JP5703718B2 - 熱間圧延用遠心鋳造製ロール外層材および複合ロール - Google Patents
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Description
このような問題に対し、例えば特許文献3には、C:2.5〜4.0%、Cr:6.0〜20.0%、Mo:2.0〜12.0%、V:3.0〜10.0%、Nb:0.6〜5.0%を、C,V,Nb,Cr含有量が特定の関係式を満足するように調整して含有する熱間圧延用ロール外層材が提案されている。特許文献3に記載された技術によれば、外層材において、硬質粒状炭化物に加えて共晶炭化物を増加させ、さらに炭化物および基地相を強化して、外層が、耐摩耗性に優れ、さらには耐疲労性にも優れ、かつ熱膨張係数が低く耐肌荒れ性に優れた熱間圧延用複合ロールを製造できるとしている。また、特許文献4には、外層が、C:2.4〜2.9%、Cr:12〜18%、Mo:3〜9%、V:3〜8%、Nb:0.5〜4%を、Mo/Cr、C+0.2Crが特定範囲内となるようにC,Mo,Cr含有量を調整して含有する熱間圧延用ロールが提案されている。特許文献4に記載された技術によれば、MC型炭化物とM7C3型炭化物の適量導入と、MC型炭化物とM7C3型炭化物の強化が図られ、ロール外層における炭化物の偏析が抑制され、圧延製品の表面品質の劣化を防止できるとしている。
質量%で、C:2.0〜2.9%、Si:0.3〜0.6%、Mn:0.3〜0.6%、Nb:0.6〜2.3%とし、Crを4.9〜9.8%、Moを3.1〜7.5%、Vを4.9〜7.8%の範囲で変化させ、さらにTiを0〜0.17%、Cuを0〜0.13%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の溶湯を、高周波炉で溶解し、ロール外層材に相当するリング状ロール材(外径:250mmφ、肉厚:60mm)を遠心鋳造法により鋳造した。なお、鋳込み温度は1400℃〜1500℃、遠心力は重力倍数で160Gとした。鋳造後、焼入れ処理、焼戻処理を施し、硬さをHS 80〜85に調整した。
得られたリング状ロール材から疲労試験片(外径60mmφ、肉厚10mm)および摩耗試験片(外径60mmφ、肉厚10mm)を採取して、熱間転動疲労試験および摩耗試験を実施した。なお、疲労試験片には、図2に示すようなノッチ(深さt:1.0mm、周方向長さL:1.2mm)を外周面の2箇所(180°離れた位置)に、0.25mmφのワイヤを用いた放電加工(ワイヤカット)法で導入した。また、摩耗試験片および疲労試験片の転動面の端部には面取りを施した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
10.4 <(Mo+V)≦ 12.5 ‥‥(1)
0.6 ≦(C−0.24V−0.13Nb−0.25Ti)≦ 1.3 ‥‥(2)
(ここで、Mo、V、C、Nb:各元素の含有量(質量%))
を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ロール表層の耐疲労性に優れることを特徴とする熱間圧延用遠心鋳造製ロール外層材。
10.4 <(Mo+V)≦ 12.5 ‥‥(1)
0.6 ≦(C−0.24V−0.13Nb−0.25Ti)≦ 1.3 ‥‥(2)
(ここで、Mo、V、C、Nb:各元素の含有量(質量%))
を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ロール表層の耐疲労性に優れることを特徴とする熱間圧延用遠心鋳造製複合ロール。
C: 2.2〜2.8%
Cは、固溶して基地硬さを増加させるとともに、炭化物形成元素と結合し硬質炭化物を形成し、ロール外層材の耐摩耗性を向上させる作用を有する。C含有量に応じて共晶炭化物量が変化する。共晶炭化物は圧延使用特性に影響するため、C含有量が2.2%未満では、共晶炭化物量が不足し、圧延時の摩擦力が増加し圧延が不安定となる。一方、2.8%を超える含有は、共晶炭化物量を過度に増加させ、ロール外層材を硬質、脆化させて、耐疲労性を低下させる。このため、Cは2.2〜2.8%の範囲に限定した。なお、好ましくは2.3〜2.8%である。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、溶湯の鋳造性を向上させる元素であり、本発明では0.2%以上含有することが望ましいが、0.7%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Siは0.2〜0.7%に限定した。
Mnは、SをMnSとして固定し、無害化する作用を有するとともに、基地に固溶し、焼入れ性を向上させる効果を有する元素である。このような効果を得るためには0.2%以上の含有を必要とするが、0.7%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Mnは0.2〜0.7%に限定した。
Crは、Cと結合して主に共晶炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させるとともに、圧延時に鋼板との摩擦力を低減し、ロール表面の損傷を軽減させ、圧延を安定化させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには5.0%以上の含有を必要とする。一方、8.0%を超える含有は、硬脆な共晶炭化物が増加しすぎて、耐疲労性を低下させる。このため、Crは5.0〜8.0%の範囲に限定した。
Moは、Cと結合して硬質な炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる元素である。また、Moは、硬質なMC型炭化物中に固溶して、炭化物を強化するとともに、共晶炭化物中にも固溶し、それら炭化物の破壊抵抗を増加させる。このような作用を介してMoは、ロール外層材の耐疲労性、耐摩耗性を向上させる。このような効果を得るためには、4.4%以上の含有を必要とするが、6.0%を超える含有は、Mo主体の硬脆な炭化物が生成し、耐疲労性を低下させる。このため、Moは4.4〜6.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは4.5〜5.8%である。
Vは、耐摩耗性と耐疲労性を兼備させるために、本発明において重要な元素である。Vは、極めて硬質な炭化物(MC型炭化物)を形成し、耐摩耗性を向上させるとともに、共晶炭化物を分断、分散晶出させることに有効に作用し、ロール外層材の耐疲労性を顕著に向上させる元素である。このような効果は、5.3%以上の含有で顕著となるが、7.0%を超える含有は、MC型炭化物を粗大化させるとともに、MC型炭化物の遠心鋳造偏析を助長させるため、圧延用ロールの諸特性を不安定にする。このため、Vは5.3〜7.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは5.4〜6.8%である。
Nbは、MC型炭化物に固溶してMC型炭化物を強化し、破壊抵抗を増加させる作用を介し、耐摩耗性とさらには耐疲労性を向上させる。NbとMoとがともに、炭化物中に固溶されることにより、耐摩耗性とさらには耐疲労性の向上が顕著となる。また、Nbは、共晶炭化物の分断を促進させ、共晶炭化物の破壊を抑制する作用を有し、耐疲労性を向上させる。また、NbはMC型炭化物の遠心鋳造時の偏析を抑制する作用を併せ有する。このような効果は、0.6%以上の含有で顕著となるが、1.3%を超える含有は、溶湯中でのMC型炭化物の成長を促進させ、遠心鋳造時の炭化物偏析を助長する。このため、Nbは0.6〜1.3%の範囲に限定した。
Tiは、少量の含有で、MC型炭化物の晶出核を微細に形成し、粒状のMC型炭化物を生成させて、耐疲労性を顕著に向上させ、本発明では重要な元素である。このような効果を確保するためには、0.002%以上の含有を必要とする。一方、0.08%を超える含有は、MC型炭化物を粗大化させ、鋳造時の炭化物偏析を助長するようになる。このため、Tiは0.002〜0.08%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.003〜0.08%である。
Cuは、固溶して基地を強化し、耐疲労性を向上させる作用を有するとともに、S、B等の不純物元素の悪影響を緩和する作用を有する元素である。このような効果は、0.01%以上の含有で顕著となるが、0.15%を超えて含有すると、脆化が著しくなるという悪影響が顕著となる。このため、Cuは0.01〜0.15%の範囲に限定した。
10.4 <(Mo+V)≦ 12.5 ‥‥(1)
(ここで、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
を満足するように調整して含有する。
(Mo+V)量が、10.4%以下で(1)式を満足しない場合には、所望の優れた耐摩耗性、耐疲労性を確保できなくなる。一方、12.5%を超えて多量に含有すると、硬質な炭化物が増加しすぎ、ロール外層材を硬脆化するとともに、耐疲労性が低下し、さらには鋳造性が低下する。このため、(Mo+V)量を、(1)式を満足する10.4%超え、12.5%以下に限定した。
0.6 ≦(C−0.24V−0.13Nb−0.25Ti)≦ 1.3 ‥‥(2)
(ここで、V、C、Nb、Ti:各元素の含有量(質量%))
を満足するように調整して含有する。
V、Nb、さらにTiは、Cと結合し、MC型炭化物を形成する。したがって、(C−0.24V−0.13Nb−0.25Ti)は、共晶炭化物を形成するか、基地に固溶する炭素量を意味し、基地硬さや共晶炭化物量に影響を与え、被圧延材である鋼板とロールとの摩擦力や、ロールの耐肌荒れ性を支配する因子であり、精度よく制御することが肝要となる。
まず、本発明では、ロール外層材の製造方法は、エネルギーコストの低い安価な、遠心鋳造法とする。
まず、内面にジルコン等を主材とした耐火物が被覆された、回転する鋳型に、上記したロール外層材組成の溶湯を、所定の肉厚となるように、注湯し、遠心鋳造する。そして、中間層を形成する場合には、ロール外層材の凝固途中あるいは完全に凝固したのち、鋳型を回転させながら、中間層組成の溶湯を注湯し、遠心鋳造することが好ましい。外層あるいは中間層が完全に凝固したのち、鋳型の回転を停止し鋳型を立ててから、内層材を静置鋳造して、複合ロールとすることが好ましい。これにより、ロール外層材の内面側が再溶解され外層と内層、あるいは外層と中間層、中間層と内層とが溶着一体化した複合ロールとなる。
本発明の熱間圧延用複合ロールは、鋳造後、熱処理を施されることが好ましい。熱処理は、950〜1150℃に加熱し空冷あるいは衝風空冷する工程と、さらに450〜600℃に加熱保持したのち冷却する工程を1回以上施す処理とすることが好ましい。
(1)硬さ試験
得られた硬さ試験片について、JIS Z 2246 の規定に準拠して、ショア硬さHSを測定した。
得られたリング状試験材から図2に示す形状の疲労試験片(外径60mmφ、肉厚10mm、面取り有)を採取した。疲労試験片には、図2に示すようなノッチ(深さt:1.0mm、周方向長さL:1.2mm)を外周面の2箇所(180°離れた位置)に、0.25mmφのワイヤを用いた放電加工(ワイヤカット)法で導入した。
熱間転動疲労試験は、図1に示すように、試験片と相手材との2円盤すべり転動方式で行い、疲労試験片を水冷しながら700rpmで回転させ、回転する該試験片に、810℃に加熱した相手片(材質:S45C、外径:190mmφ、幅:15mm、面取り有)を荷重980Nで圧接させながら、すべり率:8%で転動させた。そして、疲労試験片に導入した2つのノッチが折損するまで転動させ、各ノッチが折損するまでの転動回転数をそれぞれ求め、その平均値を、折損転動回転数とした。そして、従来例の折損転動回転数を基準(1.0)とし、得られた各リング状試験材と従来例との折損転動回転数の比、(各リング状試験材の折損転動回転数)/(従来例の折損転動回転数)を算出し、耐疲労性の指標とした。
得られたリング状試験材から摩耗試験片(外径60mmφ、肉厚10mm、面取り有)を採取して、摩耗試験を実施した。摩耗試験は、図1に示す、試験片と相手材との2円盤すべり摩耗方式で行った。試験片(摩耗試験片)を水冷しながら700rpmで回転させ、回転する該試験片に、820℃に加熱した相手片(材質:S45C、外径:190mmφ、幅:15mm、面取り有)を荷重980Nで圧接させながら、すべり率:8%で転動させた。累積転動回転数が252000回になるまで、転動させ、試験片の摩耗減量を求めた。そして、従来例の摩耗減量を基準(=1.0)として、各リング状試験材の摩耗減量と従来例の摩耗減量の比、(各リング状試験材の摩耗減量)/(従来例の摩耗減量)を算出し、耐摩耗性の指標とした。
Claims (3)
- 熱間圧延用遠心鋳造製複合ロールに用いられるロール外層材であって、質量%で、
C:2.2〜2.8%、 Si:0.2〜0.7%、
Mn:0.2〜0.7%、 Cr:5.0〜8.0%、
Mo:4.4〜6.0%、 V:5.3〜7.0%、
Nb:0.6〜1.3%、 Ti:0.002〜0.08%、
Cu:0.01〜0.15%
を、下記(1)式および下記(2)式を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ロール表層の耐疲労性に優れることを特徴とする熱間圧延用遠心鋳造製ロール外層材。
記
10.4 <(Mo+V)≦ 12.5 ‥ ‥(1)
0.6 ≦(C−0.24V−0.13Nb−0.25Ti)≦ 1.3 ‥‥(2)
ここで、Mo、V、C、Nb、Ti:各元素の含有量(質量%) - 外層と、該外層と溶着一体化した内層とからなる遠心鋳造製複合ロールであって、前記外層が、質量%で、
C:2.2〜2.8%、 Si:0.2〜0.7%、
Mn:0.2〜0.7%、 Cr:5.0〜8.0%、
Mo:4.4〜6.0%、 V:5.3〜7.0%、
Nb:0.6〜1.3%、 Ti:0.002〜0.08%、
Cu:0.01〜0.15%
を、下記(1)式および下記(2)式を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ロール表層の耐疲労性に優れることを特徴とする熱間圧延用遠心鋳造製複合ロール。
記
10.4 <(Mo+V)≦ 12.5 ‥ ‥(1)
0.6 ≦(C−0.24V−0.13Nb−0.25Ti)≦ 1.3 ‥‥(2)
ここで、Mo、V、C、Nb、Ti:各元素の含有量(質量%) - 前記外層と溶着一体化した内層に代えて、該外層と溶着一体化した中間層と該中間層と溶着一体化した内層とすることを特徴とする請求項2に記載の熱間圧延用遠心鋳造製複合ロール。
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