JP4071594B2 - ガラス基板用熱処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガラス基板用熱処理装置に関し、例えば、液晶パネル用のガラス基板や、同液晶パネルに取り付けられるカラーフィルター用のガラス基板の焼成や乾燥などに用いられる熱処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、配向膜や偏向膜が形成された液晶ディスプレイ(LCD)用のガラス基板Bや同LCDに用いられるカラーフィルター(CF)用のガラス基板Bなどの焼成や乾燥に用いる電子具品用の熱処理装置として、図10に示すような熱の放射伝導を利用した遠赤外線放射加熱方式の熱処理装置Xがあった(特許文献1参照。)。
【0003】
上記熱処理装置Xにおいては、内周面に断熱材(図示せず)を貼設した箱型の炉本体101を設けて、同炉本体101の内部に、赤外線放射板111により面状ヒータ112を両側から挟んで形成した面状ヒータ複合体を、炉本体101の側壁101aから所定の間隔を空けて立設していた。
【0004】
また、かかる立設した面状ヒータ複合体を縦面状ヒータ102とすると、対向する左右側の縦面状ヒータ102,102の一方には給気孔103を、他方には排気孔104を複数穿設しており、かかる給・排気孔103,104と方向が対応するように、前記炉本体101の対向する左右側壁101a,101aの一方には給気口105を、他方には排気口106を設けていた。
【0005】
また、対向する左右側の縦面状ヒータ102,102には、それぞれ前後方向に伸延する正面視コ字状のヒータ支持体107を多段に配設して、同ヒータ支持体107によって水平に寝かせた状態の面状ヒータ複合体(以下、横面状ヒータ108という)を挿脱自在に支持し、各横面状ヒータ108,108間にガラス基板加熱空間tを形成していた。
【0006】
そして、各ガラス基板加熱空間tにおいては、ガラス基板Bを水平に支持するための石英管109を前後方向に伸延させて、同石英管109を横面状ヒータ108の上方に配設した石英管支持体110により支持していた。
【0007】
特に、横面状ヒータ108は自重によりヒータ支持体107に密着しているので、各ガラス基板加熱空間tの間に空気の流通がほとんど生じず、各ガラス基板加熱空間tの内部の温度が均一に保たれており、給・排気口105,106、及び給・排気孔103,104を介して炉本体101の内部の空気を少量ずつ入れ換えて、ガラス基板Bからの揮発性塵類を排出しつつ、各ガラス基板加熱空間t内のガラス基板Bを均一に加熱することができた。
【0008】
上記熱処理装置Xにおいては、例えばメンテナンス時のように横面状ヒータ108を炉本体101から取り外さなければならないときには、横面状ヒータ108をヒータ支持体107に沿って摺動させて炉本体101から引き出していた。また、逆に炉本体101に横面状ヒータ108を取り付ける場合にも、横面状ヒータ108をヒータ支持体107に沿って摺動させて炉本体101の内部へと挿入していた。
【0009】
しかし、近年では、LCDの大型化に伴いガラス基板Bが大型化しているため、同ガラス基板Bを収容して熱処理する熱処理装置Xも大型化し、ひいては、熱処理装置Xの炉本体101の内部を複数のガラス基板加熱空間tに区切る横面状ヒータ108も大型化している。従って、横面状ヒータ108の重量が増加し、横面状ヒータ108を炉本体101から着脱するに際しては、横面状ヒータ108の移動が重労働となり、横面状ヒータ108の炉本体101からの着脱が困難なものとなっていた。
【0010】
そこで、図11に示すように、前記ヒータ支持体107によって支持される横面状ヒータ108の左右両端部に複数の転動輪113を設けて、同転動輪113を介して横面状ヒータ108をヒータ支持体107に沿ってスライド移動可能とし、横面状ヒータ108を炉本体101に容易に着脱できるようにすることが考えられる。
【0011】
【特許文献1】
実用新案登録第3066387号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の如く横面状ヒータ複合体の左右両端部に複数の転動輪を設けた場合には、同転動輪により横面状ヒータ複合体がヒータ支持体から持ち上がるため、ヒータ支持体と横面状ヒータ複合体との間に隙間が生じ、横面状ヒータ複合体によって区切られる各ガラス基板加熱空間の間で空気の流通が発生してしまう。そのため、これまで各ガラス基板加熱空間において均等に保たれてきた温度分布に変化が生じてしまい、各ガラス基板加熱空間に収容されるガラス基板を均一に加熱できないという不具合が生じる可能性がある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで、請求項1記載の本発明では、炉体内部に、面状ヒータを支持するレール状のヒータ支持体を多段に設けるとともに、前記各ヒータ支持体上に面状ヒータをそれぞれ挿脱自在に配設し、配設した各面状ヒータ間にガラス基板加熱空間を形成したガラス基板用熱処理装置において、前記面状ヒータの先端部に、前記ヒータ支持体のヒータ支持面上をスライド可能なヒータ側転動輪を取り付けるとともに、前記ヒータ支持体の奥側部に、前記面状ヒータ収容時にヒータ側転動輪を沈降状態に収納する転動輪収納凹部を設け、さらに、当該ヒータ支持体の前側部に、前記面状ヒータを案内可能な支持体側転動輪を上下移動自在に配設した。
【0014】
また、請求項2記載の本発明では、ヒータ支持体に、支持体側転動輪の回転軸を上下移動自在に支持する輪支持部を設け、面状ヒータのスライド時には支持体側転動輪の頂部をヒータ支持面よりも上方に位置させて面状ヒータの下面に当接可能とする一方、面状ヒータの収容時には、支持体側転動輪の頂部をヒータ支持面よりも下方に位置させて面状ヒータとヒータ支持体とを密着可能とした。
【0015】
また、請求項3記載の本発明では、転動輪収納凹部は、ヒータ支持面の一部を奥側部に向かって下方に傾斜させることにより形成した。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係るガラス基板用熱処理装置は、炉体内部に、面状ヒータを支持するレール状のヒータ支持体を多段に設けるとともに、前記各ヒータ支持体上に面状ヒータをそれぞれ挿脱自在に配設し、配設した各面状ヒータ間にガラス基板加熱空間を形成したものである。
【0017】
しかも、前記面状ヒータにおいて、炉体内への挿入時に最初に挿入される側を先端部、他端側を後端部とすると、前記面状ヒータの先端部には、前記ヒータ支持体のヒータ支持面上をスライド可能なヒータ側転動輪を取り付けている。
【0018】
また、ヒータ支持体において、面状ヒータを炉体内に収容したときに同面状ヒータの先端部を支持する側を奥側部、他端側を前側部とすると、ヒータ支持体の奥側部には、前記面状ヒータ収容時にヒータ側転動輪を沈降状態に収納する転動輪収納凹部を設けており、当該ヒータ支持体の前側部には、前記面状ヒータを案内可能な支持体側転動輪を上下移動自在に配設している。
【0019】
従って、面状ヒータを炉体内に挿入したり引き出したりする際には、ヒータ側転動輪をヒータ支持体のヒータ支持面上で転動させるとともに、支持体側転動輪により面状ヒータを案内することにより、両転動輪により面状ヒータを繰り出して、面状ヒータを炉体の内外へ円滑に移動させることができる。従って、面状ヒータが大型化して、重量が大きくなったとしても、容易に面状ヒータを炉体に取り付け・取り外しすることができる。しかも、面状ヒータの重みによって作業者が不安定になり、面状ヒータの挿脱作業中に同面状ヒータを損傷させる危険性も少ない。
【0020】
また、面状ヒータを炉体内に収容した際には、ヒータ側転動輪を転動輪収容凹部に収容すると共に、支持体側転動輪を前記面状ヒータを案内するときの位置よりも下方に移動させて、面状ヒータをヒータ支持面に当接させることができ、各面状ヒータ間に形成されるガラス基板加熱空間の間で空気の流通が生じないようにして、各ガラス基板加熱空間内の温度分布にむらが生じるのを防止することができる。従って、ガラス基板の一側面全体を均一に加熱して、温度差によるガラス基板の撓みや歪みを防ぐことができ、歩留まり向上が見込まれる。
【0021】
なお、本熱処理装置の熱処理対象となるガラス基板は、液晶ディスプレイ(LCD)やLCD用のカラーフィルター(CF)などであり、本熱処理装置は、かかる電子部品用途のものを熱処理する場合に好適に用いることができる。また、面状ヒータとしては、例えば遠赤外線を放射する面状ヒータを用いる。
【0022】
また、前記ヒータ支持体に、支持体側転動輪の回転軸を上下移動自在に支持する輪支持部を設けて、面状ヒータのスライド時には支持体側転動輪の頂部をヒータ支持面よりも上方に位置させて面状ヒータの下面に当接可能とする一方、面状ヒータの収容時には、支持体側転動輪の頂部をヒータ支持面よりも下方に位置させて面状ヒータとヒータ支持体とを密着可能とすることもでき、かかる構成とすれば、簡単な構成によって支持体側転動輪を上下に移動させることができるので、破損しにくい構成でありながら、且つ低コストで設けることができる構成によって、支持体側転動輪の上下移動を行うことができる。
【0023】
しかも、面状ヒータのスライド時には支持体側転動輪の頂部をヒータ支持面よりも上方に位置させて面状ヒータの下面に当接可能とするので、スライド時には、支持体側転動輪によって面状ヒータを確実に繰り出すことができる。一方、面状ヒータの収容時には、支持体側転動輪の頂部をヒータ支持面よりも下方に位置させて面状ヒータとヒータ支持体とを密着可能とするので、面状ヒータの収容時に、面状ヒータとヒータ支持体との間に隙間が生じるのを確実に防止することができる。
【0024】
さらに、前記転動輪収納凹部は、ヒータ支持面の一部を奥側部に向かって下方に傾斜させることにより形成することができ、かかる構成とすれば、転動輪収容凹部の傾斜に沿ってヒータ側転動輪を転動させることができ、容易に且つ円滑にヒータ側転動輪を転動輪収容凹部に出し入れすることができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明に係るガラス基板用熱処理装置の一実施例としての焼成炉Aの正面断面図であり、図示するように、本実施例における焼成炉Aでは、箱型に形成した炉本体1の内周面に断熱材(図示せず)を貼設し、しかも、同炉本体1の内部に炉本体1の側壁1aから所定の間隔を空けて面状ヒータを立設している。
【0027】
かかる立設させた面状ヒータを縦面状ヒータ2とすると、対向する左右側の縦面状ヒータ2,2の一方には給気孔3を、他方には排気孔4を複数穿設しており、かかる給・排気孔3,4と方向が対応するように、前記炉本体1の対向する左右側壁1a,1aの一方には給気口5を、他方には排気口6を設けている。
【0028】
また、上記左右側の縦面状ヒータ2,2には、それぞれ前後方向に伸延するレール状のヒータ支持体7を多段に配設し、同ヒータ支持体7によって、水平に寝かせた状態の面状ヒータ(以下、横面状ヒータ8という)を挿脱自在に支持し、各横面状ヒータ8,8間にガラス基板加熱空間Tを形成している。なお、図示するように、各ガラス基板加熱空間Tには、前記縦面状ヒータ2に穿設した給・排気口5,6がそれぞれ開口している。
【0029】
さらに、各ガラス基板加熱空間Tにおいては、ガラス基板Bを水平に支持するための石英管を前後方向に伸延させており、同石英管は、横面状ヒータの上方に配設した石英管支持体により支持している。なお、石英管と石英管支持体の構造は、前記図10に示すものと同様であり、図1では図示を省略している。
【0030】
本実施例における焼成炉Aは上記構成からなり、ここで、本発明の要旨ともなる横面状ヒータ8のスライド・収容構造についてさらに詳説する。横面状ヒータ8のスライド・収容構造とは、すなわち、横面状ヒータ8と、同横面状ヒータ8を支持するヒータ支持体7との構造のことである。以下において、横面状ヒータ8は、炉本体1の内部への挿入時に最初に挿入される側を先端部8a、他端側を後端部8bとし、ヒータ支持体7は、横面状ヒータ8を炉本体1の内部に収容したときに同横面状ヒータ8の先端部8aを支持する側を奥側部7a、他端側を前側部7bとして説明する。
【0031】
横面状ヒータ8は、図4、図5に示すように、矩形板状に形成した面状ヒータ23を、同じく矩形板状に形成した上下2枚の赤外線放射板24,24によって両側から挟むと共に、かかる面状ヒータ23及び両赤外線放射板24,24の周縁部を断面視略コ字状のヒータ固定枠11で共に挟んでボルト12で固定することにより、単一の横面状ヒータ8となしている。
【0032】
また、横面状ヒータ8の先端側左右端部には、後述するヒータ支持体7のヒータ支持面7c上をスライド可能なステンレス製のヒータ側転動輪13をそれぞれ取り付けている。
【0033】
すなわち、図4、図5に示すように、断面視略コ字状である前記ヒータ固定枠11の縦片部11aに、ヒータ側転動輪13をステンレス製の回転軸14を介して回転自在に取り付けており、しかも、かかるヒータ側転動輪13の底部を横面状ヒータ8の下端よりも下方に位置させている。なお、ヒータ側転動輪13は、ヒータ支持体7との摩擦や焼き付きを確実に防止すべく、耐熱性樹脂により形成してもよい。
【0034】
ヒータ支持体7は、ステンレス製であり、図4、図5に示すように、縦面状ヒータ2の内側面に当接する第1縦片部7dと、同第1縦片部7dの下端から炉本体1の中央方向に向かって水平に突出する横片部7eと、同横片部7eの突出先端から下方に向かって垂直に垂下する第2縦片部7fとから正面視段状に形成すると共に、第1縦片部7dをボルト15で固定することにより縦面状ヒータ2に取り付けている。そして、前記横片部7eの上面を、実際に横面状ヒータ8と当接して同横面状ヒータ8を支持するヒータ支持面7cとしている。
【0035】
また、ヒータ支持体7の前側部7bには、矩形板状の転動輪取付片16を前記第2縦片部7fと平行となるように横片部7eに垂設して、同転動輪取付片16と第2縦片部7fとの間に上記横面状ヒータ8を案内可能なステンレス製の支持体側転動輪17を軸架している。なお、支持体側転動輪17は、横面状ヒータ8との摩擦や焼き付きを確実に防止すべく、耐熱性樹脂により形成してもよい。図中、18は支持体側転動輪17との焼き付きを防止すべく耐熱性樹脂により形成したカラー、19は一端に把持部19aを設けたステンレス製の回転軸である。
【0036】
図2、図3に示すように、前記支持体側転動輪17の回転軸19は、上記転動輪取付片16と第2縦片部7fとにそれぞれ設けられた側面視略門状の軸受け孔20に係止される。すなわち、前記支持体側転動輪17の回転軸19は、略門状を成す軸受け孔20の2つの縦孔部20a,20cのどちらかに係止されるとともに、両縦孔部20a,20cを連絡する横孔部20bを介して両縦孔部20a,20c間を自由に移動可能である。
【0037】
しかも、両縦孔部20a,20cは、一方(ここでは前側の縦孔部)が他方(ここでは奥側の縦孔部)よりも下方に長く伸延していて段違いになっており、より長い縦孔部を下段縦孔部20a、他方を上段縦孔部20cとすると、前記支持体側転動輪17は、その回転軸19を下段縦孔部20aと上段縦孔部20cとのどちらに係止するかによって上下位置が変わることとなる。かかる構成により、本実施例では、支持体側転動輪17を上下に自在に移動できるようにしている。
【0038】
特に、支持体側転動輪17の直上方となるヒータ支持体7の横片部7eは開口させており、回転軸19を上段縦孔部20cに係止したときには、支持体側転動輪17の頂部がヒータ支持面7cよりも上方に位置し、回転軸19を下段縦孔部20aに係止したときには、支持体側転動輪17の頂部がヒータ支持面7cよりも下方に位置するようにしている。
【0039】
このとき、軸受け孔20を設けた転動輪取付片16と第2縦片部7fとは、支持体側転動輪17の回転軸19を上下移動自在に支持する輪支持部21として作動し、簡単な構成でありながら確実に支持体側転動輪17を上下に移動させることができる。しかも、簡単な構成であるが故に、破損しにくく、且つ低コストで設けることができる。
【0040】
また、ヒータ支持体7の奥側部7aには、横片部7eの復員の第1縦片部7d側を奥側部7aに向かって下方に傾斜させて、ヒータ側転動輪13を沈降状態に収納するための転動輪収納凹部22を設けている。
【0041】
そして、本実施例では、横面状ヒータ8のスライド・収容構造を上述したような構造としたことにより、横面状ヒータ8は、以下のようにして炉本体1の内部に挿脱され(スライドされ)、載置される(収容される)。
【0042】
すなわち、横面状ヒータ8を炉本体1の内部に挿入するときには、図2に示すように、まず、支持体側転動輪17の回転軸19を軸受け孔20の上段縦孔部20cに係止して、図4(a)に示すように、支持体側転動輪17の頂部をヒータ支持体7のヒータ支持面7cよりも上方に突出させる。そして、図5(a)に示すように、ヒータ側転動輪13をヒータ支持体7のヒータ支持面7c上に載置すると共に、図4(a)に示すように、前記支持体側転動輪17の頂部に横面状ヒータ8の下面を当接させて、図6(a)に示すように、両転動輪13,17を転動させつつ横面状ヒータ8を炉本体1の内部へ挿入する。
【0043】
このとき、横面状ヒータ8は両転動輪13,17の転動によって炉本体1の内部へと繰り出されるので、横面状ヒータ8の重量が大きかったとしても、大きな抵抗を受けることなく円滑に横面状ヒータ8を炉本体1の内部へ挿入することができる。
【0044】
そして、横面状ヒータ8が炉本体1の内部へ深く挿入されて、ヒータ側転動輪13がヒータ支持体7の転動輪収納凹部22まで行き着くと、ヒータ側転動輪13は転動輪収納凹部22の傾斜面22aに沿って転動しながら次第に下降し、最終的には、図5(b)に示すように、これまでヒータ側転動輪13によってヒータ支持面7cの上方に持ち上げられていた横面状ヒータ8の先端部8aが、ヒータ支持面7cに当接する。
【0045】
このように、ヒータ側転動輪13が転動輪収納凹部22に沈降状態に収容されたら、次に、支持体側転動輪17の回転軸19を軸受け孔20の上段縦孔部20cから下段縦孔部20aへと移動させて、図4(b)に示すように、支持体側転動輪17の頂部をヒータ支持体7のヒータ支持面7cよりも下方に沈降させる。これにより、図4(b)、図5(b)、図6(b)に示すように、横面状ヒータ8の下面をヒータ支持体7のヒータ支持面7cにぴったりと密着させて、横面状ヒータ8を炉本体1の内部に収容・載置することができる。
【0046】
しかも、前述の如く、横面状ヒータ8の下面とヒータ支持体7のヒータ支持面7cとの間には隙間が発生していないので、各横面状ヒータ8,8間に形成されるガラス基板加熱空間T同士の間で、空気の流通がほとんど生じず、各ガラス基板加熱空間Tにおける温度分布にむらが生じるのを防止することができる。
【0047】
なお、図3に示すような収容状態にある横面状ヒータ8を炉本体1の内部から引き出す場合には、軸受け孔20の下段縦孔部20aに係止されている支持体側転動輪17の回転軸19を上段縦孔部20cへと移動させて、図4(a)に示すように、再び支持体側転動輪17の頂部をヒータ支持体7のヒータ支持面7cよりも上方に突出させると共に、ヒータ支持体7の転動輪収納凹部22に沈降状態に収容されているヒータ側転動輪13を、横面状ヒータ8を引き出しながら転動輪収納凹部22の傾斜面22aに沿って転動させて、次第に転動輪収納凹部22の外部に上昇させる。
【0048】
そして、図5(a)に示すように、ヒータ側転動輪13をヒータ支持体7のヒータ支持面7c上に載置すると共に、図4(a)に示すように、前記支持体側転動輪17の頂部に横面状ヒータ8の下面を当接させて、図6(a)に示すように、両転動輪13,17の転動によって横面状ヒータ8を炉本体1の外部へと繰り出すのである。
【0049】
このときも、前記横面状ヒータ8の挿入時と同様に、横面状ヒータ8の重量が大きかったとしても、大きな抵抗を受けることなく円滑に横面状ヒータ8を炉本体1の外部へ引き出すことができる。
【0050】
なお、図4に示すように、支持体側転動輪17とそのカラー18とはある程度の接触面積を有するので、既に焼成炉Aを作動させたことがあり、炉本体1の内部を加熱したことがある場合には、炉本体1の内部から横面状ヒータ8を引き出そうとしても、支持体側転動輪17とカラー18とが焼き付いていて、支持体側転動輪17を転動できないおそれがある。しかし、本実施例では、前述したように、焼き付きを防止すべく支持体側転動輪17のカラー18を耐熱性樹脂製としているので、例え炉本体1の内部を加熱した後であったとしても、支持体側転動輪17を円滑に転動させることができる。
【0051】
ところで、本実施例では、上記した以外の構成として、図7及び図8に示すように、最上段に設けた横面状ヒータ8の外側面四隅に、放熱を防止するための放熱防止用被覆体25を設けている。
【0052】
かかる放熱防止用被覆体25は、ステンレスを下端開口の箱状に形成したものであり、開口縁を最上段の横面状ヒータ8の外側面に沿ってフランジ状に伸延させて取付部25aを形成すると共に、同取付部25aをボルト26で横面状ヒータ8に固定している。
【0053】
上記放熱防止用被覆体25を設けることによって、下方にしか他の横面状ヒータ8が存在しておらず、上下両側を別の横面状ヒータ8によって挟まれた横面状ヒータ8と比べて温度が上昇しにくい最上段の横面状ヒータ8においても、放熱を防いで他の横面状ヒータ8と同様に温度を上昇させることができる。そして、炉本体1の内部の温度分布にむらが生じるのを防止して、炉本体1の内部に収容された全てのガラス基板Bを均一に加熱し、温度差によってガラス基板Bの品質にばらつきが生じるのを防止することができる。
【0054】
特に、本実施例では、放熱防止用被覆体25を下端開口の箱状に形成しているので、横面状ヒータ8からの熱を効率よく放熱防止用被覆体25の内部に蓄積して、横面状ヒータ8の温度を効率よく上昇させることができる。しかも、単純な構造なので、例えば既存のガラス基板熱処理用装置に対しても、上記放熱防止用被覆体25を低コストで且つ簡単に付設することができる。
【0055】
また、本実施例では、放熱防止用被覆体25は、横面状ヒータ8の四隅に設けているが、これは、図9に示すように、横面状ヒータ8を1〜30の部位に分けた場合、四隅となる1、5、26、30の部位が他の部位と比べて温度が上昇しにくいからであり、本実施例のように、最上段の横面状ヒータ8において、四隅からの放熱を重点的に防止した場合には、効率よく最上段の横面状ヒータ8の温度を上昇させることができると共に、最上段の横面状ヒータ8における温度分布のむらを防止することができる。
【0056】
また、本実施例では、前述の通り放熱防止用被覆体25をステンレスにより形成しているが、放熱防止用被覆体25の素材としてはこれに限らない。例えば耐熱性樹脂のような断熱性のある素材で放熱防止用被覆体25を形成すれば、横面状ヒータ8からの熱を効率よく遮断して外方に逃げないようにすることができ、放熱防止用被覆体25の厚みを薄くしたり、形状をコンパクトにしたりすることが可能となる。
【0057】
さらに、本実施例では、最上段の横面状ヒータ8にのみ放熱防止用被覆体25を設けているが、これに限らず、放熱防止用被覆体25は、最上段の横面状ヒータ8と同じく温度が上昇しにくい最下段の横面状ヒータ8にも設けることができる。そして、最上段の横面状ヒータ8と最下段の横面状ヒータ8とのどちらか一方にのみ、或いは両方に放熱防止用被覆体25を設けることができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明は、上記してきた態様で実施されるものであり、下記の効果を奏する。
【0059】
(1)請求項1記載の本発明では、面状ヒータの先端部に、ヒータ支持体のヒータ支持面上をスライド可能なヒータ側転動輪を取り付けるとともに、前記ヒータ支持体の奥側部に、前記面状ヒータ収容時にヒータ側転動輪を沈降状態に収納する転動輪収納凹部を設け、さらに、当該ヒータ支持体の前側部に、前記面状ヒータを案内可能な支持体側転動輪を上下移動自在に配設したので、面状ヒータを炉体内に挿入したり引き出したりする際には、ヒータ側転動輪をヒータ支持体のヒータ支持面上で転動させるとともに、支持体側転動輪により面状ヒータを案内することにより、両転動輪により面状ヒータを繰り出して、面状ヒータを炉体の内外へ円滑に移動させることができる。従って、面状ヒータが大型化して、重量が大きくなったとしても、容易に面状ヒータを炉体に取り付け・取り外しすることができる。しかも、面状ヒータの重みによって作業者が不安定になり、面状ヒータの挿脱作業中に同面状ヒータを損傷させる危険性も少ない。
【0060】
また、面状ヒータを炉体内に収容した際には、ヒータ側転動輪を転動輪収容凹部に収容すると共に、支持体側転動輪を前記面状ヒータを案内するときの位置よりも下方に移動させて、面状ヒータをヒータ支持面に当接させることができ、各面状ヒータ間に形成されるガラス基板加熱空間の間で空気の流通が生じないようにして、各ガラス基板加熱空間内の温度分布にむらが生じるのを防止することができる。従って、ガラス基板の一側面全体を均一に加熱して、温度差によるガラス基板の撓みや歪みを防ぐことができ、歩留まり向上が見込まれる。
【0061】
(2)請求項2記載の本発明では、ヒータ支持体に、支持体側転動輪の回転軸を上下移動自在に支持する輪支持部を設け、面状ヒータのスライド時には支持体側転動輪の頂部をヒータ支持面よりも上方に位置させて面状ヒータの下面に当接可能とする一方、面状ヒータの収容時には、支持体側転動輪の頂部をヒータ支持面よりも下方に位置させて面状ヒータとヒータ支持体とを密着可能としたので、簡単な構成で支持体側転動輪を上下に移動させることができる。従って、支持体側転動輪を、破損しにくい構成でありながら、且つ低コストで設けることが可能な構成によって上下移動させることができる。しかも、面状ヒータのスライド時には支持体側転動輪の頂部をヒータ支持面よりも上方に位置させて面状ヒータの下面に当接可能とするので、スライド時には、支持体側転動輪によって面状ヒータを確実に繰り出すことができる。一方、面状ヒータの収容時には、支持体側転動輪の頂部をヒータ支持面よりも下方に位置させて面状ヒータとヒータ支持体とを密着可能とするので、面状ヒータの収容時に、面状ヒータとヒータ支持体との間に隙間が生じるのを確実に防止することができる。
【0062】
(3)請求項3記載の本発明では、転動輪収納凹部は、ヒータ支持面の一部を奥側部に向かって下方に傾斜させることにより形成したので、転動輪収容凹部の傾斜に沿ってヒータ側転動輪を転動させることができ、容易に且つ円滑にヒータ側転動輪を転動輪収容凹部に出し入れすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるガラス基板用熱処理装置の一実施例としての焼成炉の正面断面図である。
【図2】同焼成炉におけるヒータのスライド状態を示す図であり、(a)は側面視による全体説明図、(b)はiの拡大説明図、(c)はiiの拡大説明図である。
【図3】同焼成炉におけるヒータの収容状態を示す図であり、(a)は側面視による全体説明図、(b)はiiiの拡大説明図、(c)はivの拡大説明図である。
【図4】同焼成炉におけるヒータのスライド・収容状態を示す図であり、(a)はI−I線における断面説明図、(b)はIII−III線における断面説明図である。
【図5】同焼成炉におけるヒータのスライド・収容状態を示す図であり、(a)はII−II線における断面説明図、(b)はIV−IV線における断面説明図である。
【図6】ヒータの側面視による説明図であり、(a)はスライド状態を示す側面視による模式図、(b)は収容状態を示す側面視による模式図である。
【図7】放熱防止用被覆体を示す正面断面視による説明図である。
【図8】放熱防止用被覆体の取付位置を示す斜視による説明図である。
【図9】横面状ヒータの各部位を示す説明図である。
【図10】従来のガラス基板用熱処理装置の正面断面図である。
【図11】従来のガラス基板用熱処理装置におけるヒータのスライド構造を示す側面視による説明図である。
【符号の説明】
A 焼成炉
B ガラス基板
T ガラス基板加熱空間
1 炉本体
2 縦面状ヒータ
7 ヒータ支持体
7a 奥側部
7b 前側部
7c ヒータ支持面
8 横面状ヒータ
8a 先端部
8b 後端部
13 ヒータ側転動輪
17 支持体側転動輪
21 輪支持部
22 転動輪収納凹部

Claims (3)

  1. 炉体内部に、面状ヒータを支持するレール状のヒータ支持体を多段に設けるとともに、前記各ヒータ支持体上に面状ヒータをそれぞれ挿脱自在に配設し、配設した各面状ヒータ間にガラス基板加熱空間を形成したガラス基板用熱処理装置において、
    前記面状ヒータの先端部に、前記ヒータ支持体のヒータ支持面上をスライド可能なヒータ側転動輪を取り付けるとともに、前記ヒータ支持体の奥側部に、前記面状ヒータ収容時にヒータ側転動輪を沈降状態に収納する転動輪収納凹部を設け、さらに、当該ヒータ支持体の前側部に、前記面状ヒータを案内可能な支持体側転動輪を上下移動自在に配設したことを特徴とするガラス基板用熱処理装置。
  2. ヒータ支持体に、支持体側転動輪の回転軸を上下移動自在に支持する輪支持部を設け、面状ヒータのスライド時には支持体側転動輪の頂部をヒータ支持面よりも上方に位置させて面状ヒータの下面に当接可能とする一方、面状ヒータの収容時には、支持体側転動輪の頂部をヒータ支持面よりも下方に位置させて面状ヒータとヒータ支持体とを密着可能としたことを特徴とする請求項1記載のガラス基板用熱処理装置。
  3. 転動輪収納凹部は、ヒータ支持面の一部を奥側部に向かって下方に傾斜させることにより形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のガラス基板用熱処理装置。
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