JP3785036B2 - 積載装置のワーク受け - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱処理される液晶ガラス基板から成る平板状のワークを多段に載せる積載装置のワーク受けに関し、特に、熱処理温度が500℃程度の高温熱処理装置に使用される耐熱カセットのワーク受けとして好都合に利用される。
【0002】
【従来の技術】
液晶ガラス基板からなるワークは、従来、例えば特開平6−66715号、10−232089号、10−132456号公報等の熱処理装置に見られるように、熱処理室内に設置され昇降されるゴンドラや循環移動するカセットや昇降支持替えされる基板移載装置等のワーク受けに載せられて熱処理されている。そしてこの場合、ワークには液晶回路が形成されているため、これを傷つけないように支持接触面を最小にするべく、ワークをその幅方向の両端の4点又は6点程度の少ない位置で局部的に支持するワーク受け構造が一般に採用されている。
【0003】
この構造では、通常ワーク支持位置に支持棒を立設してこれに各段のワーク受けをネジ等で取り付け、その先端部分にワークを載せるようにしている。そのため、ワークを受ける部材が多段×多点の多数個になり、ワーク受けの清掃に時間がかかると共に、ワーク受けをカセットに装着した状態で清掃するためその作業が難しかった。
【0004】
一方、液晶ガラス基板のワークは、従来では通常230℃程度の温度で熱処理されていて、ワーク受けには通常樹脂材が使用されていたが、最近では、これよりも十分高い温度である500℃の高温用熱処理装置が出現し、この熱処理装置に使用するカセットのワーク受けには、ステンレス等の耐熱材が使用されるようになった。この場合、従来の平面状の狭い受け面を持つ多点支持式のワーク受け構造であっても、ワーク受けの端の部分は曲面状に面取りされているため、ワーク受けの角がワークに当たるようなことはなく、ワークにキズ付き等の問題は生じないと考えられていた。その結果、このような高温熱処理においても、これまでの通常熱処理温度のワーク受けと同じ多点支持式ワーク受けが採用されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、500℃程度の高い温度になればガラスの性状が多少変化したり、又、ステンレスやセラミック等の耐熱性材料が従来用いられていた樹脂材よりも相当硬度が高いことから、従来通りの多点状支持構造では、ガラスにキズが付く可能性が高くなっているおそれがある。そして発明者等は、実験によってこのようなキズの発生を確認した。
【0006】
一方、最近ではガラス基板が薄形化してきていて、ワークのたわみ軽減等のために、多点支持式ワーク受けではワーク受けのワーク中心方向への張り出し長さを長くする傾向にある。その場合には、ワーク受けがガラス基板の実使用範囲又はその近傍まで入り込むことになり、ワーク受けの先端部分によってワークにキズが付くと、製品が不良品になるため、そのようなキズ付きが許容されない状況になっている。
【0007】
そこで本発明は、ワーク受け部の清掃作業が容易且つ迅速にできる共に、通常の温度よりも十分高い温度で熱処理する熱処理装置に使用される場合であっても確実にワークのキズ付きを防止でき、不良品の発生をなくしてワークの処理能率も上げることができるワーク受けを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、請求項1の発明は、熱処理される液晶ガラス基板から成る平板状のワークを多段に載せるように主要構造部分として支柱を備えた積載装置のワーク受けにおいて、
前記ワークを載せるときにワークの進む方向に直角の方向であるワーク幅方向の両側に設けられていて前記進む方向に長尺状に形成された受け部材と、該受け部材を少なくとも2箇所で支持するように前記支柱に取り付けられ前記ワーク幅方向に突出するように設けられた支持部材と、を有し、前記支持部材は前記受け部材が嵌め込まれて前記両側の一定位置で支持されるように構成された支持部と該支持部の断面積より大きい断面積を持ち該支持部の自由端側を形成しているつば状部とを備え、前記受け部材は前記つば状部を通過可能なように前記ワーク幅方向に貫通した穴を備えていて、前記受け部材は前記穴が前記つば状部を通過して前記支持部に嵌め込まれたときに前記ワークを支持可能なように形成されている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明の特徴に加えて、前記受け部材は通常の熱処理温度より十分高い温度に耐えられる耐熱性材料から成ることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1及び図2は本発明を適用したワーク受け及びこれを備えた耐熱カセットの構造例を示す。
ワーク受けは、熱処理される液晶ガラス基板から成る平板状のワークWを多段として例えば図示の如く25段に載せる積載装置であるカセット1の一部分を構成し、受け部材としての丸軸2、その支持部材3、等を有する。丸軸2は、ワークWを載せるときにその進む方向であるY方向に断面積に対して長さが十分長い長尺状として本例ではワークWの長さとほぼ同じ長さに1本に形成されていて、Y方向に直角の方向であるワーク幅方向を成すX方向の両側に設けられている。支持部材3は、丸軸2を少なくとも2箇所として本例では2箇所で支持するようにカセット1に取り付けられている。なお、丸軸2は通常長さに対して十分な曲げ剛性を持ち殆ど撓まないため、通常2箇所で支持される。
【0012】
支持部材3は、丸軸2が嵌め込まれてX方向の一定位置で支持されるように構成されていて、本体部分をなす大径軸部31、これより小径になっている支持部としての小径軸部32、その断面積より大きい断面積を持つように小径軸部32より大径になっていてその自由端側を形成しているつば状部であるつば状ストッパ33、大径軸部31の根元側にあって支柱13にねじ込まれるねじ部34、締め付け用ナット部35、等を備えている。丸軸2は支持部材3のつば状ストッパ33を通過可能なようにこれより少し大径になっていてX方向に貫通した穴21を有する。この穴21は、寸法誤差等に対応可能なように長穴になっているが、この中に位置の固定された支持部材3の小径軸部32を入れることにより、丸軸2のY方向への動きを一定範囲内に規制することができる。
【0013】
丸軸2及び支持部材3は、これらを組み合わせる構造として図1のものとは異なった種々な構造に形成され得る。図3は、支持部材3の支持部を、丸軸2を乗せてX方向の一定位置で支持できるように切欠き部36にした例を示す。図4では、丸軸2側にも切欠き部22を設けている。なお、受け部材としては、丸軸2に限らず、ワークWが載置されて接触する部分がある程度の曲率を持つ曲面状になっていれば、基本的な断面形状は丸形に限らず四角形状や三角形状等の適当な形状であってもよい。
【0014】
このような丸軸2及びその支持部材3を備えたワーク受けを装備したカセット1は、上下の枠板11、12、これらに両端を固定された本例では8本の前記支柱13、等を主要構造部分として組み立てられている。上の枠板11には重量軽減等のためにそれぞれ大きな開口11aが明けられている。図示していないが下の枠板12についても同様である。
【0015】
8本の支柱13のうちの中間のもの133 及び134 の両側で合計4本の支柱には、支持部材3がそれぞれ上下方向に25段に取付けられていて、ワークWは、これらの片側2本の支持部材3で2箇所で支持された丸軸2上に25段に載せられる。8本の支柱13は、Y方向及びその反対のY´方向の両端の支柱131 、132 及び前記中間の支柱133 及び134 で構成されていて、両端の支柱131 、132 及び中間の支柱133 及び134 にはそれぞれ、Y、Y´方向のワークWの動きを規制するワーク止め板14、15及びワークWのX方向の位置を案内するサイドガイド16が取り付けられている。なお、ワーク止め板14、15を図示の如くX方向において丸軸2の中心位置まで張り出した構造にすれば、丸軸2のY、Y´方向の位置を規制することもできる。
【0016】
以上のようなワーク受けを装備したカセット1は、熱処理室内でゴンドラとして昇降するもの、一定位置に固定配置されているもの、熱処理室に出し入れられるもの、等として種々の構造の熱処理装置に使用される。図5は本発明のワーク受けを装備したカセットを取り扱えるこのような熱処理装置の一例であるクリーンオーブンの概略構造の一例を示す。
【0017】
本例のクリーンオーブン4は、ワークWを230℃程度の通常温度、350℃程度の中間高温、又は500℃程度の高温等の熱処理すべき温度で処理可能な装置であり、熱処理室41、その下方に配置されている空調室42、これらを囲う断熱壁43、扉44、熱処理する熱風の流れ方向の順に設けられている加熱器45、モータ46aで回転駆動される送風機46、熱処理室急冷用の冷却器47、高性能フィルタ48、等で構成されている。ワークWのうち低温ポリシリコンTFTやプラズマディスプレイ等は、500℃で高温熱処理される液晶ガラス基板の一例である。
【0018】
クリーンオーブン4の熱処理室41内には、通常室外でワークWが積載されたカセット1が入れられて熱処理される。カセット1はワークWが熱処理されると室外に出される。このときには冷却器47で熱処理室41内が急冷される。なお、本発明のワーク受けは、例えばゴンドラ昇降式熱処理装置のように、常時熱処理室内にあるカセットに使用されてもよいことは勿論である。
【0019】
丸軸2の材料は、ワークWを熱処理するときの温度に対応して選択される。即ち、通常の熱処理温度である230℃程度であれば、従来通り樹脂材を使用し、熱処理温度がこれより十分高い温度である350℃や500℃になると、そのような温度に耐えられるように、ステンレス鋼、セラミック、石英等の耐熱性材料を使用することになる。このときには、熱処理室41を構成する部材の材料も一般に耐熱性のあるステンレス鋼が使用される。
以上のようなワーク受けは、カセット1に装備され、ワークWを積載してカセットと共にクリーンオーブン4に入れられ、熱処理工程において以下のような機能を発揮する。
【0020】
ワークWは、カセット1に装備された受け部材である両側の25段の丸軸2の上に、ロボットハンド等によって本例では熱処理室の外でY方向から載せられる。このとき及びこれ以後に熱処理室内に出し入れされるときにおいても、カセットのワーク止め14、15及びサイドガイド16により、ワークWが丸軸2上に確実に支持されて一定範囲内の位置に保持される。
【0021】
カセット1が熱処理室41内に入れられると、空調室42内の諸機器が運転され、ワークWが所定の熱処理温度で熱処理される。この場合、熱処理温度が500℃にもなると、ガラスの硬度が下がるなどガラスの性状が多少変化したり、又、ワーク受けとして従来用いられていた樹脂材よりも硬いステンレスやセラミック等の耐熱性材料が用いられるため、送風機46やそのモータ46a等の動力機械によってもたらされる熱処理室41の振動等により、液晶ガラス基板から成るワークWの表面がキズ付く可能性が高くなっている。
【0022】
しかしながら、本発明の丸軸2によってワークWを支持すれば、従来の点支持状のワーク受けに較べて、ワークWとその受け面との間の接触面圧が大幅に小さくなっているため、ワークWのキズ付きを確実に防止することができる。即ち、図6に示す如く、本発明のワーク受けでは、その長さをL、円と直線との接線で理論的には点であるが実際には僅かに生ずる接線接触幅をδwとすれば、ワークWと丸軸2との接触面積はA1 =L×δwとなる。
【0023】
これに対して従来のワーク受けでは、仮に本発明の丸軸2を除去して片側4本の支持部材3でその載置部の断面を角形にしてこれでワークWを受けたとすれば、図7(a)に示すそのY方向の長さsの4箇所の合計長さは、例えば図1に示すようにL/10程度になる。一方、ワークWにたわみが生ずる等によってワーク下面とその受け面とを断面で見て長い線状に沿わせることはできないため、同図(b)に示す如く実際に接触する長さは結局上記δwと同程度になる。従って、その接触面積はほぼA´=L×δw/10となり、本発明のワーク受けに較べて大幅に小さくなる。その結果、接触面圧が10倍程度になり、キズができやすい状態になる。
【0024】
これに対して前記の如く本発明のワーク受けは極めて安全にできている。従って、例えば熱処理中に500℃の環境において送風機の振動等によってカセット及びワークが振動したり、振動環境複合試験を行うようなときに、ワーク受けにワークWの自重の数倍の接触荷重が仮に衝撃的にかかるようなことがあっても、本発明のワーク受けでは、ワークにキズ付きの生ずるおそれが全くなくなる。
【0025】
このような状況により、発明者等は、本発明を適用したワーク受けと従来のワーク受けとを用いて、500℃の熱処理温度を含んでワークへのキズ付きの有無を調べる実験を行い、下表のような結果を得た。
【0026】
【表1】
上記実験において、▲1▼と▲2▼のステンレス丸棒及びセラミック丸棒を丸軸2とし、その2箇所を支持部材3で受けてワークWを支持したときの状態を図8(a)に示す。又、▲3▼及び▲4▼の石英ガラス及びステンレスピンのワーク受け3´によってワークWを7点受けしたときの状態及びワーク受け3´の側面形状をそれぞれ(b)及び(c)に示す。これらの図におけるX1 、X2 、Y1 、Y2 は、表中の丸棒のズレ量の方向を示す。
【0027】
実験種類Cの振動発生機を用いた試験は、振動発生機単体の上にワークWの入ったカセット1を乗せて実施されている。この試験では、振動発生機によって全周波数範囲でXYZ方向にそれぞれ0.35、0.32、3.7m/s2 の加速度及び22、20、405μmの振幅をカセット1に発生させた。この振動によって丸棒にはズレが生じている。
【0028】
以上の実験結果によれば、振動発生機でカセットを強制的に振動させたりクリーンオーブン内を500℃の高温条件にした場合でも、本発明の丸棒使用のワーク受けではワークWに全くキズの発生が無かった。なお丸棒のワーク受けでは、送風機による振動や特に振動発生機使用の振動により、ワーク受け上のワークWに位置ズレが生じた。しかし、クリーンオーブンでは実際にはカセットに振動を与えるような試験をすることはなく、又、このような位置ズレは、カセットのワーク止め14、15及びサイドガイド16によって規制され、問題にはならない。なお、図1(c)に示す如く、丸軸2をワーク止め15の近傍まで延設してその間隔cを十分小さくして、ワークWに位置ズレが生じても、丸軸2の軸端部でワークWにキズ付きが生ずる可能性をなくしている。図示していないがワーク止め14側も同様である。
【0029】
一方、従来通りの多点(7点)受けのワーク受けでは、500℃の条件で石英ガラス及びステンレスの何れの材料の場合にもキズが発生した。図9及び図10は、図8(b)及び(c)に示す石英ガラス板の多点支持ワーク受け使用時に、ワーク受け3´の先端受け面位置Pに対応するワークWの裏面位置に生じたキズKの状態を例示した図である。キズKは白い線で囲った中に示されているものである。これらのキズKは、図8(b)のワーク受けのうちの3´a及び3´bのものである。なお図はデジタルマイクロスコープで約23倍の大きさに写したものであり、キズは何れもワークWの端面Weから3mm程度内側に入った所にできた2mm程度の長さのものである。キズの状態は目視観察でも確認されている。なお、図ではキズのように白く写った部分が無数に見られるが、これらはガラスのキズではなくガラスを置いたときのバックシートのものである。
以上の実験から、500℃の高温条件でクリーンオーブンにある程度の振動があっても、本発明を採用した丸軸2のワーク受けでは、ワークWへのキズ付きを完全に防止できることが確認された。
【0030】
なお、丸軸2は、その穴21の部分が支持部材3のつば状ストッパ33を通過して小径軸部32に嵌まって落ち込んでいるので、支持部材3に固定されていないが、カセット1に振動等の動きが生じても、穴21がつば状ストッパ33を越えて支持部材3から外れるおそれは全くない。図3又は図4のような構造のワーク受けでは、丸軸2又はその切欠き部22が支持部材3の切欠き部36に嵌まり込んでいるだけであるから、両者の結合状態が多少外れやすい傾向になるが、振動発生機を使用しない通常のクリーンオーブン等では、丸軸2が支持部材3から外れて脱落するようなおそれはない。
【0031】
ワークWの熱処理が終了すると、加熱器45がオフになり、熱処理室急冷用の冷却器47が運転され、熱処理室41内が十分冷却されると、扉44が開けられてカセット1が取り出され、熱処理すべきワークを積載した新たなカセット1が再び熱処理室41に入れられ、以上と同じ方法で熱処理される。このようなワークWの高温熱処理をある程度の期間実施すると、ワーク受けを構成する丸軸2に微量の汚れが付着することがある。そして、液晶ガラス基板からなるワークの熱処理工程ではクリーンな環境及びワーク処理条件が厳しく要求されるので、カセット1は通常2〜3週間程度に一度清掃される。又、ワーク受けは熱変形やワークハンドリング時の損傷等によって交換されることもある。
【0032】
そのようなときには、支持部材3の小径軸部32に嵌まって落ち込んでいる穴21の形成された丸軸2を人が手で少し持ち上げ、穴21とつば状ストッパ33とを位置合わせすることにより、工具を使用することなく、丸軸2を支持部材3から容易に取り外すことができる。そして、カセット1の外部の広い操作性のよい場所で丸軸2を容易に短時間で十分に清掃することができる。又、必要時に丸軸2を容易に交換することができる。なお、図3及び図4のワーク受けでは、支持部材3から丸軸2を取り外す操作は一層容易である。
【0033】
これに対して従来のワーク受けでは、本例の装置の支持部材3に相当する受け部材のワークWの載せられる部分を清掃する必要があるが、その数が丸軸2の数倍になり多いと共に、狭いカセット内で作業する必要があるため、清掃作業がやりにくく時間がかかると共に清掃の程度も悪くなっていた。なお、支持部材をカセットから取り外して清掃するとすれば、工具が必要なると共に、取外し作業が更に大変になる。
【0034】
【発明の効果】
以上の如く本発明によれば、請求項1の発明においては、積載装置に設けられた支持部で支持される長尺状の受け部材がワークの幅方向の両側に設けられているので、受け部材の清掃や交換が容易になる。
【0035】
即ち、支持部材は積載装置の構造部分にネジ止め等で固定的に取り付けられ、これを構造部材から取り外すことは容易でないと共に、受け部材を少なくとも2箇所で受けるためその数は少なくとも受け部材の2倍になる。ところが、清掃や交換が必要になるのは主としてワークを載せてこれと接触する受け部材であるので、その数が少ないため、その分だけ清掃や交換が容易になる。
【0036】
又、受け部材を長尺状にして支持部材で支持するようにするので、受け部材を支持部材に固定的に取り付けてもよいが、通常その必要性は少なくなる。即ち、受け部材と支持部材とを嵌合関係に結合する等により、熱処理工程中では両者の結合が外れず、清掃や交換のときには人が手で扱うことによって容易に両者の結合を分離できる構造にすることができる。その結果、工具等を使用することなく、清掃や交換の必要のある受け部材を支持部材から容易に取り外して、積載装置の外の広くて操作性のよい場所において、これを容易に短時間で十分に清掃することができる。
【0037】
更に、ワークの進む方向に長尺状の受け部材でワークを支持すれば、従来の点支持状のワーク受けに較べて、ワークと接触する接触面積を大幅に増加させ、ワークの接触面圧を大幅に低減させることができる。その結果、振動や高温環境下においても熱処理時のワークのキズ付きを確実に防止し、不良製品を無くして熱処理工程の能率を上げることができる。
【0038】
又、上記に加えて、支持部材に受け部材を嵌め込んで両側の一定位置で支持できる支持部とこの部分より大きい断面積を持ちその自由端側を形成しているつば状部とを設けると共に、受け部材にこのつば状部を通過可能なようにワーク幅方向に貫通した穴を設けるので、受け部材の穴を支持部材のつば状部を通過させて支持部に嵌脱させることにより、受け部材を支持部材に容易に着脱することができる。
【0039】
一方、受け部材が支持部材に装着されワークを受ける状態にしたときには、受け部材の穴がつば状部より大きくても、受け部材の穴がこれより断面積の小さい支持部材の支持部に嵌まり込むので、この穴がつば状部を越えることはなく、受け部材と支持部材との結合状態を確実に維持することができる。即ち、受け部材が支持部材から外れて脱落するためには、仮に受け部材が支持部材に2箇所だけで支持されていたとしても、2箇所の受け部材の穴が同時に2箇所の支持部材のつば状部を越えるなければならないので、積載装置に振動等があってもそのようなおそれは全くない。
その結果、ワーク受けの安全性を確保しつつ、受け部材を支持部材に容易に着脱できるようにして、清掃や交換時の取り扱い性をよくすることができる。
【0040】
請求項2の発明においては、請求項1の発明に加えて、受け部材を通常の熱処理温度である230℃程度より十分高い温度として例えば500℃に耐えられる耐熱性材料にするので、ワークを高温で処理可能なワーク受けを提供することができる。そして、受け部材を上記のような長尺状にするので、ステンレス等の硬い材料であっても、ワークとの接触面積が十分大きくなっているため、接触面圧を下げて高温又はこれに加えて振動環境下においても、ワークへのキズの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したワーク受けの各部分の構造例を示し、(a)は平面図、(b)は縦断面図、(c)は平面図、(d)は正面図、(e)は後面図であり、(a)及び(b)では拡大して示している。
【図2】上記ワーク受けを装備したカセットの構造例を示し、(a)は平面図で(b)は正面図である。
【図3】丸軸と支持部材との結合関係の他の例を示す正面図である。
【図4】丸軸と支持部材との結合関係の更に他の例を示し、(a)及び(b)はそれぞれ(b)及び(a)のa−a線及びb−b線断面図である。
【図5】本発明のワーク受けを装備したカセットを用いて熱処理する熱処理装置の一例であるクリーンオーブンの側面図である。
【図6】上記ワーク受けの丸軸のワーク支持状態を示し、(a)は正面図で(b)は側面図である。
【図7】従来のワーク受けのワーク支持状態を示し、(a)は平面図で(b)は正面図である。
【図8】(a)及び(b)はそれぞれ本発明及び従来のワーク受けを用いた実験時のワーク支持状態を示す平面図で(c)は従来のワーク受けの正面図である。
【図9】従来のワーク受けでワークに生じたキズの一例を示す説明図である。
【図10】従来のワーク受けでワークに生じたキズの他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 カセット(積載装置)
2 丸軸(受け部材)
3 支持部材
21 穴
32 小径軸部(支持部)
33 つば状ストッパ(つば状部)
W ワーク
X X方向(直角の方向、ワーク幅方向)
Y Y方向(ワークの進む方向)
Claims (2)
- 熱処理される液晶ガラス基板から成る平板状のワークを多段に載せるように主要構造部分として支柱を備えた積載装置のワーク受けにおいて、
前記ワークを載せるときにワークの進む方向に直角の方向であるワーク幅方向の両側に設けられていて前記進む方向に長尺状に形成された受け部材と、該受け部材を少なくとも2箇所で支持するように前記支柱に取り付けられ前記ワーク幅方向に突出するように設けられた支持部材と、を有し、前記支持部材は前記受け部材が嵌め込まれて前記両側の一定位置で支持されるように構成された支持部と該支持部の断面積より大きい断面積を持ち該支持部の自由端側を形成しているつば状部とを備え、前記受け部材は前記つば状部を通過可能なように前記ワーク幅方向に貫通した穴を備えていて、前記受け部材は前記穴が前記つば状部を通過して前記支持部に嵌め込まれたときに前記ワークを支持可能なように形成されている、ことを特徴とするワーク受け。 - 前記受け部材は通常の熱処理温度より十分高い温度に耐えられる耐熱性材料から成ることを特徴とする請求項1に記載のワーク受け。
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