JP3777463B2 - 紡糸口金パックの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紡糸用パック及び紡糸方法に関し、詳しくは溶融ポリマー(単に「ポリマー」と言う。)がリッドから流入するパック内でのポリマー異常滞留、ポリマー劣化、ポリマー温度差を改善する紡糸口金パックの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特に合成繊維の紡糸に用いられている従来の紡糸口金パックとしては図11に示す構造のものが一般的である。この紡糸口金パックは、ポリマー流入口9を有するトップインサート2、サンド層8の上部に前濾過の為とサンド層8を抑える為のフィルター層10、サンド層8のサンドを漏らさない為とポリマーの超精密濾過を行う為のフィルター層5、フィルター層5をバックアップしてポリマーを口金7の上部に導く整流孔11を有するブリッジプレート6、及び、紡糸孔13を備える口金7により構成されており、ポリマーは紡糸孔13より糸条として紡出される。
【0003】
この様な従来の紡糸口金パックでは、流入口9から流入したポリマー流がフィルター層10、サンド層8及びフィルター層5の各中央部に集中して流れ、外周部には非常に流れにくい構造になっている。この為、口金7中央部から吐出される糸条は熱劣化の少ない吐出流量の多い糸条となり、外周部の紡糸孔からの糸条は熱劣化の大きい吐出流量の少ない糸条として紡出され、その結果、この口金から生産される繊維の糸質は単糸間繊度斑が大きく、化学的・物理的特性の異なる繊維になると共に、断糸率が高くなるという問題があった。
【0004】
以上の問題の内、口金上部でのポリマー流斑を改良する方法として、口金紡孔の孔径や孔長により吐出圧を上げ、各紡糸孔からポリマーをより均一に吐出させる方法が世界的に行われつつあり、それにより単糸繊度斑の改良はかなり改良されるが、その他の化学的(染色斑、変色等)、物理的(強度、伸度、熱的性質等)品質、及び断糸率等の改良は余りできていない。
【0005】
その為、従来から紡糸口金パックに導入されたポリマーが滞留することなく、紡糸孔上部に均一に流動する様種々の提案がなされてきた。
【0006】
円筒形の紡糸口金パックとして、特開昭50−14814号公報には、単位面積当たりのポリマー通過量が中心部から外周部に向かうに従って大となる様に形成せしめた分配板又はブリッジプレートをパック本体中に設けた紡糸口金パックが提案されている。しかし、この公報には単位面積当たりのポリマー通過量を如何なる具体的方法で孔径、孔長、孔数を規定すればよいか数値的に記載されておらず、具体性に欠ける。
【0007】
また特開平11−350236号公報に記載された紡糸口金パックは、ポリマーの流動方向順に流入ブロック、整流板及び紡糸用口金を組み込み、整流板の流入面、流出面にそれぞれ空間域を設けると共に整流板の整流孔に絞り部を設け、この整流孔数を整流板の外周部ほど多くする様に構成されたものである。
【0008】
しかし、特開昭50−14814号公報について指摘したように、特開平11−350236号公報においても整流孔の絞り部孔径、孔長、及び孔数を決めるべき規定がなく具体性がない。
【0009】
又、特開2000−265316号公報には、流入ブロックと複数個の整流孔を備えた整流板と複数個の紡糸孔を備えた口金とがポリマーの流動方向順に配置され、整流孔及び紡糸孔は同心円を描くように配置された紡糸口金パックが開示されている。その整流板は口金の中心とその中心から最も離れて位置する紡糸孔の中心との距離をRとした時、口金中心から0.7R以上の範囲に少なくとも1列の整流孔を有し、かつ、整流孔の孔径をD、長さをLとしたとき、口金の中心から0.7R以上の範囲に位置する整流孔のD4/Lの値の総和が口金の中心から0.7R未満の範囲に位置する整流孔のD4/Lの値の総和の1.5〜4倍の範囲内にする紡糸口金パックを提案している。しかし、本号公報も整流孔の孔径、孔長、及び孔数の規定が比率のみの規定であるため具体性がない。
【0010】
さらに別の方法として、特開2001−89927号公報には、パック内において口金吐出部の上流側に配置された整流板に複数個の整流孔を配置する時、整流板中心から最外周までの距離の0.6倍以下0を含む部分の整流孔開口面積の総和とこの外周部の整流孔開口面積の総和の比が、内側の総和より大なるパック整流板が提案されている。しかし、この公報も比率のみであり具体性がない。
【0011】
上記従来技術に共通する考えは、特開昭50−14814号公報の思想と同じであり、ただ整流孔(又は分配孔)の孔径、孔長、孔数を中心部と外周部での比率を規定したものであり、具体的数値が規定できない提案であると共に実施例等の条件において、不足している条件を実現可能な条件で検証しても、その改善効果は少ない。
【0012】
さらに矩形紡糸口金パックの従来技術としては、特開昭48−67510号公報には、粒状もしくは粉末状濾過材を充填するパックにおいて、濾過材充填部分に仕切板もしくは仕切網を設けたパックが提案されている。しかし、この公報ではサンド層のサンドの偏りを低減するだけであり、ポリマー流の均一分配、均一温度化も不十分であり、また、デッドスペースをなくすことまで考慮されておらず、ポリマー流入口直下のポリマーほど多量に流れ、パック外周面付近にはポリマーは少量しか流れない構造となっている。そのためパック外周面付近ではパック壁面の影響によりポリマー温度、流速が低下、ポリマー粘度が上昇し、滞留時間が長くなると共に劣化したポリマーを多く発生させるという問題があった。
【0013】
また特公昭53−44574号公報には、2つ以上のポリマー流入口を有する1枚ものよりなる矩形の上蓋、その1つ1つのポリマー流入口に対応して等容積に分割された分割室を有し、そこに濾過材が充填された分配板を設けた紡糸パックが提案されている。しかしこの公報の分割室は劣化ポリマーを作りやすい構造になっており好ましくなく、特開昭48−67510号公報と同様の問題がある。
【0014】
他の方法として特公昭54−142314号公報には、複数個のポリマー流入口を有する上蓋より流入されたポリマーを一度逆三角形部、及び、その底部にスリット部を有する均一吐出装置とで形成された滞留部に滞留させ、スリットからポリマー流を均一に吐出させる事を特徴とするパック構造が提案されている。しかし、この公報にはポリマー流がスリットから吐出した後、サンド層、分配板を経て、口金から吐出されるまでにポリマーを均一に分配させる構造にはなっていないため、スリット部直下を流れるポリマーほど多量に流れ、パック外周面を流れるポリマーは流量が少なく、滞留しやすくなり、得られる繊維の品質が異なり好ましくない。
【0015】
以上の如く種々の提案がなされてはいるが、ポリマーを均一に分配するための手段としては不十分であるか、或いは具体化する為に整流孔(又は分配孔)の孔径、孔長、及び孔数を規定する条件が明示されておらず、具現化できない提案である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリマー劣化が少なく、異常滞留がなく、ポリマー温度斑が少なく、これらに起因する紡糸中での紡糸やその後の糸加工(延伸、仮撚加工、製織工程等)における断糸、毛羽等が少なく、糸質斑の発生を低減できる紡糸口金パックの製造方法を提供する事にある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明に係る紡糸口金パックの製造方法は、ポリマー流入口を有するトップインサート、同心状の環状領域に配置された複数個の分配孔を有する分配板、及び複数個の紡糸孔を有する口金を、ポリマー流動方向に有する紡糸口金パックの製造方法であって、前記分配板の分配孔が、条件(1)〜(3)即ち、(1)最外環状領域からの単位面積当たりの吐出流量(Qo)と中心領域からの単位面積当たりの吐出流量(Qi)との比(Qo/Qi)1.2〜2.0を満たし、且つ、前記中心領域から最外環状領域に至る環状領域からの単位面積当たりの吐出流量が中心から外周に向け漸増すること、(2)口金当たりの吐出流量、紡糸温度、ポリマー粘度に基づいて、吐出圧力損失が0.7kg/cm2以上50kg/cm2以下の範囲内の何れかの値でほぼ一定となること、及び、(3)同一環状領域において全て同一孔径、孔長となること、を満たすように前記分配孔の孔径、孔長寸法形成することを特徴とする。
【0019】
ここで、本明細書において「同心状の環状」は、同心円のような円形の環状、同心配置された正多角形の環状の他、正多角形以外の多角形(例えば矩形)の環状を含む意として用いている。
【0020】
また、本明細書において「分配板の中心領域」とは、分配板の外形に沿う最外周環状領域から内周に向けて順次囲繞される環状領域の、もっとも内側にある最内周環状領域、或いは斯かる最内周環状領域によって囲まれる分配孔群が配置されている領域を意味し、具体的には、(イ);分配板の中心部に1個の分配孔を設ける場合は、これらの中心部の分配孔の外隣に環状配置された分配孔の中心を結ぶ円周又は多角形周と更に外隣に環状配置された分配孔の中心を結ぶ円周又は多角形周との中間の円周又は多角形周で囲まれる円又は多角形の面積を意味し、(ロ);断面が矩形の場合であって、分配板の中心部に1列で複数個の分配孔を設ける場合は、これら一列の分配孔の外隣に環状配置された分配孔の中心を結ぶ矩形周と、前記一列の分配孔の中心を結ぶ直線との中間に位置する矩形周で囲まれる矩形の面積を意味し、(ハ);前記(イ),(ロ)以外の場合は、最内側に環状配置された分配孔の各中心を結ぶ円周又は多角形周と更に外隣に環状配置された分配孔の各中心を結ぶ円周又は多角形周との中間の円周又は多角形周で囲まれる円又は多角形の面積を意味するものとして用いている。
【0021】
さらに、本明細書において、前記中心領域以外の単位面積当たりの吐出流量を決める環状領域は、注目する環状配置された分配孔の各中心を結ぶ円周又は多角形周と、その内外両隣にある2つの環状配置(又は直線状配置)された分配孔の中心を結ぶ円周、直線又は多角形周との中間にある2つの円周又は多角形周によって囲まれる環状の面積である。
【0022】
前記分配板の分配孔数の密度は、有効分配板面積で単位面積当たりの分配孔数が0.7個/cm2以上2個/cm2以下であること、ポリマー流入口からのポリマー流を円周方向に導くトップインサートの導入面角αが140°≦α≦170°であること、分配孔が絞り部を有していること、各分配孔にポリマー流が滞留なくスムーズに流入するよう設けられた同心円周溝状又は分水嶺状のポリマー流路を分配板の上部もしくは上下部に設けること、そして分配板の配置としてトップインサート、分配板と配置するとき分配板の上流側及び下流側の双方又は一方にポリマー濾過用のフィルターを設けることにより、より好ましく用いることができる。
【0023】
また、本発明の上記課題は、上記した紡糸口金パックを用いた紡糸方法により達成される。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について以下に図1〜10を参照して説明する。なお、全図を通じ、同様の構成部分には同符号を付した。
【0025】
まず、本発明に係る紡糸口金パックの第1実施形態について、以下に図1〜3を参照しつつ説明する。
【0026】
図1に示す紡糸口金パックは、円筒形をしたパックケース1内に、ポリマー流入口9を有したトップインサート2を有し、流入ポリマーを中心部から外周部に導く導入面角αを有するポリマー溜20を有している。この導入面角αは、分配板3との協動により、導入されたポリマーを外周部迄、設定されたポリマー流量を分配させる為に重要であり、その角度範囲は、140°以上170°以下であることが望ましい。この導入面角αが170°を超えると外周部へのポリマー分配が不十分となり、140°より小さくなるとトップインサート2が高くなると共にポリマー溜20が大きくなり、それに伴いポリマー滞留時間が増加し、熱劣化を起こす原因となる。
【0027】
分配板3の上部にポリマーを濾過するフィルター層10を設けることが好ましく、フィルター層10は、ポリマー中の大きな異物を濾過し、ポリマー溜20の外周部に決められたポリマー流量を吐出始めに導く作用を為す。図1の分配板3は、同心円状(同心状の環状)に配置された分配孔16を有している(図3参照)。この分配板3とトップインサート2の形状により、異常滞留を起こすことなく、分配板3の最外環状領域に配置される分配孔16が中心領域に配置される分配孔16より単位面積当たりの吐出流量が1.2〜2.0倍多量に分配されるように構成されている。この値が1.2倍より小さいと、紡糸口金7上部のポリマー溜12の外周部へのポリマー流が不足する為、外周部に流れるポリマーの温度が低くなり、十分な分配効果を得難くなる、一方この値が2.0倍を超えると、紡糸孔13外周部からの吐出ポリマー温度が高くなり、それにより得られた紡出糸は、口金中心方向にベンディングする欠点が大きくなり好ましくない(図11に示した従来の紡糸口金パックでは、パック中央部に多くのポリマー量が流れ、また、パック中央部では放熱される部分が非常に少ないためポリマー温度は最も高く保たれる部分であり、他方、外周部においてはポリマー量が少なく、さらに、パック外周部からの放熱も大きくなり、従って、ポリマー温度も最も低下し、粘度も大きくなることにより流動性を低下させる為、滞留量も大きくなると共に口金上部への均一分配ができなくなる構造であった。)。
【0028】
上記構成を採用したことにより、従来の欠点であったパック内での外周部におけるポリマー温度低下を防ぎ、パック内部の至る所でのポリマー温度差を少なくする事によって、ポリマー粘度差が少なくなると共にパック内部のポリマー流速は外周部ほど速くなり、滞留しやすい外周部のポリマーを洗い流す効果がある。
【0029】
分配板3によって分配されたポリマー流は、下部に設けられたサンド層8により濾過され、サンド層8の下部に設けられたフィルター層5によりサンドを保持すると共にサンド層8で濾過されなかった異物を濾過する事ができる。これらの濾過群は、分配板3のポリマー分配を僅かに均一分配させる方向に働くがその程度は少ない。次のブリッジプレート6はフィルター層5を通過したポリマー流の分配を損なうことがないよう整流孔11の孔径、孔長、及び孔数を有するものであると共に上部のパック構造体(フィルター層5、サンド層8、分配板3、フィルター10)を十分に支持する力学的特性を有する必要がある。このブリッジプレート6を通過したポリマー流は下部の紡糸口金7との間に形成されたポリマー溜12に分配され、紡糸口金7にほぼ均一に配置された紡糸孔13により吐出され紡出糸となる。
【0030】
これらの紡糸孔13は、吐出圧力損失(ΔP)が単孔当たりの吐出流量より計算され(後に計算式を示す)、ΔPが15〜80kg/cm2に通常設計される。これによりポリマー溜12では中心部から外周部に向かうに従って単位面積当たりのブリッジプレート6からのポリマー流入量は大きくなっているが、紡糸孔13のΔPにより各紡糸孔13からの吐出流量は均一化されると共にポリマー粘度も均一化されている為、紡出糸条は断糸する事もなく、品質的にも繊度斑及び化学的・物理的特性も均一化された糸条が長期安定的に生産できる。
【0031】
特に、紡糸開始数分後にて本生産にはいることができることも大きな特徴である。この理由は、パック内部のポリマー流が各パック部品の外周部ほど速く流れること、パック内全てのポリマー流路は常に流動する構造であること、更に、口金7の上部ポリマー溜12では外周部から中心部にポリマーが流動する構造であり、吐出始めのパック内部の空気も吐出開始でポリマー流により、ポリマー溜12の中心部に集められ、中心部の紡糸孔13より排出されることによるものである。
【0032】
図2は、分配板3の上部又は上下部に分水嶺状のポリマー流路14を設けた図であり、(イ)はこの平面図、(ロ)は上部のみに分水嶺状のポリマー流路を設けた分配板であって図2(イ)のA−A線に沿う縦断面図、(ハ)は上下部に分水嶺状のポリマー流路を設けた分配板であって図2(イ)のA−A線に沿う縦断面図である。図2の分配板では、中心の分配孔16を核とした最密充填配列状に分配孔を配置している。
【0033】
図2(イ)に示す配置状態では、環状に配置された分配孔16の中心を結ぶ線は正六角形となっている。ΔPを決める分配孔16は図2では不明確であるが外周部に向かって孔径が請求項1の条件を満たすべく大きくなっている。
【0034】
分水嶺状ポリマー流路14は分配板3の上部に設けることにより、上部表面のポリマー流れの悪い部分を排除する。これにより皿部15を経て分配孔16へスムーズにポリマーを導くことができる。図2(ロ)に示す分配板3は、分配孔出口を適切な曲率に拡大させた吐出拡大部17を形成している。図2(ハ)に示す分配板3は、分配板上部に設けた分水嶺状ポリマー流路14及び皿部15を下部にも設けているが、これらを下部に設けることによって、分配板3の下部面とサンド層8(図1参照)上部との間でポリマー滞留部をより少なくすることができる。
【0035】
図3は、同心円周上に分配孔16を配置させ、この分配孔16に絞り部19を設けた1実施形態であり、図3(イ)は平面図、図3(ロ)は図3(イ)のB−B線に沿う断面図、図3(ハ)は図3(ロ)の他の態様を示す断面図である。
【0036】
図3(イ)、(ロ)に示すように、分配板3の上部には、同心円周溝状のポリマー流路18が形成され、このポリマー流路18の溝底に分配孔16、絞り部19が開口している。同心円溝状のポリマー流路18は、分配板3上部面のポリマー滞留部を少なくする。また図3(ロ)に示す吐出拡大部17は下部表面での滞留部を少なくする。図3(ハ)は、同心円周溝状のポリマー流路18を分配板3の下部にも設けた例である。
【0037】
分配孔16,絞り部19は、口金当たりの吐出流量、紡糸温度、ポリマー粘度に基づいて、吐出圧力損失が0.7kg/cm2以上50kg/cm2以下の範囲内の何れかの値でほぼ一定となるように、その孔径、孔長寸法が形成される。分配孔の吐出圧力損失が0.7kg/cm2より小さいと、(Qo/Qi)が1.2より小さくなり、従って、最外周領域へのポリマー流が不足し本発明の効果が得られなくなる。逆に、50kg/cm2を超えるとポリマー流入口9での圧力は、その下部のフィルター10、分配板3、サンド層8、フィルター層5、口金7による圧力損失の和であるため非常に高くなり、紡糸開始からの生産時間が短くなることから好ましくない。分配孔吐出圧力損失(ΔP)は、以下の計算例により計算することができる。
【0038】
分配孔19,16を有する場合は、分配孔19のΔPと分配孔16のΔPを個々に計算し加算した値を本発明で規定したΔPとする。因みに、絞り部のない分配孔の場合〔図3(ロ)、分配孔16〕は、分配孔16のΔPを計算するだけでよい。このΔPは、次式により計算することができる。
ΔP=(8・η・Q・L)/(π・d4)・・・▲1▼
η:溶融粘度
Q:吐出流量
L:分配孔長さ
d:分配孔半径
溶融粘度ηは紡糸ポリマー吐出流量Q、分配孔半径d等から剪断速度γを下記式より求め、事前に測定しておいた使用するポリマーの紡糸温度での剪断速度と溶融粘度のデータから計算されたηに相当する粘度を求めればよい。
【0039】
γ=(4・Q)/(π・d3)・・・▲2▼
次に、本発明に係る紡糸口金パックの第2実施形態について、以下に図4〜6を参照しつつ説明する。図4は紡糸口金パックの縦断面図であり、図5は分配板の平面図である。なお、上記第1実施形態と同様の構成部分については同符号を付し、説明を簡略化又は省略する。
【0040】
第2実施形態の紡糸口金パックは、全体形状が直方体であり、平面形状が矩形即ち長方形をしている例である。分配板3は、全体形状が直方体であり、図5に示すように、平面視において分配孔16が格子状に配列されている。なお、格子状配列の格子は、四角格子が一般的であるが、三角格子も可能であり、格子は必ずしも直交せず、適宜変形され得る。
【0041】
本発明では、この格子配列を、図5に仮想線で仕切って示すように、外周側から内側に向かって同心状に順次囲繞する矩形環状領域の各々に、分配孔16が配置されており、これら幾重かに環囲する矩形環状領域において、最外環状領域からの単位面積当たりの吐出流量(Qo)と中心領域からの単位面積当たりの吐出流量(Qi)との比(Qo/Qi)が1.2〜2.0となるように構成され、且つ、前記中心領域から最外環状領域に至るに従い単位面積当たりの吐出流量が中心から外周に向け漸増するように分配孔16を形成する。
【0042】
斯かる紡糸口金パックでは、ポリマー流入口9から導入されたポリマー流を短辺側に導く導入面角β(図4(イ))が140°≦β≦170°であることが望ましい。
【0043】
図4(ロ)のポリマー流入口9からポリマー流を中心部から外周部へ短辺方向に導く導入面角γは図4(イ)の導入面角βが決まるとおのずと決定される。
【0044】
分配板3は、図5に示すように長方形断面形状を有する場合は、短辺に沿う分配孔は長辺に沿う分配孔に比べてポリマー流入口9からの距離が相対的に大きくなる。そのため、短辺に沿う外周領域と長辺に沿う外周領域の単位面積あたりに流れるポリマー吐出流量を同じにしたのでは、短辺に沿う外周領域のポリマー流が長辺に沿う外周領域のポリマー流に比べて流量が不足し、温度分布にバラツキを生じる傾向がある。
【0045】
そこで、矩形の分配板3では、図6に示すように、有効分配板面積を、該長方形の各短辺を底辺とし高さを同じくする一対の二等辺三角形領域A,Aからなる第1領域と、これら一対の二等辺三角形領域A,Aを除く残領域Bからなる第2領域とを、第2領域(B)の面積S2と第1領域(A,A)の面積S1との比(S2/S1)が1以上3以下となるように設定し、第1領域(A,A)内の最外周環状領域からの単位面積当たりのポリマー吐出流量(Qo1)と中心領域からの単位面積当たりのポリマー吐出流量(Qi)との比(Qo1/Qi)が、第2領域Bの最外周環状領域からの単位面積当たりのポリマー吐出流量(Qo2)と中心領域からの単位面積当たりのポリマー吐出流量(Qi)との比(Qo2/Qi)より大きくなるように分配孔16を形成することにより、パック短辺側へのポリマー流量を確保している。
【0046】
前記吐出流量比(Qo1/Qi)を前記吐出流量比(Qo2/Qi)より大きくする割合は、分配板の寸法等に応じて好適な設計がなされるが、分配板3の有効分配板面積における長辺の短辺に対する長さの比との関係が下記の条件(1)、(2)
(1)1<(長辺/短辺)≦3 の場合
(Qo1/Qi)−(Qo2/Qi)≦0.4
(2)3<(長辺/短辺) の場合
(Qo1/Qi)−(Qo2/Qi)>0.4
を満たしていればよく、
この式を満足するように分配孔16を形成することで、ポリマー流が最も流れ難い有効分配板面積の四隅にも望ましい流量を導くことができる。
【0047】
なお、有効分配板面積は、 第1領域(A,A)と第2領域Bとの総和であり、図6に斜線で示した長方形の面積である。また、中心領域は、図5に斜線を施した領域であり、分配孔16が2列の直線上に等間隔で配置されているが、この場合の中心領域は、本明細書では、各分配孔16が矩形周上に配置されていると見る。
【0048】
次に、本発明に係る紡糸口金パックの第3実施形態を図7、8を参照しつつ説明する。図7は紡糸口金パックの縦断面図を示し、図8はその紡糸口金パックに組み込まれている分配板を示している。図8中、仮想線は、環状領域を区切る線であり、斜線を施した部分は、分配板の中心領域を示し、この例の中心領域では、7個の分配孔16が1列に配列してある。
【0049】
第3実施形態の分配板3は、上面が角錐台状をしており、この様な形態にすることによりポリマー溜20の容積が少なくなり、ポリマー滞留時間を短くすることができ、ポリマーの劣化を防ぐことができる。なお、分配板の上面は角錐状とすることもできる(図示せず)。
【0050】
次に、本発明に係る紡糸口金パックの第4実施形態について図9を参照しつつ説明する。第4実施形態の紡糸口金パックは、分配板3の入口側及び出口側の双方において、ポリマー流がスムーズに分配孔16内に流入するように、少なくとも同一環状領域上に配置された分配孔16が溝底に位置する矩形の環状溝によって形成されるポリマー流路18を有する。該溝の断面形状は、例えば、半円形又はV字状とすることができる。また、ポリマー流路18を構成する矩形の環状溝は、図示の如くコーナー部を連通させることができる。
【0051】
分配孔16には、絞り部19を設けることができる(図9(ハ)参照)。なお、絞り部19は、図9(ハ)に示すように図の上から分配孔16、絞り部19、分配孔16の順に構成されても良いし、図示しないが、分配孔16、絞り部19と構成されているだけでもよい。
【0052】
次に、本発明に係る紡糸口金パックの第5実施形態について、図10を参照して説明する。
【0053】
図10に示す紡糸口金パックは、不織布製造法の1つであるスパンボンド法等に用いられる矩形紡糸パックであって、分配板の有効分配板面積が600cm2を超える大型のものである。このような紡糸口金パックでは、トップインサート2のポリマー流入口9を、有効分配板面積が600cm2以内に少なくとも1つ設けるようにすることが望ましい。図示の例では、2つの有効分配板面積が設定されており、その各有効分配板面積について第1領域A、第2領域B、及び各環状領域が設定される。図には有効分配板面積は2つしか描かれていないが、それ以上の数となる場合は分配板の長辺方向、及び、又は、短辺方向に長く連寝ていけばよい。
【0054】
【実施例】
先ず、平面視円形の分配板を有する紡糸口金パックを用いて、本発明の実施例と、比較例とについて行った試験について以下に説明する。
【0055】
固有粘度〔η〕が0.63で酸化チタンを0.3重量%含有するポリエチレンテレフタレートを溶融温度290℃、紡糸速度3100m/minで紡糸し巻き取った。更に、その後の延伸工程により延伸速度1000m/minの延伸機で延伸熱処理し、延伸時の断糸率を測定すると共に延伸糸を染色し、繊度斑の評価を5段階で行った(1,2,3,4,5の5段階で5が最もよいものである)。
各評価項目は下記の定義の通りである。
紡糸断糸率:紡糸断糸率(回/ton)=紡糸中に発生した断糸回数/生産量(ton)
延伸断糸率:延伸断糸率(%)=(延伸時の断糸発生錘数/全延伸錘数)×100
本発明請求項1を満足する分配板の有効直径が70mm絞り部のない分配孔長20mmを有する紡糸口金パックを用い、348デニール96フィラメントPOY(348De/96F)の糸条を紡糸温度290℃で通常のフィラメント油剤を0.8%付着させ巻き取った。分配孔中央部から外周部に向かって図2の分配板の如く円周上に配列し、第1〜4列とし、各分配板条件である分配孔径、分配孔の吐出圧力損失(ΔP)、全吐出流量(cc/sec)、全分配孔数を分配板有効面積で除した単位面積当たりの分配孔密度(個/cm2)、中心領域の単位面積当たりの吐出流量を1とした時における最外環状領域の単位面積当たりの吐出流量比QO/Qi等のデータを表1に示す。
【0056】
【表1】
Figure 0003777463
【0057】
表1中、P.C.D.は、分配孔のピッチ円周直径(円周上に並ぶ分配孔の中心を結んだ円の直径)である。
【0058】
実施例1は全吐出流量、平均分配孔数密度(個/cm2)、中心領域と最外環状領域との単位面積当たりの吐出流量比QO/Qi及び吐出圧力損失ΔPを表1に示す如くにし、これらを本発明の規定範囲内に設定することにより、各列の分配孔径を算出決定したものである。
【0059】
実施例2は各列の分配孔径を一定に分配孔数密度(個/cm2)、ポリマーの吐出流量比(QO/Qi)、全吐出流量(cc/sec)を本発明の規定で設定することにより、ΔP、各列の分配孔数が算出決定される。
【0060】
実施例3はPOY(120D-48F)の全吐出流量を0.548cc/secにした以外は実施例1と同一紡糸条件で、同一分配孔設定条件により、各列の分配孔径を算出決定した。
【0061】
実施例4は実施例2と吐出流量以外は全て同一条件でΔPを算出した。
【0062】
比較例1は、図11で示した従来から最も一般的に使用されている紡糸口金パックの構造で吐出流量、各列の分配孔数、ΔPを設定し、各列の分配孔径、QO/Qiを算出した。
【0063】
比較例2は実施例1と同一紡糸条件で分配孔径を全て同一にした以外同一分配板条件で特性値を算出した。当然のことであるが比較例1,2共にQO/Qiは、1と算出される。
【0064】
これら5例のPOY紡糸条件での紡糸安定性、延伸工程での工程安定性、及び糸質評価を行い表2に示す。
【0065】
【表2】
Figure 0003777463
【0066】
表2から明確な如くいずれの実施例においても比較例に比べ、紡糸延伸工程での安定性、品質安定性が際立って優れている。
【0067】
これらの原因は各紡出孔から得られる紡出糸全ての単糸の化学的・物理的特性が均一化された為であり、実施例全ての各延伸糸の破断強伸度を測定すると、強度、伸度共に本実施例の延伸糸は全て大であり、それらのバラツキも非常に少ない事実から上記の優れた特性を示すものである。
【0068】
また、表1,2には記載されていないが各実施例と比較例におけるポリマー吐出開始から本巻きに移れる時間(この時間は紡出糸条を高速ウエストエアーガンで約2800m/minの速度で引き取っており、この状態を観察することにより、断糸や熱劣化ポリマーによる変色が無くなる時間から決められる。)を5分単位で整理すると、実施例1,2においては約5ないし10分後に本巻きに移れる。実施例3,4においても、10分程度で本巻きに移れる。比較例1は60分以上であり比較例2はやや速く50分程度であった。これら比較例は口金外周部での断糸が非常に多く発生し、また断糸の周期性が見られる。これは外周部の熱劣化による分解ポリマーが低粘度化し、外周紡糸孔から吐出されやすくなり、分解ポリマーがほぼ吐出してしまうと次の新たなポリマーが滞留部で分解する時間が必要となり、その為に周期性が観察されたと思われる。
【0069】
次に、図8に示した矩形紡糸パックについて、紡糸断糸率及び延伸断糸率に関して、従来品との比較試験を行った結果について以下に説明する。
【0070】
固有粘度〔η〕が0.63で酸化チタンを0.3重量%含有するポリエチレンテレフタレートを溶融温度290℃、紡糸速度3000m/minで紡糸し巻き取り、更にその後の延伸工程により、延伸速度1000m/minの延伸機で処理し、紡糸時及び延伸時における断糸回数から紡糸断糸率を算出した。
【0071】
実施例5〜8の紡糸口金パックは、矩形長辺が20cmと短辺が10cmからなる有効分配板面積を有する分配板を組み込んだ矩形紡糸パック用い、ポリエステルを500デニール200フィラメントPOY(500D/200F)の糸状を紡糸温度290℃で通常のフィラメント油剤を0.7%付着させ巻き取った。
【0072】
分配板の分配孔の配列はいずれの条件においてもほぼ均一に格子状に配列されており、更に、1つの第1領域(A)の面積が35.7cm2に統一されている。また、各分配板条件である分配孔圧力損失(ΔP)、全吐出流量(cc/sec)、全分配孔数を分配板有効面積で除した単位面積当たりの分配孔数(個/cm2)、中心領域と第1領域(A)及び、第2領域(B)内の最外環状領域における単位面積当たりの吐出流量比(Qo1/Qi)、(Qo2/Qi)等のデータを表3に示す。孔径は表3に示されていないが上記の条件から各領域における分配孔径を算出、決定している。
【0073】
【表3】
Figure 0003777463
【0074】
実施例5は全吐出流量、単位面積あたりの分配孔数、中心領域と第1領域(A)及び、第2領域(B)内の最外環状領域における単位面積当たりの吐出流量比(Qo1/Qi)(Qo2/Qi)、分配孔の圧力損失ΔP、孔長、角度αを表3に示す如くに設定し、各
領域分配孔径を算出、決定したものである。
【0075】
実施例6は実施例5と圧力損失以外は全て同一条件であり、本発明の規定範囲内に設定することにより、各領域分配孔径を算出、決定したものである。
【0076】
実施例7は全吐出流量、単位面積あたりの分配孔数、中心領域と第1領域(A)及び、第2領域(B)内の最外環状領域における単位面積当たりの吐出流量比(Qo1/Qi)(Qo2/Qi)、分配孔の圧力損失ΔP、孔長、角度αを表3に示す如くにし、これら
を本発明の規定範囲内に設定することにより、各領域分配孔径を算出、決定したものである。
【0077】
実施例8は実施例7と中心領域と第1領域A及び、第2領域B内の最外環状領域における単位面積当たりの吐出流量比(Qo1/Qi)(Qo2/Qi)以外は全て同一条件であり、本発明の規定範囲内に設定することにより、各領域分配孔径を算出、決定したものである。
【0078】
比較例3,4は、従来一般の矩形紡糸パックを用い、同じ紡糸条件、且つ、表3に示される条件で各比較例分配板の各領域の孔径を算出、決定している。
【0079】
比較例3,4は実施例5と圧力損失、中心領域と第1領域A及び、第2領域B内の最外環状領域における単位面積当たりの吐出流量比(Qo1/Qi)(Qo2/Qi)以外は全て同一条件で各領域分配孔径を算出、決定したものである。
【0080】
実施例5〜8、比較例3,4の6例のPOY紡糸条件での紡糸安定性、延伸工程での工程安定性を行いその結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
Figure 0003777463
【0082】
表4から明らかなようにいずれの実施例5〜8においても比較例3,4とは比べものにならない紡糸延伸工程での安定性、品質安定性が際立って優れており、この結果から本発明の規定範囲内でなければ安定した紡糸を得ることができないことが分かった。
【0083】
これらの原因は各紡糸孔から得られる紡出糸全ての単糸の化学的・物理的特性が均一化された為であり、実施例5〜8の全ての各延伸糸の破断強伸度を測定すると、強度、伸度共に本実施例の延伸糸は全て大であり、それらのバラツキも非常に少ない事実から上記の優れた特性を示すものである。
【0084】
また、表3,4には記載されていないが各実施例5〜8と比較例3,4におけるポリマー吐出開始から本巻きに移れる時間(この時間は紡出糸条を高速ウエストエアーガンで約2800m/分の速度で引き取っており、この状態を観察することにより、断糸や熱劣化ポリマーによる変色が無くなる時間から決められる。)を5分単位で整理すると、実施例5〜8においては10〜15分程度で本巻きに移行できる。また、比較例3,4は40分以上であった。これら比較例3,4は口金外周部での断糸が非常に多く発生し、また断糸の周期性が見られる。これは外周部の熱劣化による分解ポリマーが低粘度化し、外周紡糸孔から吐出されやすくなり、分解ポリマーがほぼ吐出してしまうと次の新たなポリマーが滞留部で分解する時間が必要となり、その為に周期性が観察されると思われる。
【0085】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る紡糸口金パックは、ポリマー流入口を有するトップインサート、複数個の分配孔が同心状の環状領域に配置された分配板、及び複数個の紡糸孔を有する口金を、ポリマー流動方向に有する紡糸口金パックであって、最外環状領域からの単位面積当たりの吐出流量(Qo)と中心領域からの単位面積当たりの吐出流量(Qi)との比(Qo/Qi)が1.2〜2.0となるように構成し、且つ、前記中心領域から最外環状領域に至る環状領域からの単位面積当たりの吐出流量が中心から外周に向け漸増に増加するように構成し、前記分配孔を、口金当たりの吐出流量、紡糸温度、ポリマー粘度に基づいて、吐出圧力損失が0.7kg/cm2以上50kg/cm2以下の範囲内の何れかの値でほぼ一定となるように、その孔径、孔長寸法が形成されると共に、同一環状領域において全て同一孔径、孔長となるように形成したことにより、ポリマー劣化が少なく、異常滞留がなく、ポリマー温度斑が少なく、これらに起因する紡糸中での紡糸やその後の糸加工(延伸、仮撚加工、製織工程等)における断糸、毛羽等が少なく、糸質斑の発生を低減できる。
【0086】
また、有効分配板面積において、単位面積当たりの分配板孔数が0.7個/cm2以上2個/cm2以下とすることにより、具体的に分配孔径、孔数が算出され、確実にパック内ポリマー流路外周部が計算されたポリマー流量を導くことができる為、口金上部でのポリマー温度の均一化、更に、パック内部至る所で常にポリマー流動があり、滞留する事がない構造とすることができる。
【0087】
従って、本発明によれば、従来の紡糸口金パックにおいて発生していた種々の化学的・物理的特性の不均一性を改善することができる。具体的には各製糸工程での断糸数や断糸率、繊度斑(U%)及び染めに代表される化学的・物理的特性において均一な糸質が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る紡糸口金パックの第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図2(イ)は本発明の分配板(分水嶺状タイプ)1実施形態を示す平面図であり、図2(ロ)及び(ハ)は、図2(イ)のA−A矢視断面に対応し、各々異なる態様を示す断面図である。
【図3】図3(イ)は本発明の分配板(円周溝タイプ)の1実施形態を示す平面図であり、図3(ロ)、(ハ)は、図3(イ)のB−B矢視断面に対応し、各々異なる態様を示す断面図である。
【図4】本発明に係る紡糸口金パックの第2実施形態を示す縦断面図であり、図4(イ)は縦断正面図、図4(ロ)は縦断側面図である。
【図5】図4の紡糸口金パックに組み込まれている分配板の平面図である。
【図6】図5の分配板に領域を図示した平面図である。
【図7】本発明に係る紡糸口金パックの第3実施形態を示す縦断面図であり、図7(イ)は縦断正面図、図7(ロ)は縦断側面図である。
【図8】図7の紡糸口金パックに組み込まれている分配板を示し、図8(イ)は平面図、図8(ロ)は図8(イ)のa−a線に沿う縦断面図、図8(ハ)はb−b線に沿う縦断面図である。
【図9】本発明に係る紡糸口金パックの第4実施形態に組み込まれている分配板を示し、図9(イ)は平面図、図9(ロ)は図9(イ)のa−a線に沿う縦断面図、図9(ハ)は絞り部を形成した変更態様を示す縦断面図である。
【図10】本発明に係る紡糸口金パックの第5実施形態を示し、図10(イ)は縦断正面図、図10(ロ)は縦断側面図、図10(ハ)は分配板の平面図である。
【図11】従来の紡糸口金パックを示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 パックケース
2 トップインサート
3 分配板
4 サンドケース
5 フィルター層
6 ブリッジプレート
7 紡糸口金
8 サンド層
9 流入口
10 フィルター層
11 整流孔
12 ポリマー溜
13 紡糸孔
14 分水嶺状のポリマー流路
15 皿部
16 分配孔
17 吐出拡大部
18 ポリマー流路
19 絞り部
20 空間

Claims (7)

  1. ポリマー流入口を有するトップインサート、同心状の環状領域に配置された複数個の分配孔を有する分配板、及び複数個の紡糸孔を有する口金を、ポリマー流動方向に有する紡糸口金パックの製造方法であって、前記分配板の分配孔が、下記条件(1)〜(3)
    (1)最外環状領域からの単位面積当たりの吐出流量(Qo)と中心領域からの単位面積当たりの吐出流量(Qi)との比(Qo/Qi)1.2〜2.0を満たし、且つ、前記中心領域から最外環状領域に至る環状領域からの単位面積当たりの吐出流量が中心から外周に向け漸増すること、
    (2)口金当たりの吐出流量、紡糸温度、ポリマー粘度に基づいて、吐出圧力損失が0.7kg/cm2以上50kg/cm2以下の範囲内の何れかの値でほぼ一定となること、
    (3)同一環状領域において全て同一孔径、孔長となること、
    を満たすように前記分配孔の孔径、孔長寸法形成することを特徴とする紡糸口金パックの製造方法
  2. 前記分配板、有効分配板面積において、単位面積当たりの分配孔数が0.7個/cm2以上2個/cm2以下とすることを特徴とする請求項1に記載の紡糸口金パックの製造方法
  3. 前記分配孔絞り部を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の紡糸口金パックの製造方法
  4. 前記分配板、分配孔の入口側及び出口側の少なくとも一方において、ポリマー流がスムーズに該分配孔内に流入するように、少なくとも同一環状領域上に配置された分配孔が溝底に位置する環状溝によって形成されるポリマー流路を形成することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の紡糸口金パックの製造方法
  5. 前記分配板、各分配孔の入口側及び出口側の少なくとも一方において、ポリマー流がスムーズに該分配孔内に流入するように、各分配孔に分水嶺状のポリマー流路形成することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の紡糸口金パックの製造方法
  6. 前記トップインサートと分配板との間、及び、前記分配板の下流側の少なくとも一方に、ポリマーを濾過するためのフィルター層を設けることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の紡糸口金パックの製造方法
  7. 前記トップインサートにおいて、ポリマー流入口からのポリマー流を外周方向に導く導入面角α140°≦α≦170°とすることを特徴とする請求項1記載の紡糸口金パックの製造方法
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