JP3786797B2 - ストレッチ包装用フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なストレッチ包装用フィルムに関するものである。詳しくは、食品を主体とする小売商品のプリパッケージに使用されるストレッチ包装用として好適であり、透明性、包装機械適性、包装後の仕上がり、ヒートシール性および耐寒性等の優れた特性を兼ね備えたストレッチ包装用フィルムである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、青果物、鮮魚、精肉、惣菜等の食品と直接またはプラスチックトレイに載せてストレッチ包装するフィルムとしては、商品価値を向上させるための透明性、光沢、防曇性、包装をタイトに維持するための粘着性、ヒートシール性、タイトな包装を得るための均一な伸び特性、柔軟性、ストレッチ包装作業性向上のための包装機械適性や冷凍保存、運搬時の耐寒性および突き刺し強度等が必要とされる。
【0003】
従来、このような特性を満たすフィルムとしては、軟質ポリ塩化ビニルフィルム(軟質PVCフィルム)が使用されてきた。
【0004】
一方、上記軟質PVCフィルムに代わる材料として、ポリオレフィン系樹脂を素材としたストレッチ包装用フィルムが検討されている。例えば、プロピレン系のランダム共重合体を主成分とする層の両面にエチレン−酢酸ビニル共重合体を積層したストレッチ包装用フィルムが提案されている(特開昭61−44635号公報)。このストレッチ包装用フィルムは、ヒートシール可能な温度幅は十分広いが、フィルムの包装機械適性および耐寒性については改良の余地がある。
【0005】
また、特開平6−100019号公報には、結晶性ポリプロピレンと炭素数3〜12のα−オレフィンから選ばれた少なくとも一種のα−オレフィンとの共重合体からなる組成物の層の両面にエチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体などの中から選ばれたエチレン系共重合体を積層した食品包装用ストレッチフィルムが提案されている。この食品包装用ストレッチフィルムは、透明性およびヒートシール性は、比較的良好であるが、包装機械適性および包装後の仕上がりにおいて未だ改良の余地が残されている。
【0006】
更に、特開平9−154479号公報、同9−165491号公報には、プロピレン系樹脂に石油樹脂類、水素添加スチレン系エラストマーを配合した食品包装用ストレッチフィルムが提案されている。この食品包装用ストレッチフィルムは、透明性、包装機械適性、包装仕上がりは良好であるが、ヒートシール性および耐寒性については、改良の余地が残るものであった。
【0007】
このように多くのポリオレフィン系ストレッチ包装用フィルムが提案されているが、透明性、包装機械適性、包装仕上がり、ヒートシール性および耐寒性に優れたストレッチ包装用フィルムは未だ提案されていないのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、良好な外観、包装機械適性、包装仕上がり、ヒートシール性および耐寒性に優れたストレッチ包装用フィルムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を続けてきた結果、特定の軟質ポリオレフィン系樹脂、結晶性ポリプロピレン樹脂および石油樹脂、テルペン樹脂及びロジン樹脂等の樹脂の水素添加誘導体からなる基材層の両表面に特定のエチレン−酢酸ビニル共重合体よりなる表面層を積層し、該積層フィルムのX線回折法によって求めた押出方向に対するポリプロピレンの結晶配向係数が特定の値に調整されたストレッチ包装用フィルムより上記課題が全て解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記(a)〜(c)の樹脂成分を合計で100重量%となるように配合した樹脂組成物からなる基材層と該基材層の両表面に積層され、酢酸ビニルに基づく単量体の含有量が5〜20重量%のエチレンー酢酸ビニル共重合体からなる表面層とよりなる積層フィルムであって、X線回折法によって求めた押出方向に対するポリプロピレンの結晶配向係数が0.25以下であることを特徴とするストレッチ包装用フィルムである。
【0011】
(a)軟質ポリオレフィン系樹脂 90〜20重量%
(b)結晶性ポリプロピレン樹脂 5〜40重量%
(c)石油樹脂、テルペン樹脂及びロジン樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂の水素添加誘導体 5〜40重量%
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明のストレッチ包装用フィルムの基材層に用いられる軟質ポリオレフィン系樹脂としては、密度0.9以下の、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとのランダムあるいはブロック共重合体、エチレンとプロピレンと炭素数4以上のα−オレフィンとのランダムあるいはブロック共重合体、プロピレンと炭素数4以上のα−オレフィンとのランダムあるいはブロック共重合体およびそれらの混合物が挙げられる。
【0014】
上記軟質ポリオレフィン系樹脂として、Multiple-Pulse Magnetic Resonance on Some Crystalline Polymers (Polymer Journal,vol3、No.4,p448-462,1972;K.Fuzimoto,T.Nishi and R.Kado)に記載のパルス法NMRで求めた、結晶成分(a)、拘束された非晶成分(b)および拘束されない非晶成分(c)の中で、次式に示す結晶成分(a)の重量分率が、10〜50重量%、好ましくは、10〜40重量%のものが好適に使用される。
【0015】
【数1】
Figure 0003786797
【0016】
即ち、上記結晶成分(a)の重量分率が10重量%未満の場合、フィルムの巻出し性、カット性が十分でなくなる傾向があり好ましくない。また、該結晶成分(a)の重量分率が50重量%を超える場合、フィルムの柔軟性が低下して、ストレッチ性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0017】
また、該軟質ポリオレフィン系樹脂は、動的粘弾性測定で得られたtanδピーク温度が−10℃以下であることが、ストレッチフィルムの耐寒性をより改善するために好ましい。
【0018】
さらに、本発明のストレッチ包装用フィルムの基材層において、より好適に用いられる軟質ポリオレフィン系樹脂は、プロピレン−エチレンブロック共重合体が、結晶性ポリプロピレンおよび石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂等の樹脂の水素添加誘導体との相溶性の観点から好ましい。
【0019】
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が、70〜90モル%、好ましくは、70〜85モル%、エチレンに基づく単量体単位の含有量が10〜30モル%好ましくは、15〜30モル%が好適である。即ち、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が、70モル%未満の場合、すなわち、エチレンに基づく単量体単位の含有量が30モル%を超える場合は、フィルムの透明性が低下して好ましくない。また、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が、90モル%を超える場合、すなわち、エチレンに基づく単量体単位の含有量が10モル%未満の場合は、フィルムの柔軟性、耐寒性が低下して好ましくない。
【0020】
また、該プロピレン−エチレンブロック共重合体のMFRは、フィルムの製膜性、強度の観点から、好ましくは、0.1〜10g/10min、更に好ましくは、0.5〜8g/10minが好ましい。
【0021】
また、該プロピレン−エチレンブロック共重合体中のポリプロピレン成分およびプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の成分割合は、ポリプロピレン成分が、5〜35重量%、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分が、65〜95重量%のものが好ましい。即ち、ポリプロピレン成分およびプロピレン−エチレンランダム共重合体成分を上記範囲とすることにより、フィルムの製膜性、透明性および耐寒性が、特に良好となる。
【0022】
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体は、前記ポリプロピレン成分およびプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で少量の他のα−オレフィン重合体よりなる成分、例えば、2重量%以下のポリブテン成分等が含有されても良い。
【0023】
本発明のストレッチ包装用フィルムの基材層において好適に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体は、特公平7−53771号公報に記載されている公知の方法よって製造することができる。市販されている代表的なものとしては、(株)トクヤマ製のPERを挙げることができる。
【0024】
本発明のストレッチ包装用フィルムの基材層に用いられる結晶性ポリプロピレン樹脂としては、従来公知の方法で製造されるプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレンと炭素数4以上のαオレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のαオレフィンとのランダム共重合体およびそれらの混合物が挙げられる。
【0025】
上記結晶性ポリプロピレン樹脂としては、昇温溶離分別法により分別された、横軸を溶出温度(℃)、縦軸を溶出重量割合で表した溶出曲線において、90℃以上の溶出量成分が60重量%以上であることが、ヒートシール性の観点から特に好ましい。
【0026】
尚、昇温溶離分別法は、例えば、Journal of Applied Polymer Science;Applied Polymer Symposium 45、1−24(1990)に詳細に記載されている方法である。まず、高温の高分子溶液を、珪藻土の充填剤を充填したカラムに導入し、カラム温度を徐々に低下させることにより、充填剤表面に融点の高い成分から順に結晶化させ、次にカラム温度を徐々に上昇させることにより、融点の低い成分から順に溶出させて溶出ポリマー成分を分取する方法である。本発明では、実施例に示したように測定装置としてセンシュー科学社製SSC−7300型を用いて、溶媒O−ジクロロベンゼン、流速2.5ml/min、昇温速度4℃/hr、カラムφ30mm×300mmの条件で測定した値である。
【0027】
本発明のストレッチ包装用フィルムの基材層に用いられる石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂の水素添加誘導体としては、シクロペンタジエンまたはそれらの二量体からの脂環式石油樹脂やC9成分からの芳香族石油樹脂の水素添加誘導体等、リモネンからのテルペン樹脂水素添加誘導体等、ガムあるいはウッドロジンからのロジン樹脂水素添加誘導体等が挙げられる。これらの水素添加誘導体は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明のストレッチ包装用フィルムの基材層は、軟質ポリオレフィン系樹脂が90〜20重量%、好ましくは、85〜25重量%、さらに好ましくは、85〜30重量%、結晶性ポリプロピレン樹脂が5〜40重量%、好ましくは、10〜40重量%、さらに好ましくは、10〜35重量%、石油樹脂、テルペン樹脂及びロジン樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂の水素添加誘導体が5〜40重量%、好ましくは、10〜40重量%、さらに好ましくは、10〜35重量%よりなり、上記樹脂成分を合計で100重量%となるように調整された樹脂組成物よりなる。
【0029】
即ち、基材層を構成する樹脂組成物において、軟質ポリオレフィン系樹脂の配合量が90重量%を超える場合、カット性、トレイ底面の折り込み性等の包装機械適性が低下して好ましくない。また、該軟質ポリオレフィン系樹脂の配合量が20重量%未満の場合、フィルムの透明性、柔軟性、耐寒性が低下して好ましくない。
【0030】
また、基材層を構成する樹脂組成物において、結晶性ポリプロピレン樹脂の配合量が5重量%未満の場合、ヒートシール性が低下して好ましくない。また、結晶性ポリプロピレン樹脂の配合量が40重量%を超える場合は、フィルムの透明性、包装仕上がりが低下して好ましくない。
【0031】
更に、基材層を構成する樹脂組成物において、前記水素添加誘導体の配合量が5重量%未満の場合は、トレイ底面の折り込み性、包装仕上がりが低下して好ましくない。また、該水素添加誘導体の配合量が40重量%を超える場合は、耐寒性、成形加工安定性が低下して好ましくない。
【0032】
本発明の基材層に使用される上記樹脂組成物には、ハイドロタルサイト類を添加することがより好ましい。一般に、ポリプロピレン、ポリエチレンに代表されるようなポリオレフィン系樹脂を重合する触媒系には、含ハロゲン遷移金属触媒が微量含まれているため、ポリオレフィン系樹脂中に不純物として、ハロゲン化物が極微量存在する。そのため、樹脂添加剤として、通常ステアリン酸カルシウム等の飽和脂肪酸塩がハロゲン捕捉剤として添加される。しかしながら、ステアリン酸カルシウム等の飽和脂肪酸塩あるいはその分解物は、フィルム表面にブリードアウトし、表面外観を損ねたり、防曇性を低下させる。ステアリン酸カルシウム等の飽和脂肪酸塩ハロゲン捕捉剤の代わりに、ハドロタルサイト類を添加することにより、上記課題が解決されると共に驚くべきことに透明性も向上することが判った。
【0033】
本発明に好適に用いられるハイドロタルサイト類は、下記一般式で示される化合物より選ばれた少なくとも一種の化合物である。
【0034】
xAly(OH)2(x-1)+3y・CO3・nH2O (1)
xAly(OH)2(x-1)+3y・HPO4・nH2O (2)
(但し、Mは一種以上の二価金属原子であり、xおよびyは、正の整数であり、nは0以上の数である。)
上記(1)、(2)式中にMとして示されている二価金属原子は、例えば、周期律表第IIA族金属原子および同第IIB金属原子から選ばれ、これらの中でもマグネシウム、カルシウム、亜鉛の各原子で構成されるハイドロタルサイト類が一般的である。
【0035】
本発明の基材層に使用される上記樹脂組成物に添加されるハイドロタルサイト類の配合量は、基材層に使用される上記樹脂組成物100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは、0.02〜0.5重量部であることが、ハロゲン捕捉機能およびフィルムの透明性の点から好ましい。
【0036】
本発明に好適に用いられるハイドロタルサイト類は、どのような添加方法を用いても良いが、基材層として用いられる軟質ポリオレフィン系樹脂および結晶性ポリプロピレン樹脂中に予め添加しておく方が、分散性の観点から効果的である。
【0037】
また、本発明の上記基材層の樹脂組成物には、必要に応じて添加成分、例えば、ポリブテン、パラフィン等の低分子粘調物質、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、防曇剤、粘着剤、光安定剤、ガス吸着剤、着色剤、香料、抗菌剤等を添加することができる。
【0038】
本発明の表面層の樹脂として用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルに基づく単量体の含有量が、5〜20重量%、好ましくは、7〜18重量%である。該含有量が、5重量%未満の場合、ヒートシール性が低下して好ましくない。また、該含有量が、20重量%を超える場合、フィルムのカット性およびフィルムの粘着性が強すぎて、フィルムの搬送性、底面折り込み性が低下して好ましくない。
【0039】
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂よりなる表面層には、ポリブテン、パラフィン等の低分子粘調物質、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、防曇剤、粘着剤、光安定剤、ガス吸着剤、着色剤、香料、抗菌剤等を目的に応じて添加することができる。
【0040】
本発明のストレッチ包装用フィルムは、X線回折法によって求めたフィルムの押出方向に対するポリプロピレンの結晶配向係数が0.25以下、好ましくは、0.20以下である。即ち、該結晶配向係数が、0.25を超える場合、フィルムの押出方向に対するポリプロピレンの結晶配向の程度が大きくなりすぎて、フィルムのカット性の低下および押出方向と垂直方向にストレッチ包装した場合、フィルム表面が白化して好ましくない。
【0041】
本発明のストレッチ包装用フィルムの製造方法は、本発明に示したポリプロピレンの結晶配向係数を上記範囲に制御するために、上向き空冷インフレーション法による成形方法が好適に採用される。上向きインフレーション法において、本発明に示した結晶配向係数を上記範囲に制御するためには、特に、樹脂温度、冷却ガス温度およびブロー比を下記に示すような条件にすることが好ましい。即ち、樹脂温度は、180〜220℃が好ましく、さらに好ましくは、180〜210℃、冷却ガス温度は、0〜30℃が好ましく、さらに好ましくは、3〜30℃、ブロー比は、3〜20が好ましく、さらに好ましくは、5〜15である。
【0042】
本発明のストレッチ包装用フィルムの厚みは、通常、フィルム全体で5〜30μmであり、好ましくは、7〜20μmである。上記厚みより薄い場合は、精度の良いフィルムを成形することが難しくなるだけでなく、フィルム強度が低下する傾向にある。上記厚みより厚い場合は、コスト的に不利だけでなく、タイトな包装がしにくくなる傾向がある。さらに、各表面層の厚みは、基材層の厚みに対して10〜100%となる範囲がヒートシール性の観点から好ましい。
【0043】
【発明の効果】
本発明のストレッチ包装用フィルムは、透明性、包装機械適性、包装仕上がり、ヒートシール性および耐寒性に優れるものである。
【0044】
【実施例】
以下に、本発明を具体的に説明するために実施例および比較例を示すが、本発明は、これらの実施例になんら限定されるものでない。また、下記の実施例および比較例において各種測定値は、以下の方法で実施した。
【0045】
1.測定方法
(1)13C―NMRによるエチレン含有量の測定
Polymer 29、1848(1988)に記載されている方法により、ピークの帰属を行ない、Macromolecus 10、773(1977)に記載されている方法により、エチレン含量の測定を行なった。
【0046】
(2)ポリプロピレンの結晶配向係数の測定
日本電子製のX線回折装置JDX−3500に、繊維試料装置を装着し、次の条件で測定した。
【0047】
ターゲット :銅
管電流・電圧 :40kv−400mA
X線入射法 :垂直ビーム透過法
1)2θ走査(ブラッグ角)測定
測定角範囲(2θ) :8〜32°
ステップ角度 :0.1°
計数時間 :2秒
2)面内回転(β回転)測定
測定角範囲(β) :−20〜110°
ステップ角度 :0.5°
計数時間 :2秒
フィルムを押出方向に15mm×幅5mmに切り出し、短冊状サンプルを100枚重ねて、繊維試料装置に装着し、まず、フィルム面に対して垂直にX線を入射させて垂直透過法にて2θ走査を行い、ポリプロピレン結晶の(110)面および(040)面のブラッグ角を決定した。次に、(110)面のブラッグ角にカウンターを固定して、試料を面内回転させ、(110)面に関して強度分布測定を行った。同様にして(040)面の強度分布測定を行った。空気散乱等によるバックグランド強度を求めた後、それぞれ(110)面および(040)面の回折強度分布より差し引いて、(110)面および(040)面の配向分布曲線を得た後、ポリプロピレンの結晶配向係数を求めた。
【0048】
(3)パルス法NMRによる結晶成分量の測定
日本ブルカー(株)製PC−120装置を用いて、測定周波数20MHzにて、1Hとして、測定パルス系列をソリッドエコー法を用いて、測定温度30℃、パルス繰り返し時間5秒、積算回数200回で測定した。得られた磁化減衰曲線を対数プロットし、文献K.Fujimoto,T.Nishi and R.Kado,Polymer.J.,Vo1.3,448−462(1972)に記載の方法で成分分離を行い各成分を求めた。
【0049】
(4)動的粘弾性測定
セイコー電子工業株式会社製粘弾性測定装置DMS200を用いて、測定周波数10Hz、昇温速度2℃/minで測定した。
【0050】
(5)昇温溶離分別法
(株)センシュー科学社製、SSC−7300型を用い、以下の測定条件にて行った。
【0051】
溶媒 ;O−ジクロロベンゼン
流速 ;2.5ml/min
昇温速度 ;4℃/hr
サンプル濃度 ;0.7wt%
サンプル注入量 ;100ml
検出器 ;赤外検出器、波長3.41μm
カラム ;Φ30mm×300mm
充填剤 ;Chromosorb P 30〜60mesh
カラム冷却速度 ;2.0℃/hr
(6)MFRの測定
JIS K7210に準じて、プロピレン樹脂は、230℃、2.16K g荷重で、エチレン系重合体は、190℃、2.16Kg荷重で行なった。
(7)ヘイズの測定
JIS K7105に準じて測定した。
【0052】
(8)フィルムの成形加工性
多層上向き空冷インフレーション成形において、製膜速度を60m/minでのバブルの安定性を2段階評価した。
【0053】
○:バブル安定性が良好である。
【0054】
×:バブルの横揺れ、バブル径が変動する。
【0055】
(9)包装機械適性
寺岡精工(株)製ストレッチ自動包装機AW−3600を用いて、自動条件にてC−33(サイズ:280mm×210mm×28mm)およびFS−D5(サイズ:298mm×155mm×22mm)発砲ポリスチレントレイの上に、200gの粘土を載せ、幅350mmのフィルムで30パック連続包装し、各項目を評価した。
【0056】
▲1▼カット性
自動包装機内で、フィルムがギザ刃でカット可能かどうかを2段階評価した。
【0057】
○:問題なくカット可能である。
【0058】
×:カットは可能であるが、切り口がスムーズでなく。
【0059】
▲2▼フィルム搬送性
自動包装機内で、フィルムがスムーズに搬送するかどうかを2段階評価した。
【0060】
○:問題なくスムーズに搬送し、ベルトからのフィルムの抜けも良好である。
【0061】
×:ベルトからのフィルムの抜けが悪く、包装トラブルが発生する。
【0062】
▲3▼底面折り込み性
C−33の発泡トレイを包装した場合、トレイ底面部でのフィルムの重なり具合を3段階評価した。
【0063】
○:フィルムの重なり具合が20mm以上
△:フィルムの重なり具合が3〜20mm
×:フィルムの重なり具合が3mm未満か、フィルムの重なりがない。
【0064】
▲4▼仕上がり
FS−D5の発泡トレイを包装した場合の皺の発生程度2段階評価した。
【0065】
○:皺の発生がなく良好である。
【0066】
×:皺が発生する。
【0067】
▲5▼表面の白化程度
C−33の発泡トレイを包装した場合、フィルム表面の白化程度を2段階評価した。
【0068】
○:表面白化がなく良好である。
【0069】
×:フィルム表面が白化する。
【0070】
(10)ヒートシール性の評価
フィルムを1cm×5cmにサンプリングし、2枚重ねて、(株)安田精機製作所製JISヒートシーラーにて、所定の温度にて圧力0.5kg/cm2、1秒間でシールして、フィルム同士が溶着する温度(TS)およびフィルムが融けて穴があく温度(TP)を求め、TP−TSをヒートシール性の評価とした。
【0071】
(11)耐寒性の評価
ダートインパクトテスターにて、0℃の条件下測定した。
【0072】
2.使用樹脂
・軟質ポリオレフィン系樹脂:PER T310V (株)トクヤマ製(結晶成分量22.0重量%、tanδピーク温度−19℃、エチレンに基づく単量体の含有量22モル%、MFR1.5g/10min、ハイドロタルサイト類DHT−4A 協和化学工業製、添加量0.2重量%)
・結晶性ポリプロピレン樹脂:FA520 (株)トクヤマ製(MFR2.0g/10min、昇温温度溶離分別法によって求めた90℃以上の溶出量成分74重量%、ハイドロタルサイト類DHT−4A 協和化学工業製、添加量0.2重量%)
実施例1
表1に示すように、基材層の樹脂として、PER T310V 80重量%、FA520 10重量%、水素添加テルペン樹脂(クリアロン P125:ヤスハラケミカル製)10重量%からなる組成物を用い、表面層の樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(エバフレックスV5714:MFR2.0g/10min、酢酸ビニルに基づく単量体の含有量16重量%)98重量%、ジグリセリンモノオレート2重量%の組成物を用いた。これらの樹脂を、多層上向きインフレーションフィルム成形機を用いて、第2層の押出機から基材層樹脂組成物、第1層および第3層の押出機からエチレンー酢酸ビニル共重合体組成物を第1層:第2層:第3層=1:3:1の吐出量で環状ダイスに押し出し、200℃で環状ダイス内にて積層し、フィルム状に押し出した。次いで、溶融円筒状フィルムの内部にエアーを吹き込み、外部より環状に5℃のエアーを吹き付けて、空冷固化させ、ブロー比7.0で厚さ13μmのフィルムを得た。ポリプロピレンの結晶配向係数を表1に、各種評価結果を表2に示した。
【0073】
実施例2〜4、比較例1〜3
表1に示すように、基材層樹脂組成物の配合を変えた以外は、実施例1と同様に行った。ポリプロピレンの結晶配向係数を表1に、各種評価結果を表2に示した。
【0074】
比較例4
実施例1において、表面層の樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(エバフレックスV5701:MFR2.0g/10min、酢酸ビニルに基づく単量体の含有量25重量%)とした以外は、実施例1と同様に行った。ポリプロピレンの結晶配向係数を表1に、各種評価結果を表2に示した。
【0075】
比較例5
実施例1において、樹脂温度175℃、冷却ガス温度35℃、ブロー比1.5とした以外は、実施例1と同様に行った。ポリプロピレンの結晶配向係数を表1に、各種評価結果を表2に示した。
【0076】
【表1】
Figure 0003786797
【0077】
【表2】
Figure 0003786797

Claims (5)

  1. 下記(a)〜(c)の樹脂成分を合計で100重量%となるように配合した樹脂組成物からなる基材層と該基材層の両表面に積層され、酢酸ビニルに基づく単量体の含有量が5〜20重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる表面層とよりなる積層フィルムであって、X線回折法によって求めた押出方向に対するポリプロピレンの結晶配向係数が0.25以下であることを特徴とするストレッチ包装用フィルム。
    (a)軟質ポリオレフィン系樹脂 90〜20重量%
    (b)結晶性ポリプロピレン樹脂 5〜40重量%
    (c)石油樹脂、テルペン樹脂及びロジン樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂の水素添加誘導体 5〜40重量%
  2. 軟質ポリオレフィン系樹脂が、パルス法NMRで求めた結晶成分量が10〜50重量%であり、動的粘弾性測定で求めたtanδピーク温度が−10℃以下である請求項1記載のストレッチ包装用フィルム。
  3. 軟質ポリオレフィン系樹脂が、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が、70〜90モル%、エチレンに基づく単量体単位の含有量が10〜30モル%であるプロピレン−エチレンブロック共重合体である請求項1および請求項2記載のストレッチ包装用フィルム。
  4. 結晶性ポリプロピレン樹脂が、昇温溶離分別法により分別された、横軸を溶出温度(℃)、縦軸を溶出重量割合で表した溶出曲線において、90℃以上の溶出量成分が60重量%以上であるポリプロピレン樹脂である請求項1〜3記載のストレッチ包装用フィルム。
  5. 基材層が、樹脂組成物100重量部に対してハイドロタルサイト類を0.01〜1.0重量部の割合で含有する請求項1〜4記載のストレッチ包装用フィルム。
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