JP4193164B2 - コンクリート型およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば自動車部品等に使用される樹脂成形品を成形するためのコンクリート型およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の樹脂成形品を成形するために従来より成形用金型が用いられている。金型製作には極めて多くの機械加工時間を必要とすることから、そのような機械加工に要する時間を削減すべくコンクリート型が開発されている。
【0003】
図2および図3は、従来のコンクリート型の製造方法を工程順に示している。この工法はニッケル(Ni)殻を電鋳により形成する場合の例とするが、電鋳によらず蒸着にてニッケル殻を形成することもできる。
図2(A)において、電鋳槽1内に設置された成形品モデル2の表面にNi殻3を形成する。一方、図2(B)のように成形品モデル2と型合わせすべき鋳物フレーム4を形成する。
【0004】
つぎに、図2(C),(D)のように成形品モデル2のNi殻3および鋳物フレーム4はそれぞれ、相互の合わせ部がフライス盤等のカッター100によって機械加工され、型合わせの際の合わせ面5,6が形成される。
【0005】
つぎに図3(A)において、型合わせにより成形品モデル2と閉合した鋳物フレーム4内にコンクリート材7を注入する。そして、図3(B)のように成形品モデル2を脱型することにより、コンクリート型10が製造される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のコンクリート型の製造方法において、図2(C),(D)のようにNi殻3および鋳物フレーム4相互の合わせ部を切削するためには、極めて多くの機械加工が必要になる。そのため型納期短縮を意図しながらも、このような合わせ部の切削加工時間がネックとなり、またコストを高くする原因となっていた。
【0007】
また、型納期の短縮等を図るべく鋳物フレーム4を簡素化すると、その分だけコンクリート材7の容積もしくは容量が増大し、全体としてヤング率(縦弾性係数)が低下する。この場合、成形時にNi殻3に加わる応力が著しく大きくなる結果になってしまう。
【0008】
本発明は以上の点に鑑み、有効かつ効果的に製作コストを低減し得るコンクリート型およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のコンクリート型の製造方法は、表皮層が被着した成形品モデルにフレームを型合わせして、このフレーム内領域にコンクリート材を注入することによりコンクリート型を製造する方法であって、上記成形品モデルの表皮層と上記フレームとの合わせ部に所定間隙を設け、この合わせ部周囲を漏れ止め材で封止して上記コンクリート材を注入し、上記成形品モデルを脱型することにより成形用意匠面を得ることを特徴とする。
【0010】
本発明のコンクリート型の製造方法において、前記コンクリート材が注入されるフレーム内領域の適所に、好ましくは一つまたは複数の補強材が介挿される。
【0011】
また、本発明のコンクリート型の製造方法において、好ましくは、予め求めた前記成形用意匠面に作用する成形時の応力に基き、前記補強材の配置位置および数量等を設定する。
【0012】
また、本発明のコンクリート型の製造方法において、前記表皮層は、前記成形品モデル表面に電鋳等により形成されたニッケル殻であり、前記フレームは鋳物フレームであることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、成形品モデルの表皮層とフレームとの合わせ部に所定間隙を設け、この合わせ部の周囲を封止してコンクリート材を注入することで、合わせ部の合わせ面を形成するための機械加工を削減あるいは実質的に不要とすることができる。
また、コンクリート材が注入されるキャビティ内の適所に補強材を介挿することで、フレーム構造の簡素化を図りながら所定の剛性強度を確保することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基き、従来例と実質的に同一または対応する部材には同一符号を用いて、本発明によるコンクリート型およびその製造方法の好適な実施の形態を説明する。
この実施形態にあっては、たとえば自動車部品等に使用される樹脂成形品を成形するためのコンクリート型を製造するものとし、前述した従来例と同様に成形モデルに表皮層としてのニッケル(Ni)殻を電鋳により形成する場合を例にとって説明する。
【0017】
図1は、本発明によるコンクリート型の製造方法を工程順に示している。図1(A)において、先ず、意匠面を有する成形品モデルを製作し、この成形品モデルを電鋳槽1に入れて電鋳によりNi殻を製作する。これにより、成形品モデル2の表面にNi殻3が形成され、このNi殻3には成形品モデルの意匠面が転写されることになる。一方、図1(B)のように成形品モデル2と型合わせすべき鋳物フレーム4を形成する。
ここで、鋳物フレーム4の構造は従来の場合に比較して簡素化されている。すなわち、各フレーム部材4a〜4dの特に高さは低く、相互間の間隔は広くなるように設定されている。
【0018】
つぎに図1(C)において、型合わせにより成形品モデル2に鋳物フレーム4を閉合する。この際、成形品モデル2に付いているNi殻3の外周に樹脂等で成る漏れ止め材13を適量適用し、硬化させることにより合わせ部を封止する。
そして、閉合した鋳物フレーム4内領域にコンクリート材7を注入する。この場合、本発明では鋳物フレーム4の高さを低くすることで、特にNi殻3と鋳物フレーム4との合わせ部に所定の間隙11を設け、この合わせ部の周囲を上記のように漏れ止め材13で封止してコンクリート材7を注入する。これにより隙間からコンクリート材7が漏れだすのを防止することができる。また、コンクリート材7が注入される鋳物フレーム4内の適所に、一つまたは複数の補強材12が介挿される。
【0019】
また、コンクリート材7は高強度で、高い流動性を持つものを使用する。このようなコンクリート材7を使用することで、小さい隙間まで満遍なく注入することができ、補強材12と意匠面Pとの間に隙を空けて施工可能となる。そして、高い強度を確保することができる。なお、ここで言うコンクリート材とは、セメントペースト、モルタル、コンクリートを包含するもので、広く、セメントをバインダーとした硬化体の総称を指す。
【0020】
Ni殻3と鋳物フレーム4との合わせ部の間隙11は、典型的には5〜40mmの範囲が好ましい。この間隙11にコンクリートを注入する場合、コンクリートの強度を上げるためにコンクリート材7に金属ファイバーを混入するため、この混入する金属ファイバーの長さを考慮するとその間隙は最低5mm程度を必要とするが、間隙が40mm以上ある場合には必ずしも高い補強効果を期待し得ない。
【0021】
また、補強材12としては鉄製の丸棒等を用いるが、その配置位置および数量等は、予め求めたNi殻3(意匠面P)に作用する射出成形時の応力に基いて設定される。補強材12の設定方法にはCAE(Computer-Aided Engineering)を用いて、射出成形時にNi殻3にかかる応力を予測することで、補強材12の適切な配置や数量を設定することができる。たとえば、CAEを用いて鋳物フレーム4の構造とそれに対応する射出成形時のNi殻3における応力分布を求め、応力分布に不良部分NGがある場合には、この不良部分NGがなくなるように鋳物フレーム4の構造を求めるというものである。
【0022】
そして、図1(D)のように成形品モデル2を脱型することにより、この成形品モデル2、鋳型フレーム4、補強材12およびコンクリート材7が一体化したコンクリート型(固定型)10が製造される。このコンクリート型10の表面には成形品モデルの意匠面Pが転写されている。このコンクリート型10において、その構造は簡素化されているともに、型締力をコンクリート部分で受けるようになっているが、上記のように補強材12を適切に設定配置することで高い強度を確保することができる。
【0023】
上記のように本発明では、Ni殻3と鋳物フレーム4との合わせ部に間隙11を設け、合わせ部の周囲を封止してコンクリート材7を注入することで、相互の型合わせ面の形成工程を不要とすることができる。
【0024】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施形態にのみ限定されるものでなく、本発明の範囲内で適宜変更等が可能である。
たとえば、鋳物フレーム4や補強材12の具体的構成や間隙11の数値等は必要に応じて適宜変更することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、この種のコンクリート型においてフレーム構造を簡素化するとともに型合わせ面の形成工程をなくし、材料費の削減や機械加工の大幅な工数低減等により製品、製作コストを減少することができる。したがって、コストの低減を図りながら、納期短縮化を有効に実現する等の利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(D)は、本発明の実施形態におけるコンクリート型の製造方法を工程順に示す図である。
【図2】従来のコンクリート型の製造方法を工程順に示す図である。
【図3】従来のコンクリート型の製造方法を工程順に示す図である。
【符号の説明】
1 電鋳槽
2 成形品モデル
3 Ni殻
4 鋳物フレーム
7 コンクリート材
10 コンクリート型
11 間隙
12 補強材
13 漏れ止め材
Claims (4)
- 表皮層が被着した成形品モデルにフレームを型合わせして、このフレーム内領域にコンクリート材を注入することによりコンクリート型を製造する方法であって、
前記成形品モデルの表皮層と前記フレームとの合わせ部に所定間隙を設け、この合わせ部の周囲を漏れ止め材で封止して前記コンクリート材を注入し、前記成形品モデルを脱型することにより成形用意匠面を得ることを特徴とするコンクリート型の製造方法。 - 前記コンクリート材が注入されるフレーム内領域の適所に、一つまたは複数の補強材が介挿されることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート型の製造方法。
- 予め求めた前記成形用意匠面に作用する成形時の応力に基き、前記補強材の配置位置および数量を設定することを特徴とする、請求項1または2に記載のコンクリート型の製造方法。
- 前記表皮層は、前記成形品モデル表面に電鋳により形成されたニッケル殻であり、前記フレームは鋳物フレームであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンクリート型の製造方法。
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