JP4034853B2 - 歪み除去装置、マルチプロセッサ及びアンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばオーディオ信号を再生するスピーカのような非線形システムにおいて生じる高調波歪み及び混変調歪みを除去し、入力信号を高忠実再生するための歪み除去装置、歪み除去装置の係数決定方法、プロセッシングスピーカシステム、マルチプロセッサ及びアンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知の様に、コンサートホールや屋外の劇場、スタジアムなどの大空間で音楽やアナウンスなどを再生する場合、一般的に大音量再生が可能な大型の業務用スピーカシステムを用いる。特に、高音域の再生には、ホーンスピーカシステムが用いられ、また、低音域の再生には、ウーファーあるいはサブウーファーと呼ばれるスピーカが用いられる。
【0003】
ホーンスピーカシステムは、電気音響変換器であるコンプレッションドライバと、コンプレッションドライバから出力された音波が入力されるホーンにより構成される。コンプレッションドライバは、入力された電気信号を音波に変換してホーンに入力し、ホーンはその音波を大空間へ放射するものである。コンプレッションドライバにおいては、音波を発生する振動板の直径よりも、ホーンとの結合部分(ホーンのスロート部)の直径を小さくすることにより、振動板から放射された音圧を高める。これにより、大音量再生が可能となる。
【0004】
しかしながら、コンプレッションドライバにおいて、空気が高圧縮されることによって、再生音に歪みが発生し、この歪みが元来の音波に付加されてしまう。これは、ホーンスピーカシステムによって大音量再生を行う場合に発生する歪みの原因の一つであり、非常に重要なものである。
【0005】
一方、ウーファーによって低音を大音量で再生する場合には、ウーファーの振動板を大きな振幅で振動させる。しかしながら、振動板を支えるダンパーやエッジの力学的な非線形性や、エッジによる空気の排除体積量の非線形性により、再生音には歪みが伴う。
【0006】
以上のような歪みは、高調波歪みおよび混変調歪みと呼ばれる非線形歪みである。大音量で音を再生する場合には、上記の理由などによりこれらの非線形歪みが発生するが、これらの非線形歪みは音質を劣化させる要因となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、スピーカなど非線形歪みを発生するシステム(以後、非線形システムと呼ぶ)の歪みを除去する手段としては、非線形フィルタを用いるという方法がある。一般的な非線形システムの歪み除去を行う方法として、ヴォルテラフィルタ(Volterra filter)が有名である。これは、一般的には、1次元のフィルタ、2次元のフィルタ、……、n次元のフィルタを並列接続して、それぞれのフィルタにおいて入力信号に対する畳み込み演算を行い、その結果を加算して出力するというものである。
【0008】
しかしながら、このフィルタは2次元のフィルタ、3次元のフィルタからn次元のフィルタまで、次数が上がるにつれて演算量が莫大に増加するという問題がある。例えば、スピーカを非線形システムとみなし、2次歪みのみの除去を行う場合においても、入力信号であるオーディオ信号に対してリアルタイムで2次元の畳み込み演算を行うには、装置が大規模になってしまう。
【0009】
米国特許4,709,391(Arrangement for converting an electric signal into an acoustic signal or vice versa and a non-linear network for use in the arrangement、発明者Kaizerら、フィリップス社)および欧州特許EP 0 168 078 A1(発明者同じ)は、電気音響変換器の2次歪みおよび3次歪みと呼ばれる非線形歪みを補正する非線形回路を提案している。この方法は、スピーカの磁気回路の磁束密度およびボイスコイルのインダクタンスおよびダンパーのばね定数の非線形性を電気回路の等価回路でモデル化してそれぞれ定数を求め、スピーカの入出力特性を通常の伝達特性に非線形歪み特性を並列接続した形のヴォルテラ級数(Voterra series)と呼ばれる級数でモデル化し、スピーカの前段に接続する歪み補正回路としてヴォルテラフィルタと同等の効果の得られる非線形フィルタを設計し、その非線形フィルタによってスピーカの歪みを打ち消すような歪み補償信号をオーディオ信号に付加してスピーカに信号を送る、というものである。
【0010】
この方法によれば、ヴォルテラフィルタにおける2次元の畳み込み演算および3次元の畳み込み演算を行わずに、同等の歪み除去効果が得られる。
【0011】
しかしながら、この方法では、磁束密度およびインダクタンスおよびばね定数の測定など、スピーカの非線形な伝達特性を決定する定数の測定にかなりの手間がかかる。また、手間をかけて測定を行ったとしても、それらの測定結果のうちどれかが比較的大きな誤差を含んでいて、上記の手順による歪み補正であまり効果が得られなかった場合に、元の定数の中でどれが誤差を含んでいるものであるのかを特定することは難しく、経験を必要とする作業である。
【0012】
また、この方法では、動電形スピーカの歪み除去を行う場合のように、非線形歪みを除去したいシステムにおいて、歪みの発生要因が明らかであれば歪み補正回路を設計することが可能であるが、一般的な非線形システムにおける歪み発生を等価回路でモデル化できない場合には、回路を設計することができない。
【0013】
米国特許5,438,625(ARRANGEMENT TO CORRECT THE LINEAR AND NONLINEAR TRANSFER BEHAVIOR OR ELECTRO-ACOUSTICAL TRANSDUCERS、Inventor:W.Klippel、Assignee:JBL)および欧州(独)特許DE 41 11 884 C2(発明者同じ)は、電気音響変換器の非線形歪みを除去する非線形回路および、回路の係数の自動更新方法を提案している。前記従来法と同様に、この方法においても、スピーカの非線形歪み発生のいくつかの要因をそれぞれ定式化し、非線形逆システムとなる非線形回路を設計するものである。ここでも、ヴォルテラフィルタの考え方を基本にしているが、実際の歪み除去回路は、2次元以上の畳み込み演算を行うものではなく、同等の効果が得られる非線形回路として構築されている。
【0014】
しかしながら、この方法においても、歪み除去回路を設計するには、非線形システムであるスピーカの歪み発生のいくつかの要因をそれぞれ定式化する必要がある。これには、ひずみ発生のメカニズムがあらかじめ分かっているものでなければならない。また、定式化後、それらの式の定数などを測定する必要があり、これはかなり複雑な作業である。
【0015】
以上のように、上記の2つの方法は、歪みを除去したい非線形システムの歪み発生のメカニズムを定式化しなければならないので、歪みの要因が明らかでなかったり、精度良く定式化できない場合には適用できないという問題があった。
【0016】
そこで、本発明は、上記従来の課題を解決するためになされ、スピーカなど非線形歪みを生じる非線形システムの前段に設置され、システムから発生する上記歪みを補償する信号を生成する歪み除去装置として、実用的で高精度のものを提供することを目的とし、更には、この歪み除去装置の係数決定方法、あるいは、この歪み除去装置を搭載したプロセッシングスピーカシステム、マルチプロセッサ及びアンプを提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、この歪み除去装置における信号処理の演算量を削減するためのいくつかの構成を提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の歪み除去装置は、スピーカと、歪み除去装置との間にプロセッサが設けられたプロセッシングスピーカシステムにおいて、前記プロセッシングスピーカシステムに入力される信号を発生する信号源と前記プロセッサの信号入力部との間に挿入され、前記プロセッシングスピーカシステムの前記スピーカで発生する歪み成分補償の信号処理を行う歪み除去装置であって、前記信号源からの信号に対して1次元の畳み込み演算を行う第1のフィルタと、前記信号源からの信号に対して2次元の畳み込み演算を行う第2のフィルタと、前記第1のフィルタの出力信号と前記第2のフィルタの出力信号とを加算する加算器とを具備し、前記信号源からの入力信号を周波数領域で表現した値をX(m)とし、mを周波数のポイントを表わす整数値とし、m1およびm2を前記整数値mに対してm=m1+m2またはm=|m1−m2|を満足する値とし、H1(m)を前記プロセッシングスピーカシステムの前記スピーカにおける1次の系の伝達特性を周波数領域で表現した値とし、H2(m1,m2)を前記プロセッシングスピーカシステムの前記スピーカにおける2次の高調波歪みおよび混変調歪みの伝達特性を2次元の周波数領域で表現した値とし、E(m)を前記プロセッサの伝達特性を周波数領域で表現した値とし、G1(m)を前記第1のフィルタの伝達特性を周波数領域で表現した値とし、G2(m1,m2)を前記第2のフィルタの伝達特性を周波数領域で表現した値とすると、前記第2のフィルタは、タップ長N×Nの2次元のディジタルフィルタであって、(数1)によって表わされる2次元の伝達特性G2(m1,m2)で入力信号X(m)を畳み込み演算して出力することを特徴とする。
【数1】
【0019】
前記プロセッサの伝達特性E(m)を検出する検出部と、検出された前記伝達特性E(m)を用いて、前記第2のフィルタの伝達特性G2(m1,m2)を更新するタップ更新部とを更に具備することを特徴としてもよい。
【0020】
また、本発明の歪み除去装置は、スピーカと、歪み除去装置との間にプロセッサが設けられたプロセッシングスピーカシステムにおいて、前記プロセッシングスピーカシステムに入力される信号を発生する信号源と前記プロセッサの信号入力部との間に挿入され、前記プロセッシングスピーカシステムの前記スピーカおよび前記プロセッサで発生する歪み成分補償の信号処理を行う歪み除去装置であって、前記信号源からの信号に対して1次元の畳み込み演算を行う第1のフィルタと、前記信号源からの信号に対して2次元の畳み込み演算を行う第2のフィルタと、前記第1のフィルタの出力信号と前記第2のフィルタの出力信号とを加算する加算器とを具備し、前記信号源からの入力信号を周波数領域で表現した値をX(m)とし、mを周波数のポイントを表わす整数値とし、m1およびm2を前記整数値mに対してm=m1+m2またはm=|m1−m2|を満足する値とし、H1(m)を前記プロセッシングスピーカシステムの前記スピーカにおける1次の系の伝達特性を周波数領域で表現した値とし、H2(m1,m2)を前記プロセッシングスピーカシステムの前記スピーカにおける2次の高調波歪みおよび混変調歪みの伝達特性を2次元の周波数領域で表現した値とし、A1(m)を前記プロセッサの1次の系の伝達特性を周波数領域で表現した値とし、A2(m1,m2)を前記プロセッサの2次の系の伝達特性を周波数領域で表現した値とし、G1(m)を前記第1のフィルタの伝達特性を周波数領域で表現した値とし、G2(m1,m2)を前記第2のフィルタの伝達特性を周波数領域で表現した値とすると、前記第2のフィルタは、タップ長N×Nの2次元のディジタルフィルタであって、(数2)によって表わされる2次元の伝達特性G2(m1,m2)で入力信号X(m)を畳み込み演算して出力することを特徴とする。
【数2】
【0021】
前記プロセッサの伝達特性A1(m)を検出する検出部と、あらかじめ測定された前記プロセッサの歪みの伝達特性A2(m1,m2)を記憶する記憶部と、前記検出部の出力信号がおよび前記記憶部からの出力信号が入力され、前記第2のフィルタの伝達特性G2(m1,m2)を更新するタップ更新部とを更に具備することを特徴としてもよい。
【0022】
また、本発明は、前記除去装置を搭載したマルチプロセッサであって、前記信号源と前記スピーカとの間に挿入されることを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、前記歪み除去装置を搭載したアンプであって、前記信号源と前記スピーカとの間に挿入され、前記スピーカを駆動することを特徴とする。
【0088】
以上の様に構成される本発明の要約して簡単に説明すると、歪みを除去するために、スピーカより発生する歪みの特性をあらかじめ測定し、その測定結果より歪み補償信号生成のための係数を算出し、この係数を歪み除去装置に格納しておく。歪み除去装置は、入力されたオーディオ信号に対して、上記係数を用いて、上記スピーカの歪み補償信号を逐次生成し、元のオーディオ信号に足し合わせて、パワーアンプへと出力する。この信号がパワーアンプを経てスピーカに入力される。よって、従来発生していた歪みは、歪み補償信号によって打ち消され、元々、音源より出力されたオーディオ信号のみがスピーカから放射されることとなる。この結果、スピーカにおいては、非線形歪みを発生することなくオーディオ信号を高忠実再生することが可能となる。
【0089】
また、本発明によれば、歪みを発生してしまう非線形システム、例えばスピーカにおける歪みの発生要因を詳しく分析する手間を省くことができる。
【0090】
また、本発明によれば、入力された任意のオーディオ信号に対して、リアルタイムで歪み補償信号を生成することができる。
【0091】
また、本発明によれば、入力されたオーディオ信号に対して、ある周波数帯域の信号のみを通過させて出力するという帯域制限フィルタの機能を持つことができる。
【0092】
また、本発明によれば、帯域制限フィルタの機能を持つ歪み除去装置においては、2次元フィルタの演算量を削減することができる。
【0093】
また、本発明によれば、歪み除去装置の後段側に、グラフィックイコライザが接続されている場合にも、スピーカの歪み除去をおこなうことができる。
【0094】
また、本発明によれば、スピーカを駆動するパワーアンプが非線形歪みを発生する場合に、アンプの歪みをも除去することができる。
【0095】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0096】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態を示すブロック図である。
この第1実施形態では、非線形歪みを発生するシステムの歪み発生要因が明確でなくても、そのシステムの歪みを削減する事の出来る歪み除去装置の構成および演算方法を提供する。この歪み除去装置10は、信号源1から出力された信号が入力されるA/D変換装置11と、NとN1の関係がN>N1であって前記A/D変換装置の出力信号をN−N1+1個毎に長さNに分割し取り込むフレーム分割装置12とを有する。さらに、前記フレーム分割装置12で分割された信号をフーリエ変換するフーリエ変換装置13と、周波数領域におけるタップ長Nの1次元のディジタルフィルタの第1の係数を記憶する第1の記憶装置15と、前記第1の係数と前記フーリエ変換装置13の出力信号とを用いて、(数1)の第1項の乗算を行う乗算器14とを有している。
【0097】
【数69】
【0098】
さらに、この歪み除去装置10は、周波数領域において2次元の配列N×Nである第2の係数を記憶する第2の記憶装置17と、前記第2の係数と前記フーリエ変換装置13の出力信号とを用いて、(数1)の第2項の乗加算を行う乗加算器16と、前記乗算器14の出力信号と前記乗算器16の出力信号とを加算する加算器18とを有している。さらに、前記加算器18の出力信号を逆フーリエ変換する逆フーリエ変換装置19と、前記逆フーリエ変換装置19の出力信号のN1個めからN個めのデータを順次連結して出力する、フレーム合成装置20と、前記フレーム合成装置20の出力信号をアナログ信号に変換するD/A変換装置21とを具備する。
【0099】
この歪み除去装置10は、2次歪みを発生する一般的な非線形システムの歪み除去を行うものである。ここで言う2次歪みとは、高調波歪みおよび混変調歪みによって構成される2次の非線形歪みである。
【0100】
非線形システムは、例えばスピーカ22である。
【0101】
ここで、スピーカ22において発生する歪みについて説明する。
【0102】
非線形システムがスピーカ22である場合、信号源1はCDプレーヤなどの音源であり、音源から出力される信号は、時間領域のオーディオ信号である。スピーカに周波数mのオーディオ信号を入力すると、周波数2mの高調波歪みが発生し、周波数mの信号とともに再生される。また、周波数m1とm2の2つの信号を入力すると、周波数(m1+m2)および|m1−m2|の混変調歪みが発生し、周波数m1および周波数m2の信号とともに再生される。
【0103】
さて、上に述べた構成の歪み除去装置10において、CDプレーヤなどからオーディオアンプを通じて、アナログのオーディオ信号x(t)が該歪み除去装置10に入力されると、A/D変換器11はx(t)をディジタルの信号x(n)に変換する。フレーム分割装置12は、図2A及び図2Bに示す様に、A/D変換器11からの出力信号x(n)をN−N1+1個入力する度に、信号x(n)の最後尾から長さNのフレームを切り出して出力する。よって、フレームの先頭からN1−1個のデータは、直前のフレームの最後尾からN1−1個のデータ部分と重なっており、同じデータである。また、ここで、N>N1である。i番目のフレームとして分割された長さNの信号は、フーリエ変換装置13に入力され、周波数領域の信号Xi(m)に変換される。mは、離散化された周波数軸上のポイントの数を表わす整数値であり、周波数に対応する。
【0104】
信号Xi(m)に対しては、乗算器14、第1の記憶装置15、乗加算器16、第2の記憶装置17、加算器18によって(数2)に示す演算処理が施され、信号Wi(m)が導出される。
【0105】
【数70】
【0106】
(数2)の演算について詳しく述べる。乗算器14は、第1の記憶装置15に格納されているタップ長Nの第1の係数G1と、フーリエ変換装置13の出力信号Xi(m)をそれぞれのmについて掛け合わせる。これが、(数2)の第1項である。一方、乗加算器16は、第2の記憶装置17に格納されているN×Nの2次元配列である第2の係数G2(m1,m2)と、信号Xi(m1)、信号Xi(m2)とを用いて、(数2)の第2項の演算を行う。m1、m2はそれぞれ周波数に対応する、ある整数値を表わす。(数2)の第2項は、m=m1+m2あるいはm=|m1−m2|を満たすすべてのm1、m2の組み合わせを足し合わせることを意味している。例えば、mが5kHzの周波数に対応するならば、m1、m2の組み合わせは、(1+4)kHz、(2+3)kHz、|7−2|kHzなど、最大でN通りの組み合わせが存在する。
【0107】
次に、加算器18は、乗算器14の出力信号と、乗加算器16の出力信号とをそれぞれのmについて足し合わせて、信号Wi(m)を出力する。この加算器は、(数2)の右辺第1項と第2項を足し合わせることを意味している。
【0108】
加算器18の出力信号Wi(m)は逆フーリエ変換装置19に入力され、時間領域の信号wi(n)に変換される。フレーム合成装置20は、信号wi(n)のうち、先頭からN1−1番目までのデータを捨て、wi(N1)からwi(N)までを切り出し、w1(N1)、・・・w1(N)、w2(N1)、・・・w2(N)、w3(N1)、・・・、の順に連続して出力する。D/A変換装置21は、フレーム合成装置20の出力信号をアナログ信号w(t)に変換して出力する。歪み除去装置の出力信号w(t)は、スピーカ22に入力される。
【0109】
次に、歪み除去装置10における第1の係数および第2の係数の求め方について説明する。
まず、歪みを発生するスピーカ22をブロック図でモデル化すると、スピーカは、線形の伝達関数H1(m)の系23と、歪みを発生する非線形の2次の伝達関数H2(m1,m2)の系24と、加算器25とによって、表わされる。スピーカ22の入出力特性は、周波数領域での表示を行うと、(数3)のように表わされる。
【0110】
【数71】
【0111】
ここで、CDプレーヤなどからアンプを通過したオーディオ信号x(t)と、スピーカ22からの出力音圧y(t)の関係を周波数領域で表わすと、(数1)のW(m)を(数3)に代入して消去することにより、(数4)となる。
【0112】
【数72】
【0113】
(数4)の第1項は、オーディオ信号x(t)が乗算器14とスピーカ22の伝達関数H1の系23とを通過する成分を示す。(数4)の第2項の括弧内の第1項は、オーディオ信号x(t)が乗加算器16とスピーカ22の伝達関数H1(m)の系23とを通過する成分を示す。(数4)の第2項の括弧内の第2項は、オーディオ信号x(t)が乗算器14とスピーカの歪みを表わす伝達関数H2(m1,m2)の系24とを通過する成分を示す。
【0114】
なお、x(t)が乗加算器16とスピーカ22の歪みを表わす伝達関数H2の系24とを通過する成分は、他の項に比べて微少であり、無視している。
【0115】
さて、スピーカ22の歪み成分を除去するためには、(数4)の第2項の括弧内の2つの項が相殺されてその値が0になれば良い。
【0116】
まず、第1の記憶装置15の係数G1(m)は、(数4)の第1項がスピーカ22から出力される所望の出力音圧に等しくなるように決定すれば良い。例えば、出力信号Y(m)がオーディオ信号X(m)に等しくなるようにするためには、(数5)より、(数6)が導かれる。
【0117】
【数73】
【0118】
【数74】
【0119】
あるいはまた、出力信号Y(m)として、オーディオ信号がスピーカ22の伝達特性H1(m)の影響を受け、かつ、該オーディオ信号が遅延器による遅延を受けたときの信号を得たい場合は、(数7)より、第1のフィルタの伝達関数G1を(数8)のようにすればよい。
【0120】
【数75】
【0121】
【数76】
【0122】
次に、第2の記憶装置17の係数G2(m1,m2)の決定方法について述べる。スピーカ22で発生する歪みを除去するには、(数4)の第2項の括弧内の2つの項が相殺されれば良いので、括弧内が0に等しいとして、係数G2(m1、m2)について解くと、(数9)となる。
【0123】
【数77】
【0124】
係数G2(m1,m2)を決定するには、(数9)に、スピーカ22の1次の伝達関数H1(m)と、スピーカ22の2次歪みの伝達関数H2(m1,m2)と、上記の方法で決定した第1の記憶装置15の係数G1(m)とを代入すれば良い。
【0125】
よって、第1の記憶装置15の係数G1(m)、および、第2の記憶装置17の係数G2(m1,m2)を決定すれば、歪み除去装置10によって、スピーカ22の高調波歪み及び混変調歪みを除去することができる。
【0126】
次に、スピーカ22の1次の伝達関数H1(m)と、2次歪みの伝達関数H2(m1,m2)の決定方法について説明する。
【0127】
スピーカ22の1次の伝達関数H1(m)は、周波数mの試験信号、例えば正弦波を使って、実測により容易に求めることができる。1次の伝達関数H1(m)のタップ長N2は、時間領域におけるスピーカ22のインパルス応答がそのタップ長内で十分収束する長さ以上であればよい。このN2は、実際にスピーカ22にインパルス信号を入力して測定するか、あるいは、周波数領域において求められたH1(m)を逆フーリエ変換して時間領域の波形に変換し、その波形が十分収束しているかどうか判断すれば良い。なお、タップ長N2は、フレーム分割装置12におけるフレームのオーバーラップ長(N1−1)を定義するN1と等しいか、あるいは、N1よりも短くなければならない。
【0128】
スピーカ22の2次歪みの伝達関数H2(m1,m2)は、周波数m1およびm2の試験信号、例えば周波数m1の正弦波と周波数m2の正弦波を足し合わせた信号を使って、容易に求めることができる。2次元配列である2次歪みの伝達関数H2(m1,m2)の一辺のタップ長N3は、周波数領域において求められたH2(m1,m2)を2次元逆フーリエ変換して時間領域の波形に変換した際に、その2次元波形がN3×N3の平面内で十分収束する長さ以上であれば良い。なお、タップ長N3は、フレーム分割装置12におけるフレームのオーバーラップ長(N1−1)を定義するN1と等しいか、あるいは、N1よりも短くなければならない。
【0129】
次に、フレーム分割装置12でオーディオ信号を分割する際のフレーム長Nと、オーバーラップの長さ(N1−1)と、スピーカ22の1次の伝達関数H1(m)のタップ長N2と、スピーカ22の2次歪みの伝達関数を表わす配列H2(m1,m2)の一辺のタップ長N3との関係について、図2A、図2B、図2C、図2Dを参照しながら説明する。ここで、説明を理解し易くするために、N1とN2とN3は等しいものとする。
【0130】
まず、スピーカ22の1次の伝達関数H1(m)および2次歪みの伝達関数H2(m1,m2)は、それぞれタップ長N1およびN1×N1で測定される。次に、上で説明した方法により、歪み除去装置の第1の係数G1(m)および第2の係数G2(m1,m2)を算出する。ここで、第1のG1(m)のタップ長はN1であり、第2の係数G2(m1,m2)のタップ長はN1×N1である。さて、歪み除去装置10の乗算器14で行われる演算は、本質的には入力信号に対する1次元の畳み込み演算である。また、乗加算器16で行われる演算は、本質的には2次元の畳み込み演算である。
【0131】
一般的なオーディオ信号など非周期的な信号に対する畳み込み演算を行うには、いくつかの手法があるが、ここでは、オーバーラップセーブ法(Overlap-Save Method:「FAST ALGORITHMS FOR DIGITAL SIGNAL PROCESSING」 Chapter 9 pp.283-289 Richard E.Blahut著 1985年 ADDUSON-WESLEY PUBLISHING COMPANY Inc発行を参照)を採用し、これを周波数領域において行う。よって、ここで、第1の係数G1(m)をタップ長Nに拡張する必要がある。また、第2の係数G2(m1,m2)をタップ長N×Nに拡張する必要がある。
【0132】
そこで、本発明では、これらタップ長の拡張を行うために、第1の係数G1(m)および第2の係数G2(m1,m2)を時間領域に変換する。次に、図2cに示すように、時間領域に変換された第1の係数に、(N−N1)個の0データを付加する。また、図2Dに示すように、時間領域に変換された第2の係数に、0データを付加する。その後、第1の係数、第2の係数は、再び、周波数領域に変換される。これにより、第1の係数はタップ長Nに拡張され、また、第2の係数は、タップ長N×Nに拡張されたことになる。
【0133】
以上のタップ長についての話をまとめると、スピーカの1次の伝達特性および2次歪みの伝達特性を用いて算出される第1の係数G1(m)のタップ長はN1、また、第2の係数G2(m1,m2)のタップ長は、N1×N1である。次に、上述した方法によりタップ長の拡張を行って、実際の歪み除去装置10の第1の記憶装置15に格納される第1の係数G1(m)のタップ長はN,また、第2の記憶装置17に格納される第2の係数G2(m1,m2)のタップ長はNである。第1の係数G1(m)および第2の係数G2(m1,m2)は、タップ長の拡張前後で、本質的にその特性はおなじである。よって、説明の簡略化のため本明細書ではタップ長の拡張前後どちらの場合も、第1の係数はG1(m)、第2の係数はG2(m1,m2)という記号を用いて説明を行っている。
【0134】
次に、フレーム分割装置12におけるフレーム長Nと、信号取り込み時のオーバーラップの長さを定義するための長さN1について説明する。
【0135】
本発明の歪み除去装置は、入力されたオーディオ信号を、フレーム毎に周波数領域に変換して信号処理を行い、再び時間領域に変換して出力する。
【0136】
第1実施形態の歪み除去装置10から出力される信号w(n)の1個につき必要な演算量を考える。例えば、スピーカの1次のインパルス応答長N1(=N2=N3)を128タップとした場合には、フレーム分割長Nを256タップとすると、歪み除去装置10における演算量が最も少なくなる。これは、(数10)として表わされる。
【0137】
【数78】
【0138】
次に、本発明の歪み除去装置のように、入力されたオーディオ信号を周波数領域に変換して信号処理を行い、再び時間領域に変換して出力する意義について考える。
【0139】
一般的な非線形システムの歪み除去を行うための従来の方法には、1次元のディジタルフィルタおよび2次元のディジタルフィルタを用いて、時間領域のみで畳み込み演算を行う方法があるが、2次元の畳み込み演算に必要な演算量が莫大であるため、入力されたオーディオ信号をリアルタイム処理するには歪み除去装置が巨大になり、そのような歪み除去装置は現実的ではない。
【0140】
本発明の歪み除去装置の特徴は、入力されたオーディオ信号を周波数領域に変換して演算を行うことにより、歪み除去装置における演算量が少なくてすむことである。ここで、本発明の歪み除去装置において必要な乗算回数および加算回数を検討する。
【0141】
スピーカ22の歪みを除去するために、歪み除去装置10において必要な乗算回数および加算回数は、ディジタルに変換されたオーディオ信号x(n)の1個につき、Nの1乗のオーダーである。一方、従来の時間領域における畳込み演算による方法では、畳込み演算の部分で必要な乗算回数は、オーディオ信号x(n)の1個につき、Nの2乗のオーダーであり、演算量が非常に多い。
【0142】
よって、本発明の歪み除去装置のように、入力されたオーディオ信号を周波数領域に変換して信号処理を行い、再び時間領域に変換して出力することにより、演算量が大幅に削減される。
【0143】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図3A、図3B、図3C、図3Dを参照しながら説明する。
【0144】
この第2実施形態では、第2の記憶装置17および乗加算器16における演算量をさらに削減できる。
【0145】
この歪み除去装置の構成は、第1実施形態でとほぼ同じであるが、異なるのは、図1の第2の記憶装置17が図3Aに示す領域の係数のみを記憶していれば良いということである。図3Aに示した領域を数式で表わすと(数11)で定義される領域となる。
【0146】
【数79】
【0147】
第1実施形態の歪み除去装置では、歪み除去装置10の乗加算器16における(数1)の右辺第2項の演算の乗算及び加算が装置全体の演算量の多くを占めていたが、第2実施形態では、乗加算器16における演算量を減らし、装置の規模を縮小することができる。
【0148】
第2の係数G2(m1,m2)の特徴について述べる。第2の係数G2(m1,m2)においては、図3Bの斜線部とそれ以外の領域の係数は、m1=m2を対称軸とする線対称の関係にある。また、図3Cの斜線部とそれ以外の領域の係数は、(N/2,N/2)を点対称の中心とした共役関係にある。また、第2の係数G2(m1,m2)においては、(数1)の第2項の積和演算において、図3Dの斜線部とそれ以外では積和演算の結果が必ず共役な関係になるので、実際の計算では斜線部のみを考慮すれば良い。そこで、図3B、図3C、図3Dの積集合を取ると、図3Aの斜線部の領域となり、(数1)の第2項の演算を行う際には、図3Aの斜線部の各係数G2(m1,m2)についてそれぞれ積和演算を行い、それらの結果を、(数12)に示すように加算すれば良い。
【0149】
【数80】
【0150】
これにより、ディジタルに変換されたオーディオ信号の1サンプルあたりに必要な、乗加算器16における乗算回数は、約3/16になり、歪み除去装置10の規模を縮小する事が出来る。
【0151】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【0152】
この第3実施形態の歪み除去装置40は、第1実施形態のものとほとんど同じであるが、異なる部分は、フーリエ変換装置13の後段に新たな第2の乗算器26を設け、その第2の乗算器26には係数D1(m)を格納した第3の記憶装置27を設けたことである。
【0153】
スピーカ22のインパルス応答h1(t)は、一般に、入力信号x(t)に対して群遅延を含んだ特性となっている。スピーカ22の1次の系の伝達関数H1(m)はh1(t)を離散化してからフーリエ変換して求められるが、h1(t)に群遅延がある場合には、(数6)で行ったように周波数特性のみを考慮して第1の係数G1(m)を決定すると、歪み除去装置40とスピーカ22を含めた全体の系の入出力特性の因果律が犯されてしまう。ここで、周期性の無いランダムなオーディオ信号が歪み除去装置40に入力されても、スピーカ22の歪みは所望通りに除去されないという問題がある。
【0154】
第3実施形態では、この問題を解決するために、図4に示すように、第2の乗算器26と、係数D1(m)を格納した第3の記憶装置27を設けている。
【0155】
以上の構成において、まず、第3の記憶装置27には、h1(t)の群遅延量τとほぼ同等の遅延作用のあるNタップの遅延器のインパルス応答特性をフーリエ変換した係数D1(m)を格納する。
【0156】
乗算器26は、信号X(m)に対して、第3の記憶装置27より読み出したD1(m)を、mについてそれぞれ掛け合わせて出力する。これにより、第2の乗算器26を通過する成分には、スピーカ22の1次の系の群遅延量に見合った遅延が施されたこととなる。また、乗加算器16を通る成分については、第2の乗算器26において、第3の記憶装置27より読み出された係数D1(m1)が、信号X(m1)に対して掛け合わされ、信号X(m2)に対しては第3の記憶装置27より読み出された係数D1(m2)がそれぞれ掛け合わされてから、乗加算器16に出力される。その結果スピーカの歪みの群遅延量に見合った遅延が施された出力となる。これにより、第1の乗算器14、第2の乗算器26、乗加算器16、加算器18による信号X(m)と信号W(m)の関係は、(数13)となる。
【0157】
【数81】
【0158】
以上の作用により、歪み除去装置40に、周期性の無い一般的なオーディオ信号が入力された場合でも、スピーカ22の歪みを除去する事が可能となる。
【0159】
また、ここで、(数13)より、G1(m)D(m)を新たな第1の係数として図1の第1の記憶装置15に格納し、、G2(m1,m2)D1(m1)D1(m2)を新たな第2の係数として図1の第2の記憶装置17に格納し、図1の歪み除去装置10を用いて、同等の歪み除去を行うことも可能である。
【0160】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態のプロセッシングスピーカシステム50を示している。このプロセッシングスピーカシステム50は、第1乃至第3実施形態の歪み除去装置10,40のいずれかを内蔵しており、この歪み除去装置の出力をスピーカ22に加えている。
【0161】
特に、業務用の分野などにおいては、スピーカ22によって大音量を発生するので、非線形歪みが発生しやすく、以上で説明した歪み除去装置10,40を内蔵させ、歪み補償の信号処理を行うことにより、音質を改善することができる。
【0162】
(第5実施形態)
次に、図6は、本発明の第5実施形態のマルチプロセッサ60を示している。このマルチプロセッサ60は、周波数特性や遅延時間の調整を行うイコライザ及びディ例回路61と、第1乃至第3実施形態の歪み除去装置10,40のいずれかを内蔵しており、この歪み除去装置の出力をスピーカ22に加えている。
【0163】
一般に、業務用スピーカでオーディオ信号を再生する場合には、音源とスピーカ22との間にマルチプロセッサと呼ばれる信号処理装置を挿入し、周波数特性や遅延時間の調整を行う。そこで、第1乃至第3実施形態のいずれかの歪み除去装置を、マルチプロセッサ60に内蔵させることによって、音響再生系を構成する機器を増やすこと無く、スピーカ22の歪みを除去することができる。
【0164】
(第6実施形態)
図7は、本発明の第6実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【0165】
この歪み除去装置70は、CDプレーヤなどの音源1から出力されたオーディオ信号が入力されるA/D変換装置11と、フレーム分割装置12と、フーリエ変換装置13と、フーリエ変換装置13の出力信号が入力される第1のフィルタ71と、フーリエ変換装置13の出力信号が入力される第2のフィルタ72と、前記第1のフィルタ71の出力信号と前記第2のフィルタ72の出力信号とを加算する加算器18と、前記加算器の出力信号を入力する逆フーリエ変換装置19と、フレーム合成装置20と、D/A変換装置21とを有する。
【0166】
第1のフィルタ71は、図1の歪み除去装置10における第1の記憶装置15と乗算器14を合わせた機能を持つ、1次元のフィルタである。また、第2のフィルタ72は、図1の歪み除去装置10における第2の記憶装置17と乗加算器16の機能を持つ2次元のフィルタである。
【0167】
この第6実施形態の歪み除去装置70は、第1のフィルタ71の伝達特性および第2のフィルタ72の伝達特性を工夫して、該歪み除去装置70にローパスフィルタの機能をも持たせ、これにより、音響再生系において従来必要であったローパスフィルタを不要とし、音響再生系の構成を簡略化できる歪み除去装置を提供するものである。
【0168】
ここで、周波数領域における離散的な表現によって、歪み除去装置70の入力信号X(m)と歪み除去装置70の出力信号WL(m)の関係を(数14)に示す。
【0169】
【数82】
【0170】
前記第1のフィルタ71の伝達特性G1L(m)は、ローパスフィルタの伝達特性L(m)を成分として含んだL(m)G1(m)であり、前記第2のフィルタ72の伝達特性G2L(m1、m2)は、ローパスフィルタの伝達特性L(m)を成分として含んだL(m1)L(m2)G2(m1、m2)である。
【0171】
このような構成により、CDプレーヤなどの信号源1から、アナログのオーディオ信号x(t)が歪み除去装置70に入力されると、A/D変換装置11はx(t)をディジタルの信号x(n)に変換する。A/D変換装置11の出力信号は、フレーム分割装置12及びフーリエ変換装置13を介して、分割されると共に周波数領域に変換されてから、第1のフィルタ71に入力される。ここで、第1のフィルタ71は、伝達特性L(m)G1(m)であり、入力信号に対して1次元の畳み込み演算を行う。これが(数14)の右辺第1項である。
【0172】
一方、フーリエ変換装置13の出力信号は、第2のフィルタ72にも入力される。ここで、第2のフィルタ72は2次元のディジタルフィルタであり、2次元の伝達特性L(m1)L(m2)G2(m1、m2)によって入力信号に対して2次元の畳み込み演算を行う。これが(数14)の右辺第2項である。
【0173】
第1のフィルタ71の出力信号と第2のフィルタ72の出力信号とは、加算器18に入力され、加算される。これが(数14)の右辺の第1項と第2項の間の加算である。
【0174】
加算器18の出力信号は、逆フーリエ変換装置19及びフレーム合成装置20を介して、時間領域に変換されると共に連結されてから、D/A変換装置21に入力され、D/A変換された後、歪み除去装置70の出力信号として出力される。
【0175】
次に、第1のフィルタ71および第2のフィルタ72の伝達特性の決定方法について説明する。
【0176】
まず、ローパスフィルタの効果を持たない第1実施形態の歪み除去装置10の第1のフィルタ(第1の記憶装置15と乗算器14からなる)の伝達特性をG1(m)、第2のフィルタ(第2の記憶装置17と乗加算器16からなる)の伝達特性をG2(m1、m2)とすると、これらは、最初の実施形態における方法と同様にして求められる。
【0177】
一方、例えば一般に業務用の音響再生系においては、スピーカとして主に低周波数帯域の音波を再生するウーハーを用いる場合、CDプレーヤなどの音源から出力された信号をローパスフィルタに通してからスピーカに入力する。そこで、第6実施形態では、第1のフィルタ71および第2のフィルタ72の伝達特性を次のように決定することにより、歪み除去装置70にローパスフィルタの機能をも持たせ、音響再生系からローパスフィルタを省略することを可能にしている。
【0178】
ローパスフィルタの伝達特性をL(m)とする。ローパスフィルタの機能をも持たせた歪み除去装置70の第1のフィルタ71の伝達特性G1L(m)を、先程決定したG1(m)とローパスフィルタの伝達特性L(m)とを掛け合わせた特性G1(m)L(m)と等しくなるようにする(G1L(m)=G1(m)L(m))。次に、第2のフィルタ72の伝達特性をG2L(m1、m2)とする。歪み除去装置70の入力信号X(m)とスピーカの出力信号Y(m)の関係を周波数領域で表わすと、(数15)となる。
【0179】
【数83】
【0180】
歪み除去装置70にローパスフィルタの機能を持たせるためには、(数15)の右辺第2項の中括弧内の第1項と第2項が相殺されれば良いので、それにはG2L(m1、m2)が(数16)に示されるように決定されれば良い。
【0181】
【数84】
【0182】
以上により、本発明は、歪み除去装置70にローパスフィルタの機能をも持たせ、かつ、スピーカ22の歪み除去をも可能とするものである。これにより、音響再生系に歪み除去装置70を挿入しても、それまで必要であったローパスフィルタを系から削除することができ、音響再生系の装置の規模が大きくなることなく、スピーカの歪みを除去することができる。
【0183】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態を図8A、図8Bを参照しながら説明する。
【0184】
この第7実施形態では、歪み除去装置70にローパスフィルタの機能を持たせることを前提に、第2のフィルタ72における演算量を減らして歪み除去装置70全体の演算量を低減している。
【0185】
第7実施形態が第6実施形態と異なるのは、第2のフィルタ72において演算を行うフィルタタップの領域である。
【0186】
第2のフィルタ72における演算を周波数領域で行う場合の演算内容は、(数15)の第2項である。ここで、第7実施形態においては、第2のフィルタ72のフィルタタップの対象性および共役性およびローパスフィルタ機能を考慮し、実質的に図8Aあるいは図8Bの斜線部で示された領域の第2のフィルタ72のフィルタタップについてのみ乗加算の演算を行うことにより、乗算および加算回数を減らすことが可能となる。
【0187】
図8Aを数式で表わすと(数17)と(数18)で示される領域となる。
【0188】
【数85】
【0189】
【数86】
【0190】
また、図8Bを数式で表わすと(数19)と(数20)と(数21)で示される領域となる。
【0191】
【数87】
【0192】
【数88】
【0193】
【数89】
【0194】
歪み除去装置70にローパスフィルタの機能を持たせるように第1および第2のフィルタ71,72のタップを設定すると、第1のフィルタ71の出力信号および第2のフィルタ72の出力信号は、所望のローパスフィルタ特性のカットオフ周波数以下の成分に限定される信号になる。つまり、カットオフ周波数以上の成分は微少になる。
【0195】
第7実施形態においては、第2のフィルタ72において行われる(数15)の第2項の乗加算のうち、実質的には図8Aあるいは図8Bの斜線部で示した領域についてのみ行なえばよいので、これにより演算量を低減することが可能となる。
【0196】
図8Aと図8Bの斜線部の領域のどちらについて演算を行うかは、ローパスフィルタのカットオフ周波数と第2のフィルタ72のタップ長の関係によって決められる。第2のフィルタ72がN×Nタップの2次元のディジタルフィルタであり、ローパスフィルタ機能のカットオフ周波数に対応する周波数軸上のポイントをmcとすると、mc≦N/4の場合には図8Aの領域について、また、N/4<mcの場合には図8Cの領域について(数15)の第2項の乗加算を行なえば良い。
【0197】
これにより、これまで歪み除去装置70における総演算量の大部分を占めていた第2のフィルタ72の乗算および加算の回数を減らし、歪み除去装置70における総演算量をかなり低減することが可能となる。
【0198】
(第8実施形態)
図9は、本発明の第8実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【0199】
この歪み除去装置90は、CDプレーヤなどの音源1から出力されたオーディオ信号が入力されるA/D変換装置11と、フレーム分割装置12と、フーリエ変換装置13と、フーリエ変換装置13の出力信号が入力される第1のフィルタ91と、フーリエ変換装置13の出力信号が入力される第2のフィルタ92と、前記第1のフィルタ91の出力信号と前記第2のフィルタ92の出力信号とを加算する加算器18と、前記加算器の出力信号を入力する逆フーリエ変換装置19と、フレーム合成装置20と、D/A変換装置21とを有する。
【0200】
第1のフィルタ91は、図1の歪み除去装置10における第1の記憶装置15と乗算器14を合わせた機能を持つ、1次元のフィルタである。また、第2のフィルタ92は、図1の歪み除去装置10における第2の記憶装置17と乗加算器16の機能を持つ2次元のフィルタである。
【0201】
この第8実施形態の歪み除去装置90は、以下の点で第1実施形態の歪み除去装置10と異なっている。歪み除去装置90によって歪みを除去したいスピーカー22が中域用ホーンスピーカである場合、音響再生系においては、CDプレーヤなどの音源1とスピーカ22の間に、本来は、バンドパスフィルタを必要とする。そこで、第8実施形態では、歪み除去装置90にバンドパスフィルタ特性をも持たせることを特徴とする。
【0202】
ここで、周波数領域における表現によって、歪み除去装置90の入力信号X(m)と歪み除去装置90の出力信号WB(m)の関係を(数22)に示す。
【0203】
【数90】
【0204】
前記第1のフィルタ91の伝達特性G1B(m)は、バンドパスフィルタの伝達特性B(m)を成分として含んだB(m)G1(m)であり、前記第2のフィルタ92の伝達特性G2B(m1、m2)は、バンドパスフィルタの伝達特性B(m)を成分として含んだB(m1)B(m2)G2(m1、m2)である。
【0205】
次に、第1のフィルタ91および第2のフィルタ92の伝達特性の決定方法について説明する。
【0206】
バンドパスフィルタの効果を持たない第1実施形態の歪み除去装置10における第1のフィルタ(第1の記憶装置15と乗算器14からなる)の伝達特性をG1(m)、第2のフィルタ(第2の記憶装置17と乗加算器16からなる)の伝達特性をG2(m1、m2)とすると、これらは、最初の実施形態における方法と同様にして求められる。
【0207】
先に述べた様に、例えば一般に業務用の音響再生系においては、スピーカ22として主に中域の音波を再生する中域用スピーカを用いる場合、CDプレーヤなどの音源1から出力された信号をバンドパスフィルタに通してからスピーカ22に入力する。そこで、第8実施形態では、第1のフィルタ91および第2のフィルタ92の伝達特性を次のように決定することにより、本歪み除去装置90にバンドパスフィルタの機能をも持たせ、音響再生系からバンドパスフィタルを不要とすることを可能にしている。
【0208】
まず、バンドパスフィルタの伝達特性をB(m)とする。バンドパスフィルタの機能をも持たせた歪み除去装置90の第1のフィルタ91の伝達特性G1B(m)を先程決定したG1(m)とバンドパスフィルタの伝達特性B(m)とを掛け合わせた特性G1(m)B(m)と等しくなるようにする(G1B(m)=G1(m)B(m))。次に、第2のフィルタ92の伝達特性をG2B(m1、m2)とし、X(m)とY(m)の関係を数式で表わすと、(数23)となる。
【0209】
【数91】
【0210】
歪み除去装置90にバンドパスフィルタの機能を持たせるためには(数23)の右辺第2項の中括弧内の第1項と第2項が相殺されれば良いので、それにはG2B(m1、m2)が(数24)に示されるように決定されれば良い。
【0211】
【数92】
【0212】
以上の様に、第8実施形態は、歪み除去装置90にバンドパスフィルタの機能をも持たせ、スピーカー22の歪み除去行う。これにより、音響再生系に歪み除去装置90を挿入しても、それまで必要であったバンドパスフィルタを系から削除することができ、音響再生系の装置の規模が大きくなることなく、スピーカ22の歪みを除去することができる。
【0213】
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態を図10A、図10Bを参照しながら説明する。
【0214】
この第9実施形態では、歪み除去装置90にバンドパスフィルタの機能を持たせることを前提に、第2のフィルタ92における演算量を減らして歪み除去装置90全体の演算量を低減している。
【0215】
第9実施形態が第8実施形態と異なるのは、第2のフィルタ92において演算を行うフィルタタップの領域である。
【0216】
第2のフィルタ92における演算を周波数領域で行う場合の演算内容は、(数22)の第2項である。ここでは、第2のフィルタ92のフィルタタップの対象性および共役性およびバンドパスフィルタ機能を考慮し、実質的に図10Aあるいは図10Bの斜線部で示された領域の第2のフィルタ92のフィルタタップについてのみ乗加算の演算を行うことにより、乗算および加算回数を減らすことが可能となる。
【0217】
図10Aを数式で表わすと(数25)と(数26)で示される領域となる。
【0218】
【数93】
【0219】
【数94】
【0220】
また、図10Bを数式で表わすと(数27)と(数28)と(数29)で示される領域となる。
【0221】
【数95】
【0222】
【数96】
【0223】
【数97】
【0224】
まず、歪み除去装置90にバンドパスフィルタの機能を持たせるように、第1および第2のフィルタ91,92のタップを設定すると、第1のフィルタ91の出力信号および第2のフィルタ92の出力信号は、所望のバンドパスフィルタ特性の通過帯域内の周波数成分に限定される信号になる。つまり、低域側カットオフ周波数以下の成分および高域側カットオフ周波数以上の成分は微少になる。
【0225】
よって、第9実施形態においては、第2のフィルタ91において行われる(数22)の第2項の乗加算のうち、実質的には図10Aあるいは図10Bの斜線部で示した領域についてのみ行なえばよく、これにより演算量を低減することが可能となる。
【0226】
図10Aと図10Bの斜線部の領域のどちらについて演算を行うかは、バンドパスフィルタの高域側カットオフ周波数mchと第2のフィルタ92のタップ長の関係によって決められる。第2のフィルタ92がN×Nタップの2次元のディジタルフィルタであり、バンドパスフィルタ機能の高域側カットオフ周波数に対応する周波数軸上のポイントをmchとすると、mch≦N/4の場合には図10Aの領域について、また、N/4<mchの場合には図10Bの領域について(数22)の第2項の乗加算を行なえば良い。
【0227】
これにより、これまで歪み除去装置90における総演算量の大部分を占めていた第2のフィルタ92の乗算および加算の回数を減らし、歪み除去装置90における総演算量をかなり低減することが可能となる。
【0228】
(第10実施形態)
図11は、本発明の第10実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【0229】
この歪み除去装置110は、CDプレーヤなどの音源1から出力されたオーディオ信号が入力されるA/D変換装置11と、フレーム分割装置12と、フーリエ変換装置13と、フーリエ変換装置13の出力信号が入力される第1のフィルタ111と、フーリエ変換装置13の出力信号が入力される第2のフィルタ112と、前記第1のフィルタ111の出力信号と前記第2のフィルタ112の出力信号とを加算する加算器18と、前記加算器の出力信号を入力する逆フーリエ変換装置19と、フレーム合成装置20と、D/A変換装置21とを有する。
【0230】
第1のフィルタ111は、図1の歪み除去装置10における第1の記憶装置15と乗算器14を合わせた機能を持つ、1次元のフィルタである。また、第2のフィルタ112は、図1の歪み除去装置10における第2の記憶装置17と乗加算器16の機能を持つ2次元のフィルタである。
【0231】
この第10実施形態の歪み除去装置110は、以下の点で第1実施形態の歪み除去装置10と異なっている。歪み除去装置110によって歪みを除去したいスピーカー22が高域用ホーンスピーカである場合、音響再生系においては、CDプレーヤなどの音源1とスピーカ22の間にハイパスフィルタを必要とする。そこで、第10実施形態では、歪み除去装置110にハイパスフィルタ特性をも持たせることを特徴とする。
【0232】
ここで、周波数領域における離散的な表現によって、歪み除去装置110の入力信号X(m)と歪み除去装置110の出力信号WF(m)の関係を(数30)に示す。
【0233】
【数98】
【0234】
前記第1のフィルタ111の伝達特性G1F(m)は、ハイパスフィルタの伝達特性F(m)を成分として含んだF(m)G1(m)であり、前記第2のフィルタ112の伝達特性G2F(m1、m2)は、ハイパスフィルタの伝達特性F(m)を成分として含んだF(m1)F(m2)G2(m1、m2)である。
【0235】
次に、第1のフィルタ111および第2のフィルタ112の伝達特性の決定方法について説明する。
【0236】
ハイパスフィルタの効果を持たない歪み除去装置10における第1のフィルタ(第1の記憶装置15と乗算器14からなる)の伝達特性をG1(m)、第2のフィルタ(第2の記憶装置17と乗加算器16からなる)の伝達特性をG2(m1、m2)とすると、これらは、最初の実施形態における方法と同様にして求められる。
【0237】
先に述べた様に、例えば一般に業務用の音響再生系においては、スピーカとして主に高域の音波を再生する高域用スピーカを用いる場合、CDプレーヤなどの音源1から出力された信号をハイパスフィルタに通してからスピーカ22に入力する。そこで、第10実施形態では、第1のフィルタ111および第2のフィルタ112の伝達特性を次のように決定することにより、歪み除去装置110にハイパスフィルタの機能をも持たせ、音響再生系からハイパスフィルタを不要とすることを可能にしている。
【0238】
まず、ハイパスフィルタの伝達特性をF(m)とする。ハイパスフィルタの機能をも持たせた歪み除去装置110の第1のフィルタ111の伝達特性G1F(m)を先程決定したG1(m)とバンドパスフィルタの伝達特性F(m)とを掛け合わせた特性G1(m)F(m)と等しくなるようにする(G1F(m)=G1(m)F(m))。次に、第2のフィルタ112の伝達特性をG2F(m1、m2)とし、X(m)とY(m)の関係を数式で表わすと、(数31)となる。
【0239】
【数99】
【0240】
歪み除去装置110にバンドパスフィルタの機能を持たせるためには(数31)の右辺第2項の中括弧内の第1項と第2項が相殺されれば良いので、それにはG2F(m1、m2)が(数32)に示されるように決定されれば良い。
【0241】
【数100】
【0242】
以上により、第10実施形態は、歪み除去装置110にハイパスフィルタの機能をも持たせ、スピーカー22の歪み除去を可能とするものである。これにより、音響再生系に歪み除去装置110を挿入しても、それまで必要であったハイパスフィルタを系から削除することができ、音響再生系の装置の規模を大きくすること無く、スピーカの歪みを除去することができる。
【0243】
(第11実施形態)
次に、本発明の第11実施形態を図12を参照しながら説明する。
【0244】
この第11実施形態では、歪み除去装置110にハイパスフィルタの機能を持たせることを前提に、第2のフィルタ112における演算量を減らして歪み除去装置110全体の演算量を低減している。
【0245】
第11実施形態が第10実施形態と異なるのは、第2のフィルタ112において演算を行うフィルタタップの領域である。
【0246】
第2のフィルタ112における演算を周波数領域で行う場合の演算内容は、(数30)の第2項である。ここでは、第2のフィルタ112のフィルタタップの対象性および共役性およびハイパスフィルタ機能を考慮し、実質的に図12の斜線部で示された領域の第2のフィルタ112のタップについてのみ乗加算の演算を行うことにより、乗算および加算回数を減らすことが可能となる。
【0247】
図12を数式で表わすと(数33)と(数34)と(数35)で示される領域となる。
【0248】
【数101】
【0249】
【数102】
【0250】
【数103】
【0251】
まず、歪み除去装置110にハイパスフィルタの機能を持たせるように第1および第2のフィルタのタップ111,112を設定すると、第1のフィルタ111の出力信号および第2のフィルタ112の出力信号は、所望のハイパスフィルタ特性のカットオフ周波数以下の成分に限定される信号になる。つまり、カットオフ周波数以下の成分は微少になる。
【0252】
よって、第11実施形態においては、第2のフィルタ112において行われる(数30)の第2項の乗加算のうち、実質的には図12の斜線部で示した領域についてのみ行なえばよく、これにより演算量を低減することが可能となる。
【0253】
これにより、これまで歪み除去装置110における総演算量の大部分を占めていた第2のフィルタ112の乗算および加算の回数を減らし、歪み除去装置における総演算量をかなり低減することが可能となる。
【0254】
なお、上記第6乃至第11実施形態の歪み除去装置70,90,110を第4実施形態のプロセッシングスピーカシステム50における歪み除去装置10,40の代わりに適用したり、第5実施形態のマルチプロセッサ60における歪み除去装置10,40の代わりに適用しても構わない。
【0255】
また、上記第6乃至第11実施形態の歪み除去装置70,90,110においては、音源1から出力されたオーディオ信号を周波数領域の信号に変換してから、信号に対する演算処理を行い、この演算処理により得られた信号を時間領域の信号に変換して戻しているが、時間領域と周波数領域間の変換を行わずに、つまり時間領域の信号のままで演算処理(畳み込み演算)を行う場合にも、第1及び第2のフィルターに相当する部分に、ローパスフィルター、バンドパスフィルター、ハイパスフィルターの機能を持たせて、これらのフィルターを削減することができる。したがって、この様な効果を奏する本発明は、時間領域の信号のままで演算処理を行う構成の歪み除去装置をも含む。
【0256】
(第12実施形態)
図13は、本発明の第12実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【0257】
この歪み除去装置130は、CDプレーヤなどの音源1から出力されたオーディオ信号が入力されるA/D変換装置11と、フレーム分割装置12と、フーリエ変換装置13と、フーリエ変換装置13の出力信号が入力される第1のフィルタ131と、フーリエ変換装置13の出力信号が入力される第2のフィルタ132と、前記第2のフィルタ132の出力信号が入力されるローパスフィルタ133と、前記第1のフィルタ131の出力信号と前記ローパスフィルタ133の出力信号とを加算する加算器18と、前記加算器の出力信号を入力する逆フーリエ変換装置19と、フレーム合成装置20と、D/A変換装置21とを有する。
【0258】
第1のフィルタ131は、図1の歪み除去装置10における第1の記憶装置15と乗算器14を合わせた機能を持つ、1次元のフィルタである。また、第2のフィルタ132は、図1の歪み除去装置10における第2の記憶装置17と乗加算器16の機能を持つ2次元のフィルタである。
【0259】
この歪み除去装置130が、第1実施形態のものと異なるのは、D/A変換装置21の後段にローパスフィルタ133が設けられていることである。
【0260】
スピーカ22の高域側再生帯域のカットオフ周波数がmcであるとすると、スピーカ22の1次の系23の伝達関数H1(m)は、カットオフ周波数mcよりも大きい帯域において、非常に小さい値となる。第2のフィルタ132の係数G2(m1,m2)を算出するための(数9)を見ると、右辺の分母にH1(m)があるために、算出されるG2(m1、m2)は比較的大きな値となる。そこで、歪み除去装置130への入力信号がスピーカの再生帯域内m≦mcであっても、第2のフィルタ132の出力信号はmc<mの帯域の成分が非常に大きくなった信号となる。この場合、このG2(m1、m2)によってオーディオ信号を第2のフィルタ132で信号処理したとしても、歪み補償信号としてスピーカ22に入力される信号はmcよりも高い周波数の信号であるので、現実には再生することが出来ない。
【0261】
しかしながら、m>mcの帯域の成分が非常に大きなオーディオ信号をスピーカ22に入力すると、スピーカ22が壊れてしまうという問題点がある。
【0262】
そこで、第12実施形態の歪み除去装置130は、第2のフィルタ132の後段にローパスフィルタ133を設け、歪み除去装置130の出力信号をmc以下に帯域制限することにより、スピーカ22をmc以上の帯域の過大入力から保護している。
【0263】
一方、歪み除去装置130の出力信号をmc以下に帯域制限するには、ローパスフィルタ133を設ける代わりに、第2のフィルタ132の特性を工夫することにより実現することも出来る。
【0264】
スピーカ22の再生帯域がmc以下である場合に、別の問題として次のことがある。mがmc以上の帯域における比較的大きな値のG2(m1、m2)によってオーディオ信号に対する信号処理が行われると、歪み除去装置130の出力信号は、信号処理による新たな歪みを含んだり、S/N比が劣化するなどの悪影響を受けてしまう。また、前記の方法により第2のフィルタ132のタップG2(m1、m2)を設計する際に、周波数領域で算出した特性を時間領域に変換し、0データを付加して、周波数領域のタップに再変換するという操作を行うが、スピーカ22の1次の伝達特性H1(m)のうちのm>mcの帯域の成分があまりにも小さいことにより、算出されたG2(m1、m2)のうち、m≦mcの帯域の成分までもが悪影響を受け、歪み補償効果が劣化することがある。
【0265】
そこで、(数9)で求められたG2(m1、m2)に対して、図14の斜線部で表わされる領域を通過させ、それ以外を遮断する2次元の帯域通過フィルタを掛け合わせて、新たなG2(m1、m2)とする。図14の斜線部の領域を式で表わすと、(数36)となる。
【0266】
【数104】
【0267】
この方法によって得られた新たなG2(m1、m2)においては、図14の斜線部以外の領域は非常に小さなタップであるので、第2のフィルタにおける乗加算の演算は実質的に図14の斜線部のみの領域について行えば良い。
【0268】
この結果、使用しているスピーカ22の高域側再生帯域のカットオフ周波数以上の大振幅の歪み補償信号成分をスピーカ22に入力されることが無くなり、これにより、新たな歪みを生じさせたり、再生帯域外の過大入力によってスピーカ22を破損させることが無くなる。また、この新たなG2(m1、m2)によれば、スピーカ22のカットオフ周波数以下の帯域の成分のフィルタタップがm>mcの帯域の成分のタップに悪影響を及ぼされることなく、歪み補償効果の大きいフィルタタップが設計される。
【0269】
次に、第2のフィルタ132のタップの前記対称性や前記共役性などを利用することにより、第2のフィルタ132における演算量を削減するための構成を述べる。
【0270】
第2のフィルタ132における演算は、実質的に、図15の斜線部に示した領域でのみ行えば良い。この領域を数式で表わすと、(数37)となる。
【0271】
【数105】
【0272】
第2のフィルタ132における演算量は、歪み除去装置130における演算量のうち大部分を占めるので、図15の斜線部に示した領域に演算を限定したことにより、歪み除去装置130の演算量が大幅に削減される。
【0273】
また、(数9)によってG2(m1,m2)を算出する際には、N3×N3の2次元配列として表わされるスピーカ22の歪みの伝達関数H2(m1,m2)を測定する必要があるが、この歪み除去装置130においては、図16の斜線部に示す領域のみにおいて測定を行えば良い。これを数式で表わすと、(数38)となる。
【0274】
【数106】
【0275】
なお、第12実施形態において、ローパスフィルタ133を加算器18の後段に挿入することも可能である。
【0276】
(第13実施形態)
図17は、本発明の第13実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【0277】
この歪み除去装置170は、CDプレーヤなどの音源1から出力されたオーディオ信号が入力されるA/D変換装置11と、フレーム分割装置12と、フーリエ変換装置13と、フーリエ変換装置13の出力信号が入力される第1のフィルタ171と、フーリエ変換装置13の出力信号が入力される第2のフィルタ172と、前記第2のフィルタ172の出力信号が入力されるバンドバスフィルタ173と、前記第1のフィルタ171の出力信号と前記バンドパスフィルタ173の出力信号とを加算する加算器18と、前記加算器の出力信号を入力する逆フーリエ変換装置19と、フレーム合成装置20と、D/A変換装置21とを有する。
【0278】
第1のフィルタ171は、図1の歪み除去装置10における第1の記憶装置15と乗算器14を合わせた機能を持つ、1次元のフィルタである。また、第2のフィルタ172は、図1の歪み除去装置10における第2の記憶装置17と乗加算器16の機能を持つ2次元のフィルタである。
【0279】
この歪み除去装置170が、第1実施形態のものと異なるのは、第2のフィルタ172の後段にバンドパスフィルタ173が設けられていることである。
【0280】
スピーカ22の再生帯域の低域側カットオフ周波数がmclであり、かつ、高域側再生帯域のカットオフ周波数がmchであるとする。周波数mがm<mclおよびmch<mの帯域において、スピーカ22の1次系23の伝達関数H1(m)は、非常に小さい値となる。よって、第2のフィルタ172の係数を算出するための(数9)によれば、右辺の分母にH1(m)があるために、算出されるG2(m1、m2)は比較的大きな値となる。そこで、歪み除去装置170への入力信号がスピーカ22の再生帯域内mcl≦m≦mchであっても、第2のフィルタ172の出力信号は、スピーカ22の再生帯域外の成分が非常に大きくなった信号となる。この場合、このG2(m1、m2)によってオーディオ信号を第2のフィルタ172で信号処理したとしても、歪み補償信号としてスピーカ22に入力される信号は再生帯域外の信号であるので、現実には再生することが出来ない。
【0281】
しかしながら、再生帯域外の非常に大きなオーディオ信号をスピーカ22に入力すると、スピーカ22が壊れてしまうという問題点がある。
【0282】
そこで、第13実施形態の歪み除去装置170は、第2のフィルタ172の後段にバンドパスフィルタ173を設け、歪み除去装置170の出力信号をスピーカ22の再生帯域内に制限することにより、スピーカ22を再生帯域外の過大入力から保護している。
【0283】
一方、歪み除去装置170の出力信号をスピーカの再生帯域内に制限するには、D/A変換装置21の後段にバンドパスフィルタ173を設ける代わりに、第2のフィルタ172の特性を工夫することにより実現することも出来る。
【0284】
スピーカ22の再生帯域がmcl以上mch以下である場合に、次のような別の問題がある。スピーカ22の再生帯域外に関する比較的大きな値のG2(m1、m2)によってオーディオ信号に対する信号処理が行われると、歪み除去装置170の出力信号が信号処理による新たな歪みを含んだり、S/N比が劣化するなどの悪影響を受けてしまう。また、前記の方法により第2のフィルタ172のタップG2(m1、m2)を設計する際に、周波数領域で算出した特性を時間領域に変換し、0データを付加して、周波数領域のタップに再変換するという操作を行うが、スピーカ22の1次の系23の伝達特性H1(m)のうちスピーカ22の再生帯域外の成分があまりにも小さいことにより、算出されたG2(m1、m2)のうち、スピーカ22の再生帯域内の成分までもが悪影響を受け、歪み補償効果が劣化することがある。
【0285】
そこで、(数9)で求められたG2(m1、m2)に対して、図18の斜線部で表わされる領域を通過させ、それ以外を遮断する2次元の帯域通過フィルタを掛け合わせて、新たなG2(m1、m2)とする。図18の斜線部の領域を式で表わすと、(数39)となる。
【0286】
【数107】
【0287】
この方法によって得られた新たなG2(m1、m2)によれば、図18の斜線部以外の領域は非常に小さなタップであるので、第2のフィルタにおける乗加算の演算は実質的に図18の斜線部のみの領域について行えば良い。
【0288】
この結果、使用しているスピーカ22の再生帯域外の大振幅の歪み補償信号成分をスピーカ22に入力されることが無くなり、これにより、新たな歪みを生じさせたり、再生帯域外の過大入力によってスピーカ22を破損すさせることが無くなる。また、この新たなG2(m1、m2)によれば、スピーカ22の再生帯域内の成分に関わるフィルタタップが、再生帯域外の成分に関わるタップに悪影響を及ぼされることなく、歪み補償効果の大きいフィルタタップが設計される。
【0289】
次に、第2のフィルタ172のタップの前記対称性や前記共役性などを利用することにより、第2のフィルタ172における演算量を削減するための構成を述べる。
【0290】
第2のフィルタ172における演算は、実質的に図19の斜線部に示した領域でのみで、乗加算を行えば良い。この領域を数式で表わすと、(数40)となる。
【0291】
【数108】
【0292】
第2のフィルタにおける演算量は、歪み除去装置170における演算量のうち大部分を占めるので、図19の斜線部に示した領域に演算を限定したことにより、歪み除去装置の演算量が大幅に削減される。
【0293】
また、(数9)によってG2(m1,m2)を算出する際には、N3×N3の2次元配列として表わされるスピーカ22の歪みの伝達関数H2(m1,m2)を測定する必要があるが、この歪み除去装置170においては、図20の斜線部に示す領域のみにおいて測定を行えば良い。これを数式で表わすと、(数41)となる。
【0294】
【数109】
【0295】
なお、第13実施形態において、バンドパスフィルタ173を加算器18の後段に挿入することも可能である。
【0296】
(第14実施形態)
図21は、本発明の第14実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【0297】
この歪み除去装置210は、CDプレーヤなどの音源1から出力されたオーディオ信号が入力されるA/D変換装置11と、フレーム分割装置12と、フーリエ変換装置13と、フーリエ変換装置13の出力信号が入力される第1のフィルタ211と、フーリエ変換装置13の出力信号が入力される第2のフィルタ212と、前記第2のフィルタ212の出力信号が入力されるハイパスフィルタ213と、前記第1のフィルタ211の出力信号と前記ハイパスフィルタ213の出力信号とを加算する加算器18と、前記加算器の出力信号を入力する逆フーリエ変換装置19と、フレーム合成装置20と、D/A変換装置21とを有する。
【0298】
第1のフィルタ211は、図1の歪み除去装置10における第1の記憶装置15と乗算器14を合わせた機能を持つ、1次元のフィルタである。また、第2のフィルタ212は、図1の歪み除去装置10における第2の記憶装置17と乗加算器16の機能を持つ2次元のフィルタである。
【0299】
この歪み除去装置210が、第1実施形態のものと異なるのは、第2のフィルタ212の後段にハイパスフィルタ213が設けられていることである。
【0300】
スピーカ22は高域用ホーンスピーカであり、低域側カットオフ周波数mc以上のオーディオ信号を再生できるものである。この場合、スピーカ22のカットオフ周波数mcよりも低い帯域において、スピーカ22の1次の系23の伝達関数H1(m)は、非常に小さい値となる。よって、第2のフィルタ212の係数を算出するための(数9)によれば、右辺の分母にH1(m)があるために、算出されるG2(m1、m2)は、m<mcの領域において比較的大きな値となる。よって、歪み除去装置210への入力信号がスピーカ22の再生帯域内mc≦mであっても、第2のフィルタ212の出力信号は、スピーカ22の再生帯域外の成分が非常に大きいものとなる。この場合、G2(m1、m2)によってオーディオ信号を第2のフィルタ212で信号処理したとしても、歪み補償信号としてスピーカ22に入力される信号は再生帯域外の信号であるので、現実には再生することが出来ない。
【0301】
しかしながら、再生帯域外の非常に大きなオーディオ信号をスピーカ22に入力すると、スピーカ22が壊れてしまうという問題点がある。
【0302】
そこで、第14実施形態の歪み除去装置210は、第2のフィルタ212の後段にハイパスフィルタ213を設け、歪み除去装置210の出力信号をスピーカ22の再生帯域内に制限することにより、スピーカ22を再生帯域外の過大入力から保護している。
【0303】
歪み除去装置210の出力信号をスピーカ22の再生帯域内に制限するには、ハイパスフィルタ213を設ける代わりに、第2のフィルタ212の特性を工夫することにより実現することも出来る。
【0304】
スピーカ22の再生帯域がmc以上である場合に、次のような別の問題がある。スピーカ22の再生帯域外に関する比較的大きな値のG2(m1、m2)によってオーディオ信号に対する信号処理が行われると、歪み除去装置210の出力信号が信号処理による新たな歪みを含んだり、S/N比が劣化するなどの悪影響を受けてしまう。また、前記の方法により第2のフィルタ212のタップG2(m1、m2)を設計する際に、周波数領域で算出した特性を時間領域に変換し、0データを付加して、周波数領域のタップに再変換するという操作を行うが、スピーカ22の1次の系23の伝達特性H1(m)のうちスピーカ22の再生帯域外の成分があまりにも小さいことにより、算出されたG2(m1、m2)のうち、スピーカ22の再生帯域内の成分までもが悪影響を受け、歪み補償効果が劣化することがある。
【0305】
そこで、(数9)で求められたG2(m1、m2)に対して、図22の斜線部で表わされる領域を通過させそれ以外を遮断する2次元の帯域通過フィルタを掛け合わせて、新たなG2(m1、m2)とする。図22の斜線部の領域を式で表わすと、(数42)となる。
【0306】
【数110】
【0307】
この方法によって得られた新たなG2(m1、m2)によれば、図22の斜線部以外の領域は非常に小さなタップであるので、第2のフィルタにおける乗加算の演算は実質的に図22の斜線部のみの領域について行えば良い。
【0308】
この結果、使用しているスピーカ22の再生帯域外の大振幅の歪み補償信号成分をスピーカ22に入力されることが無くなり、これにより、新たな歪みを生じさせたり、再生帯域外の過大入力によってスピーカ22を破損すさせることが無くなる。また、この新たなG2(m1、m2)によれば、スピーカ22の再生帯域内の成分に関わるのフィルタタップが、再生帯域外の成分に関わるタップに悪影響を及ぼされることなく、歪み補償効果の大きいフィルタタップが設計される。
【0309】
次に、第2のフィルタ212のタップの前記対称性や前記共役性などを利用することにより、第2のフィルタ212における乗加算の演算量を削減するための構成を述べる。
【0310】
第2のフィルタ212における演算は、実質的に、図23の斜線部に示した領域のみで乗加算を行えば良い。この領域を数式で表わすと、(数43)となる。
【0311】
【数111】
【0312】
第2のフィルタ212における演算量は、歪み除去装置210における演算量のうち大部分を占めるので、図23の斜線部に示した領域に演算を限定したことにより、歪み除去装置210の演算量が大幅に削減される。
【0313】
また、(数9)によってG2(m1,m2)を算出する際には、N3×N3の2次元配列として表わされるスピーカ22の歪みの伝達関数H2(m1,m2)を測定する必要があるが、この歪み除去装置210においては、図24の斜線部に示す領域のみにおいて測定を行えば良い。これを数式で表わすと、(数44)となる。
【0314】
【数112】
【0315】
なお、第14実施形態において、ハイパスフィルタ213を加算器18の後段に挿入することも可能である。
【0316】
また、上記第12乃至第14実施形態の歪み除去装置130,170,210を第4実施形態のプロセッシングスピーカシステム50における歪み除去装置10,40の代わりに適用したり、第5実施形態のマルチプロセッサ60における歪み除去装置10,40の代わりに適用しても構わない。
【0317】
(第15実施形態)
図25は、本発明の第15実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。この第15実施形態では、図25から明らかな様に、スピーカ22の前段にグラフィックイコライザなどのプロセッサ253を接続した音響再生系に、歪み除去装置250を設けた構成を前提としている。
【0318】
第15実施形態の歪み除去装置250は、その後段にグラフィックイコライザなどのプロセッサ253がある場合でも、スピーカ22で発生する歪みを除去できる。この歪み除去装置250の構成は、これまでに説明した他の各実施形態の歪み除去装置10,70,90等とほとんど同じであるが、第2のフィルタ252の係数G2(m1,m2)の算出方法が異なる。
【0319】
これまでに説明した他の各実施形態の歪み除去装置10,70,90等では、スピーカ22で発生する歪みを除去するために第1のフィルタおよび第2のフィルタを設計した後で、グラフィックイコライザなどのプロセッサ253を歪み除去装置の後段に接続すると、スピーカ22の歪み除去効果が劣化し、場合によってはほとんど効果が無くなってしまうという問題があった。この問題を解決するためには、歪み除去装置の後段側全体の1次の伝達特性および2次歪みの伝達特性を新たに測定し、第2のフィルタの係数を算出しなければならなかった。
【0320】
しかしながら、プロセッサ253を別の機種に交換した場合や、あるいは、音質調整の過程でプロセッサ253の特性を変更した場合に、スピーカ22の1次の系23の伝達特性H1(m)および2次の系24の歪みの伝達特性H2(m1,m2)を新たに測定するのは、非常に面倒であった。
【0321】
そこで、第15実施形態は、挿入されたプロセッサ253の特性を用いて第2のフィルタ252の特性を補正することにより、新たに測定を行うこと無く、スピーカ22の歪み除去を行う歪み除去装置250を提供するものである。
【0322】
次に、第15実施形態の歪み除去装置250における第1のフィルタ251および第2のフィルタ252の伝達特性の決定方法について説明する。
【0323】
まず、周波数領域における表現によって、歪み除去装置250の入力信号X(m)と出力信号W(m)の関係を示すと、これまでの他の各実施形態の歪み除去装置10,70,90等と同様に(数45)となる。
【0324】
【数113】
【0325】
次に、プロセッサ253への入力信号W(m)とスピーカ22の出力信号Y(m)との関係について(数46)に示す。
【0326】
【数114】
【0327】
E(m)はプロセッサ253の伝達関数、H1(m)はスピーカ22の1次の系23の伝達関数、H2(m1、m2)はスピーカ22の高調波歪み及び混変調歪み成分の伝達関数である2次の系24の伝達関数、右辺第1項と第2項の加算は、前記加算器25の機能を表わす。
【0328】
(数45)を(数46)に代入して、X(m)とY(m)の関係を求めると(数47)となる。
【0329】
【数115】
【0330】
(数47)の右辺第1項は、X(m)が第1のフィルタ251とプロセッサ253とスピーカ22の1次の系23を通った成分、右辺第2項の中括弧内の第1項は、X(m)が第2のフィルタ252とプロセッサ253とスピーカ22の1次の系23を通った成分、右辺第2項の中括弧内の第2項は、X(m)が第1のフィルタ251とプロセッサ253とスピーカ22の2次の系24を通った成分である。なお、X(m)が第2のフィルタ252とプロセッサ253とスピーカ22の2次の系24を通った成分については、他の項に比べて微少であるため省略している。
【0331】
スピーカ22の出力信号Y(m)が所望の特性になるためには、これまでの他の各実施形態の歪み除去装置10,70,90等と同様に、まず、(数47)の右辺第1項が所望の特性に等しくなるようにG1(m)を決定する。例えば、X(m)にプロセッサ253の特性がかかった特性にY(m)を等しくしたい場合、つまりY(m)=E(m)X(m)としたい場合には、G1(m)をスピーカ22の1次の系の逆特性(G1(m)=1/H1(m))に設定すれば良い。
【0332】
次に、スピーカ22の2次の系で発生する2次歪みを補償するためには、(数47)の右辺の中括弧内の第1項と第2項が相殺されれば良い。よって、G2(m1、m2)が(数48)のように決定される。
【0333】
【数116】
【0334】
この新たなG2(m1,m2)は、プロセッサ253が挿入される前のG2(m1,m2)に、プロセッサ253の伝達特性E(m1)およびE(m2)を掛け合わせたものである。よって、音響再生系にプロセッサ253が挿入された場合には、プロセッサ253の伝達特性によって、歪み除去装置250の第2のフィルタ252の係数G2(m1,m2)を補正することが可能である。ゆえに、歪み除去装置250の後段側の伝達特性を新たに測定し直す必要無しに、スピーカ22の歪み除去を行うことができる。
【0335】
(第16実施形態)
図26は、本発明の第16実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【0336】
この歪み除去装置260が、第15実施形態の歪み除去装置250と異なるのは、プロセッサ253の伝達特性E(m)の検出装置264と、第2のフィルタ262の係数の特性G2(m1,m2)を更新する更新装置263を具えていることである。
【0337】
プロセッサ253の伝達特性E(m)が変更されると、検出装置264はE(m)を検出して、これを更新装置263に送る。更新装置263は、検出装置264から送られてきたプロセッサ253の特性E(m)を第15実施形態で説明した(数48)に代入して、第2のフィルタ262の係数G2(m1,m2)を算出し、第2のフィルタ262の係数を更新する。
【0338】
これにより、歪み除去装置260の後段に設けられたプロセッサ253の特性を変更した場合でも、スピーカ22の歪み除去を行うことが可能となる。
【0339】
なお、現実に第1のフィルタ261の伝達特性G1(m)をスピーカ22の1次の系23の逆特性にするには、逆特性(1/H1(m))に遅延特性を掛け合わせておく必要があるが、上の表現では簡単化のため省略している。
【0340】
なお、プロセッサ253の伝達特性E(m)は、グラフィックイコライザやパワーアンプの伝達特性と考えてよい。
【0341】
(第17実施形態)
図27は、本発明の第17実施形態であるスピーカ用マルチプロセッサを示すブロック図である。
【0342】
この第17実施形態では、図25の歪み除去装置250又は図26の歪み除去装置260をスピーカ用マルチプロセッサ270に内蔵している。
【0343】
一般に、業務用スピーカでオーディオ信号を再生する場合には、音源1とスピーカ22との間に、マルチプロセッサと呼ばれる信号処理装置を挿入し、音質の調整を行う。ところが、歪み除去装置の第2のフィルタの係数を決定した後で、マルチプロセッサの伝達特性を変更すると、スピーカ22の歪み除去効果が劣化するか、あるいはほとんど効果が無くなってしまう。よって、マルチプロセッサの伝達特性を変更したときには、第2のフィルタ262の係数を更新する必要がある。
【0344】
そこで、図25の歪み除去装置250又は図26の歪み除去装置260をマルチプロセッサ270に内蔵させる。これにより、音響再生系を構成する機器を増やすこと無く、スピーカ22の歪みを除去することができる。
【0345】
(第18実施形態)
図28は、本発明の第18実施形態であるスピーカ用パワーアンプを示すブロック図である。
【0346】
この第18実施形態では、図25の歪み除去装置250又は図26の歪み除去装置260をスピーカ用パワーアンプ280に内蔵している。
【0347】
一般に、スピーカ22でオーディオ信号を再生する場合には、スピーカ22の前段にパワーアンプを接続し、音量の調整を行う。ところが、歪み除去装置の第2のフィルタの係数を決定した後で、パワーアンプのゲインを変更すると、スピーカ22の歪み除去効果が劣化するか、あるいはほとんど効果が無くなってしまう。よって、パワーアンプのゲインを変更したときには、第2のフィルタ262の係数を更新する必要がある。
【0348】
そこで、図25の歪み除去装置250又は図26の歪み除去装置260をパワーアンプ280に内蔵させる。これにより、音響再生系を構成する機器を増やすこと無く、スピーカ22の歪みを除去することができる。
【0349】
(第19実施形態)
図29は、本発明の第19実施形態であるプロセッシングスピーカシステムを示すブロック図である。
【0350】
この第19実施形態では、図27のマルチプロセッサ270又は図28のパワーアンプ280をプロセッシングスピーカシステム290に内蔵している。
【0351】
特に業務用スピーカ22は、大音量でオーディオ信号を再生するので、非線形歪みが発生しやすい。プロセッシングスピーカシステム290に、図27のマルチプロセッサ270又は図28のパワーアンプ280を内蔵して、歪み補償の信号処理を行えば、音質を改善することができる。
【0352】
(第20実施形態)
図30は、本発明の第20実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。この第20実施形態の歪み除去装置300は、その後段のパワーアンプ303が2次歪みを発生する場合に、パワーアンプ303で発生する歪みおよびスピーカ22で発生する歪みを同時に除去できるというものである。この歪み除去装置300の構成は、これまでの各実施形態の歪み除去装置10,70,90等とほとんど同じであるが、第2のフィルタ302の係数G2(m1,m2)の算出方法が異なる。
【0353】
これまでの各実施形態の歪み除去装置10,70,90等では、アンプ303およびスピーカ22を含んむ歪み除去装置の後段側全体で発生する歪みを除去するために第1のフィルタおよび第2のフィルタを設計した。
【0354】
ところが、それらのフィルタを設計した後で、歪みを発生してしまうようなパワーアンプ303のゲインを変更したり、あるいは2次歪みの伝達特性の異なる機種に変更すると、スピーカ22の歪み除去効果が劣化し、場合によってはほとんど効果が無くなってしまうという問題があった。この問題を解決するためには、歪み除去装置の後段側全体の1次の伝達特性および2次歪みの伝達特性を新たに測定し、第2のフィルタの係数を算出しなければならなかった。
【0355】
しかしながら、アンプ303のゲインを調整したり、別の機種に交換した場合に、歪み除去装置の後段側全体の1次の伝達特性および2次歪みの伝達特性を新たに測定するのは、非常に面倒であった。
【0356】
そこで、第20実施形態の歪み除去装置300は、スピーカ22の前段のパワーアンプ303の1次の系304の伝達特性A1(m)および2次歪みの系305の伝達特性A2(m1、m2)を用いて、第2のフィルタ302の特性を補正することにより、新たに測定を行うこと無く、スピーカ22の歪み除去を行うことを可能にしている。
【0357】
次に、第20実施形態の歪み除去装置300における第1のフィルタ301および第2のフィルタ302の伝達特性の決定方法について説明する。
【0358】
まず、周波数領域における表現によって、歪み除去装置300の入力信号X(m)と出力信号W(m)の関係を示すと、これまでの各実施形態の歪み除去装置10,70,90等と同様に(数45)となる。
【0359】
また、2次歪みを発生してしまうパワーアンプ300の入力信号W(m)と出力信号U(m)の関係を示すと、(数49)となる。
【0360】
【数117】
【0361】
A1(m)はアンプ303の1次の系304の伝達関数、A2(m1,m2)はアンプ303の2次歪みの系305の伝達関数、右辺第1項と第2項の加算は加算器18の機能を表わす。
【0362】
次に、スピーカ22への入力信号U(m)とスピーカ22の出力信号Y(m)との関係を示すと(数50)となる。
【0363】
【数118】
【0364】
ここで、(数45)と(数49)と(数50)より、W(m)とU(m)を消去して、X(m)とY(m)の関係を求めると(数51)となる。
【0365】
【数119】
【0366】
(数51)の右辺第1項は、X(m)が第1のフィルタ301とアンプ303の1次の系304とスピーカ22の1次の系23を通った成分、右辺第2項の大括弧内の第1項は、X(m)が第2のフィルタ302とパワーアンプ303の1次の系304とスピーカ22の1次の系23を通った成分、右辺第2項の大括弧内の第2項の中括弧内の第1項は、X(m)が第1のフィルタ301とパワーアンプ303の2次の系305とスピーカ22の1次の系23を通った成分、右辺第2項の大括弧内の第2項の中括弧内の第2項は、X(m)が第1のフィルタ301とパワーアンプ303の1次の系304とスピーカ22の2次の系24を通った成分である。なお、X(m)が第2のフィルタ302とパワーアンプ303の2次の系305とスピーカ22の2次の系24のうち少なくとも2つ以上を通った成分については他の項に比べて微少であるため省略している。
【0367】
スピーカ22の出力信号Y(m)が所望の特性になるようにするためには、まず、(数51)の右辺第1項が所望の特性に等しくなるようにG1(m)を決定する。例えば、Y(m)はX(m)がパワーアンプ303によって増幅された特性、つまりY(m)=A(m)X(m)となることを望むのであれば、G1(m)をスピーカ22の1次の系23の逆特性(G1(m)=1/H1(m))とすれば良い。
【0368】
なお、現実にG1(m)をスピーカ22の1次の系23の逆特性にするには、逆特性(1/H1(m))に遅延特性を掛け合わせておく必要があるが、上の表現では簡単化のため省略している。
【0369】
次に、スピーカ22及びパワーアンプ303で発生する歪みを補償することが出来るような第2のフィルタ302の特性G2(m1、m2)について考える。スピーカ22の出力信号Y(m)に歪み成分が含まれないようにするためには、(数51)の第2項の大括弧内の第1項と第2項が相殺されればよいので、それによりG2(m1、m2)が(数52)のように決定される。
【0370】
【数120】
【0371】
この新たなG2(m1,m2)は、アンプ303が挿入される前のG2(m1,m2)をアンプ303の1次の系304の伝達特性A1(m1)およびA1(m2)およびアンプの2次歪みの系305の伝達特性A2(m1,m2)によって補正したものと考えることができる。よって、音響再生系においてパワーアンプ303が別の機種に変更された場合には、アンプ303の1次の系304の伝達特性A1(m)および2次歪みの系305の伝達特性A2(m1,m2)を用いて、歪み除去装置300の第2のフィルタ302の係数G2(m1,m2)を補正することが可能である。ゆえに、歪み除去装置300の後段側の伝達特性を新たに測定し直す必要無しに、スピーカ22の歪みおよびパワーアンプ303の歪みの除去を行うことができる。
【0372】
(第21実施形態)
図31は、本発明の歪み除去装置である第21実施形態を示すブロック図である。この第21実施形態の歪み除去装置310では、パワーアンプ303のゲインを変更しても、スピーカ22の歪みおよびアンプ303の歪みを除去すことを可能にする。
【0373】
この歪み除去装置310が、第20実施形態の歪み除去装置300と異なるのは、アンプ303の1次の系304の伝達特性A1(m)およびアンプ300の機種を検出する検出装置314と、アンプ303の機種とアンプの1次の系304の特性A1(m)に応じたアンプ303の2次歪みの系305の伝達特性を記憶している記憶装置315と、第2のフィルタ312の係数の特性G2(m1,m2)を更新する更新装置313を具えていることである。
【0374】
アンプ303の1次の系304の伝達特性A1(m)が変更されると、検出装置314は、A1(m)を検出して、それを更新装置313に送る。更新装置313は、検出装置314から送られてきた新たなアンプ303の特性A1(m)に対応した新たなアンプの2次歪みの系305の伝達特性A2(m1,m2)を記憶装置315から読み出す。そして、更新装置313は、新たなA1(m)および新たなA2(m1,m2)を第20実施形態で説明した(数52)に代入して、第2のフィルタ312の係数G2(m1,m2)を算出し、第2のフィルタ312の係数を更新する。
【0375】
これにより、歪み除去装置310の後段に設けられたアンプ303の特性を変更した場合でも、スピーカ22で発生する歪みおよびアンプ303で発生する歪みを除去することができる。
【0376】
なお、現実にG1(m)をスピーカ22の1次の系23の逆特性にするには、逆特性(1/H1(m))に遅延特性を掛け合わせておく必要があるが、上の表現では簡単化のため省略している。
【0377】
(第22実施形態)
図32は、本発明の第22実施形態であるスピーカ用パワーアンプを示すブロック図である。
【0378】
この第22実施形態では、図30の歪み除去装置300又は図31の歪み除去装置310をスピーカ用パワーアンプ320に内蔵している。
【0379】
一般に、スピーカ22でオーディオ信号を再生する場合には、スピーカ22の前段にパワーアンプを接続し、音量の調整を行う。ところが、歪み除去装置の第2のフィルタの係数を決定した後で、パワーアンプのゲインを変更すると、スピーカ22の歪み除去効果が劣化するか、あるいはほとんど効果が無くなってしまう。よって、パワーアンプのゲインを変更したときには、第2のフィルタ262の係数を更新する必要がある。
【0380】
そこで、図30の歪み除去装置300又は図31の歪み除去装置310をパワーアンプ320に内蔵させる。これにより、音響再生系を構成する機器を増やすこと無く、パワーアンプの2次歪みの系305およびスピーカ22において発生する歪みを除去することができる。
【0381】
(第23実施形態)
図33は、本発明の第23実施形態であるスピーカ用マルチプロセッサを示すブロック図である。
【0382】
この第23実施形態では、図30の歪み除去装置300又は図31の歪み除去装置310をスピーカ用マルチプロセッサ330に内蔵している。
【0383】
一般に、業務用スピーカでオーディオ信号を再生する場合には、音源とスピーカ駆動用のパワーアンプとの間にマルチプロセッサと呼ばれる信号処理装置を挿入し、音質の調整を行う。ところが、歪み除去装置の第2のフィルタ312の係数を決定した後で、マルチプロセッサの伝達特性を変更すると、スピーカ22の歪み除去効果が劣化するか、あるいはほとんど効果が無くなってしまう。よって、マルチプロセッサの伝達特性を変更したときには、第2のフィルタ312の係数を更新する必要がある。
【0384】
そこで、図30の歪み除去装置300又は図31の歪み除去装置310をマルチプロセッサ330に内蔵させる。これにより、音響再生系を構成する機器を増やすこと無く、マルチプロセッサの2次歪みの系305およびスピーカ22において発生する歪みを除去することができる。
【0385】
(第24実施形態)
図34は、本発明の第24実施形態であるプロセッシングスピーカシステム340を示している。このプロセッシングスピーカシステム340は、図30の歪み除去装置300又は図31の歪み除去装置310を内蔵しており、この歪み除去装置の出力をスピーカ22に加えている。
【0386】
特に、業務用の分野などにおいては、スピーカ22によって大音量を発生するので、非線形歪みが発生しやすく、図30の歪み除去装置300又は図31の歪み除去装置310を内蔵させ、歪み補償の信号処理を行うことにより、音質を改善することができる。
【0387】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、歪みの要因が明らかでない場合でも、非線形システムに試験信号を入力して歪みの伝達関数を測定し、その測定結果より周波数領域においてヴォルテラフィルタを設計し、周波数領域においてヴォルテラフィルタの畳み込み演算を行うことにより、非線形歪みを除去する。
【0388】
また、非線形システムの1次の伝達特性が遅延を含む場合においても、非線形歪み補償信号を生成する2次元フィルタに前記遅延特性を反映させて、非線形システムの歪みを除去する。
【0389】
また、歪み除去装置において、入力されたオーディオ信号を周波数領域で処理することにより、リアルタイム処理を可能にする。
【0390】
また、リアルタイム処理が可能な歪み除去装置においてオーディオ信号をフレーム分割して取り込む際に、取り込んだ後の畳み込み演算の演算量が最小となるようにフレーム長およびオーバーラップ幅を決定する。
【0391】
また、非線形2次歪みを除去するための歪み補償信号を生成する2次元フィルタにおいて、実質的な畳み込み演算の領域を削減することにより演算量を削減させる。
【0392】
また、歪み除去装置の1次元および2次元フィルタの特性にローパスフィルタ特性あるいはバンドパスフィルタ特性あるいはハイパスフィルタ特性を含ませることにより、再生するオーディオ信号の周波数帯域を制限してある周波数帯域のみ通過させる。これにより、音響再生系に新たにローパスフィルタあるいはバンドパスフィルタあるいはハイパスフィルタなどの装置を追加すること無く、歪み除去装置にそれらの機能を持たせることができる。
【0393】
また、ローパスフィルタあるいはバンドパスフィルタあるいはハイパスフィルタの機能を持たせた歪み除去装置において、歪み除去装置内の2次元のフィルタにおける畳み込み演算の領域を削減することにより、演算量を削減させる。
【0394】
また、歪みを発生するスピーカの再生帯域がある周波数帯域に制限されている場合に、そのスピーカの再生帯域外に発生する歪みを打ち消す歪み補償信号を歪み除去装置から出力せずに済む。これにより、歪み補償信号がスピーカの再生帯域外の信号となってしまう場合に、その歪み補償信号を無理矢理スピーカに入力されることが避けられる。
【0395】
また、スピーカの再生帯域外の歪み補償信号が出力されないように設計された歪み除去装置において、歪み除去装置内の2次元のフィルタにおける畳み込み演算の領域を削減することにより、演算量を削減させる。
【0396】
また、歪み除去装置の後段側にグラフィックイコライザなどのプロセッサを挿入した場合においても、スピーカで発生する歪みを除去することが可能となる。一般に、歪み除去装置内の1次元および2次元フィルタの係数を決定した後に、歪み除去装置の後段側に新たにグラフィックイコライザなどを挿入すると、歪み除去効果が劣化するが、本発明により、歪み除去プロセッサ内の係数を補正することにより、それまでと同等の歪み除去効果を得る事ができる。
【0397】
また、歪み除去装置の後段側にグラフィックイコライザなどのプロセッサがある音響再生系において、グラフィックイコライザの特性を変化させた場合に、歪み除去装置内のフィルタ係数が自動的に更新され、常にスピーカで発生する歪みが除去される。
【0398】
また、スピーカで発生する歪みを除去するとともに、歪み除去装置の後段側に設置されているスピーカ用パワーアンプで発生する歪みをも除去することが可能となる。
【0399】
また、歪み除去装置の後段側に設置されているスピーカ用パワーアンプで発生する歪みをも除去することが可能な歪み除去装置において、パワーアンプのゲインを変えた場合に、歪み除去装置内のフィルタ係数が自動的に更新され、常にスピーカの非線形歪み除去を行うことができる。
【0400】
また、演算量を削減するために歪み除去装置内の2次元フィルタの畳み込み演算領域を削減する場合に、その2次元フィルタの係数を決定するのに必要なスピーカの歪みの伝達関数の測定ポイント数を削減し、測定時間を短縮することを可能とする測定方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【図2A】第1実施形態の歪み除去装置のフレーム分割装置におけるフレーム分割の方法を示す時間領域のフレーム図である。
【図2B】フレーム合成装置におけるオーディオ信号の連結の方法を示す時間領域のフレーム図である。
【図2C】第1の記憶装置に格納する係数を算出する過程で、時間領域で行う操作の一部を示す図である。
【図2D】第2の記憶装置に格納する2次元の係数の算出する過程で、時間領域で行う操作の一部を示す図である。
【図3A】第2実施形態の歪み除去装置内の2次元フィルタの演算を行う乗加算器において実質的に演算すべき2次元フィルタの領域を表わした図である。
【図3B】2次元フィルタのタップが対角線を対称軸とした線対称な特性であることを示す図である。
【図3C】2次元フィルタのタップが、タップの中心点を点対称の中心点とした共役関係にあることを示す図である。
【図3D】第2実施形態の歪み除去装置内の2次元フィルタにおける畳み込み演算の結果が斜線部とそれ以外の領域で共役関係にあることを示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【図5】本発明の第4実施形態であるプロセッシングスピーカシステムを示すブロック図である。
【図6】本発明の第5実施形態のマルチプロセッサを示すブロック図である。
【図7】本発明の第6実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【図8A】ローパスフィルタ特性を持った第7実施形態の歪み除去装置の第2のフィルタにおいて実質的に演算すべき2次元フィルタの領域の第1の例を表わした図である。
【図8B】ローパスフィルタ特性を持った第7実施形態の歪み除去装置の第2のフィルタにおいて実質的に演算すべき2次元フィルタの領域の第2の例を表わした図である。
【図9】本発明の第8実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【図10A】バンドパスフィルタ特性を持った第9実施形態の歪み除去装置の第2のフィルタにおいて実質的に演算すべき2次元フィルタの領域の第1の例を表わした図である。
【図10B】バンドパスフィルタ特性をも持った第9実施形態の歪み除去装置の第2のフィルタにおいて実質的に演算すべき2次元フィルタの領域の第2の例を表わした図である。
【図11】本発明の第10実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【図12】ハイパスフィルタ特性を持った第11実施形態の歪み除去装置の第2のフィルタにおいて実質的に演算すべき2次元フィルタの領域を表わした図である。
【図13】本発明の第12実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【図14】出力される信号を非線形システムの再生帯域カットオフ周波数以下に制限するために、第12実施形態の歪み除去装置に具えられた2次元フィルタにおいて実質的に畳み込み演算をすべき領域を表わした図である。
【図15】出力される信号を非線形システムの再生帯域カットオフ周波数以下に制限する第12実施形態の歪み除去装置において演算量を削減するために、該歪み除去装置に具えられた2次元フィルタにおいて実質的に畳み込み演算をすべき領域を表わした図である。
【図16】出力される信号を非線形システムの再生帯域カットオフ周波数以下に制限する第12実施形態の歪み除去装置において2次元フィルタのタップを決定する際に、非線形システムの2次歪みの伝達関数のうち測定すべき領域を表わした図である。
【図17】本発明の第13実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【図18】出力される信号を非線形システムの再生帯域内に制限するために、第13実施形態の歪み除去装置に具えられた2次元フィルタにおいて、実質的に畳み込み演算をすべき領域を表わした図である。
【図19】出力される信号を非線形システムの再生帯域内に制限する第13実施形態の歪み除去装置において演算量を削減するために、該歪み除去装置に具えられた2次元フィルタにおいて、実質的に畳み込み演算をすべき領域を表わした図である。
【図20】出力される信号を非線形システムの再生帯域内に制限する第13実施形態の歪み除去装置において2次元フィルタのタップを決定する際に、非線形システムの2次歪みの伝達関数のうち測定すべき領域を表わした図である。
【図21】本発明の第14実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【図22】出力される信号を非線形システムの再生帯域内に制限するために、第14実施形態の歪み除去装置に具えられた2次元フィルタにおいて実質的に畳み込み演算をすべき領域を表わした図である。
【図23】出力される信号を非線形システムの再生帯域内に制限する第14実施形態の歪み除去装置において演算量を削減するために、該歪み除去装置に具えられた2次元フィルタにおいて実質的に畳み込み演算をすべき領域を表わした図である。
【図24】出力される信号を非線形システムの再生帯域内に制限する第14実施形態の歪み除去装置において2次元フィルタのタップを決定する際に、非線形システムの2次歪みの伝達関数のうち測定すべき領域を表わした図である。
【図25】本発明の第15実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【図26】本発明の第16実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【図27】本発明の第17実施形態であるマルチプロセッサを示すブロック図である。
【図28】本発明の第18実施形態であるスピーカ用パワーアンプを示すブロック図である。
【図29】本発明の第19実施形態であるプロセッシングスピーカシステムを示すブロック図である。
【図30】本発明の第20実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【図31】本発明の第21実施形態である歪み除去装置を示すブロック図である。
【図32】本発明の第22実施形態であるスピーカ用パワーアンプを示すブロック図である。
【図33】本発明の第23実施形態であるスピーカ用マルチプロセッサを示すブロック図である。
【図34】本発明の第24実施形態であるプロセッシングスピーカシステムを示すブロック図である。
【符号の説明】
11 A/D変換装置
12 フレーム分割装置
13 フーリエ変換装置
14 乗算器
15 第1の記憶装置
16 乗算加算器
17 第2の記憶装置
18 加算器
19 逆フーリエ変換装置
20 フレーム合成装置
21 D/A変換装置
22 スピーカ
27 第3の記憶装置
50 プロセッシングスピーカシステム
60 マルチプロセッサ
10,70,90,110,130,170,210,250,260,300,310, 歪み除去装置
71,91,111,131,171,211,251,261,301,311 第1のフィルター
72,92,112,132,172,212,252,262,302,312 第2のフィルター
133 ローパスフィルター
173 バンドパスフィルター
213 ハイパスフィルター
253 プロセッサ
Claims (6)
- スピーカと、歪み除去装置との間にプロセッサが設けられたプロセッシングスピーカシステムにおいて、前記プロセッシングスピーカシステムに入力される信号を発生する信号源と前記プロセッサの信号入力部との間に挿入され、前記プロセッシングスピーカシステムの前記スピーカで発生する歪み成分補償の信号処理を行う歪み除去装置であって、
前記信号源からの信号に対して1次元の畳み込み演算を行う第1のフィルタと、
前記信号源からの信号に対して2次元の畳み込み演算を行う第2のフィルタと、
前記第1のフィルタの出力信号と前記第2のフィルタの出力信号とを加算する加算器とを具備し、
前記信号源からの入力信号を周波数領域で表現した値をX(m)とし、
mを周波数のポイントを表わす整数値とし、
m1およびm2を前記整数値mに対してm=m1+m2またはm=|m1−m2|を満足する値とし、
H1(m)を前記プロセッシングスピーカシステムの前記スピーカにおける1次の系の伝達特性を周波数領域で表現した値とし、
H2(m1,m2)を前記プロセッシングスピーカシステムの前記スピーカにおける2次の高調波歪みおよび混変調歪みの伝達特性を2次元の周波数領域で表現した値とし、
E(m)を前記プロセッサの伝達特性を周波数領域で表現した値とし、
G1(m)を前記第1のフィルタの伝達特性を周波数領域で表現した値とし、
G2(m1,m2)を前記第2のフィルタの伝達特性を周波数領域で表現した値とすると、
前記第2のフィルタは、タップ長N×Nの2次元のディジタルフィルタであって、
- 前記プロセッサの伝達特性E(m)を検出する検出部と、
検出された前記伝達特性E(m)を用いて、前記第2のフィルタの伝達特性G2(m1,m2)を更新するタップ更新部とを更に具備することを特徴とする請求項1に記載の歪み除去装置。 - スピーカと、歪み除去装置との間にプロセッサが設けられたプロセッシングスピーカシステムにおいて、前記プロセッシングスピーカシステムに入力される信号を発生する信号源と前記プロセッサの信号入力部との間に挿入され、前記プロセッシングスピーカシステムの前記スピーカおよび前記プロセッサで発生する歪み成分補償の信号処理を行う歪み除去装置であって、
前記信号源からの信号に対して1次元の畳み込み演算を行う第1のフィルタと、
前記信号源からの信号に対して2次元の畳み込み演算を行う第2のフィルタと、
前記第1のフィルタの出力信号と前記第2のフィルタの出力信号とを加算する加算器とを具備し、
前記信号源からの入力信号を周波数領域で表現した値をX(m)とし、
mを周波数のポイントを表わす整数値とし、
m1およびm2を前記整数値mに対してm=m1+m2またはm=|m1−m2|を満足する値とし、
H1(m)を前記プロセッシングスピーカシステムの前記スピーカにおける1次の系の伝達特性を周波数領域で表現した値とし、
H2(m1,m2)を前記プロセッシングスピーカシステムの前記スピーカにおける2次の高調波歪みおよび混変調歪みの伝達特性を2次元の周波数領域で表現した値とし、
A1(m)を前記プロセッサの1次の系の伝達特性を周波数領域で表現した値とし、
A2(m1,m2)を前記プロセッサの2次の系の伝達特性を周波数領域で表現した値とし、
G1(m)を前記第1のフィルタの伝達特性を周波数領域で表現した値とし、
G2(m1,m2)を前記第2のフィルタの伝達特性を周波数領域で表現した値とすると、
前記第2のフィルタは、タップ長N×Nの2次元のディジタルフィルタであって、
ことを特徴とする歪み除去装置。 - 前記プロセッサの伝達特性A1(m)を検出する検出部と、
あらかじめ測定された前記プロセッサの歪みの伝達特性A2(m1,m2)を記憶する記憶部と、
前記検出部の出力信号がおよび前記記憶部からの出力信号が入力され、前記第2のフィルタの伝達特性G2(m1,m2)を更新するタップ更新部とを更に具備することを特徴とする請求項3に記載の歪み除去装置。 - 請求項1から4のいずれかに記載の歪み除去装置を搭載したマルチプロセッサであって、
前記信号源と前記スピーカとの間に挿入されることを特徴とするマルチプロセッサ。 - 請求項1から4のいずれかに記載の歪み除去装置を搭載したアンプであって、
前記信号源と前記スピーカとの間に挿入され、前記スピーカを駆動することを特徴とするアンプ。
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