JP3782268B2 - 作業用手袋の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた柔軟性及び高い強度を有する作業用手袋の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、多くの家庭、製造工場、処理場等においては、多くの作業用手袋が使用されている。特に液体や有害物質を処理する環境で使用する作業用手袋としては、ポリウレタン、合成ゴム、天然ゴム、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂等の可撓性樹脂の被膜からなる作業用手袋が使用されている。これらの作業用手袋は、作業時に手指の感触を損うことがないように、極力薄い被膜から構成されている。
【0003】
上記可撓性樹脂の薄膜からなる手袋は、被膜が着用時に直接手指の肌に接触するために着用感が悪く、又、薄膜であるがゆえに強度が低く破れ易いという問題がある。このような問題を解決するために、繊維(糸)製の手袋を基材手袋として、該基材手袋の表面に可撓性樹脂被膜を積層した手袋も多数製造及び使用されている。このような可撓性樹脂被膜を有する手袋は、着用時に基材手袋が手指に接触するので着用感が改善され、且つ基材手袋によって強度も大きく向上している。
【0004】
上記基材手袋を用いた手袋は、通常、手袋製造用の陶器製或いは金属製の手型に基材手袋を被せ、この基材手袋を被せた手型を可撓性樹脂の溶液又は分散液に指先から手首部分まで浸漬し、その後引き上げ、乾燥及び脱型することによって製造されているが、上記浸漬中に可撓性樹脂溶液又は分散液が基材手袋中に深く含浸してしまい、得られる手袋の可撓性が大きく損われるという問題がある。
【0005】
上記問題は、例えば、可撓性樹脂としてポリウレタン樹脂を用いる場合、手型に被せた基材手袋に水を含浸させておき、この状態でポリウレタン樹脂溶液に浸漬させることで、ポリウレタン樹脂を基材手袋の表面で析出させ、ポリウレタン樹脂溶液が基材手袋中に含浸することを防止することによってある程度解決されるが、この方法ではポリウレタン樹脂溶液に使用する溶剤が水と相溶性を有する溶剤に限定され、そのために使用する樹脂もポリウレタン樹脂に限定されるという問題がある。更に基材手袋としては吸水性の大きい木綿等の天然繊維製の手袋に限定され、強度に優れた合成繊維製の手袋は実質上使用できないという問題がある。更に必然的に水と有機溶剤との混合物が発生し、その廃液の処理の問題が派生している。その他、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、NBRゴム等の可撓性樹脂又はゴムについても同様である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、基材手袋表面に形成する可撓性樹脂被膜が基材手袋中に実質的に侵入せず、又、可撓性樹脂の種類、及び基材手袋の種類が限定されず、廃液の処理に関する問題も軽減され、優れた柔軟性及び高い強度を有する作業用手袋を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、可撓性樹脂の溶液又は分散液中に、手袋製造用の手型を浸漬、引き上げ及び乾燥して手型上に可撓性樹脂被膜を形成する工程、該被膜を有する手型に繊維を織成又は編製してなる基材手袋を被せる工程、基材手袋と被膜とを接着させる工程、基材手袋と被膜とからなる手袋を手型から脱型する工程、及び手袋の表裏を反転させる工程を有し、上記基材手袋と被膜とを接着させる工程を、手型に基材手袋を被せた後に、可撓性樹脂被膜を溶解する溶剤を基材手袋側から付与して行なうことを特徴とする作業用手袋の製造方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
図4は、従来技術の基材手袋1と可撓性樹脂被膜2とからなる作業用手袋の一部の断面を図解的に示す図であり、従来技術の作業用手袋の可撓性樹脂被膜2は、基材手袋の厚み(a)の相当部分(b)まで侵入しており、場合によっては基材手袋の内側まで被膜が達している。そのために優れた可撓性樹脂を使用しても、又、伸縮性に優れた基材手袋を使用しても、それらの可撓性や伸縮性が低下し、ゴワゴワとした着用感となる。
【0009】
図1は、本発明の作業用手袋の一部の断面を図解的に示す図であり、本発明の作業用手袋は、図4に示す従来の作業用手袋に対し、可撓性樹脂被膜2が基材手袋1の表面近傍においてのみ実質的に接着されていることを特徴としている。後述する本発明の方法によって得られる作業用手袋の断面を50倍の顕微鏡で観察すると、図1に図解的に示すように、基材手袋の厚み(a)の1/3以下の厚み(b)にまでしか可撓性樹脂被膜が侵入しておらず、好ましい例では基材手袋の厚みの1/4以下、更に好ましくは1/8以下の厚みにまでしか可撓性樹脂被膜が侵入していない。更に好ましい例では、図2に示すように、基材手袋を構成してる繊維の上端部おいてb=1/10×a以下で実質的に接着しており、基材手袋の内部には可撓性樹脂被膜が実質的に侵入していない。従って本発明の作業用手袋は、非常に柔軟であり且つ引き裂き強度等にも優れている。
【0010】
本発明で使用する基材手袋は、木綿等の天然繊維、ナイロン、弾性ポリウレタン、ポリエステル、ビニロン、アクリル、ポリプロピレン等の合成繊維、又はこれらの混紡繊維から形成されるものであって、好ましくは高い伸縮性を有するように軍手編みした手袋が好ましい。尚、前記の従来技術においては、基材手袋として吸水性のない合成繊維製手袋は事実上使用できなかったが、本発明の方法を採用することによって、これらの吸水性のない合成繊維製基材手袋を使用することができる。本発明において好ましい基材手袋の1例は、巻縮処理したウーリーナイロン繊維と弾性ポリウレタン繊維との混紡繊維から軍手編みして形成される伸縮性に優れた手袋である。勿論、本発明は上記好ましい基材手袋に限定されるものではない。
【0011】
本発明で使用する可撓性樹脂としては、ポリウレタン、軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、シリコーン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、フッソゴム、クロロプレンゴム、合成ゴム、天然ゴム、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂等が挙げられ、これらは、通常、溶剤に溶解した溶液として、又は水又は有機溶剤を媒体とした分散液(ラテックス又はエマルジョン)として使用される。尚、加硫が要求されるゴムの場合には、最終工程において加硫が行なわれる。
【0012】
本発明の作業用手袋は、上記の如き基材手袋と可撓性樹脂とから形成され、次の工程を含む製造方法によって得られる。
工程1
可撓性樹脂の溶液又は分散液中に、手袋製造用の手型を浸漬、引き上げ及び乾燥して手型上に可撓性樹脂被膜を形成する工程。この工程自体は従来の基材手袋を用いない樹脂製手袋の形成工程と同様であり、従来公知と同様の工程条件でよい。又、基材手袋の表面に形成される可撓性樹脂被膜は、通常、100〜300μm程度の厚さであり、この被膜厚さは、浸漬液の固形分濃度、浸漬回数等で任意の厚さに調整可能である。
【0013】
工程2
この工程は本願発明の製造方法の主要工程であり、最も新規性のある工程である。従来基材手袋を用いる作業用手袋の製造方法においては、先ず、手型に基材手袋を被せ、この被せた手型を可撓性樹脂溶液等中に浸漬して可撓性樹脂被膜を形成していたが、本願発明では可撓性樹脂被膜を形成した上に基材手袋を被せる。
【0014】
工程3
この工程では、工程2で得られた可撓性樹脂被膜及び基材手袋を被せた手型の状態で、基材手袋の表面と可撓性樹脂被膜とを接着させる。接着させる方法は次の通りである。
【0015】
接着方法1
工程2で得られた可撓性樹脂被膜及び基材手袋を被せたままの手型の状態で、基材手袋側から可撓性樹脂被膜を溶解させる溶剤を含浸させ、可撓性樹脂被膜の表面のみ(被膜と基材手袋との接触面)を溶解させる。この状態では基材手袋は引き伸ばされた状態であるので圧縮力がかかっており、基材手袋の内側表面と可撓性樹脂被膜の外側表面とは密着している。この状態で可撓性樹脂被膜の表面のみが溶解され、基材手袋表面と接着し、溶剤を蒸発させることによって、可撓性樹脂被膜が基材手袋の繊維間に深く侵入することなく、基材手袋の表面近傍と可撓性樹脂被膜とが接着する。
【0016】
使用する溶剤は、使用した可撓性樹脂被膜の材質によって当業者が容易に選択及び決定することができる。具体的には、可撓性樹脂被膜がポリウレタン樹脂の場合には、水分を含んでいてもよいジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等、或いはそれらの混合溶剤が挙げられる。軟質塩化ビニル樹脂の場合には、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等、それらの混合物が挙げられる。シリコーン樹脂の場合には、トルエン、普通ガソリン、四塩化炭素等が挙げられる。その他の樹脂或いはゴムに対する溶剤についても当業者が容易に選択及び使用できる。これらの溶剤の基材手袋に対する含浸量は、基材手袋が溶剤で濡れる程度、例えば、溶剤中に素早く1回浸漬及び引き上げる方法や、液ダレを生じない程度に溶剤を噴霧する方法等でよい。
【0020】
工程3及び4
この工程では、基材手袋と被膜とからなる作業用手袋を手型から脱型し、手袋の表裏を反転させる。手型からの脱型と表裏の反転とは別々に行なってもよいし、又、同時に行ってもよい。
【0021】
上記工程を行なうことによって内側が基材手袋であり、外側が可撓性樹脂被膜である本発明の作業用手袋が得られる。このようにして得られる本発明の作業用手袋は、図1〜図のその断面の一部を図解的に示すように、可撓性樹脂被膜2は、単に基材手袋1の表面に押し付けられて接着されているために、可撓性樹脂被膜と基材手袋とが、基材手袋の表面近傍においてのみ実質的に接着され、可撓性樹脂被膜が基材手袋の厚み方向には深くは侵入していない状態であり、基材手袋の繊維が可撓性樹脂被膜に浅く食い込んでいる状態であるので、可撓性樹脂被膜の本来有する柔軟性が損われず、又、基材手袋には可撓性樹脂被膜が深く侵入していないので、基材手袋の本来有する柔軟性及び着用感が損われていない。
【0022】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中部又は%とあるのは特に断わりのない限り重量基準である。
実施例1
固形分を40%に調整したNBRラテックス(Nipol LX513:中ニトリル、日本ゼオン社製)に、その固形分100部に対して硫黄2部、亜鉛華2部及びジブチルジチオカルバミン酸亜鉛0.5部を配合して可撓性樹脂溶液を調製した。一方、市販のアラミド繊維と鋼繊維とウーリーナイロン繊維とからなる撚糸を軍手編みした厚さ約1.5mmの作業用手袋(二葉(株)製、商品名テキレーヌ)を基材手袋として使用した。
【0023】
手袋製造用の陶器製手型を、上記の可撓性樹脂溶液中に指先から手首に至るまでゆっくりと浸漬させた後、同様にゆっくりと引き上げて、上下反転させて乾燥した。この場合に形成されたNBR被膜の厚みは約300μmであった。次いでこのNBR被膜を手型から脱型することなく、その表面に前記の基材手袋を被せ、基材手袋面にメチルエチルケトンをスプレーで基材手袋が均一に濡れる程度に含浸させ、室温で30分間乾燥させた。その後、120℃のオーブン中で40分間NBR被膜を加硫させた。冷却後、手型から手袋を脱型し、且つ手袋の表裏を反転させて本発明の作業用手袋を得た。
【0024】
この作業用手袋における可撓性樹脂被膜は、図1に図解的に示すように基材手袋の表面近傍においてのみ基材手袋に接着しており、手袋全体として非常に柔軟性であり、又、着用感は被膜が形成されていない基材手袋の場合と同等であった。又、得られた作業用手袋を油圧裁断機にてカットして50倍の顕微鏡で観察したところ、NBR被膜の基材手袋に対する含浸深さ(b)は、基材手袋の厚み(a)の約1/10(0.15mm)であった。尚、基材手袋の厚みは放置状態にて測定した値である(以下同じ)。
【0025】
実施例2
テトラメチレングリコール(分子量2,000)130部、ポリエチレングリコール(分子量2,000)20部、1,4−ブタンジオール10部及び水添化MDIの150部を100℃で10時間反応させてポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂をメチルエチルケトン/トルエン(70/30)の混合溶剤にて固形分25%に溶解し、更に、この溶液にキシレン/トルエン(50/50)を加えて粘度が約1,000センチポイズの溶液を調製した。該溶液を30〜35℃の保温槽に入れ十分に脱泡した。
一方、市販のウーリーナイロン繊維と弾性ポリウレタン繊維を軍手編みした厚さ約1.0mmの作業用手袋を基材手袋として使用した。
【0026】
上記溶液に実施例1と同様な手型を、指先からゆっくりと手首まで浸漬し、次いで同一速度で引上げ、液切れしたところで手型を反転させ、70〜100℃の温度勾配を有している乾燥炉で20分間乾燥した。この操作を2回繰り返し、乾燥後の厚みが全体として150μmのポリウレタン被膜を形成させた。次に前記の基材手袋をポリウレタン被膜上に被せ、その状態でメチルエチルケトン/トルエン(70/30)の混合溶剤中に手首まで素早く浸漬及び引き上げ、室温で30分間乾燥させた。その後、手型から手袋を脱型し、且つ手袋の表裏を反転させて本発明の作業用手袋を得た。
【0027】
この作業用手袋におけるポリウレタン被膜は、図2に図解的に示すように基材手袋の表面近傍においてのみ基材手袋に接着しており、手袋全体として非常に柔軟性であり、又、着用感は被膜が形成されていない基材手袋の場合と同等であった。又、得られた作業用手袋をカッターナイフでスライスして50倍の顕微鏡でその断面を観察したところ、ポリウレタン被膜の基材手袋に対する含浸深さ(b)は、基材手袋の厚み(a)の約1/10(0.05mm)であった。得られた本発明の作業用手袋は、実施例1と同様の性能を有していた。
【0028】
実施例3
実施例1におけるNBRラテックスに代えて下記に示すシリコーンゴム液を使用し、他は実施例1と同様にして本発明の作業用手袋を得た。この作業用手袋も実施例2と同様に優れた性能を有していた。
・付加架橋型液状シリコーンゴムKE−1925AT* 25部
・付加架橋型液状シリコーンゴムKE−1925BT* 25部
・付加架橋型液状シリコーンゴムKE−1935AT* 25部
・付加架橋型液状シリコーンゴムKE−1935BT* 25部
*:以上信越化学工業(株)製
・トルエン 70部
・キシレン 30部
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、基材手袋表面に形成する可撓性樹脂被膜が基材手袋中に実質的に侵入せず、又、可撓性樹脂の種類、及び基材手袋の種類が限定されず、廃液の処理に関する問題も軽減され、優れた柔軟性及び高い強度を有する作業用手袋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の作業用手袋の一部の断面を拡大して示す図。
【図2】 本発明の作業用手袋の一部の断面を拡大して示す図。
【図3】 本発明の作業用手袋の一部の断面を拡大して示す図。
【図4】 従来技術の作業用手袋の一部の断面を拡大して示す図。
【符号の説明】
1:基材手袋
2:可撓性樹脂被膜
3:ヒートシール材層

Claims (3)

  1. 可撓性樹脂の溶液又は分散液中に、手袋製造用の手型を浸漬、引き上げ及び乾燥して手型上に可撓性樹脂被膜を形成する工程、該被膜を有する手型に繊維を織成又は編製してなる基材手袋を被せる工程、基材手袋と被膜とを接着させる工程、基材手袋と被膜とからなる手袋を手型から脱型する工程、及び手袋の表裏を反転させる工程を有し、上記基材手袋と被膜とを接着させる工程を、手型に基材手袋を被せた後に、可撓性樹脂被膜を溶解する溶剤を基材手袋側から付与して行なうことを特徴とする作業用手袋の製造方法。
  2. 基材手袋が、合成繊維を主体とする軍手編み手袋である請求項に記載の作業用手袋の製造方法。
  3. 可撓性樹脂が、ポリウレタン樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、シリコーン樹脂、合成ゴム、天然ゴム又はポリオレフィン樹脂である請求項に記載の作業用手袋の製造方法。
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