JP3785629B2 - 信号補正装置、信号補正方法、信号補正装置の係数調整装置および係数調整方法 - Google Patents

信号補正装置、信号補正方法、信号補正装置の係数調整装置および係数調整方法 Download PDF

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    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04RLOUDSPEAKERS, MICROPHONES, GRAMOPHONE PICK-UPS OR LIKE ACOUSTIC ELECTROMECHANICAL TRANSDUCERS; DEAF-AID SETS; PUBLIC ADDRESS SYSTEMS
    • H04R3/00Circuits for transducers, loudspeakers or microphones

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、信号補正装置、信号補正方法、信号補正装置の係数調整装置および係数調整方法に関し、特に信号補正装置と伝送系とを統合した統合伝送系の特性が所定の目標特性に近づくよう、入力信号を補正して伝送系に与える技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
楽音の再生等に動電型スピーカ2が用いられる。図23に、動電型スピーカ2の断面構成を示す。楽音信号に基づく駆動電流がボイスコイル4に与えられると、ボイスコイル4は駆動電流に比例した電磁力を、マグネット6から受ける。このため、楽音信号にしたがってボイスコイル4に接続されたスピーカ振動板8がx方向に振動し、楽音が再生される。この場合、再生音圧は、ボイスコイル4(スピーカ振動板8)の加速度、およびボイスコイル4(スピーカ振動板8)の移動に伴って排除される空気の体積に依存している。したがって、同じスピーカであれば、再生音圧は、ボイスコイル4の加速度および振幅に、ほぼ依存することになる。すなわち、ボイスコイル4の加速度および振幅が大きいほど再生音圧は大きく、ボイスコイル4の加速度および振幅が小さいほど再生音圧は小さい。
【0003】
一方、図24に示すように、再生楽音の周波数が動電型スピーカ2の最低共振周波数f0より低くなるにつれ、ボイスコイル4の加速度が小さくなる傾向がある。つまり、動電型スピーカ2は、楽音信号のレベルが同じであれば、低音域の再生音圧が小さくなるという欠点があった。
【0004】
そこで、動電型スピーカ2のこのような欠点を克服するため、従来のスピーカシステムにおいては、例えば、最低共振周波数f0以下の周波数について、予め楽音信号のレベルを拡大する処理(ブースト)を行なうよう構成していた。このように構成することで、低音域におけるボイスコイルの振幅を大きくすることができ、低音域の再生音圧の減少を緩和することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来のスピーカシステムには、次のような問題があった。ボイスコイル4の振幅が大きくなると、動電型スピーカ2の機械的制約等に起因してボイスコイル4の動きが制限され、この結果、再生楽音に歪が生ずる。すなわち、入力された楽音信号にはなかった高調波成分が重畳されて再生楽音に現れることになる。これが非線形歪である。図25に示すように、特に最低共振周波数f0よりやや低い周波数域において、2次高調波、3次高調波が大きく現れていることがわかる。
【0006】
また、スピーカ振動板8を構成するエッジ8eの排除空気体積の非線形性により、たとえボイスコイル4の動きが無歪であっても、放射音圧に非線形歪があらわれる。
【0007】
このようなスピーカの非線形性を、フィードフォワード方式で補正して歪を減少させる方法が、ドイツ国公開公報 DE 4111884 A1、米国特許 5438625に開示されている。この方法は、スピーカ等変換器の動電変換原理に基づき、各シールスモールパラメータ(後述)の非線形歪を合成させる方法を採っている。したがって、補正原理の物理的な理解が比較的容易である。しかし、実際の補正アルゴリズムは非常に複雑で、その調整方法も複雑である。さらに、シールスモールパラメータそのものを補正計算に用いるために、非常に大きな係数や小さな係数を混用しなければならず、固定小数点演算を行なうDSP(Digital Signal Processor)を用いて高速処理を行なうのに不便である。このため、演算処理の効率が悪く、演算精度の低下を招くおそれがある。
【0008】
この発明は、このような従来の問題を解決し、スピーカなど非線形性を有する伝送系の特性の補正を、容易かつ迅速確実に行なうことができる信号補正装置、信号補正方法、信号補正装置の係数調整装置および係数調整方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の信号補正装置は、
信号補正装置と伝送系とを統合した統合伝送系の特性が所定の目標特性に近づくよう、入力信号を補正して伝送系に与える信号補正装置であって、
帰還路を有する2次以上のデジタルフィルタにより構成された補正フィルタを備えた信号補正手段、
統合伝送系の状態を表わす所定の仮想物理量を、入力信号に基づいて予測する仮想物理量予測手段、
予測された仮想物理量に基づいて、前記補正フィルタのフィルタ係数の少なくとも一部を決定する補正係数決定手段、
を備え、
前記補正フィルタは、決定されたフィルタ係数を用いて、入力信号を補正すること
を特徴とする。
【0010】
請求項2の信号補正装置は、
請求項1の信号補正装置において、
前記信号補正手段は、信号の振幅を調整する振幅調整部をさらに備え、
前記補正係数決定手段は、前記予測された仮想物理量に基づいて、前記振幅調整部の振幅調整係数をも決定し、
前記振幅調整部は、決定された振幅調整係数を用いて、前記補正フィルタによる補正前の信号または当該補正後の信号の振幅を調整すること
を特徴とする。
【0011】
請求項3の信号補正装置は、
請求項1ないし請求項2のいずれかの信号補正装置において、
前記仮想物理量予測手段は、帰還路を有する2次以上のデジタルフィルタにより構成された仮想物理量フィルタを備え、
前記仮想物理量フィルタは、前記統合伝送系の目標特性に基づいて決定されたフィルタ係数を用いて、入力信号に基づいて仮想物理量を予測すること
を特徴とする。
【0012】
請求項4の信号補正装置は、
請求項3の信号補正装置において、
前記補正フィルタは、帰還路を含み信号処理の上流部分に該当する巡回部と、帰還路を含まず信号処理の下流部分に該当する非巡回部とを備え、
仮想物理量フィルタは、帰還路を含む巡回部と、帰還路を含まない非巡回部とを備え、
補正フィルタの巡回部のフィルタ係数は、仮想物理量フィルタの巡回部のフィルタ係数と同一であり、補正フィルタの非巡回部のフィルタ係数は、前記仮想物理量に基づいて決定されたフィルタ係数であること
を特徴とする。
【0013】
請求項5の信号補正装置は、
請求項4の信号補正装置において、
前記補正フィルタの非巡回部のフィルタ係数は、前記仮想物理量に依存して変化しない線形フィルタ係数と、前記仮想物理量に依存して変化する非線形フィルタ係数との和で表現し得ること
を特徴とする。
【0014】
請求項6の信号補正装置は、
請求項5の信号補正装置において、
前記伝送系は、前記信号補正装置の補正出力をアナログ信号に変換するとともに変換出力を増幅する駆動系と、当該増幅出力に基づいて駆動される動電型スピーカとを備え、
前記統合伝送系の目標特性は、目標とすべきシールスモールパラメータで表わされる統合伝送系の特性を含む特性であり、
前記仮想物理量は、前記統合伝送系が目標特性を有すると仮定した場合計算される動電型スピーカのボイスコイルの仮想変位であり、
前記仮想物理量フィルタは、前記駆動系の増幅ゲインをも考慮して仮想変位を予測する変位フィルタであり、
前記補正フィルタおよび変位フィルタは、ともに、2次のIIR(無限インパルス応答)型フィルタであること
を特徴とする。
【0015】
請求項7の信号補正装置は、
請求項6の信号補正装置において、
前記増幅器は、電圧出力型増幅器であり、
前記補正フィルタの非巡回部の3つの非線形フィルタ係数を
c(x):無遅延非線形フィルタ係数
d(x):1次遅延非線形フィルタ係数
e(x):2次遅延非線形フィルタ係数
としたとき、
c(x)+e(x)=d(x)
の関係を満たすこと
を特徴とする。
【0016】
請求項8の信号補正装置は、
請求項6の信号補正装置において、
前記増幅器は、電流出力型増幅器であり、
前記補正フィルタの非巡回部の3つの非線形フィルタ係数を
c(x):無遅延非線形フィルタ係数
d(x):1次遅延非線形フィルタ係数
e(x):2次遅延非線形フィルタ係数
としたとき、
Figure 0003785629
の関係を満たすこと
を特徴とする。
【0017】
請求項9の信号補正装置は、
請求項6の信号補正装置において、
前記補正フィルタの非巡回部の3つの非線形フィルタ係数のうち2次遅延非線形フィルタ係数をe(x)としたとき、
e(x)=0
となること
を特徴とする。
【0018】
請求項10の信号補正装置は、
請求項6の信号補正装置において、
前記目標とすべきシールスモールパラメータで表わされる統合伝送系の特性は、低レベル入力信号時における前記伝送系のシールスモールパラメータで表わされる特性そのものであること
を特徴とする。
【0019】
請求項11の信号補正装置は、
請求項6の信号補正装置において、
前記目標とすべきシールスモールパラメータで表わされる統合伝送系の特性は、低レベル入力信号時における前記伝送系のシールスモールパラメータで表わされる特性に所望の修正を加えた特性であること
を特徴とする。
【0020】
請求項12の信号補正装置は、
請求項6の信号補正装置において、
前記動電型スピーカのボイスコイルの変位に依存して変化する力係数およびスティフネスに起因する伝送系の非線形性を緩和すること
を特徴とする。
【0021】
請求項13の信号補正装置は、
請求項6の信号補正装置において、
前記動電型スピーカのボイスコイルの変位に依存して変化する動電型スピーカのエッジの排除空気体積に起因する伝送系の非線形性を緩和すること
を特徴とする。
【0022】
請求項14の信号補正方法は、
伝送系を含む統合伝送系の特性が所定の目標特性に近づくよう、入力信号を補正して伝送系に与える信号補正方法であって、
帰還路を有する2次以上のデジタルフィルタにより構成された補正フィルタを用意し、
統合伝送系の状態を表わす所定の仮想物理量を、入力信号に基づいて予測し、予測された仮想物理量に基づいて、前記補正フィルタのフィルタ係数の少なくとも一部を決定し、
前記補正フィルタは、決定されたフィルタ係数を用いて、入力信号を補正すること
を特徴とする。
【0023】
請求項15の信号補正装置の係数調整装置は、
請求項1ないし請求項13のいずれかの信号補正装置または請求項14の信号補正方法における各係数を調整するための係数調整装置であって、
前記統合伝送系に与える参照信号を生成する参照信号生成手段、
与えられた参照信号に対応する統合伝送系の応答信号を測定する応答信号測定手段、
参照信号および応答信号に基づいて、統合伝送系の特性が所定の目標特性に近づくよう、前記各係数を調整する調整制御手段、
を備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項16の信号補正装置の係数調整装置は、
請求項15の信号補正装置の係数調整装置において、
前記調整制御手段は、与えられた参照信号に対応する統合伝送系の応答信号の各高調波歪または混変調歪が減少するよう、前記補正フィルタの非巡回部の非線形フィルタ係数に関する係数を調整すること
を特徴とする。
【0025】
請求項17の信号補正装置の係数調整方法は、
請求項1ないし請求項13のいずれかの信号補正装置または請求項14の信号補正方法における各係数を調整するための係数調整方法であって、
前記統合伝送系に与える参照信号を生成し、
与えられた参照信号に対応する統合伝送系の応答信号を測定し、
参照信号および応答信号に基づいて、統合伝送系の特性が所定の目標特性に近づくよう、前記各係数を調整すること
を特徴とする。
【0026】
請求項18の記憶媒体は、
コンピュータが実行可能なプログラムを記憶したコンピュータ可読の記憶媒体であって、
前記プログラムは、請求項1ないし請求項17のいずれかの装置または方法を実現するものであること
を特徴とする。
【0027】
請求項での用語の概念を、次のとおり定義する。
【0028】
「統合伝送系」とは、入力信号を補正する信号補正装置と、補正された信号が伝送される伝送系とを統合した系をいう。
【0029】
「シールスモール(Thile-Small)パラメータ」とは、スピーカの集中定数モデルのパラメータをいう。実施形態では、最低共振周波数f0、f0’、共振の鋭さQ0、Q0’等が該当する。
【0030】
「目標特性」とは、統合伝送系の目標とする特性をいう。特性には、シールスモールパラメータで表わされる特性を含む。
【0031】
「仮想物理量」とは、入力信号に依存して変化する統合伝送系の状態を表わす所定の物理量であって、統合伝送系が目標特性を有すると仮定した場合の仮想の物理量をいう。実施形態では、ボイスコイル4の仮想変位xが該当する。
【0032】
「デジタルフィルタ」とは、信号の周波数特性を変えるために、入力信号にデジタル信号処理を施して出力信号を得るデジタル信号処理回路をいう。実施形態では、補正フィルタ、変位フィルタ(いずれも2次IIRフィルタ)が該当する。
【0033】
「フィルタ係数」とは、デジタルフィルタにおいて、信号の周波数特性を変えるために与えられる係数をいう。実施形態では、B1、hx0、C(x)等が該当する。なお、C(x)を構成する要素のうち、c0を線形フィルタ係数といい、c(x)を非線形フィルタ係数という。非線形フィルタ係数c(x)の係数c1、c2等を非線形係数という。
【0034】
【発明の効果】
請求項1の信号補正装置および請求項14の信号補正方法は、帰還路を有する2次以上のデジタルフィルタにより構成された補正フィルタを用意し、予測された仮想物理量に基づいて前記補正フィルタのフィルタ係数の少なくとも一部を決定し、補正フィルタは決定されたフィルタ係数を用いて入力信号を補正することを特徴とする。
【0035】
したがって、帰還路を有する2次以上のデジタルフィルタを用いることで、信号処理のアルゴリズムを規格化・単純化することができる。また、各係数の調整も容易になる。さらに、スピーカのシールスモールパラメータ等をそのまま補正計算に用いるのではなく、ある程度規格化されたフィルタ係数を用いるため、各係数値を所定範囲内に納めることができる。このため、固定小数点演算を行なうDSPを用いて高速処理を行なうのに都合がよい。また、各係数値の範囲を調整するための演算を省略することができるから演算処理の効率が低下することもなく、演算精度の低下を招くおそれもない。すなわち、非線形性を有する伝送系の特性の補正を、容易かつ迅速確実に行なうことができる。
【0036】
請求項2の信号補正装置は、信号の振幅を調整する振幅調整部をさらに備え、予測された仮想物理量に基づいて振幅調整部の振幅調整係数をも決定し、決定された振幅調整係数を用いて、補正フィルタによる補正前の信号または当該補正後の信号の振幅を調整することを特徴とする。したがって、伝送系の物理モデルとの対応がつけやすい。すなわち、伝送系の特性の補正を、さらに容易に行なうことができる。
【0037】
請求項3の信号補正装置は、仮想物理量予測手段が、帰還路を有する2次以上のデジタルフィルタにより構成された仮想物理量フィルタを備えたことを特徴とする。したがって、信号補正手段とともに仮想物理量予測手段にもデジタルフィルタを用いることにより、信号処理のアルゴリズムを、より規格化・単純化することができる。すなわち、非線形性を有する伝送系の特性の補正を、より容易かつ迅速確実に行なうことができる。
【0038】
請求項4および請求項5の信号補正装置は、補正フィルタおよび仮想物理量フィルタが、ともに、巡回部と非巡回部とを備え、補正フィルタの巡回部のフィルタ係数は、仮想物理量フィルタの巡回部のフィルタ係数と同一であることを特徴とする。したがって、補正フィルタと仮想物理量フィルタとで巡回部を共用することができ、信号処理のアルゴリズムを、さらに規格化・単純化することができる。
【0039】
請求項6の信号補正装置は、伝送系が動電型スピーカを備え、仮想物理量が動電型スピーカのボイスコイルの仮想変位であることを特徴とする。したがって、変位に依存する非線形歪の大きい導電型スピーカの特性の補正を、容易かつ迅速確実に行なうことができる。
【0040】
請求項7の信号補正装置は、増幅器が電圧出力型増幅器であり、補正フィルタの非巡回部の3つの非線形フィルタ係数が、
c(x)+e(x)=d(x)
の関係を満たすことを特徴とする。したがって、S−Z変換において双一次変換を用いることで、3つの非線形フィルタ係数のうち2つの非線形フィルタ係数を決定すれば、他のひとつの非線形フィルタ係数が自動的に決定されるよう構成することができる。すなわち、補正フィルタを2次のIIR型フィルタで構成した場合における信号処理のアルゴリズムを、さらに単純化することができる。
【0041】
請求項8の信号補正装置は、増幅器が電流出力型増幅器であり、補正フィルタの非巡回部の3つの非線形フィルタ係数が、
Figure 0003785629
の関係を満たすことを特徴とする。したがって、S−Z変換において双一次変換を用いることで、3つの非線形フィルタ係数のうちひとつの非線形フィルタ係数を決定すれば、他の2つの非線形フィルタ係数が自動的に決定されるよう構成することができる。すなわち、補正フィルタを2次のIIR型フィルタで構成した場合における信号処理のアルゴリズムを、さらに単純化することができる。
【0042】
請求項9の信号補正装置は、補正フィルタの非巡回部の3つの非線形フィルタ係数のうち2次遅延非線形フィルタ係数e(x)が、
e(x)=0
となることを特徴とする。したがって、S−Z変換において後進差分近似変換を用いることで、非線形フィルタ係数のうち2次遅延非線形フィルタ係数e(x)の決定が不要になるよう構成することができる。すなわち、補正フィルタを2次のIIR型フィルタで構成した場合における信号処理のアルゴリズムを、さらに単純化することができる。
【0043】
請求項10の信号補正装置は、目標とすべきシールスモールパラメータで表わされる統合伝送系の特性は、低レベル入力信号時における伝送系のシールスモールパラメータで表わされる特性そのものであることを特徴とする。したがって、実際のスピーカの線形特性をそのまま生かしつつ、スピーカの非線形歪を軽減することができる。
【0044】
請求項11の信号補正装置は、目標とすべきシールスモールパラメータで表わされる統合伝送系の特性は、低レベル入力信号時における伝送系のシールスモールパラメータで表わされる特性に所望の修正を加えた特性であることを特徴とする。したがって、スピーカの非線形歪を軽減することができると同時に、スピーカの線形特性を所望の値に補正することができる。
【0045】
請求項12の信号補正装置は、動電型スピーカのボイスコイルの変位に依存して変化する力係数およびスティフネスに起因する伝送系の非線形性を緩和することを特徴とする。したがって、動電型スピーカに生ずる可能性の高い非線形歪を軽減することができる。
【0046】
請求項13の信号補正装置は、動電型スピーカのボイスコイルの変位に依存して変化する動電型スピーカのエッジの排除空気体積に起因する伝送系の非線形性を緩和することを特徴とする。したがって、実効振動面積全体に占めるエッジ部面積の比率が比較的高い小型スピーカに適用した場合、非線形歪の軽減に高い効果を得ることができる。
【0047】
請求項15の信号補正装置の係数調整装置および請求項17の信号補正装置の係数調整方法は、与えられた参照信号に対応する統合伝送系の応答信号を測定し、参照信号および応答信号に基づいて、統合伝送系の特性が所定の目標特性に近づくよう、各係数を調整することを特徴とする。したがって、自動的に各係数を調整することができる。すなわち、各係数の調整を容易に行なうことができる。
【0048】
請求項16の信号補正装置の係数調整装置は、与えられた参照信号に対応する統合伝送系の応答信号の各高調波歪または混変調歪が減少するよう、補正フィルタの非巡回部の非線形フィルタ係数に関する係数を調整することを特徴とする。したがって、当該係数のうち、各高調波または各混変調波に関係する成分に着目して各高調波ごとに順次調整を行なうよう構成することで、より容易に当該各係数の調整を行なうことができる。
【0049】
請求項18の記憶媒体は、コンピュータが実行可能なプログラムを記憶したコンピュータ可読の記憶媒体であって、当該プログラムは、信号補正装置、信号補正方法、信号補正装置の係数調整装置、係数調整方法のいずれかの装置または方法を実現するものであることを特徴とする。したがって、コンピュータに使用することにより、非線形性を有する伝送系の特性の補正や各係数の調整を、より容易かつ迅速確実に行なうことができる。
【0050】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
−信号補正装置の全体構成−
図1に、この発明の一実施形態による信号補正装置12を含む統合伝送系10のブロック図を示す。統合伝送系10は、信号補正装置12と伝送系14とを統合した系である。
【0051】
信号補正装置12は、統合伝送系10の特性が所定の目標特性に近づくよう、入力信号である入力信号uを補正して伝送系14に与える。目標特性として、目標とすべきシールスモールパラメータで表わされる統合伝送系10の特性が与えられる。上記信号補正装置12は、仮想物理量予測手段(仮想物理量フィルタ)である変位フィルタ16、補正係数決定手段である補正係数決定部18、信号補正手段20、を備えている。信号補正手段20は、補正フィルタ22、振幅調整部24を備えている。
【0052】
変位フィルタ16は、帰還路を有する2次以上のデジタルフィルタにより構成されており、統合伝送系10の目標特性に基づいて決定されたフィルタ係数を用いて、入力信号uに基づいて仮想変位xを予測する。
【0053】
補正係数決定部18は、予測された仮想変位xに基づいて、補正フィルタ22のフィルタ係数の少なくとも一部を決定する。また、補正係数決定部18は、予測された仮想変位xに基づいて、振幅調整部24の振幅調整係数をも決定する。
【0054】
補正フィルタ22は、帰還路を有する2次以上のデジタルフィルタにより構成されており、決定されたフィルタ係数を用いて、入力信号uを補正する。
【0055】
振幅調整部24は、決定された振幅調整係数を用いて、補正フィルタ22による補正前の信号または当該補正後の信号の振幅を調整する。
【0056】
上記補正フィルタ22および変位フィルタ16は、ともに、帰還路を含み信号処理の上流部分に該当する巡回部22aと、帰還路を含まず信号処理の下流部分に該当する非巡回部22b、16bとを備えており、補正フィルタ22の巡回部22aのフィルタ係数は、変位フィルタ16の巡回部22aのフィルタ係数と同一である。この実施形態においては、補正フィルタ22と変位フィルタ16とで、巡回部22aを共用している。上記補正フィルタ22および変位フィルタ16は、ともに、2次のIIR型フィルタである。
【0057】
補正フィルタ22の非巡回部22bのフィルタ係数は、仮想変位xに基づいて決定されたフィルタ係数であり、後述するように、仮想変位xに依存しない線形フィルタ係数と、仮想変位xに依存して変化する非線形フィルタ係数との和で表現し得る。
【0058】
−ハードウェア−
図2に、図1に示す信号補正装置12の各機能をDSP(Digital Signal Processor)30を用いて実現した場合における、統合伝送系10のハードウェア構成の一例を示す。DSP30は高速演算を行なうマイクロプロセッサであり、内部メモリ(図示せず)を備えている。内部メモリにはプログラム、各係数などが記憶されている。DSP30は内部メモリ記憶されたプログラムに従って、入力信号uに対して信号補正処理を実行し、補正出力である補正出力信号uLを得る。
【0059】
この実施形態のように増幅器28(後述)が電圧出力型の場合、入力信号uおよび補正出力信号uLは、アナログ信号における電圧に等価である。なお、後述するように、増幅器28が電流出力型の場合、入力信号および補正出力は、入力信号iおよび補正出力信号iLで表わされ、これらの信号はアナログ信号における電流に等価である。
【0060】
D/A変換器26は、DSP30からの補正出力信号uL(デジタル信号)をアナログ信号に変換する。電圧出力型の増幅器28は、D/A変換器26の変換出力を増幅し、増幅出力により、動電型スピーカ2を駆動する。なお、DSP30が、信号補正装置12に対応する。また、D/A変換器26、増幅器28および動電型スピーカ2が、伝送系14に対応する。D/A変換器26および増幅器28が、駆動系に対応する。
【0061】
−処理式の導出−
図3に、伝送系14を構成する動電型スピーカ(以下、単に「スピーカ」という)2(図23参照)を物理モデル(集中定数モデル)で表現した図を示す。スピーカ2の各シールスモールパラメータを、次の記号で表わす、
最低共振周波数f0
共振の鋭さQ0
純機械系の共振の鋭さQm
力係数BL0、
直流電気抵抗Rdc
実効質量m0
機械抵抗Rm
スティフネスK0 。
【0062】
通常、スピーカの振動系の物理モデルとしては、低域においては1次の共振系として近似される。したがって、目標とする理想的なスピーカのシールスモールパラメータを「’」付き記号で表現すれば、理想的なスピーカの運動方程式は、下記のようにスピーカのボイスコイルの変位xについての2階線形微分方程式で表される、
BL0'・A0・u(t)/Rdc
=m0・(d2x/dt2)+Rm・(dx/dt)+K0'・x+(BL0'2/Rdc)・(dx/dt) ・・・(2)
なお、式(2)において、u(t)は理想的なスピーカへの入力信号、A0は駆動系の増幅ゲイン(D/A変換器26および増幅器28の総合ゲイン)である。
【0063】
一方、実際のスピーカ2においては、各シールスモールパラメータのうち力係数およびスティフネスは、スピーカ2のボイスコイル4の変位xが極めて小さい場合には、ほぼ一定値BL0およびK0を示すが、ボイスコイル4の変位xがある程度大きい場合には、変位xに依存して変化する傾向を示すことが知られている。すなわち、力係数およびスティフネスは、非線形性を有する。これが、スピーカ2の非線形歪の原因のひとつである。変位xに依存して変化する力係数BL(x)およびスティフネスK(x)を、次式で表現することとする、
Figure 0003785629
式(1)において、b1、b2、k1、k2、k3、k4は、非線形係数である。
【0064】
変位に依存して変化するこのような非線形性を考慮すると、実際のスピーカ2の運動方程式は、下記の2次の非線形微分方程式で表される、
BL(x)・A0・uL(t)/Rdc
=m0・(d2x/dt2)+Rm・(dx/dt)+K(x)・x+BL2(x)/Rdc・(dx/dt) ・・・(3)
なお、式(3)において、uL(t)は実際のスピーカ2への入力信号である。
【0065】
ところで、理想的な最低共振角周波数ω0'(=2・π・f0')および共振の鋭さQ0'、ならびに実際の最低共振角周波数ω0(=2・π・f0)、共振の鋭さQ0および純機械系の共振の鋭さQmは、それぞれ次式で表現することができる、
Figure 0003785629
【0066】
ここで、
Figure 0003785629
とすると、式(2)は、式(8)より、
G0・u(t)=(d2x/dt2)+ω0'/Q0'・(dx/dt)+ω0'2・x ・・・(4)。
【0067】
また、式(3)は、式(1)、式(8)より、
Figure 0003785629
【0068】
式(4)からわかるように、理想的なスピーカのボイスコイルの変位x(t)は、入力信号u(t)に対し線形性を示し、歪を生じない。式(4)で表わされる線形微分方程式の解を、以下に示す、
x(t)=L-1{G0/(s2+s・ω0'/Q0'+ω0'2)}*u(t) ・・・(18)
ただし、この明細書においては、特にことわらないかぎり、
sは、ラプラス演算子
L-1{P}は、Pのラプラス逆変換
P*Qは、PとQとのたたみこみ積分
を表わす。
【0069】
式(18)より、理想的なスピーカのボイスコイルの速度v(t)、加速度a(t)は以下の式で表される、
v(t)=dx/dt=L-1{(s・G0)/(s2+s・ω0'/Q0'+ω0'2)}*u(t) ・・・(6)
a(t)=d2x/dt2=L-1{(s2・G0)/(s2+s・ω0'/Q0'+ω0'2)}*u(t) ・・・(7)
一方、非線形微分方程式(5)からわかるように、実際のスピーカ2のボイスコイルの変位x(t)は、入力信号uL(t)に対し非線形性を示し、歪を生ずる。そこで、式(5)における実際のスピーカ2の変位x(t)が、式(18)に示される理想的なスピーカのボイスコイルの変位x(t)に等しくなるよう、実際のスピーカ2への入力信号uL(t)を補正してやれば、実際のスピーカ2は線形無歪となるはずである。
【0070】
式(5)に、式(18)、(6)、(7)を代入すれば、
Figure 0003785629
【0071】
式(9)に示すように、実際のスピーカ2への信号として、信号u(t)(入力信号)に所定の補正を施した信号uL(t)(補正出力)を用いることにより、非線形性を示すスピーカ2を線形無歪の状態にすることができる。すなわち、式(9)に示すuL(t)は、非線形性を示すスピーカ2を線形無歪とするための非線形補正信号を意味する。
【0072】
以上の非線形補正をDSP30で実行するためには、連続系を離散系に変換する必要がある。連続系を離散系に変換するためのS−Z変換として、双一次変換やオイラー近似(後進差分近似)等が用いられる。この実施形態においては、双一次変換を用いる。サンプリング周期T、サンプリング周波数Fs(=1/T)とすれば、双一次変換の変換式は、次のように表わされる、
Figure 0003785629
【0073】
式(10)を用いれば、変位、速度、加速度は、以下のように変換される、
Figure 0003785629
【0074】
Figure 0003785629
【0075】
Figure 0003785629
【0076】
双一次変換の場合、上述の各式における係数は以下の関係となっている、
Figure 0003785629
【0077】
式(100)、(20)、(12)、(101)、(102)を用いれば、前述の理想的なスピーカのボイスコイルの変位x(t)、速度v(t)、加速度a(t)を表わす式(18)、(6)、(7)は、以下のように変換される、
Figure 0003785629
ただし、この明細書において、特にことわらないかぎり、Z-1{P}は、PのZ逆変換を表わす。
【0078】
式(19)で表わされる変位x(n)が、ボイスコイル4の仮想変位xである。
【0079】
式(19)、(104)、(105)を、非線形補正信号を示す式(9)に適用すれば、
Figure 0003785629
【0080】
ここで、
hv0・ω0/Q0=(f0/Fs・π/Q0)/(1+f0'/Fs・π/Q0'+(f0'/Fs・π)2)
hx0・ω02=(f0/Fs・π)2/(1+f0'/Fs・π/Q0'+(f0'/Fs・π)2)
であるから、この関係を用いて式(106)を整理すれば、以下のようになる、
Figure 0003785629
【0081】
式(11)において、
Figure 0003785629
式(13)、(14)、(15)から、非線形フィルタ係数c(x)、d(x)、e(x)について次の関係が導かれる、
d(x)=c(x)+e(x) ・・・(16)
したがって、d(x)は、c(x)とe(x)とにより表わされる。
【0082】
一方、非線形係数フィルタ係数b(x)、c(x)、d(x)、e(x)間の関係は、
c(x)=d(x)/2+(b2(x)-1)・((c0-e0)/2)・(1-Q0/Qm)
e(x)=d(x)/2-(b2(x)-1)・((c0-e0)/2)・(1-Q0/Qm)
したがって、
b(x)={(c(x)-e(x))/(c0-e0)・Qm/(Q0-Qm)+1}1/2 ・・・(17)
したがって、b(x)も、c(x)とe(x)とにより表わされる。
【0083】
図4、図5は、式(11)で表現した場合の、それぞれ信号補正装置12、52の信号処理回路図である。図4で表わされる信号補正装置12の補正係数決定部18においては、非線形フィルタ係数c(x)、e(x)に基づいて、非線形フィルタ係数d(x)、b(x)が自動的に決定されるが、図5で表わされる信号補正装置52の補正係数決定部18においては、これとは逆に、非線形フィルタ係数d(x)、b(x)に基づいて、非線形フィルタ係数c(x)、e(x)が自動的に決定される。
【0084】
−係数調整装置の構成−
図6に、図4に示す信号補正装置12の各係数を調整するための係数調整装置32の全体構成を例示する。係数調整装置32は、参照信号生成手段である発振器34、A/D変換器36、応答信号生成手段であるマイクロフォン38および測定器40、調整制御手段であるコントローラ42を備えている。
【0085】
発振器34は、統合伝送系10に与える参照信号を生成する。A/D変換器36は、アナログ信号で与えられた参照信号をデジタル信号に変換して、統合伝送系10に与える。測定器40は、与えられた参照信号に対応する統合伝送系10の応答信号を、マイクロフォン38を介して測定する。
【0086】
コントローラ42は、参照信号および応答信号に基づいて、統合伝送系10の特性が所定の目標特性に近づくよう、DSP30(信号調整装置12)の各係数を調整する。この実施形態においては、コントローラ42は、与えられた参照信号に対応する統合伝送系10の応答信号の各高調波歪が減少するよう、補正フィルタ22の非巡回部22b(図1参照)の非線形フィルタ係数等の非線形係数を調整するよう構成されている。コントローラ42として、コンピュータ又はマイコンを使用することができる。
【0087】
なお、測定用抵抗R1を、スピーカ2の直流抵抗Rdcに対して直列に接続している。測定用抵抗R1の抵抗値は、スピーカ2の直流抵抗Rdcに比較して十分に小さい。
【0088】
−係数調整処理−
図7に、図6の係数調整装置32を用いて、図4で表わされる信号補正装置12の係数調整処理を行なう場合の処理の流れを例示する。まず、スピーカ2の最低共振周波数f0および共振の鋭さQ0等を測定する(ステップS2)。スピーカ2に掃引周波数を与え、測定用抵抗R1の両端電圧が最小になる(図24のアドミタンスが最小になる)周波数を測定する。この周波数が最低共振周波数f0である。共振の鋭さQ0は、最低共振周波数f0における共振の鋭さ(図24のアドミタンス曲線のf0における尖度)として求められる。
【0089】
さらに、このステップにおいて、D/A変換器26および増幅器28の総合ゲインA0と、スピーカ2の力係数BL0との比、A0/BL0を求めておく。なお、増幅器28のボリューム(図示せず)が可変の場合には、後述する信号補正処理において、総合ゲインA0を逐次検出するよう構成することもできる。この場合、総合ゲインA0は、該ボリュームの位置や増幅器28の入力・出力比等を逐次測定することにより得られる。このようにして求められたA0/BL0は、信号補正処理において仮想変位xを算出する際に用いられる。
【0090】
次に、測定した最低共振周波数f0および共振の鋭さQ0を参考にして、実現したい最低共振周波数f0'および共振の鋭さQ0'(目的特性)を決定する(ステップS4)。
【0091】
つぎに、測定した最低共振周波数f0および共振の鋭さQ0、ならびに、実現したい最低共振周波数f0'および共振の鋭さQ0'に基づいて、変位フィルタ16のフィルタ係数B1,B2,hx0,hx1,hx2、および、補正フィルタ22の線形フィルタ係数c0,d0,e0を算出する(ステップS6)。変位フィルタ16のフィルタ係数B1,B2,hx0,hx1,hx2は、上述の式(12)、(20)にしたがって算出する。補正フィルタ22の線形フィルタ係数c0,d0,e0は、上述の式(13)、(14)、(15)の該当式にしたがって算出する。なお、補正フィルタ22のフィルタ係数B1,B2は、変位フィルタ16のフィルタ係数B1,B2と同一である。
【0092】
つぎに、図4に示す、非線形フィルタ係数c(x)、e(x)を構成する非線形係数c1〜c4、e1〜e4を決定する(ステップS8)。上述のように、図4で表わされる信号補正装置12の補正係数決定部18においては、非線形フィルタ係数c(x)、e(x)に基づいて、非線形フィルタ係数d(x)およびb(x)が、自動的に決定される。したがって、非線形係数c1〜c4、e1〜e4を決定しておけば、補正フィルタ22のフィルタ係数C(x)、D(x)、E(x)、および、振幅調整係数1/b(x)は、後述するように、仮想変位xに基づいて算出されることになる。
【0093】
図6に示すコントローラ42を用いて非線形係数c1〜c4、e1〜e4を決定する方法を以下に例示する。コントローラ42は、まず、信号補正装置12(DSP30)の係数c2〜c4、e2〜e4(図4参照)の値を「0」に設定する。つぎに、所定周波数の参照信号を、発振器34、A/D変換器36を介して、統合伝送系10に与え、当該参照信号に対応する統合伝送系10の応答信号(音圧、加速度)を、マイクロフォン38、測定器40を介して取込む。コントローラ42は、係数c1、e1の値を適当に変化させつつ、応答信号の2次高調波の信号レベルを監視する。コントローラ42は、応答信号の2次高調波の信号レベルが最も小さい値を示したときの係数c1、e1の値を、非線形係数c1、e1の値と決定する。
【0094】
コントローラ42は、つぎに、係数c1、e1については既に決定した非線形係数c1、e1の値を用いるとともに、未決定の係数c3〜c4、e3〜e4(図4参照)の値を「0」に設定し、同様の方法で、応答信号の3次高調波の信号レベルが最も小さい値を示したときの係数c2、e2の値を、非線形係数c2、e2の値と決定する。
【0095】
同様の手順を繰り返し、応答信号の4次高調波、および、5次高調波の信号レベルが最も小さい値を示したときの係数c3、e3、および、係数c4、e4の値を、それぞれ、非線形係数c3、e3、および、非線形係数c4、e4の値と決定する。このようにして、非線形係数c1〜c4、e1〜e4を決定する。
【0096】
一方、図5で表わされる信号補正装置52の補正係数決定部18においては、図4で表わされる信号補正装置12の場合とは逆に、非線形フィルタ係数d(x)、b(x)に基づいて、非線形フィルタ係数c(x)、e(x)が自動的に決定される。したがって、この場合には、ステップS8において、非線形係数c1〜c4、e1〜e4の替わりに、非線形係数d1〜d4、b1〜b4を決定すればよい。
【0097】
なお、ステップS8において、非線形係数c1〜c4、e1〜e4等を決定する方法は、上述の方法に限定されるものではない。たとえば、これから決定しようとする非線形係数以外の係数を、すべて「0」とするよう構成することもできる。この場合、たとえば、非線形係数c2、e2の値を決定しようとするときには、係数c1、e1および係数c3〜c4、e3〜e4の値を、既決定か未決定かにかかわらず、すべて「0」に設定し、応答信号の3次高調波の信号レベルが最も小さい値を示したときの係数c2、e2の値を、非線形係数c2、e2の値と決定する。
【0098】
また、非線形係数(例えばc1〜c4、e1〜e4)を決定する際、非線形係数c1とe1とをまず決定し、以後、c2とe2、c3とe3、・・・の順に決定したが、決定する順序はこれに限定されるものではない。また、非線形係数c1〜c4およびe1〜e4等を一度にまとめて決定するよう構成することもできる。
【0099】
また、たとえば非線形係数c1、e1の値を決定する場合、コントローラ42が、係数c1、e1の値を適当に変化させつつ、応答信号の2次高調波の信号レベルを監視し、応答信号の2次高調波の信号レベルが最も小さい値を示したときの係数c1、e1の値を、自動的に、非線形係数c1、e1の値と決定するよう構成したが、このような処理動作の一部または全部を操作者が手動で行なうよう構成することもできる。
【0100】
−信号補正処理−
係数調整処理済みの信号補正装置12を用いて信号補正処理を行なう場合の、処理の流れの一例を、図8のフローチャートに示す。図4に示すように、入力信号u(デジタル信号)は、アッテネータATTで所定のレベルに調整された後(ステップS10)、ハイパスフィルタHPFにより、DCオフセット成分がカットされる(ステップS12)。
【0101】
このようにして前処理が施された入力信号uに基づいて、変位フィルタ16において、仮想変位xが算出される(ステップS14)。仮想変位xは、前述の式(19)にしたがって算出される。
【0102】
算出された仮想変位xに基づいて、補正係数決定部18において、補正フィルタ22のフィルタ係数C(x)、D(x)、E(x)、および、振幅調整係数1/b(x)が決定される(ステップS16)。
【0103】
このステップにおいて、フィルタ係数C(x)は、式(13)の該当式
Figure 0003785629
にしたがって算出される。また、フィルタ係数E(x)は、式(15)の該当式
Figure 0003785629
にしたがって算出される。フィルタ係数D(x)は、式(14)の該当式
D(x)=d0+d(x) ・・・(14-1)
および式(16)にしたがって算出される。
【0104】
また、振幅調整係数1/b(x)は、式(1)から導かれる
b(x)=1+b1・x+b2・x2 ・・・(1-1')
および、式(17)にしたがって算出される。
【0105】
つぎに、補正フィルタ22において、入力信号の補正が行なわれ、補正出力信号uLが算出される(ステップS18)。補正出力信号uLは、予め算出されたフィルタ係数B1、B2(ステップS6)、および、前ステップで決定されたフィルタ係数C(x)、D(x)、E(x)、振幅調整係数1/b(x)に基づき、式(11)にしたがって、入力信号uを補正することにより得られる。
【0106】
得られた補正出力信号uL(デジタル信号)は、図2に示すように、D/A変換器26においてアナログ信号に変換された後(ステップS20)、増幅器28において所定のレベルに増幅され(ステップS22)、スピーカ2を駆動する(ステップS24)。
【0107】
このように、入力信号uに対して所望の線形補正および非線形補正を行なうことにより補正出力信号uLを得、得られた補正出力信号uLに基づいてスピーカ2を駆動することで、所望の低域特性を持ち、かつ、非線形歪の少ない統合伝送系10を実現することができる。
【0108】
図21は、線形補正を実施しない場合(最低共振周波数f0、共振の鋭さQ0)の音圧の周波数応答と、この実施形態による線形補正を実施した場合(f0'=f0/2、Q0'=Q0)の音圧の周波数応答とを比較したデータである。最低共振周波数を小さくする線形補正を行なうことにより、低域における音圧が増加していることがわかる。
【0109】
図22は、統合伝送系10に対する入力信号としてSin波(50Hz)を用い、出力音圧に現れる高調波のレベルを測定したデータである。図22Aは、非線形補正を実施しない場合の高調波レベルを示すデータであり、図22Bは、この実施形態による非線形補正を実施した場合の高調波レベルを示すデータである。非線形補正を実施することにより、100Hz以上の高調波が減少していることがわかる。
【0110】
[第2実施形態]
図9に、この発明の他の実施形態による信号補正装置62の信号処理回路を示す。信号補正装置の全体構成、ハードウェア、信号補正装置の各係数を調整するための係数調整装置の構成、係数調整処理、信号補正装置を用いた信号補正処理については、図4で表わされる信号補正装置12と、共通する点が多い。
【0111】
しかし、上述の、図4で表わされる信号補正装置12は、線形補正および非線形補正の双方を実施する場合に適用し得るが、図9で表わされる信号補正装置62は、非線形補正のみを実施する場合に適用される。したがって、信号補正装置62には、信号処理内容等において以下のような特徴がある。
【0112】
信号補正装置62は線形補正を行なわない。したがって、上述の信号補正装置12の例において、統合伝送系10の目的特性を表わすシールスモールパラメータf0',Q0',Qm',K0',BLO',m0',Rdc',Rm'として、スピーカ2の実測特性を表わすシールスモールパラメータf0,Q0,Qm,K0,BLO,m0,Rdc,Rmを用いればよい。
【0113】
この結果、補正出力信号uLを表わす式(11)に用いるフィルタ係数は、式(12)〜(15)に替え、以下の式で表わされる、
Figure 0003785629
【0114】
Figure 0003785629
Figure 0003785629
【0115】
なお、図10は、式(11)で表現した場合の、信号補正装置72の信号処理回路である。信号補正装置72においては、上述の図5で表わされる信号補正装置52同様、非線形フィルタ係数d(x)、b(x)に基づいて、非線形フィルタ係数c(x)、e(x)が自動的に決定される点で、信号補正装置62と異なる。
【0116】
信号補正装置62、信号補正装置72は、目標とすべき統合伝送系10の特性が、低レベル入力信号時における伝送系14の最低共振周波数f0、共振の鋭さQ0等により表わされる特性(実測特性)そのものである。したがって、実際のスピーカ2の線形特性をそのまま生かしつつ、スピーカ2の非線形歪を軽減することができる。
【0117】
[第3実施形態]
図11に、この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置82の信号処理回路を示す。信号補正装置の全体構成、ハードウェア、信号補正装置の各係数を調整するための係数調整装置の構成、係数調整処理、信号補正装置を用いた信号補正処理については、図4で表わされる信号補正装置12と、共通する点が多い。
【0118】
しかし、上述の、図4で表わされる信号補正装置12は、伝送系14の増幅器28が電圧出力型の増幅器である場合に適用されるが、信号補正装置82は、伝送系14の増幅器28が電流出力型の増幅器である場合に適用される。したがって、信号補正装置82には、信号処理内容等において以下のような特徴がある。
【0119】
信号補正装置82においては、入力信号は入力信号iで表わされ、補正出力は補正出力信号iLで表わされる。入力信号iおよび補正出力信号iLは、ともにアナログ信号における電流に等価である。
【0120】
この実施形態においては、理想的スピーカの運動方程式、実際のスピーカの運動方程式は、式(2)、(3)に替え、次式で表わされる、
BL0'・A0・i(t)=m0・(d2x/dt2)+Rm・(dx/dt)+k0'・x ・・・(27)
BL(x)・A0・iL(t)=m0・(d2x/dt2)+Rm・(dx/dt)+k(x)・x ・・・(28)。
【0121】
ここで、
G0'=BL0・A0/m0 ・・・(29)
とすると、式(27)、(28)は
G0'・i(t)=(d2x/dt2)+ω0'/Qm・(dx/dt)+ω0'2・x ・・・(107)
b(x)・G0'・iL(t)=(d2x/dt2)+ω0/Qm・(dx/dt)+k(x)・ω02・x ・・・(108)。
【0122】
式(107)で表わされる線形微分方程式の解(入力信号i(t)に対する仮想変位x(t))は、式(18)に替え、次式で表わされる、
x(t)=L-1{G0'/(s2+s・ω0'/Qm+ω0'2)}*i(t) ・・・(36)。
【0123】
速度v(t)、加速度a(t)は、式(6)、(7)に替え、次式で表わされる、
v(t)=dx(t)/dt=L-1{s・G0'/(s2+s・ω0'/Qm+ω0'2)}*i(t) ・・・(109)
a(t)=d2x(t)/dt2=L-1{s2・G0'/(s2+s・ω0'/Qm+ω0'2)}*i(t)・・・(110)。
【0124】
また、非線形補正信号を表わす信号iL(t)は、式(108)に、式(36)、(109)、(110)を代入することにより、式(9)に替え、次式で表わされる、
Figure 0003785629
【0125】
一方、式(10)を用いてS−Z変換(双一次変換)を行なうと、仮想変位x(t)を表わす式(36)は、次式に変換される、
Figure 0003785629
【0126】
ただし、式(37)において、
Figure 0003785629
なお、フィルタ係数B1,B2は式(30)(後述)で表わされる。
【0127】
同様に、式(109)、(110)に表わされた速度v(t)、加速度a(t)についても、S−Z変換を行なう。これらの結果を用いて、式(111)を書換えれば、
Z平面での補正出力信号iL(n)およびフィルタ係数は、式(11)〜(15)に替え、以下の式で表わされる、
Figure 0003785629
【0128】
式(30)において、
Figure 0003785629
【0129】
Figure 0003785629
したがって、非線形フィルタ係数c(x)、d(x)、e(x)についての関係は、式(16)に替え、次式で表わされる、
Figure 0003785629
信号補正装置82の係数調整処理を行なうに際し、非線形係数の各ペアつまりc1とb1、c2とb2、c3とb3、c4とb4を、それぞれ決定するには、上述の信号補正装置12の場合同様、スピーカ2からの出力信号(音圧、加速度)の2次、3次、4次、5次高調波歪が減少する値を、順番に探していけばよい。なお、非線形フィルタ係数d(x)とe(x)は式(35)から自動的に定まる。
【0130】
このように、信号補正装置82は、伝送系14の増幅器28が電流出力型の増幅器である場合に適用される。したがって、電磁制動の非線形歪を考慮する必要がないため、補正処理の内容を単純化することができる。
【0131】
[第4実施形態]
図12に、この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置92の信号処理回路を示す。信号補正装置の全体構成、ハードウェア、信号補正装置の各係数を調整するための係数調整装置の構成、係数調整処理、信号補正装置を用いた信号補正処理については、図11で表わされる信号補正装置82と、共通する点が多い。
【0132】
しかし、上述の、図11で表わされる信号補正装置82は、線形補正および非線形補正の双方を実施する場合に適用し得るが、図12で表わされる信号補正装置92は、非線形補正のみを実施する場合に適用される。したがって、信号補正装置92には、信号処理内容等において以下のような特徴がある。
【0133】
信号補正装置92は線形補正を行なわない。したがって、上述の信号補正装置82の例において、統合伝送系10の目的特性を表わすシールスモールパラメータf0',Q0',Qm',K0',BLO',m0',Rdc',Rm'として、スピーカ2の実測特性を表わすシールスモールパラメータf0,Q0,Qm,K0,BLO,m0,Rdc,Rmを用いればよい。
【0134】
この結果、Z平面での補正出力信号iLを表わす式(30)に用いるフィルタ係数は、式(31)〜(34)に替え、以下の式で表わされる、
Figure 0003785629
【0135】
Figure 0003785629
また、ボイスコイル4の仮想変位xを表わす式(37)に用いるフィルタ係数は、式(38)に替え、以下の式で表わされる、
Figure 0003785629
【0136】
信号補正装置92は、目標とすべき統合伝送系10の特性が、低レベル入力信号時における伝送系14の最低共振周波数f0、共振の鋭さQ0等により表わされる特性(実測特性)そのものである。したがって、前述の信号補正装置62、信号補正装置72同様、実際のスピーカ2の線形特性をそのまま生かしつつ、スピーカ2の非線形歪を軽減することができる。
【0137】
[第5実施形態]
図13に、この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置102の信号処理回路を示す。信号補正装置の全体構成、ハードウェア、信号補正装置の各係数を調整するための係数調整装置の構成、係数調整処理、信号補正装置を用いた信号補正処理については、図4で表わされる信号補正装置12と、共通する点が多い。
【0138】
しかし、上述の図4で表わされる信号補正装置12では、S平面での連続系の記述式(9)を、Z平面での離散系に変換するに際し、双一次変換によりS−Z変換するよう構成したが、信号補正装置102では、後進差分近似(オイラー近似)によりS−Z変換するよう構成している。したがって、信号補正装置102には、信号処理内容等において以下のような特徴がある。
【0139】
信号補正装置102においてはS−Z変換の変換式として、双一次変換の変換式(10)に替え、次式(後進差分近似の変換式)が用いられる、
Figure 0003785629
【0140】
この結果、Z平面での補正出力信号uLおよびフィルタ係数は、式(11)〜(15)に替え、以下の式で表わされる、
Figure 0003785629
【0141】
式(45)において、
Figure 0003785629
【0142】
Figure 0003785629
したがって、非線形フィルタ係数c(x)、d(x)等の相互関係は、式(16)に替え、次式で表わされる、
Figure 0003785629
また、ボイスコイル4の仮想変位x等は、式(19)、(20)に替え、以下の式で表わされる。
【0143】
Figure 0003785629
【0144】
信号補正装置102の係数調整処理を行なうに際し、非線形係数の各ペアつまりb1とc'1、b2とc'2、b3とc'3、b4とc'4を、それぞれ決定するには、上述の信号補正装置12の場合同様、スピーカ2からの出力信号(音圧、加速度)の2次、3次、4次、5次高調波歪が減少する値を、順番に探していけばよい。なお、非線形フィルタ係数d(x)とc(x)とは式(50)から自動的に定まる。
【0145】
このように、信号補正装置102は、S−Z変換に際し、簡易な後進差分近似によりS−Z変換するようよう構成している。したがって、補正処理の内容を単純化することができる。
【0146】
[第6実施形態]
図14に、この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置112の信号処理回路を示す。信号補正装置の全体構成、ハードウェア、信号補正装置の各係数を調整するための係数調整装置の構成、係数調整処理、信号補正装置を用いた信号補正処理については、図11で表わされる信号補正装置82と、共通する点が多い。
【0147】
しかし、上述の図11で表わされる信号補正装置82では、S−Z変換を行なう際、双一次変換を用いるよう構成したが、信号補正装置112では、S−Z変換を行なう際、後進差分近似を用いるよう構成している。したがって、信号補正装置112には、信号処理内容等において以下のような特徴がある。
【0148】
信号補正装置112においてはS−Z変換の変換式として、双一次変換の変換式(10)に替え、前述の式(44)が用いられる。
【0149】
この結果、Z平面での補正出力信号iLおよびフィルタ係数は、式(30)〜(34)に替え、以下の式で表わされる、
Figure 0003785629
【0150】
式(53)において、
Figure 0003785629
【0151】
Figure 0003785629
非線形フィルタ係数d(x)、e(x)は存在しない(d(x)=0, e(x)=0)。したがって、非線形フィルタ係数等の相互関係を表わす式(35)は、適用されない。
【0152】
また、ボイスコイル4の仮想変位x等は、式(37)、(38)に替え、以下の式で表わされる。
【0153】
Figure 0003785629
【0154】
信号補正装置112の係数調整処理を行なうに際し、非線形係数の各ペアつまりb1とc1、b2とc2、b3とc3、b4とc4を、それぞれ決定するには、上述の信号補正装置12の場合同様、スピーカ2からの出力信号(音圧、加速度)の2次、3次、4次、5次高調波歪が減少する値を、順番に探していけばよい。
【0155】
このように、信号補正装置112は、S平面での連続系の記述式をZ平面での離散系に変換するに際し、簡易な後進差分近似によりS−Z変換するよう構成している。したがって、補正処理の内容を単純化することができる。
【0156】
[第7実施形態]
図16に、この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置122の信号処理回路を示す。信号補正装置の全体構成、ハードウェア、信号補正装置の各係数を調整するための係数調整装置の構成、係数調整処理、信号補正装置を用いた信号補正処理については、図4で表わされる信号補正装置12と、共通する点が多い。
【0157】
しかし、上述の、図4で表わされる信号補正装置12においては、非線形歪の原因として、力係数およびスティフネスの非線形性に着目したが、信号補正装置122においては、さらに、スピーカ2のスピーカ振動板8のエッジ8e(図15参照)の排除空気体積の非線形性をも考慮している。したがって、信号補正装置122には、信号処理内容等において以下のような特徴がある。
【0158】
前述のように、スピーカ2の再生音圧は、スピーカ振動板8の移動に伴って排除される空気の体積にも依存している。ここで、理想的なスピーカにおいては、スピーカの実効振動面積Saは常に一定である。したがって、空気の密度をρ0、ボイスコイル4の加速度をa=d2x/dt2、スピーカの空気体積排除量をWa(=Sa・x)とすると、距離rにおけるスピーカ2の音圧Pa(t)は、次式で表わされる、
Figure 0003785629
【0159】
Figure 0003785629
上式からわかるように、音圧Paはコーン8dの変位xに対して、線形性を示し、無歪である。
【0160】
しかし、実際のスピーカにおいては、エッジの排除空気体積の非線形性により歪が生じる。図15に示すように、スピーカ振動板8を構成するコーン8dの位置がP0からP1に移動した場合と、P0からP2に移動した場合とでは、移動距離が同じであってもエッジ8eの排除空気体積Weが異なる(We1≠We2)。
【0161】
このように、エッジ8eの排除空気体積Weは、スピーカ2のボイスコイル4の変位xが極めて小さい場合には、ボイスコイル4の移動方向による差異がほとんどないが、ボイスコイル4の変位xがある程度大きい場合には、ボイスコイル4の移動方向による差異が現れることが知られている。すなわち、エッジの排除空気体積は非線形性を有する。これが、スピーカ2の非線形歪の原因のひとつである。
【0162】
変位xに依存して変化するエッジの排除空気体積We(x)とともに、変位xに依存して変化する力係数BL(x)およびスティフネスK(x)を、前述の式(1)に替え、次式で表現することとする、
Figure 0003785629
式(60)において、b1、b2、k1、k2、W1、W2は、非線形係数である。
【0163】
コーン8dの面積をSd、コーン8dの空気体積排除量をWd(=Sd・x)とすると、スピーカ2からの距離rの点における、コーン8dからの音圧Pdは次式で表わされる、
Figure 0003785629
【0164】
上式からわかるように、コーン8dからの音圧Pdは、その排除空気体積Wdの時間2階微分に比例する。
【0165】
一方、スピーカ2からの距離rの点におけるエッジ8eからの放射音圧Peは次式で表わされる、
Pe(t)=ρ0/(2・π・r)・(d2(We(x))/dt2) ・・・(62)。
【0166】
スピーカ2からの距離rの点における音圧Paは、コーン8dからの音圧Pdと、エッジ8eからの放射音圧Peの和で表わされるから、スピーカ2全体の排除空気体積をWa(x)とすれば、式(61)、(62)により、
Figure 0003785629
【0167】
スピーカ2全体の排除空気体積Wa(x)は、エッジ8eの存在により、変位xにともなって変化する性質を示す。したがって、全体の排除空気体積Wa(x)を、変位xをパラメータとする実効振動面積Sa(x)と変位xとの積と考えると、
Figure 0003785629
【0168】
したがって、式(63)、(112)より、
Figure 0003785629
【0169】
式(64)からわかるように、ボイスコイル4の変位xが無歪であったとしても、エッジ8eの排除空気体積We(x)の非線形性により、実効振動面積Sa(x)が変化し、音圧Paは歪を生ずる。
【0170】
ところで、変位xを無歪化するための非線形補正を導入したとすると、前述の式(19)、(11)同様、仮想変位x(n)および補正出力信号uL(n)は次式であらわされる、
Figure 0003785629
【0171】
エッジ8eの非線形補正を行なうためには、式(67)で示される補正出力信号uL(n)では十分でなく、さらに補正を行なう必要がある。さらに補正を行なった場合の補正出力信号uL’(n)は、式(65)、(64)を考慮すれば、次式で表わすことができる、
Figure 0003785629
【0172】
すなわち、エッジ8eの非線形性をも考慮した非線形補正を行なうためには、補正出力信号uL(n)に替え、補正出力信号uL’(n)を、伝送系14(図2参照)に入力すればよい。
【0173】
ここで、
Figure 0003785629
とおくと、式(69)は、
Figure 0003785629
【0174】
式(70)において、
Figure 0003785629
【0175】
Figure 0003785629
一方、非線形パラメータc(x)、d(x)、e(x)相互の関係は、式(72)〜(74)より、次式で表わされる、
d(x)=c(x)+e(x) ・・・(75)
また、d(x)は(k(x)ー1)に比例する、
なお、ボイスコイル4の仮想変位x等は、式(19)、(20)、(12)をそのまま用いることができる。
【0176】
信号補正装置122(図16参照)の係数調整処理を行なうに際し、非線形係数の各組合せつまりc1とe1とg1、c2とe2とg2、c3とe3とg3、c4とe4とg4を、それぞれ決定するには、上述の信号補正装置12の場合同様、スピーカ2からの出力信号(音圧、加速度)の2次、3次、4次、5次高調波歪が減少する値を、順番に探していけばよい。なお、式(75)に示すように、c(x)、e(x)の二つのパラメータからd(x)を自動的に決定することができる。
【0177】
一方、式(72)〜(74)に基づいて、図17に示す信号補正装置132を構成することもできる。信号補正装置132の係数調整処理を行なうに際し、非線形係数の各組合せつまりk1とn1とg1、k2とn2とg2、k3とn3とg3、k4とn4とg4を、それぞれ決定するには、上述の場合同様、スピーカ2からの出力信号(音圧、加速度)の2次、3次、4次、5次高調波歪が減少する値を、順番に探していけばよい。なお、式(72)〜(74)に示すように、k(x)、n(x)の二つのパラメータからc(x)、d(x)、e(x)を自動的に決定することができる。
【0178】
このように、信号補正装置122、信号補正装置132においては、さらに、スピーカ2のスピーカ振動板8のエッジ8eの排除空気体積の非線形性をも考慮して補正を行なう。したがって、実効振動面積全体に占めるエッジ部面積の比率が比較的高い小型スピーカに適用した場合、非線形歪の軽減に高い効果を得ることができる。
【0179】
なお、この実施形態においては、力係数、スティフネス、エッジの排除空気体積の3つの非線形性に着目し、これらすべての非線形性を軽減するよう構成したが、これらのうち何れか一つ以上の非線形性を軽減するよう構成することもできる。たとえば、エッジの排除空気体積の非線形性のみを軽減するよう構成することもできる。
【0180】
[第8実施形態]
図18に、この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置142の信号処理回路を示す。信号補正装置の全体構成、ハードウェア、信号補正装置の各係数を調整するための係数調整装置の構成、係数調整処理、信号補正装置を用いた信号補正処理については、図17で表わされる信号補正装置132と、共通する点が多い。
【0181】
しかし、上述の図17で表わされる信号補正装置132では、S平面での連続系の記述式を、Z平面での離散系に変換するに際し、双一次変換によりS−Z変換するよう構成したが、信号補正装置142では、後進差分近似(オイラー近似)によりS−Z変換するよう構成している。したがって、信号補正装置142には、信号処理内容等において以下のような特徴がある。
【0182】
信号補正装置142においてはS−Z変換の変換式として、双一次変換の変換式(10)に替え、前述の式(44)が用いられる。この結果、Z平面での補正出力信号uL’およびフィルタ係数は、式(70)〜(74)に替え、以下の式で表わされる、
Figure 0003785629
【0183】
式(76)において、
Figure 0003785629
【0184】
Figure 0003785629
式(78)、(79)からわかるように、d(x)は(n(x)ー1)に比例し、c(x)は(k(x)-1)に比例するものとd(x)との和で表わされる。
【0185】
なお、ボイスコイル4の仮想変位x等は、式(51)、(52)をそのまま用いることができる。
【0186】
信号補正装置142の係数調整処理を行なうに際し、非線形係数の各組合せつまりk1とn1とg1、k2とn2とg2、k3とn3とg3、k4とn4とg4を、それぞれ決定するには、前述の場合同様、スピーカ2からの出力信号(音圧、加速度)の2次、3次、4次、5次高調波歪が減少する値を、順番に探していけばよい。なお、上述のように、式(78)、(79)にしたがって、k(x)、n(x)の二つのパラメータからc(x)、d(x)を自動的に決定することができる。
【0187】
このように、信号補正装置142においては、S平面での連続系の記述式をZ平面での離散系に変換するに際し、簡易な後進差分近似によりS−Z変換するよう構成している。したがって、スピーカ2のスピーカ振動板8のエッジ8eの排除空気体積の非線形性をも考慮して補正を行なう際、補正処理の内容を単純化することができる。
【0188】
[その他の実施形態]
なお、上述の各実施形態においては、図1に示すように、補正フィルタ22および変位フィルタ16は、ともに、帰還路を含み信号処理の上流部分に該当する巡回部22aと、帰還路を含まず信号処理の下流部分に該当する非巡回部22b、16bとを備えており、補正フィルタ22と変位フィルタ16とで、巡回部22aを共用するよう構成したが、補正フィルタ22の巡回部のフィルタ係数と変位フィルタ16の巡回部のフィルタ係数とが同一であれば、これらのフィルタの巡回部を共用する必要はない。また、変位フィルタ16については、必ずしも巡回部が信号処理の上流部分に配置される必要はない。図19に、補正フィルタ22と変位フィルタ16とで、巡回部を共用しない場合の例を示す。図19の例では、変位フィルタ16の信号処理の上流部分に非巡回部16b、下流部分に巡回部16aを配置している。
【0189】
また、補正フィルタの巡回部のフィルタ係数と変位フィルタの巡回部のフィルタ係数とが同一である場合を例に説明したが、補正フィルタの巡回部のフィルタ係数と変位フィルタの巡回部のフィルタ係数とは、必ずしも同一である必要はない。
【0190】
また、上述の各実施形態においては、図1に示すように、信号補正手段20は、補正フィルタ22の他に振幅調整部24をさらに備え、補正係数決定部18は、予測された仮想変位xに基づいて、補正フィルタ22のフィルタ係数のみならず振幅調整部24の振幅調整係数をも決定し、振幅調整部24は、決定された振幅調整係数を用いて、信号の振幅を調整するよう構成したが、この発明はこれに限定されるものではない。図20に示すように、信号補正手段として補正フィルタ22のみを設け、補正係数決定部18は、予測された仮想変位xに基づいて、補正フィルタ22のフィルタ係数のみを決定するよう構成することもできる。なお、このように構成した場合、補正フィルタ22のフィルタ係数C(x)、D(x)、E(x)は、信号の振幅の調整をも含む係数となる。
【0191】
また、上述の各実施形態においては、与えられた参照信号に対応する統合伝送系の応答信号の各高調波歪が減少するよう、補正フィルタの非巡回部の非線形フィルタ係数に関する係数を調整したが、2信号入力時等においては、応答信号の混変調歪が減少するよう、該係数を調整してもよい。また、各高調波歪および混変調歪の双方が減少するよう該係数を調整してもよい。
【0192】
また、上述の各実施形態においては、補正フィルタが2次のIIR型フィルタである場合を例に説明したが、補正フィルタは3次以上のIIR型フィルタであってもよい。また、補正フィルタは必ずしもIIR型フィルタである必要はなく、帰還路を有する2次以上のデジタルフィルタであればよい。
【0193】
また、仮想物理量予測手段として、2次のIIR型フィルタである変位フィルタを用いた場合を例に説明したが、仮想物理量予測手段は、これに限定されるものではない。また、仮想物理量予測手段は、必ずしも帰還路を有する2次以上のデジタルフィルタである必要はない。
【0194】
また、仮想物理量として動電型スピーカのボイスコイルの仮想変位を用いたが、仮想物理量として、例えば、ボイスコイルの仮想速度、仮想加速度や、ボイスコイルの電流値、電圧値等を用いることもできる。
【0195】
また、上述の各実施形態においては、DSP30は、内部メモリ(図示せず)に記憶された補正プログラム(データを含む)にしたがい、補正処理を実行する。補正プログラムは、コントローラ42を用いることにより、内部メモリに書込まれる。補正プログラムをフレキシブルディスク(FD)に記憶しておき、必要に応じてコントローラ42等を介し、DSPの内部メモリにインストールするよう構成することもできる。なお、フレキシブルディスク以外に、CD−ROM、ICカード等の補正プログラムを記憶したコンピュータ可読の記憶媒体から、DSPの内部メモリにインストールさせるようにしてもよい。さらに、通信回線を用いてダウンロードするようにしてもよい。
【0196】
また、上述の各実施形態においては、コントローラ42は、ハードディスク(図示せず)に記憶された調整プログラムにしたがい、係数調整処理を行なう。この調整プログラムは、フレキシブルディスクドライブ(図示せず)を介して、調整プログラムが記憶されたフレキシブルディスクから読み出されてハードディスクにインストールされたものである。なお、フレキシブルディスク以外に、CD−ROM、ICカード等の調整プログラムを記憶したコンピュータ可読の記憶媒体から、ハードディスクにインストールさせるようにしてもよい。さらに、通信回線を用いてダウンロードするようにしてもよい。
【0197】
また、上述の各実施形態においては、調整プログラムをフレキシブルディスクからハードディスクにインストールさせることにより、フレキシブルディスクに記憶させた調整プログラムを間接的にコンピュータ(コントローラ42)に実行させるようにしている。しかし、これに限定されることなく、フレキシブルディスクに記憶させた調整プログラムをFDD14から直接的に実行するようにしてもよい。なお、コンピュータによって、実行可能な調整プログラムとしては、そのままインストールするだけで直接実行可能なものはもちろん、一旦他の形態等に変換が必要なもの(例えば、データ圧縮されているものを、解凍する等)、さらには、他のモジュール部分と組合わせて実行可能なものも含む。
【0198】
また、上述の実施形態においては、信号補正装置12等の各機能を、DSP30を用いて実現した場合を例に説明したが、当該各機能の一部または全部を、DSP以外のコンピュータを用いて実現するよう構成することもできる。また、当該各機能の一部または全部を、ハードウェアロジックを用いて実現するよう構成することもできる。
【0199】
なお、上述の各実施形態においては、伝送系が動電型スピーカを備えている場合を例に説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。たとえば、伝送系がアクチュエータを備えているような場合、アクチュエータの持つ非線形性を緩和し所望の動作が得られるよう、アクチュエータへの入力信号を補正する際に適用することができる。すなわち、本発明は、信号補正装置一般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態による信号補正装置12を含む統合伝送系10のブロック図である。
【図2】信号補正装置12の各機能をDSP30を用いて実現した場合における、統合伝送系10のハードウェア構成の一例を示す図面である。
【図3】伝送系14を構成する動電型スピーカ2を物理モデル(集中定数モデル)で表現した図面である。
【図4】信号補正装置12の信号処理の内容を示す信号処理回路図である。
【図5】信号補正装置52の信号処理の内容を示す信号処理回路図である。
【図6】信号補正装置12の各係数を調整するための係数調整装置32の全体構成を例示した図面である。
【図7】係数調整装置32を用いて、信号補正装置12の係数調整処理を行なう場合の処理の流れを例示したフローチャートである。
【図8】係数調整処理済みの信号補正装置12を用いて信号補正処理を行なう場合の、処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図9】この発明の他の実施形態による信号補正装置62の信号処理回路を示す図面である。
【図10】信号補正装置72の信号処理回路を示す図面である。
【図11】この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置82の信号処理回路を示す図面である。
【図12】この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置92の信号処理回路を示す図面である。
【図13】この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置102の信号処理回路を示す図面である。
【図14】この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置112の信号処理回路を示す図面である。
【図15】スピーカ振動板8のエッジ8eの排除空気体積の非線形性を説明するための図面である。
【図16】この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置122の信号処理回路を示す図面である。
【図17】信号補正装置132の信号処理回路を示す図面である。
【図18】この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置142の信号処理回路を示す図面である。
【図19】この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置の信号処理回路の概略を示す図面である。
【図20】この発明のさらに他の実施形態による信号補正装置の信号処理回路の概略を示す図面である。
【図21】線形補正を実施しない場合の音圧の周波数応答と、この発明による線形補正を実施した場合の音圧の周波数応答とを比較したデータを示す図面である。
【図22】統合伝送系10に対する入力信号としてSin波を用い、出力音圧に現れる高調波のレベルを測定したデータを示す図面である。図22Aは、非線形補正を実施しない場合の高調波レベルを示すデータであり、図22Bは、この発明による非線形補正を実施した場合の高調波レベルを示すデータである。
【図23】動電型スピーカ2の断面構成を示す図面である。
【図24】動電型スピーカ2における、ボイスコイル4の加速度等の周波数応答のデータを示す図面である。
【図25】動電型スピーカ2における、ボイスコイル4の音圧の高調波成分の周波数応答のデータを示す図面である。
【符号の説明】
10・・・・・統合伝送系
12・・・・・信号補正装置
14・・・・・伝送系
16・・・・・変位フィルタ
18・・・・・補正係数決定部
20・・・・・信号補正手段
22・・・・・補正フィルタ
24・・・・・振幅調整部

Claims (18)

  1. 信号補正装置と伝送系とを統合した統合伝送系の特性が所定の目標特性に近づくよう、入力信号を補正して伝送系に与える信号補正装置であって、
    帰還路を有する2次以上のデジタルフィルタにより構成された補正フィルタを備えた信号補正手段、
    統合伝送系の状態を表わす所定の仮想物理量を、入力信号に基づいて予測する仮想物理量予測手段、
    予測された仮想物理量に基づいて、前記補正フィルタのフィルタ係数の少なくとも一部を決定する補正係数決定手段、
    を備え、
    前記補正フィルタは、決定されたフィルタ係数を用いて、入力信号を補正すること
    を特徴とする信号補正装置。
  2. 請求項1の信号補正装置において、
    前記信号補正手段は、信号の振幅を調整する振幅調整部をさらに備え、
    前記補正係数決定手段は、前記予測された仮想物理量に基づいて、前記振幅調整部の振幅調整係数をも決定し、
    前記振幅調整部は、決定された振幅調整係数を用いて、前記補正フィルタによる補正前の信号または当該補正後の信号の振幅を調整すること
    を特徴とするもの。
  3. 請求項1ないし請求項2のいずれかの信号補正装置において、
    前記仮想物理量予測手段は、帰還路を有する2次以上のデジタルフィルタにより構成された仮想物理量フィルタを備え、
    前記仮想物理量フィルタは、前記統合伝送系の目標特性に基づいて決定されたフィルタ係数を用いて、入力信号に基づいて仮想物理量を予測すること
    を特徴とするもの。
  4. 請求項3の信号補正装置において、
    前記補正フィルタは、帰還路を含み信号処理の上流部分に該当する巡回部と、帰還路を含まず信号処理の下流部分に該当する非巡回部とを備え、
    仮想物理量フィルタは、帰還路を含む巡回部と、帰還路を含まない非巡回部とを備え、
    補正フィルタの巡回部のフィルタ係数は、仮想物理量フィルタの巡回部のフィルタ係数と同一であり、補正フィルタの非巡回部のフィルタ係数は、前記仮想物理量に基づいて決定されたフィルタ係数であること
    を特徴とするもの。
  5. 請求項4の信号補正装置において、
    前記補正フィルタの非巡回部のフィルタ係数は、前記仮想物理量に依存して変化しない線形フィルタ係数と、前記仮想物理量に依存して変化する非線形フィルタ係数との和で表現し得ること
    を特徴とするもの。
  6. 請求項5の信号補正装置において、
    前記伝送系は、前記信号補正装置の補正出力をアナログ信号に変換するとともに変換出力を増幅する駆動系と、当該増幅出力に基づいて駆動される動電型スピーカとを備え、
    前記統合伝送系の目標特性は、目標とすべきシールスモールパラメータで表わされる統合伝送系の特性を含む特性であり、
    前記仮想物理量は、前記統合伝送系が目標特性を有すると仮定した場合計算される動電型スピーカのボイスコイルの仮想変位であり、
    前記仮想物理量フィルタは、前記駆動系の増幅ゲインをも考慮して仮想変位を予測する変位フィルタであり、
    前記補正フィルタおよび変位フィルタは、ともに、2次のIIR(無限インパルス応答)型フィルタであること
    を特徴とするもの。
  7. 請求項6の信号補正装置において、
    前記増幅器は、電圧出力型増幅器であり、
    前記補正フィルタの非巡回部の3つの非線形フィルタ係数を
    c(x):無遅延非線形フィルタ係数
    d(x):1次遅延非線形フィルタ係数
    e(x):2次遅延非線形フィルタ係数
    としたとき、
    c(x)+e(x)=d(x)
    の関係を満たすこと
    を特徴とするもの。
  8. 請求項6の信号補正装置において、
    前記増幅器は、電流出力型増幅器であり、
    前記補正フィルタの非巡回部の3つの非線形フィルタ係数を
    c(x):無遅延非線形フィルタ係数
    d(x):1次遅延非線形フィルタ係数
    e(x):2次遅延非線形フィルタ係数
    としたとき、
    Figure 0003785629
    の関係を満たすこと
    を特徴とするもの。
  9. 請求項6の信号補正装置において、
    前記補正フィルタの非巡回部の3つの非線形フィルタ係数のうち2次遅延非線形フィルタ係数をe(x)としたとき、
    e(x)=0
    となること
    を特徴とするもの。
  10. 請求項6の信号補正装置において、
    前記目標とすべきシールスモールパラメータで表わされる統合伝送系の特性は、低レベル入力信号時における前記伝送系のシールスモールパラメータで表わされる特性そのものであること
    を特徴とするもの。
  11. 請求項6の信号補正装置において、
    前記目標とすべきシールスモールパラメータで表わされる統合伝送系の特性は、低レベル入力信号時における前記伝送系のシールスモールパラメータで表わされる特性に所望の修正を加えた特性であること
    を特徴とするもの。
  12. 請求項6の信号補正装置において、
    前記動電型スピーカのボイスコイルの変位に依存して変化する力係数およびスティフネスに起因する伝送系の非線形性を緩和すること
    を特徴とするもの。
  13. 請求項6の信号補正装置において、
    前記動電型スピーカのボイスコイルの変位に依存して変化する動電型スピーカのエッジの排除空気体積に起因する伝送系の非線形性を緩和すること
    を特徴とするもの。
  14. 伝送系を含む統合伝送系の特性が所定の目標特性に近づくよう、入力信号を補正して伝送系に与える信号補正方法であって、
    帰還路を有する2次以上のデジタルフィルタにより構成された補正フィルタを用意し、
    統合伝送系の状態を表わす所定の仮想物理量を、入力信号に基づいて予測し、予測された仮想物理量に基づいて、前記補正フィルタのフィルタ係数の少なくとも一部を決定し、
    前記補正フィルタは、決定されたフィルタ係数を用いて、入力信号を補正すること
    を特徴とする信号補正方法。
  15. 請求項1ないし請求項13のいずれかの信号補正装置または請求項14の信号補正方法における各係数を調整するための係数調整装置であって、
    前記統合伝送系に与える参照信号を生成する参照信号生成手段、
    与えられた参照信号に対応する統合伝送系の応答信号を測定する応答信号測定手段、
    参照信号および応答信号に基づいて、統合伝送系の特性が所定の目標特性に近づくよう、前記各係数を調整する調整制御手段、
    を備えたことを特徴とする信号補正装置の係数調整装置。
  16. 請求項15の信号補正装置の係数調整装置において、
    前記調整制御手段は、与えられた参照信号に対応する統合伝送系の応答信号の各高調波歪または混変調歪が減少するよう、前記補正フィルタの非巡回部の非線形フィルタ係数に関する係数を調整すること
    を特徴とするもの。
  17. 請求項1ないし請求項13のいずれかの信号補正装置または請求項14の信号補正方法における各係数を調整するための係数調整方法であって、
    前記統合伝送系に与える参照信号を生成し、
    与えられた参照信号に対応する統合伝送系の応答信号を測定し、
    参照信号および応答信号に基づいて、統合伝送系の特性が所定の目標特性に近づくよう、前記各係数を調整すること
    を特徴とする信号補正装置の係数調整方法。
  18. コンピュータが実行可能なプログラムを記憶したコンピュータ可読の記憶媒体であって、
    前記プログラムは、請求項1ないし請求項17のいずれかの装置または方法を実現するものであること
    を特徴とする記憶媒体。
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