JP3779212B2 - 茶葉抽出液の製造方法、およびその茶葉抽出液を用いた茶飲料の製造方法。 - Google Patents
茶葉抽出液の製造方法、およびその茶葉抽出液を用いた茶飲料の製造方法。 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、苦渋味が少なく、澱が生成しないコクと旨みを有する清涼飲料用の缶およびペットボトル等の茶飲料に用いられる茶葉抽出液の製造方法および得られた茶葉抽出液を用いた茶飲料の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、茶飲料は、茶葉を50〜90℃の高温にて水抽出を行い、得られた茶葉抽出液を用いて製造されていた。しかしながら、近年、このような高温で抽出された高温抽出液の使用による苦渋味の強い茶飲料が若年層を中心に敬遠される傾向にある。したがって、よりタンニンの抽出を抑制して旨味成分であるアミノ酸等の抽出割合を多く、苦渋味を少なくした低温抽出液使用による茶飲料が多く製造販売されている。
【0003】
しかしながら、茶葉の低温抽出方法は、水抽出中の可溶性固形分の量が高温抽出の場合より少なく、高温抽出と同等の固形分を得ようとする場合は、抽出に使用する茶葉の使用量を多くするか、あるいは抽出時間を長時間行う等の必要があった。そのため、茶葉を酵素分解抽出処理して茶葉からの抽出固形分を高める方法が数多く提案されている。
【0004】
例えば、特公昭39−746号公報においては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼを添加して45℃にて20時間酵素処理を行う方法により、低温抽出における茶成分を増加する方法が提案されている。また、特公昭46―17958号公報においても、セルラーゼ、プロトペクチナーゼ(植物組織崩壊酵素)を添加する事で40℃、5時間抽出における茶成分を増加する方法が提案されている。さらに、特開昭59−205941号公報においてもSPS−アーゼによる同様の提案をしている。しかしながら、これらは処理時間に長時間を要し、より短時間で処理が可能な効率的抽出条件が求められていた。
【0005】
また、茶葉を酵素分解抽出処理する場合に、均一な酵素分解抽出処理を目的として物理的に攪拌を行う必要がある。この際、空気中の酸素が巻き込まれて分解処理液に溶解するため、酸化による酵素分解処理抽出液の変色、風味変化等の変質が問題となる場合があった。このような問題を解決するため、特開平1−300848号公報においては、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ホスホリパーゼを添加処理する事で茶葉中のビタミンCおよびビタミンEを溶出させ、これらの酸化防止効果により茶葉抽出液の変色、変質を防止させる事が提案されている。しかしながら、ホスホリパーゼは高価であることから、これに替わる酸化防止方法が求められていた。
【0006】
さらに、特公平2−51579号公報においては、細胞壁構成物質分解酵素および還元性を有する粘調な液体に緑茶粉末を添加する事で、同様な効果が得られるとしているが、緑茶飲料においては、この文献に提案されているような水飴、麦芽抽出液の添加は一般的ではなく好ましくないものである。
【0007】
一方、高温抽出に代わり、よりタンニンの抽出を抑制して旨味成分であるアミノ酸の抽出割合を多く、苦渋味を少なくした低温抽出法についてみると、タンニン/ブリックス値(以下、Bx値と略称する場合がある。)で捉えた場合、必ずしも高温抽出法と比較してより有為に差異があるものではなく、より有為に差異がある抽出法により苦渋味を少なくコクと旨味を強化する抽出法が求められるものである。
【0008】
タンニン/Bx値を少なくする手段としては、PVPP(ポリビニルポリピロリドン)を添加する方法が、以前より公知の方法として提案されているが、茶葉の酵素分解抽出処理方法と組み合わせた例は知見としては見当たらない。
【0009】
さらに、茶葉の抽出液の澱生成を防止する方法として、特開平8−228684号公報においてヘミセルラーゼ活性を有するセルラーゼ酵素剤を添加する方法が提案されているが、茶葉中には澱粉質も含まれており、この澱粉質も茶飲料の澱の生成原因となるので、根本的な澱生成防止とはならない。
【0010】
また、澱生成防止技術としては、特許第3096035号においてα―アミラーゼにて処理する事で茶飲料の澱の生成原因となる茶葉中の澱粉質を分解する方法が提案されている。しかしながら、茶葉中の繊維質に由来する澱生成を防止することができないため、これも根本的な澱生成防止とはならない。
【0011】
このように茶葉の酵素分解抽出処理液を用いて、苦渋味が少なく、コクと旨味を有し、澱が生成しない茶飲料の製造方法の開発が強く望まれる状況にあった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、低温かつ短時間で効率的に茶葉から有用成分が抽出できることにより、苦渋味が少なく、澱が生成しないコクと旨みを有する茶飲料とすることができる茶葉抽出液の製造方法およびこの茶葉抽出液を用いた茶飲料の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、およびプロトペクチナーゼを少なくとも有する酵素群を用い、茶葉を酵素分解抽出処理することを特徴とする茶葉抽出液の製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、このように茶葉抽出液の抽出に際して、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、およびプロトペクチナーゼを少なくとも有する酵素群を用いて行うものであるので、得られる茶葉抽出液中の可溶性固形分の抽出効率を高め、これにより短い時間でも抽出を行うことが可能であり、さらに抽出液中のタンニン/Bx値が低いことから、本発明で得られる茶葉抽出液を用いることにより、苦渋味が少なく、かつコクと旨みを有する茶飲料を製造することができる。また、抽出成分は十分に分解されていることから、得られる茶葉抽出液を用いて製造される茶飲料における澱の生成を低減することができる。
【0015】
上記請求項1に記載された発明においては、請求項2に記載するように、上記酵素群は、さらにα−アミラーゼを有することが好ましい。このようにα−アミラーゼを有することにより茶葉の酵素分解抽出処理に際して、茶葉中のでんぷん質を分解することが可能であることから、Bx値を増加させることが可能であり、タンニン/Bx値を低下させることができ、よってより苦渋味が少なく、かつコクと旨みを有する茶飲料を製造することができる茶葉抽出液を得ることができる。また、でんぷん質を分解するものであることから、澱の生成も低減させることが可能であり、結果として最終製品である茶飲料における澱生成といった不具合を防止することができる。
【0016】
上記請求項1または請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、上記酵素群は、さらにプロテアーゼを有することが好ましい。このようにプロテアーゼを酵素群に含ませることにより、茶葉中のたんぱく質の分解が促進され、上記α−アミラーゼと同様の理由により、最終製品としての茶飲料において苦渋味が少なく、かつコクと旨みを有する茶飲料を製造することができ、かつ澱生成といった不具合を防止することができるからである。
【0017】
上記請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項4に記載するように、上記酵素分解抽出処理は、20℃〜50℃の範囲内の温度で行われることが好ましい。上記範囲より酵素分解抽出処理温度が低い場合は、抽出効率が低く、抽出に時間を要するようになる場合があるからであり、上記範囲より酵素分解抽出処理温度が高い場合は、得られる茶葉抽出液を用いて製造した茶飲料に茶葉の生臭さが残る場合があり、好ましくないからである。
【0018】
上記請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項5に記載するように、上記酵素分解抽出処理は、1時間〜2時間の範囲内で行われることが好ましい。上記範囲より短い場合は、酵素分解抽出処理条件によっては、抽出処理が不十分であり、茶葉抽出液中のBx値が不足する可能性があるため好ましくなく、上記範囲より長時間抽出しても、Bx値の大幅な増加が期待できないからである。
【0019】
上記請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項6に記載するように、上記酵素分解抽出処理は、pH4.0〜6.0の範囲内で行われることが好ましい。上記範囲内よりpHが低い場合は、酵素の働きが低下して抽出効率が低下したり、香味に酸味を感じたりする原因になるからである。さらに上記範囲内よりpHが高い場合は、酵素の働きが低下して抽出効率が低下したり、香味に生臭さやヌメリを感じたりする原因になるからである。
【0020】
上記請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項7に記載するように、上記酵素分解抽出処理を行う際に、アスコルビン酸またはその塩の少なくとも一方を添加することが好ましい。茶葉の酵素分解抽出処理においては、抽出液が褐変する場合があるが、アスコルビン酸またはその塩の少なくとも一方を添加することにより、抽出液の褐変化を防止することができるからである。
【0021】
上記請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項8に記載するように、上記酵素分解抽出処理を行う際に、ポリビニルポリピロリドンを添加することが好ましい。このようにポリビニルポリピロリドンを添加することにより、茶葉抽出液中のタンニン濃度を低下させることが可能となり、タンニン/Bx値を低下させることが可能となる。よって、得られる茶葉抽出液を用いた茶飲料を、より苦渋味が少なく、かつコクと旨みの良好なものとすることができるからである。
【0022】
本発明は、さらに上記請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載の茶葉抽出液の製造方法により得られた茶葉抽出液を用いることを特徴とする茶飲料の製造方法を提供する。
【0023】
本発明によれば、請求項9に記載するように、上記請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載の茶葉抽出液の製造方法により得られた茶葉抽出液を用いるものであるので、苦渋味が少なく、かつコクと旨みの良好な茶飲料を得ることができる。
【0024】
上記、請求項9に記載された発明においては、請求項10に記載するように、上記茶葉抽出液と、他の製造方法により得られた茶葉抽出液とを混合して用いるものであってもよい。このように他の製造方法により得られた茶葉抽出液を混合して用いることにより、得られる茶飲料を種々の嗜好に対応したものとすることができるからである。
【0025】
上記請求項10に記載された発明においては、請求項11に記載するように、上記他の製造方法により得られる茶葉抽出液が、高温抽出法、低温抽出法、および含水アルコール抽出法から選択される少なくとも一つの製造方法により得られる茶葉抽出液であることが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明は、茶葉抽出液の製造方法と、その製造方法により得られた茶葉抽出液を用いた茶飲料の製造方法とからなるものである。以下、これらについて説明する。
【0027】
A.茶葉抽出液の製造方法
本発明の茶葉抽出液の製造方法は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、およびプロトペクチナーゼを少なくとも有する酵素群を用い、茶葉を酵素分解抽出処理することを特徴とするものである。
【0028】
本発明は、このように少なくともセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、およびプロトペクチナーゼの4種類の酵素を用いて、茶葉を酵素分解抽出処理することにより、従来の茶葉の酵素分解抽出処理と比較して、効率的に酵素分解することが可能であり、かつ得られる茶葉抽出液中のBx値が高いという特性を有するものである。
【0029】
このように効率的に茶葉を酵素分解することができるので、短時間で高Bx値の茶葉抽出液を得ることができるという利点を有し、さらに茶葉抽出液中のBx値が高いことから、この茶葉抽出液を原料として用いた茶飲料は、苦渋味が少なく、かつコクと旨みの良好なものとすることができるという利点を有する。さらに本発明においては、上述したような酵素群を用いるものであるので、固形分が十分に分解されており、茶飲料とした場合に、澱生成による不具合の発生を防止することができる。
【0030】
以下、このような茶葉抽出液の製造方法について詳細に説明する。
【0031】
1.原材料
本発明の茶葉抽出液の製造方法は、まず、茶葉、酵素群、添加剤、および水等を原材料として準備する。
【0032】
(1)茶葉
本発明における茶葉とは、茶樹(Camellia sinensis)の葉や茎を収穫し、加工したものを示すものであり、茶葉の発酵状態により緑茶、烏龍茶、および紅茶に分けることができるが、本発明においては、これらのいかなる発酵状態の茶葉をも用いることが可能である。
【0033】
本発明においては、中でも収穫後速やかに蒸気又は火熱で熱する作業を行うことにより、茶葉に存在する酵素を失活させ、成分の酸化が抑制させた緑茶の茶葉を用いることが好ましい。近年緑茶において、特に苦渋味が嫌われる傾向にあり、このため本発明の利点を有効に活かすことができるからである。
【0034】
本発明に用いられる緑茶の茶葉としては、一般的に緑茶と称される茶葉であれば、いかなるものであっても用いることが可能であり、具体的には、玉露、てん茶、かぶせ茶、煎茶、番茶などを挙げることができる。また、必要に応じて、副原料として玄米や各種植物の葉、茎、根などをブレンドしたものを用いてもよい。
【0035】
(2)酵素群
本発明の特徴は、このような茶葉を、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、およびプロトペクチナーゼを少なくとも有する酵素群を用いて酵素分解処理する点にある。以下、これらの各酵素について詳細に説明する。
【0036】
a.セルラーゼ
本発明に用いられるセルラーゼとは、セルロースのβ−1,4−グリコシド結合を加水分解してセロピオースを生成する反応を行う酵素である。本発明においては、一般に食品業界においてセルラーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、特にその由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
【0037】
一般的には、綿、紙などの天然セルロースに良く作用するTrichoderma viride起源のセルラーゼと化学修飾して水溶性にしたセルロース(例;CMCなど)に良く作用するAspergillus niger起源のセルラーゼの2種類が製造販売されており、植物組織等の崩壊および溶解に利用されている。具体的にはTri.viride起源のセルロシンT2、Asp.niger起源のセルロシンAC40またはセルロシンAL(以上、何れも阪急共栄物産株式会社販売)、同じくTri.viride起源のセルラーゼ“オノズカ”3S(ヤクルト薬品工業株式会社販売)、同Tri.viride起源のセルラーゼT「アマノ」4、Asp.niger起源のセルラーゼA「アマノ」3(以上、何れも天野エンザイム株式会社販売)等を用いる事が可能である。
【0038】
本発明においては、このようなセルラーゼを、0.01重量%〜0.50重量%、好ましくは0.03重量%〜0.30重量%の範囲内で用いることが好ましい。上記範囲より添加量が少ない場合は、酵素分解抽出効率を向上させる効果を発揮することができず、一方上記範囲より多く添加しても大幅な酵素分解抽出効率の向上が期待できず、コスト面で不利となるからである。
【0039】
b.ヘミセルラーゼ
本発明に用いられるヘミセルラーゼとは、ヘミセルロースのグリコシド結合を加水分解する反応を行う酵素である。本発明においては、一般に食品業界においてヘミセルラーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、特にその由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
【0040】
一般的には、Tri.viride起源のものとAsp.niger起源のものが製造販売されており、果物、キノコ類の組織崩壊や穀類組織の軟化、穀類糖化液の濾過性向上等に利用されている。
具体的には、Tri.viride起源のセルロシンTP25、Asp.niger起源のセルロシンHC (以上、何れも阪急共栄物産株式会社販売)、同じくAsp.niger起源のセルラーゼY−NC(ヤクルト薬品工業株式会社販売)、同Asp.niger起源のヘミセルラーゼ「アマノ」90G (天野エンザイム株式会社販売)等を用いる事が可能である。
【0041】
本発明においては、このようなヘミセルラーゼを、0.01重量%〜0.50重量%、好ましくは0.03重量%〜0.30重量%の範囲内で用いることが好ましい。上記範囲より添加量が少ない場合は、酵素分解抽出効率を向上させる効果を発揮することができず、一方上記範囲より多く添加しても大幅な酵素分解抽出効率の向上が期待できず、コスト面で不利となるからである。
【0042】
c.ペクチナーゼ
本発明に用いられるペクチナーゼとは、ペクチンデポリメラーゼもしくはポリガラクトウロニダーゼとも称される酵素であり、ポリガラクツロン酸(ペクチン酸)のα−1,4’−グリコシド結合を加水分解する反応を行う酵素である。本発明においては、一般に食品業界においてペクチナーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、特にその由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
【0043】
一般的には、Asp. pulverulentus起源のものとAsp.niger起源のものが製造販売されており、果汁の清澄化、搾汁の歩留まり向上に利用されている。
【0044】
具体的には、Asp.niger起源のセルロシンPC5、セルロシンPE60、セルロシンPEL(以上、何れも阪急共栄物産株式会社販売)、同じくAsp.niger起源のペクチナーゼ3SとペクチナーゼHL(以上、何れもヤクルト薬品工業株式会社販売)、同Asp.niger起源のペクチナーゼ「アマノ」PLとAsp. pulverulentus起源のペクチナーゼG「アマノ」 (以上、何れも天野エンザイム株式会社販売)等を用いる事が可能である。
【0045】
本発明においては、このようなペクチナーゼを、0.01重量%〜0.50重量%、好ましくは0.03重量%〜0.30重量%の範囲内で用いることが好ましい。上記範囲より添加量が少ない場合は、酵素分解抽出効率を向上させる効果を発揮することができず、一方上記範囲より多く添加しても大幅な酵素分解抽出効率の向上が期待できず、コスト面で不利となるからである。
【0046】
d.プロトペクチナーゼ
本発明に用いられるプロトペクチナーゼとは、プロトペクチンに作用して可溶性ペクチン(可溶性ペクチン酸)とする反応を行う酵素で植物組織崩壊酵素、あるいはマセレイテイングエンザイムとも別称される。本発明においては、一般に食品業界においてプロトペクチナーゼ、植物組織崩壊酵素、あるいはマセレイテイングエンザイムと称される酵素であれば用いることが可能であり、特にその由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
【0047】
一般的には、Rhizopus属を起源とするものが販売されており、植物組織間の細胞間物質(主として不溶性のプロトペクチン)に作用して植物組織を単細胞化する働きがある。具体的には、Rhizopus属を起源とするセルロシンME(阪急共栄物産株式会社販売)、同じくRhizopus属を起源とするマセロチームA(ヤクルト薬品工業株式会社販売)等を用いることが可能である。
【0048】
本発明においては、このようなプロトペクチナーゼを、0.01重量%〜0.50重量%、好ましくは0.03重量%〜0.30重量%の範囲内で用いることが好ましい。上記範囲より添加量が少ない場合は、酵素分解抽出効率を向上させる効果を発揮することができず、一方上記範囲より多く添加しても大幅な酵素分解抽出効率の向上が期待できず、コスト面で不利となるからである。
【0049】
e.その他の酵素
本発明においては、上記セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、およびプロトペクチナーゼの4つの酵素を必須酵素として用いるのであるが、さらに酵素分解抽出処理効率を向上させ、茶葉抽出液中のBx値を向上させるために、さらにα−アミラーゼおよびプロテアーゼのいずれか、もしくは両者を添加することが好ましい。また、α−アミラーゼおよび/またはプロテアーゼを添加することにより、茶飲料とした際の澱の生成をさらに抑えることが可能であるという利点を有することから、これらを添加することが好ましいといえる。
【0050】
まず、本発明に用いられるα−アミラーゼについて説明する。本発明に用いられるα−アミラーゼとは、エンドアミラーゼとも称されるものであり、デンプン分子内部のα−1,4’−グリコキシド結合を任意の位置あるいはランダムに加水分解して可溶性のデキストリンを生成する酵素である。本発明においては、一般に食品業界においてα−アミラーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、特にその由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
【0051】
一般的には、耐熱性の高い細菌型のBacillus subtilisおよびBac.licheniformis起源のものと比較的耐熱性の低いカビ型のAsp.oryzae起源のものが販売されている。
【0052】
具体的には、Bac.subutilis起源のフクタミラーゼ30、フクタミラーゼ50、液化酵素6TおよびAsp.oryzae起源のオリエンターゼAO40(以上、何れも阪急共栄物産株式会社販売)、Bac.subutilis起源のクライスターゼ、Bac.licheniformis起源のクライスターゼY7(以上、何れも大和化成株式会社販売)、Bac.subutilis起源のアミラーゼAD「アマノ」1、アミラーゼAH「アマノ」、Asp.oryzae起源のビオザイムA、ビオザイムF10SDおよびビオザイムL(以上、何れも天野エンザイム株式会社販売)等を用いることが可能である。
【0053】
本発明においては、このようなα−アミラーゼを、0.01重量%〜0.50重量%、好ましくは0.03重量%〜0.30重量%の範囲内で用いることが好ましい。上記範囲より添加量が少ない場合は、酵素分解抽出効率を向上させる効果を発揮することができず、一方上記範囲より多く添加しても大幅な酵素分解抽出効率の向上が期待できず、コスト面で不利となるからである。
【0054】
一方、本発明で用いられるプロテアーゼとは、タンパク質、ペプチドに作用してペプチド結合の加水分解を触媒する酵素である。プロテアーゼには、その作用からタンパク質、ペプチドに作用して大まかに分解し、低分子ペプチドを生成するエンドペプチダーゼ(プロテイナーゼ)とペプチドに作用してアミノ酸を生成するエキソペプチダーゼ(ペプチダーゼ)の2種類に大別できる。また、作用至適pHの差異によりアルカリ性プロテアーゼ、中性プロテアーゼおよび酸性プロテアーゼの3種類に大別される。さらにプロテアーゼの起源としては、植物起源、動物起源あるいは微生物起源のものがあるが、エキソ型、エンド型、酵素起源および至適pHの差異は、分解効率が悪い場合や得られた分解抽出液の香味が悪かった等の悪影響がない限り、特に限定されるものではない。
【0055】
具体的には、Bac.subutilis起源のオリエンターゼ22BF、オリエンターゼ90N、ヌクレイシン、Asp.oryzae起源のオリエンターゼONS、Asp.niger起源のオリエンターゼ20A(以上、何れも阪急共栄物産株式会社販売)、Asp.oryzae起源のパンチダーゼNP−2、植物パパイヤ起源のパパインソルブル、Asp.niger起源のプロテアーゼYP−SS(以上、何れもヤクルト薬品工業株式会社販売)、Asp.oryzae起源のデナチームAP、Asp.niger起源のデナプシン、植物パパイヤ起源の食品用精製パパイン(以上、何れもナガセケムテック株式会社販売)、Asp.oryzae起源のプロテアーゼM「アマノ」、プロテアーゼA「アマノ」G、Rhi.niveus起源のニューラーゼF、Asp.melleus起源のプロテアーゼP「アマノ」3G、Bac.subutilis起源のプロテアーゼN「アマノ」、グルタミナーゼF「アマノ」100、動物腎臓起源のパンクレアチンF、植物パパイヤ起源のパパインW−40、植物パインアップル起源のプロメラインF(以上、何れも天野エンザイム株式会社販売)等を用いることが可能である。
【0056】
本発明においては、このようなプロテアーゼを、0.01重量%〜0.50重量%、好ましくは0.03重量%〜0.30重量%の範囲内で用いることが好ましい。上記範囲より添加量が少ない場合は、酵素分解抽出効率を向上させる効果を発揮することができず、一方上記範囲より多く添加しても大幅な酵素分解抽出効率の向上が期待できず、コスト面で不利となるからである。
【0057】
(3)添加剤
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、上記茶葉および酵素群の他に、添加剤を添加してもよい。具体的には、アスコルビン酸またはその塩、ポリビニルポリピロリドン、pH調整剤、香料、および着色料等を挙げることができる。以下、それぞれについて説明する。
【0058】
a.アスコルビン酸またはその塩
本発明においては、添加剤としてアスコルビン酸またはその塩を用いることが好ましい。ここで、アスコルビン酸の塩としては、ナトリウム塩が好適に用いられる。
【0059】
本発明においては、茶葉の酵素分解抽出処理を行う際に、このようにアスコルビン酸またはその塩を添加することにより、得られる茶葉抽出液の褐変化を防止することが可能となる。
【0060】
後述するように、酵素分解抽出処理に際しては、反応器内に原材料を添加した後、酵素分解および抽出が均一にかつ効率的に行われるように、これらを攪拌する。この際、必然的に酸素が原材料内に巻き込まれる。このため、タンニン等の成分が酸化して褐変化が生じることになる。上記アスコルビン酸またはその塩を添加することにより、この褐変化を防止することができるのである。
【0061】
本発明におけるこのアスコルビン酸またはその塩の添加量は、後述するように、これらがpH調整剤として機能することから、用いる酵素の至適pH等により異なるものではあるが、500〜3000ppmの範囲内、特に1500〜2500ppmの範囲であることが好ましい。上記範囲より少ない場合は、褐変化防止の観点からは不十分だからであり、上記範囲を超えて添加しても、褐変化の防止効果が向上するものではなく、コスト面で問題となるからである。
【0062】
b.ポリビニルポリピロリドン
本発明においては、得られる茶葉抽出液中のタンニン量を減らし、タンニン/Bx値を低下させるために、タンニンを選択的に吸着する水不溶性のポリビニルポリピロリドンを添加することが好ましい。このように、水不溶性ポリビニルポリピロリドンを添加することにより、茶葉抽出液中のタンニン量を低下させることが可能となり、タンニン/Bx値を低下させることができるので、得られる茶葉抽出液を茶飲料に用いた場合に、苦渋味が少なく、かつコクと旨みの良好なものとすることができるという本発明の利点をさらに大きなものとすることができる。
【0063】
本発明において用いられるポリビニルポリピロリドンは、水および一般的に使用される全ての溶媒に不溶なものであれば特に限定されるものではなく、食品飲料および食酢等の清澄濾過助剤として認可されたもので、ビール、ワイン、飲料等の混濁の原因であるポリフェノールを選択的に吸着除去できるもの等が好適に用いられる。
【0064】
本発明においては、市販されている、白色粉末状で平均粒子径は25〜100μmの範囲内のポリビニルポリピロリドンを用いることができる。具体的には、粒子径の分布により平均粒子径約25μmのダイバガンEF、同約40μmのダイバガンF、同110μmのクロスポビドンCおよび同約80〜100μmのダイバガンRS(以上、何れもBASF武田ビタミン株式会社販売)等が好適に用いられる。
【0065】
このようなポリビニルポリピロリドンは、濾過の対象と作業工程により使用されるポリビニルポリピロリドンの種類が適宜選択され、本発明においては特に限定されるものではないが、平均粒子径が小さい程、吸着効率が高まる事からダイバガンEFまたはダイバガンFを用いることが好ましい。
【0066】
本発明におけるこのようなポリビニルポリピロリドンの添加量としては、0.1重量%〜1.0重量%、好ましくは0.3重量%〜0.7重量%であることが好ましい。上記範囲を下回る場合は、タンニンの吸着量が少ないことから、必要とされる程度にタンニン/Bx値を低下させることができないことから好ましくなく、上記範囲を上回る場合は、タンニンの吸着量が増加する反面、必要以上に香味成分を吸着して香味の低下を招くとともにコスト面でのデメリットが大きくなってしまうからである。
【0067】
本発明においては、このようにして添加されたポリビニルポリピロリドンは、後述する酵素分解抽出処理の後、濾過または遠心分離等の手法により除去される。
【0068】
c.pH調整剤
本発明においては、上述した酵素の至適pH近傍で上記茶葉の酵素分解抽出処理を行うため、pH調整剤を用いてもよい。
【0069】
本発明に用いられるpH調整剤としては、上述したアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウム、さらには炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0070】
これらのpH調整剤の添加量は、原材料が目的とするpHとなるように適宜決定されるものであるが、アスコルビン酸またはその塩および炭酸水素ナトリウムの添加量の割合は、褐変化の防止効果のため必要なアスコルビン酸またはその塩の添加量を確保するとともに茶葉、酵素、水の混合系のpHがpH4.0〜6.0の範囲内、特にpH4.5〜5.5の範囲内になる様に適宜添加されることが好ましい。上記範囲内よりpHが低い場合は、酵素の働きが低下して抽出効率が低下したり、香味に酸味を感じたりする原因になるからである。さらに上記範囲内よりpHが高い場合は、酵素の働きが低下して抽出効率が低下したり、香味に生臭さやヌメリを感じたりする原因になるからである。
【0071】
d.その他の添加剤
本発明においては、この他、着香、着色、酸化防止または抗菌の目的で、それぞれ茶フレーバー等の香料、葉緑素等の着色料、ルチン等の酸化防止剤、ショ糖脂肪酸エステル等の抗菌目的の乳化剤等を適宜添加しても良い。
【0072】
(4)水
本発明において、酵素分解抽出処理を行うに際して用いる水は、特に限定されるものではないが、脱イオン水または蒸留水を用いることが好ましい。このように脱イオン水または蒸留水が好適であるのは、水中にカルシウムイオンおよび鉄イオン等が溶解している場合、茶葉抽出液中のタンニンと結合を生じ、不溶解物を生じたり、色の変化が生じたりすることを防止するためである。
【0073】
(5)重量比
本発明において、酵素分解抽出処理を行う際の原材料の重量比としては、用いる茶葉の種類や、要求される嗜好性等により大幅に異なるもので特に限定されるものではないが、一般的には、上記全原材料に対し、茶葉が3.0重量%〜10.0重量%の範囲内、酵素群全体として全原材料に対して、0.1重量%〜1.9重量%範囲内で、特に好ましくは0.3重量%〜1.5重量%の範囲内で配合され、酵素分解抽出処理が行われる。
【0074】
2.酵素分解抽出処理条件
本発明においては、上記原材料を反応器内に投入した後、上述したように攪拌しながら酵素分解抽出処理が行われ、その後、不溶性成分である茶葉や必要に応じて添加されるポリビニルポリピロリドン等を除去することにより茶葉抽出液が得られる。
【0075】
このような酵素分解抽出処理においては、温度、時間、およびpH等の抽出条件により、得られる茶葉抽出液中のBx値が大きく変動するものである。以下にこのような酵素分解抽出処理条件について説明する。
【0076】
(1)温度
本発明における酵素分解抽出処理においては、比較的低温で抽出処理を行うことが好ましい。具体的には、20℃〜50℃の範囲内、中でも35℃〜45℃の範囲内で行うことが好ましい。
【0077】
上記範囲より酵素分解抽出処理温度が低い場合は、茶葉の抽出効率が低下し、所定のBx値を有する茶葉抽出液を得るためには、多くの時間が必要となり、コスト面で問題となる他、十分に酵素群が働かない可能性があることから、得られる茶葉抽出液のBx値が十分なものとならない可能性があるからである。一方、上記範囲より高い温度で酵素分解抽出処理を行った場合は、得られる茶葉抽出液を用いて製造された茶飲料に茶葉の生臭さが生じる可能性があることから好ましくない。
【0078】
(2)時間
上記酵素分解抽出処理における処理時間としては、通常0.5時間〜5時間程度、特に1時間〜2時間程度の範囲内で行われることが好ましい。上記範囲より短い処理時間で処理を行った場合は、酵素分解が十分ではなく、茶葉抽出液中に必要とされるBx値を得ることができないことから好ましくない。一方、上記範囲より長い処理時間とした場合は、茶葉抽出液中のBx値があまり上昇せず、むしろコスト面で問題となるからである。
【0079】
(3)pH
本発明における茶葉の抽出処理は、酵素を用いた酵素分解抽出処理であることから、酵素の至適pH近傍または作用可能pH範囲内で酵素分解抽出処理を行うことが好ましい。本発明においては、少なくともセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、およびプロトペクチナーゼの4種類の酵素を用いて酵素分解抽出処理を行うことから、pHが茶葉、酵素、水の混合系のpHがpH4.0〜6.0の範囲内、特にpH4.5〜5.5の範囲内になる様に調整されて抽出処理が行われることが好ましい。
【0080】
上記範囲にpHを調整する方法としては、上記原材料の項で説明したpH調整剤を適当量投入することにより行われる。
【0081】
3.茶葉抽出液
上述した酵素分解抽出処理を行った後、上述したように遠心分離や濾過等の固液分離工程を経て、茶葉抽出液を得ることができる。
【0082】
上述したような本発明の茶葉抽出液の製造方法により得られる茶葉抽出液は、液中のBx値が高いことから、タンニン/Bx値が低いものを得ることができる。このようにタンニン/Bx値が低い茶葉抽出液を、後述する茶飲料の製造方法に用いる場合は、通常茶飲料においては茶飲料中のタンニン量を基準として使用される茶葉抽出液量が決定されることから、同じタンニン量であれば茶飲料中の茶葉抽出液濃度を上げることができ、コクや旨みを茶飲料に付与するBx成分の濃度を高めることが可能となる。よって、苦渋味が少なく、コクと旨みを有する茶飲料を得ることができるのである。
【0083】
B.茶飲料の製造方法
本発明の茶飲料の製造方法は、上述したような茶葉抽出液の製造方法により得られた茶葉抽出液を用いることを特徴とするものである。
【0084】
すなわち、上述した茶葉抽出液の製造方法により得られた茶葉抽出液を、例えば茶飲料中のタンニンが所定の濃度となるような量で希釈し、さらに添加剤等を加えて攪拌することにより製造することができる。
【0085】
この際、用いることができる添加剤としては、上記茶葉抽出液の製造方法の欄で説明した添加剤と同様に、褐変防止剤およびpH調整剤としてのアスコルビン酸、もしくはその塩、pH調整剤としての炭酸水素ナトリウム、さらにはフレーバー等を挙げることができる。
【0086】
本発明の茶飲料の製造方法においては、上述した酵素分解抽出処理により得られた茶葉抽出液の他に、他の製造方法により得られた茶葉抽出液をブレンドして希釈することにより茶飲料を製造するようにしてもよい。
【0087】
このように他の製造方法により得られた茶葉抽出液をブレンドすることにより、そのブレンドの比率によっては、種々の嗜好性に合致した茶飲料を製造することが可能となる。すなわち、従来の茶飲料の製造方法では、茶葉に含まれる成分を忠実に抽出するだけであるので、その茶葉本来の味から逸脱することができないという問題があり、茶飲料の味は原料に大きく依存してしまうといった問題があった。しかしながら、上述したように、種々の製造方法により得られる茶葉抽出液をブレンドすることにより、茶葉の原料に依存することなく、これまでになかった全く新しい香りと味とを有する茶飲料を得ることができるのである。
【0088】
1.茶葉抽出液の他の製造方法
本発明においては、上述した酵素分解抽出処理による茶葉抽出液の製造方法の他、例えば高温抽出法による茶葉抽出液、低温抽出法による茶葉抽出液、さらには含水アルコール抽出法による茶葉抽出液等をブレンドすることができる。以下、それぞれの抽出法について簡単に説明する。
【0089】
(1)高温抽出法
本発明でいう高温抽出法とは、茶葉から茶を抽出する一般的な方法であり、一例としては、図1に示すようなフローで行われる方法を挙げることができる。
【0090】
すなわち、茶葉を準備し、これを50℃〜90℃の温水にて、3分〜10分間程度抽出を行う。次いで、篩により茶葉から抽出液を液切り後、5℃〜20℃の範囲内となるまで冷却した後、遠心分離を行い、さらに膜濾過もしくは珪藻土濾過を行うことにより茶葉抽出液を得る方法である。
【0091】
このようにして得られた高温抽出法による茶葉抽出液は、茶葉が本来有する香味を忠実に抽出することができる方法であり、その味は茶葉の品質に依存するものである。
【0092】
なお、本発明における高温抽出法は、茶葉の抽出時の温度が50℃〜90℃である方法であれば特に上述したフローに示す方法に限定されるものではない。
【0093】
(2)低温抽出法
本発明でいう低温抽出法とは、例えば図2に示す方法を挙げることができる。すなわち、茶葉を準備し、これにアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸および脱イオン水を添加し、さらに必要な場合はポリビニルポリピロリドンを添加して、20℃〜40℃にて0.5〜5時間抽出を行う。そして、遠心分離法により固液分離を行い、5μmの濾紙を用いて濾過を行う。そして、加熱殺菌を行うことにより低温抽出液を得る。さらに必要に応じて得られた抽出液を濃縮し、加熱殺菌を行った後、冷却して濃縮低温抽出液とする事もできる。このような低温抽出法においては、上述したように必要に応じてポリビニルポリピロリドンを添加してポリビニルポリピロリドン処理を施すようにしてもよい。
【0094】
このようにして得られた低温抽出法による茶葉抽出液は、タンニン、カフェイン等の苦渋味成分の抽出が押さえられ、旨み成分であるアミノ酸が多く抽出されたものである。
【0095】
なお、一般的に行われている低温抽出法とは、本発明で使用される酵素を茶葉の抽出時に使用しないで茶葉の抽出時の温度が20℃〜40℃の範囲内の温度で行われる方法であり、特に上述したフローに示す方法に限定されるものではない。
【0096】
(3)含水アルコール抽出法
本発明でいう含水アルコール抽出法とは、例えば図3に示す方法を挙げることができる。すなわち、まず茶葉を準備し、これを重量比率が水:エタノール=10〜90:90〜10である含水アルコールを用い、30〜55℃で0.5〜5時間攪拌抽出を行う。そして、20〜30℃まで冷却した後、目開き2μmの濾紙を用いたフィルタープレス濾過にて固液分離を行う。そして、80〜90℃で5〜20分間保持して殺菌を行う。そして、0〜10℃まで冷却し、0〜10℃にて一昼夜以上静置し、濾紙による自然濾過を行って茶葉抽出液を得る方法である。
【0097】
このようにして得られた含水アルコール抽出法による茶葉抽出液は、上述した高温抽出法よりも抽出効率が良く、このためお茶本来の香味が最大限に回収されたものである。
【0098】
なお、本発明でいう含水アルコール抽出法とは、エタノールが10〜90重量%程度含まれる含水アルコールを用いた抽出法であれば、特に上述したフローに示す方法に限定されるものではない。
【0099】
2.茶葉抽出液のブレンド
本発明においては、上記「A.茶葉抽出液の製造方法」の欄で説明した酵素抽出法による茶葉抽出液と、上記「1.茶葉抽出液の他の製造方法」において説明した茶葉抽出液の製造方法による茶葉抽出液とをブレンドすることにより、種々の嗜好に合致した茶飲料を製造することができる。以下、この茶葉抽出液のブレンドについて説明する。
【0100】
通常行われてきた高温抽出法は、茶葉が本来持つ香味を忠実に抽出できるが、苦渋味が大きい点が嗜好的に嫌われる傾向にある。また、ポリビニルポリピロリドン処理を行った低温抽出法は、コク、旨味は強いが、渋味が僅かであるため、逆に嗜好的に物足りなさを感じる傾向にある。さらに、含水アルコール抽出法は茶葉本来の香味を最大限に引き出すが、アルコールを高含有しているため、単独で使用する場合は、アルコール風味を強く感じる傾向にあり、不適である。
【0101】
本発明の酵素抽出法は、苦渋味が少なく、かつコク、旨味を有するものであるが、例えば、嗜好的により香味に濃厚感があり、苦渋味も強くした茶飲料を求める場合には、本発明の酵素抽出法により得られた抽出液をベースとして苦渋味が強い高温抽出液と香味の強い含水アルコール抽出液を添加して苦渋味と香味を強くし、かつ、苦渋味が僅かでコク、旨味の強いポリビニルポリピロリドン処理を行った低温抽出液を添加する事で、苦渋味があり、コク、旨味もあるより香味に濃厚感を感じる事ができる茶飲料に仕上げる事ができる。
【0102】
各抽出液の添加割合については、特に限定されるものではないが、本発明の酵素抽出液を0.1〜10.0重量%、好ましくは0.3〜8.0重量%、高温抽出液を1.0〜20.0重量%、好ましくは1.0〜10.0重量%、ポリビニルポリピロリドン処理を行った低温抽出液を0.1〜3.0重量%、好ましくは0.2〜2.0重量%、および含水アルコール抽出液を0.1〜0.5重量%、好ましくは0.2〜0.3重量%と残り添加物と水を添加することにより、種々の嗜好に合致した茶飲料に仕上げることができる。
【0103】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0104】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。
【0105】
1.酵素の種類の検討
[実施例1−1〜1−4、比較例1−1〜1−17]
緑茶葉5.0重量%、アスコルビン酸ナトリウム0.2重量%、アスコルビン酸 0.03重量%と、下記表1に示す種類の各酵素をそれぞれ0.1重量%、残部を脱イオン水とした原材料液を、混合溶解および分散し、40℃にて2時間、酵素分解による低温抽出処理を行った。
【0106】
なお、脱イオン水を使用する理由としては、水中に溶解するカルシウムイオンおよび鉄イオン等が、茶成分であるタンニンと結合を生じ、不溶解物を生じたり色の変化を生じたりするのを防止する目的で使用され、これらの水中のイオン等が含有されないもので、その他、本発明品に悪影響を与えないものであれば、特に脱イオン水の使用に限定されるものではない。
【0107】
続いて低温抽出処理終了後、茶葉を遠心分離操作により除去後、その遠心分離後、収率80重量%で抽出液を得た。該遠心分離抽出液は、さらに80℃、10分間加熱による酵素失活処理操作を経て3μmフィルターにより濾過操作を行い、収率78重量%で清澄な緑茶低温抽出液を得た。
【0108】
なお、用いた酵素について、以下に示す。
・セルラーゼ:阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンAC40、Asp.niger由来
・ヘミセルラーゼ:阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンHC、Asp.niger由来
・ペクチナーゼ:阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンPE60、Asp.niger由来
・プロトペクチナーゼ:阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンME、Rhi.sp由来
・α―アミラーゼ:阪急共栄物産株式会社販売、オリエンターゼAO40、Asp.oryzae由来
・プロテアーゼ:天野エンザイム株式会社販売、プロテアーゼM、Asp.oryzae由来
表1に添加した酵素の種類と、得られた緑茶の茶葉抽出液のBx値およびタンニン/Bx値を示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1から明らかなように、実施例の茶葉抽出液は、Bx値は比較例のものに対して高く、またタンニン/Bx値は比較例のものに対して低い値となった。また、実施例で得られた茶葉抽出液から得られた茶飲料は、風味についても苦渋味が少なく、コクと旨味を有するもので、かつ澱生成のないものであった。
【0111】
表1の試験結果から明らかなように、茶葉を抽出処理する際にセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、およびプロトペクチナーゼ、さらにはこれらの酵素群にα―アミラーゼおよび/またはプロテアーゼを組み合わせて処理する事で、これらの酵素を単独あるいは2〜3種類組み合わせて処理する場合より茶葉由来の可溶性固形分の抽出効率が大きい事が判明した。
【0112】
2.処理温度の検討
[実施例2−1〜2−8]
上記実施例1−2と同様の処方、同様の抽出処理条件において、酵素分解抽出処理温度のみを変化させて清澄な緑茶低温抽出液を得た。
【0113】
表2に酵素分解処理温度と、Bx値および官能評価を示す。
【0114】
【表2】
【0115】
表2の結果から明らかな様に20℃未満では茶葉由来の可溶性固形分の抽出効率が小さく、また、50℃を超える温度になると茶葉の生臭さが生じてくる事が分かり、茶葉を酵素分解抽出処理する温度は、20〜50℃が好ましく、特に35〜45℃が望ましい事が判明した。
【0116】
3.処理pHの検討
[実施例1−2、実施例3−1〜3−7]
上記実施例1−2と同様の処方、同様の抽出処理条件にて、pH調整剤としてアスコルビン酸ナトリウムを0.2重量%添加した以外は、実施例1−2の場合より低いpH条件とする場合はアスコルビン酸を、実施例1−2の場合より高いpH条件とする場合は炭酸水素ナトリウムを添加して各pH条件を調整し、清澄な緑茶低温抽出液を得た。
【0117】
表3に酵素分解処理pHと、Bx値および官能評価を示す。
【0118】
【表3】
【0119】
表3の結果から明らかな様にpH4.0未満では酵素の働きが低下して抽出効率が低下したり、香味に酸味を感じたりする原因となり、pH6.0を越えると酵素の働きが低下して抽出効率が低下したり、香味に生臭さやヌメリを感じたりする原因となる事が分かり、茶葉を酵素分解抽出処理するpHはpH4.0〜6.0が好ましく、特にpH4.5〜5.5の範囲内が好ましい事が判明した。
【0120】
4.緑茶飲料とした場合の澱生成についての検討
上記実施例1−2および1−4と、比較例1−1および下記の比較例4−1で得た各茶葉抽出液のタンニン/Bx値を用い、緑茶飲料中の各々タンニン値が50mg%、アスコルビン酸ナトリウム含有値が350ppm、さらに炭酸水素ナトリウムを用いてpHが6.5となるように調整後、レトルト殺菌して試作した緑茶飲料の風味比較を官能評価したものと同緑茶飲料を55℃にて2週間保存して澱生成を観察した結果を示す。
【0121】
[比較例4−1]
緑茶葉5.0重量%、アスコルビン酸ナトリウム0.2重量%、アスコルビン酸0.03重量%を脱イオン水94.77重量%に添加、混合溶解および分散し、70℃にて10分間、高温抽出処理を行った。
【0122】
得られた該緑茶高温抽出液のタンニン/Bx値は、225mg%/Bxと酵素抽出処理により得られた実施例1−2の酵素処理緑茶低温抽出液145mg%/Bxより大幅に多いものであった。
【0123】
また、風味についても比較例1−1よりさらに苦渋味が多く、コクと旨味が少ないもので、かつ澱生成があるものであった。
【0124】
【表4】
【0125】
表4の結果から明らかな様に酵素処理した方が茶葉由来の可溶性固形分の抽出効率が大きい分、タンニン/Bx値が酵素処理しない低温、高温抽出液より小さく、従って緑茶飲料の官能評価においても苦渋味が少なく、コク、旨味も大きい事が判明した。また、澱生成の有無についても酵素処理した方が酵素処理しない低温、高温抽出液と較べ、澱生成が見られない事が判明した。
【0126】
5.アスコルビン酸ナトリウムの添加効果の検討
[実施例5−1]
上記実施例1−2と同様にして、清澄な緑茶低温抽出液を得た。
【0127】
[実施例5−2]
上記実施例1−2の処方において、アスコルビン酸ナトリウム0.2重量%およびアスコルビン酸 0.03重量%を添加しなかった以外は、同様の処方、同様の条件で酵素分解抽出処理を施し、清澄な緑茶低温抽出液を得た。
【0128】
上記二つの茶葉抽出液を用い、緑茶飲料中の各々タンニン値が50mg%、アスコルビン酸ナトリウム含有値が350ppm、さらに炭酸水素ナトリウムを用いてpHが6.5となるように調整後、レトルト殺菌して試作した緑茶飲料を55℃にて0〜4週間保存して褐色変化を観察した結果を示す。
【0129】
【表5】
【0130】
表5の結果から明らかな様に茶葉の酵素分解抽出処理を行う際に、このようにアスコルビン酸またはその塩を添加することにより、得られる茶葉抽出液の褐変化を防止することが可能となる事が判明した。
【0131】
6.ポリビニルポリピロリドンの添加効果の検討
[実施例6−1]
緑茶葉5.0重量%、アスコルビン酸ナトリウム0.2重量%、アスコルビン酸 0.03重量%、セルラーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンAC40、Asp.niger由来)0.1重量%、ヘミセルラーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンHC、Asp.niger由来)0.1重量%、ペクチナーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンPE60、Asp.niger由来)0.1重量%、プロトペクチナーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンME、Rhi.sp由来)0.1重量%、α―アミラーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、オリエンターゼAO40、Asp.oryzae由来)0.1重量%を脱イオン水94.27重量%に添加、混合溶解および分散し、さらにポリビニルポリピロリドン(BASF武田ビタミン株式会社販売、商品名ダイバガンEF)を0.5重量%添加分散し、40℃にて2時間、酵素分解による低温抽出処理を行うとともにポリビニルポリピロリドン(BASF武田ビタミン株式会社販売、商品名ダイバガンEF)による脱タンニン処理を行った。
【0132】
低温抽出処理終了後、茶葉およびポリビニルポリピロリドンを遠心分離操作を行って除去後、その遠心分離により収率80重量%の茶葉抽出液を得た。該遠心分離抽出液は、さらに80℃、10分間加熱による酵素失活処理操作を経て5μmフィルターにより濾過操作を行い、収率73重量%の清澄な緑茶低温抽出液を得た。
【0133】
得られた該緑茶低温抽出液のタンニン/Bx値は、123mg%/Bxとポリビニルポリピロリドンを添加しない酵素添加低温抽出処理により得られた緑茶低温抽出液145mg%/Bxより少ないものであった。また、風味についてもより苦渋味が少なく、よりコクと旨味を有するものとなっていた。
【0134】
なお、表6にポリビニルポリピロリドンの添加効果を示すため、実施例1−2、1−4および比較例1−1、4−1とともに実施例6−1の茶葉抽出液のタンニン/Bx値を、さらに各々タンニン値50mg%、アスコルビン酸ナトリウム含有値350ppm、炭酸水素ナトリウムを用いてpH6.5に調合後、レトルト殺菌して試作した緑茶飲料の風味比較を官能評価した結果を示す。
【0135】
【表6】
【0136】
表6の結果から明らかな様にポリビニルポリピロリドンを添加することにより、茶葉抽出液中のタンニン量を低下させることが可能となり、タンニン/Bx値を低下させることができるので、得られる茶葉抽出液を茶飲料に用いた場合に、苦渋味が少なく、かつコクと旨みの良好なものとすることができる事が判明した。
【0137】
7.烏龍茶における検討
[実施例7−1]
鳥龍茶葉5.0重量%、アスコルビン酸ナトリウム0.2重量%、アスコルビン酸 0.03重量%、セルラーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンAC40、Asp.niger由来)0.1重量%、ヘミセルラーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンHC、Asp.niger由来)0.1重量%、ペクチナーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンPE60、Asp.niger由来)0.1重量%、プロトペクチナーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンME、Rhi.sp由来)0.1重量%、α―アミラーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、オリエンターゼAO40、Asp.oryzae由来)0.1重量%を脱イオン水94.27重量%に添加、混合溶解および分散し、40℃にて2時間、酵素分解による低温抽出処理を行った。
【0138】
低温抽出処理終了後、茶葉を遠心分離操作を行って除去後、その遠心分離により収率80重量%で抽出液を得た。該遠心分離抽出液は、さらに80℃、10分間加熱による酵素失活処理操作を経て3μmフィルターにより濾過操作を行い、収率78重量%の清澄な鳥龍茶低温抽出液を得た。
【0139】
得られた該鳥龍茶低温抽出液のタンニン/Bx値は、171mg%/Bxと通常の抽出処理により得られた鳥龍茶高温抽出液222mg%/Bxより大幅に少ないものであった。また、風味についても苦渋味が少なく、コクと旨味を有するもので、かつ澱生成のないものであった。
[比較例7−1]
鳥龍茶葉5.0重量%、アスコルビン酸ナトリウム0.2重量%、アスコルビン酸 0.03重量%を脱イオン水94.77重量%に添加、混合溶解および分散し、80℃にて10分間、高温抽出処理を行った。
【0140】
得られた該鳥龍茶高温抽出液のタンニン/Bx値は、222mg%/Bxと酵素抽出処理により得られた実施例7−1の酵素処理鳥龍茶低温抽出液171mg%/Bxより大幅に多いものであった。また、風味についても実施例7−1よりさらに苦渋味が多く、コクと旨味が少ないもので、かつ澱生成があるものであった。
【0141】
なお、表7に実施例7−1および比較例7−1による各茶葉抽出液のタンニン/Bx値を、さらに各々タンニン値50mg%、アスコルビン酸ナトリウム含有値350ppm、炭酸水素ナトリウムを用いてpH6.5に調合後、レトルト殺菌して試作した鳥龍茶飲料の風味比較を官能評価したものと同鳥龍茶飲料を55℃にて2週間保存して澱生成を観察した結果を示す。
【0142】
【表7】
【0143】
8.紅茶における検討
[実施例8−1]
紅茶葉5.0重量%、アスコルビン酸ナトリウム0.2重量%、アスコルビン酸 0.03重量%、セルラーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンAC40、Asp.niger由来)0.1重量%、ヘミセルラーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンHC、Asp.niger由来)0.1重量%、ペクチナーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンPE60、Asp.niger由来)0.1重量%、プロトペクチナーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、商品名セルロシンME、Rhi.sp由来)0.1重量%、α―アミラーゼ(阪急共栄物産株式会社販売、オリエンターゼAO40、Asp.oryzae由来)0.1重量%を脱イオン水94.27重量%に添加、混合溶解および分散し、40℃にて2時間、酵素分解による低温抽出処理を行った。
【0144】
低温抽出処理終了後、茶葉を遠心分離操作を行って除去後、その遠心分離で収率80重量%で抽出液を得た。該遠心分離抽出液は、さらに80℃、10分間加熱による酵素失活処理操作を経て3μmフィルターにより濾過操作を行い、収率78重量%で清澄な紅茶低温抽出液を得た。
【0145】
得られた該紅茶低温抽出液のタンニン/Bx値は、147mg%/Bxと通常の抽出処理により得られた紅茶高温抽出液210mg%/Bxより大幅に少ないものであった。また、風味についても苦渋味が少なく、コクと旨味を有するもので、かつ澱生成のないものであった。
【0146】
[比較例8−1]
紅茶葉5.0重量%、アスコルビン酸ナトリウム0.2重量%、アスコルビン酸 0.03重量%を脱イオン水94.77重量%に添加、混合溶解および分散し、90℃にて10分間、高温抽出処理を行った。
【0147】
得られた該紅茶高温抽出液のタンニン/Bx値は、210mg%/Bxと酵素抽出処理により得られた実施例8−1の酵素処理紅茶低温抽出液147mg%/Bxより大幅に多いものであった。また、風味についても実施例8−1よりさらに苦渋味が多く、コクと旨味が少ないもので、かつ澱生成があるものであった。
【0148】
なお、表8に実施例8−1および比較例8−1による各茶葉抽出液のタンニン/Bx値を、さらに各々タンニン値50mg%、アスコルビン酸ナトリウム含有値350ppm、炭酸水素ナトリウムを用いてpH6.5に調合後、レトルト殺菌して試作した紅茶飲料の風味比較を官能評価したものと同紅茶飲料を55℃にて2週間保存して澱生成を観察した結果を示す。
【0149】
【表8】
【0150】
9.緑茶飲料
[実施例9]
実施例1−2で得られた緑茶低温抽出液6.3重量%、比較例4−1で得られた緑茶高温抽出液2.0重量%、および実施例6−1で得られたポリビニルポリピロリドン処理を行った低温抽出液1.0重量%、および含水アルコール抽出液0.3重量%を混合し、脱イオン水にて補水して、タンニン値50mg%、アスコルビン酸ナトリウム含有値350ppm、炭酸水素ナトリウムを用いてpH6.5に調合後、レトルト殺菌して緑茶飲料を試作した。
【0151】
得られた緑茶飲料は、苦渋味があり、コク、旨味もあるより香味に濃厚感を感じる事ができる茶飲料に仕上げる事ができた。
【0152】
【発明の効果】
本発明によれば、茶葉抽出液の抽出に際して、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、およびプロトペクチナーゼを少なくとも有する酵素群を用いて行うものであるので、得られる茶葉抽出液中の可溶性固形分の抽出効率を高め、これにより短い時間でも抽出を行うことが可能であり、さらに抽出液中のタンニン/Bx値が低いことから、本発明で得られる茶葉抽出液を用いることにより、苦渋味が少なく、かつコクと旨みを有する茶飲料を製造することができる。また、抽出成分は十分に分解されていることから、得られる茶葉抽出液を用いて製造される茶飲料における澱の生成を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】高温抽出法の工程を示すフローチャートである。
【図2】低温抽出法の工程を示すフローチャートである。
【図3】含水アルコール抽出法の工程を示すフローチャートである。
Claims (11)
- セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、およびプロトペクチナーゼを少なくとも有する酵素群を用い、茶葉を酵素分解抽出処理することを特徴とする茶葉抽出液の製造方法。
- 前記酵素群は、さらにα−アミラーゼを有することを特徴とする請求項1に記載の茶葉抽出液の製造方法。
- 前記酵素群は、さらにプロテアーゼを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の茶葉抽出液の製造方法。
- 前記酵素分解抽出処理は、20℃〜50℃の範囲内の温度で行われることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の茶葉抽出液の製造方法。
- 前記酵素分解抽出処理は、1時間〜2時間の範囲内で行われることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の茶葉抽出液の製造方法。
- 前記酵素分解抽出処理は、pH4.0〜6.0の範囲内で行われることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に器足の茶葉抽出液の製造方法。
- 前記酵素分解抽出処理を行う際に、アスコルビン酸またはその塩の少なくとも一方を添加することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の茶葉抽出液の製造方法。
- 前記酵素分解抽出処理を行う際に、ポリビニルポリピロリドンを添加することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の茶葉抽出液の製造方法。
- 請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載の茶葉抽出液の製造方法により得られた茶葉抽出液を用いることを特徴とする茶飲料の製造方法。
- 前記茶葉抽出液と、他の製造方法により得られた茶葉抽出液とを混合して用いることを特徴とする請求項9に記載の茶飲料の製造方法。
- 前記他の製造方法により得られる茶葉抽出液が、高温抽出法、低温抽出法、および含水アルコール抽出法から選択される少なくとも一つの製造方法により得られる茶葉抽出液であることを特徴とする請求項10に記載の茶飲料の製造方法。
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