JP4341357B2 - 熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロール - Google Patents
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(1)質量%で、C:2.5〜3.5%、Si:1.0〜2.5%、Mn:0.3〜1%、Ni:3〜5%、Cr:1.5〜2.5%、Mo:1.0〜4%、V:1.4〜3.0%、Nb:0.1〜0.5%、B:0.0005〜0.2%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、少なくとも基地の一部に、最大長さ:0.1〜5μmの二次炭化物を50000〜1000000個/mm2 含む組織と、を有することを特徴とする耐摩耗性および耐肌荒れ性に優れた熱間圧延用ロール外層材。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:0.06%以下および/またはTi:0.05%以下を含有する組成とすることを特徴とする熱間圧延用ロール外層材。
(3)外層と内層が溶着一体化してなる熱間圧延用複合ロールであって、前記外層が、質量%で、C:2.5〜3.5%、Si:1.0〜2.5%、Mn:0.3〜1%、Ni:3〜5%、Cr:1.5〜2.5%、Mo:1.0〜4%、V:1.4〜3.0%、Nb:0.1〜0.5%、B:0.0005〜0.2%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、少なくとも基地の一部に、最大長さ:0.1〜5μmの微細二次炭化物を50000〜1000000個/mm2 含む組織と、を有することを特徴とする耐摩耗性および耐肌荒れ性に優れた熱間圧延用複合ロール。
(4)(3)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:0.06%以下および/またはTi:0.05%以下を含有する組成とすることを特徴とする熱間圧延用複合ロール。
(5)質量%で、C:2.5〜3.5%、Si:1.0〜2.5%、Mn:0.3〜1%、Ni:3〜5%、Cr:1.5〜2.5%、Mo:1.0〜4%、V:1.4〜3.0%、Nb:0.1〜0.5%、B:0.0005〜0.2%を含み、あるいはさらにAl:0.06%以下および/またはTi:0.05%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成のロール外層材用素材に、800〜950℃に加熱し焼入れする焼入れ処理と、さらに焼戻処理を施すことを特徴とする耐摩耗性および耐肌荒れ性に優れた熱間圧延用ロール外層材の製造方法。
(6)(5)において、前記焼入れ処理の加熱時間が4〜40hであることを特徴とする
熱間圧延用ロール外層材の製造方法。
Cは、V、Nb、Cr、Moと結合してロールの耐摩耗性を向上させるための硬質炭化物形成に必要な元素であるとともに、黒鉛として晶出し耐焼付き性の確保に必要な元素であり、本発明では、2.5%以上の含有を必要とする。一方、3.5%を超えて含有すると共晶炭化物が多量に出現し、MC型炭化物が粗大化して、耐肌荒れ性が低下する。このため、Cは2.5〜3.5%の範囲に限定した。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、Cの活量を増加し黒鉛の晶出を促進させる元素であり、本発明では1.0%以上の含有を必要とする。一方、2.5%を超えて含有しても、上記した効果が飽和するうえ、かえって耐摩耗性が低下し、含有量に見合う効果が期待できず、経済的に不利となる。このため、Siは1.0〜2.5%に限定した。
Mnは、溶湯中のSをMnSとして固定し、耐摩耗性を阻害するSを除去する作用を有するとともに、焼入れ性を向上し材料の硬さを増加させ、耐摩耗性を向上させる効果を有する。このような効果は0.3%以上の含有で認められる。一方、1%を超えて含有すると、偏析が顕著となり、材料が脆化する。このようなことから、Mnは0.3〜1%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.3〜0.8%である。
Niは、焼入れ性を向上し、材料の硬さを増加させ、耐摩耗性を向上させる効果を有する。また、黒鉛の晶出を促進させる効果を有する。このような効果は、3%以上の含有で認められるが、5%を超えて含有すると、オーステナイトが安定化し、残留オーステナイト量が増加し、二次炭化物の析出量が少なくなるとともに、耐摩耗性が低下する。このため、本発明ではNiは3〜5%の範囲に限定した。なお、好ましくは3.5〜4.8%である。
Crは、Moと共に硬質な共晶炭化物を生成し、耐摩耗性を向上させるとともに二次炭化物の析出にも寄与する元素であり、本発明では1.5%以上の含有を必要とする。一方、2.5%を超えて含有すると、黒鉛の晶出が抑制されて耐焼付き性が低下するとともに、共晶炭化物が多量に形成され、耐摩耗性を低下させる。このため、Crは1.5〜2.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.5〜2.3%である。
Moは、黒鉛の晶出を阻害することなく、耐摩耗性向上に有効な炭化物を生成する元素である。またMoは、V、Nbとともに含有すると、より強靭な硬質炭化物であるMC型炭化物を生成して、耐摩耗性を向上させる効果を有する。このような効果を得るためには、1.0%以上の含有を必要とするが、4%を超えて含有すると、MC型炭化物の凸化が顕著となり、肌荒れの抑制が困難となる。このため、Moは1.0〜4%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.5〜3.2%である。
Vは、硬質なMC型炭化物を形成し、耐摩耗性を顕著に向上させる効果を有する。一定レベル以上の耐摩耗性を確保するために、本発明では1.4%以上の含有を必要とする。しかし、3.0%を超える含有は、MC型炭化物の粗大化を招き、耐肌荒れ性が顕著に低下する。このため、本発明ではVは1.4〜3.0%の範囲に限定した。
Nbは、V、Moとともに含有することにより、MC型炭化物に固溶してMC型炭化物を強化し、耐摩耗性を顕著に向上させる効果を有する。また、NbはMC型炭化物を微細化する作用を有し、耐肌荒れ性向上に寄与する。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、0.5%を超えて含有すると、MC型炭化物の偏析を助長するとともにMC型炭化物の粗大化を招き、耐肌荒れ性を低下させる。このため、Nbは0.1〜0.5%の範囲に限定した。
Bは、微細な二次炭化物の多量析出を促進する作用を有し本発明では重要な元素であり、0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.2%を超えて含有すると、炭化物が脆弱化し耐摩耗性が低下するとともに、黒鉛量が減少する。このため、Bは0.0005〜0.2%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.01〜0.1%である。
Al、Tiはいずれも、酸化物、窒化物、炭化物等がNb炭化物の晶出核となり、Nb炭化物を微細分散させ、そのNb炭化物を核としてMC型炭化物を微細分散させて、耐肌荒れ性を向上させる。このような効果はAlが0.006%以上、Tiが0.005%以上の含有で顕著となる。一方、Alを0.06%、Tiを0.05%を超えて含有すると、微細MC型炭化物が密集し、その部分で大きな肌荒れを生じるため、Alを0.06%以下、Tiを0.05%以下とすることが好ましい。
(1)組織試験
リング状試験材から組織観察用試験片を採取し、試験材断面について、まず黒鉛の有無を観察した。ついで、試験片断面をナイタール腐食し、ミクロ組織を走査型電子顕微鏡(倍率:5000倍)で観察し、微細二次炭化物の大きさ、分散密度を調査した。なお、観察した視野数は2視野とし、各視野での最大長さ:0.1〜5μmの微細二次炭化物粒の密度を求め、各視野の平均値を各試験材の微細二次炭化物の分散密度とした。なお、1視野の面積は256μm2である。本発明における微細二次炭化物の分散状態の一例を走査型電子顕微鏡組織写真で図1に示す。また、黒鉛量(面積%)を100倍の光学顕微鏡で観察し、画像解析装置で測定した。測定面積は16mm2とした。
(2)摩耗試験
リング状試験材から試験片(外径:60mmφ、肉厚:10mm)を採取し、相手材(材質:S45C,大きさ:190mmφ、肉厚:16mm)と試験片との2円盤すべり摩耗方式で摩耗試験を実施した。試験片を回転数700rpmで回転させながら。相手材を430℃に加熱し、試験片を水冷し、試験片と相手材のすべり率を10%として、荷重100kgf(980N)で圧接しながら90min間転動させた。試験後、試験片の摩耗減量(摩耗量)を測定し、Niグレン鋳鉄の摩耗量との比(=(Niグレン鋳鉄の摩耗量)/(試験片の摩耗量))で耐摩耗性を評価した。比が1.0より大きくなる場合が耐摩耗性が向上したことを意味する。さらに試験片表面の肌荒れ状況を目視で観察し、一部の肌荒れの大きな部分について試験片周方向に4mmの長さに亘り、触針式粗さ計を用いて、JIS B 0601−2001の規定に準拠してRz(10点平均粗さ)を求めた。
(3)焼付き試験
リング状試験材から試験片(25mm厚の板状)を採取し、図2に示す方式の試験機で焼付き試験を実施した。試験片に、高周波誘導加熱コイルにより、900℃に加熱されて150rpmで回転する円板状の相手材(材質:SUS410、大きさ:190mmφ、肉厚:14mm)を荷重 100kgf(980N)で10s間圧接した。試験後の試験片表面に相手材のへばり付きがある場合を「焼付き有り」(×)、へばり付きがなく表面が摩耗している場合を「焼付きなし」(○)として、耐焼付き性を評価した。
Claims (5)
- 質量%で、
C:2.5〜3.5%、 Si:1.0〜2.5%、
Mn:0.3〜1%、 Ni:3〜5%、
Cr:1.5〜2.5%, Mo:1.0〜4%、
V:1.4〜3.0%、 Nb:0.1〜0.5%、
B:0.0005〜0.2%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、少なくとも基地の一部に、最大長さ:0.1〜5μmの微細炭化物を50000〜1000000個/mm2 含む組織と、を有することを特徴とする耐摩耗性および耐肌荒れ性に優れた熱間圧延用ロール外層材。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:0.06%以下および/またはTi:0.05%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延用ロール外層材。
- 外層と内層が溶着一体化してなる熱間圧延用複合ロールであって、前記外層が、質量%で、
C:2.5〜3.5%、 Si:1.0〜2.5%、
Mn:0.3〜1%、 Ni:3〜5%、
Cr:1.5〜2.5%, Mo:1.0〜4%、
V:1.4〜3.0%、 Nb:0.1〜0.5%、
B:0.0005〜0.2%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、少なくとも基地の一部に、最大長さ:0.1〜5μmの微細炭化物を50000〜1000000個/mm2 含む組織と、を有することを特徴とする耐摩耗性および耐肌荒れ性に優れた熱間圧延用複合ロール。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:0.06%以下および/またはTi:0.05%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項3に記載の熱間圧延用複合ロール。
- 質量%で、
C:2.5〜3.5%、 Si:1.0〜2.5%、
Mn:0.3〜1%、 Ni:3〜5%、
Cr:1.5〜2.5%, Mo:1.0〜4%、
V:1.4〜3.0%、 Nb:0.1〜0.5%、
B:0.0005〜0.2%
を含み、あるいはさらにAl:0.06%以下および/またはTi:0.05%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成のロール外層材用素材に、800〜950℃に加熱し焼入れする焼入れ処理と、さらに焼戻処理を施すことを特徴とする耐摩耗性および耐肌荒れ性に優れた熱間圧延用ロール外層材の製造方法。
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