JP2715223B2 - ロール外層材及び複合ロール - Google Patents
ロール外層材及び複合ロールInfo
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Description
性及び研削性を兼備した、圧延用ロール等として用いて
好適なロール外層材及び複合ロールに関する。
ロールは、外層と内層からなる複合ロールとされ、外層
材をセメンタイト系の炭化物が晶出した高Cr鋳鉄、又
はNiグレン鋳鉄、内層材を靱性に良いねずみ鋳鉄、又
はダクタイル鋳鉄として、遠心力鋳造法によって製造さ
れている。
る生産性向上の要求から、より一層の耐摩耗性と耐クラ
ック性を備えた圧延用ロールの提供が要求されている。
407 号、特開昭61-177355 号には、従来の遠心力鋳造ロ
ールの外層材として高V鋳鉄を用いることが提案されて
いる。
造ロールの外層材として高V鋳鉄を用いる圧延用ロール
では、比重の小さいV炭化物が遠心分離により偏析し、
ロール外層内の特性が肉厚方向で不均一になる。この傾
向は大型ロールで外層肉厚が大なるほど著しく、実用ロ
ールとしての使用に耐えることができないという問題点
がある。
公報には、高速度鋼なみに高合金化した鋳鋼、鋳鉄を適
用したロール材が提案されている。然しながら、特開昭
58-87249号公報は焼嵌め又は組立ロールを対象としたも
のであり、圧延中に生じる外層と軸材間の滑りが問題と
なる。また、特開平1-96355 号公報は特殊な鋳かけ肉盛
法等、遠心力鋳造法以外の特殊な製造手法しか適用でき
ず、生産性、経済性の面で問題がある。
外層にVを多量に含有させることにより、耐摩耗性を著
しく向上させることは可能であるが、複合ロール製造時
に生産性、経済性が最も優れているとして一般に実施さ
れている遠心力鋳造法を採用した場合には、遠心分離に
よる炭化物の偏析を生じ特性を均一に得られないという
問題点がある。
は研削性が低下し、ロール改削時間が長くなるという問
題も生じている。
化し、炭化物組成、炭化物量及び基地組織を限定するこ
とにより、生産性、経済性の優れた遠心力鋳造法を適用
しても、偏析等の生じない耐摩耗性、耐クラック性、研
削性に優れた圧延用ロール外層材及びこの外層材を適用
した複合ロールを提供することを目的とする。
は、C:1.5 〜 3.5%,Si:1.5 %以下,Mn:1.2
%以下,Cr:12.0%以下,Mo:8.0 %以下,V:3.
0 〜10.0%,Nb:7.0 %以下を含有し、残部Fe及び
不可避的不純物よりなり、粒径 1μm 〜10μm の粒状炭
化物を面積率で 1〜10%含有し、基地組織の85%以上が
ベイナイトであるロール外層材である。
載のロール外層材において更に、Ni:5.5 %以下,C
o:10.0%以下,Cu:2.0 %以下,W:2.0 %以下,
Ti:2.0 %以下,Zr:2.0 %以下,B:0.1 %以下
の1種又は2種以上を更に含有するようにしたものであ
る。
2に記載のロール外層材において更に、下記(1) 式と
(2) 式を満足するものである。 V+ 1.8Nb ≦ 7.5 C−6.0(%) …(1) 0.2 ≦ Nb/V ≦ 0.8 …(2)
のいずれかに記載のロール外層材において更に、非粒状
炭化物を面積率で 3〜15%更に含有するものである。
のいずれかに記載の外層材と溶着一体化した普通鋳鉄又
はダクタイル鋳鉄の軸材とからなる複合ロールである。
のいずれかに記載の外層材と軸材の間に中間層を有し、
該中間層を介して外層材と軸材が溶着一体化してなる複
合ロールである。
ついて説明する。 C:1.5 〜3.5 % Cはロール外層材の耐摩耗性を向上する硬い炭化物を形
成するための必須元素で1.5 %以上必要であるが、3.5
%を越えると耐クラック性が著しく低下するため上限を
3.5 %とする。
が、1.5 %を越えると耐クラック性を低下するため上限
を1.5 %とする。
耐クラック性が低下するため好ましくなく上限を1.2 %
とする。
な元素で添加するが、12.0%を越えると本発明が対象と
するV,Nbを添加した場合には耐摩耗性が劣化するた
め上限を12.0%とする。尚、好適下限値は 4.0%であ
る。
有効であるとともに、基地の焼入性、焼もどし軟化抵抗
を向上し、基地組織の強化に有効であるため必要である
が、8.0 %を越えると耐クラック性が低下するため、上
限を8.0 %をする。尚、好適下限値は 2.0%である。
炭化物を形成するための必須元素で、その効果を発揮す
るためには3.0 %以上必要であるが、10.0%を越えると
耐クラック性の低下、製造上の問題を生じるため上限を
10.0%とする。
型炭化物を形成するのでVと複合添加するが、 7.0%を
越えると粗大な塊状炭化物となりその効果が得られない
だけでなく耐クラック性が問題となるので上限を 7.0%
とする。尚、好適下限値は0.6%である。
硬さに及ぼすC量との関係、及び遠心力鋳造したリング
材の炭化物分布に起因する外層、内層間の熱間摩耗比、
熱衝撃試験におけるクラックの最大深さとNb,Vの含
有量比Nb/Vとの関係を調べた結果をそれぞれ図2及
び図3に示す。
要な硬さHs 75以上を得るためには V+1.8 Nb≦7.5 C−6.0 (%) を満足する必要があることが明らかとなった。
0.4 %, Cr:6.8 %,Mo:2.9%を含有し、C,
V,Nbを変化させた溶湯を鋳造した25mmY−ブロック
について1050℃でオーステナイト化後、ベイナイト変態
させ、 550℃焼きもどし処理を施した試料を用いた。
合にも均一な外層材を得ることができ、且つ耐クラック
性が強く要求される場合には、 0.2 ≦ Nb/V ≦ 0.8 を満足する必要があることが明らかとなった。
層)」は、リング材の内層側から採取した試験片の摩耗
量(Iw)と外層側から採取した試験片の摩耗量(O
w)との比(Iw/Ow)であり、「熱衝撃クラック最
大深さ」は、熱衝撃試験で発生したクラックの最大深さ
である。
0.5 %,Mn:0.5 %,Cr:6.5%,Mo:2.8 %,
V: 5.2%,Nb:0 〜8.0 %を含有する溶湯を遠心力
鋳造(140 G)して得た肉厚100mm のリングサンプルに
ついて1050℃でオーステナイト化後、ベイナイト変態さ
せ、550 ℃焼もどし処理を施した試料を用いた。
とφ50×10の試験材の2円盤のすべり摩耗方式で相手材
を800 ℃に加熱し、荷重100kgfで圧接した状態で試験材
を800rpmで回転させ、すべり率3.9 %として120 分後の
摩耗減量を測定して行なった。
いるローラーに55×40×15の板状試験片を圧接する方式
で、荷重150kgf、接触時間15sの条件で行ない、試験片
に発生したクラック長さを測定した。
加するが、5.5 %を越えると残留γの存在等不安定な組
織を形成するため好ましくなく、上限を 5.5%とする。
尚、好適下限値は 0.5%である。
め添加するが、10.0%を越えるとその耐熱性向上効果が
飽和するため経済性の点から上限を10.0%とする。尚、
好適下限値は 1.0%である。
るため添加するが、Cuは2.0 %を越えるとロールの表
面性状を劣化するとともに耐摩耗性、耐クラック性を低
下するため上限を 2.0%とする。尚、Cuの好適下限値
は 0.5%である。Wは過剰に添加すると研削性を低下す
るとともに比重の大きな元素であり遠心鋳造を適用する
場合に遠心分離によるV系炭化物の偏析を助長するため
上限を2.0%とする。尚、Wの好適下限値は 0.5%であ
る。
B: 0.1%以下 Ti、Zr、Bはともに粗大な共晶炭化物の形成を抑制
し、耐摩耗性、耐クラック性を向上するため添加する
が、TiとZrは 2.0%を越えるとV、Nb複合炭化物
の形状を劣化し逆に耐摩耗性を低下するため上限を 2.0
%とする。尚、TiとZrの好適下限値は 0.1%であ
る。Bは 0.1%を越えると粒界に偏析して耐クラック性
を低下するので上限を 0.1%とする。尚、Bの好適下限
値は 0.001%である。
物量及び基地組織を限定した理由は以下の通りである。
研削性を兼備したロールを得るため種々の実験を行なっ
た。まず、基地組織と研削性との関係に着目し、図1を
得た。従来技術では耐摩耗性を得るためには基地組織を
マルテンサイトとすることが常識であり、マルテンサイ
ト組織を得ることが必須と考えられていた。ところがマ
ルテンサイト組織では、焼きもどしにより硬さを調整し
ても研削が非常に困難であった。これに対し、本発明で
は、基地組織をベイナイトとするとともに炭化物を制御
することにより研削性と耐摩耗性を同時に満足できるこ
とを初めて見出し、本発明の成立に至ったのである。
%以上がベイナイトとする。尚、基地組織がパーライト
になると研削性は良いが、硬さと耐摩耗性が著しく低下
する。また、基地組織がマルテンサイトでは研削性が悪
い。
4 %,Mn:0.4 %,Cr:6.5 %,Mo:3.1 %,
V: 5.2%,Nb:1.7 %を含有する溶湯を鋳造した25
mmY−ブロックについて1050℃でオーステナイト化後、
冷却速度を変化させて焼入れ組織をマルテンサイトとベ
イナイトの混合組織とした後、 550℃で焼もどし処理
し、硬さをショアー硬さでHs78 〜82に調整した試料を
用いた。
又はM4 C3 等で表されるVとNb系の炭化物で硬さが
高く、凝固時に晶出したものである。従って、その大き
さと量は溶湯の化学組成と凝固速度によって変化する。
本発明では、外層材中の上記粒状炭化物の平均粒径を 1
〜10μm とし、含有量は面積率で 1〜10%とする。粒径
が 1μm 未満又は面積率が 1%未満では十分な耐摩耗性
向上の効果がなく、粒径が10μm を越えるか又は面積率
が10%を越えると研削性が低下する。
M3 C、M6 C、M7 C3 等で表される成長した共晶炭
化物であり、外層材中の上記非粒状炭化物の含有量を、
面積率で 3〜15%とすることがより好適である。面積率
が 3%未満では耐摩耗性が低下し、また15%を越えると
耐クラック性、研削性が低下する。
トとするための熱処理条件は、例えば以下の如くであ
る。即ち、オーステナイト化後、ベイナイト変態開始温
度以下でマルテンサイト変態開始温度以上の温度まで急
冷し、その後保持又は徐冷する。但し、本発明は、以上
の熱処理条件に限定されるものではない。
心鋳造により製造することが好適である。但し、本発明
のロール外層材は、他の製法、例えば連続鋳掛け肉盛法
によっても製造できる。
K、U、V比較材A、L〜T)を遠心力鋳造により鋳造
し、肉厚100mm のリングサンプルを試作し、1050℃から
焼入れし、その 550℃にて焼きもどしを行なう熱処理で
ベイナイト主体の基地組織とした後、ショアー硬さ、熱
間摩耗及び熱衝撃試験を行なった。
側からそれぞれφ50×10の試験片を採取し、前記条件と
同一の方法で行なった。
り前記した板状試験片を採取し、同一の条件で行なっ
た。
2に示す。表2によれば、本発明材は従来のNi−グレ
ン材(A材)と比べ、硬さは同程度であるが、耐摩耗
性、耐クラック性ともに著しく向上していることが認め
られる。
れているため、L材は硬さが不足しているとともに外層
側の耐摩耗性が著しく低下し、M材はC量が過多である
ため非粒状共晶炭化物量が多く耐クラック性、研削性が
低下し、N材はSi量が過多であるため耐クラック性、
研削性が低下し、O材はMn量が過多であるため耐クラ
ック性が低下し、P材はCr量が過多であるため非粒状
共晶炭化物量が多く耐摩耗性、耐クラック性、研削性が
低下し、Q材はMo量が過多であるため耐クラック性が
低下し、R材はV量が不足しているため粒状炭化物量が
少なく耐摩耗性、耐クラック性が低下し、S材はV量が
過多であるため粒状炭化物量が多く耐クラック性、研削
性が低下し、T材はTi、B量が過多であるため耐摩耗
性、耐クラック性、研削性が低下している。
内層を有し、胴径 670mm、胴長1450mmの複合ロールを以
下に示す手順で製造した。低周波溶解炉にて外層材の溶
湯を溶解し、遠心力140Gで回転する遠心鋳造用鋳型内
に1490℃で厚さ75mmになるように鋳込んだ。外層材の鋳
込み後20分後に鋳型の回転を停止し、鋳型を直立させ、
外層材鋳込み後35分後に内層材溶湯を鋳込んだ。室温ま
で冷却後、鋳型を解体し、粗加工を行なった後、1050℃
から焼入れし、その後 550℃にて焼きもどしを行なう熱
処理を行なった。熱処理後超音波探傷等の検査を行なっ
たが、欠陥のない健全なロールであり、仕上げ加工後の
外層厚は45mmであり、表面硬さはショアー硬さで78〜82
であった。
プミル仕上げスタンドに使用した結果、図5に示すよう
に、従来のニッケルグレン鋳鉄ロールの使用成績を大き
く上回るものであった。また、ロール表面の肌荒れ等も
問題無く、良好な結果が得られた。
間層、及び内層を有し、図4に示す胴径 670mm、胴長14
50mmの複合ロールを以下に示す手順で製造した。低周波
溶解炉にて外層材の溶湯を溶解し、遠心力 140Gで回転
する遠心力鋳造用鋳型内に1490℃で厚さ75mmになるよう
に鋳込んだ。外層材が凝固した直後に中間層の溶湯を15
40℃で厚さ40mmになるように鋳込んだ。この中間層が完
全凝固した後に鋳型の回転を停止し、鋳型を直立させ、
外層材鋳込み後40分後に内層材溶湯を1450℃で鋳込ん
だ。室温まで冷却後、鋳型を解体し、粗加工を行なった
後、1050℃から焼入れし、その後550℃にて焼き戻しを
行なう熱処理を行なった。熱処理後超音波探傷等の検査
を行なったが、外層と中間層の境界及び中間層と内層と
の境界ともに欠陥は発生せず、内部性状も健全なロール
であり、仕上げ加工後の外層厚は45mmであり、表面硬さ
はショアー硬さで78〜82であった。
プミル仕上げスタンドに使用した結果、図5に示すよう
に、従来のニッケルグレン鋳鉄ロールの使用成績を大き
く上回るものであった。また、ロール表面の肌荒れ等も
問題無く、良好な結果が得られた。
経済性の優れた遠心力鋳造法を適用しても、偏析等の生
じない耐摩耗性と耐クラック性及び研削性に優れたロー
ル外層材及び複合ロールを得ることができる。
の関係を示す線図である。
さに及ぼす影響を示す線図である。
起因する外層と内層間の熱間摩耗比と、熱衝撃試験にお
けるクラック最大深さに及ぼすNbとVの含有量比Nb
/Vの影響を示す線図である。
である。
機ミルでの圧延成績を従来ロールのそれと比較して示す
線図である。
Claims (6)
- 【請求項1】 C:1.5 〜 3.5%,Si:1.5 %以下,
Mn:1.2 %以下,Cr:12.0%以下,Mo:8.0 %以
下,V:3.0 〜10.0%,Nb:7.0 %以下を含有し、残
部Fe及び不可避的不純物よりなり、粒径 1μm 〜10μ
m の粒状炭化物を面積率で 1〜10%含有し、基地組織の
85%以上がベイナイトであることを特徴とするロール外
層材。 - 【請求項2】 Ni:5.5 %以下,Co:10.0%以下,
Cu:2.0 %以下,W:2.0 %以下,Ti:2.0 %以
下,Zr:2.0 %以下,B:0.1 %以下の1種又は2種
以上を更に含有する請求項1に記載のロール外層材。 - 【請求項3】 下記(1) 式と(2) 式を満足する V+ 1.8Nb ≦ 7.5 C−6.0(%) …(1) 0.2 ≦ Nb/V ≦ 0.8 …(2) 請求項1又は2に記載のロール外層材。
- 【請求項4】 非粒状炭化物を面積率で 3〜15%更に含
有する請求項1〜3のいずれかに記載のロール外層材。 - 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の外層材
と溶着一体化した普通鋳鉄又はダクタイル鋳鉄の軸材と
からなる複合ロール。 - 【請求項6】 請求項1〜4のいずれかに記載の外層材
と軸材の間に中間層を有し、該中間層を介して外層材と
軸材が溶着一体化してなる複合ロール。
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- 1992-06-04 JP JP16830092A patent/JP2715223B2/ja not_active Expired - Fee Related
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