JP3770196B2 - スルーホールを有する回路基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スルーホールを有する回路基板に関し、特にスルーホール構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
回路基板に実装される半導体の高機能化が進む中、回路基板に形成される抵抗体および配線の数も増加している。また、回路基板の小型化、低価格化の要求も強い。
【0003】
これに対応するための手法として、配線部を多層化する方法がある。このような方法としては、例えば、図16に断面構成として示すように、アルミナなどを主構成物とする絶縁基板1上に配線層2と絶縁層3とを交互に重ね、絶縁層3に形成されたビアホール4を介して配線層2間を電気的に導通させた多層基板を、回路基板として採用したものがある。
【0004】
また、図17に断面構成として示すように、絶縁基板1にその表裏両面を貫通するスルーホール5を形成し、このスルーホール5に厚膜素子としての導体層6を形成し、表裏両面に形成された厚膜パターンとしての配線層2の間の電気的導通を得るようにした両面基板も、回路基板として採用されている。
【0005】
一方、抵抗体に関しては、前述する配線層の多層化に伴って必要となるビアホールやスルーホールに抵抗体を充填・形成する手法が提案されている。例えば、図18に断面構成として示すように、絶縁基板1に形成したスルーホール5に厚膜素子としての抵抗体層7を充填・形成し、この抵抗体層7を表裏両面の配線層2に電気的に接続させている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、絶縁基板1に多くのスルーホール5を形成すると、基板1の強度が低下し、外部からの熱や応力によって基板が割れやすくなるなどの問題が生じる。このことから、上記図17に示すような両面基板においては、抵抗体機能を有するスルーホール5と配線機能を有するスルーホール5とを数多く形成しようとしても、形成できるスルーホール5の数には制限がある。
【0007】
そのため、このような両面基板ではスルーホールが不足し、結果、両面基板の一方の面に、上記図16に示したような配線層2と絶縁層3の多層化構造を採用することが必要となる。ただし、このような配線層2と絶縁層3との多層構造を採用する場合、工数が層数に依存して増加するため基板コストが高くなる。
【0008】
本発明は、基板の表裏両面を貫通するスルーホールを備える両面基板型の回路基板において、限られた数のスルーホールのなかでより多くの抵抗体や配線等を形成するために、一つのスルーホールに複数の回路上の機能を持たせることができるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、基板(10)と、この基板の表裏両面を貫通するスルーホール(50)とを備える回路基板において、スルーホールの基板表面側の開口縁部からスルーホールの内部を通ってスルーホールの基板裏面側の開口縁部に渡って、互いに回路上の機能の異なる第1、第2の厚膜素子(60〜63、70〜72、90、91)が設けられており、第1、第2の厚膜素子の間には、第1、第2の厚膜素子の間を電気的に絶縁する絶縁層(80)が設けられており、基板の表裏両面において、スルーホールの開口縁部側から順に電極(51)、導体パターン(52)が形成されており、第1の厚膜素子は、基板の表裏両面に形成された電極にそれぞれ接して形成されることにより電極に電気的に接続されており、第2の厚膜素子は、基板の表裏両面に形成された導体パターンにそれぞれ接して形成されることにより導体パターンに電気的に接続されていることを特徴とする。
【0010】
それによれば、スルーホールの内部に、互いに回路上の機能の異なる複数の厚膜素子を設けているため、一つのスルーホールに複数の回路上の機能を持たせることができる。そのため、回路基板において、多層構造を採ることなく限られた数のスルーホールのなかでより多くの抵抗体や配線等を形成することができる。
【0014】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態相互において互いに同一部分には、図中、同一符号を付してある。
【0016】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る両面基板型の回路基板S1の概略断面図である。この回路基板S1は、アルミナ等のセラミック等からなる絶縁基板(本発明でいう基板)10を有し、この絶縁基板10にはICチップ20、コンデンサ30、抵抗体40等が表面実装されるとともに、基板10の表裏両面を貫通するスルーホール50が形成されている。
【0017】
絶縁基板10の表面(図1中の上面)および裏面(図1中の下面)には、Ag、Cu、NiまたはAu等の厚膜導体等からなる基板電極11が形成されており、この基板電極11に上記表面実装部品が電気的に接続されている。
【0018】
例えば、ICチップ20は、AuやAl等のワイヤ21を介して基板電極11に接続され、コンデンサ30は、はんだや導電性接着剤等の接着材31を介して基板電極11に接続されており、抵抗体40は酸化ルテニウム(RuO2)等からなる厚膜素子として基板電極11に接して形成されている。
【0019】
このように、回路基板S1は表面実装部品として抵抗体40を有するが、スルーホール50の部分においても抵抗体機能を有し、さらには配線機能も有するといった回路上の異なる複数の機能を有するものとしている。図2は、図1中の丸で囲んだA部すなわちスルーホール50部分の拡大断面図であり、図3は図2を上方から視た時の概略平面図である。
【0020】
スルーホール50は、絶縁基板10の表面から裏面へ貫通して設けられている。当該表裏両面において、スルーホール50の開口縁部の周辺部には、当該開口縁部側から順に電極51、導体パターン52が形成されている。これら電極51および導体パターン52は、Ag、Cu、NiまたはAu等の厚膜導体からなる。
【0021】
本例では、電極51は、後述する抵抗体層60の電極すなわち抵抗体電極であるが、後述する実施形態にあるように、電極51が導体層や誘電体層と接続される場合は、それらの電極として機能する、また、導体パターン52は、絶縁基板10の表裏面上にて所望の回路パターンに形成されたものであり、これら、電極51と導体パターン52とは、図示しない部位にて電気的に接続されている。
【0022】
このスルーホール50の内部には、互いに回路上の機能の異なる複数の厚膜素子としての抵抗体層60、導体層70が設けられている。抵抗体層60はその名の通り抵抗機能を有する厚膜素子であり、導体層70は配線機能を有する厚膜素子である。ここで、厚膜素子とはペースト材料を塗布・硬化することで形成される素子である。
【0023】
図2に示すように、これら抵抗体層60および導体層70はそれぞれ、スルーホール50の基板表面側の開口縁部からスルーホール50の内部を通ってスルーホール50の基板裏面側の開口縁部に渡って設けられている。また、抵抗体層60と導体層70との間には、これら両層60、70の間を電気的に絶縁する絶縁層80が設けられている。
【0024】
ここで、図3では、絶縁基板10の表面において、スルーホール50、電極51、導体パターン52(以上、実線にて図示)、抵抗体層60(破線にて図示)、導体層70(一点鎖線にて図示)の概略形状を示しており、絶縁層80は省略してある。
【0025】
抵抗体層60はスルーホール50の内壁に接して形成され、スルーホール50の開口縁部周辺において、上記電極(抵抗体電極)51に接して形成されることにより、電極51に電気的に接続されている。この抵抗体層60は、酸化ルテニウム等の厚膜からなる。
【0026】
絶縁層80は、抵抗体層60および電極51を被覆するように形成されている。この絶縁層80は、ホウケイ酸ガラス等の絶縁厚膜材料や酸化膜等からなるものにできる。本例ではホウケイ酸ガラス厚膜からなる。
【0027】
導体層70は、抵抗体層60との間に絶縁層80を介してスルーホール50内の中央部に配置されており、スルーホール50の開口縁部にて導体パターン52に接して形成され電気的に接続されている。
【0028】
それによって、導体層70は、絶縁基板10の表面の導体パターン52と裏面の導体パターン52とを電気的に接続する配線として機能する。この導体層70は、上記電極51や導体パターン52と同様に、Ag、Cu、NiまたはAu等の厚膜導体からなるものにできる。
【0029】
このように本実施形態では、スルーホール50の内部に、互いに回路上の機能の異なる複数の厚膜素子60、70を設けたものとしている。具体的には、スルーホール50の内部に抵抗体層60と導体層70とを設け、互いに電気的に絶縁の必要な両厚膜素子60、70の間に絶縁層80を設けることで、電気的な絶縁を確保している。
【0030】
そのため、本実施形態によれば、一つのスルーホール50に複数の回路上の機能、本例では抵抗体機能と配線機能とを持たせることができる。そのため、回路基板S1において、多層構造を採ることなく限られた数のスルーホール50のなかでより多くの抵抗体や配線等を形成することができる。
【0031】
次に、上記図2、図3に示すスルーホール50部分の構造を製造するための製造方法の一例について図4を参照して述べる。図4は(a)〜(g)は製造工程順に示す概略断面図であり、(a)および(b)は基板全体サイズで示したものであり、(c)以降は上記図2に対応したスルーホール50部分の拡大図となっている。
【0032】
まず、図4(a)に示すように、アルミナを主成分とした原料をドクターブレード法などによりシート状に成形し、グリーンシート100を作る。次に、図4(b)に示すように、このグリーンシート100に金型を用いてプレス加工等を行うことにより、スルーホール50を形成し、これを1600℃前後の高温雰囲気下にて焼成することで、スルーホール50を有する絶縁基板10が得られる。
【0033】
次に、図4(c)に示すように、絶縁基板10の一方の面に印刷手法を用いて導体ペーストを印刷し、基板電極11(図4中、図示せず)や電極51、導体パターン52となる厚膜パターン200を形成する。他方の面にも同様にして厚膜パターン200を形成する。
【0034】
ここで、用いる導体ペーストとは、例えばAgやCuなどの金属微粉末を主成分としたもので、これにガラスフリットや溶剤を加えて混練した一般的な厚膜ペースト材料などである。この厚膜ペースト材料は、所望のパターンに加工された印刷マスクを用いた印刷法にて絶縁基板10の表裏両面上に印刷され、絶縁基板10上に印刷体としての厚膜パターン200を形成する。
【0035】
次に、印刷体に含まれる溶剤を100℃前後の温度下に放置することで揮発させる乾燥処理を行い、その後、約800〜900℃の温度雰囲気下にて焼成することで、導体パターン200は、硬化した焼結体として絶縁基板10上に固着され、基板電極11(図4中、図示せず)や電極51、導体パターン52を形成する。
【0036】
次に、図4(d)に示すように、絶縁基板10のスルーホール50の位置する部分に、抵抗体ペーストを印刷し、これに上記厚膜パターン200と同様の乾燥・焼成処理を行うことにより、スルーホール50内壁に抵抗体層60を形成する。この抵抗体ペーストは、酸化ルテニウムなどの導電性酸化物にガラスフリットや溶剤を加えて混練したペースト等からなる。
【0037】
この抵抗体層60を形成する手法は、従来のスルーホールに導体層を形成する手法と同じもので、絶縁基板10の一方の面より真空引きをしながらスルーホール50に抵抗体ペーストを印刷すると、その吸引力とペーストの自重によってペーストがスルーホール50の内壁に付着する。そして、これを乾燥・焼成することによって抵抗体層60が形成される。
【0038】
次に、図4(e)に示すように、抵抗体層60の形成されたスルーホール50に絶縁性を有するペースト材料(例えばホウケイ酸ガラスのペースト材料)を印刷、充填した後、上記厚膜パターン200と同様の乾燥・焼成処理を行うことにより、絶縁層80を形成する。
【0039】
次に、図4(f)に示すように、この絶縁層80に対して、炭酸ガスレーザ等を用いたレーザ法等により貫通口81を形成する。レーザ法としては、例えば抵抗体層60の抵抗値調整に用いるレーザトリミング装置や、焼成された絶縁基板10にスルーホール加工を行うレーザ装置を用いることができる。
【0040】
次に、図4(g)に示すように、この貫通口81に、上記抵抗体層60と同じ要領にて導体ペーストを印刷、焼成する等により、導体層70を形成する。こうして、上記図2に示すスルーホール50部分の構造ができあがる。なお、この後、ICチップ20やコンデンサ30、抵抗体40等の表面実装を行うことで、上記図1に示す回路基板S1ができあがる。
【0041】
ここで、上記製造方法において、絶縁層80に貫通口81をレーザ法にて形成すると、上記図4(f)に示すように、貫通口81の端部81aの形状は加工時の熱によって鋭角ではなく、なだらかになる。これにより、貫通口81の端部81aにおいて形成される導体層70の厚さが薄くなるのを防止でき、抵抗値の増加や断線を防止することができる。
【0042】
また、上記製造方法において、スルーホール50に、少なくとも抵抗体層60、絶縁層80および導体層70を形成するため、従来に比べて工数が増加するように思えるが、前述のように、従来の両面基板の一面を多層化した場合と工数的には同等にて形成可能である。
【0043】
また、例えば上記図2において、スルーホール50の内壁側から中央寄りにかけて、抵抗体層60、絶縁層80、導体層70の順に形成されているが、導体層、絶縁層、抵抗体層の順でも良い。さらには、第1の導体層、絶縁層、第2の導体層の順としたり、第1の抵抗体層、絶縁層、第2の抵抗体層の順としても良い。
【0044】
スルーホール50内に設けられる複数の厚膜素子が、導体層同士であっても、例えば一方が第1の配線、他方が第2の配線というように回路上の機能が異なっていればよい。また、このことは、スルーホール50内に設けられる複数の厚膜素子が抵抗体層同士の場合も同様である。
【0045】
ただし、複数の厚膜素子のうち、厚膜素子として用いるペースト材料の流動性が比較的小さいものをスルーホール50の内壁側に配設し、該ペースト材料の流動性が比較的大きいものをスルーホール50の中央部寄りに配設することが好ましい。これは、流動性の大きいペースト材料の方が、塗布(印刷)した場合にスルーホール50の開口部端部の角部にて膜厚が薄くなりやすいためである。
【0046】
このことについては、上記図2に示す例では、金属成分が多く比較的流動性の大きい導体ペーストを用いて形成された導体層70を、スルーホール50の中央部寄りに位置させ、ガラス成分が多く比較的流動性の小さい抵抗体ペーストを用いて形成された抵抗体層60を、スルーホール50の内壁寄りに位置させることで実現している。
【0047】
また、スルーホール50の内部に設ける複数の厚膜素子のうち焼成後(硬化後)の熱膨張係数が絶縁基板10と近い方の厚膜素子を、スルーホール50の内壁側に位置させることが好ましい。これは、スルーホール50の内壁すなわち絶縁基板10と接する厚膜素子に対して加わる熱ストレスを、極力小さくできるためである。このことは、同じく上記図2の例にて実現されている。
【0048】
また、上記製造方法において、導体パターン52は、導体層60と同時に形成するようにしても良い。以下、他の実施形態について、第1実施形態と相違するところを中心に述べる。
【0049】
(第2実施形態)
図5は本発明の第2実施形態に係るスルーホール50部分の概略断面構成を示す図である。上記第1実施形態では回路上の機能の異なる厚膜素子が2層60、70であったが、3層以上でも良い。
【0050】
図5では、スルーホール50の内壁側の抵抗体層(第1の抵抗体層)60とスルーホール50の中央寄りの導体層70との間に、厚膜素子としての第2の抵抗体層61を設けたものである。この第2の抵抗体層61は上記第1の抵抗体層60と同様の材質からなるものにできる。そして、各厚膜素子60、61、70の間は、介在する絶縁層80にて互いに電気的に絶縁されている。
【0051】
本実施形態の場合、2個の抵抗体層60、61と1個の配線層70との3つの回路上の機能が異なる厚膜素子が、一つのスルーホール50内に設けられた構成となっている。
【0052】
そして、本実施形態によっても、一つのスルーホール50に複数の回路上の機能持たせることができるため、回路基板において、多層構造を採ることなく限られた数のスルーホール50のなかでより多くの抵抗体や配線等を形成することができる。
【0053】
なお、本実施形態の変形例として、三つもしくはそれ以上の厚膜素子の各々の機能は、抵抗体機能、配線機能およびそれ以外の機能から任意に選択された機能を採ることが可能である。
【0054】
(第3実施形態)
図6は本発明の第3実施形態に係るスルーホール50部分の概略断面構成を示す図であり、図7は図6を上方から視た時の概略平面図である。
【0055】
なお、図7では、絶縁基板10の表面において、スルーホール50、電極51、導体パターン52(以上、実線にて図示)、抵抗体層60(細い破線にて図示)、導体層70(一点鎖線にて図示)、導体層71(太い破線にて図示)の概略形状を示しており、絶縁層80は省略してある。
【0056】
本実施形態は、上記図2、図3に示すスルーホール構造に比べて、スルーホール50の中央寄りの厚膜素子すなわち導体層(第1の導体層)70はそのまま変更無しであるが、スルーホール50の内壁側の厚膜素子60、71を変更したものである。
【0057】
すなわち、スルーホール50の内壁側の厚膜素子として、スルーホール50の穴軸を中心にして一方に抵抗体層60、他方に第2の導体層71を設ける。第2の導体層71は上記第1の導体層70と同様の材質からなるものにできる。図7に示すように、抵抗体層60と第2の導体層71とは分離され、互いに電気的に絶縁されている。
【0058】
本実施形態の場合、例えば、中央寄りの第1の導体層70が第1の配線層、内壁寄りの第2の導体層71が第2の配線層として構成することができる。そのため、2個の配線層70、71と1個の抵抗体層60との回路上の機能が異なる3個の厚膜素子が、一つのスルーホール50内に設けられた構成を採用することができる。
【0059】
そして、本実施形態によっても、一つのスルーホール50に複数の回路上の機能持たせることができるため、回路基板において、多層構造を採ることなく限られた数のスルーホール50のなかでより多くの抵抗体や配線等を形成することができる。
【0060】
(第4実施形態)
上記第3実施形態では、上記第1実施形態に対して、抵抗体層60と第2の導体層71とを分割することで、スルーホール50内の回路上の機能を絶縁基板10の板面方向においても分割した。それに対して、本第4実施形態では、上記第1実施形態に対して、スルーホール50内の回路上の機能を、絶縁基板10の厚み方向で分割したものである。
【0061】
図8は本発明の第4実施形態に係るスルーホール50部分の概略断面構成を示す図である。図8に示すように、絶縁基板10の表面から延びる抵抗体層60を、スルーホール50の内部にとどめ、絶縁基板10の裏面の電極51をスルーホール50内に延長し、スルーホール50内にて延長された電極51と抵抗体層60とを電気的に接続している。
【0062】
つまり、本実施形態では、このスルーホール50内に延長された電極51が、厚膜素子としての導体層として構成される。そのため、絶縁基板10の厚み方向にて抵抗体機能と配線機能とは、スルーホール50内で分離された形となっている。
【0063】
そして、本実施形態によっても、一つのスルーホール50に複数の回路上の機能持たせることができるため、回路基板において、多層構造を採ることなく限られた数のスルーホール50のなかでより多くの抵抗体や配線等を形成することができる。
【0064】
また、本実施形態は、抵抗体ペーストの粘性や製造工程などの制約によって、絶縁基板10の表面から形成した抵抗体層60が、スルーホール50を通って裏面まで十分に供給されない場合などに有効である。
【0065】
(第5実施形態)
図9は本発明の第5実施形態に係るスルーホール50部分の概略断面構成を示す図である。本実施形態も、上記第4実施形態と同様、上記第1実施形態に対して、スルーホール50内の回路上の機能を、絶縁基板10の厚み方向で分割したものである。
【0066】
本実施形態では、上記第4実施形態におけるスルーホール50内に延長された電極51(図8参照)の代わりに、誘電体層90を形成したものである。すなわち、図9に示すように、絶縁基板10の裏面の電極51に接する誘電体層90をスルーホール50内にまで延長し、スルーホール50内にて誘電体層90と抵抗体層60とを電気的に接続している。
【0067】
こうして、絶縁基板10の厚み方向にて抵抗体機能とコンデンサ機能とが、スルーホール50内で分離された形となっている。そして、このような本実施形態の構造は、抵抗とコンデンサとが直結している回路構成において有効である。
【0068】
ここで、誘電体層90は、チタンやバリウムの酸化物などの誘電体ペーストを用いて、導体ペーストや抵抗体ペーストと同様に印刷・焼成を行うことにより形成することができる。
【0069】
そして、本実施形態によっても、一つのスルーホール50に複数の回路上の機能持たせることができるため、回路基板において、多層構造を採ることなく限られた数のスルーホール50のなかでより多くの抵抗体や配線、コンデンサ等を形成することができる。
【0070】
(第6実施形態)
図10は本発明の第6実施形態に係るスルーホール50部分の概略断面構成を示す図である。本実施形態では、上記第1実施形態に対して、スルーホール50内の回路上の機能を、絶縁基板10の板面方向および絶縁基板10の厚み方向において分割したものである。
【0071】
つまり、図10に示すように、スルーホール50の内壁側且つ絶縁基板10の表面側に位置する厚膜素子を、抵抗体層60と誘電体層90とに分離し、スルーホール50の内壁側且つ絶縁基板10の裏面側に位置する厚膜素子を、抵抗体層60と誘電体層90とに分離している。
【0072】
そして、スルーホール50の内部にて、絶縁基板10の表面から延びる抵抗体層60と裏面から延びる誘電体層90とを電気的に接続するとともに、絶縁基板10の表面から延びる誘電体層90と裏面から延びる抵抗体層60とを電気的に接続する。
【0073】
つまり、図10では、上記図9における右側半分の抵抗体層60と誘電体層90の位置を上下逆としている。本実施形態も、抵抗とコンデンサとが直結している回路構成において有効である。
【0074】
そして、本実施形態によっても、一つのスルーホール50に複数の回路上の機能持たせることができるため、回路基板において、多層構造を採ることなく限られた数のスルーホール50のなかでより多くの抵抗体や配線、コンデンサ等を形成することができる。
【0075】
(第7実施形態)
図11は本発明の第7実施形態に係るスルーホール50部分の概略断面構成を示す図である。本実施形態も上記第5実施形態と同様に、絶縁基板10の厚み方向にて抵抗体機能とコンデンサ機能とをスルーホール50内で分離した構成であるが、本実施形態はその変形例である。
【0076】
本実施形態では、上記図2に示したスルーホール構造におけるスルーホール50の中央部寄りの導体層60を、図11に示すように、上半分(表面側)を抵抗体層62、下半分(裏面側)を誘電体層91として置き換えたものである。これら抵抗体層62、誘電体層91はそれぞれ、上記した抵抗体層、誘電体層と同様の材質からなるものにできる。
【0077】
こうして、本実施形態も上記第5実施形態と同様に、絶縁基板10の厚み方向にて抵抗体機能とコンデンサ機能とが、スルーホール50内で分離された形となっている。このような本実施形態の構造も、抵抗とコンデンサとが直結している回路構成において有効である。
【0078】
そして、本実施形態によっても、一つのスルーホール50に複数の回路上の機能持たせることができるため、回路基板において、多層構造を採ることなく限られた数のスルーホール50のなかでより多くの抵抗体や配線、コンデンサ等を形成することができる。
【0079】
(第8実施形態)
図12は本発明の第8実施形態に係るスルーホール50部分の概略断面構成を示す図である。本実施形態は、上記図2、図3に示すスルーホール構造に対して、抵抗体層60を、絶縁基板10の厚み方向にて異なるシート抵抗を有する二つの抵抗体層60、63に分離したものである。
【0080】
図12に示すように、絶縁基板10の表面側に第1の抵抗体層60が設けられ、裏面側に第1の抵抗体層60とはシート抵抗の異なる第2の抵抗体層63が設けられ、これら両抵抗体層60と63とは、スルーホール50内にて電気的に接続されている。
【0081】
また、本実施形態では、図12に示すように、絶縁基板10の全てのスルーホール50にて、第1の抵抗体層60が絶縁基板10の表面側に位置し、第2の抵抗体層63が裏面側に位置している。
【0082】
シート抵抗の異なる抵抗体層60、63は、別々に印刷・焼成を行って形成する必要がある。その場合、本実施形態のようにすれば、まず、絶縁基板10の表面側にて一括して第1の抵抗体層60を形成し、次に、絶縁基板10の裏面側にて一括して第2の抵抗体層63を形成できるため、工程の簡略化が図れる。
【0083】
(第9実施形態)
本第9実施形態は、スルーホール部に棒状の電極端子などを挿入する場合に適用されるものである。図13は本発明の第9実施形態に係るスルーホール50部分の概略断面構成を示す図である。
【0084】
まず、図13(a)に示す本実施形態の第1の例では、最表面の厚膜素子である導体層70に、レーザ加工等により貫通口を形成し、その貫通口に電極端子300を挿入し、はんだ400にて電極端子300と絶縁基板10とを電気的・機械的に接続したものである。
【0085】
また、この第1の例では、スルーホール50の内部に誘電体層90が形成され、表裏両面の電極51の間にコンデンサが形成されている。そのため、電極端子300の近傍すなわちスルーホール50内に配線機能とともにコンデンサ機能を配置することができ、電極端子300とコンデンサとの間の配線に対してノイズなどの影響を防止することができる。
【0086】
また、図13(b)に示す本実施形態の第2の例では、スルーホール50の片側半分に、複数の厚膜素子すなわち抵抗体層60および導体層70と、これら複数の厚膜素子60、70間に介在する絶縁層80とを設けており、この部分においてスルーホール50は抵抗体機能と配線機能とを有する。
【0087】
一方、スルーホール50の他側半分に、電極端子300の接続用の電極53を形成しており、スルーホール50に挿入された電極端子300は、上記電極端子接続用の電極53にはんだ400を介して電気的に接続されている。なお、この第2の例においても、抵抗体層60を誘電体層に置き換えることで、上記した本実施形態の第1の例と同様の効果が得られる。
【0088】
(第10実施形態)
本第10実施形態は、スルーホール50に、リード端子をはんだ付けしたり、ワイヤボンディングしたりする場合に適用するものである。図14は本発明の第10実施形態に係るスルーホール50部分の概略断面構成を示す図である。
【0089】
図14(a)に示す本実施形態の第1の例は、リード端子500のはんだ付けランドとしての機能を持たせた例であり、最表面の厚膜素子としての導体層70とリード端子500とがはんだ400を介して電気的・機械的に接合されている。
【0090】
図14(b)に示す第2の例は、ワイヤボンディングのランドとしての機能を持たせた例であり、最表面の厚膜素子としての導体層70とボンディングワイヤ600とが電気的・機械的に接合されている。
【0091】
このようなランド機能をスルーホール50部分に持たせることにより、回路基板に別途ランド部を形成する必要が無くなるため、基板面積の有効活用につながるという利点がある。また、図14においても、抵抗体層60を誘電体層に置き換えれば、上記第9実施形態にて述べたのと同様、ノイズ防止が図れる。
【0092】
(第11実施形態)
図15は本発明の第11実施形態に係るスルーホール50部分の概略断面構成を示す図である。図15に示すように、スルーホール50の内部には、導体層70、71、72と誘電体層90、91とが交互に積層され、配線機能とコンデンサ機能とを有するものとなっている。
【0093】
このように、絶縁基板10の板面方向にスルーホール50の機能を二つに分け、絶縁層の代わりに誘電体層90、91を設けることで比較的容量の高いコンデンサ機能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスルーホールを有する回路基板の概略断面図である。
【図2】図1中のA部拡大図である。
【図3】図2の上視図である。
【図4】図2に示すスルーホール構造の製造工程を示す工程図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るスルーホール構造の概略断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るスルーホール構造の概略断面図である。
【図7】図6の上視図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係るスルーホール構造の概略断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係るスルーホール構造の概略断面図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係るスルーホール構造の概略断面図である。
【図11】本発明の第7実施形態に係るスルーホール構造の概略断面図である。
【図12】本発明の第8実施形態に係るスルーホール構造の概略断面図である。
【図13】本発明の第9実施形態に係るスルーホール構造の概略断面図である。
【図14】本発明の第10実施形態に係るスルーホール構造の概略断面図である。
【図15】本発明の第11実施形態に係るスルーホール構造の概略断面図である。
【図16】従来のスルーホールを有する回路基板としての多層基板の概略断面図である。
【図17】従来のスルーホールを有する回路基板としての両面基板の概略断面図である。
【図18】従来の抵抗体機能を有するスルーホールの概略断面図である。
【符号の説明】
10…絶縁基板、50…スルーホール、60〜63…抵抗体層、
70〜72…導体層、80…絶縁層、90、91…誘電体層。

Claims (1)

  1. 基板(10)と、この基板の表裏両面を貫通するスルーホール(50)とを備える回路基板において、
    前記スルーホールの基板表面側の開口縁部から前記スルーホールの内部を通って前記スルーホールの基板裏面側の開口縁部に渡って、互いに回路上の機能の異なる第1、第2の厚膜素子(60〜63、70〜72、90、91)が設けられており、
    前記第1、第2の厚膜素子の間には、前記第1、第2の厚膜素子の間を電気的に絶縁する絶縁層(80)が設けられており、
    前記基板の表裏両面において、前記スルーホールの開口縁部側から順に電極(51)、導体パターン(52)が形成されており、
    前記第1の厚膜素子は、前記基板の表裏両面に形成された前記電極にそれぞれ接して形成されることにより前記電極に電気的に接続されており、前記第2の厚膜素子は、前記基板の表裏両面に形成された前記導体パターンにそれぞれ接して形成されることにより前記導体パターンに電気的に接続されていることを特徴とするスルーホールを有する回路基板。
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