JP3772918B2 - 転炉型精錬容器における溶銑の脱燐精錬方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転炉型精錬容器における溶銑の脱燐精錬に関し、特に吹錬終了時におけるスラグフォーミングを防止して、円滑で生産性の高い溶銑の脱燐精錬を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
伝統的転炉製鋼法においては、同一の転炉において溶銑の脱燐精錬と脱炭精錬と行なって、製鋼作業を終了していた。しかし、近年の鋼材の品質に対する要求が高くなる一方、連続鋳造の拡大や、真空脱ガス、取鍋精錬等の溶鋼の二次精錬が普及するに伴い、転炉における出鋼温度が上昇し、転炉に於ける脱燐能力が低下してきた。この理由は、脱燐反応は高温ほど不利に進行するからである。
【0003】
そこで、転炉に装入する溶銑を予め処理して、特に燐(P)成分をある程度除去してから転炉に装入する溶銑予備処理法が発展してきた。この方法の一つとして、転炉型の精錬容器(以下転炉等という)において、同一の転炉等において溶銑の脱燐精錬と脱炭精錬とを行なう精錬を中止し、一の転炉等において溶銑の脱燐を行ない、この脱燐された溶銑を他の一の転炉等に移して脱炭精錬を行なう製鋼法が提案されている。
【0004】
かかる技術として、特開平2 −200715号公報、特公平2−14404号公報、特公昭61−23243号公報の提案がある。また、本願の発明者も既に従来の製鋼工場を改造し、複数の転炉のそれぞれの炉前作業床に作業床開口部を設け、一の転炉で溶銑の脱燐精錬をした溶湯を受湯鍋に受け、この受湯鍋を前記作業床開口部を通して他の一の転炉に運搬し、この転炉に装入し、ここで脱炭精錬を行なう精錬方法を開発している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記製鋼方法において、一の転炉等で溶銑の脱燐精錬を行ない直ちに出湯し、これを他の転炉等で脱炭精錬することが円滑な製鋼作業上必要である。しかし、上記溶銑の脱燐精錬は低温(1300〜1350℃)で行われており、また、溶銑の脱燐精錬のためにスラグのFeO(15〜20%)が高いためにスラグがフォーミングしており、直ちに出湯すると、炉口からスラグが流出し、又は受湯鍋に大量のスラグが流入し、受湯鍋から溢れて種々の問題が生ずる。
【0006】
そのため、酸素吹錬後、スラグフォーミングが鎮静するまで、通常例えば8〜15分間出湯を待たなければならない。そこで、全体の製鋼作業の能率が低下する問題があった。そこで、本発明では、上記溶銑の脱燐精錬が終了してから約2分間リンスを行い、その後5分以内に出湯が可能となるようにスラグフォーミングを鎮静化するような溶銑の脱燐精錬方法を課題とする。
【0007】
上記課題を種々研究した結果、下記の発明をするに至った。
発明の第1の態様は、溶銑を脱燐精錬し、その後脱炭精錬する転炉製鋼方法において下記の工程を備えたことを特徴とする溶銑の脱燐精錬方法。
(a)前記転炉製鋼法において溶銑を酸素吹練して脱燐精錬する精錬において、
(b)前記溶銑の酸素吹錬の終了時におけるスラグの塩基度(CaO/SiO2 )
を2.2〜4.0とし、かつ酸素吹錬終了前後に おいて炭素材を1kg/ton(溶銑)以上を前記転炉型精錬容器に装入す る。
【0008】
発明の第2の態様は、前記炭素材を1kg/ton(溶銑)以上を転炉に装入するに際して、これを1回0.2から0.4kg/ton(溶銑)に分割して装入することを特徴とする請求項1記載の転炉製鋼法における溶銑の脱燐精錬方法。
【0009】
発明の第3の態様は、前記溶銑の脱燐精錬において、鉄鉱石の装入は、酸素吹錬終了の少なくとも5分以前において終了していることを特徴とする請求項1又は2記載の転炉製鋼法における溶銑の脱燐精錬方法。
【0010】
【発明に実施の形態】
溶銑の脱燐精錬の概要を図5において説明する。図5は溶銑340tonの転炉型精錬容器2における溶銑4の脱燐精錬の状況を概念的に示す。溶銑装入後、ランス12から酸素を吹錬し、所定量の焼石灰等を装入し、CaO、SiO2 、FeO等を主成分とするスラグ6を生成させ、溶銑から燐を除去する。この際、上記転炉型精錬容器のフリーボード(溶銑湯面から炉口までの高さ)(HF )は7.5mもあるが、スラグ6がフォーミングし、炉口10近くまでに達する。
【0011】
溶銑の脱燐精錬が終了すると炉を倒炉して出鋼口8を介して取鍋に出湯を行う。この際、スラグが高くフォーミングしていると炉口若しくは受湯鍋よりスラグが溢れ出て炉下を汚染する。そこで、出湯前においてスラグフォーミングは出来るかぎり鎮静化していることが必要である。
【0012】
溶銑の脱燐精錬の概要を図4に示す。溶銑340tonを装入後、焼き石灰(6ton/ch),ホタル石(0.6ton/ch)等を装入しながら、酸素吹錬を約12分間行う。その後、溶銑とスラグの分離を行うためリンスを2分間程度行う(リンス終了までを脱燐精錬という)。その後、従来はスラグフォーミングの鎮静化のため、6〜10分間(平均8分間)を待って出湯する。出湯時間(倒炉開始から出湯終了まで)は通常5分間程度かかる。
【0013】
本発明では上記6〜10分間のスラグフォーミングの鎮静化時間を5分以内とすることにより、全体の製鋼時間を最大5分間短縮し、製鋼能率を向上させる。上記溶銑の脱燐精錬におけるスラグフォーミングの鎮静化時間とスラグの塩基度との関係を図1に示す。ここでスラグフォーミングが鎮静化したかどうかは、炉内におけるスラグ高さが1m以下であるかどうかを基準とした。
【0014】
図1からスラグに炭素材としてコークス粉(径が10mm以下)を装入しない場合には、塩基度(CaO/SiO2 )が約2.2以上であれば鎮静化時間は約7分間以下となることが明かである。
【0015】
この理由は、スラグの塩基度が2.2以上であれば連鎖状のスラグ中のシリケートイオンが分断され、スラグの粘性が低くなるからであると考えられる。他方、塩基度が4以上になるとスラグの融点が1400℃以上となるため脱燐精錬の温度(1400℃以下)ではスラグが溶融せず、スラグフォーミングは小さいが、脱燐精錬が進行しないため望ましくない。
【0016】
次ぎに、スラグの塩基度が約2.2〜2.6である場合において、コークス粉の装入量とスラグの鎮静化時間との関係を調べ、図2に示した。コークス粉装入量が1kg/ton(溶銑)以上である場合には鎮静化時間が5分間以下となることが明かである。
【0017】
コークス粉がいかなる理由によりスラグフォーミングを鎮静化するかについては種々の学説があるが、コークス粉がスラグのFeOを還元して発生するCOガスによるガス抜けがよくなるためと推定されている。炭素材としては、コークス粉(径が10mm以下)、カーボネット、石油コークス等がある。
【0018】
以上述べたとおり、溶銑の脱燐精錬の末期において、スラグの塩基度を2.2以上とし、且つコークス粉を1kg/ton(溶銑)以上を装入するとスラグフォーミングは5分間以内に鎮静化するので、安全な出湯が可能になる。
【0019】
コークス粉等の炭素材の装入方法は、1回に全量装入してもよいが、望ましくは、例えば1回の装入量を0.2〜0.3kg/tonとして1〜4分間に渡って分割して装入することが望ましい。
【0020】
炭素材はスラグのFeOと反応し、COガスを発生し、スラグフォーミングを一時的に活発にするため、1回で全量装入するより、分割装入したほうが望ましいからである。また、コークス粉の装入時期は、酸素吹錬終了後から装入を開始し、リンスの期間、鎮静化期間の前半が望ましい。
【0021】
通常、脱燐精錬においては溶銑中のPがスラグ中のFeOと反応してスラグに吸収される。そこで、脱燐精錬を促進するためにはスラグ中のFeO濃度を高くする。このため、吹錬中期に鉄鉱石或いはミルスケールを装入或いは装入する(図4参照)。
【0022】
しかし、スラグのFeOが高いと、酸素吹錬終了後においてスラグフォーミングが大きくなる。そこで、上記鉄鉱石装入後の経過時間とスラグの鎮静化時間との関係を調べた。そこ結果を図3に示す。図3に示す通り、鉄鉱石装入後5分間以上経過するとスラグは鎮静化していることが明らかである。そこで、本発明においては、酸素吹錬終了時刻の5分間以前において終了しているように鉄鉱石装入を行う。
【0023】
【実施例】
以下本発明の実施例を示す。本発明に係る脱燐精錬法の効果を確認するため3か月間にわたって実施した。各月において、1日16〜30チャージ(ch)、各月最小22日間実施し、成分組成等については月間の平均値を算出し、操業結果を表1に示した。なお、溶銑の脱燐精錬の具体的技術内容(送酸量、ライス高さ、底吹き窒素量、焼石灰、螢石等の造滓材の装入量、及びその時期等)は前述の図4に示した通りである。
【0024】
【表1】
【0025】
表1に示す通り、脱燐精錬前における溶銑のPは約0.1wt%であるが、脱燐精錬後は約0.03wt%に脱燐されており、精錬の目的が達成されている。また、スラグ鎮静化のための時間は図4に示すとおり約4分間となっている。他方従来は、この時間が、最大15分間、平均7分間であり、製鋼時間は3分間短縮した。
【0026】
【発明の効果】
本発明に係る溶銑の脱燐精錬を実施することにより、溶銑の脱燐精錬の時間は平均約3分間短縮することができる。所謂製鋼時間が1チャージ当たり29分間であるから、製鋼時間を約10%短縮することができる。この効果は極めて大きく、生産能率の向上は甚大であり、産業上の効果は著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるスラグ塩基度とスラグ鎮静化時間との関係を示す。
【図2】本発明におけるコークス粉装入量とスラグ鎮静化時間との関係を示す。
【図3】本発明における鉄鉱石装入後の時間とスラグ鎮静化時間との関係を示す。
【図4】本発明における溶銑の脱燐精錬の概要を示す図である。
【図5】転炉型精錬容器における溶銑の脱燐精錬の状況を示す図である。
【符号の説明】
2 転炉型精錬容器
4 溶銑
6 スラグ
8 出鋼口
10 炉口
12 ランス
14 サブランス
Claims (3)
- 溶銑を脱燐精錬し、その後脱炭精錬する転炉製鋼方法において下記の工程を備えたことを特徴とする溶銑の脱燐精錬方法。
(a)前記転炉製鋼法において溶銑を酸素吹練して脱燐精錬する精錬において、
(b)前記溶銑の酸素吹錬の終了時におけるスラグの塩基度(CaO/SiO2 )を2.2〜4.0とし、かつ酸素吹錬終了前後において炭素材を1kg/ton(溶銑)以上を前記転炉に装入する。 - 前記炭素材を1kg/ton(溶銑)以上を転炉に装入するに際して、これを1回、0.2から0.3kg/ton(溶銑)に分割して装入することを特徴とする請求項1記載の転炉製鋼法における溶銑の脱燐精錬方法。
- 前記溶銑の脱燐精錬において、鉄鉱石の装入は、酸素吹錬終了 の少なくとも5分以前において終了していることを特徴とする請求項1又は2記載の転炉製鋼法における溶銑の脱燐精錬方法。
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