JP6296573B2 - スピーカを駆動するための力の変化の信号を生成する信号生成装置、スピーカ - Google Patents
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しかしこの方法では、スピーカを駆動するための力の変化の信号を使用していないため原音に忠実な再生を行うことが難しかった。このため、力の変化の信号を音の信号から計算して求め、求めた信号でスピーカを駆動する方式として原音再現方式が提案された。
ところが提案された原音再現方式は、空気を押しのける場合に生じる抵抗やスピーカを構成する各機構が動くことによって生ずる抵抗および摩擦に関する対応は行われていなかった。
原音再現方式は、本発明者によってすでに報告されている(特許文献1、特許文献2参照)。
また、基本となる原音再現方式について、本発明者は平成27年11月7日に情報処理学会の第109回音楽情報科学研究会において論文とともに発表を行っている。発表は動画で不特定多数に配信された。配信は情報処理学会が情報共有の手段として推進しているニコニコ動画を使用して行われた。
インターネット<URL:http://live.nicovideo.jp/gate/lv241118138>
また、従来の信号生成装置に対応している既存のスピーカシステムを活かして原音再現方式に基づく信号生成装置を使用する余地もあるが、そのための改良の余地があった。
こうして得られた時系列の値を使用してスピーカを駆動するための信号を生成する。
値が前後共に0であるか、あるいは同値のような全く大小の判定ができない場合は、増速時か減速時かの判定が行えないため力の変化の信号を計算する際に掛ける値を増速時に掛ける値よりも小さい値かつ減速時に掛ける値よりも絶対値で大きな値としてあらかじめ決めておいた値を掛けるものとする。
増速時と減速時に掛ける値の決定は、スピーカごとに最適な値を決定することになるためスピーカを特定し実際にオシレータを使用してスピーカが再生する帯域の上限と下限の間の周波数においていくつかの係数を試行して与え効果を試聴又は計測して確かめながら最良の値を決定する。
さらに、本発明の信号生成装置による信号は増速時と減速時の力の変化の信号を駆動用の信号としているため、この信号を供給されることを前提として調整されたスピーカでなければならない。
また、上記信号が増速時と減速時それぞれで標準的な値が決められた場合、その決められた値で動作するようあらかじめ調整されたスピーカを作成する方法もあるためこのような場合も同様の効果を得ることができる。この場合は、あらかじめ実際に力の信号生成装置とスピーカを組み合わせて試聴をしたり計測を行ったりして最適値を決める必要はない。
本発明の信号を生成する装置から出力された信号は、スピーカを駆動するために必要な非常に高い周波数成分要素を含んでいる。このためこの成分を除去する回路あるいは機構があると十分な効果が得られないため注意を要する。
従来の音響再生装置は、音の信号をそのまま増幅してスピーカを駆動しようとしていた。ところが、この方法では、振動を能動的に制御することが困難であった。このため、重さのある振動板、あるいは空気そのものを振動させるときに力の変化の信号を使用してより忠実な音の再生を行う方式が原音再現方式として考案された。しかし、振動板を駆動する場合又、空気自体を直接振動させる場合においても、止まっている状態から動こうとする場合は抵抗や摩擦の影響があるが、その力に対する考慮がなされていなかった。この為、本発明の請求項に記載されている装置を用いることによって、抵抗や摩擦に関する対応が行えるようになり結果的に再生したい音の忠実度がさらに向上する。
本発明のための専用スピーカを用いる装置においては、理想的な効果を得ることができる。また、従来のスピーカを使用する場合においても、専用スピーカより効果は劣るものの、永年の耐久性などに関するノウハウを継承して利用することができる。
図1は、本発明の一実施形態にかかる信号生成装置をブロック図により示している。
この信号生成装置は、音の信号からスピーカを駆動するための力の変化の信号を計算する装置であって、空気を押しのける方向(以下、増速時とする)とその反対の方向(以下、減速時とする)に対して必要となる力を計算する時、抵抗や摩擦の影響に関して次のように対応したスピーカを駆動するための信号を生成する(以下、力の信号生成装置とする)。
本実施例の力の信号生成装置は、決められたプログラムを実行するデジタルシグナルプロセッサ(以降、DSP3とする)である。
音を再生するシステム全体図(図1)を参照すると、プリアンプ2とパワーアンプ4の間に、力の信号生成装置であるDSP3が介在されている。この再生システムには、この他、プリアンプ2に信号を出力するマイクロホン1と、パワーアンプ4から駆動信号を入力するスピーカ5を備えている。
図2に示すように、DSP3の内部は大きく三つの機構(ブロック)に分けられ、それぞれA/D変換器(変換機構)7と、演算器(演算機構)9と、D/A変換器(変換機構)11である。また、DSP3は、音入力信号端子6を備え、A/D変換器7に入力されている。A/D変換器7の出力信号は、デジタル信号バス8を介して、演算器9に入力されている。演算器9の出力信号は、デジタル信号バス10を介して、D/A変換器11に入力されており、D/A変換器11の出力信号は、スピーカ駆動信号出力端子12からスピーカ5に出力されている。
図3は、単位を示していないが、横軸は時間軸であり、縦軸は入力信号13については速度の単位(cm/sec)となる。マイクロホン1には、速度検出型と音圧検出型がある。速度検出型は、ムービングコイル型でダイナミックマイクロホンがその代表的なものになる。速度検出型のマイクロホン1からの入力信号なので、速度に比例する。一方、音圧型は、コンデンサーマイクロホンがその代表的なものになる。音圧は、速度に比例するため、結果として音圧型も速度型も同じ出力をすることになる。音圧型の場合は、縦軸は圧力の単位となるが、実質的には速度と同義といえる。
F=G・m(V1−V0) (1)
式(1)のV1は変数1の値を、V0は変数2の値を格納する。mは、差分をとることによって微小な値となったデータを扱いやすい元の変動値に近い値にするための定数として決定される。
V1もV0も0であった場合は、各係数の値に関係なく計算結果は0となる。Gには、増減速を判定し増速時であるときは、Pの値を、減速時であるときは、Rの値を、そのいずれでもないときはQの値をセットしてFの計算を行う。
評価の結果、変数1のほうが大きい場合は、増減速フラグに増速中の意味として1をセットし、評価の結果変数1のほうが小さい場合は、増減速フラグを減速中の意味として−1をセットし、変数1から変数2を引き算しその結果を変数3に保管する。
数式1の係数Gの値として、増速時係数Pと、減速時係数Rと、増速時係数Pと減速時係数Rの間の値としてあらかじめ決定しておいた係数Qのいずれかを使用して計算を行う。例えば、Pが「1.1」でRが「0.9」であるときQにはPとRの中間の値である「1.0」をセットすると条件を満たすことになる。
次の出力は、V1にセットしていた値をV0にセットし、V1には新しく得られた図3入力信号のt1のときの値をセットし次々同様の計算を繰り返して行い連続してD/A変換を行う。
このように入力信号を順次計算してその結果をD/A変換して目的とするスピーカを駆動する電気信号を得る。
DSP3の演算器9はコンピュータに相当し、内部にはCPU,ROM,RAM等が含まれる。従って、ROMに書き込まれた図4のフローチャートに相当するプログラムをCPUがRAMなどを使用しつつ実行する。
|V1(t1)| − |V0(t0)| > 0 (2)
すなわち、V0(t0)の絶対値が、V1(t1)の絶対値よりも大きいか判断する。もし、YESであれば、ステップS130にて、増速を表すためにフラグflgに「1」を設定する。
以上は、ステップS120にて、V0(t0)とV1(t1)の符号が同じか、あるいは一方の値が「0」である場合であり、これに該当しない場合、すなわち、V0(t0)とV1(t1)の符号が異なるか、増減速が判定不可能な場合は、ステップS135にて、フラグflgに「0」を設定する。
この後、ステップS175にて、バッファの中のデータが終わりであるか判断し、まだバッファにデータがあれば、ステップS110に戻って以上の処理を繰り返す。なお、ステップS105のデータ読み込みはバッファに対して逐次行われていると考えて良い。
|P|>|Q|>|R| (3)
このように、決定されたPとQとRの係数を使用した式(1)の計算を行うDSP3を使用すれば本発明の信号生成装置を実現することができる。
さらに、スピーカのコーン紙が停止し、動き始めるときに大きな駆動信号が得られるようにすることも本発明の一態様といえる。すなわち、動き始めた以降の駆動信号は増速時と減速時とで同じとしつつも、停止時から動き始めるときの駆動信号を大きくする。その後、徐々に増速時と減速時とで異ならない大きさの駆動信号へ変化させていく。
正弦波の入力信号13を位相角で表すと、0〜1/2・πの第1像限は増速時に相当し、1/2・π〜πの第2像限は減速時に相当し、π〜3/2・πの第3像限は増速時に相当し、3/2・π〜2πの第4像限は減速時に相当する。
得られた力の変化の信号は図3の出力信号14のように制動が掛けられた結果、静止した状態になった直後再び動き出す時に不連続な信号となる。この不連続な信号をもってスピーカを駆動すると、スピーカはより正確な振動をして歪の少ない音の再生をすることが可能となる。
本発明の信号生成装置で得られる信号は、生成される力の変化の信号として、+6dB/octの信号を生成する。このため本発明の信号生成装置と組み合わせて使用するスピーカは-6dB/octとなる特性をもったものでないとフラットな再生が行えない。
組み合わせは、実際に一体型となっている場合に限らず、使用する際にコードやケーブルなどで接続して使用する場合でも組み合わせとして成立するため有効な実施例となる。
組み合わせは、実際に一体型となっている場合に限らず、使用する際にコードやケーブルなどで接続して使用する場合でも組み合わせとして成立するため有効な実施例となる。
従来からあるオーディオシステムは、音の信号をそのまま増幅してスピーカを駆動しようとしていた。
その上で、本発明はさらに振動板が動くときの抵抗や摩擦の影響を考慮した信号を生成し、この信号を増幅してスピーカを駆動するものである。この新しい発明によって現状ハイレゾなどのようにさらなる高音質の装置を探求しようとする傾向にあるが、これら従来の方法でも解決できなかった効果を得ることができ、さらに安価であっても高音質な装置を得ることができる。このため、消費者のオーディオに関する興味も増大し今まで使用していた装置を買い替える必要が生じることから関連産業も増大する需要に応えるべく増産となり業界の発展につながる。
しかし、本発明によると価格に対応した相関関係がより明確になり高価な装置はそれなりに高忠実な再生を実現することができるようになることから消費者の理解を得やすい商品となりかなりの普及が見込める。
例えば、本発明が適用されるスピーカの種類は駆動方式などには限定されない。通常のコーン紙の他、コーン紙の素材が変わる場合も同様である。また、近年開発されてきた新たなものであってもよい。空気の重さを考慮する点では、コーン紙のないイオンスピーカでも同様に適用可能である。
Claims (7)
- 微少間隔ごとの音声信号に基づいて、スピーカが空気を所定方向に押しのける動きをする増速時と、逆の減速の動きをする減速時において、それぞれ前記スピーカを駆動する信号を所定の演算により求める信号生成装置であって、
微少間隔ごとの音声信号を入力する音声信号入力部と、
前記スピーカを駆動する信号を演算する演算部と、
前記スピーカを駆動する信号を出力する駆動信号出力部とを備え、
前記演算部は、増速時における駆動信号を求める係数と、減速時における駆動信号を求める係数とが異なることを特徴とする信号生成装置。 - 前記演算部は、微少間隔ごとの音声信号の変化に基づいて、増速時か減速時かを判断することを特徴とする請求項1に記載の信号生成装置。
- 前記演算部は、微少間隔ごとの音声信号の変化を差分データとして、同差分データに対して増速時の係数か減速時の係数を乗じて前記スピーカを駆動する信号を演算することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の信号生成装置。
- 前記演算部は、増速時の係数が減速時の係数よりも絶対値で大きな値とすることを特徴とする請求項3に記載の信号生成装置。
- 微少間隔ごとの音声信号に基づいて、スピーカが空気を所定方向に押しのける動きをする増速時と、逆の減速の動きをする減速時において、それぞれ前記スピーカを駆動する信号を所定の演算により求める信号生成装置であって、
微少間隔ごとの音声信号を入力する音声信号入力部と、
前記スピーカを駆動する信号を演算する演算部と、
前記スピーカを駆動する信号を出力する駆動信号出力部とを備え、
前記演算部は、増速時における駆動信号が、減速時における駆動信号よりも大きくなるように演算することを特徴とする信号生成装置。 - 微少間隔ごとの音声信号に基づいて、スピーカが空気を所定方向に押しのける動きをする増速時と、逆の減速の動きをする減速時において、それぞれ前記スピーカを駆動する信号を所定の演算により求める信号生成装置から出力される駆動信号によって駆動されるスピーカであって、
前記信号生成装置は、
微少間隔ごとの音声信号を入力する音声信号入力部と、
前記スピーカを駆動する信号を演算する演算部と、
前記スピーカを駆動する信号を出力する駆動信号出力部とを備え、
前記演算部は、増速時における駆動信号が、減速時における駆動信号よりも大きくなるように演算するものであり、
前記スピーカは、前記駆動信号に対して所定の周波数を基準とした高周波成分を除去することを目的とした回路や機構を持たないことを特徴とするスピーカ。 - 再生しようとする周波数帯域で+6dB/octとなる特性のスピーカ駆動信号を入力したときに出力特性がおおむね均一となることを特徴とする請求項6に記載のスピーカ。
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