JP3779045B2 - 食品用固形組成物およびその製造法 - Google Patents

食品用固形組成物およびその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カードラン等の加熱凝固性β−1,3−グルカンを含有する食品用固形組成物およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、練製品や惣菜など種々の食品の製造に際しては、品質の安定化、品質の改良、歩留まり向上等、作業性の向上を目的としてカードラン等の加熱凝固性β−1,3−グルカンが使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
加熱凝固性β−1,3−グルカンは食品に添加する場合、粉末で添加しても効果があるが、あらかじめアルカリに溶解して使用すると、より効果的な場合がある。そのため、加熱凝固性β−1,3−グルカンとアルカリ剤とを混合した後、これに水を加えて混合することが簡便であるが、まま粉状の「だま」が生じて均一な分散ができない問題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような問題を解決するため研究を重ねた結果、アルカリ剤を被覆することで、アルカリの溶出を数十秒から数分遅らしめることにより、加熱凝固性β−1,3−グルカンと、この被覆アルカリ剤を混和し水に加えた時に、まず加熱凝固性β−1,3−グルカンが水になじみ、続いて被覆アルカリ剤からアルカリが溶出することにより、均一な分散液ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、加熱凝固性β−1,3−グルカンおよび被覆アルカリ剤を含有してなる食品用固形組成物、特に、加熱凝固性β−1,3−グルカンがカードランである食品用固形組成物を提供するものである。また、本発明は、加熱凝固性β−1,3−グルカン、特に、カードランと、被覆アルカリ剤とを混合することを特徴とする食品用固形組成物の製造法を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の態様】
本発明の加熱凝固性を有するβ−1,3−グルカンは、D−グルコースを構成糖とし、構成糖がβ−1,3−グルコシド結合してなり、加熱凝固性を有する多糖類であり、微生物、動物あるいは植物などその起源を限定されない。その例として、例えば、カードラン、パラミロン、パキマンなど(ニュー・フード・インダストリー(New Food Industry)、第2巻、第49〜57頁)を挙げることができる。
カードランは、微生物により生産されるβ−1,3−グルコシド結合を主体とする加熱凝固性多糖類である。該多糖類としては、例えば、アルカリゲネス属またはアグロバクテリウム属の微生物によって生産する多糖類が挙げられる。具体的にはアルカリゲネス・フェカリス・バール・ミクソゲネス菌株10C3Kにより生産される多糖類[アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural Biological Chemistry),Vol.30, page 196(1966)]、アルカリゲネス・フェカリス・バール・ミクソゲネス菌株10C3Kの変異株NTK−u(IFO 13140)により生産される多糖類(特公昭48−32673号)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(IFO 13127)およびその変異株U−19(IFO 13126)により生産される多糖類(特公昭48−32674号)などが使用し得る。
【0007】
パラミロンは微生物により生産される多糖類である。例えば、ユーグレナ属の微生物によって生産されるもので、具体的にはユーグレナ・グラシリス・クレプス(Euglena Gracilis Kleds)NIES−47、ユーグレナ・グラシリス・クレプスNIES−48あるいはユーグレナ・グラシリス・バラエテイ・バチルス・ピリンシエイン(Euglena gracilis var.bacillaris pringsheim)NIES−49により生産される多糖類が挙げられる。これらの菌株は、(財)地球人間環境フォーラムに保管されている公知株である。本発明では、該多糖類に加熱凝固性を持たせたものが使用され得る。例えば、上記多糖類をアルカリで溶解後、不純物を除去し、pH10以下に調整して析出させたものが用いられる。
パキマンは、ポリア・コカス(Poria cocas)の菌核グルカンである。
上記の加熱凝固性β−1,3−グルカンのうち、性能、入手し易さ等から、特に、カードランが好ましい。
本明細書においては、以下、カードランについて記載するが、他の加熱凝固性β−1,3−グルカンについても同様である。
【0008】
本発明におけるアルカリ剤は食品用に適していれば、特に限定するものではなく、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム等のリン酸塩や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等で水溶性で液性がアルカリ性であるもの、いずれでもよい。アルカリ剤の被覆物質も食品用として適していれば、特に限定するものではなく、被覆することでアルカリの溶出を遅らしめるもので、油脂、高分子物質(例、プルラン、アラビアガム)、澱粉、デキストリン、糖(例、ショ糖)、糖アルコール(例、ソルビトール、還元澱粉加水分解物)などで被膜を生成せしめるのが有効である。
本発明における被覆アルカリ剤は、被覆アルカリ剤100重量部被覆50〜5重量部の割合で用いる。油脂等の水不溶性物質においては粉末で混合後、ミキサー中で混合しながら加熱溶解し、被覆するか、あらかじめ油脂を溶融し、アルカリ剤に混和し被覆せしめればよい。また、高分子物質、澱粉、デキストリン、糖などの水溶性物質は、あらかじめ水に溶解し、アルカリ剤にスパイラフロー造粒機等を用いて噴霧、混和し、乾燥することにより被覆せしめればよく、被覆方法は特に限定されない。
【0009】
本発明の組成物は、カードランと被覆アルカリ剤とを混合してなる固形、通常、粉末状の組成物である。カードランと被覆アルカリ剤との混和量は特に限定されないが、カードラン100重量部に対して被覆アルカリ剤約2〜40重量部が好ましい。
本発明の組成物には、所望により、他の成分、例えば、澱粉類(例、砂糖、水あめ、デキストリン等)、乳化安定剤(例、カゼイン、キサンタンガム等)、脱脂粉乳、卵白、保存剤(例、ソルビン酸およびその塩類)、発色剤(例、L−アスコルビン酸およびその塩類、ニコチン酸アミド、亜硝酸ナトリウム等)、重合リン酸塩(例、ポリリン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩等)などを混合してもよい。
本発明の組成物は、各成分が均一に混合される方法で製造でき、例えば、所望の成分をナウターミキサー、ハイスピードミキサー、V型混合機などの粉末用混合機で製造できる。また、所望により、常法により顆粒状等の固形製剤とすることもできる。
得られた本発明の固形組成物は、水と混合した場合、まま粉にならず均一なカードランの分散液が得られる。
【0010】
本発明の組成物は、種々の食品に利用されるが、例えば、かまぼこ、揚げかま、竹輪、はんぺんあるいは魚肉ソーセージなどの水産練製品、食肉ソーセージ、ハンバーグあるいはミンチボールなどの食肉練製品、ギョウザ、シュウマイなどの総菜類、鶏唐揚げ、エビフライなどのバッター、麺類などが挙げられる。
本発明の組成物の食品への添加量は、出来上がり製品100重量部に対し、カードラン約0.1〜2重量部、好ましくは0.5〜1重量部、被覆アルカリ剤は約0.004〜0.6重量部、好ましくは0.02〜0.3重量部の範囲から適宜選択し、組成物として食品に混和せしめればよい。
本発明の組成物を利用する場合、10〜50倍量、好ましくは20〜30倍の水に分散して用いるのが良い。
【0011】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
各実施例において、カードランとしてはアルカリゲネス・フェカリス・バール・ミクソゲネス菌株10C3Kの変異株NTK−u(IFO 13140)により生産された加熱凝固性多糖類の粉末を用いた。
実施例1
リン酸三ナトリウム1.7kgと大豆硬化油脂0.3kg(スプレーファットVT理研ビタミン製)をナウターミキサー(ホソカワミクロン製)で混合しながら加熱、冷却し、リン酸三ナトリウムの被覆物を得た。本被覆物1.2kgおよびカードラン粉末18.8kgをマイクロスピードミキサー(宝工機製)で2分間混合して所望の食品用粉末組成物を得た。
【0012】
実施例2
リン酸三ナトリウム0.38kgと大豆硬化油脂0.035kg(スプレーファットVT 理研ビタミン製)をマイクロスピードミキサー(宝工機製)で混合しながら加熱した後、溶融した大豆硬化油脂0.035kgを混合しながら滴下し、滴下終了後、冷却し、リン酸三ナトリウムの被覆物を得た。本被覆物0.6kgおよびカードラン粉末9.4kgをナウターミキサー(ホソカワミクロン製)で5分間混合して食品用粉末組成物を得た。
スケソウタラすり身(SA級)10kgに食塩0.3kgを加えて常法通り塩ずり後、馬鈴薯澱粉0.5kg、砂糖0.15kg、みりん0.3kg、グルタミン酸ソーダ0.15kgおよび氷水5kgを加えて混合し、得られたすり身を板付け、加熱してかまぼこを製造し対象区とした。
一方、上記で得られた組成物0.05kgを水1kgに分散させカードランの膨潤液を作る。この膨潤液を上記組成のスケソウタラすり身(SA級)を9kgに減らしたものに加え、同様にして板付けかまぼこを製造した。
その結果、すり身を10%代替したにも関わらず、対象区と同じすり身の成形性を持ち、しかも得られたかまぼこの品質も同等であった。
【0013】
実施例3
あらかじめ、デキストリン0.2kg(SR−7 オルガノ製)を水に溶解した後、スパイラフロー造粒機(フロイント産業製)を用いてリン酸三ナトリウム0.2kgに噴霧しながら乾燥し、リン酸三ナトリウムの被覆物を得た。本被覆物1.2kgおよびカードラン粉末8.8kgをV型混合機(徳寿工作所製)で10分間混合して食品用組成物を得た。
スケソウタラすり身(SA級)10kgに食塩0.3kgを加えて常法通り塩ずり後、馬鈴薯澱粉0.5kg、砂糖0.15kg、みりん0.3kg、グルタミン酸ソーダ0.15kgおよび氷水5kgを加えて混合し、得られたすり身を板付け、加熱してかまぼこを製造し対象区とした。
一方、上記で得られた組成物0.1kgを水2kgに分散させカードランの膨潤液を作る。この膨潤液を上記組成から馬鈴薯澱粉0.5kgを除いたものに添加し、同様にして板付けかまぼこを製造した。
その結果、加水量が50%から70%に上がっているにも関わらず対象区と同じすり身の成形性を持ち、しかも得られたかまぼこの品質は無添加のものと比べてよりしなやかにより好ましいものであった。
【0014】
【発明の効果】
以上記載したとおり、本発明によれば、加熱凝固性β−1,3−グルカンとアルカリ剤を含む、水に均一に分散する食品の品質改良剤等として有用な食品用固形組成物が提供できる。

Claims (6)

  1. 加熱凝固性β−1,3−グルカンと、油脂を被覆剤とし、リン酸塩をアルカリ剤とする被覆アルカリ剤であって、被覆アルカリ剤100重量部中、5〜50重量部の割合の被覆剤で被覆されている被覆アルカリ剤とを含有してなる食品用固形組成物。
  2. 加熱凝固性β−1,3−グルカンがカードランである請求項1記載の食品用固形組成物。
  3. 粉末状である請求項1記載の食品用固形組成物。
  4. 加熱凝固性β−1,3−グルカンと、油脂を被覆剤とし、リン酸塩をアルカリ剤とする被覆アルカリ剤であって、被覆アルカリ剤100重量部中、5〜50重量部の割合の被覆剤で被覆されている被覆アルカリ剤とを混合することを特徴とする食品用固形組成物の製造法。
  5. 加熱凝固性β−1,3−グルカンがカードランである請求項4記載の食品用固形組成物の製造法。
  6. 粉末状である請求項4記載の食品用固形組成物の製造法。
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