JP3766202B2 - 耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材 - Google Patents

耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧延用複合ロールの外層材として好適な黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧延用複合ロールの外層材として、従来より、硬度が高く耐摩耗性にすぐれるハイス系鋳鉄が使用されている。ハイス系鋳鉄材のこの高硬度特性は、晶出する炭化物の寄与によるものであるが、炭化物は炭素量が多いことから、一方では比較的脆いという性質がある。このため、熱間圧延のように、ロール表面に対して熱負荷による昇温と降温が繰り返されると、鋳鉄基地と炭化物の熱膨張率の相違から、比較的脆い炭化物は、ミクロ的な欠け落ちを生じ易い。この炭化物のミクロ的な欠け落ち摩耗は、ロール表面の肌荒れの原因になり、圧延製品の表面性状を悪化させる不都合がある。
【0003】
ところで、黒鉛は、摩擦係数を小さくし、衝撃荷重を緩和する作用があり、炭化物のミクロ的な欠け落ちを抑制する効果を有する。そこで、出願人は、圧延用複合ロールの外層材として、Cr、Mo、V、Nb、W等の高硬度複合炭化物形成元素を含有すると共に、黒鉛化促進元素であるSiを所定量含有したハイス系鋳鉄材を以前に提案した(特開平6−256889号公報)。この鋳鉄材は、複合炭化物と黒鉛が晶出した組織を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材では、炭化物のミクロ的な欠け落ちは大幅に抑制されたものの、圧延時に黒鉛周辺部が優先的に摩耗する問題があった。黒鉛自体が摩耗すると、ロール表面の耐肌荒れ性向上は期待できなくなる。
本発明者らは、従来の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材の場合、晶出する黒鉛の平均粒径が約20〜50μmと比較的大きいことに着目し、黒鉛の粒径を微細化することができれば、黒鉛の摩耗を可及的に抑制できるのではないかと考え、本発明に至った。
【0005】
本発明の目的は、高硬度複合炭化物と黒鉛を組織中に有するハイス系鋳鉄材において、晶出する黒鉛を微細化することにより耐肌荒れ性を向上させると共に、高温ですぐれた耐摩耗性を確保することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材は、重量%にて、C:1.8〜3.6%、Si: . 〜3.5%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:2.0〜10.0%、Mo:0.1〜10.0%、V:1.0〜8.0%、さらに、Nb:3.0%以下及び/又はTi:2.0%以下と、ランタノイド元素群の中の少なくとも一種を合計量で0.21〜2.0%含有し、残部Fe及び不可避の不純物からなり、晶出する黒鉛は面積率で0 . 1〜7%である。
【0007】
請求項2に記載した本発明の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材は、重量%にて、C:1.8〜3.6%、Si: . 〜3.5%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:2.0〜10.0%、Mo:0.1〜10.0%、V:1.0〜8.0%、さらに、Ni:10.0%以下及び/又はCo:5.0%以下と、ランタノイド元素群の中の少なくとも一種を合計量で0.21〜2.0%含有し、残部Fe及び不可避の不純物からなり、晶出する黒鉛は面積率で0 . 1〜7%である。
【0008】
請求項3に記載された本発明のハイス系鋳鉄材は、重量%にて、C:1.8〜3.6%、Si: . 〜3.5%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:2.0〜10.0%、Mo:0.1〜10.0%、V:1.0〜8.0%、さらに、Nb:3.0%以下及び/又はTi:2.0%以下と、Ni:10.0%以下及び/又はCo:5.0%以下と、ランタノイド元素群の中の少なくとも一種を合計量で0.21〜2.0%含有し、残部Fe及び不可避の不純物からなり、晶出する黒鉛は面積率で0 . 1〜7%である。
【0009】
本発明の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材は、必要に応じて、前記合金成分の他に、Al:0.01〜0.50%、Zr:0.01〜0.50%のうち一種又は二種、及び/又はB:0.01〜0.50%を含有することができる。
なお、組織中に晶出する黒鉛は、平均粒径が約10μm以下、面積率は約0.1〜7%であり、望ましい平均粒径は約2〜8μm、望ましい面積率は約2〜4%である。
【0010】
【作用】
本発明の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材は、Cと、Cr、Mo、V、Fe、さらにはNb、Tiとが相互に結合した高硬度の複合炭化物が基地中に存在しており、常温及び高温における硬度が高く、耐摩耗性にすぐれている。また、Ni、Coを含有することにより、基地が強化され強靱性にすぐれている。
本発明の鋳鉄材に含まれるランタノイド元素は、晶出した黒鉛を微細化する作用がある。また、初晶オーステナイト中でのMC型炭化物の晶出量を減らす一方で、共晶領域でのMC型炭化物の量を増やす働きがあり、特に高温で高硬度が得られるので、高温での耐摩耗性が向上する。
本発明の鋳鉄材は、組織中に、微細な黒鉛が所定量晶出しており、圧延用複合ロールの外層材として使用されたとき、黒鉛の作用によって衝撃荷重が緩和され、炭化物のミクロ的な欠け落ちが抑制される効果を有する。また、黒鉛の平均粒径が微細化されているため、黒鉛を起点とした摩耗は著しく軽減され、すぐれた耐肌荒れ性を発揮する。
【0011】
本発明の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材は、Al、Zrの含有によって凝固組織が一層微細化され、またBの含有によって焼入れ性が向上する。
【0012】
【成分限定理由の説明】
C:1.8〜3.6%
Cは、主としてFe及びCrと結合してM73型の高硬度複合炭化物を形成すると共に、Mo、V、Nb、Tiなどと結合して、MC型、M6C型、M2C型等の高硬度複合炭化物を形成する。また、後述の黒鉛化促進元素であるSiの作用により、また熱処理により微細な黒鉛となって組織中に析出する。1.8%に満たないと炭化物量が減少すると共に好適な黒鉛量が得られなくなり、一方含有量が3.6%を超えると炭化物量及び黒鉛量が過多となり、材質が脆くなる傾向があるため、Cの含有量は、1.8〜3.6%に規定する。
【0013】
Si:1.0〜3.5%
Siは、湯流れ性の確保及び黒鉛を晶出・析出させるために必要な元素である。含有量が1.0%に満たないと、所望の効果が得られない。一方、3.5%を超えると黒鉛量が過多となり、黒鉛を起点とする摩耗が著しくなる虞れがある。このため、含有量は1.0〜3.5%に規定する。
なお、黒鉛の晶出を促進するには、鋳込み前のSi量を上記成分範囲よりも少なめにしておいて、鋳込み時に接種を行ない、最終製品の成分で上記範囲内に調整するのが好ましい。
【0014】
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、硬化能を増す働きがある。また、Sと結合してMnSを生成し、Sによる脆化を防止するのに有効な元素である。一方、含有量が多くなりすぎると靭性の低下を招くため、含有量は0.1〜2.0%に規定する。
【0015】
Cr:2.0〜10.0%
Crは、Fe、Mo、V、Nb、Tiなどと共にCと結合して、高硬度複合炭化物を形成し高温における耐摩耗性の向上に寄与する。また、一部は基地中に固溶して焼入れ性及び耐摩耗性を改善する。含有量が2.0%に満たないとその効果が少なく、一方10.0%を超えると好適な黒鉛量を得ることが困難となる。このため、含有量は2.0〜10.0%に規定する。
【0016】
Mo:0.1〜10.0%
Moは、Fe、Cr、V、Nb、Tiなどと共にCと結合して、主としてM7C型、M6C型、M2C型の複合炭化物を形成し、常温及び高温硬度を高めて耐摩耗性の向上に寄与する。しかし、0.1%未満ではその効果を十分に得られず、一方、10.0%を超えると好適な黒鉛量が得られなくなり、好ましくない。このため、含有量は、0.1〜10.0%に規定する。
【0017】
V:1.0〜8.0%
Vは、Fe、Cr、Moなどと共にCと容易に結合して、主としてMC型の炭化物を形成し、常温及び高温硬度を高めて耐摩耗性の向上に寄与する。また、このMC型炭化物は、厚さ方向に枝状に生成するから、基地の塑性変形を抑制し、機械的性質、さらには耐クラック性の向上にも寄与する。このため、少なくとも1.0%以上含有させる。一方、あまりに多く含有すると、炭化物が偏析を起こし易くなり、所定の黒鉛量を得ることが難しくなる。このため、上限は8.0%に規定する。
【0018】
Nb:3.0%以下及び/又はTi:2.0%以下
Nb及びTiは、Vと同様に、Cと容易に結合してMC型炭化物を形成し、常温及び高温硬度を高めて耐摩耗性の向上に寄与するので、Vと共に添加することが望ましい。しかし、添加量が多すぎると溶解が困難になるため、上限はそれぞれ3.0%以下、2.0%以下とする。
【0019】
Ni:10.0%以下及び/又はCo:5.0%以下
Ni、Coは、基地に固溶して強靱性を増す。更にCoは高温硬度も高めて耐摩耗性の向上にも寄与する。また、炭化物生成元素のオーステナイト中への固溶量を増大させて、基地の硬度と焼戻し抵抗を増大させる効果があるため、含有させることが望ましい。一方、あまりに多く含有すると残留オーステナイトが増加し、後の熱処理で強靱組織を得ることが困難になる。このため、含有量の上限は、それぞれ10.0%以下及び5.0%以下とする。
【0020】
ランタノイド元素:少なくとも一種を合計量で0.21〜2.0%
ランタノイド元素とは、原子番号57から71までの15種類の希土類元素、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luを意味し、各元素は外側の電子配置が類似しており、互いによく似た性質を有している。La、Ce、Nd、Prなどのランタノイド元素は、晶出した黒鉛を微細化する作用があり、炭化物のミクロ的な欠け落ちを抑制して、ロール表面の耐肌荒れ性の向上に極めて有効である。また、初晶オーステナイト中でのMC型炭化物の晶出量を減らす一方、共晶領域でのMC型炭化物の量を増やす働きがあり、特に高温での硬度を高める作用があり、高温での耐摩耗性を向上させる。これらの効果を発揮させるために、La、Ce、Nd、Prなどのランタノイド元素は、少なくとも0.21%(複数種類を含有するときは合計量で)以上含有させるものとするが、0.25%以上がより望ましく、0.3%以上がさらに望ましい。しかし、含有量があまり多くなると、介在物が増えて材料の清浄度が低下し、鋳造欠陥の原因となる虞れがある。このため、上限は2.0%(複数種類を含有するときは合計量で)に規定するが、清浄度の点からは1.8%以下がより望ましく、1.6%以下がさらに望ましい。
ところで、鋳鉄材の溶製に際しては、ランタノイド元素の原料として、通常はミッシュメタルが使用される。ミッシュメタルを使用する場合、ランタノイド元素は、CeとLaが約60〜80%を占め、残部にはNd、Prを含む他、微量のPm、Sm、Eu、Gd、Tbなどが含まれる。
なお、ランタノイド元素は溶湯の粘性を高める効果もある。圧延用複合ロールを鋳造する場合、一般的には遠心力鋳造を用いて行われるが、溶湯中の粘性が高くなると、遠心分離による重量偏析が少なくなるため、ロールの外層表面側での層状偏析が軽減される利点を有する。
【0021】
Al、Zr:各々0.01〜0.50%
Al、Zrは、溶湯中で酸化物を生成して、溶湯中の酸素含有量を低下させ、製品の健全性を向上させると共に、生成した酸化物が結晶核として作用するために凝固組織の微細化に効果がある。このため、必要に応じて、含有することが望ましい。各元素は、含有量が0.01%に満たないと、その効果は十分でなく、一方、0.50%を超えて含有すると介在物となって残留し、好ましくない。なお、Al、Zrの添加は、前述のように主として鋳造組織の微細化による耐摩耗性改善のために添加されるものであり、単に脱ガスを目的として添加されるものではない。
【0022】
B:0.01〜0.50%
Bは、溶湯中の酸素と結合して脱酸効果を示す。その他、生成した酸化物を核とする凝固組織の微細化効果、及び基地中に溶け込んだBによる焼入れ性の改善効果を有する。圧延ロールのような大質量の鋳物の場合、冷却温度を速くすることが困難な場合があるが、Bの添加により、焼入れ性の増大により良好な焼入れ組織を得易くなる。このため、必要に応じて含有させるものとするが、含有量が0.01%に満たないとその効果が十分でなく、一方0.50%を超えると材質が脆くなり好ましくない。
【0023】
本発明のハイス系鋳鉄材は、上記成分を含有し、残部はFe及び不可避的に混入する不純物からなる。例えば、P、Sは原料より不可避的に混入するが、材質を脆くするので少ない程好ましく、P:0.2%以下、S:0.1%以下にするのがよい。
【0024】
なお、本発明の鋳鉄材は、この種鋳鉄材で一般的に使用されるWを含有していない。Wは、炭化物を形成し、硬度を高めて耐摩耗性の向上に寄与するが、一方、ロールとしての使用時、ロール表面に黒皮と呼ばれる酸化鉄を生成し易くする傾向がある。この黒皮がロール表面に付着すると、ロール表面の肌荒れ性が悪くなる。このため、本発明の鋳鉄材では、Wを積極的に使用しないようにしている。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明のハイス系鋳鉄材は、外層が中実状内層又は円筒状内層に、溶着又は焼き嵌めされた二層複合ロール、あるいは外層と内層との間に中間層を鋳造形成した三層複合ロールの外層材として好適に使用される。
内層材として、高級鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、黒鉛鋼等の強靱性を有する材料が使用され、中間層材としてアダマイト材が使用される。
中実複合ロールは、金型遠心力鋳造法により外層、必要に応じて中間層を鋳造した後、その内部に内層が静置鋳造することにより作製できる。スリーブ状のロールの場合、内層も遠心力鋳造により作製される。遠心力鋳造法には、金型の回転軸が水平方向の横型、斜め方向の傾斜型、鉛直方向の縦型の各種の方法を用いることができる。また、遠心力鋳造法以外にも、公知の連続肉盛溶接法(Continuous Pouring Process)を用いることもできる。
【0026】
本発明のハイス系鋳鉄材を外層に用いた複合ロールの場合、鋳造後、外層に所定の熱処理が施される。例えば、オーステナイト化温度から650〜400℃までの温度域を100℃/Hr以上の冷却速度で急冷し、良好な焼入れ組織を得た後、500〜600℃の温度で1回乃至数回の焼戻しが行なわれる。
【0027】
【実施例】
高周波誘導溶解炉にて、表1に示す各種成分組成の合金溶湯を溶製し、遠心力鋳造に付して供試用の中空円筒体を得た。遠心力鋳造時の金型回転数はGナンバーが140、鋳込み温度は1355℃であり、 得られた供試材は外径240mm、内径140mm、長さ200mmである。次に、各供試材を1050℃で1時間加熱し、600℃/Hrの冷却速度で焼入れし、520℃で10時間の焼戻しを3回繰り返した。
表1中、供試No.1〜No.11は本発明の実施例、No.21はCe、Laを全く含まない比較例、No.22はCeとLaの含有量が本発明の規定よりも少ない比較例である。なお、本発明の実施例中、Pm、Sm、Eu、Gd、Tbを含有するものがあるが、その量は極く微量であるため、測定対象から除外している。
【0028】

【表1】
Figure 0003766202
【0029】
各供試材より組織観察用の試料を採取し、ミクロ組織を顕微鏡観察し、晶出黒鉛の平均粒径と面積率を測定した。その結果を表2に示す。
実施例No.2と比較例No.21の供試材については、それらの金属組織を顕微鏡写真により、夫々、図1及び図2に示す。
【0030】
次に、各試料を1100℃で1時間保持した後、強制空冷により焼入れし、その後540℃で10時間の熱処理を3回繰り返した後、再び500℃の温度に加熱し、ビッカース硬度計で表面硬度を測定した。その結果を表2に併せて示す。
【0031】
表面の肌荒れ状態は次の要領にて調べた。まず、各円筒体から供試用のリングを軸心に直交する方向に切り出し、該リングを1100℃で1時間保持した後、強制空冷により焼入れし、その後540℃で10時間の焼戻しをする熱処理を3回繰り返した。熱処理後、試験用リングの外径と内径の機械加工仕上げを行ない、図3に示す高温摩耗試験装置を用いて、試験用リングに摩耗を生じさせた後、表面粗さを測定した。
【0032】
図3において、摩耗試験装置は、下段に試験ロール(1)、上段に外径が試験ロール(1)よりも大きい加圧ロール(2)が互いに反対方向に回転可能に配備された構成であり、加圧ロール(2)を試験ロール(1)に押し当てつつ回転駆動させると、直径差により試験ロール(1)がスリップしながら回転するようにしたものである。試験ロール(1)は、軸(11)の胴部(12)に試験用リング(13)が固定されており、加圧ロール(2)は、軸(21)の胴部(22)に加圧リング(23)が固定され、加圧リング(23)の幅方向中央部には周方向に突条(24)が形成されている。加圧ロール(2)の上半分は、突条(24)を囲むように高周波コイル(3)(図3では仮想線で示す)が配備され、試験中、加圧ロール(2)の突条(24)は加熱される。試験ロール(1)には、冷却水管(4)を通じて冷却用の水が吹き付けられる。
なお、試験ロール(1)の胴部(12)の外径は70mm、試験リング(13)の外径は210mmである。加圧ロール(2)は、加圧リング(23)の材質がSS41、突条(24)は外径230mm、幅5mmある。試験中、加圧ロール(1)に対して3トンの荷重が負荷された。軸(21)の回転速度は50rpm、回転時間は60分とした。
上記の要領にて試験用リング(13)の表面に摩耗を生じさせた後、、表面粗度計(サーフコム590A−3D、株式会社東京精密製)を用いて、夫々の試験用リング(13)の表面粗さ(Rmax)を測定した。測定は、試験用リング(13)の摩耗を生じた円周表面の任意の4箇所につき、長さ3mmに亘って測定した。第1位置乃至第4位置の測定結果及びそれらの平均値を表2に併せて示す。
【0033】

【表2】
Figure 0003766202
【0034】
表2の結果から明らかなように、本発明の供試材No.1〜No.11は、比較例の供試材No.21〜No.22と比べて、500℃の温度で高い硬度を具えていることがわかる。これは、Cr、Mo、V、Nb及び/又はTi等の高硬度複合炭化物形成元素とLa、Ce、Nd、Prなどのランタノイド元素の含有による相乗効果により、高硬度複合炭化物の共晶領域が増大したためと推測される。高温における高硬度を具えた鋳鉄材は、圧延用複合ロールの外層材として使用されたとき、ロール表面は高温圧延材との接触による摩耗抵抗性が大きく、すぐれた耐摩耗性を発揮する。
なお、Ni、Coを含有する供試材は、それらを含有しない供試材に比べて、高温硬度が若干高くなっている。
【0035】
表2はまた、発明例の供試材No.1〜No.11は、比較例のNo.21及びNo.22と比べて、黒鉛の平均粒径は微細であることを示している。これも、La、Ce、Nd、Prなどのランタノイド元素の含有効果によるものと考えられる。このように黒鉛の微細化効果として、本発明の供試材No.1〜No.11は、比較例の供試材No.21及びNo.22よりも、表面粗さが良好であることを示している。このように、本発明のハイス系鋳鉄材は、圧延用複合ロールの外層材として使用されたとき、ロール表面の耐肌荒れ性にすぐれることがわかる。
また、適量に晶出した黒鉛は、耐焼付性の点でも良好である。
【0036】
図1と図2の顕微鏡写真の中で、黒く見えるのが黒鉛である。図1の供試材No.2はCeとLaを合計量で1.93%含有しているのに対し、図2の供試材No.21はCeとLaを全く含有しておらず、これらの比較から、CeとLaの含有により黒鉛が微細化されることがわかる。
【0037】
【発明の効果】
本発明の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材は、晶出黒鉛が微細であり、高温において高い硬度を具えている。従って、本発明の鋳鉄材を外層として用いた複合ロールは、圧延に際して、非常にすぐれた耐摩耗性と耐肌荒れ性を発揮し、特に熱間圧延用の圧延用複合ロールの外層材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明例である供試材No.2の金属組織を示す図面代用顕微鏡写真(×400)である。
【図2】比較例である供試材No.21の金属組織を示す図面代用顕微鏡写真(×400)である。
【図3】供試材表面の肌荒れ状況を調べるために使用され、高温条件下で供試材表面に摩耗を生じさせる摩耗試験装置の説明図である。
【符号の説明】
(1) 試験ロール
(2) 加圧ロール
(3) 高周波コイル
(4) 冷却水管
(13) 試験用リング
(24) 突条

Claims (9)

  1. 重量%にて、C:1.8〜3.6%、Si: . 〜3.5%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:2.0〜10.0%、Mo:0.1〜10.0%、V:1.0〜8.0%、さらに、Nb:3.0%以下及び/又はTi:2.0%以下、ランタノイド元素群の中の少なくとも一種を合計量で0.21〜2.0%含有し、残部Fe及び不可避の不純物からなり、晶出する黒鉛は面積率で0 . 1〜7%である、耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材。
  2. 重量%にて、C:1.8〜3.6%、Si: . 〜3.5%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:2.0〜10.0%、Mo:0.1〜10.0%、V:1.0〜8.0%、さらに、Ni:10.0%以下及び/又はCo:5.0%以下、ランタノイド元素群の中の少なくとも一種を合計量で0.21〜2.0%含有し、残部Fe及び不可避の不純物からなり、晶出する黒鉛は面積率で0 . 1〜7%である、耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材。
  3. 重量%にて、C:1.8〜3.6%、Si: . 〜3.5%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:2.0〜10.0%、Mo:0.1〜10.0%、V:1.0〜8.0%、さらに、Nb:3.0%以下及び/又はTi:2.0%以下、Ni:10.0%以下及び/又はCo:5.0%以下、ランタノイド元素群の中の少なくとも一種を合計量で0.21〜2.0%含有し、残部Fe及び不可避の不純物からなり、晶出する黒鉛は面積率で0 . 1〜7%である、耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材。
  4. Al:0.01〜0.50%及び/又はZr:0.01〜0.50%を含有している請求項1乃至3の何れかに記載の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材。
  5. 重量%にて、C:1 . 8〜3 . 6%、Si:1 . 0〜3 . 5%、Mn:0 . 1〜2 . 0%、Cr:2 . 0〜10 . 0%、Mo:0 . 1〜10 . 0%、V:1 . 0〜8 . 0%、さらに、Nb:3 . 0%以下及び/又はTi:2 . 0%以下、Al:0 . 01〜0 . 50%及び/又はZr:0 . 01〜0 . 50%、ランタノイド元素群の中の少なくとも一種を合計量で0 . 21〜2 . 0%含有し、残部Fe及び不可避の不純物からなり、耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材。
  6. 重量%にて、C:1 . 8〜3 . 6%、Si:1 . 0〜3 . 5%、Mn:0 . 1〜2 . 0%、Cr:2 . 0〜10 . 0%、Mo:0 . 1〜10 . 0%、V:1 . 0〜8 . 0%、さらに、Ni:10 . 0%以下及び/又はCo:5 . 0%以下、Al:0 . 01〜0 . 50%及び/又はZr:0 . 01〜0 . 50%、ランタノイド元素群の中の少なくとも一種を合計量で0 . 21〜2 . 0%含有し、残部Fe及び不可避の不純物からなり、耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材。
  7. 重量%にて、C:1 . 8〜3 . 6%、Si:1 . 0〜3 . 5%、Mn:0 . 1〜2 . 0%、Cr:2 . 0〜10 . 0%、Mo:0 . 1〜10 . 0%、V:1 . 0〜8 . 0%、さらに、Nb:3 . 0%以下及び/又はTi:2 . 0%以下、Ni:10 . 0%以下及び/又はCo:5 . 0%以下、Al:0 . 01〜0 . 50%及び/又はZr:0 . 01〜0 . 50%、ランタノイド元素群の中の少なくとも一種を合計量で0 . 21〜2 . 0%含有し、残部Fe及び不可避の不純物からなり、耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材。
  8. B:0.01〜0.50%を含有している請求項1乃至の何れかに記載の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材。
  9. 晶出する黒鉛の平均粒径は10μm以下である請求項1乃至8の何れかに記載の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材。
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