混合層の厚みをDLC膜全体の膜厚の55〜9
0%にすることを必須の要件として定めている。しかし
ながら、中間層の硬さはDLC膜よりも劣っているの
で、この様に混合層を厚肉にすると、硬質皮膜全体とし
ての機械的特性はむしろ劣化してくることが予測され
る。また特開平7-90553 号公報には、基材とDLC膜と
の界面に混合層を設けることが記述されているが、その
方法として、成膜後のイオン注入によって混合層を形成
する方法を採用しているので、上層となるDLC膜の膜
厚が著しく制限されること、しかも、成膜後のイオン注
入によってDLC膜そのものが変質するという問題が生
じてくる。
【0007】また特開平7-90553 号公報には、混合層の
形成に、DLC膜形成後のイオン注入或いは同時蒸着を
採用する方法が記載されているが、前者の方法では成膜
後の後処理を必須とし、後者の方法ではDLC膜蒸着源
とは別に蒸着源を必要とするなど、設備的にも工程的に
も複雑になる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、特に
金属またはセラミックからなる基材を対象とし、その表
面に、比較的簡単な装置及び工程で高硬度・低摩耗係数
のDLC膜を密着性よく形成し、摺動部材として耐久寿
命の著しく改善された硬質皮膜形成材を得ることのでき
る方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る高密着性炭素皮膜形成材の製法と
は、金属またはセラミックからなる基材の表面に、カー
ボンターゲットを用いてカソード放電型アークイオンプ
レーティング法(以下、AIP法と略記する)によりD
LC膜を形成すると共に、該DLC膜と基材の界面に、
これら基材構成元素とDLC膜構成元素とからなる厚さ
10〜500Åの混合層を形成するところに要旨を有し
ている。
【0010】上記本発明の方法を実施するに当たって
は、DLC膜形成時の印加電圧を−400〜−5000
V、真空度を10mtorr以下に制御することによ
り、前記混合層の厚さをより確実に規定厚さに制御する
ことができ、或いは更に、上記DLC膜形成時におい
て、基材界面から少なくとも厚さ10Åまでは、印加電
圧:−400〜−5000V、真空度:1mtorr以
下で皮膜形成を行い、その後は−400V未満の印加電
圧でDLC膜形成を行なえば、混合層厚さをより確実に
10〜500Åに制御できるので好ましい。
【0011】また、上記DLC膜の形成に先立って、基
材表面に、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、
Mo、W、Fe、Si及びAlよりなる群から選択され
る少なくとも1種の元素からなる厚さ10〜1000Å
の中間層を形成し、該中間層と非晶質炭素皮膜の界面
に、それら中間層構成元素とDLC膜構成元素とからな
る厚さ10〜500Åの混合層を形成する方法を採用す
れば、適正厚さの中間層と混合層の存在によってDLC
膜の密着性を一段と高めることができるので好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明においては、まずDLC皮
膜の形成にAIP法を採用することを必須とする。
【0013】前述の如くAIP法では、イオンビーム法
やプラズマCVD法に比べて成膜速度が早くて工業生産
に適している。そして、DLC膜の硬度や摺動特性等は
皮膜中の水素量に大きく依存することが知られている
が、上記イオンビーム法やプラズマCVD法では、原料
としてメタンやベンゼンなどの炭化水素ガスを使用する
ため皮膜内への水素の混入が避けられず、皮膜の機械的
特性の制御が困難である。これに対しAIP法では、固
体の炭素を蒸発源として使用するため原理的に水素を含
まない皮膜の形成が可能であり、或いは、処理系内に水
素或いは上記の様な炭化水素ガスを導入することで、皮
膜中の水素量を自在に制御することができ、様々な機械
的特性の皮膜を得ることができる。
【0014】次に、上記DLC膜形成工程で、DLC膜
と基材との界面に形成されるDLC膜構成元素と基材構
成元素とからなる混合層は、密着性向上の目的を果たす
ため肉厚を10Å以上にすることが必要である。
【0015】ちなみに、金属皮膜あるいはTiNの如く
メタリックな性格を有する皮膜の場合は、基材金属との
間に金属結合が生じることによって皮膜の密着性が高め
られる。これに対しDLC膜の場合は、皮膜そのものが
化学的に不活性であるため他物質と結合し難く、基材上
に単純にDLC膜を成膜しただけでは、満足のいく密着
性が得られない。そこで本発明では、基体とDLC膜と
の界面にDLC膜構成元素と基材構成元素とからなる混
合層を設けることで密着性の向上を図るものであり、該
混合層による密着性向上効果を有効に発揮させるには、
該混合層の厚みを10Å以上とすることが必須となる。
【0016】混合層厚さの上限は、密着性向上という観
点からすると特に制限されないが、該密着性向上効果は
約500Åで飽和してそれ以上の向上は望めず、却って
成膜時間の延長といった不利益を招くので、500Å以
下に抑えることが望ましい。密着性向上と経済性の双方
を考慮してより好ましい混合層の厚さは20Å以上、更
に好ましくは30Å以上で、350Å以下、より好まし
くは250Å以下である。
【0017】上記混合層の形成法は、DLC膜の形成と
同時に基体と同一の元素を同時蒸着する方法、DLC膜
形成後にAr等の不活性ガスイオンビームにより界面を
ミキシングする方法、あるいは、DLC膜形成時に高エ
ネルギーでイオンを注入する方法等を採用できる。
【0018】尚、従来技術で説明した中間層の形成法
は、基本的にはTi、Crの如くDLC皮膜の主たる構
成元素であるCに対し高い反応性をもった元素を使用し
て密着性を高める方法であるが、界面における混合層の
存在は記載されておらず、単純に中間層を形成しただけ
では密着性の飛躍的向上は望めない。
【0019】上記厚さの混合層を基材とDLC膜の界面
にうまく形成するには、DLC膜形成時における基板へ
の印加電圧を−400V以上、より好ましくは−500
V以上で、−5000V以下、より好ましくは−300
0V以下、真空度を10mtorr以下、より好ましく
は5mtorr以下に設定することが望ましく、印加電
圧が−400V未満では、入射するイオンのエネルギー
が低いため十分な厚みの混合層が形成され難く、密着性
の向上が期待できない。一方、印加電圧が−5000V
を超えると、入射するイオンのエネルギーが高過ぎるた
めイオンの大多数が基材内部にまで注入されてしまうた
め、その上にDLC膜を形成しても十分な密着性が得ら
れがたくなる。しかも入射エネルギーが高過ぎると、基
体の温度上昇が著しくなってDLC膜の特性が劣化する
傾向も現れてくるので、印加電圧は−5000V以下に
抑えることが望ましい。
【0020】またAIP法では、ターゲットをアーク電
流により一瞬のうちに蒸発・イオン化させて基材表面へ
の成膜を行うが、真空度が10mtorrを超えると、
飛来するイオン(カーボンイオン)と残留ガスやプロセ
スガスとの衝突によりイオンのエネルギーが減少し、基
板への印加電圧を適正に制御したとしても界面ミキシン
グ層の形成が不十分になる傾向が現れてくるので、成膜
時の真空度は10mtorr以下、より好ましくは5m
torr以下にすることが望ましい。
【0021】尚、前述した如く特開平7-90553 号公報に
は、DLC膜形成後のイオン注入あるいは同時蒸着によ
り混合層を形成する方法が示されているが、前者の方法
では成膜後の後処理を必要とし、また後者の方法では、
DLC形成用の蒸着源以外に別の蒸着源を必要とするな
ど、装置や成膜操作が複雑且つ煩雑であるのに対し、本
発明では、印加電圧と真空度を適正に制御するだけでよ
く、比較的簡単な装置および操作で目的を果たすことが
できる。
【0022】上記の様にしてDLC膜を形成するに当た
り、更に好ましいのは、基材界面から厚さ10Å以上の
範囲は印加電圧:−400〜−5000V、真空度:1
mtorr以下で成膜を行い、その後、印加電圧を−4
00V以下に抑えて成膜する方法を採用すると、DLC
膜の密着性が一段と高められると共に、膜自体の硬度や
摺動特性を含めた機械的特性を高めることができるので
好ましい。
【0023】即ち、前述の如くDLC膜形成時の条件
を、印加電圧:−400〜−5000V、真空度:10
mtorr以下に制御することにより、基材とDLC膜
の界面に適正厚みの混合層が形成されて高密着性のDL
C膜を形成できるが、成膜時の真空度を10mtorr
以下に維持することの必要上、DLC膜内に水素を混入
させて機械的特性を変化させようとする場合でも、系内
に水素ガスやその他の炭化水素ガスを導入することがで
きず、その様な改質が困難になる。また−400V以上
の印加電圧領域では、基材の形状にもよるが、比較的小
さい部材に対して長時間成膜を行う際に、基材の温度上
昇が問題になることがある。
【0024】そこで、上記の様な不利益を生じることな
く高密着性を確保するには、密着性の向上に最も大きな
影響を及ぼす成膜初期のみを、真空度:10mtorr
以下、印加電圧:−400〜−5000Vの好適成膜条
件を採用するのがよい。この条件で形成されるDLC膜
の厚さは10〜2000Åの範囲が望ましく、この範囲
未満では十分な密着性が得られず、それ以上では基材の
温度上昇を生じる恐れが生じてくる。
【0025】密着性に最も影響を及ぼす初期混合層を形
成した後は、基板の温度上昇を生じることのない−40
0V未満の印加電圧で行えばよいが、印加電圧が低過ぎ
ると、DLC膜が硬度不足になる傾向が生じてくるの
で、好ましくは印加電圧を−100〜−300V程度の
範囲内で制御することが望ましい。また、この時の真空
度が高過ぎると、やはりイオンのガスによる散乱が生じ
るため20mtorr以下に抑えるのがよい。
【0026】上記DLC膜の形成に当たっては、基体と
DLC膜との間に、更にTi、Zr、Hf、V、Nb、
Ta、Cr、Mo、W、Fe、Si及びAlよりなる群
から選択される1種以上の元素からなる厚さ10Å以上
の中間層を形成してやれば、DLC膜の密着力を更に向
上させることができるので好ましい。
【0027】尚これらの元素を中間層として形成するこ
とによってDLC膜の密着性が高められることは既に公
知であるが、該中間層を形成した後に、前述した方法で
中間層構成元素とDLC膜構成元素との混合層を形成し
てやれば、DLC膜の密着性は更に向上する。該中間層
の厚みは10〜500Åの範囲が望ましく、それ未満の
厚さでは密着性向上効果が有為に発揮されず、また50
0Åを超えて中間層を厚くしてもそれ以上の密着力向上
効果は得られず、むしろ皮膜全体の硬度が低下するなど
の不利益が生じてくる。該中間層のより好ましい厚さは
20Å以上、更に好ましくは30Å以上で、400Å以
下、更に好ましくは300Å以下である。
【0028】この時、中間層とDLC膜界面に形成され
る混合層は、中間層構成元素と基材への印加電圧によっ
て変わるが、やはり10Å未満では満足な密着性向上効
果が得られず、またその効果は約500Åで飽和するの
で、それ以上に厚くすることは無駄であるばかりでな
く、前記と同様にDLC膜の熱変質などを生じる恐れも
でてくる。
【0029】なお、本発明においてDLC膜の下部に形
成される混合層は非晶質構造であることが望ましく、そ
の理由は次の通りである。
【0030】即ち混合層は、DLC膜の主な元素である
Cと下地元素(Fe、Ti、W等)との混合物として形
成されるが、該混合物が結晶質である場合と非晶質構造
を有する場合についてDLC膜の密着力を比較したとこ
ろ、該混合層が非晶質構造を有する場合においてより高
い密着力が得られることが判明した。その理由は必ずし
も明確にされた訳ではないが、DLC膜に外力が加わっ
たときに、混合層が結晶質である場合は結晶粒の粒界か
ら亀裂が生じ、密着力が低くなるのに対し、混合層が非
晶質構造である場合は、亀裂の起点とな結晶粒界が存在
しないため亀裂を生じることがなく、より高い密着性を
示すものと考えている。
【0031】本発明は以上の様に構成されており、金属
またはセラミックスよりなる基材の表面に良質のDLC
膜を高密着性で形成できるので、例えば、切削工具、塑
性加工用治具、摺動部品などの如き様々の耐摩耗性摺動
部材として極めて有効に活用できる。
【0032】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明の構成と作用効
果をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実
施例によって制限されるものではなく、前・後記の趣旨
に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも
可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包
含される。
【0033】実施例 実施例として、鏡面研磨したJIS−SKD11(HR
C60)または超硬合金(三菱マテリアル社製「UTi
20T」)を基材として使用し、これら基材の表面にD
LC膜を形成した場合の密着力を比較した場合について
説明する。
【0034】なお密着力の測定は、供試材に、先端半径
200μmのダイヤモンドロックウエル圧子を、荷重を
徐々に増加させながら押し付けてスクラッチ試験を行
い、DLC膜が剥離するときの荷重によって評価した。
荷重増加速度は100N/分、圧子の移動速度は10m
m/分とした。また、混合層の厚みはTEMによる断面
観察によって求めた。
【0035】DLC膜の形成にはカソード放電型アーク
イオンプレーティング装置を使用し、アーク電流を60
A一定、基板バイアスを0〜−5000Vの範囲で変化
させ、場合によっては真空度調整のためチャンバー内に
メタンガスを供給しつつ成膜を行った。
【0036】また比較例として、SKD11または超硬
合金(同前)よりなる基材上に、メタンガスを原料とし
イオンビーム法によってDLC膜を形成した。イオン源
としてはカウフマン型イオン源を用い、膜厚は約1μm
となる様に調整した。また同じ方法で、中間層としてT
i、W、Crを形成したものも作製した。
【0037】比較例の密着力を測定したところ、中間層
のないものは超硬/SKD11共に20Nであり、中間
層を形成したものは、中間層種類によらず30Nの密着
力を示した。結果を図1〜8に示す。
【0038】図1:基材としてSKD11または超硬合
金(同前)を使用し、成膜時の真空度を1mtorr一
定で、基板電圧を0〜−10000Vの範囲で変えるこ
とにより混合層厚みを種々変えたものについて、混合層
厚み(Å)と密着力の関係を示している。図中、○印は
基材として「SKD11」を使用した場合、●は基材と
して「超硬合金」を使用した場合を示している。
【0039】この図からも明らかである様に、DLC膜
の基材に対する密着性は混合層厚みを10Å以上にする
ことによって著しく高まることを確認できる。
【0040】図2:同じく基材としてSKD11(○
印)または超硬合金(同前:●印)を使用し、成膜時の
真空度を1mtorr一定で、基板電圧を0〜−100
00Vの範囲で変えて混合層を形成したものについて、
基板電圧(V)と密着力の関係を示している。
【0041】この図からも明らかである様に、DLC膜
を成膜する際の基板電圧を−400〜−5000Vの範
囲に設定することにより、基材に対する密着性は著しく
高まることを確認できる。しかし、基板電圧が−500
0Vを超えると、基材の明らかな温度上昇が認められ、
DLC膜の形成が進まなかった。
【0042】図3:同じく基材としてSKD11(○
印)または超硬合金(同前:●印)を使用し、成膜時の
基板電圧を−1000V一定で、真空度を0.01mt
orr〜20mtorrの範囲で変えて混合層を形成し
たものについて、真空度と密着力の関係を示している。
【0043】この図からも明らかである様に、DLC膜
を成膜する際の真空度を10mtorr以下に制御する
ことにより、基材に対する密着性は著しく高まることを
確認できる。
【0044】図4:成膜の初期に基板電圧−1000V
をかけてDLC膜厚みを5〜2000Åの範囲で変化さ
せ、その上に−300Vで約1μmの膜形成を行なった
ときの密着力に与える影響を調べた結果を示したグラフ
である。この結果から、密着力は初期の基板電圧−10
00Vで形成したときの膜厚に依存し、本発明によれば
比較例よりも明らかに高い密着力を有していることが分
かる。
【0045】図5〜8:成膜時の基板電圧を−1000
V、真空度を1mtorrとし、SKD11(○印)ま
たは超硬合金(同前:●印)よりなる基材上に、Tiま
たはWよりなる中間層を5〜2000Åの範囲で形成し
た後、その上にDLC膜を形成したもののについて、中
間層厚さと密着力の関係を図5,6に示している。
【0046】これらの図からも明らかである様に、中間
層を形成した場合は、その厚みを10Å以上とすること
により、比較例よりも優れた密着性が得られている。こ
の挙動は下地層の種類には殆ど関わりなく、Ti,W以
外に、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、F
e、Si、Alを使用した場合でも殆ど変わらないこと
を確認している。
【0047】また、図7,8は、中間層とDLC膜の界
面に形成される混合層の厚みが密着性に及ぼす影響を示
したグラフであり、この場合も、混合層厚みを10Å以
上とすることにより密着性を著しく高め得ることが分か
る。
【0048】また、SKD11または超硬合金よりなる
基材上に、Tiよりなる中間層を厚さ500Åで形成
し、その上に、基板電圧:−1000V、真空度:1m
torrでDLC膜を形成し、このときの基材温度を1
00℃または300℃に変えることにより、Ti層−D
LC膜間に形成される混合層の結晶性と密着力の関係を
調べた。
【0049】その結果、基材温度を100℃に設定した
ときに形成される混合層は非晶質であり密着力は100
Nであったのに対し、基板温度を300℃に設定したと
きに形成される混合層には結晶質のTiC化合物が検出
され、密着力は50Nでかなり低くなることが確認され
た。
【0050】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、金
属またはセラミックからなる基材を対象とし、その表面
にカソード放電型アークイオンプレーティング法によっ
て特定厚さの混合層を形成する方法を採用することによ
り、比較的簡単な装置及び工程で高硬度・低摩耗係数の
DLC膜を密着性よく形成し、摺動部材として耐久寿命
の著しく改善された硬質皮膜形成材を製造し得ることに
なった。
【図面の簡単な説明】
【図1】成膜時の真空度を一定とし、基板電圧を変える
ことにより混合層厚みを種々変えたものについて、混合
層厚み(Å)と密着力の関係を示すグラフである。
【図2】成膜時の真空度を一定とし、基板電圧を変えて
混合層を形成したものについて、基板電圧(V)と密着
力の関係を示すグラフである。
【図3】成膜時の基板電圧を一定とし、真空度を変えて
混合層を形成したものについて、真空度と密着力の関係
を示すグラフである。
【図4】成膜の初期に高い基板電圧でDLC膜厚を形成
し、その上に比較的低い基板電圧で膜形成を行なったと
きの密着力に与える影響を調べた結果を示すグラフであ
る。
【図5】Tiよりなる中間層を形成したときの中間層厚
みが密着力に与える影響を示したグラフである。
【図6】Wよりなる中間層を形成したときの中間層厚み
が密着力に与える影響を示したグラフである。
【図7】Tiよりなる中間層を形成し、その上にDLC
膜を形成したときの両者の界面に形成される混合層厚み
と密着力の関係を示すグラフである。
【図8】Wからなる中間層を形成し、その上にDLC膜
を形成したときの両者の界面に形成される混合層厚みと
密着力の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K029 AA02 AA04 BA02 BA07 BA09 BA11 BA16 BA17 BA34 BA35 BA55 BA64 BB02 BB10 BC00 CA03 DD06 EA01 EA03 EA09

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属またはセラミックからなる基材の表
    面に、カーボンターゲットを用いてカソード放電型アー
    クイオンプレーティング法により非晶質炭素膜を形成す
    ると共に、該炭素皮膜と基材の界面に、これら基材構成
    元素と皮膜構成元素とからなる厚さ10〜500Åの混
    合層を形成することを特徴とする高密着性非晶質炭素皮
    膜形成材の製法。
  2. 【請求項2】 非晶質炭素皮膜形成時の印加電圧を−4
    00〜−5000V、真空度を10mtorr以下に制
    御する請求項1に記載の製法。
  3. 【請求項3】 上記非晶質炭素皮膜形成時において、基
    材界面から少なくとも厚さ10Åまでは、印加電圧:−
    400〜−5000V、真空度:1mtorr以下で皮
    膜形成を行い、その後は−400V未満の印加電圧で皮
    膜形成を行う請求項1に記載の製法。
  4. 【請求項4】 非晶質炭素皮膜の形成に先立って、基材
    表面に、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、M
    o、W、Fe、Si及びAlよりなる群から選択される
    少なくとも1種の元素からなる厚さ10〜1000Åの
    中間層を形成し、該中間層と非晶質炭素皮膜の界面に、
    それら中間層構成元素と非晶質炭素皮膜構成元素とから
    なる厚さ10〜500Åの混合層を形成する請求項1〜
    3のいずれかに記載の製法。
  5. 【請求項5】 前記混合層が非晶質構造である請求項1
    〜4のいずれかに記載の製法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の方法に
    よって製造したものである高密着性炭素皮膜形成材。
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