JP3774144B2 - 挟み込み防止機能を具備したパワーウィンドウ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パワーウィンドウ装置が駆動中に、ウィンドウが障害物を挟み込んだときに、これを検知してウィンドウの駆動を停止させる挟み込み防止機能を具備したパワーウィンドウ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載されるパワーウィンドウ装置は、駆動モータを可逆的に回転駆動させることにより、ウィンドウを上昇、或いは下降させるようにしている。このようなパワーウィンドウ装置は、ウィンドウ上昇中に障害物を挟み込んだ場合には、該障害物、或いはウィンドウを損傷する場合がある。そこで、昨今においては、障害物を挟み込んだ場合には、即時にウィンドウの上昇を停止させる機能を具備したものが多く用いられている。
【0003】
このようなパワーウィンドウ装置では、駆動モータに流れる過電流をシャント抵抗にて検知し、該過電流の発生が検知された場合には、障害物を挟み込んだものと判断し、電源電圧の供給を停止するようにしている。
【0004】
ところが、過電流の発生を検知して回路を遮断する方法では、電源投入時の突入電流を検知して、回路が遮断されてしまうことがあるため、この問題を回避するために従来より、電源を投入してから所定時間をマスク時間とし、このマスク時間には、たとえ過電流が流れても、回路を遮断しないように構成したものが提案され、実用に供されている。
【0005】
図3は、このような機能を有するパワーウィンドウ制御装置の、従来例を示す回路図である。同図に示すように、このパワーウィンドウ制御装置101は、ウィンドウを昇降させるための負荷(駆動用モータ)L1の駆動を制御するものであり、電子スイッチFET1がオンとされたときに、負荷L1に電源電圧VBが印加される。また、電源と負荷L1との間には、シャント抵抗Rsが配設されている。
【0006】
また、負荷回路に対して並列に、抵抗Rref、トランジスタT2、抵抗R3、抵抗R4、及びアンプAMP1が設置されている。アンプAMP1は、抵抗Rsの両端電圧と抵抗Rrefの両端電圧とのが等しくなるように、トランジスタT2を制御する。そして、トランジスタT2の出力電圧Vs2を、抵抗R3と抵抗R4とにより分圧し、得られた電圧Vinsは、異常検知用のコンパレータCMP1のマイナス側の入力端に供給される。
【0007】
更に、電圧Vs2はバッファアンプAMP3を介して、抵抗R1とコンデンサCとの直列接続回路に接続される。従って、抵抗R1とコンデンサCとの間の時定数により、該抵抗R1とコンデンサCとの接続点の電圧は、電圧Vs2を平均化した電圧Vavとなる。この電圧Vavは、コンパレータCMP1のプラス側入力端に接続される。また、電圧Vavは、アンプAMP2に供給され、更に、該アンプAMP2の出力は、トランジスタT1に接続されるので、抵抗R5には、平均値電圧Vavに比例した大きさの電流を流すことができる。
【0008】
そして、このように構成されたパワーウィンドウ制御装置101では、負荷L1に電圧を印加し、正常に動作しているときには、平均値電圧Vavの方が分圧された電圧Vinsよりも大きいので、コンパレータCMP1の出力信号は「H」レベルの信号となる。
【0009】
また、ウィンドウが障害物を挟み込んだ場合等、負荷L1に過電流が流れた場合には、抵抗R3,R4に流れるIref2が急激に上昇するので、コンパレータCMP1の出力が反転して「L」レベルとなる。この信号を用いて、負荷L1に印加される電圧を遮断することにより、障害物の挟み込みによるトラブルを回避することができる。
【0010】
更に、コンデンサCの一端と、電源との間に、抵抗R102とスイッチS101との直列接続回路が設置されており、電源投入時には、所定時間だけスイッチS101をオンとすることにより、突入電流による誤検出を防止している。即ち、スイッチS101がオンとなると、抵抗R3,R4には電流が流れなくなるので(即ち、電流Iref2が=0)、電圧Vinsは略ゼロボルトとなり、負荷L1に突入電流が流れた場合でも、電圧Vinsが平均値電圧Vavを上回ることがないので、異常は検知されない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のパワーウィンドウ制御装置101においては、前述したマスク時間が経過した直後に、障害物の挟み込みが発生した場合には、これを即時に検出することができないという問題が生じる。以下、これを図4に示す特性図を参照しながら説明する。
【0012】
図4は、負荷L1に電源電圧を供給した後の、モータ電流(負荷電流)の変化と、電圧Vins及び平均値電圧Vavの変化を示す特性図である。同図に示すように、時刻t101にて電源をオンとすると、負荷L1には定常電流の2〜3倍程度の突入電流が発生する。
【0013】
また、時刻t101〜t102までの時間がマスク時間(スイッチS101がオンとなる時間)として設定されているので、電圧Vinsは、時刻t102の後に、ゼロボルトから徐々に上昇を開始する。他方、平均値電圧Vavは、最大値から徐々に減少を始める。従って、時刻t102の直後(即ち、マスク時間終了直後)には、VinsとVavとの差が大きいので、この時間帯にウィンドウによる挟み込みが発生した場合には、VinsがVavを越えられないことがある。即ち、マスク時間経過の後、十分時間が経過した時刻t103では、高精度な挟み込み検知が可能であるが、マスク時間経過直後の時刻t102′では、平均値電圧Vavと電圧Vinsとの差が大きいので、高精度な挟み込みの検知ができないという問題があった。
【0014】
この発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、マスク時間経過直後であっても、確実に挟み込みを検知することのできる挟み込み防止機能を具備したパワーウィンドウ制御装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、車両に搭載されるパワーウィンドウを駆動中にて、ウィンドウに障害物を挟み込んだ際に、これを検知して該パワーウィンドウの駆動を停止させる機能を具備したパワーウィンドウ制御装置において、前記ウィンドウの駆動モータに流れる電流に応じた基準電流を流す基準電流発生回路と、第1の抵抗、及びコンデンサとの直列接続回路からなり、前記基準電流発生回路の、所定点における電圧を平均化する平均化回路と、前記基準電流発生回路の、所定点における電圧を分圧する分圧回路と、前記分圧回路にて分圧された電圧と、前記平均化回路より出力される平均化電圧とを比較する比較手段と、を具備し、電源投入時には、前記第1の抵抗に対して並列的に、該第1の抵抗よりも抵抗値の小さい第2の抵抗を接続し、且つ、電源投入時から予め設定された所定時間が経過した後に、前記第1の抵抗から前記第2の抵抗を開放する制御を行い、前記分圧回路にて分圧された電圧が前記平均化電圧を越えたときに、障害物の挟み込みを検知することを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記駆動モータの電圧供給電線には、シャント抵抗Rsが介置され、前記基準電流発生回路は、基準抵抗Rrefと、トランジスタT2と、前記シャント抵抗に発生する電圧と前記基準抵抗に発生する電圧の差分に応じた電圧信号を、前記トランジスタに出力するアンプAMP1とを具備したことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るパワーウィンドウ制御装置の構成を示す回路図である。同図に示すように、該パワーウィンドウ制御装置1は、車両に搭載されるウインドウを、上昇、或いは下降させるように動作する負荷(駆動モータ)L1と電源(車両に搭載されうバッテリ)VBとの間の閉路、開路を切り換える電子スイッチFET1と、負荷L1と電源VBとの間に介置されるシャント抵抗Rsと、を具備している。
【0018】
更に、電源VBは、抵抗Rrefと、トランジスタT2と、抵抗R3、及び抵抗R4の直列接続回路(基準電流発生回路)を介して、グランドに接続されている。また、シャント抵抗Rsと負荷L1との接続点は、アンプAMP1のプラス側入力端子に接続され、抵抗RrefとトランジスタT2との接続点は、アンプAMP1のマイナス側入力端子に接続され、このアンプAMP1の出力端子は、トランジスタT2のゲートに接続されている。
【0019】
トランジスタT2と抵抗R3との接続点は、バッファアンプAMP3のプラス側入力端子に接続され、このバッファアンプAMP3の出力端子は、3系統に分岐されており、1つ目の分岐線は抵抗R1(第1の抵抗)を介して、アンプAMP2のプラス側入力端子に接続されている。2つ目の分岐線は、コンデンサCを介してグランドに接続され、3つ目の分岐線は、抵抗R2(第2の抵抗)及びスイッチS1を介してバッファアンプAMP3の出力端子に接続されている。ここで、抵抗R2の抵抗値は、抵抗R1の抵抗値に比べて十分に小さい値に設定されている。
【0020】
更に、抵抗RrefとトランジスタT2との接続点は、トランジスタT1及び抵抗R5を介してグランドに接続され、前述したアンプAMP2の出力端子は、トランジスタT1のゲートに接続されている。
【0021】
また、抵抗R1とコンデンサCとの接続点は、コンパレータCMP1(比較手段)のプラス側入力端子に接続され、抵抗R3と抵抗R4との接続点は、コンパレータCMP1のマイナス側入力端に接続されている。そして、コンパレータCMP1の出力信号が「L」レベルとなったときに、ウィンドウに挟み込みが発生したことを検知するための信号が出力されるようになっている。また、スイッチS1は、電子スイッチFET1をオンとした後、所定時間だけオンとするように動作し、この所定時間をマスク時間としている。即ち、このマスク時間中には、突発的な過電流が発生した場合でも、挟み込みの検知が行われない。
【0022】
次に、上述のように構成された本実施形態に係るパワーウィンドウ制御装置1の動作を、図2に示した特性曲線を参照しながら説明する。電子スイッチFET1がオンとされると、負荷L1に電源VBより供給される電圧が印加されるので、該負荷(駆動モータ)L1が駆動し、車両に搭載されるウィンドウが上昇、或いは下降するように動作する。そして、定常状態(ウィンドウが円滑に上昇、或いは下降しているとき)においては、シャント抵抗Rsの端子電圧と、抵抗Rrefの端子電圧とが等しくなるように、抵抗Rrefに流れる電流Irefが制御される。
【0023】
つまり、アンプAMP1は、シャント抵抗Rsの端子電圧と抵抗Rrefの端子電圧との差分に応じた電圧信号をトランジスタT2のゲートに出力するので、該トランジスタT2に流れる増幅電流の大きさが調整され、電流Iref(電流Iref2)が制御される。
【0024】
そして、トランジスタT2と抵抗R3との接続点に発生する電圧Vs2は、バッファアンプAMP3を介して、抵抗R1とコンデンサCとの直列接続回路の両端に印加される。従って、抵抗R1とコンデンサCとの接続点に発生する電圧は、コンデンサCの静電容量と抵抗R1の抵抗値とによって設定される時定数により、電圧Vs2を平均化した電圧Vavが発生することになる。
【0025】
また、この電圧Vavは、アンプAMP2介してトランジスタT1のゲートに接続されているので、抵抗R5には電圧Vavに比例した大きさの電流が流れる。この際、直流的には電圧Vs1と電圧Vs2とは等しくなるので、以下の(1),(2)式が成立する。
【0026】
Iref1/Iref2=(R3+R4)/R5 ・・・(1)
Iref=Iref1+Iref2 ・・・(2)
また、コンパレータCMP1のマイナス端子側に入力される電圧Vinsは、電圧Vs2を抵抗R3と抵抗R4とにより分圧しているので、Vav>Vinsが成立する。従って、図2の時刻t2〜t3間のように、負荷ILに流れる電流値に大きな変化が発生しない場合には、Vav>Vinsなる関係が成立し、コンパレータCMP1の出力信号は「H」レベルとなり、挟まれ検知信号を出力しない。
【0027】
他方、ウィンドウが障害物を挟み込んだ場合には、図2の時刻t3以降のように、負荷ILに過大電流が流れ、電圧Vinsが急激の増加し、平均値電圧Vavを上回ることになる。その結果、コンパレータCMP1の出力信号は「L」レベルに反転し、挟まれ検知信号を出力する。この際、上述した(1)式が成立しているので、電流Iref1とIref2との比率を変化させることにより、突入電流の検出感度を変化させることができる。
【0028】
次に、電源投入直後の動作について説明する。電源投入直後においては、所定のマスク時間だけスイッチS1が投入された状態となる。即ち、抵抗R1に対して抵抗R2が並列的に接続された状態となる。この際、上述したように、抵抗R2は抵抗R1よりも抵抗値が極めて小さく設定されているので、コンデンサCと抵抗R1(R2)との接続点の電圧Vavは、バッファアンプAMP3の出力電圧に対して敏感に追従するようになる。即ち、図2の時刻t1〜t2間に示すように、平均値電圧Vavは、負荷L1に流れる電流値ILの変化に対して、敏感に変化することになり、電源投入時に電圧Vinsが急激に変化した場合でも、該電圧Vinsは平均値電圧Vavを上回らない。即ち、コンパレータCMP1の出力信号は「H」レベルとなり、挟み込み検知信号は出力されない。
【0029】
そして、図2から理解されるように、平均値電圧Vavは、負荷電流ILの変動に追従しているので、マスク時間が経過した時刻t2において、平均値電圧Vavは電圧Vinsに対して接近した電圧値となっている。これにより、マスク時間が経過した直後(時刻T2の直後)にウィンドウが障害物を挟み込んで、負荷電流ILが急激に増加した場合には、電圧Vinsは平均値電圧Vavを即時に上回ることができるので、確実に挟み込み検知を行うことができる。
【0030】
このようにして、本実施形態に係るパワーウィンドウ制御装置1では、負荷L1に電源電圧を投入した直後の所定時間(マスク時間)だけ、バッファアンプAMP3の出力段に設置される抵抗R1とコンデンサCとによる時定数回路の時定数が短くなるように制御するので、マスク時間中は、負荷電流ILの変化に対して平均値電圧Vavを追従させることができ、挟み込み検出信号の誤出力を防止することができる。
【0031】
また、マスク時間が経過した直後には、平均値電圧Vavは電圧Vinsに接近しているので、たとえマスク時間経過直後にウィンドウが障害物を挟み込んだ場合であっても、確実に挟み込み検知信号を出力することができる。
【0032】
また抵抗R5と抵抗R3,R4との比率を変化させることにより、挟み込み検知の感度を調整することができる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る挟み込み防止機能を具備したパワーウィンドウ制御装置では、駆動モータ(負荷L1)に電源電圧を投入した直後の所定時間(マスク時間)だけ、バッファアンプAMP3の出力段に設置される時定数回路(平均化回路)の時定数が短くなるように制御するので、マスク時間中は、負荷電流ILの変化に対して平均値電圧Vavを追従させることができ、挟み込み検出信号の誤出力を防止することができる。
【0034】
また、マスク時間が経過した直後には、平均値電圧Vavは電圧Vinsに接近しているので、たとえマスク時間経過直後にウィンドウが障害物を挟み込んだ場合であっても、高精度な挟み込みの検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るパワーウィンドウ制御装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るパワーウィンドウ制御装置の、電源電圧投入後の負荷電流の変化、平均値電圧Vavの変化、及び電圧Vinsの変化を示す特性図である。
【図3】従来におけるパワーウィンドウ制御装置の構成を示す回路図である。
【図4】従来におけるパワーウィンドウ制御装置の、電源電圧投入後の負荷電流の変化、平均値電圧Vavの変化、及び電圧Vinsの変化を示す特性図である。
【符号の説明】
1 パワーウィンドウ制御装置
FET1 電子スイッチ
VB 電源電圧
AMP1〜AMP3 アンプ
CMP1 コンパレータ
L1 負荷(駆動モータ)
Claims (2)
- 車両に搭載されるパワーウィンドウを駆動中にて、ウィンドウに障害物を挟み込んだ際に、これを検知して該パワーウィンドウの駆動を停止させる機能を具備したパワーウィンドウ制御装置において、
前記ウィンドウの駆動モータに流れる電流に応じた基準電流を流す基準電流発生回路と、
第1の抵抗、及びコンデンサとの直列接続回路からなり、前記基準電流発生回路の、所定点における電圧を平均化する平均化回路と、
前記基準電流発生回路の、所定点における電圧を分圧する分圧回路と、
前記分圧回路にて分圧された電圧と、前記平均化回路より出力される平均化電圧とを比較する比較手段と、
を具備し、
電源投入時には、前記第1の抵抗に対して並列的に、該第1の抵抗よりも抵抗値の小さい第2の抵抗を接続し、且つ、電源投入時から予め設定された所定時間が経過した後に、前記第1の抵抗から前記第2の抵抗を開放する制御を行い、
前記分圧回路にて分圧された電圧が前記平均化電圧を越えたときに、障害物の挟み込みを検知することを特徴とする挟み込み防止機能を具備したパワーウィンドウ制御装置。 - 前記駆動モータの電圧供給電線には、シャント抵抗Rsが介置され、前記基準電流発生回路は、基準抵抗Rrefと、トランジスタT2と、前記シャント抵抗に発生する電圧と前記基準抵抗に発生する電圧の差分に応じた電圧信号を、前記トランジスタに出力するアンプAMP1と、を具備したことを特徴とする請求項1に記載の挟み込み防止機能を具備したパワーウィンドウ制御装置。
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