JP4483585B2 - 熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロール - Google Patents
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Description
特許文献1〜特許文献4に記載された技術で製造された熱間圧延用ロールは、黒鉛を含有することから、一般的なハイス系ロールにくらべ、耐焼付き性には優れているが、耐摩耗性や耐肌荒れ性が劣るという問題があった。
(1)質量%で、C:1.8〜3.5%、Si:0.2〜2%、Mn:0.2〜2%、Cr:4〜15%、Mo:2〜10%、V:3〜10%を含み、さらに、P:0.1〜0.6%、B:0.05〜0.5%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする耐焼付き性に優れた熱間圧延用ロール外層材。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:3%以下、W:5%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする熱間圧延用ロール外層材。
(3)外層と内層が溶着一体化してなる熱間圧延用複合ロールであって、前記外層が、質量%で、C:1.8〜3.5%、Si:0.2〜2%、Mn:0.2〜2%、Cr:4〜15%、Mo:2〜10%、V:3〜10%を含み、さらに、P:0.1〜0.6%、B:0.05〜0.5%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする耐焼付き性に優れた熱間圧延用複合ロール。
(4)(3)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:3%以下、W:5%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする熱間圧延用複合ロール。
C:1.8〜3.5%
Cは、基地硬さを増加させるとともに、V、Nb、Cr、Mo等と結合して硬質炭化物を形成し、さらに、P、Bとともに低融点の共晶化合物を形成し、ロールの耐摩耗性、耐肌荒れ性および耐焼付き性を向上させるために有効な元素であり、本発明では、1.8%以上の含有を必要とする。一方、3.5%を超えて含有すると共晶炭化物が多量に出現し、MC型炭化物が粗大化して、耐肌荒れ性が低下する。このため、Cは1.8〜3.5%の範囲に限定した。
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、また、湯流れ性を向上する作用も有するため本発明では0.2%以上の含有を必要とする。一方、2%を超えて含有しても、上記した効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できず、経済的に不利となる。このため、Siは0.2〜2%の範囲に限定した。
Mnは、SをMnSとして固定し、耐摩耗性を阻害するSを無害化する作用を有するとともに、焼入れ性を向上し材料の硬さを増加させて耐摩耗性を向上させる効果を有する。このような効果は0.2%以上の含有で認められる。一方、2%を超えて含有すると、偏析が顕著になると共に、材料が脆化する。このため、Mnは0.2〜2%の範囲に限定した。
Crは、Moと共に硬質な共晶炭化物を生成し、耐摩耗性と耐肌荒れ性を向上させる元素であり、しかもPやBの低融点共晶化合物相の融点を必要以上低下させない作用があり、本発明では4%以上の含有を必要とする。一方、15%を超えて含有すると、耐焼付き性が低下する。このため、Crは4〜15%の範囲に限定した。
Moは、Cr、あるいはV、Nbとともに含有することにより、より強靭な硬質炭化物を生成して、耐摩耗性を著しく向上させる効果を有する。このような効果を得るために、本発明では、2%以上の含有を必要とするが、10%を超えて含有すると、炭化物量が過多となり、材料が脆化する。このため、Moは2〜10%の範囲に限定した。なお、好ましくは3〜7%である。
Vは、硬質なMC炭化物を形成し、耐摩耗性を顕著に向上させる効果を有する。高耐摩耗性ロールとして一定レベル以上の耐摩耗性を確保するために、本発明では3%以上の含有を必要とする。しかし、10%を超える含有は、溶湯の粘性を増大させ鋳造欠陥が生成しやすくなり、健全なロール作製上問題となる。このため、本発明ではVは3〜10%の範囲に限定した。なお、好ましくは、3〜7%である。
Pは、本発明では重要な元素であり、融点の低いM−C−P系共晶化合物(Mは金属)を形成して耐焼付き性を向上させる。このような効果はBとの複合添加において、0.1%以上の含有で認められる。一方、0.6%を超える含有は、材料を脆化させる。このため、本発明ではPは0.1〜0.6%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.2〜0.5%である。
Bは、本発明ではPとともに重要な元素であり、融点の低いM−C−(P,B)系共晶化合物(Mは金属)を形成して耐焼付き性を向上させる。PとともにBを含有することにより、P単独含有にくらべ、低融点共晶化合物相を多量に形成させる重要な作用がある。このような効果はPと共にBを0.05%以上含有させることで認められる。一方、0.5%を超える含有は、材料を脆化させる。このため、本発明ではBは0.05〜0.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.1〜0.3%である。
Nb:3%以下、W:5%以下のうちから選ばれた1種または2種
Nb、Wは、いずれも耐摩耗性を向上させる元素であり、必要に応じ選択して1種または2種を含有できる。
Niは、焼入れ性を向上し、材料の硬さを増加させる作用を有する元素であり、通常の焼入れで所望の硬さが確保できない恐れのある場合に含有することが好ましい。このような効果は、0.05%以上の含有で顕著となるが、5%を超えて含有すると、オーステナイトが安定化し、残留オーステナイト量が増加し、硬さが低下し、耐摩耗性が低下する。このため、本発明ではNiは5.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.2〜4%である。
Coは基地に固溶し、基地の耐熱性を向上する作用がある元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果は、0.05%以上の含有で顕著となるが2%を超える含有は、焼入れ性が低下して硬さが低下することがある。このため、Coは2%以下に限定することが好ましい。なお、焼入れ性確保の観点からCoを0.5%以上含有させる場合には、Niを0.1%以上含有させることが望ましい。
Al、Tiは、いずれも、MC炭化物の晶出核を形成し、MC型炭化物を粒状分散させる作用を介し、耐肌荒れ性を向上させる元素であり、必要に応じ選択して含有できる。このような効果は0.01%以上のAl、Tiそれぞれの含有で顕著となるが、0.1%を超えるAl、Tiそれぞれの含有は、溶湯の流動性を低下させ、鋳造欠陥発生の危険性が増大する。このため、Al:0.1%以下、Ti:0.1%以下にそれぞれ限定することが好ましい。
つぎに、本発明の熱間圧延用複合ロールの好ましい製造方法について説明する。
遠心鋳造法でロール外層材を鋳造する場合、ロール外層材の凝固途中あるいは完全に凝固したのち、鋳型の回転を停止し内層材を静置鋳造して、複合ロールとすることが好ましい。これにより、ロール外層材の内面側が再溶解され外層と内層とが溶着一体化した複合ロールとなる。
本発明の熱間圧延用複合ロールは、鋳造後、熱処理を施されることが好ましい。熱処理は、800℃〜1080℃に加熱し焼入れする焼入れ処理と、さらに300〜600℃で焼戻し処理を1回以上施す処理とすることが好ましい。焼入れの加熱温度が800℃未満では、加熱温度が低すぎて硬さの確保が困難となる。一方、加熱温度が1080℃を超えて高くなると、P、Bの低融点共晶化合物が溶融してミクロポロシティ欠陥が増加する。このため、焼入れ加熱温度は800〜1080℃の範囲の温度とすることが好ましい。なお、好ましい硬さは70〜90Hsである。
(1)摩耗試験
リング状試験材から試験片(外径:60mmφ、肉厚:10mm)を採取し、相手材(材質:S45C、大きさ:190mmφ、肉厚:15mm)と試験片との2円盤すべり摩耗方式で摩耗試験を実施した。試験片を回転数700rpmで回転させながら、相手材を820℃に加熱し、試験片を水冷し、試験片と相手材のすべり率を10%として、荷重100kgf(980N)で圧接しながら30min間転動させる摩耗試験を3回行った。試験後、試験片の摩耗減量(摩耗量)を測定した。耐摩耗性は摩耗比、すなわちNiグレン鋳鉄の摩耗量に対する比(=(NIGの摩耗量)/(試験片の摩耗量))で評価した。この数値が大きい時が耐摩耗性に優れることを意味し、例えば、試験片No.HSSはNIGの4.9倍の耐摩耗であったことを示す。
(2)焼付き試験
リング状試験材から試験片(25mm厚の板状)を採取し、図1に示す方式の試験機で焼付き試験を実施した。試験片に、高周波誘導加熱コイルにより、900℃に加熱されて回転する円板状の相手材(材質:SUS410、大きさ:190mmφ、肉厚:15mm)を荷重100kgf(980N)で20s間圧接した。なお、相手材の回転数は175rpmとした。試験後の試験片表面に相手材がへばり付いたように焼付いている場合を「焼付き有り」(×)、焼付きがなく表面が摩耗している場合を「焼付きなし」(○)として、耐焼付き性を評価した。
Claims (4)
- 質量%で、
C:1.8〜3.5%、 Si:0.2〜2%、
Mn:0.2〜2%、 Cr:4〜15%、
Mo:2〜10%、 V:3〜10%
を含み、さらに、
P:0.1〜0.6%、 B:0.05〜0.5%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする耐焼付き性に優れた熱間圧延用ロール外層材。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:3%以下、W:5%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延用ロール外層材。
- 外層と内層が溶着一体化してなる熱間圧延用複合ロールであって、前記外層が、質量%で、
C:1.8〜3.5%、 Si:0.2〜2%、
Mn:0.2〜2%、 Cr:4〜15%、
Mo:2〜10%、 V:3〜10%
を含み、さらに、
P:0.1〜0.6%、 B:0.05〜0.5%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする耐焼付き性に優れた熱間圧延用複合ロール。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:3%以下、W:5%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項3に記載の熱間圧延用複合ロール。
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