JP3772014B2 - 液晶表示装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、液晶表示装置を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、絶縁性基板と、その表面に形成された素子とから構成されている。この液晶表示装置の製造工程においては、剥離や摩擦などによって絶縁性基板が静電気を帯びて、基板の電位が高くなりやすく、その電位によっては放電が発生し、絶縁性基板表面に形成された素子が損傷を受け、不良となる危険性がある。したがって、絶縁性基板の電位が高くならないようにする方策を講じることは、歩留向上を図る上で極めて有用である。このような観点から、静電気が発生した基板の電位を低減させる方法の例として、特開平7−312337号公報で示された基板加熱処理装置がある。その構成を図3に示す。図において、1はチャンバーであり、2はプレートであり、3はヒーターであり、4は基板であり、1aは基板4の出入口であり、1bはチャンバ内部であり、2bは昇降ビンであり、20はイオナイザであり、IGはイオン気体流を示している。本基板加熱処理装置においてはチャンバー1内の空間1bの底面部にプレート2がヒーター3と一体的に設けられる。イオナイザ20がチャンバ1内で基板端部の上方位置に固定配置される。イオナイザ20では、窒素ガスを電極側に供給しながら、電極に所定の電圧を印加してイオン気体を発生させ、イオン気体流IGとして基板4に向けて噴出する。
【0003】
イオナイザ20と基板4が近接し、しかも基板4にイオン気体を確実に供給して、電気的に中和させることができ、その結果、基板4の剥離帯電を防止することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した装置では、チャンバから取り出された基板の電位は低くすることができるが、プレートから持上げられている最中の基板電位は高くなってしまうという問題があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、基板の電位をより低く抑えることができる液晶表示装置の製造方法を得ることを目的としている。
【0006】
まず、従来の持ち上げ方では、イオンを照射しながらであっても持上げられている最中に基板電位が高くなることを説明する。図4の(a)は従来の基板の持ち上げ方を示す説明図であり、図4の(b)はその基板電位を示す説明図である。
【0007】
プレートやステージなどに密着された絶縁性基板を、そのプレートやステージなどから剥離すると、剥離帯電が生じる。この基板をそのまま持上げ続けると、基板電位はプレートやステージと基板との距離に比例して上昇し、高電位になる。
【0008】
つぎに、イオナイザでイオンを照射しながら基板を剥離し、持上げるばあいの基板電位を求める。図5および図6は、従来技術における基板電位の変化量を求める説明図である。ある時刻tにおける基板電位をV(t)とし、時刻tからt+δtまでの電位変化を考える(図6参照)。
【0009】
時刻t以降、除電しないと仮定したばあい、剥離スピードが一定であるため、基板電位は直線的に変化する(その直線は、時刻t=0でゼロ)。このばあい、単位時間の基板電位変化量δV0は、
【0010】
【数1】
【0011】
イオナイザで除電したばあいの実際の基板電位変化量δVは、
【0012】
【数2】
【0013】
その差はイオナイザによる減衰分δViである。
【0014】
ここで、初期電位G0がイオナイザで除電されるばあい、時刻tでの電位をG(t)、減衰定数をkとする(図5参照)と、
【0015】
【数3】
【0016】
したがって、
δVi=k・V(t)・δt
δV−δV0=δViであるから、
【0017】
【数4】
【0018】
t=0での電位変化率
【0019】
【数5】
【0020】
は、イオナイザがないばあいの電位変化率と等しい。
【0021】
ここで、初期電荷密度をq0[C/mm2]、剥離速度をv[mm/sec]とすると、イオナイザがないばあいの電位変化率は
【0022】
【数6】
【0023】
となる。
【0024】
したがって、
【0025】
【数7】
【0026】
これが、イオナイザでイオンを照射しながら基板を剥離したばあいの基板電位を表す式である。q0、v、kに具体的な数値を入れてグラフを描くと、図4(b)のようになり、基板を持上げている最中
【0027】
【数8】
【0028】
に基板電位がピークを迎えることが分かる。
【0029】
このピーク値は、発生する電荷密度q0が等しく、同じ除電能力をもつイオナイザ(すなわちkが等しい)を用いたばあいでも、持上げ方を変えれば(すなわちvの値を変えれば)変化させることができる。
【0030】
本発明は、持上げ方を工夫することにより、基板電位をより効果的に、かつより低く抑えることができる製造方法を得るものである。
【0031】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1にかかわる液晶装置の製造方法は、絶縁性基板と、その上に形成された素子からなる液晶表示装置の製造方法において、絶縁性基板が密着して載せ置きされるステージと、ステージに密着した基板がステージから剥離されて持上げられる最中に基板にイオンを供給できる除電装置から構成され、ステージから基板を持上げる際に、基板の電位が最大値になる前に一度持上げ動作を止め、一定時間保持した後、再び持上げ動作を開始し、所望の高さをうるために2段階で基板を持上げることを特徴とするものである。
【0032】
本発明の請求項2にかかわる液晶表示装置の製造方法は、前記請求項1記載の2段階持上げに関し、1段目と2段目のいずれかの持上げスピードを速くしたことを特徴とするものである。
【0033】
本発明の請求項3にかかわる液晶表示装置の製造方法は、前記請求項1記載の2段階持上げに関し、1段目と2段目の両方の持上げスピードを速くしたことを特徴とするものである。
【0034】
本発明の請求項4にかかわる液晶表示装置の製造方法は、絶縁性基板と、その上に形成された素子からなる液晶表示装置の製造方法において、絶縁性基板が密着して載せ置きされるステージと、ステージに密着した基板がステージから剥離されて持上げられる最中に基板にイオンを供給できる除電装置から構成され、ステージから基板を持上げる際に、基板の電位が最大値になる前に一度持上げ動作を止め、一定時間保持した後、再び持上げ動作を開始し、所望の高さをうるために3または4以上の多段階で基板を持上げることを特徴とするものである。
【0035】
本発明の請求項5にかかわる液晶表示装置の製造方法は、前記3または4以上の多段階で基板を持上げる際に、それぞれの段階のいずれかの持上げスピードを速くしたことを特徴とするものである。
【0036】
本発明の請求項6にかかわる液晶表示装置の製造方法は、前記3または4以上の多段階で基板を持上げる際に、それぞれの段階の全ての持上げスピードを速くしたことを特徴とするものである。
【0037】
【発明の実施の形態】
実施の形態1
この発明の実施の形態として、2段階で持上げ、かつそれぞれの持上げスピードが従来の1段階持上げと等しいばあいの例を示す。発生する電荷密度が1000[pC/cm2]、イオナイザの除電能力(減衰定数)k=1のばあいを示す。図1の(a)は基板の持上げ方を示す説明図であり、破線は従来の1段階持上げのばあい、実線は、本発明を実施したばあいである。図1の(b)は、それぞれのばあいの基板電位を示す説明図である。従来の例としては、30mmの距離を3秒で持上げたばあいの例である。従来のばあい、持上げはじめて1秒後に基板電位は4.1kVのピーク値に至っていた。
【0038】
これを、0〜0.3秒は、従来と同様に持上げ、0.3〜0.8秒は持上げ動作を止めてその高さで保持、0.8〜3.5秒に再び従来と同じ速度で持上げ、30mmまで持上げたばあいが図1の(a)の実線である。0.3秒までは、従来と同様の電位になる。すなわち基板電位は、
【0039】
【数9】
【0040】
となる。
【0041】
その後0.8秒までの0.5秒間を持上げられないので、電位が上昇する要素がなく、除電のみとなり、電位はつぎの式のように減少する。
【0042】
V2(t)=V1(0.3)・exp(−k・(t−0.3))
(0.3≦t≦0.8)
電位が下がったところで再び持上げるので、電位はつぎの式で表されるようになる。
【0043】
【数10】
【0044】
t=3.5で持上げが終了するため、その後は除電のみとなり、電位は次式になる。
【0045】
V4(t)=V3(3.5)・exp(1nt−k・(t−3.5))
(3.5<t)
結果的に、従来の基板電位は約4.1kVに至っていたが、この発明を実施することによって、約2.6kVに抑えることができた。
【0046】
停止タイミングの選定指針:
2段階で持上げると、1段目と2段目のそれぞれで電位の山が生じる。2段階で持上げても、1段目の停止タイミングを、従来の方式でピークになるタイミングよりも遅くすると、ピーク値は変わらないので、効果はない。従来方式でのピークのタイミングは、イオナイザの除電能力(減衰定数)kで決まるので、使用しているイオナイザの能力から従来方式でのピーク位置を求め、それよりも早いタイミングで1段目を停止させれば、電位は低減する。しかし、従来のピーク位置に対して、わずかに早いタイミングで停止させただけでは、1段目のピーク値が従来のピーク値とほとんど変わらなくなり、効果は少ない。逆に1段目を停止させるのが早すぎると、2段目のピーク値が高くなってしまい。これも効果は少ない。1段目と2段目のピーク値が等しくなるようなタイミングで停止させるのが最も効果的である。保持時間は長い方が電位はより低減するが、反面、生産性に影響を及ぼす。実際の生産ライン能力から、保持することのできる時間を決め、その保持時間で1段目と2段目でできるピーク値がほぼ等しくなるように1段目の停止タイミングを決定すると、ピーク値は最も低減させることができる。
【0047】
実施の形態2
実施の形態1では、持上げ途中に0.5秒の保持時間を確保したので、完全に持上げるまでの時間が0.5秒長くなる。ばあいによっては、この時間が生産性を低下させる原因になる可能性もある。そこで、0.5秒保持することは変えずに、その分持上げ速度を速くして、全体の時間を一定にしたばあいを示す。
【0048】
0秒から持上げはじめ、0.3秒で0.36cmの位置まで持上げ、その後0.5秒保持し、0.8秒から3秒の間に3cmまで持上げるばあいを例にとる。このばあい、1段目と2段目の持上げ速度は、いずれも1.2cm/secである。このばあいの持上げ方と基板電位の変化を図2に示す。図2の(a)は基板の持ち上げ方を示す説明図であり、破線は従来の1段階持上げのばあい、実線は、本発明を実施したばあいである。図2の(b)はそれぞれのばあいの基板電位を示す説明図である。
【0049】
このばあい、従来に対して、基板電位が約3kVまで低減されている。これは、実施の形態1よりは高い値であるが、全体の時間が従来と変わらないため、生産性に全く影響を与えないという利点がある。保持時間を確保する余裕がないばあいに有効である。
【0050】
また、この例では持上げ速度を、1段回目と2段回目の両方とも速くしたが、いずれか一方のみを速くしてもよい。
【0051】
実施の形態3
実施の形態1では、2段階で持上げたばあいを示したが、3段階以上に分けて持上げてもよく、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0052】
実施の形態4
実施の形態3において、持上げに要する全体の時間が、従来と同じになるように、各段階の全て、あるいは一部の持上げ速度を速くしても、実施の形態2と同じ効果が得られる。
【0053】
実施の形態2〜4における各段階の停止タイミングは、実施の形態1で述べたように、それぞれの段階でのピーク値が等しくなるように選定するのが、最も効果的である。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば基板電位を低く抑えることができるので、静電気による不良の発生が低減でき、液晶表示装置の製造工程における歩留および生産性が向上する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による、持上げ方法とそのときの基板電位を示す説明図である。
【図2】本発明による、持上げ方法とそのときの基板電位を示す説明図である。
【図3】従来技術の持上げ方による、基板加熱処理装置を示す説明図である。
【図4】従来技術による、持上げ方法とそのときの基板電位を示す説明図である。
【図5】従来技術における基板電位の変化量を求める説明図である。
【図6】従来技術における基板電位の変化量を求める説明図である。
【符号の説明】
1 チャンバー
2 プレート
3 ヒーター
4 基板
20 イオナイザ
Claims (6)
- 絶縁性基板と、その上に形成された素子からなる液晶表示装置の製造方法において、絶縁性基板が密着して載せ置きされるステージと、ステージに密着した基板がステージから剥離されて持上げられる最中に基板にイオンを供給できる除電装置から構成され、ステージから基板を持上げる際に、基板の電位が最大値になる前に一度持上げ動作を止め、一定時間保持した後、再び持上げ動作を開始し、所望の高さをうるために2段階で基板を持上げることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
- 前記請求項1記載の2段階持上げに関し、1段目と2段目のいずれかの持上げスピードを速くしたことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置の製造方法。
- 前記請求項1記載の2段階持上げに関し、1段目と2段目の両方の持上げスピードを速くしたことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置の製造方法。
- 絶縁性基板と、その上に形成された素子からなる液晶表示装置の製造方法において、絶縁性基板が密着して載せ置きされるステージと、ステージに密着した基板がステージから剥離されて持上げられる最中に基板にイオンを供給できる除電装置から構成され、ステージから基板を持上げる際に、基板の電位が最大値になる前に一度持上げ動作を止め、一定時間保持した後、再び持上げ動作を開始し、所望の高さをうるために3または4以上の多段階で基板を持上げることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
- 前記3または4以上の多段階で基板を持上げる際に、それぞれの段階のいずれかの持上げスピードを速くしたことを特徴とする請求項4記載の液晶表示装置の製造方法。
- 前記3または4以上の多段階で基板を持上げる際に、それぞれの段階の全ての持上げスピードを速くしたことを特徴とする請求項4記載の液晶表示装置の製造方法。
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JP07069098A JP3772014B2 (ja) | 1998-03-19 | 1998-03-19 | 液晶表示装置の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP07069098A JP3772014B2 (ja) | 1998-03-19 | 1998-03-19 | 液晶表示装置の製造方法 |
Publications (2)
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JPH11271735A JPH11271735A (ja) | 1999-10-08 |
JP3772014B2 true JP3772014B2 (ja) | 2006-05-10 |
Family
ID=13438901
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP07069098A Expired - Lifetime JP3772014B2 (ja) | 1998-03-19 | 1998-03-19 | 液晶表示装置の製造方法 |
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JP (1) | JP3772014B2 (ja) |
-
1998
- 1998-03-19 JP JP07069098A patent/JP3772014B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JPH11271735A (ja) | 1999-10-08 |
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