JP7286085B2 - リチウムイオン電池からのリチウムの回収方法 - Google Patents
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Description
本発明の課題は、リチウムイオン電池からリチウムを効率的に回収する方法を提供することにある。
〔1〕下記の(1)又は(2)を水熱処理する工程を含む、リチウムイオン電池からのリチウムの回収方法。
(1)リチウムイオン電池の焙焼体の破砕物であって、リン含有量が20mg/g以下である破砕物を添加した水
(2)リチウムイオン電池の焙焼体の破砕物であって、リン含有量が20mg/g以下である破砕物を添加した、周期表第2族元素の水酸化物及び酸化物から選択される1種又は2種以上の添加剤を含む水溶液
〔2〕周期表第2族元素の水酸化物が、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム及び水酸化バリウムから選択される1種又は2種以上である、前記〔1〕記載の回収方法。
〔3〕周期表第2族元素の酸化物が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム及び酸化バリウムから選択される1種又は2種以上である、前記〔1〕又は〔2〕記載の回収方法。
〔4〕添加剤の使用量が、破砕物に含まれるリンに対する周期表第2族元素のモル比として0.2~3.5である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の回収方法。
〔5〕水熱処理の温度が100~200℃である、〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の回収方法。
〔6〕水熱処理の処理時間が0.5~24時間である、〔1〕~〔5〕のいずれか一に記載の回収方法。
〔7〕(A)破砕物と、(B)水又は添加剤を含む水溶液との固液比[(A)/(B)]が2.0~20g/Lである、〔1〕~〔6〕のいずれか一に記載の回収方法。
〔8〕破砕物の粒径が1.0mm以下である、〔1〕~〔7〕のいずれか一に記載の回収方法。
本発明のリチウムの回収方法は、リチウムイオン電池の焙焼体の破砕物であって、リン含有量が20mg/g以下である破砕物を、水又は特定添加剤を含む水溶液に添加し、それを水熱処理に供する工程を含むものである。
本発明においては、先ずリチウムイオン電池を焙焼して焙焼体を得、次いで焙焼体を破砕して、リチウムイオン電池の焙焼体の破砕物を準備する。
本発明で対象とするリチウムイオン電池は、携帯電話その他の種々の電子機器等で使用され得るリチウムイオン電池であって、製品寿命、製造不良又はその他の理由によって廃棄されるものである。このような廃棄リチウムイオン電池からリチウムを回収することは、資源の有効活用の観点から好ましい。なお、リチウムイオン電池は、1種又は2種以上使用することができる。
リチウムイオン電池の周囲を包み込む外装として、アルミニウムのみからなる筐体や、アルミニウム及び鉄、あるいはアルミラミネート等を含む筐体を有してもよい。また、リチウムイオン電池中には、銅、鉄等の他の金属が含まれていても構わない。
リチウムイオン電池の焙焼は、リチウムイオン電池中の電解液、セパレータ、バインダー等の比較的低温度で熱分解する有機物質をガス化燃焼し、系外に除去する目的で行う。なお、リチウムイオン電池は、筐体を取り外して電池本体を取り出すことを要さず、そのまま焙焼しても構わない。
リチウムイオン電池の焙焼体の破砕は、リチウムイオン電池の筺体を破壊して筺体から正極材及び負極材を取り出し、正極材を分離する目的で行う。なお、ここでいう「破砕」とは、焙焼物を破砕することだけでなく、焙焼物を解体することも包含する概念である。
破砕は、剪断力、衝突、圧縮等による衝撃を加えて破砕することができれば、一般的な破砕機を使用することができる。例えば、サンプルミル、ハンマーミル、ピンミル、ウィングミル、トルネードミル、ハンマークラッシャ等を挙げることができる。
水熱処理は、破砕物を添加した、水又は特定添加剤を含む水溶液を圧力容器に投入し、加熱して行う。これにより、破砕物からのリチウムの溶出量が増加し、水又は水溶液中のリチウム濃度が高められ、リチウムを高い収率で回収することができる。ここで、本明細書において「水熱処理」とは、破砕物を添加した、水又は特定の添加剤を含む水溶液を密閉状態の圧力容器内で加熱することをいう。
周期表第2族元素の水酸化物しては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム及び水酸化バリウムから選択される1種又は2種以上を挙げることができるが、リチウムの回収率向上の観点から、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムから選択される1種以上が好ましく、水酸化カルシウムが更に好ましい。
周期表第2族元素の酸化物としいては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム及び酸化バリウムから選択される1種又は2種以上を挙げることができるが、リチウムの回収率向上の観点から、酸化カルシウムが好ましい。
また、粉砕物、水及び添加剤の混合順序も特に限定されず、任意の順序で添加して混合しても、3者を同時に添加して混合してもよく、また予め調製した添加剤を含む水溶液に粉粒体を添加して混合してもよい。
特定添加剤を含む水溶液に破砕物を添加する場合、水熱処理の温度は、リチウムの回収率向上の観点から、100~180℃が好ましく、100~160℃がより好ましく、100~140℃が更に好ましい。
水に破砕物を添加する場合、水熱処理の温度は、リチウムの回収率向上の観点から、100℃以上が好ましく、そして200℃以下が好ましい。また、かかる水熱処理の温度を、好ましくは120~200℃、より好ましくは140~200℃、更に好ましくは160~200℃とすることもできる。
特定添加剤を含む水溶液に破砕物を添加する場合、水熱処理の処理時間は、リチウムの回収率向上の観点から、0.5~10時間が好ましく、1~7時間がより好ましく、2~4時間が更に好ましい。
水に破砕物を添加する場合、水熱処理の処理時間は、リチウムの回収率向上の観点から、0.5以上が好ましく、そして24時間以下が好ましい。また、かかる水熱処理の時間を、好ましくは5~24時間、より好ましくは10~24時間、更に好ましくは15~24時間とすることもできる。
水熱処理の加熱を停止した後、圧力容器内の水又は特定添加剤を含む水溶液を冷却する。冷却後の水又は添加剤を含む水溶液をろ過し、ろ液中のリチウムを回収する。ろ過により、水に対して溶解度の高いリチウム塩をろ液側に移行させることができる。そして、ろ液に、炭酸ガスを吹き込む方法、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩を添加する方法等の公知の方法を用いた炭酸化反応により、炭酸リチウムとしてリチウムを高収率で回収することができる。また、ろ液のpHを調整することにより、水酸化リチウムとしてリチウムを回収することもできる。更に、単にろ液中の水分を蒸発させ、ろ液から塩化リチウムや硝酸リチウム等のリチウム塩としてリチウムを回収してもよい。
自動車用の廃棄リチウムイオン電池(アルミ箔型、正極材:三元系、負極材:カーボン)を窒素雰囲気で450℃の温度で6時間焙焼した後、剪断破砕機を用いて焙焼体を破砕した。次いで、分級機を用いて破砕物を篩分けし、粒径1.0mm以下の破砕物を得た。かかる破砕物を「破砕物I」とし、その組成比率を表1に示す。
自動車用の廃棄リチウムイオン電池(アルミ箔型、正極材:マンガン系、負極材:カーボン)を用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により、粒径1.0mm以下の破砕物を得た。かかる破砕物を「破砕物II」とし、その組成比率を表1に示す。
自動車用の廃棄リチウムイオン電池(アルミ箔型、正極材:リン酸鉄系、負極材:カーボン)を用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により、粒径1.0mm以下の破砕物を得た。かかる破砕物を「破砕物III」とし、その組成比率を表1に示す。
自動車用の廃棄リチウムイオン電池(ラミネート型、正極材:リン酸鉄系、負極材:カーボン)を用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により、粒径1.0mm以下の破砕物を得た。かかる破砕物を「破砕物IV」とし、その組成比率を表1に示す。
(A)破砕物と(B)水酸化カルシウム水溶液との固液比[(A)/(B)]が3.3g/Lとなるように破砕物Iを添加して分散させた後、圧力容器を密封した。なお、破砕物I中のリン量に対するカルシウム量は、モル比で1.5であった。圧力容器の内部の温度(処理温度)を200℃、圧力(処理圧力)を1.55MPaで24時間保持して水熱処理を行った後、破砕物Iが添加された水酸化カルシウム水溶液を30℃以下に冷却した。
〔式中、Xはろ液中に溶解しているリチウムの質量(mg)を示し、Yは破砕物中のリチウムの質量(mg)を示す。〕
〔式中、Vはろ液中に溶解しているリンの質量(mg)を示し、Wは破砕物中のリンの質量(mg)を示す。〕
(A)破砕物と(B)水酸化カルシウム水溶液との固液比[(A)/(B)]が10g/Lとなるように破砕物Iを添加したこと以外は、実施例1と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物Iからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
水熱処理の温度を120℃、処理時間を1時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物Iからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
水熱処理の温度を120℃、処理時間を2時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物Iからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
水熱処理の温度を120℃、処理時間を3時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物Iからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
水熱処理の温度を100℃、処理時間を1時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物Iからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
水熱処理の温度を100℃、処理時間を2時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物Iからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
水熱処理の温度を100℃、処理時間を3時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物Iからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
破砕物Iの代わりに、破砕物IIを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物IIからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
破砕物Iの代わりに、破砕物IIを用いたこと以外は、実施例2と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物IIからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
破砕物Iの代わりに、破砕物IIを用いたこと以外は、実施例5と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物IIからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
破砕物Iの代わりに、破砕物IIを用いたこと以外は、実施例8と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物IIからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
水酸化カルシウム水溶液の代わりに、水を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物Iからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
水酸化カルシウム水溶液の代わりに、水を用いたこと以外は、実施例2と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物Iからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
破砕物Iの代わりに、破砕物IIIを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物IIIからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
破砕物Iの代わりに、破砕物IIIを用いたこと以外は、実施例2と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物IIIからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
破砕物Iの代わりに、破砕物IVを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により水熱処理を行い、ろ液中の成分測定を行った。そして、破砕物IVからのリチウム回収率(%)、リン回収率(%)を求めた。その結果を表2に示す。
一方、比較例1~3に示されるように、リチウムイオン電池の焙焼体の破砕物のリン含有量を20mg/g以下に制御しないと、リチウムの回収率が著しく低下することがわかる。
Claims (8)
- 下記の(1)又は(2)を水熱処理する工程を含む、リチウムイオン電池からのリチウムの回収方法。
(1)リチウムイオン電池の焙焼体の破砕物であって、リン含有量が20mg/g以下である破砕物を添加した水
(2)リチウムイオン電池の焙焼体の破砕物であって、リン含有量が20mg/g以下である破砕物を添加した、周期表第2族元素の水酸化物及び酸化物から選択される1種又は2種以上の添加剤を含む水溶液 - 周期表第2族元素の水酸化物が、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム及び水酸化バリウムから選択される1種又は2種以上である、請求項1記載の回収方法。
- 周期表第2族元素の酸化物が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム及び酸化バリウムから選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2記載の回収方法。
- 添加剤の使用量が、破砕物に含まれるリンに対する周期表第2族元素のモル比として0.2~3.5である、請求項1~3のいずれか1項に記載の回収方法。
- 水熱処理の温度が100~200℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の回収方法。
- 水熱処理の処理時間が0.5~24時間である、請求項1~5のいずれか1項に記載の回収方法。
- (A)破砕物と、(B)水又は添加剤を含む水溶液との固液比[(A)/(B)]が2.0~20g/Lである、請求項1~6のいずれか1項に記載の回収方法。
- 破砕物の粒径が1.0mm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の回収方法。
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