JP3777226B2 - 再利用可能な希土類含有化合物の回収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、希土類金属含有合金スクラップから、希土類酸化物、希土類フッ化物又は希土類金属等の再利用可能な希土類含有化合物の回収方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、希土類金属を含有する種々の合金が開発され、多様な用途に用いられている。例えば高性能永久磁石として、希土類金属約30重量%、鉄約65重量%、ホウ素約2重量%及びその他の成分を含有する希土類金属−鉄系合金が利用されている。このような永久磁石の製造にあたっては、製品重量の約10〜30重量%に当たる合金屑及び不良品、並びにスラグ等の合金スクラップが発生する。これら合金スクラップには約30重量%の希土類金属が含まれている。
また、例えばニッケル水素2次電池電極として、希土類金属約30重量%、ニッケル約65重量%、コバルト3.5重量%及びその他の成分を含有する希土類金属−ニッケル系合金が使用されている。このような2次電池電極の製造時にも、製品重量の約3〜10重量%に当たる合金スクラップが発生する。この合金スクラップには約30重量%の希土類金属が含まれている。
【0003】
このような合金スクラップに含まれる希土類金属は資源として希少であり、高価且つ有価である。しかしながら、従来塊状等の形態を有する合金スクラップを、発火の危険性を鑑みずに粉砕できたとしても粉砕された合金スクラップは酸化が進行していて、磁石合金粉、水素合金粉等とした場合、所定の性能が望めず、そのまま再使用することは不可能である。このため希土類金属を回収することは、性能上、経済性及び安全性の点から困難であると考えられており、有効な回収方法については検討されていない。従って合金スクラップに関しては安全対策を施した上で産業廃棄物として廃棄しているのが現状である。
【0004】
ところで、希土類金属含有合金から希土類元素を分離する方法として、従来強酸溶解法が知られている。この強酸溶解法によれば、まず希土類金属合金の全量を塩酸、硝酸、硫酸等の強酸で完全に溶解した後に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム等のアルカリにより溶液のpHを調節し、溶液中の鉄、ニッケル、コバルト等を沈殿させ、濾別する。続いて濾液にシュウ酸、重炭酸アンモニウム、炭酸ソーダ等を添加して希土類元素を沈殿させ、この沈殿物を濾別、乾燥、焼成して希土類酸化物を得ている。従ってこのような分離方法であれば、塊状等の形態を有する合金スクラップからでも、希土類元素等の回収が可能であると考えられる。
しかしながら、上述の強酸溶解法では、希土類金属含有合金の全量を完全に強酸で溶解させるため、極めて多量の酸が必要であり、その後さらに鉄、ニッケル、コバルト等を沈殿分離させるために多量のアルカリも必要である。この方法を合金スクラップに適用すると、回収コストが非常に高価となり、さらに分離した鉄、ニッケル等の水酸化物を後処理するための特別な施設等も必要であって、経済性等の点から合金スクラップを廃棄した方が有利である。
【0005】
別の希土類元素の分離法として、特公平5−14777号公報には、粉体の希土類金属−鉄合金を空気酸化して、鉄等の成分を酸難溶性の酸化物とした後、塩酸、硝酸、硫酸等の強酸を用いた強酸浸出法により、希土類金属を溶解し、鉄等の酸化物を沈殿濾別し、濾液にシュウ酸等の酸を添加して希土類含有沈殿物を生成させ、この沈殿物を濾別、乾燥、焼成して希土類酸化物を得る方法が開示されている。
この強酸浸出法は、粉末状の合金に対して適用するため、前述の強酸溶解法より酸等の使用量を極めて少なくできるという利点がある。しかし、合金粉末の粒度分布にばらつきがあると空気酸化が均一に進行せず、強酸浸出時の希土類元素溶出率が低下するという問題が生じる。従ってこのような強酸浸出法を、塊状等の形態を有する合金スクラップに適用することは考えられていない。特に塊状の希土類金属含有合金を粉体化する場合、通常の粉砕機、例えばボールミル、ジェットミル等を使用して大気中で粉砕すると、装置内で発火し、火災が発生する危険性がある。たとえ大がかりな気密雰囲気装置中で粉砕しても、取り出し時に爆発する危険性が伴い、工業的に実施するのは困難である。
【0006】
このように、希土類金属含有合金スクラップから再利用可能な希土類含有化合物を工業的規模で回収するには、経済性、安全性に関する問題が残されており、廃棄しているのが現状である。しかしながら、近年エレクトロニクス分野等の利用拡大に伴い、永久磁石及びニッケル水素二次電池等の希土類金属含有合金の需要が拡大しており、その製造工程において発生する合金スクラップの量も増加が見込まれる。従って資源の有効利用等の観点から、合金スクラップに含まれる希土類金属等を回収する技術の開発が望まれつつある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、希土類金属含有合金から製品を製造する際に生じる合金屑、不良品、及びスラグ等の希土類金属含有合金スクラップから、低コスト且つ効率的に、希土類酸化物、希土類フッ化物又は希土類金属等の再利用可能な希土類含有化合物を回収する回収方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、安全面においても有効な、希土類金属含有合金スクラップからの再利用可能な希土類含有化合物の回収方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、(a)希土類金属含有合金スクラップを少なくとも水素化処理することによって、該合金スクラップを粉砕する工程、(b)粉砕した合金スクラップを加熱して酸化物を得る工程、(c)該酸化物を酸溶液に接触させて希土類元素をイオンとして浸出させ、該希土類イオンを含む溶液を濾別して濾液を得る工程、および(d)該濾液から希土類元素を含む沈澱物を生成させる工程を含む再利用可能な希土類含有化合物の回収方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を更に詳細に説明する。
本発明の回収方法においては、例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、エルビウム、イットリウム等の希土類金属、これらの酸化物である希土類酸化物又はこれらのフッ化物である希土類フッ化物等の再利用可能な希土類含有化合物を回収する。
本発明の回収方法により再利用可能な希土類含有化合物を回収する合金スクラップは、上記希土類金属の他に、通常鉄やニッケル等を含有しており、更には場合によってコバルト、ホウ素、マンガン、アルミニウム等を含んでいる塊状等の形態を有するものである。
【0010】
本発明の回収方法では、まず(a)希土類金属含有合金スクラップを少なくとも水素化処理することによって、該合金スクラップを粉砕する工程を行う。
該合金スクラップの水素化処理による粉砕は、例えば水素圧雰囲気下において合金スクラップを加熱等することにより行うことができる。具体的には、真空高周波加熱炉等の雰囲気加熱炉に合金スクラップを装填し、10-3Torr以上に真空引きした後、水素ガスを導入して1〜5気圧の水素圧雰囲気下とし、常温以上、好ましくは100〜800℃、特に好ましくは200〜500℃の温度で、1〜10時間、好ましくは3〜5時間処理して、合金スクラップに水素を吸収させる方法等により行うことができる。このように希土類金属含有合金スクラップに水素を吸収させると、20〜25%の急激な体積膨張を起こすため、希土類金属含有合金結晶に微細なクラックが入り、均一に粉砕することができる。充分な速度で合金に水素を吸収させ、急激な体積膨張を生じさせるためには、水素圧は1気圧以上、温度は常温以上が望ましい。
【0011】
この(a)工程においては、合金スクラップの大きさ等の条件によって水素化処理を行った後に脱水素化処理を行ったり、これらの水素化処理と脱水素化処理とを繰り返し行うこともできる。この水素化処理と脱水素化処理との回数を制御することにより、適当な粒径の粉体を得ることができる。例えば、粉砕すべき合金スクラップが大型である場合には、水素化処理と脱水素化処理とを好ましくは2〜3回繰り返すことにより適当な粒径の均一な粉体を得ることができる。これらの処理を繰り返す場合の最終は水素化処理とし、得られた合金粉体中に水素が存在する状態とするのが好ましい。この(a)工程により粉砕した合金スクラップの平均粒径は、200〜2000μmとするのが好ましい。
【0012】
本発明の回収方法では、次に(b)粉砕した合金スクラップを加熱して酸化物を得る工程を行う。該加熱は、例えば前記(a)工程で水素粉砕した合金スクラップを雰囲気加熱炉内で50℃以下程度に冷却し、炉内の水素ガスをアルゴン、窒素等の不活性気体と置換して、常圧に戻してから合金粉体を取り出し、取り出した合金粉体を大気中で電気炉等の加熱炉に装填し、加熱して空気酸化させる方法等によって行うことができる。該加熱は、200〜700℃、特に300〜600℃で、0.5〜2時間、特に約1時間程度の条件で行うのが好ましい。また、合金粉体を容易に酸化物とするには、例えば前記(a)工程の水素化処理によって、合金中に水素を吸収させた状態、即ち合金中に水素が存在する状態でこの加熱を行うことが好ましい。水素含有状態で加熱すれば、水素が燃焼し、高活性の水蒸気が発生し、合金粉体中の希土類金属が酸易溶性の酸化物となり、鉄やニッケル等の希土類金属以外の金属が酸難溶性の酸化物となる。従って、次の(c)工程において、合金粉体中の鉄やニッケル等の希土類元素以外の金属の溶出を低下させることができる。また、次の(c)工程における希土類元素以外の金属が浸出すると水素が発生して危険であるので、水素発生を防止するために、合金粉体を充分酸化させるには、加熱温度は200℃以上であるのが望ましい。また、エネルギーを過剰に消費することなく、後の(c)工程における希土類元素の酸溶液への浸出を充分に行うために、加熱温度は700℃以下が望ましい。
【0013】
本発明の回収方法では、(c)前記(b)工程で得られた酸化物を酸溶液に接触させて希土類元素をイオンとして浸出させ、該希土類イオンを含む溶液を濾別して濾液を得る工程を行う。前記希土類元素をイオンとして浸出させるには、例えば前記酸化物に、塩酸、硝酸、硫酸等の酸溶液を添加して接触させる方法等により行うことができる。具体的には、(b)工程で得られた酸化物を50℃以下程度に冷却した後撹拌槽に投入して、水を加えてスラリー化し、このスラリーを撹拌しながら好ましくは濃度2〜5N(規定)に希釈した硝酸等の酸溶液を添加して希土類元素をイオンとして浸出させることにより行うことができる。前記酸化物が焼固まっている場合には、前記冷却後、ディスクミル等により50〜200メッシュ、好ましくは80〜120メッシュに粉砕した後にスラリー化するのが好ましい。酸溶液の添加量は、合金スクラップ中に存在する希土類元素量に相当する化学当量分をあらかじめ計算して、希土類イオンの浸出速度に合わせて制御添加すれば良い。好ましくは、希土類元素以外の金属の溶出を防ぐために酸溶液を添加したスラリーの最終pHが3未満とならないように制御して酸溶液を添加することが望ましい。希土類イオンを含む溶液の濾別は、酸化した鉄、ニッケル等の不溶解性沈殿物を公知の濾過方法により分離除去することにより行うことができる。この濾液、即ち、希土類イオンを含む溶液は、純度の高い希土類イオンのみを含む溶液であることが好ましいが、濾過時に分離し得なかった鉄やニッケル等を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の回収方法では、次に(d)前記(c)工程で得られた濾液から希土類元素を含む沈澱物を生成させる工程を行う。
濾液から希土類元素を含む沈澱物を生成させるには、例えば濾液にシュウ酸、重炭酸アンモニウム(炭酸水素アンモニウム)、炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)、フッ酸、フッ化アンモニウム等の沈澱剤を添加することにより行うことができる。この際、沈澱剤の添加量は、濾液中に存在する希土類イオンを完全に沈殿させるのに充分な化学当量の1.2〜1.5倍の量が好ましい。沈澱物の回収は、公知の濾別方法で行うことができる。合金スクラップ中にコバルト、ホウ素、マンガン、アルミニウム等の希土類金属、鉄及びニッケル以外の金属が含有されている場合、これらの金属は前記沈澱物を濾別した後の濾液中に残存するため、この濾別により分離除去することができる。
【0015】
前記フッ酸、フッ化アンモニウム又はこれらの混合物等のフッ化物沈澱剤を添加した場合には、沈澱物として希土類フッ化物を生成させることができる。この沈澱物は、濾過した後、好ましくは無水物とするために、500〜900℃、特に700〜800℃で乾燥させて回収することができる。回収した希土類フッ化物は、再利用可能な希土類含有化合物であって、例えば、通常の溶融塩フッ化物浴電解法で用いる溶融塩浴の主成分として利用することができる。
【0016】
本発明の回収方法では、(e)前記(d)工程において、シュウ酸、重炭酸アンモニウム、炭酸ソーダ又はこれらの混合物等のフッ化物沈澱剤以外の沈澱剤を添加して生成させた希土類元素を含む沈澱物を焼成し、希土類酸化物を生成させる工程を行うこともできる。
前記焼成は、(d)工程において生成した沈殿物を公知の方法で濾別した後、好ましくは800〜1000℃で1〜10時間乾燥焼成することにより行うことができる。
前記(e)工程で生成される希土類酸化物は、鉄やニッケル等の希土類元素以外の金属を含んでいてもよく、再利用の目的及び方法に応じて再利用可能な希土類含有化合物として使用できる。例えば、特に溶融塩フッ化物浴電解希土類金属製造用原料として再利用するのに最適であり、この場合、良好な電流効率で溶融塩電解法処理を行うためには、鉄やニッケル等の金属の含有量は10重量%未満、特に5重量%未満が好ましい。また、原料の合金スクラップ中に含まれる希土類金属のうち、80重量%〜98重量%を希土類酸化物として回収することが好ましい。
【0017】
本発明の回収方法では、(f)前記(e)工程で回収した希土類酸化物を、精錬し、希土類金属を生成させる工程を行うこともできる。
前記希土類酸化物の精錬は、溶融塩フッ化物浴電解法等の公知の方法で行うことができる。具体的には、好ましくはフッ化リチウム25〜35重量%、フッ化バリウム10〜25重量%、及びフッ化ネオジム等の希土類フッ化物40〜65重量%を含有する混合塩等の成分からなる浴中に、得られた希土類酸化物を投入しながら、通常750〜1000℃、好ましくは800〜950℃の温度で溶融しながら電解する方法等により行うことができる。前記混合塩浴中の希土類フッ化物としては、前記(d)工程で回収された希土類フッ化物を用いることができる。このような精錬により最終的に、原料の合金スクラップに含まれる希土類金属を回収することができる。
前記(f)工程により回収される希土類金属は、鉄やニッケル等の希土類元素以外の金属を含んでいてもよく、再利用の目的及び方法に応じて再利用可能な希土類含有化合物として使用できる。この際、回収される希土類金属は、原料の合金スクラップ中に含まれる希土類金属のうち、80重量%〜95重量%が回収されるのが好ましい。
【0018】
【発明の効果】
本発明の再利用可能な希土類含有化合物の回収方法では、従来産業廃棄物として廃棄していた希土類金属含有合金スクラップを、発火の危険性なく容易に粉砕して安全に希土類酸化物、希土類フッ化物又は希土類金属等として回収することができる。また、鉄やニッケル等の希土類元素以外の金属の酸溶液への浸出を極力抑えることができるため、必要な酸の量を、従来の強酸溶解法よりも大幅に減少させることができ、経済的にも有利であり、且つ性能上においても問題のない希土類酸化物、希土類フッ化物又は希土類金属等の再利用可能な希土類含有化合物を工業的にも有効な方法として回収できる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜6
希土類金属約25重量%及び鉄約73重量%を含有するネオジム−鉄−ホウ素系磁石屑300gを真空加熱容器に装填し、真空引きした後、水素ガスを充填して3気圧の水素圧雰囲気下とし、100℃の温度で2時間加熱して、磁石屑に水素を飽和するまで吸収させることにより水素粉砕した。得られた合金粉体を常温まで冷却した後、容器内の水素ガスをアルゴンガスと置換し、常圧に戻してから合金粉体を取り出した。得られた合金粉体の粒度分布を、商品名「MICROTRAC PARTICLE-SIZE ANALYZER」(Leeds & Northrup 社製)で測定した結果を図1に示す。この合金粉体30gをそれぞれ6つの磁製ボートに入れ、開放型ニクロム加熱型電気炉中でそれぞれ200℃(実施例1)、300℃(実施例2)、400℃(実施例3)、500℃(実施例4)、600℃(実施例5)、及び700℃(実施例6)の各温度で1時間加熱空気酸化した。各試料を常温まで冷却した後、乳鉢で100メッシュに粉砕し、撹拌機付きビーカーに移し、水100mlを加えてスラリー化した。pHが3未満にならないように制御しながら各スラリーに3N硝酸63mlを1時間かけて滴下し、さらに1時間撹拌続行後、沈殿した酸化鉄分を濾別除去して希土類イオン含有溶液を得た。得られた溶液に2Nシュウ酸液47mlを添加して希土類イオンをシュウ酸塩として沈殿させた後、この沈殿物を濾別分離し、1000℃で1時間焼成し、希土類酸化物を得た。
【0020】
得られた希土類酸化物の重量を測定した後、該酸化物中に含まれる希土類元素の量をJIS M8404の化学分析法に従って分析した。得られた値と当初の磁石屑中の希土類金属量とから、希土類金属の回収率を算出した。結果を表1に示す。さらに、酸浸出法による処理時の鉄の溶出度を測定するために、希土類シュウ酸塩を濾別分離した後の濾液に2N水酸化ナトリウム96mlを添加して、濾液中に存在する鉄イオンを水酸化鉄として沈殿させ、沈殿物を濾過、焼成して、酸化鉄を得た。得られた酸化鉄の量と当初の磁石屑中の鉄量とから鉄の溶出率を算出した。結果を表1に示す。
【0021】
実施例7〜12
水素粉砕時の加熱温度を300℃とした以外は、実施例1〜6と同様に希土類酸化物及び酸化鉄を回収し、希土類酸化物の重量、該酸化物中に含まれる希土類元素の量、並びに得られた酸化鉄の量を実施例1〜6と同様に測定し、希土類金属の回収率及び鉄の溶出率を算出した。結果を表1に示す。
【0022】
実施例13〜18
水素粉砕時の加熱温度を500℃とした以外は、実施例1〜6と同様に希土類酸化物及び酸化鉄を回収し、希土類酸化物の重量、該酸化物中に含まれる希土類元素の量、並びに得られた酸化鉄の量を実施例1〜6と同様に測定し、希土類金属の回収率及び鉄の溶出率を算出した。結果を表1に示す。
【0023】
比較例1
実施例1〜6で使用したものと同じ磁石屑30gを水素粉砕せずに直接磁製ボートに入れ、開放型ニクロム加熱型電気炉中、600℃で2時間加熱酸化した。試料を常温まで冷却した後、乳鉢で100メッシュ未満に粉砕し、実施例1〜6と同様に希土類酸化物及び酸化鉄を得た。得られた希土類酸化物の重量、該酸化物中に含まれる希土類元素の量、並びに得られた酸化鉄の量を実施例1〜6と同様に測定し、希土類金属の回収率及び鉄の溶出率を算出した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例19
希土類金属約25重量%及び鉄約73重量%を含有するネオジム−鉄−ホウ素系磁石屑300gを真空加熱容器に充填し、真空引きした後、水素ガスを充填して3気圧の水素圧雰囲気下として、300℃の温度で2時間加熱して、磁石屑に水素を飽和させるまで吸収させることにより水素粉砕した。得られた合金粉体を常温まで冷却した後、容器内の水素ガスをアルゴンガスと置換し、常圧に戻してから合金粉体を取り出した。この合金粉体30gを磁性ボートに入れ、開放型ニクロム加熱型電気炉中で500℃の温度で1時間加熱空気酸化した。試料を常温まで冷却した後、乳鉢で100メッシュに粉砕し、撹拌機付きビーカーに移し、水100mlを加えてスラリー化した。pHが3未満にならないように制御しながら各スラリーに3N硝酸63mlを1時間かけて滴下し、更に1時間撹拌続行後、沈澱した酸化鉄分を濾別除去して希土類イオン含有溶液を得た。
得られた溶液に2Nフッ酸溶液117mlを添加し、フッ化物を生成させた。次いでpH3までアンモニア水を添加後、1時間撹拌熟成させて、希土類フッ化物を沈澱させた。この沈澱物を濾別し、700℃で1時間乾燥し、希土類フッ化物9.32gを得た。
【0026】
この希土類フッ化物中に含まれる希土類元素の量をJIS M8404の化学分析法で分析し、得られた値と当初の磁石屑中の希土類金属量とから希土類金属の回収率を算出したところ、回収率は89%であった。この希土類フッ化物中に存在する不純物の鉄を分析したところ、存在量は0.15%であった。
一方、酸浸出法による処理時の鉄の溶出度を測定するために、希土類フッ化物を濾別分離した後の濾液に、2N水酸化ナトリウム96mlを添加して、濾液中に存在する鉄イオンを水酸化鉄として沈澱させ、沈澱物を濾過、焼成して酸化鉄を得た。得られた酸化鉄の量と当初の磁石屑中の鉄量とから、鉄の溶出率を算出したところ1.7%であった。
【0027】
実施例20〜25
ミッシュメタル28.9重量%及びニッケル65.2重量%を含有するミッシュメタル−ニッケル系水素吸蔵合金スラグ300gを、実施例1〜6と同様に水素粉砕した。得られた合金粉体の粒度分布を、商品名「MICROTRAC PARTICLE-SIZEANALYZER」(Leeds & Northrup 社製)で測定した結果を図2に示す。この合金粉体30gをそれぞれ6つの磁製ボートに入れ、実施例1〜6と同様に希土類酸化物を得た。得られた希土類酸化物の重量及び該酸化物中に含まれる希土類元素の量を実施例1〜6と同様に測定し、希土類金属の回収率を算出した。結果を表2に示す。さらに酸浸出法による処理時のニッケルの溶出度を測定するために、希土類シュウ酸塩を濾別した後の濾液に2N水酸化ナトリウム60mlを添加して、濾液中に存在するニッケルイオンを水酸化ニッケルとして沈殿させ、沈殿物を濾過、焼成して、酸化ニッケルを得た。得られた酸化ニッケルの量と当初のスラグ中のニッケル量とからニッケルの溶出率を算出した。結果を表2に示す。
【0028】
実施例26〜31
水素粉砕時の加熱温度を300℃とした以外は、実施例20〜25と同様に希土類酸化物及び酸化ニッケルを回収し、希土類酸化物の重量、該酸化物中に含まれる希土類元素の量、並びに得られた酸化ニッケルの量を実施例20〜25と同様に測定し、希土類金属の回収率及びニッケルの溶出率を算出した。結果を表2に示す。
【0029】
実施例32〜37
水素粉砕時の加熱温度を500℃とした以外は、実施例20〜25と同様に希土類酸化物及び酸化ニッケルを回収し、希土類酸化物の重量、該酸化物中に含まれる希土類元素の量、並びに得られた酸化ニッケルの量を実施例20〜25と同様に測定し、希土類金属の回収率及びニッケルの溶出率を算出した。結果を表2に示す。
【0030】
比較例2
実施例20〜25で使用したものと同じミッシュメタル−ニッケル系水素吸蔵合金スラグ30gを水素粉砕せずに直接磁製ボートに入れ、開放型ニクロム加熱型電気炉中、600℃で2時間加熱酸化した。試料を常温まで冷却した後、乳鉢で100メッシュ未満に粉砕し、実施例20〜25と同様に希土類酸化物及び酸化ニッケルを得た。得られた希土類酸化物の重量、該酸化物中に含まれる希土類元素の量、並びに得られた酸化ニッケルの量を実施例20〜25と同様に測定し、希土類金属の回収率及びニッケルの溶出率を算出した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
実施例38
希土類金属約25重量%及び鉄約73重量%を含有するネオジム−鉄−ホウ素系磁石屑10kgを真空加熱容器に装填し、真空引きした後、水素ガスを充填して3気圧の水素圧雰囲気下とし、300℃の温度で2時間加熱して、磁石屑に水素を飽和するまで吸収させることにより水素粉砕した。得られた合金粉体を常温まで冷却した後、容器内の水素ガスをアルゴンガスと置換し、常圧に戻してから合金粉体を取り出した。得られた合金粉体を、開放型ニクロム加熱型電気炉中で300℃で2時間加熱空気酸化した。試料を常温まで冷却した後、ディスクミルで100メッシュに粉砕し、撹拌槽に移し、水30リットルを加えてスラリー化した。pHが3未満にならないように制御しながらスラリーに3N硝酸17.9リットルを5時間かけて滴下し、さらに2時間撹拌続行後、沈殿した酸化鉄分を濾別除去して希土類イオン含有溶液を得た。得られた溶液に2Nシュウ酸14.3リットルを添加して希土類イオンをシュウ酸塩として沈殿させた後、この沈殿物を濾別分離し、800℃で5時間焼成し、希土類酸化物2.68kgを得た。次にこの希土類酸化物を、フッ化リチウム30重量%、フッ化バリウム20重量%、及びフッ化ネオジム50重量%の電解用溶融塩浴に投入しながら900℃で電解処理し、希土類鉄母合金2.4kgを得た。この希土類鉄母合金は希土類金属2.0kgを含有し、当初の磁石屑中の希土類金属量を基準とした回収率は82%であった。結果を表3に示す。
【0033】
比較例3
実施例38で使用したものと同じ磁石屑10kgをジョークラッシャー及びジェットミルで粉砕しようとしたが、ジョークラッシャーに投入した時点で発火し、粉砕不可能であった。よってこの磁石屑を直接磁製容器に入れ、開放型ニクロム加熱型電気炉中、600℃で2時間加熱空気酸化した。酸化された磁石屑を実施例38と同様に処理して、希土類酸化物1.49kgを得た。次に得られた希土類酸化物を実施例38と同様に処理して希土類鉄母合金1.34kgを得た。この希土類鉄母合金は希土類金属1.14kgを含有し、当初の磁石屑中の希土類金属量を基準とした回収率は45.7%であった。結果を表3に示す。
【0034】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜6、実施例7〜12、及び実施例13〜18においてネオジム−鉄−ホウ素系磁石屑をそれぞれ100℃、300℃、500℃の各温度で水素粉砕した際の合金粉体の粒度分布を、同磁石屑を機械粉砕した際の粒度分布と比較して示すグラフである。
【図2】実施例20〜25、実施例26〜31、及び実施例32〜37においてミッシュメタル−ニッケル系水素吸蔵合金スラグをそれぞれ100℃、300℃、500℃の各温度で水素粉砕した際の合金粉体の粒度分布を示すグラフである。
Claims (4)
- (a)希土類金属含有合金スクラップを少なくとも水素化処理することによって、該合金スクラップを粉砕する工程、
(b)粉砕した合金スクラップを加熱して酸化物を得る工程、
(c)該酸化物を酸溶液に接触させて希土類元素をイオンとして浸出させ、該希土類イオンを含む溶液を濾別して濾液を得る工程、および
(d)該濾液から希土類元素を含む沈澱物を生成させる工程
を含む再利用可能な希土類含有化合物の回収方法。 - 前記(d)工程において、希土類元素を含む沈澱物の生成を、濾液に、シュウ酸、重炭酸アンモニウム、炭酸ソーダ又はこれらの混合物からなる沈澱剤を添加して行った後に、(e)前記(d)工程で生成した沈澱物を焼成し、希土類酸化物を生成させる工程を行う請求項1に記載の回収方法。
- (f)前記(e)工程で生成した希土類酸化物を精錬し、希土類金属を生成させる工程を行う請求項2に記載の回収方法。
- 前記(d)工程において、希土類元素を含む沈澱物の生成を、濾液に、フッ酸、フッ化アンモニウム又はこれらの混合物からなるフッ化物沈澱剤を添加して行なう請求項1に記載の回収方法。
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