JP3768294B2 - 紫外線吸収性材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線吸収性材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より有機紫外線吸収剤を種々の樹脂等に共用し、紫外線カット塗料として用いることが行われてきた。しかし長期にわたる使用では、紫外線吸収剤がブリードアウトしたり、揮発したりして性能が劣化してしまう、という問題点があった。
【0003】
これらの問題点を克服するために、紫外線吸収剤に樹脂と反応できる基を導入し、樹脂自体に紫外線吸収剤を結合させることが数多く試みられている(特開平6−88064号公報、特開平2−243695号公報)。
【0004】
しかしながら、これらの紫外線吸収剤は多段階の合成が必要であったり、長波長領域の紫外線カットをするために紫外線吸収剤を高濃度に含有させようとすると膜が脆くなったり、耐溶剤性が悪くなったりするという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、即ち合成が容易で、長期に渡る使用においても紫外線吸収剤がブリードアウトせず、高濃度に紫外線吸収剤を含有させて長波長カットを実現しても弊害の生じない新規な紫外線吸収性材料を得る製造方法を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、(a)一般式(1)に示されるアミノシラン化合物又はその誘導体と、
【0007】
【化2】
【0008】
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキレン基又は一般式−(CH2)m−NH−(mは1≦m≦4の整数)で表される2価の基を示し、各々のR2は同一若しくは異なる基であって、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。但し全てのR2のうち少なくとも1つはアルコキシ基を示す。nはn≧0の整数を示す。)(b)分子内にカルボキシル基を有する紫外線吸収剤とを少なくとも反応させ、前記アミノシラン化合物又はその誘導体に由来するアミド結合を生成せしめることを特徴とする紫外線吸収性材料の製造方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の製造方法においては、(a)前記一般式(1)に示されるアミノシラン化合物又はその誘導体(以下、「成分A」と称す)と、(b)分子内にカルボキシル基を有する紫外線吸収剤(以下、「成分B」と称す)とを少なくとも反応させ、前記成分Aに由来するアミド結合を生成せしめることを特徴とする。
【0010】
前記一般式(1)において、R1は炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルキレン基、または一般式−(CH2)m−NH−(mは1≦m≦4の整数)で表される2価の基を示す。該アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等が例示される。各々のR2は、同一若しくは異なる基であって、水素原子、水酸基、炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキル基または炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルコキシ基を示す。但し、全てのR2のうち少なくとも一つはアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基である。前記R2のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基等が例示でき、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基等が例示できる。nはn≧0、好ましくは0≦n≦3の整数を示す。
【0011】
一般式(1)で示されるアミノシラン化合物の好適な例としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルポリジメチルシロキサン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。また、アミノシラン化合物の誘導体としては、前記好適な化合物の加水分解物等が好ましく挙げられる。これらのアミノシラン化合物又はその誘導体である成分Aは公知の方法により製造できる。
【0012】
本発明の製造方法において、成分Bとして用いる分子内にカルボン酸基を有する紫外線吸収剤としては、分子の側鎖にカルボキシル基を1個又は2個以上有する化合物が挙げられ、例えばベンゾトリアゾール骨格又はベンゾフェノン骨格を有する化合物等が挙げられる。
【0013】
ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物としては、下記一般式(2)により表される化合物等が好適に挙げられる。
【0014】
【化3】
【0015】
式中R3は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基を示す。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が例示できる。R3の置換位置としては、ベンゾトリアゾール骨格の4位又は5位であるが、ハロゲン原子及びアルキル基は通常4位に位置する。式中R4は、水素原子又は炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基を示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が例示できる。式中R5は、炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキレン基又はアルキリデン基を示す。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等が、アルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基等が挙げられる。
【0016】
一般式(2)で示される化合物としては、3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンエタン酸、3−(5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸等が挙げられる。
【0017】
前記ベンゾフェノン骨格を有する化合物として、下記一般式(3)〜(6)に示されるベンゾフェノン系化合物等が好適に挙げられる。
【0018】
【化4】
【0019】
式中R7及びR8は、同一若しくは異なる基であって、水酸基、炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基又はアルコキシ基を示す。n,mは、0≦m≦3,0≦n≦3の範囲の整数を示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基等が例示される。式中R6は、炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキレン基又はアルキリデン基を示す。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等が、アルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基等が挙げられる。
【0020】
このようなベンゾフェノン骨格を有する化合物の具体例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−カルボン酸、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−カルボン酸、4−(2−ヒドロキシベンゾイル)−3−ヒドロキシベンゼンプロパン酸等が好適に挙げられる。
【0021】
前記ベンゾトリアゾール骨格又はベンゾフェノン骨格を有する紫外線吸収剤は公知の方法により製造できる。
【0022】
本発明の製造方法において、前記成分Aと成分Bとを少なくとも反応させて、成分Aに由来するアミド結合を生成せしめる反応は、通常脱水反応が主である。この際、反応により生成するアミド結合の量は、特に限定されないが、通常、成分Aの全アミノシランの10モル%以上、好ましくは、50モル%以上に対してアミド結合が生じるようにすれば良く、上限は通常100モル%であるが、上限が100モル%未満でも差し支えない。
【0023】
本発明の製造方法においては、上記のとおり、成分Aと成分Bとを少なくとも反応させれば良いが、係る反応の際、または反応後に本発明の目的を損なわない範囲で任意成分をさらに共存させても良い。次にこれらの任意成分について説明する。
【0024】
任意成分の一例としてシリコーン樹脂(以下、「成分C」と称す)が挙げられる。成分Cとしては、反応性シリコーン樹脂、即ち、成分Aのアルコキシシリル基部分と反応(通常脱水反応及び/又は脱アルコール反応等)しうる官能基を有するシリコーン樹脂が好ましい。官能基としてはアルコキシシリル基やシラノール基等が好ましい。
【0025】
このような反応性シリコーン樹脂は、一般的にアルコキシシランやクロロシラン類の部分加水分解反応とそれに続く縮合反応によって容易に合成することができる。市販品では、純シリコーンワニス(例えば、商品名「XO7931−クリヤー」:オキツモ(株)製)、シリコーンレジン(例えば、商品名「SR2410」:東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)、アクリル変性シリコーン樹脂(例えば、商品名「サイラコート100」:チッソ(株)製)等が好適に挙げられる。また、シリコーン樹脂を本発明の目的を損なわない範囲で各種溶剤を用いた溶液の形で用いることができる。溶剤としては、特に限定されないが、各種炭化水素系溶剤、ケトン類、エーテル類、エステル類、エーテル・エステル類等が挙げられる。また、シリコーン樹脂を各種変性したものを用いても良い。
【0026】
成分Cは、成分Aおよび成分Bの反応の際、または反応後のいずれにおいても共存させられるが、成分Aおよび成分Bの反応の際に共存させることが特に好ましい。
【0027】
前記任意成分の他の例としては、各種のエポキシシラン類(以下、「成分D」と称す)が挙げられ、好ましくは下記一般式に示すエポキシシラン類等が挙げられる。
【0028】
【化5】
【0029】
式中、R9およびR11は同一若しくは異なる基であって、炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルキレン基又は、式−R−O−R’−(但し、R及びR’は各々炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルキレン基を示す)により示される2価の基を示し、各々のR10は、同一若しくは異なる基であって、水素原子、水酸基、炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルキル基若しくはアルコキシ基、または炭素数6〜10、好ましくは6〜8のアリール基を示す。但し、全てのR10のうち少なくとも1つはアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基である。nはn≧0、好ましくは0≦n≦3の整数を示す。
【0030】
前記アルキレン基としては、メチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が好適に例示できる。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が好適に挙げられ、前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられ、前記アリール基としては、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
【0031】
成分Dとしては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシラン、ジメチルエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシジシロキサン又はこれらの混合物等が好適に挙げられる。
【0032】
成分Dは、予め加水分解して用いても良い。また予め適当な重合触媒でエポキシ基を開環重合させて用いることもできる。重合触媒としては、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、塩化アルミニウム、ジエチル亜鉛等のルイス酸触媒が好適である。また、エポキシ基を開環重合させる際の重合条件は特に限定されないが、通常、−80℃〜130℃、好ましくは−20〜80℃程度が望ましく、反応時間は反応条件や反応様式等により適宜選択でき、通常10分間〜10時間、好ましくは1時間〜6時間程度が望ましい。この際用いる溶媒は特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、各種ケトン類、エステル類等が挙げられる。
【0033】
成分Dは、成分Aおよび成分Bの反応の際、または反応後のいずれにおいても共存させられるが、成分Aおよび成分Bの反応の後に加えるのが好ましい。但し、前記予め成分Dのエポキシ基を開環重合させたものを用いる場合には、成分Aおよび成分Bの反応の際に加えるのが好ましい。
【0034】
他の任意成分として、ポリエーテル変性ポリシロキサン類(以下「成分E」と称す)が挙げられ、好ましくは、下記一般式で示されるポリエーテル変性ポリシロキサン類が例示される。
【0035】
【化6】
【0036】
(式中、R12、R13およびR14は同一若しくは異なる基であって、炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルキレン基を示し、各々のR15は同一若しくは異なる基であって、水素原子、水酸基、炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルキル基若しくはアルコキシ基、または炭素数6〜10、好ましくは6〜8のアリール基を示す。好ましくは全てのR15のうち少なくとも1つは炭素数1〜10のアルコキシ基である。m、n、pは、各々m≧0、好ましくは0≦m≦100、n≧0、好ましくは0≦n≦10、p≧0、好ましくは0≦p≦10の整数を示す。)
前記アルキレン基としては、メチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が好適に挙げられる。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が好適に挙げられる。前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。前記アリール基としては、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
【0037】
このような一般式で表される成分Eとしては、具体的には、テトラエチレングリコール−ビス(トリエトキシシリルエチル)エーテル、ポリエチレングリコール−ビス(トリエトキシシリルエチル)エーテル、ポリプロピレングリコール−ビス(トリエトキシシリルエチル)エーテル又はこれらの混合物等が挙げられる。成分Eとしては、予め加水分解したものを用いても良い。
【0038】
成分Eは、成分Aおよび成分Bの反応の際、または反応後のいずれにおいても共存させられるが、成分Aおよび成分Bの反応の際に加えるのが好ましい。
【0039】
任意成分として特に、前記成分Dのエポキシシラン類や成分Eのポリエーテル変性ポリシロキサン類を用いることにより、紫外線吸収性材料をコーティング材料として用いる場合、耐熱性を損なうことなく基板への密着性が改善され、厚膜にしても割れにくくなる等、さらに優れた効果を奏する。
【0040】
他の任意成分としては、無機微粒子分散液(以下、「成分F」と称す)が挙げられる。成分Fとしては、特に限定されないが、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化アンチモン等の微粒子の分散液等が挙げられる。微粒子の粒子径は1〜100nm程度であり、分散媒としては水、メタノール、キシレン、メチルエチルケトン等が挙げられる。市販品では、商品名「LUDOX・LS」(デュポン社製)や商品名「XBA−ST」(日産化学社製)等が好適に挙げられる。
【0041】
成分Fは、成分Aおよび成分Bの反応の際、または反応後のいずれにおいても共存させられるが、成分Aおよび成分Bの反応の際に加えるのが好ましい。
【0042】
以上の各任意成分は公知の方法により製造できる。
【0043】
本発明においては、少なくとも成分Aと成分Bとを反応させるか、若しくは必要に応じて前記任意成分の共存下反応させることにより容易に紫外線吸収性材料を製造することができる。この反応条件は、成分Aに由来するアミド結合が生成する条件であれば特に限定されず、適宜選択されるが、通常、成分Aおよび成分B、さらに所望により任意成分を溶媒中にて混合したのち、溶媒の存在下において反応させるには、室温〜350℃、好ましくは60〜250℃において、通常、5分〜50時間、好ましくは10分〜15時間の条件で好適に行なうことができる。これらの反応操作は繰り返し行うことができる。
【0044】
この反応に用いる溶媒としては、本発明の目的を損なわない限り特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;シクロヘキサノン等のケトン系溶剤又はこれらの混合物等が挙げられる。溶媒は、反応後除去してもよく、除去せずに溶液の状態でも良い。
【0045】
前記反応において、成分Aと成分Bとの使用割合は、特に限定されないが、成分Bの使用量が、成分Aと成分Bとの総量に対して、通常5〜90質量%、好ましくは10〜80質量%の範囲で任意に選択することができる。
【0046】
前記任意成分を用いて反応させる場合、若しくは反応後に添加して共存させる任意成分の各使用量は特に限定されるものではないが、シリコーン樹脂(成分C)の使用量は、成分Aと成分Bとの総量100質量部に対して、5〜300質量部、好ましくは20〜150質量部が望ましい。エポキシシラン類(成分E)の使用量は、成分Aと成分Bとの総量100質量部に対して、10〜500質量部、好ましくは100〜400質量部が望ましい。ポリエーテル変性ポリシロキサン類(成分E)の使用量は、成分Aと成分Bとの総量100質量部に対して、10〜500質量部、好ましくは100〜400質量部が望ましい。無機微粒子分散液(成分F)の使用量は、成分Aと成分Bとの総量100質量部に対して、無機微粒子として5〜400質量部、好ましくは10〜200質量部が望ましい。
【0047】
本発明の製造方法により得られる紫外線吸収性材料は、種々の用途に応用できる。例えば、コーティング材料として極めて好適である。
【0048】
本発明の製造方法により得られる紫外線吸収性材料をコーティング材料とする場合には、そのまま供しても良く、また、該紫外線吸収性材料を主成分とし、さらに任意成分を配合してもよい。
【0049】
かかる任意成分としては、例えば、各種の酸化防止剤;クエンチャー;ラジカル捕捉剤;塩酸、硫酸、酢酸等の無機酸や有機酸;3フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体、6フッ化アンチモン酸ナトリウム等のルイス酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、アニリン等の塩基;ジブチルスズジラウレート、チタンテトライソプロポキサイド等の有機金属に例示されるような、硬化促進作用を有する触媒(紫外線吸収性材料に対して、通常0.1〜5.0mass%の使用が好ましい);トルエン、キシレン、エタノール、イソプロパノール、シンナー、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン等の溶剤等が挙げられる。
【0050】
このようなコーティング材料は、紫外線吸収性塗料、紫外線吸収性ハードコート材等の各種用途に使用できる。
【0051】
また、このようなコーティング材料を塗布、硬化することにより優れた物性の紫外線吸収性膜を得ることができる。この場合の塗布方法は、特に限定されなく適宜公知の方法が選択されるが、通常コーティング材料を溶液状としてスピンコート、スプレーコート、キャストコート、ブレードコート等の目的に応じて適宜選択できる。紫外線吸収性膜の膜厚は、特に限定されなく適宜選択されるが、通常0.5〜50μm程度の範囲内が好ましい。
【0052】
膜の硬化反応は、前記硬化促進作用を有する触媒を用いた場合は、通常室温〜250℃、好ましくは40℃〜200℃程度で行なうことができる。また前記触媒を用いなくても通常室温〜350℃、好ましくは60℃〜250℃で硬化させることができる。硬化に要する時間は、適宜選択でき、通常10分〜5時間程度である。
【0053】
コーティング材料を塗布する基材としては、ガラス、金属板、木板、プラスチック基板の何れでもよい。
【0054】
本発明の紫外線吸収性材料を用いて作成した紫外線吸収性膜上に、必要に応じてさらにオーバーコート層を設けても良い。オーバーコート層を作成する材料としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルサルフォン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーンワニス等のシリコーン樹脂;尿素樹脂又はこれらの混合物等が挙げられ、特にシリコーンワニス等のシリコーン樹脂の使用が望ましい。これらの樹脂とガラスフィラーや無機粉体とを共有させることもできる。無機粉体としては、ZnO、TiO2、CeO2、シリカ等の微粒子が用いられる。
【0055】
以上、本発明について詳細に説明してきたが、本発明の好適な実施態様としては以下の態様が挙げられる。
【0056】
1.(a)一般式(1)に示されるアミノシラン化合物又はその誘導体(成分A)と、(b)分子内にカルボキシル基を有する紫外線吸収剤(成分B)との反応を、シリコーン樹脂(成分C)の存在下で行う紫外線吸収性材料の製造方法。
【0057】
2.(a)一般式(1)に示されるアミノシラン化合物又はその誘導体(成分A)と、(b)分子内にカルボキシル基を有する紫外線吸収剤(成分B)とを反応させ、成分Aに由来するアミド結合を生成せしめたのち、エポキシシラン類(成分D)をさらに加える紫外線吸収性材料の製造方法。
【0058】
3.(a)一般式(1)に示されるアミノシラン化合物又はその誘導体(成分A)と、(b)分子内にカルボキシル基を有する紫外線吸収剤(成分B)とを反応させ、成分Aに由来するアミド結合を生成せしめたのち、無機微粒子(成分F)をさらに加える紫外線吸収性材料の製造方法。
【0059】
4.(a)一般式(1)に示されるアミノシラン化合物又はその誘導体(成分A)と、(b)分子内にカルボキシル基を有する紫外線吸収剤(成分B)とを反応させ、成分Aに由来するアミド結合を生成せしめることにより得られる紫外線吸収性材料を含有するコーティング材料。
【0060】
5.前記コーティング材料を塗布することにより得られる紫外線吸収性被膜。
【0061】
【発明の効果】
本発明の製造方法により得られる紫外線吸収性材料は、良好な紫外線遮断効果を奏し、耐候性、耐熱性を容易に付与できるコーティング材料として好適である。また、母材と紫外線吸収剤とがアミド結合により結合しているため、長期に渡る使用においてもブリードアウトを起こさず、且つ良好な紫外線吸収能を維持することが可能となる。本発明の製造方法により得られる紫外線吸収性材料を塗布することにより透明な紫外線吸収性被膜を得ることができ、紫外線吸収ガラス、光学素子、調光素子にも好適に適用することができる。
【0062】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例1
カルボキシル基含有紫外線吸収剤の合成
225g(0.46モル)の3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸オクチルエステル(TINUVIN 109、商標、Ciba−Geigy社製)を700mlのアセトンに溶解し、2N水酸化ナトリウム水溶液600mlを加えて室温で24時間撹拌した。2N塩酸650mlを加えて酸性にした後、不溶化した生成物を濾別し、蒸留水で濾液が中性になるまで洗浄した。この生成物を真空乾燥した後、トルエンからの再結晶を行うことで3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸(以下化合物Aと称す)を得た。
【0064】
紫外線吸収性材料の製造
3−アミノプロピルトリエトキシシラン3gをキシレン35gに溶解し、80℃に加熱しながら、前記化合物A5gを徐々に添加した。添加終了後、130℃まで昇温し、3時間還流し、溶液状の紫外線吸収性材料を得た。
得られた溶液を13C−NMRにより分析したところ、アミド結合に由来するカルボニルのピーク(約173ppm)が観測され、原料のアミノシラン類に由来するアミド結合が存在していることを確認した。
【0065】
紫外線吸収性被膜の製造
前記溶液状の紫外線吸収性材料に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを8g添加し、これをコーティング液として、ガラス基板上にスプレー塗布し、室温で20分間放置後200℃で20分間加熱し、ガラス基板上に厚さ約17μmの紫外線吸収性被膜を作成した。
このガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを図1に示す。スペクトルに示されるように400nm以下の紫外線を完全に遮断するガラス基板が得られた。
また、この紫外線吸収性被膜をガラス基板上より削り取り、固体13C−NMRを測定した。その結果、アミド結合に由来するカルボニルのピーク(約173ppm)が観測された。この削り取った固体を、アセトンを溶媒として24時間ソックスレイ抽出を行ったが、紫外線吸収剤に由来するものは何も抽出されなかった。この結果から、紫外線吸収剤はアミノシランを介して樹脂と結合していることがわかった。
【0066】
実施例2
紫外線吸収性材料の製造
3gの3−アミノプロピルトリエトキシシランをキシレン40gに溶解し、60℃に加熱しつつ、5gの実施例1で調製した化合物Aを徐々に加えた。添加終了後、130℃まで昇温し、3時間還流し、溶液状の紫外線吸収性材料を得た。
得られた溶液を13C−NMRにより分析したところ、アミド結合に由来するカルボニルのピーク(約173ppm)が観測され、原料のアミノシラン類に由来するアミド結合が存在していることを確認した。
【0067】
紫外線吸収被膜の製造
前記溶液状の紫外線吸収性材料をコーティング液として、ガラス基板上にスプレー塗布し、室温で20分間放置後130℃で30分間加熱し、ガラス基板上に厚さ約10μmの紫外線吸収性被膜を調製した。
このガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、実施例1と同様に紫外線を完全に遮断するガラス基板が得られた。
【0068】
実施例3
紫外線吸収性材料の製造
シリコーンワニス(商品名:XO−7931−クリヤー、オキツモ(株)製)17.7gと、3−アミノプロピルトリエトキシシラン3gとをキシレン35gに溶解し、80℃に加熱しながら実施例1で調製した化合物A5gを徐々に添加した。添加終了後、130℃まで昇温し、3時間還流し、溶液状の紫外線吸収性材料を得た。
【0069】
紫外線吸収性被膜の製造
前記溶液状の紫外線吸収性材料をコーティング液として、これをガラス基板上にスプレー塗布し、室温で20分間放置後、200℃で20分間加熱し、厚さ約17μmの紫外線吸収性被膜を設けたガラス基板を作製した。
このガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを測定した結果を図2に示す。図2に示されるように400nm以下の紫外線を完全に遮断するガラス基板が得られた。JIS K 5400鉛筆硬度試験結果は2Hだった。
この紫外線吸収性被膜をガラス基板上より削り取り、固体13C−NMRを測定した。その結果、アミド結合に由来するカルボニルのピーク(約173ppm)が観測された。この削り取った固体をアセトンを溶媒として24時間ソックスレイ抽出を行ったが、紫外線吸収剤に由来するものは抽出されなかった。この結果から、紫外線吸収剤はアミノシランを介して樹脂と結合していることがわかった。
【0070】
実施例4
紫外線吸収性材料の製造
シリコーンワニス(商品名:XO−7931−クリヤー、オキツモ(株)製)17.7gと3−アミノプロピルトリエトキシシラン3gとをキシレン35gに溶解し、80℃に加熱しながら実施例1で調製した化合物A5gを徐々に添加した。添加終了後、130℃まで昇温し3時間還流した。放冷後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを16g添加し、紫外線吸収性材料を得た。
【0071】
紫外線吸収性被膜の製造
前記溶液状の紫外線吸収性材料をコーティング液として、ガラス基板上にスプレー塗布し、室温で20分間放置後、200℃で20分間加熱し、厚さ約17μmの紫外線吸収性被膜を設けたガラス基板を作製した。このガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを測定した結果を図3に示す。また、JIS K 5400碁盤目試験での剥離は認められなかった。作製した紫外線吸収性ガラス基板をアセトン、エタノール、トルエン、1N塩酸水溶液、1N水酸化ナトリウム水溶液に24時間浸漬した後観察したが、目視異常は認められなかった。
【0072】
実施例5
紫外線吸収性材料の製造
シリコーンワニス(商品名:XO−7931−クリヤー、オキツモ(株)製)17.7gと3−アミノプロピルトリエトキシシラン3gとをキシレン35gに溶解し、80℃に加熱しながら実施例1で調製した化合物A5gを徐々に添加した。添加終了後、130℃まで昇温し3時間還流した。放冷後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを16g、コロイダルシリカ分散液(日産化学社製、商品名:MIBK−ST)を8g添加し、紫外線吸収性材料を得た。
【0073】
紫外線吸収性被膜の製造
前記溶液状の紫外線吸収性材料をコーティング液として、ガラス基板上にスプレー塗布し、室温で20分間放置後、200℃で20分間加熱し、厚さ約17μmの紫外線吸収性被膜を設けたガラス基板を作製した。JIS K 5400鉛筆硬度試験の結果は4Hであった。このガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを測定した結果を図4に示す。
【0074】
実施例6
エポキシシランの重合
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン200gをキシレン75gに溶解し、3フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体4mlを室温で徐々に加えた後、4時間撹拌しエポキシ基の開環重合を行なって、エポキシシラン重合体溶液を得た。得られた重合体の分子量は、MW=3300(ポリスチレン換算)であった。
【0075】
紫外線吸収性材料の製造
シリコーンワニス(商品名:XO−7931−クリヤー、オキツモ(株)製)17.7gと3−アミノプロピルトリエトキシシラン3gとをキシレン29gに溶解し、80℃に加熱しながら実施例1で調製した化合物A5gを徐々に添加した。添加終了後、130℃まで昇温し3時間還流した。放冷後、前記エポキシシラン重合体溶液22gを加えて紫外線吸収性材料を得た。
【0076】
紫外線吸収性被膜の製造
前記溶液状の紫外線吸収性材料をコーティング液として、ガラス基板上にスプレー塗布し、室温で20分間放置後、150℃で30分間加熱し、厚さ約15μmの紫外線吸収性被膜を設けたガラス基板を作製した。JIS K 5400鉛筆硬度試験の結果は6Hであった。このガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを測定した結果を図5に示す。
【0077】
実施例7
紫外線吸収性材料の製造
3−アミノプロピルトリエトキシシラン3gと実施例6で調製したエポキシシラン重合体溶液11gとをキシレン32gに溶解し、80℃に加熱しながら実施例1で調製した化合物A5gを徐々に添加した。添加終了後、130℃まで昇温し3時間還流し、紫外線吸収性材料を得た。
【0078】
紫外線吸収性被膜の製造
前記溶液状の紫外線吸収性材料をコーティング液として、ガラス基板上にスプレー塗布し、室温で20分間放置後、150℃で30分間加熱し、厚さ約15μmの紫外線吸収性被膜を設けたガラス基板を作製した。JIS K 5400鉛筆硬度試験の結果は5Hであった。このガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを測定した結果を図6に示す。
【0079】
比較例1
シリコーンワニス(商品名:XO−7931−クリヤー、オキツモ(株)製)22.2gに、3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸オクチルエステル(TINUVIN 109、商標、Ciba−Geigy社製)10gを加え、さらに、ジ−n−ブチルスズジラウレート20μlを添加し、ジメチルホルムアミド(DMF)20mlで希釈した後、ガラス基板上にスプレー塗布した。ホットプレート上60℃で15分間乾燥した後、オーブンに入れ200℃で1時間加熱硬化し、厚さ約20μmの紫外線吸収性被膜を得た。しかしこの紫外線吸収性被膜は吸収剤の析出により白濁した。
【0080】
比較例2
シリコーンワニス(商品名:XO−7931−クリヤー、オキツモ(株)製)22.2gに、3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸オクチルエステル(TINUVIN 109、商標、Ciba−Geigy社製)2.2gを加え、さらにジ−n−ブチルスズジラウレート20μlを添加し、DMF20mlで希釈した後、ガラス基板上にスプレー塗布した。ホットプレート上60℃で15分間乾燥した後、オーブンに入れ200℃で1時間加熱硬化し、厚さ約15μmの紫外線吸収性被膜を得た。この紫外線吸収性被膜は比較例1のように白濁しなかったが、紫外線カット能は図7の透過率スペクトルに示すように不十分なものであった。
また作製した膜をガラス基板上から削り取り、実施例と同様にソックスレイ抽出を行い、乾燥させた残存固体を瓶量したところ、15.2%の重量減少が認められた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で作成したガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図2】実施例3で作成したガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図3】実施例4で作成したガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施例5で作成したガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図5】実施例6で作成したガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図6】実施例7で作成したガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図7】比較例2で作成したガラス基板の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
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