JP3780053B2 - ガス射出成形用ガス注入ピン及びそれを用いた成形用金型 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融樹脂を金型内に射出し溶融樹脂が固まらないうちに高圧ガスを注入して中空成形品を得る成形法、すなわちガス射出成形法に用いられるガス注入ピン及びそれを用いた成形用金型に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、ガス射出成形において、金型にガス注入用の針を組み込んで、キャビティ又はランナー部より、溶融樹脂中にガスを注入し、中空成形品を得る方法が知られている。そのガス注入用の針は、図２に示されるように、内ピン１と外筒２で構成され、内ピンの先端が、外筒の先端より外側に突出した構造を有しているのが一般的である。このようなガス注入ピンを用いて、溶融樹脂中にガスを注入した場合、樹脂に形成されるガス注入穴３は様々な形状を有して安定せず、ガス注入後の脱圧工程（ガス注入路と同じルートを逆流して大気に放出する）に多大の時間を要していた。このために、成形サイクル時間をより短縮化できる技術の開発が望まれていた。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガス射出成形法において、ガス注入ピンにより形成されるキャビティ内あるいはランナー内のガス注入穴をより大きく、安定して形成し、ガスの注入をスムースにするのみならず、脱圧操作時間を短縮させるガス注入ピン及びそれを用いた成形用金型を提供することを目的とする。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来のガス注入ピン、すなわち内ピンの先端が外筒の先端より外側に突出した構造を有し、内ピンと外筒の先端部の間隙（ガスの注入口）が環状に形成されているものを用いてガスを注入する場合の現象を子細に検討した。その結果、この場合においては、図２に示すように、ガスは、注入口付近の最も弱い所（１箇所）を突き破って、注入される傾向があり、このため、樹脂に形成される注入穴は、そのガス注入口の環状間隙より小さくなって、ガスの脱圧操作時間を長くさせていることを究明した。
【０００５】
この知見をもとに、鋭意検討した結果、本発明者らは、以下に示す内容を要旨とする本発明を完成させた。
（１）内ピンと外筒からなり、内ピンの先端が、外筒の先端より内側にあるガス射出成形用ガス注入ピン。
（２）内ピンの先端が、平坦面又は曲面である上記（１）に記載のガス射出成形用ガス注入ピン。
（３）内ピンの先端が、円錐又は角錐である上記（１）に記載のガス射出成形用ガス注入ピン。
（４）上記（１）〜（３）のいずれかに記載のガス射出成形用ガス注入ピンをその先端が金型内壁面より突出するように組み込んだガス射出成形用金型。
【０００６】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の一実施態様例を示す図１は、内ピン１と外筒２からなるガスピンにおいて、内ピン１の先端が、外筒２の先端より内側にあるガス注入ピンを示す。又、図１は、キャビティ金型に組み込んだガス注入ピンの外筒の先端部が、キャビティ金型内壁面５より突出している（溶融樹脂４の中に突き出している）ガス注入ピンの使用態様を示すものでもある。
【０００７】
従来使用されてきたガス注入ピンは、図２に示すとおり、内ピン１の先端が、外筒２の先端より外側にあったのに対し、本発明のガス注入ピンは内側としたのである。
内ピン１の先端を外筒２のそれより内側としたことにより、外筒２と内ピン１の先端で形成される空間（以下、「先端空間」という。）に先ず溶融樹脂が充填され、その状態で、外筒２と内ピン１の先端部の間隙（ガスの注入口）からガスが注入されると、先端空間内の溶融樹脂の全体がガスにより外側に押し出される。そのため、一箇所からガスが突き破って注入されるという傾向は極めて少なくなり、図１に示すように、樹脂に形成される注入穴３は、内ピン１の外径にほぼ等しい大きさになる。
【０００８】
本発明のガス注入ピンは、このようにして、従来のタイプのガス注入ピンにより形成された穴より、より大きな穴を形成し、ガスの注入をスムースにするのみならず、ガスの脱圧操作時間を大幅に短縮する効果をもたらす。
更に、本発明のガス注入ピンの実施態様例を図面で示す。
図３に内ピンの斜視図、図４に内ピン１と外筒２が組み込まれたガス注入ピンの断面図（内ピンについては、図３のＸ−Ｘ切断面に相当する）を示す。この図では、ガスの流路に相当する間隙部を軸心に平行に切削した二本の溝６で構成し、更に、ガス流路出口近辺で溝７の深さを浅くした構造を示す。 この例では、ガス流路に相当する間隙部を軸心に平行に切削し、二本の溝を構成したが、二本以上の多数の溝で構成されてもよい。また、軸心の円周に沿ったネジ溝でもよい。切削加工性、大容量の流路の確保、ガス注ピンの径の細径維持等のバランスから、図３、４に示すような軸心に平行に切削した二本の溝を有する内ピンを、特に好適に用いることができる。
【０００９】
なお、該溝の深さを、出口付近でその上流よりも浅くし、出口付近における溝７の深さを０．００５〜０．１５ｍｍ、より好ましくは０．０１〜０．１ｍｍとしたガス注入ピンは、ガスの注入をスムースに行う一方で、溶融樹脂の逆流を防止するのに有効である。
又、内ピンの先端部の形状は、図３、４に示すような平面や曲面であるもののほか、図５に示すような先端が尖った形状、すなわち円錐、角錐であるもの等を用いることができる。
【００１０】
本発明のガス注入ピンを用いて、ガス射出成形を行えば、図１が示すように、ガスの注入により、溶融樹脂中に形成される中空構造は、注入穴３が内ピン１の外径にほぼ等しい大きさを有し、ガスの注入がスムースに行えるのみならず、ガスの脱圧操作時間が極めて、短時間に行える。
【００１１】
【実施例】
更に、本発明のガス注入ピンの機能・作用を実施例を用いて、より詳しく説明する。
実施例
以下に示す成形条件で、本発明のガス注入ピンと図６に示したガス射出成形用試験金型を用いてポリプロピレンのガス射出成形を実施した。
【００１２】
成形条件：
(１)射出成形機：東芝機械（株）製（型締め力２００トン）
(２)成形材料：ＩＤＥＭＩＴＳＵ ＰＰ（ポリプロピレン） Ｊ−７００Ｇ（ＭＩ＝８）
(３)成形温度：２４０℃
(４)金型温度： ５０℃
(５)射出時間：２．６秒
(６)ガス遅延時間（樹脂の射出充填後、ガスの注入開始までの時間）：２．０秒
(７)ガス注入時間：２．０秒
(８)ガス圧保持時間：１５秒
(９)ガス脱圧時間：５秒
(10)ガス設定圧力：１０ ＭＰａ
(11)金型
平板（４２０ｍｍ×１００ｍｍ×３ｍｍ）ガスチャンネル付きサイドゲート／コールドランナ（図６）
(12)ガス注入ピン
図４に示すもので、全長２０ｍｍ、ピンの突出長さ（金型外）５ｍｍ、外筒口径５ｍｍ、内ピン先端部口径３ｍｍ、内ピン先端が外筒の先端より５ｍｍ内側、溝６深さ：０．５ｍｍ、溝７深さ：０．１ｍｍである。
【００１３】
成形結果：
ガスの注入穴は口径５ｍｍで、脱圧未了の場合に見られるフクレ（金型を開いた時に成形品の外圧は大気圧になり、成形品の中空部の脱圧が未了の場合、残存ガス圧により成形品が膨張することをいう）が観測されなかった。
【００１４】
比較例
実施例で用いたガス注入ピンの代わりに、図２に示すような内ピン１の先端が外筒２の先端の外側に出ているガス注入ピン（従来型のピン）を用いた以外は、同一の条件でガス射出成形を実施した。用いたガス注入ピンは、全長２０ｍｍ、ピンの突出長さ（金型外）５ｍｍ、外筒口径５ｍｍ、内ピン先端部口径３ｍｍ、内ピン先端が外筒の先端より５ｍｍ外側、溝６深さ：０．５ｍｍ、溝７深さ：０．１ｍｍである。
【００１５】
成形結果：
ガスの注入穴は口径２ｍｍで、脱圧未了の場合に見られるフクレが観測された。
【００１６】
【発明の効果】
本発明のガス注入ピン及びそれを組み込んだ金型を用いると、ガス射出成形において、溶融樹脂中へのガスの注入がスムースに行われ、かつガスの脱圧操作時間を短縮化することができる。
【００１７】
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施に用いられるガス注入ピンの機能模式図
【図２】従来から使用されてきたガス注入ピンの機能模式図
【図３】本発明の実施に用いられるガス注入ピンの内ピンの斜視図
【図４】本発明の実施に用いられるガス注入ピンの断面図（内ピンについては、図３のＸ−Ｘ切断面に相当）
【図５】本発明の他の態様の実施に用いられるガス注入ピンの断面図
【図６】ガス射出成形用試験評価金型の概略図
【符号の説明】
１：内ピン
２：外筒
３：ガスの注入穴
４：溶融樹脂
５：金型内壁面
６：溝（ガス流路／上流）
７：溝（ガス流路／出口付近）
８：スプル
９：ランナ
１０：ゲート
１１：ガス注入ピン設置位置
１２：ガスチャンネル
１３：平板の長さ＝４２０ｍｍ
１４：平板の幅 ＝１００ｍｍ
１５：平板の厚さ＝ ３ｍｍ
１６：ガスチャンネルの高さ＝１０ｍｍ

Claims (4)

1. 内ピンと外筒からなり、内ピンの先端が、外筒の先端より内側にあるガス射出成形用ガス注入ピン。
2. 内ピンの先端が、平坦面又は曲面である請求項１に記載のガス射出成形用ガス注入ピン。
3. 内ピンの先端が、円錐又は角錐である請求項１に記載のガス射出成形用ガス注入ピン。
4. 請求項１〜３のいずれかに記載のガス射出成形用ガス注入ピンをその先端が金型内壁面より突出するように組み込んだガス射出成形用金型。

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