JP3773343B2 - 金属帯の超音波探傷方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属帯の欠陥を非破壊で検出する超音波探傷方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に板厚の薄い金属帯の超音波探傷には、板波探傷が行われている。板波は、金属帯の板厚が超音波の波長に比べて小さいときに、縦波と横波とが独立して存在できなくなって発生する波動である。以後、超音波探傷を板波探傷と呼ぶこととする。板波探傷は、超音波を金属帯に入射して金属帯に板波を発生させ、発生した板波を金属帯に伝播させて欠陥から反射される欠陥エコーを検出することによって行われる。前記板波は、図7に示すように超音波の周波数f、超音波の入射角θおよび金属帯の板厚tが特定の関係を示すときに発生する。図7の横軸は、周波数fと板厚tとの積であり、図7の縦軸は入射角θである。図7中のA0,S0,A1,S1,…は板波のモードを表す。図7は、特開昭53−25484号公報および特開昭59−52750号公報に開示されている。図7において、たとえば周波数fと板厚tとの積が3.5のときには、入射角θがA,B,C,Dの各点においてそれぞれA0,S0,A1,S1モードの板波が発生する。このように、板波は多数のモードを有しているので、実操業で板波探傷を行うには、どのモードが適しているのかを事前に把握しておく必要がある。すなわち、周波数fと板厚tとの積に対する最適モードの周波数の入射角θ1(以後、基準入射角と呼ぶ)を設定しておく必要がある。超音波の基準入射角θ1の設定は次のようにして行われる。
【0003】
(1)板厚、成分の異なる多数のサンプル板を準備し、
(2)超音波の周波数fを一定に固定し、入射角θを変化させ、サンプル板の端面または側面から反射される端面または側面エコーを検出し、端面または側面エコーの強度を最大とする入射角θを求めて基準入射角θ1として設定し、
(3)板厚、成分と前記求めた基準入射角θ1との対応関係をテーブルとしてまとめる。
【0004】
したがって、実操業においては製造指令からの板厚および成分に対応する基準入射角θ1を前記テーブルに基づいて容易に求めることができる。従来の板波探傷は、超音波の入射角をこのようにして求めた基準入射角θ1に固定することによって行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、前記基準入射角θ1はサンプル板に基づいて設定されたものである。実操業における金属板の成分は、公称成分が同一であってもサンプル板の成分と異なることがあり、成分が同一であっても結晶粒度がサンプル板と異なることがある。また金属帯の板厚は公称板厚が同一であってもサンプル板の板厚と公差範囲内で異なることがあり、金属帯の形状もサンプル板の形状と異なることがある。さらに、パスラインの変動によって異なることがある。したがって、実操業における超音波の最適な入射角は、前記基準入射角θ1とずれることがしばしばある。前述のように、板波は周波数f、入射角θおよび板厚tが特定の関係を示すときに発生するので、入射角のずれによって板波の強度が減少したり、板波が全く発生しなくなったりすることがある。この結果、超音波の入射角が前記基準入射角θ1に固定されている従来の板波探傷法では、欠陥の検出が正常に行われないことがしばしばあり、欠陥の検出精度が低下してしまうという問題がある。この問題に対する対策としては、入射角θを手動操作で変化させ、オンラインにて常時適正な入射角θに追従させる操作が行われている。しかしながら金属帯の走行速度および探傷速度が高いので、入射角を常時適正な入射角θに追従させることは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、前記問題を解決し、金属帯の成分、板厚、形状が変動しても欠陥の検出精度を高精度に維持することのできる金属帯の超音波探傷方法および装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、走行する金属帯の幅方向一側面寄りから金属帯の幅方向に、欠陥検出用超音波探触子から発生される欠陥検出用超音波を入射し、その反射波を受信して欠陥を検出する金属帯の超音波探傷方法において、
入射角設定用超音波探触子を金属帯の幅方向一側面寄りに配置し、
入射角設定用超音波探触子から発生される入射角設定用超音波の入射角を予め定める繰返し周期で変更しながら、入射角設定用超音波を金属帯に入射し、
金属帯の幅方向他側面からの反射波を受信し、前記他側面からの反射波の強度が最大となる最適入射角を、前記繰返し周期毎に求め、
前記欠陥検出用超音波の入射角を、最適入射角になるように、前記繰返し周期毎に設定変更することを特徴とする金属帯の超音波探傷方法である。
【0008】
本発明に従えば、入射角設定用超音波の入射角を予め定める繰返し周期で変化させて金属帯の幅方向他側面からの反射波の強度が最大となる入射角が求められるので、金属帯の成分、板厚および形状に変動があっても前記繰返し周期毎に最適入射角を確実に求めることができる。また、欠陥検出用超音波の入射角が前記最適入射角になるように、前記繰返し周期毎に設定変更されるので、欠陥の検出精度を低下させることなく超音波探傷を行うことができる。したがって、金属帯の成分、板厚および形状に変動があると欠陥の検出精度が低下する従来の超音波探傷方法に比べて欠陥の検出精度を向上させることができる。
【0009】
また本発明は、超音波を発生する第1振動子を有し、走行する金属帯の幅方向一側面寄りに配置され、金属帯の幅方向に第1振動子から発生される入射角設定用超音波を入射して反射波を検出する入射角設定用超音波探触子と、
第1振動子を金属帯の走行方向に平行な軸線まわりに角変位駆動する第1駆動手段と、
入射角設定用超音波の入射角を検出する第1角度検出手段と、
超音波を発生する第2振動子を有し、前記一側部寄りに配置され、金属帯の幅方向に第2振動子から発生される欠陥検出用超音波を入射して反射波を検出する欠陥検出用超音波探触子と、
第2振動子を金属帯の走行方向に平行な軸線まわりに角変位駆動する第2駆動手段と、
欠陥検出用超音波の入射角を検出する第2角度検出手段と、
金属帯の種類に応じて超音波の入射角を設定する入射角設定回路と、
第1駆動手段を制御して第1振動子を予め定める角変位範囲にわたって、予め定める繰返し周期で角変位させ、入射角設定用超音波の入射角を変化させる第1制御回路と、
入射角設定用超音波探触子および第1角度検出手段の出力に応答し、前記予め定める角変位範囲内における金属帯の他側面からの反射波の強度が最大となる最適入射角を、前記繰返し周期毎に求める最適入射角設定回路と、
最適入射角設定回路の出力に応答し、欠陥検出用超音波の入射角を最適入射角になるように第2駆動手段を制御する第2制御回路とを含むことを特徴とする金属帯の超音波探傷装置である。
【0010】
本発明に従えば、第1振動子を予め定める角変位範囲内にわたって、予め定める繰返し周期で繰返して往復角変位させることができる。これによって、反射波の強度を最大とする最適入射角が角変位の繰返し周期毎に設定されるので、金属帯の成分、板厚および形状に変動があっても、超音波探傷の全期間にわたって最適入射角を確実に求めることができる。したがって、金属帯に板波を安定して伝播させることができる。
【0011】
また本発明の前記第1振動子は、金属帯の種類に対応した予め定めるほぼ最適な入射角度の両側に予め定める角度範囲にわたる角変位量だけ往復角変位駆動されることを特徴とする。
【0012】
本発明に従えば、入射角設定用超音波の入射角は角変位範囲が予め定められているので、全域を角変位する場合に比べて角変位所要時間を短縮することができる。また角変位範囲が前記入射角設定回路によって設定されたほぼ最適な入射角を中心として設定されているので、予め定める角変位範囲を小さく設定しても入射角設定用超音波の最適入射角を確実に求めることができる。したがって、角変位所要時間を短縮することができ、迅速に最適入射角を求めることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の一形態である超音波探傷装置の電気的構成を示すブロック図であり、図2は図1に示す入射角設定用超音波探触子の構成を簡略化して示す断面図である。超音波探傷装置11は、入射角設定用超音波探触子13と、欠陥検出用超音波探触子14と、入射角設定回路15と、第1制御回路16と、最適入射角設定回路17と、第2制御回路18と、第1駆動手段19と、第2駆動手段20と、第1処理回路21と、第2処理回路22と、第1角度検出手段26と、第2角度検出手段26aとを含んで構成される。
【0014】
入射角設定用超音波探触子13は、たとえばタイヤ探触子であり、図2に示すようにタイヤ23と、第1振動子24とを含む。以後、入射角設定用超音波探触子13を第1タイヤ探触子と略称する。第1タイヤ探触子13は走行する金属帯、たとえば鋼帯33の幅方向一側面寄りに配置される。タイヤ23は、たとえばポリウレタン系の弾性ゴムから成り、固定軸27に軸受28を介して回転自在に軸支される。タイヤ23の内部には、液体、たとえば水が一定圧の下に充填されている。タイヤ23は、鋼帯33の表面上に媒質油34を介して接触しながら回転する。固定軸27は、鋼帯33の表面に平行で、かつ鋼帯33の走行方向(図2の紙面に垂直な方向)に直角に延びる軸線を有しており、保持体29を介してフレーム30に取付けられる。
【0015】
第1振動子24は圧電材料、たとえばチタン酸バリウムから成り、タイヤ23の内部に収納されている。第1振動子24は、パルス発振器31から予め定める一定周波数、たとえば2.25MHzの発信パルス出力を受け、入射角設定用超音波を発生し、それを鋼帯33に入射して鋼帯33に板波35を発生させる。発生した板波35は、鋼帯33の幅方向他側面に向かって伝播する。さらに第1振動子24は、前記他側面からの反射波を受信し、それを側面反射信号として第1処理回路21に送信する。
【0016】
第1駆動手段19は、たとえばモータであり、タイヤ23の内部に収納されている。以後、第1駆動手段19を第1モータと称す。前記第1振動子24は、第1モータ19のモータ軸19aの一端部に取付けられており、第1モータ19によって角変位駆動される。第1モータ19は、固定軸27に取付けられており、モータ軸19aは、鋼帯33の表面に平行で、かつ鋼帯33の走行方向に延びる軸線を有している。第1角度検出手段26は、たとえば光電式ロータリエンコーダであり、第1モータ19のモータ軸19aの他端部に取付けられている。以後、第1角度検出手段26を第1エンコーダと称す。第1エンコーダ26は、モータ軸19aの角変位量すなわち回転角度を検出する。
【0017】
第1振動子24から発生された入射角設定用超音波は、水、タイヤ23および媒質油34を経て鋼帯33に入射される。前記超音波の入射角θは、図2に示すように超音波の進行方向36と、法線K、換言すれば鋼帯33の表面に垂直な直線K1との成す角度であるので、第1振動子24の回転角すなわちモータ軸19aの回転角度に比例する。したがって、前記第1エンコーダ26は前記入射角θおよびその角変位量を検出することができる。第1エンコーダ26の出力は、最適入射角設定回路17に送られる。
【0018】
欠陥検出用超音波探触子14は、第2振動子25を有するタイヤ探触子であり、その構成は第1タイヤ探触子24と同一である。第2振動子25は、欠陥検出用超音波を発生する。以後、欠陥検出用超音波探触子14を第2タイヤ探触子14と略称する。第2タイヤ探触子14は、第1タイヤ探触子13と同じ幅方向位置で第1タイヤ探触子13の走行方向下流側に配置される。第2振動子25は、第2駆動手段である第2モータ20によって角変位駆動され、その回転角度は第2角度検出手段である第2エンコーダ26aによって検出される。したがって、第2振動子25から発生される欠陥検出用超音波の入射角θは第2エンコーダ26aによって検出される。第2振動子25は、鋼帯33の幅方向に欠陥検出用超音波を入射して欠陥からの反射波を受信し、欠陥信号を第2処理回路22に送信する。なお、第2モータ20および第2エンコーダ26aの構成は、第1モータ19および第1エンコーダ26と同一である。
【0019】
入射角設定回路15は、鋼帯33の種類、たとえば板厚および鋼種(成分)に応じて超音波の前記基準入射角θ1を設定する回路である。入射角設定回路15はメモリ15aを有しており、メモリ15aには前記鋼帯33の板厚と鋼種(成分)と、超音波の基準入射角θ1との対応関係を示すテーブルがストアされている。テーブルの一例を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
このテーブルに設定されている基準入射角θ1は、前述のように多数のサンプル板に基づいて求めた板波探傷の最適モードの基準入射角θ1である。さらに、板波探傷の最適モードは図7に関連して述べた構成と同様にして超音波の周波数f(本実施形態では2.25MHz)と鋼帯33の板厚tとの積に対応して前記A〜Dの各点のうちいずれを選択するかが予め定められている。鋼帯33の板厚および鋼種(成分)は、プロセスコンピュータ41から入射角設定回路15に指令される。
【0022】
第1制御回路16は、第1モータ19を制御して第1振動子24を予め定める角変位範囲内で角変位させ、入射角設定用超音波の入射角を順次的かつ周期的に変化させる回路である。第1制御回路16の出力は、角変位指令信号として第1モータ19に送られる。第1処理回路21は、第1タイヤ探触子13の第1振動子24の出力に応答し、鋼帯33の幅方向他側面からの反射波の強度を検出する回路である。第1処理回路21の出力は、最適入射角設定回路17に送られる。
【0023】
最適入射角設定回路17は、最適入射角を検出して設定する回路であり、最適角変位量設定回路37と、加算器38とから成る。最適角変位設定回路37はメモリ37aを有し、入射角の最適角変位量を検出する回路である。前記最適角変位量設定回路37は、第1エンコーダ26および第1処理回路21の出力に応答し、入射角の角変位量と前記側面からの反射波の強度とをメモリ37aにストアし、前記ストアしたデータの中から前記側面からの反射波の強度が最大となる入射角の角変位量を求める。加算器38は、入射角設定回路15の出力と最適角変位量設定回路37の出力とを加算する。これによって、最適入射角設定回路17は、前記側面からの反射波の強度が最大となる入射角を求め、前記求めた入射角を最適入射角として設定することができる。
【0024】
第2制御回路18は、最適入射角設定回路17の出力に応答し、欠陥検出用超音波の入射角が最適入射角になるように第2モータ20を制御する回路である。第2処理回路22は、第2タイヤ探触子14の第2振動子25の出力に応答し、欠陥からの反射波の強度を検出するとともに、それに基づいて欠陥を検出する回路である。欠陥の検出方法については後述する。走行距離検出器39は、たとえばパルス発生器であり、鋼帯33の走行距離を検出して出力を第2処理回路22に送る。プリンタ40は、第2処理回路22の出力に応答し、欠陥からの反射波の強度および欠陥発生位置をプリントアウトする。
【0025】
図3は、図1に示す超音波探傷装置の動作を説明するためのフローチャートである。図3を参照して本発明の超音波探傷方法、すなわち板波探傷方法を説明する。ステップa1では、製造指令が発令され、板波探傷される鋼帯33の鋼種および板厚がプロセスコンピュータ41から指令される。ステップa2では、超音波の基準入射角θ1が前記表1に基づいて設定される。基準入射角θ1は、前述のように多数のサンプル板に基づいて設定されたほぼ最適な入射角である。ステップa3では、第1および第2タイヤ探触子13,14によって板波探傷が開始される。第1タイヤ探触子による板波探傷は、第1制御回路16によって入射角設定用超音波の入射角が基準入射角θ1になるように第1モータ19を制御し、前記他側部側面から反射される反射波(以後、側面エコーと呼ぶことがある)を受信することによって行われる。また、第2タイヤ探触子14による板波探傷は、第2制御回路18によって欠陥検出用超音波の入射角が基準入射角θ1になるように第2モータ20を制御し、欠陥から反射される反射波(以後、欠陥エコーと呼ぶことがある)を受信することによって行われる。板波探傷による欠陥エコーおよび側面エコーの検出は次のようにして行われる。
【0026】
図4は、超音波探傷による欠陥の検出方法を説明するための模式図である。図4(1)に示すように第1および第2タイヤ探触子13,14の第1および第2振動子24,25から送信された入射角設定用および欠陥検出用超音波は、基準入射角θ1で鋼帯33に入射され、発生した板波が鋼帯33の幅方向一側面44寄りから他側面43に伝播する。板波は、欠陥42および他側面43で反射して矢符45方向に進行し、第1および第2振動子24,25に戻り、電気信号に変換されて第1および第2処理回路21,22に送信される。
【0027】
第1および第2処理回路21,22では、反射波の電気信号が図4(2)に示すように画面に現れる。すなわち、欠陥からの欠陥エコーFおよび他側面43からの側面エコーEが鋼帯33の幅方向位置に対応して現れる。さらに画面には、入射波信号Pも現れる。図4(2)の横軸は、鋼帯33の幅方向距離を表しており、図4(2)の縦軸は反射波の強度を表している。これによって、エコーの高さを測定すれば反射波の強度を検出することができる。しかしながら、画面には複数のエコーが現れるので、検出したいエコーを誤検知するおそれがある。したがって、図4(2)に示すように幅方向距離B1,B2の位置にゲートを設け、第2処理回路22のように欠陥エコーを検出する場合には、B1以上B2以下の領域に現れるエコーのみを抽出し、第1処理回路21のように側面エコーを検出する場合には、B2以上の領域に現れるエコーのみを抽出する。また、ノイズNを欠陥エコーおよび側面エコーであると誤検知しないように図4(2)中に直線L1で示す反射波強度のしきい値を設定し、しきい値を超えるエコーのみを欠陥エコーおよび側面エコーであると判定している。
【0028】
再び図3を参照して、ステップa4では最適入射角の探索が行われる。最適入射角の探索は、次のようにして行われる。
【0029】
図5は、入射角の角変位順序を説明するための図である。図5の直線K1は、前述のように鋼帯33の表面に垂直な直線であり、直線K2は直線K1との成す角度が前記基準入射角θ1である直線である。また直線K3は、直線K1との成す角度が前記基準入射角θ1に予め定める最大角変位量Δθ2を加算した角度(=θ1+Δθ2)である直線であり、直線K4は直線K1との成す角度が(θ1−Δθ2)である直線である。したがって直線K3およびK4は、直線K2を中心として+Δθ2,−Δθ2だけそれぞれ角変位した位置に存在する。さらに、直線K3と直線K4とで囲まれる領域(図5の斜線領域)は、角変位範囲を形成する。
【0030】
本実施の形態では、入射角設定用超音波の入射角は次のような予め定める角変位順序で変化する。
(a)直線K2を入射角の角変位の出発位置とし、直線K3に向かって単位角変位量ずつ角変位する。
(b)直線K3に到達すると、出発位置である直線K2に向かって連続的に角変位する。
(c)直線K2に到達すると直線K4に向かって単位角変化量ずつ角変位する。
(d)直線K4に到達すると、出発位置である直線K2に向かって連続的に角変位する。
(e)前記(a)〜(d)の一連の往復角変位を繰返す。
なお、前記(a)および(c)においては前記反射波の強度が検出され、前記(b)および(d)においては前記反射波の強度が検出されない。
【0031】
図6は、最適入射角の探索方法を説明するためのフローチャートである。ステップb1では、最大角変位量Δθ2および単位角変位量Δθ3が設定される。最大角変位量Δθ2は、最適入射角を探索するための角変位範囲を定めるものであり、たとえば5°に設定される。単位角変位量Δθ3は、順次的に行われる角変位の1回当たりの角変位量であり、たとえば0.1°に設定される。ステップb2では、第1タイヤ探触子13の入射角設定用超音波の入射角が基準入射角θ1であるか否かが判断される。この判断が否定であれば、第1制御回路16によって前記入射角が基準入射角θ1になるように制御される。この判断が肯定であれば、ステップb3に進む。
【0032】
ステップb3では、入射角がΔθ3だけ増加される。ステップb4では、Δθ3の累積値であるΣΔθ3が第1エンコーダ26によって検出されるとともに、側面エコー強度が第1処理回路21によって検出される。さらに、これらの検出値は最適角変位量設定回路37に送られ、そのメモリ37aに表2に示すようにストアされる。
【0033】
【表2】
【0034】
ステップb5では、ΣΔθ3=Δθ2であるか否かが判断される。この判断が否定であれば、角変位量が最大角変位量Δθ2に達していないので、再度ステップb3に戻る。このステップb3,b4,b5,b3を巡る処理は、ステップb5の判断が肯定になるまで繰返される。この間、入射角がΔθ3ずつ増加する毎に前記検出値が前記メモリ37aの表2に順次ストアされる。ステップb5の判断が肯定であれば、ステップb6に進む。ステップb6では、入射角が減少され、基準入射角θ1に向かって戻される。ステップb7では、ステップb2と同様に入射角が基準入射角θ1であるか否かが判断される。この判断が肯定であれば、ステップb8に進む。
【0035】
ステップb8では、入射角が−Δθ3だけ減少される。ステップb9では、ステップb4と同様にΣ−Δθ3と側面エコー強度とが検出されるとともに、検出値が表2にストアされる。ステップb10では、Σ−Δθ3=−Δθ2であるか否かが判断される。この判断が否定であれば、角変位量が最大角変位量−Δθ2に達していないので、再度ステップb8に戻る。このステップb8,b9,b10,b8を巡る処理は、ステップb10の判断が肯定になるまで繰返される。この間、入射角が−Δθ3ずつ減少する毎に前記検出値が表2に順次ストアされる。ステップb11では、入射角が増加され、再度基準入射角θ1に向かって戻される。ステップb12では、ステップb2と同様に入射角が基準入射角θ1であるか否かが判断される。この判断が肯定であればステップb13に進む。
【0036】
ステップb13では、最適角変位量Δθ1の検出が行われる。この処理は、前記表2にストアした側面エコー強度を対比し、側面エコー強度が最大となる角変位量(ΣΔθ3,Σ−Δθ3)を求め、前記求めた角変位量を最適角変位量Δθ1とすることによって行われる。ステップb14では、最適入射角θ4の設定が行われ、最適入射角の探索のための一連の処理が完了する。この処理は、最適入射角θ4を(1)式に基づいて算出することによって行われる。
θ4 = θ1+Δθ1 …(1)
【0037】
このように、最適入射角θ4の探索が側面エコー強度の最大値に基づいて行われるので、信頼性の高い最適入射角θ4を確実に設定することができる。また、角変位の順序および角変位範囲が予め定められているので、それらが定められていない場合に比べて最適入射角θ4を迅速に探索することができる。さらに、角変位範囲が基準入射角θ1を中心として設定されており、基準入射角θ1は前述のように多数のサンプル板から求められたほぼ最適な角度に設定されているので、最適入射角θ4は基準入射角θ1の近辺にあり、角変位範囲を小さく設定しても最適入射角θ4を確実に求めることができる。
【0038】
再び図3を参照して、ステップa5では第2タイヤ探触子14から発生される欠陥検出用超音波の入射角の設定変更が行われる。前記入射角の設定変更は、ステップa2で設定した基準入射角θ1をステップa4で設定した最適入射角θ4に設定変更することによって行われる。設定変更後、欠陥検出用超音波の入射角は第2制御回路18によって最適入射角θ4になるように制御される。ステップa6では、コイルエンドか否かが判断される。この判断が否定であれば、ステップa4に戻り、再度最適入射角の探索が行われる。このステップa4,a5,a6,a4を巡る処理は、ステップa6の判断が肯定になるまで繰返して行われる。したがって、新たに最適入射角が探索されるごとに、すなわち一連の角変位の繰返し周期毎に欠陥検出用超音波の入射角の設定変更が行われる。また、次の設定変更が行われるまでは、入射角は設定された最適入射角θ4のまま一定に保持される。ステップa6の判断が肯定であれば、超音波探傷装置11の一連の動作が完了する。
【0039】
このように、第1タイヤ探触子13から発生される入射角設定用超音波の最適入射角度が一連の角変位の繰返し周期毎に求められるので、鋼帯33の全長にわたって最適入射角を把握することができる。また第2タイヤ探触子14から発生される欠陥検出用超音波の入射角が角変位の繰返し周期毎に前記求めた最適入射角に設定変更されるので、鋼帯33の材質(成分、結晶粒度)、板厚および形状に変動が生じても欠陥検出精度を高精度に維持することができる。
【0040】
本発明の他の実施の形態として入射角の角変位の出発位置を直線K2に代って直線K3または直線K4にしてもよい。この場合には、直線K3またはK4から直線K4またはK3に向かって順次的に角変位し、直線K4またはK3に到達後、反対方向に角変位する往復角変位が繰返して行われる。また、角変位中、常時前記反射波の強度が検出される。これによって、角変位の繰返し周期が短くなるので、最適入射角の設定変更周期を短縮することができ、欠陥の検出精度を向上することができる。さらに、角変位を一定周期で繰返して行わないで、断続的に行うように構成してもよく、1回だけ行うように構成してもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の本発明によれば、金属帯の成分、板厚および形状に変動があっても欠陥検出用超音波の入射角が予め定める繰返し周期で最適入射角になるように制御されるので、欠陥の検出精度を低下させることなく超音波探傷を行うことができる。したがって、金属帯の成分、板厚および形状の変動によって欠陥の検出精度が低下する従来の超音波探傷方法に比べて欠陥の検出精度を向上させることができる。
【0042】
また請求項2記載の本発明によれば、超音波探傷の全期間にわたって、予め定める繰返し周期毎に最適入射角を確実に求めて、欠陥検出用超音波の入射角として設定することができるので、金属帯に板波を安定して伝播させることができる。したがって超音波探傷装置の信頼性を向上することができる。
【0043】
また請求項3記載の本発明によれば、入射角設定用超音波の入射角の予め定める角変位範囲を小さく設定しても入射角設定用超音波の最適入射角を確実に求めることができるので、角変位所要時間を短縮することができる。したがって、迅速に最適入射角を求めることができ、欠陥の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である超音波探傷装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す入射角設定用超音波探触子の構成を簡略化して示す断面図である。
【図3】図1に示す超音波探傷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】超音波探傷による欠陥の検出方法を説明するための模式図である。
【図5】入射角の角変位順序を説明するための図である。
【図6】最適入射角の探索方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】超音波の周波数と超音波の入射角と金属帯の板厚との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
11 超音波探傷装置
13 第1タイヤ探触子
14 第2タイヤ探触子
15 入射角設定回路
16 第1制御回路
17 最適入射角設定回路
18 第2制御回路
19 第1モータ
20 第2モータ
21 第1処理回路
22 第2処理回路
23 タイヤ
24 第1振動子
25 第2振動子
26 第1エンコーダ
26a 第2エンコーダ
27 固定軸
31 パルス発振器
33 鋼帯
34 媒質油
37 最適角変位量設定回路
38 加算器
39 走行距離検出器
40 プリンタ
41 プロセスコンピュータ
Claims (3)
- 走行する金属帯の幅方向一側面寄りから金属帯の幅方向に、欠陥検出用超音波探触子から発生される欠陥検出用超音波を入射し、その反射波を受信して欠陥を検出する金属帯の超音波探傷方法において、
入射角設定用超音波探触子を金属帯の幅方向一側面寄りに配置し、
入射角設定用超音波探触子から発生される入射角設定用超音波の入射角を予め定める繰返し周期で変更しながら、入射角設定用超音波を金属帯に入射し、
金属帯の幅方向他側面からの反射波を受信し、前記他側面からの反射波の強度が最大となる最適入射角を、前記繰返し周期毎に求め、
前記欠陥検出用超音波の入射角を、最適入射角になるように、前記繰返し周期毎に設定変更することを特徴とする金属帯の超音波探傷方法。 - 超音波を発生する第1振動子を有し、走行する金属帯の幅方向一側面寄りに配置され、金属帯の幅方向に第1振動子から発生される入射角設定用超音波を入射して反射波を検出する入射角設定用超音波探触子と、
第1振動子を金属帯の走行方向に平行な軸線まわりに角変位駆動する第1駆動手段と、
入射角設定用超音波の入射角を検出する第1角度検出手段と、
超音波を発生する第2振動子を有し、前記一側部寄りに配置され、金属帯の幅方向に第2振動子から発生される欠陥検出用超音波を入射して反射波を検出する欠陥検出用超音波探触子と、
第2振動子を金属帯の走行方向に平行な軸線まわりに角変位駆動する第2駆動手段と、
欠陥検出用超音波の入射角を検出する第2角度検出手段と、
金属帯の種類に応じて超音波の入射角を設定する入射角設定回路と、
第1駆動手段を制御して第1振動子を予め定める角変位範囲にわたって、予め定める繰返し周期で角変位させ、入射角設定用超音波の入射角を変化させる第1制御回路と、
入射角設定用超音波探触子および第1角度検出手段の出力に応答し、前記予め定める角変位範囲内における金属帯の他側面からの反射波の強度が最大となる最適入射角を、前記繰返し周期毎に求める最適入射角設定回路と、
最適入射角設定回路の出力に応答し、欠陥検出用超音波の入射角を最適入射角になるように第2駆動手段を制御する第2制御回路とを含むことを特徴とする金属帯の超音波探傷装置。 - 前記第1振動子は、金属帯の種類に対応した予め定めるほぼ最適な入射角度の両側に予め定める角度範囲にわたる角変位量だけ往復角変位駆動されることを特徴とする請求項2記載の金属帯の超音波探傷装置。
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