JP3785823B2 - ポリエステル組成物およびそれからなるフィルム - Google Patents

ポリエステル組成物およびそれからなるフィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種産業用途に好適に使用し得る特定のヒドロキシアパタイト粒子を含有するポリエステル組成物およびそれからなるフィルムに関するものである。 更に詳しくは、滑り性、耐摩耗性といった基本特性を初めとし、電気特性、穿孔性、金属貼り合わせ板としての加工性、フレーバ性などに優れたポリエステルフィルムなどに好適なポリエステル組成物を提供することを目的とするものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルは優れた物理的、化学的特性を有しているために、ポリエステル中に無機粒子などの微粒子を含有させることによって、繊維、フィルム、その他の成形品として広く使用されている。これらの成形品の中で、フィルムは磁気記録媒体用、コンデンサー用、食品包装用、感熱孔版印刷用や他一般工業用等として使用されているが、これらの加工製品の取扱い性、品質特性向上のため、あるいはフィルムを製造する際、もしくはその加工工程における工程通過性の要請上、フィルムの表面に適度の凹凸を形成させ、フィルムあるいは加工製品に滑り性や耐摩耗性を付与するために粒子を添加することが汎用的に行われている。
その粒子としては、一般には酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、タルク、カオリン、ゼオライト、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、硫化モリブデンなどの無機粒子やシリコーン樹脂、フッ素樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、架橋アクリル系樹脂などの有機粒子、さらには、ポリエステル重合時に生成する析出粒子などが利用されている。
【0003】
なかでも、IA族やIIA族の元素の炭酸やリン酸などの塩、特にリン酸塩はそのイオン結合性からポリエステルとの親和性が良好であることが期待できるものである。
【0004】
例えば、リン酸カルシウム粒子を用いた例は、特開昭49−42752号公報、特開平9−171939号公報などが知られている。
【0005】
そして、その炭酸カルシウムの改良手段として、特開平10−1598号公報では、体積平均径や粒度分布、含有量などを規制することによりフィルムとして走行性や表面突起の均一性、耐摩耗性を改良するという試みが行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらリン酸カルシウム粒子などを用いる従来の方法では、得られるフィルムの滑り性、耐摩耗性の点で必ずしも十分な性能として満足されているものではなかった。すなわち、フィルムを高速度で製造あるいは加工工程を通過させた時、十分な滑り性の確保と削れ物の発生や粒子の脱落といった耐摩耗性の両立を図ることが、難しくなってきているのである。これは、まだなお、粒子とポリエステルとの親和性、密着性において不十分であるためではないかと考えられる。
【0007】
特に、近年磁気テープ分野では、従来にも増して高画質、高密度化が進み、従来の方法によって得られるポリエステルフィルムよりも、高度の滑り性、耐摩耗性が強く求められるようになってきている。
【0008】
加えて、コンデンサーフィルムとした場合には、ある程度電気特性は改良されてきたものの、近年では、フィルムの厚さが薄くなると共に、一層の滑り性と高度の耐電圧特性および絶縁抵抗特性が強く求められるようになってきている。
【0009】
また、感熱孔版印刷原紙用フィルムにおいては、低エネルギー下での穿孔性、穿孔後の孔径が均一であること、印刷鮮明性に優れることが要求されている。
【0010】
また、金属板貼り合わせ加工用フィルムにおいては、金属板との密着性、製缶後の加熱によりラミネートしたフィルムが結晶化または劣化し、フィルムの剥離、収縮、クラック、ピンホール等が生じないこと、金属缶に対する衝撃によって、ポリエステルフィルムが剥離したりクラックを発生させたりしないこと、缶の内容物の香り成分がポリエステルフィルムに吸着したり、ポリエステルフィルムからの溶出成分や臭いによって内容物の風味が損なわれないこと(以下フレーバ性と称する)が要求されている。
【0011】
本発明は、かかる課題を解決し、滑り性、耐摩耗性といった基本特性を初めとし、電気特性、穿孔性、金属貼り合わせ板としての加工性、フレーバ性などに優れたポリエステルフィルムを提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、熱可塑性ポリエステル樹脂と平均粒子径が0.01〜10μm、かつ、比表面積が50〜500m2/g、粒子径の相対標準偏差が0.5以下の下記化学式からなるヒドロキシアパタイト粒子とからなるポリエステル組成物およびそれからなるフィルムによって達成される。
【0013】
Ca(PO4l(OH)m(CO3nx
(ここで、Yはリン酸基、水酸基、炭酸基以外の任意の陰イオンであり、
l=0.4〜0.6、m=0.1〜0.4、n=0〜0.2、x=0〜0.2、3×l+m+2×n+z×x=2(zは陰イオンYの価数)、但し、nとxは同時に0とはならない。)
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる熱可塑性ポリエステルは、好ましくはジカルボン酸成分とグリコール成分から構成されたものであり、例えばジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化もしくはエステル交換反応ならびに引続く重縮合反応によって製造される。
【0015】
熱可塑性ポリエステルの種類についてはフィルムなどの成形品に成形し得るものであれば特に限定されない。フィルムなどの成形品に成形し得る好適なポリエステルとしては、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸を使用したものがよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボキシレート、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボキシレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチレンテレフタレート等が挙げられ、中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0016】
勿論、これらのポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであってもよく、その際の共重合成分としては、上記したポリエステルを構成する酸成分およびグリコール成分以外の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸および脂環族ジカルボン酸等の酸成分、芳香族グリコール、脂肪族グリコールおよび脂環族グリコール等のグリコール成分を挙げることができる。例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸を挙げることができる。
【0017】
また、グリコール成分としてはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族グリコール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環族グリコールなどを挙げることができる。
【0018】
これらのグリコール成分の中ではエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく採用される。
【0019】
なお、上記した酸成分、グリコール成分は、一種のみ用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また、これらの共重合成分は、ポリエステルを製造する際に副生するものであってもよい。
【0020】
本発明のポリエステル組成物の融点としては、100〜260℃が好ましく、より好ましくは120〜250℃、更に好ましくは140〜240℃であり、特に耐衝撃性、耐熱熱性、加工性において要求の厳しい金属板貼り合わせ用や熱穿孔性に対し要求の厳しい感熱孔版印刷用途に用いるときには、この融点は、重要な特性であり、耐衝撃性、耐熱性、加工性、穿孔性を満足させ、そして結晶性(結晶化度、結晶サイズなど)を調整にすることによって、加工性、穿孔性を良化せしめるので、ポリエステルとして共重合ポリエステルとすることが好適に採用される。
【0021】
共重合成分量は特に限定されるものではないが、得られるフィルムの熱穿孔性、耐熱性、フレーバ性、耐衝撃性等の点から50モル%以下が好ましく、より好ましくは1〜40モル%、更に好ましくは2〜30モル%、特に好ましくは5〜25モル%である。共重合成分量が50モル%を超えるとフィルムの耐熱性、熱穿孔性、耐衝撃性などに劣る場合がある。
【0022】
特に好ましい共重合ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)からなる群の相互の共重合体、およびこれらポリマー群に対して、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルアルコール、ジエチレングリコールからなる成分の少なくとも1種を共重合したポリマーが好ましく、中ではPET−PEN共重合体、PET−PBT共重合体、PET−ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート共重合体、PET−ダイマー酸エチレングリコラート共重合体が結晶性としても好適な調整が容易であるので好ましい。
【0023】
本発明のポリエステル組成物は、特定の要件を有したヒドロキシアパタイト粒子を含有することを特徴とするものである。
【0024】
ヒドロキシアパタイトとは、水酸化カルシウムとリン酸カルシウムとの複塩であり、ミョウバンと硫酸アルミニウムが異なる化合物であるのと同様に、リン酸カルシウムとは明確に区別される。本発明において採用されるものは、下記化学式で示されるものである。
【0025】
Ca(PO4l(OH)m(CO3nx
(ここで、Yはリン酸基、水酸基、炭酸基以外の任意の陰イオンであり、
l=0.4〜0.6、m=0.1〜0.4、n=0〜0.2、x=0〜0.2、3×l+m+2×n+z×x=2(zは陰イオンYの価数)、但し、nとxは同時に0とはならない。)
本発明に用いるヒドロキシアパタイト粒子は、従来のリン酸カルシウムやその水和物(例えば、Ca(H2PO42・H2OやCaHPO4・2H2O)などによる粒子では達し得ないポリエステルとの親和性に特徴があり、上記l、mが上記範囲外となるとその効果が有効に得られなくなる。
【0026】
その理由は定かではないが、水酸基が構造中に取り込まれていることによる極性の変化あるいは表面自由エネルギー的変化あるいは結晶構造的変化によるものと考えられる。
【0027】
lの値として、l=0.5〜0.6が好ましく、mの値としては、m=0.15〜0.25の範囲が好ましい。
【0028】
本発明におけるヒドロキシアパタイトは、リン酸基、水酸基以外に炭酸基やハロゲン基、硫酸基、亜硫酸基、硝酸基、亜硝酸基、塩素酸基、亜塩素酸基、次亜塩素酸基、リン酸水素基、リン酸二水素基、酢酸基などを少量に含有せしめることが必要である。ヒドロキシアパタイトの結晶系は主に単斜晶系であるため棒状粒子となり易い。そのため、粒子の成長を調整するために炭酸イオンなどの他の陰イオン成分を存在させる必要がある。
【0029】
この様な陰イオン成分が存在しない時には、粗大異物を除去するために必要な濾過工程における効率低下やポリエステル組成物の調製時における粒子の凝集が起こり易く、また、フィルムとしたときの表面性としても粗大粒子が生じたり耐摩耗性において好ましくない。
【0030】
上記化学式において、nで示される炭酸基の含有量においてn=0.005〜0.2および/または上記化学式においてxで示される他の陰イオンの含有量としてx=0.005〜0.2であるとき、表面に微細な構造を形成できるため特に良好な作用が得られる。好ましくはn=0.005〜0.12であり、x=0.005〜0.12である。この理由は必ずしも明確ではないが、表面に形成されたテクスチャーによるアンカー効果等によってポリエステルとの密着性をより一層強固にしているからではないかと考えられる。上記した陰イオン種の中では、炭酸基、ハロゲン基、リン酸水素基、リン酸二水素基、とりわけ炭酸基が効果も大きく好ましく用いられる。これらは上記の範囲内で複数の種類用いられてよい。また、n+x=0.005〜0.12とすることが好ましい。
【0031】
また、本発明の目的を損なわない範囲で、一部カルシウムがカルシウム以外の陽イオンに置換されていても差し支えなく、特に周期表のIA族およびIIA族の元素およびアンモニウムイオンやカドミウムイオンはその代表的な陽イオン源である。また、他の不純物が含有されていても構わない。
【0032】
通常のヒドロキシアパタイトは結晶水を有さないが、本発明で用いるヒドロキシアパタイト粒子は上記の化学式内で、水和物、すなわち結晶水が含まれ得る場合は結晶水が含まれた態様であっても構わない。
【0033】
なお、粒子の化学式は、必要により該ポリエステル組成物から分離したりして、粉末X線回折や赤外分光法、熱減量分析法、質量分析法などによる分析など公知の分析手段を用いて特定することが可能である。
【0034】
ヒドロキシアパタイトの合成法としては、固相でリン酸三カルシウムと酸化カルシウムとを水蒸気雰囲気下反応させたり、リン酸二カルシウムと炭酸カルシウムとを反応させる乾式法、リン酸二カルシウムの2水和物(brushite)をオートクレーブ中で加水分解して合成する水熱法、水酸化カルシウム等の懸濁液やカルシウム成分の溶液にリン酸成分を加えて沈殿させる湿式法がなどが合成法として挙げられるが、本発明のヒドロキシアパタイト粒子の合成は、湿式法が好ましく採用される。特に、炭酸カルシウムやハロゲン化カルシウムの存在下に合成を実施することが好ましい。また、粒子とする場合には合成した粒子を直接に用いてもよいが、合成後必要により焼成し、破砕・分級して粒子化する方法を採用することもできる。焼成は固相反応による粒子の成長や結晶化を期待することができるが、あまり高温度で焼成を行うと分解し、リン酸三カルシウムと酸化カルシウムになってしまい本発明の目的を達成することはできない。
【0035】
本発明の特性を持つ粒子とするために好適な方法としては、例えば、湿式法において用いるカルシウム成分としての固体成分、つまり、水酸化カルシウムや炭酸カルシウムの一次粒径として整った小さい粒子を用い、必要により他の成分を共存させ、リン酸成分を加えて反応を進め、その後、所望の粒径に熟成させて得る方法が挙げられる。この時粒径、粒度分布、比表面積、細孔容積などの粒子としての特性は、温度やpHや攪拌条件の影響を受けるので適宜調整することによって所望の粒子とすることができる。また、乾式法や水熱法においても焼成、破砕条件を適宜調整したり、必要により該粒子に酸処理などの処理を行うことにより得ることができる。
【0036】
本発明のヒドロキシアパタイト粒子の平均粒子径は、滑り性、耐摩耗性、電気特性などの点から0.01〜10μmであり、好ましくは、0.02〜5μm、より好ましくは0.05〜3μm、特に好ましくは0.1〜2μmである。平均粒子径が0.01μm未満であると、滑り性、耐摩耗性に劣り、10μmを超えると、耐摩耗性、電気特性、熱穿孔性、耐衝撃性に劣る。
【0037】
もちろん、粒度分布として2以上のピークを持つヒドロキシアパタイト粒子が採用される形であっても良く、粒子の粒度分布として観測される2つ以上のピークの内最大のものと最小のものとの比が好ましく1.5以上、更に好ましくは2.0以上とすることが好ましい態様であり、この時、特に滑り性、加工性において良好なフィルムとできる。ただし、この時平均粒子径や後述する粒度分布の相対標準偏差としては、それぞれのヒドロキシアパタイト粒子の群としての分布として定義され、各群で好適な値に調整されていることが好ましいが、各群における平均粒子径や粒度分布の相対標準偏差は全ヒドロキシアパタイト粒子の粒度分布曲線を適切なフィッティング曲線にあてはめて数学的に処理し、求めることが可能である。
【0038】
さらに、該粒子の比表面積は、50〜500m2/gである。好ましくは、60〜400m2/g、より好ましくは70〜350m2/g、特に好ましくは80〜300m2/gである。粒子の比表面積が50m2/g未満あるいは500m2/gを越えるとフィルムの電気特性、熱穿孔性、耐衝撃性、フレーバ性に劣る。
【0039】
また、該粒子の細孔容積としては、好ましくは0.15〜0.7ml/g、より好ましくは0.2〜0.65ml/g、特に好ましくは0.3〜0.6ml/gである。0.15ml/g未満あるいは0.7ml/gを超えると耐摩耗性が悪くなる傾向がある。
【0040】
また、該ヒドロキシアパタイト粒子の粒径の相対標準偏差としては、フィルムの平滑性、電気特性の点から0.5以下であることが必要である。好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。粒径の相対標準偏差が0.5以下であるとフィルムの平滑性、耐摩耗性、電気特性、熱穿孔性、耐衝撃性に良好な効果を与える。かかる範囲に相対標準偏差を調製するには、粉砕して粒子を得る際に分級操作を強化すれば可能性があるが、予め小粒径の原料を採用すること、加えて湿式法においては粒子の成長条件の均一性、適切な速度を確保すると、より好ましい範囲とすることができる。
【0041】
本発明のヒドロキシアパタイト粒子のポリエステル中の含有量は、好ましくは0.001〜10重量%であり、より好ましくは0.005〜5重量%、さらに好ましくは0.01〜3重量%、特に好ましくは0.05〜2重量%である。粒子の含有量が0.001重量%未満であったり、10重量%を超えると、滑り性、耐摩耗性、電気特性、熱穿孔性、耐衝撃性、フレーバ性を兼ね備えたフィルムを得ることができない場合がある。
【0042】
本発明のポリエステルにヒドロキシアパタイト粒子を含有せしめる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、(1)ヒドロキシアパタイト粒子とポリエステルとを直接、あるいは予めブレンダー、ミキサーなどで混合した後、通常の一軸、二軸押出し機を用いて溶融混練する方法、(2)ヒドロキシアパタイト粒子とポリエステルとを直接、あるいは予めブレンダー、ミキサーなどで混合した後、通常のベント式の一軸、二軸押出し機を用いて溶融混練する方法、(3)ポリエステルの製造反応工程でヒドロキシアパタイト粒子を添加する方法などを挙げることができる。中でも粗大粒子による品質への影響、フィルムの品質安定性などの点から、(2)または(3)の方法によってヒドロキシアパタイト粒子をポリエステルに含有せしめることが好ましい。
【0043】
本発明のポリエステル組成物は、電気特性の点から、溶融比抵抗値が0.01×109Ω・cm以上であるとよく、この値が大きいほど電気特性に優れる。溶融比抵抗値の好ましい値は0.1×109Ω・cm以上、より好ましくは1×109Ω・cm以上、さらに好ましくは2×109Ω・cm以上、特に好ましくは3×109Ω・cm以上である。溶融比抵抗値が0.01×109Ω・cm未満であると、フィルムにした際の電気特性に劣る。
【0044】
本発明のポリエステル組成物の溶融比抵抗値を0.01×109Ω・cm以上とする方法は、例えば、(1)ポリエステル中に金属元素およびリン元素を含有せしめ、それらの金属、リン元素量を適宜変更する方法、(2)ヒドロキシアパタイト粒子以外の微粒子を含有せしめる方法、(3)本発明のヒドロキシアパタイト粒子の粒子径、含有量を変更する方法などを挙げることができる。この中では(1)の方法が好ましい。
【0045】
例えば、金属元素を含有せしめる方法としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、および亜鉛、マンガン、亜鉛等の金属元素を含有する化合物、具体的には、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン等のモノカルボン酸のグリコール可溶塩化合物、塩化リチウム、塩化マンガン等の塩化物などをポリエステル製造時の反応系内に反応触媒・添加剤として添加・配合する方法などを挙げることができる。
【0046】
また、リン元素を含有せしめる方法としては、例えばリン酸、亜リン酸、ホスホン酸もしくはこれらのエステル等のリン元素を含有する化合物をポリエステル製造時の反応系内に添加・配合する方法などを挙げることができる。
【0047】
本発明のポリエステル組成物からフィルムを得る方法は特に限定されるものではないが、例えば溶融押出しによってシート状あるいはその後延伸することでフィルムを製造することができる。
【0048】
本発明のポリエステル組成物からなるフィルムの具体的な製造方法を説明すると、ポリエステル組成物を乾燥後、溶融押出しして、未延伸シートとし、続いて二軸延伸、熱処理し、フィルムにする。二軸延伸は縦、横逐次延伸あるいは二軸同時延伸のいずれでもよく、延伸倍率は、通常は縦、横それぞれ2.0〜5.0倍が適当である。また、二軸延伸後、さらに縦、横方向のいずれかに再延伸してもよい。この際、本発明のポリエステル組成物と各種のポリエステルと混合してヒドロキシアパタイト粒子の含有量を目的に応じて適宜変更することができる。また、混合する各種のポリエステルは、本発明のポリエステル組成物のベースとなるポリエステルと同一であっても、異なっていてもよい。
【0049】
また、本発明のフィルムは単層フィルムであってもよいが耐摩耗性、電気特性の点から、ヒドロキシアパタイト粒子を含有するポリエステル組成物からなるフィルム層(A層とする)を少なくとも1層有する積層フィルムとしてもよい。A層の厚みは特に限定されないが、耐摩耗性、電気特性の点から0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.05〜2μm、さらに好ましくは0.1〜1.5μm、特に好ましくは0.1〜1μmである。該A層は、内層に配される場合は電気特性やフレーバ性改良の点で好ましい態様だが、最外層の少なくとも1層に配置されていることが滑り性、耐摩耗性、加工性、耐衝撃性において良好に作用し、フィルムとしての特性がより大きく発揮されるので好ましい。
【0050】
さらに、積層フィルムのA層厚みt(μm)とA層に含有するヒドロキシアパタイト粒子の平均粒子径d(μm)の関係は、好ましくは0.2d≦t≦10dであり、より好ましくは0.3d≦t≦5dであり、さらに好ましくは0.5d≦t≦3dである。かかる範囲とすることにより、上述の特性は一層良好となる。
【0051】
また、本発明のフィルムの全フィルム厚みに対する厚み斑は好ましくは20%以下であり、より好ましくは14%以下、さらに好ましくは10%以下である。厚み斑が10%を超えるとコンデンサー用途に用いたときには電気特性に悪影響があり磁気記録媒体用他の用途に用いたときには張力に対する伸びに影響し、平面性に劣るものとなる懸念がある。
【0052】
なお、本発明のポリエステル組成物およびそれからなるフィルムには、他の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等、また各種の添加剤、例えばカルボジイミド、エポキシ化合物などの末端封鎖剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、顔料、蛍光増白剤等が含有されていてもよい。
【0053】
また、二酸化チタン、コロイド状シリカなどの二酸化珪素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等の無機粒子、あるいは例えばアクリル酸類、スチレンなどを構成成分とする有機粒子などのヒドロキシアパタイト以外の粒子が好ましく含有されてよく、平均径として0.01〜10μm、含有量として0.001〜5重量%含有されていることが好ましく、この時滑り性、耐摩耗性がより良好なフィルムとでき、特に製造時あるいは加工時の工程通過性が改良される。特に、平均粒径としては該ヒドロキシアパタイト粒子の平均粒径の1/2以下または2倍以上であることが好ましい。
【0054】
さらに、本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの接着性のために、その少なくとも片面に易接着層を設けてもよい。易接着層の種類については、例えばアクリル酸、メチルメタクリレート、メチルアクリレートなどを用いて調整されるアクリル系樹脂、イソフタル酸、アジピン酸、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどと、ジイソシアネートとから調製されるポリウレタン系樹脂、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸の金属塩、イソフタル酸、アジピン酸、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを用いて調製されるポリエステル系樹脂等を挙げることができ、これらの中でも水分散または水溶性樹脂が接着性、取扱い性の点から好ましい。ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を設ける方法は、例えばポリエステルフィルムの製造工程中で、上述したアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の水分散または水溶液を従来公知のリバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ワイアーバー法などを用いて塗布することが好ましい。また、易接着層の厚みは、接着性の点から、0.001〜5μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜2μm、さらには0.05〜0.5μmが好ましい。
【0055】
本発明のポリエステルフィルムを金属板貼り合わせ加工用として用いる場合、貼り合わせられる金属板としてはブリキ、スチール、アルミニウムなどの板が適切である。金属板へのポリエステルフィルムの貼り合わせは、例えば(1)金属板をフィルム融点以上に加熱し、フィルムを貼り合わせた後急冷し、金属板に接するフィルムの表層部を非晶化させて密着させる。(2)フィルムに予め接着剤層をプライマーコートしておき、この面を金属板と貼り合わせる。接着剤層としては樹脂接着剤、例えばエポキシ接着剤、エポキシ−エステル系接着剤、アルキッド系接着剤を用いることができる。
【0056】
また、本発明のポリエステルフィルムを感熱孔版印刷原紙用として用いる場合、本発明のフィルムに貼り合わせる多孔性支持体としては和紙、合成繊維抄造紙、各種織布,不織布等が適切である。多孔性支持体へのフィルムの貼り合わせは、例えば多孔性支持体とフィルムを熱接着する方法、あるいは接着剤例えば酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂ポリエステル系樹脂等を用いて接着する方法を挙げることができる。
【0057】
【実施例】
以下本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は本実施例により限定受けるわけではない。
【0058】
本発明における特性値の測定方法は、次の方法によって行った。
【0059】
A.粒子の平均粒子径、相対標準偏差
ポリエステル組成物およびそれからなるフィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、1万倍以上の倍率で観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所を変えて100視野以上測定する。粒子の平均径dは、重量平均径(等価円相当径)から求める。
【0060】
粒径の相対標準偏差σ、および平均径dは次式数1で定義される。
【0061】
【数1】
Figure 0003785823
B.粒子の比表面積
カンタクローム社製オートソーブ−1を使用し、BET法により比表面積を測定する。
【0062】
C.細孔容積
水銀−ヘリウム法により測定する。
【0063】
D.ポリエステル組成物の固有粘度
o−クロロフェノール溶媒を用い、25℃で測定した。
【0064】
E.ポリエステル組成物およびフィルムの融点
ポリエステル組成物あるいはフィルムを結晶化させ、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC−4型)により、16℃/分の昇温速度で測定した。
【0065】
F.ポリエステル組成物中の粒子分散性
粒子分散性は、ポリエステル組成物を透過型電子顕微鏡観察によって判定した。
【0066】
○:凝集粒子あるいは粗大粒子は観察されない。
【0067】
△:凝集粒子あるいは粗大粒子がわずかに観察される。
【0068】
×:凝集粒子あるいは粗大粒子が多く観察される。
【0069】
G.ポリエステル組成物の溶融比抵抗値
第1図に示す溶融抵抗測定装置を用いて測定される。一対の電極6を挿入した容器に被測定物質であるポリエステル組成物5を入れる。この容器を加熱体4中に浸す。ポリエステル組成物5をN2ガス雰囲気下温度280℃で溶融貯留し、直流電圧発生装置1から電圧を印加する。この時の電流計2および電圧計3の指示値および電極面積、電極間距離により、次式に従い溶融比抵抗値を求める。
【0070】
ρ=(V×S)/(I×D)
ρ:溶融比抵抗値(Ω・cm)
V:印加電圧(V)
S:電極の面積(cm2
I:測定電流(A)
D:電極間距離(cm)
H.フィルムの厚み斑
フィルムロールから任意にサンプリングした少なくとも500点について厚みを測定し、下記式により求めた。
【0071】
(最大厚み−最小厚み)/平均厚み×100 (%)
I.フィルムの積層厚み
二次イオン質量分析計、X線光電子分光法、赤外分析法、あるいはコンフォーカル顕微鏡などで粒子濃度の深さ方向分布を測定する。表面を基準とし、深さ方向で極大値を得た後、その極大値の1/2となる深さを積層厚みと定義した。また、積層厚みが小さいときは特に、粒子濃度の深さ分布からではなくフィルムの断面観察あるいは薄膜段差測定器等によっても決定することができる。
【0072】
J.フィルムの耐摩耗性
フィルムを1/2インチ幅にスリットしたテープ状ロールをステンレスSUS−304製ガイドロールに一定張力下に接触させて高速走行させ、ガイドロール表面上に発生する白粉量によって次のようにランク付けを行った。
【0073】
◎:白粉の発生がみられない。
【0074】
○:白粉が僅かに認められる。
【0075】
△:白粉がやや多く認めらる。
【0076】
×:白粉の発生が著しい。
【0077】
K.フィルムの耐擦傷性
フィルムを1/2インチ幅にスリットしたもの10本を用意し、テープ走行性試験機を使用してガイドピン(表面粗度Ra100nm)上を走行させる(走行速度300m/分、走行回数1回、巻き付け角60°、走行張力60g)。この時フィルムに入った傷を顕微鏡で観察し、耐擦傷性を判定した。幅2.5μm以上の傷が平均としてテープ幅あたり2本未満は◎、2本以上5本未満は○、5本以上10本未満は△、10本以上は×と判定した。
【0078】
L.フィルムの絶縁破壊電圧
交流耐圧試験器を用い、JIS−C−2318に準じて測定した。
【0079】
M.フィルムの金属板貼り合わせ加工用としての特性評価
(a)フィルムの滑り性
成形後の金属缶に貼り合わせたフィルムの状態を観察し、以下の基準で滑り性を評価した。
【0080】
◎:フィルムに傷、削れ粉が全くない。
【0081】
○:フィルムに傷、削れ粉が僅かに存在する。
【0082】
△:フィルムに傷、削れ粉がかなり発生する。
【0083】
×:フィルムに傷、削れ粉の発生が著しい。
【0084】
(b)フィルムの耐熱性
成形した後の金属缶を210℃で5分間加熱し、金属缶に貼り合わせたフィルムの状態を観察し、以下の基準で耐熱性を評価した。
【0085】
◎:フィルムに剥離、収縮が全く発生しない。
【0086】
○:フィルムに剥離、収縮が僅かに発生する。
【0087】
△:フィルムに剥離、収縮がかなり発生する。
【0088】
×:フィルムに剥離、収縮の発生が著しい。
【0089】
(c)フィルムの耐衝撃性
成形した金属缶に水を充填し、1mの高さから金属缶を大理石上に落下させた。10個の金属缶を落下させ、それぞれの金属缶について通電テスト(ERVテスト)を行い、以下の基準で耐衝撃性を評価した。なお、通電テストとは落下させた金属缶に1%塩化ナトリウム水溶液を充填し、水溶液中に設けた電極と金属缶に6Vの電圧を印加したときに流れる電流値を測定した。
【0090】
◎:電流値0.2mA以下のものが9個以上。
【0091】
○:電流値0.2mA以下のものが7〜8個。
【0092】
△:電流値0.2mA以下のものが5〜6個。
【0093】
×:電流値0.2mA以下のものが5個未満。
【0094】
(d)フィルムのフレーバ性
150mm×450mmに切り出したフィルムを香料水溶液(d−リモネン20ppm水溶液)に5日間浸漬し、ついでフィルムを80℃で30分間熱処理し、ガスクロマトグラフィーによりフィルム1gあたりのd−リモネンの吸着量(μg/g)を定量し、フィルムのフレーバ性を評価した。
【0095】
◎:d−リモネンの吸着量が20未満。
【0096】
○:d−リモネンの吸着量が20以上、25未満。
【0097】
△:d−リモネンの吸着量が25以上、30未満。
【0098】
×:d−リモネンの吸着量が30以上。
【0099】
また、成形した金属缶に香料水溶液(d−リモネン20ppm水溶液)を入れ、密封後1ヶ月間放置し、その後開封して官能検査によって、臭気の変化を以下の基準で評価した。
【0100】
◎:臭気の変化が見られない。
【0101】
○:臭気の変化が殆ど見られない。
【0102】
△:臭気の変化が認められる。
【0103】
×:臭気の変化が著しい。
【0104】
N.フィルムの感熱印刷原紙用としての特性評価
(a)穿孔感度
フィルムを多孔性支持体(和紙)に貼り合わせて原紙を作製し、サーマルヘッドにより印加エネルギー0.09mJおよび0.12mJにて文字画像を製版した。製版された原紙のフィルム側から顕微鏡で画像部の穿孔状態を観察し、穿孔特性を以下の項目で評価した。
【0105】
◎:所定の穿孔が確実に行われ良好であった。
【0106】
○:ごく一部に所定の穿孔が得られない部分があった。
【0107】
△:所々に所定の穿孔が得られない部分があった。
【0108】
×:所定の穿孔が全く得られない。
【0109】
(b)文字の鮮明性
製版原紙を用いた印刷鮮明性を印刷物の文字画像に対して目視で判定した。
【0110】
○:文字に欠落あるいは太さにムラが全くない。
【0111】
△:ごく一部に文字に欠落あるいは太さにムラがある。
【0112】
×:多くの文字に欠落あるいは太さにムラがある。
【0113】
実施例ならびに比較例においては以下に示す粒子を用いた。
【0114】
化学式
粒子A:Ca(PO40.54(OH)0.18(CO3)0.1
粒子B:Ca(PO40.54(OH)0.18(CO3)0.1
粒子C:Ca(PO40.54(OH)0.18(CO3)0.1
粒子D:Ca(PO40.57(OH)0.19(CO3)0.05
粒子E:Ca(PO40.57(OH)0.19(CO3)0.05
粒子F:Ca(PO40.48(OH)0.16(CO3)0.2
粒子G:Ca(PO40.59(OH)0.2(Cl)0.05
粒子H:Ca(PO40.54(OH)0.18(HPO4)0.1
粒子I:Ca(PO40.6(OH)0.2
粒子J:Ca(PO40.6(OH)0.2
粒子K:Ca3(PO42
粒子L:3Ca3(PO42/CaO
粒子M:SiO2
粒子N:高架橋ポリスチレン
これら粒子の諸物性を下記表1に示す。
【0115】
【表1】
Figure 0003785823
実施例1
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール70重量部とを酢酸カルシウム・1水和物0.09重量部を触媒として常法に従いエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、三酸化アンチモン0.03重量部、リン化合物としてジメチルフェニルホスホネート0.1重量部、亜リン酸0.04重量部を添加し、次いで予め調製した粒子Aのエチレングリコールスラリーを粒子として0.4重量部となるように添加した。引き続いて常法に従い重縮合反応を行い、固有粘度0.62dl/gのポリエステル組成物を得た。得られたポリエステル組成物の特性を表2に示した。
【0116】
次いで、得られたポリエステル組成物を十分乾燥した後、押出し機に供給して285℃で溶融し、T型口金よりシート状に押し出し、30℃の冷却ドラムで冷却固化せしめ未延伸フィルムを得た。次いで未延伸フィルムを95℃に加熱して縦方向に3.5倍延伸し、さらに100℃に加熱して横方向に3.6倍延伸し、200℃で加熱処理して、厚さ12μmのフィルムを得た。得られたポリエステル組成物の特性ならびにフィルムの特性を表2に示した。
【0117】
尚、実施例1のフィルムの粒子を含有する面にバックコート層を設け、粒子を含有していない面にコロイダルシリカを含有した下塗り層を塗設し、さらに磁性粉を含有した磁性塗剤を塗布乾燥後、スリットして磁気テープを得た。この磁気テープの走行性、走行安定性は良好であった。
【0118】
比較例1
粒子Iを用いた以外は実施例1と同様の方法でポリエステル組成物およびそれからなるフィルムを得た。得られたポリエステル組成物およびフィルムの特性を表2に示した。フィルムは耐摩耗性に劣り、絶縁破壊電圧も低いものであった。
【0119】
実施例2〜5,比較例2〜4
粒子と含有量および使用金属化合物、リン化合物の種類、量を変更した以外は実施例1と同様の方法で、溶融比抵抗値の異なる粒子含有ポリエステル組成物およびそれからなるフィルムを得た。特性、結果を表2に示した。
【0120】
尚、実施例5において、吐出斑に起因し厚み斑が16%であるフィルムを得た。該フィルムの耐摩耗性、耐擦傷性は実施例5と同様で良好なものの、該フィルムの広面積での高電圧を印加した絶縁破壊テストにおいて度数が1.3倍となった。また、平面性がやや劣るものとなった。
【0121】
実施例6
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール70重量部とを酢酸カルシウム・1水和物0.09重量部を触媒として常法に従いエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、三酸化アンチモン0.03重量部、リン化合物としてジメチルフェニルホスホネート0.1重量部、亜リン酸0.04重量部を添加し、次いで予め調製した粒子Aのエチレングリコールスラリーおよび粒子Zのエチレングリコールスラリーをそれぞれ0.3重量部、0.05重量部となるように添加した。引き続いて常法に従い重縮合反応を行い、固有粘度0.62dl/gのポリエステル組成物を得た。得られたポリエステル組成物の特性を表2に示した。
【0122】
一方、得られたポリエステル組成物と実質的に粒子を含有しない以外は実施例1と同様の方法で調製したポリエチレンテレフタレートをそれぞれ別々に十分乾燥した後に、それぞれ押出し機に供給して285℃で溶融し、互いに隣接したダイから共押出して、積層、融着させ、冷却固化せしめ未延伸積層フィルムを得た。次いで未延伸フィルムを95℃に加熱して縦方向に3.5倍延伸し、さらに100℃に加熱して横方向に3.6倍延伸し、200℃で加熱処理して、実質的に粒子を含有しないポリエステル層10μm、外層がヒドロキシアパタイト粒子と架橋ポリスチレンを含有するポリエステル層1μmの二層積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示した(なお、耐摩耗性、耐擦傷性は粒子含有面を測定した)。
【0123】
このフィルムの粒子を含有する面にバックコート層を設け、粒子を含有していない面にコロイダルシリカを含有した下塗り層を塗設し、さらに磁性粉を含有した磁性塗剤を塗布乾燥後、スリットして磁気テープを得た。この磁気テープの走行性、走行安定性は実施例1よりも良好で極めて優れていた。
【0124】
実施例7
テレフタル酸ジメチル89重量部、イソフタル酸ジメチル12重量部とエチレングリコール70重量部とを酢酸カルシウム・1水和物0.06重量部を触媒として常法に従いエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、三酸化アンチモン0.03重量部、リン化合物としてリン酸0.02重量部を添加し、次いで予め調製した粒子Dのエチレングリコールスラリーを粒子として0.2重量部となるように添加した。引き続いて常法に従い重縮合反応を行い、固有粘度0.70dl/g、融点225℃共重合ポリエステル組成物を得た。得られた共重合ポリエステル組成物の特性を表3に示した。また、共重合ポリエステル組成物中のヒドロキシアパタイト粒子の分散性も極めて良好であった。
【0125】
一方、得られた共重合ポリエステル組成物を十分乾燥させた後、押しだし機に供給して、280℃で溶融し、T型口金よりシート状に押し出し、30℃の冷却ドラムで冷却固化せしめ未延伸フィルムを得た。次いで未延伸フィルムを90℃に加熱して縦方向に3.5倍延伸し、さらに105℃に加熱して横方向に3.5倍延伸し、190℃で加熱処理して、厚さ25μmのフィルムを得た。引き続いて、得られたフィルムを260℃に加熱した板厚0.25mmのスチールに貼り合わせ、水にて急冷した。さらに内側がポリエステルフィルム貼り合わせ面となるように深絞り加工し、55mm径金属缶を作製した。得られた缶について各種評価を実施した。結果を表4に示した。
【0126】
比較例5
ヒドロキシアパタイト粒子を添加しない以外は実施例7と同様の方法で共重合ポリエステルおよびフィルムを得た。得られたフィルムを金属板に貼り合わせ、金属缶を作製した後の特性を表4に示した。
【0127】
実施例8〜10、比較例6〜10
表3に示すように、共重合ポリエステルの種類および粒子の種類、粒子径、比表面積、含有量等を変えた以外は実施例7と同様の方法で、共重合ポリエステル組成物およびそれからなるフィルムを得た。得られたフィルムを金属板に貼り合わせ、金属缶を作製した後の特性を表4に示した。
【0128】
実施例11
テレフタル酸ジメチル81重量部、イソフタル酸ジメチル20重量部とエチレングリコール70重量部とを酢酸マグネシウム・4水和物0.06重量部を触媒として常法に従いエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、三酸化アンチモン0.03重量部、リン化合物としてリン酸0.02重量部を添加し、次いで予め調製した粒子Aのエチレングリコールスラリーを粒子として0.4重量部となるように添加した。引き続いて常法に従い重縮合反応を行い、固有粘度0.62dl/g、融点197℃の共重合ポリエステル組成物を得た。得られた共重合ポリエステル組成物の特性を表3に示した。また、共重合ポリエステル組成物中のヒドロキシアパタイト粒子の分散性も極めて良好であった。
【0129】
一方、得られた共重合ポリエステル組成物を十分乾燥させた後、押し出し機に供給して、280℃で溶融し、T型口金よりシート状に押し出し、30℃の冷却ドラムで冷却固化せしめ未延伸フィルムを得た。次いで未延伸フィルムを90℃に加熱して縦方向に3.5倍延伸し、さらに100℃に加熱して横方向に3.5倍延伸し、150℃で加熱処理して、厚さ2μmのフィルムを得た。引き続いて、得られたフィルムを多孔性支持体に貼り合わせ感熱孔版印刷原紙を作製し、穿孔特性および印刷特性を評価した。結果を表4に示した。
【0130】
比較例11
ヒドロキシアパタイト粒子Aの代わりに粒子Mを添加した以外は実施例11と同様の方法で共重合ポリエステル組成物およびそれからなるフィルムを得た。得られたフィルムを多孔性支持体に貼り合わせ、感熱孔版印刷原紙を作製した後の特性を表4に示した。
【0131】
実施例12、13、比較例12
表3に示すように、共重合ポリエステルの種類および粒子の種類、粒子径、比表面積、含有量等を変更した以外は実施例11と同様の方法で、共重合ポリエステル組成物およびそれからなるフィルムを得た。得られたフィルムを多孔性支持体に貼り合わせ、感熱孔版印刷原紙作製した後の特性を表4に示した。
【0132】
【表2】
Figure 0003785823
【表3】
Figure 0003785823
【表4】
Figure 0003785823
【0133】
【発明の効果】
本発明は、特定の粒子径、比表面積および化学式を有するヒドロキシアパタイト粒子を含有するポリエステル組成物およびそれからなるフィルムとすることで、滑り性、耐摩耗性に優れ、さらには電気特性や感熱孔版印刷原紙用としたときの穿孔性、金属板との貼り合わせ加工性をも格段に向上せしめたフィルムを得ることができる。
【0134】
また、該フィルムは、磁気記録媒体用、コンデンサー用、感熱孔版印刷用、金属板貼り合わせ用などをはじめ、他一般工業用などの用途に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル組成物の溶融比抵抗値を測定するための装置である。
【符号の説明】
1:直流電圧発生装置
2:電流計
3:電圧計
4:加熱体
5:ポリエステル組成物
6:電極

Claims (13)

  1. 熱可塑性ポリエステル樹脂と平均粒子径が0.01〜10μm、かつ、比表面積が50〜500m2/g、粒子径の相対標準偏差が0.5以下の下記化学式からなるヒドロキシアパタイト粒子とからなるポリエステル組成物。
    Ca(PO4l(OH)m(CO3nx
    (ここで、Yはリン酸基、水酸基、炭酸基以外の任意の陰イオンであり、
    l=0.4〜0.6、m=0.1〜0.4、n=0〜0.2、x=0〜0.2、3×l+m+2×n+z×x=2(zは陰イオンYの価数)、但し、nとxは同時に0とはならない。)
  2. ヒドロキシアパタイト粒子の化学式において、n=0.005〜0.2および/またはx=0.005〜0.2であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル組成物。
  3. ヒドロキシアパタイト粒子の細孔容積が、0.15〜0.7ml/gである請求項1または2のいずれかに記載のポリエステル組成物。
  4. 熱可塑性ポリエステル樹脂が、共重合ポリエステルである請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル組成物。
  5. 共重合ポリエステル樹脂が、PET−PEN共重合体、PET−PBT共重合体、PET−ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート共重合体、PET−ダイマー酸エチレングリコラートから選ばれた少なくとも一種である請求項4に記載のポリエステル組成物。
  6. ヒドロキシアパタイト粒子以外の平均径0.01〜10μmの粒子を0.001〜5重量%含有してなる請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル組成物からなるポリエステルフィルム。
  8. 積層構成を有するポリエステルフィルムであって、請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル組成物からなる層が少なくとも1層に配置されてなるポリエステルフィルム。
  9. 積層構成を有するポリエステルフィルムであって、請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル組成物からなる層が最外層の少なくとも一層に配置されてなるポリエステルフィルム。
  10. 請求項7〜9のいずれかに記載のフィルムからなるコンデンサー用ポリエステルフィルム。
  11. 請求項7または9のいずれかに記載のフィルムからなる感熱孔版印刷用ポリエステルフィルム。
  12. 請求項7〜9のいずれかに記載のフィルムからなる金属板貼り合わせ用ポリエステルフィルム。
  13. 請求項7または9のいずれかに記載のフィルムからなる磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
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