JP2024042197A - 熱間圧延用ロール外層材、その製造方法、熱間圧延用複合ロールおよびその製造方法 - Google Patents

熱間圧延用ロール外層材、その製造方法、熱間圧延用複合ロールおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、優れた耐摩耗性および耐疲労性を有し、且つ耐焼付き性にも優れた熱間圧延用ロール外層材とその製造方法および熱間圧延用複合ロールとその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】特定の成分組成を有し、下記A群およびB群からそれぞれ一つ以上選択される炭化物を有する炭化物複合体が分散することを特徴とする熱間圧延用ロール外層材。A群:M2C型炭化物、M6C型炭化物、MC型炭化物B群:M7C3型炭化物、M23C6型炭化物【選択図】なし

Description

本発明は、熱間圧延用ロール外層材、その製造方法、熱間圧延用複合ロールおよびその製造方法に係り、とくに、鋼板の熱間仕上げスタンド用ワークロールとして好適な熱間圧延用ロール外層材とその製造方法、熱間圧延用複合ロールおよびその製造方法に関する。
近年、鋼板の熱間圧延技術の進歩につれてロールの使用環境は苛酷化しており、また、高強度鋼板や薄肉品など圧延負荷の大きな鋼板の生産量も増加している。このため、圧延用ワークロールに要求される品質レベルが高くなっており、熱間圧延設備における仕上げ圧延スタンド用ワークロールとしては、耐肌荒れ性、耐摩耗性、耐疲労性や耐焼付き性に優れた、高性能なロールが求められている。
熱間仕上げ圧延機の後段スタンドには、耐焼付き性に優れたグレン系鋳鉄材または高合金グレン系鋳鉄材を外層材とするワークロールが用いられている。熱間仕上げ圧延機の後段スタンドで発生する圧延トラブルとして、絞りトラブルが挙げられる。絞りトラブルは、被圧延材の端部が折れ重なってロール間に噛み込む現象である。絞りトラブルが発生すると、被圧延材がロール表面に焼付き、ロールに大きな熱的および機械的な負荷が発生して、ロール表面にクラックが発生したり、ロール表面が欠けたりすることがある。このようなクラックは、1mm以上の深さになることもあり、ロール表面を研削してクラックを除去する作業が必要となるため、作業コストの増大およびロールの短寿命化といった問題がある。そのため、絞りトラブルが発生しても、クラックが発生・進展し難い熱間圧延用ワークロールが求められている。
このような熱間圧延用ワークロールの外層材として、例えば、特許文献1には、質量%で、C:3.0%を超えて4.0%以下、Si:3.0%以下、Ni:2.3~5.5%、Cr:1.0~2.0%、V:0.3~10.0%、Ti:0.01~2.0%を含有し、残部Feおよび不純物元素からなり、金属組織中に黒鉛とMC系炭化物を有し、黒鉛の球状化率が0.5以上であることを特徴とする圧延用ロール外層材が提案されている。特許文献1では、黒鉛の形状を微細な球状にするとともに、黒鉛が金属組織中に均一に分散され、耐摩耗性、耐肌荒れ性および耐事故性が向上するとしている。
また、特許文献2には、質量%で、C:3.0~4.5%、Si:0%を超えて2.0%以下、Mn:0%を超えて1.5%以下、Ni:3.0~5.0%、Cr:1.4~4.0%、Mo:0.1~1.5%、V:0%を超えて3.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素からなり、C、Si、Crが、4.0%≦C+Si/3+Cr/7.5≦5.5%であり、外層の圧延に供される周面の金属組織は、セメンタイトの面積率が40%以上46%未満であることを特徴とする圧延用複合ロールが提案されている。特許文献2では、硬質なセメンタイトが多量に存在するため、耐摩耗性、耐肌荒れ性に優れた圧延用複合ロールとなるとしている。
また、特許文献3には、外層が質量基準で、C:1~3%、Si:0.3~3%、Mn:0.1~3%、Ni:0.5~5%、Cr:1~7%、Mo:2.2~8%、V:4~7%、N:0.005~0.15%、B:0.05~0.2%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、中間層が0.025~0.15質量%のBを含有し、中間層のB含有量が前記外層のB含有量の45~80%であり、中間層の炭化物形成元素の合計含有量が前記外層の炭化物形成元素の合計含有量の45~90%であることを特徴とする圧延用複合ロールが提案されている。特許文献3では、耐焼付き性に寄与する組織としてMnSおよび炭ホウ化物を挙げており、これらにより耐焼付き性に優れた圧延用複合ロールとなるとしている。
特開2005-177808号公報 特開2018-75638号公報 特許第6973416号公報
高級鋼板の製造または熱間圧延の生産性向上の観点から、熱間圧延の圧延環境は年々厳しくなっており、より高品質な熱間圧延用ワークロールが求められている。特に、優れた耐摩耗性および耐疲労性を有しながら、絞りトラブルに遭遇した際に鋼板が焼付きにくい耐焼付き性にも優れる熱間圧延用ロールが求められており、特許文献1および2で製造された圧延用複合ロールには黒鉛が生成するため、耐摩耗性が十分であるとは言い難い。また、特許文献3で製造された圧延用複合ロールにはBが多量に含まれるため、Bが中間層および内層に混入し、中間層および内層が脆化する可能性がある。
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、優れた耐摩耗性および耐疲労性を有し、且つ耐焼付き性にも優れた熱間圧延用ロール外層材とその製造方法および熱間圧延用複合ロールとその製造方法を提供することを目的とする。
グレン系鋳鉄材または高合金グレン系鋳鉄材を外層材とする熱間圧延用ロールは、金属組織中に黒鉛を含有することで絞りトラブルに遭遇しても被圧延材が焼付きにくく、クラックの発生・進展を抑えている。耐焼付き性を向上させるために黒鉛の面積率を増加させる方法が有効であるが、黒鉛が炭化物や基地に比べて軟質であるため、耐摩耗性が低下するという問題がある。一方、ハイス系鋳鉄材または高合金白鋳鉄材を外層材とする熱間圧延用ロールは、金属組織中に多量の炭化物が存在し、優れた耐摩耗性を有するが、耐疲労性および耐焼付き性はグレン系鋳鉄材に劣る。そこで、本発明者らは、耐摩耗性、耐疲労性および耐焼付き性に優れるロール外層材について鋭意検討を行った。その結果、MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物の中から1種以上の炭化物と、M型炭化物およびM23型炭化物の中から1種以上の炭化物とを互いに隣接して生成させることで耐摩耗性、耐疲労性および耐焼付き性に優れた熱間圧延用ロール外層材を得ることができるという従来にない知見を得た。
本発明は上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
[1] 質量%で、
C:1.5~2.3%、
Si:0.3~2.0%、
Mn:0.3~2.0%、
Cr:3.5~7.0%、
Mo:3.0~6.0%、
V:3.0~5.0%、
Nb:0.1~2.0%、
Al:0.01~0.10%、
Ni:0.02~2.00%、
N:0.050%以下、
を含有し、
あるいは、さらに、
Ti:0.50%以下、
B:0.090%以下、
Co:1.0%以下、
W:1.5%以下、
Zr:0.50%以下、
のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、
残部Feおよび不可避的不純物からなり、
Cr、Mo、W、V、Nbの含有量が下記(1)式および(2)式を満足する成分組成を有し、
且つ、下記A群およびB群からそれぞれ一つ以上選択される炭化物を有する炭化物複合体が分散することを特徴とする熱間圧延用ロール外層材。
0.85≦%Cr/(%Mo+%W/2)≦1.15 ・・・ (1)
(%Cr+%Mo+%W)/(%V+%Nb)≧2.2・・・ (2)
ここで、%Cr、%Mo、%W、%V、%Nbは各元素の含有量(質量%)であり、含有しない元素は0とする。
A群:MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物
B群:M型炭化物、M23型炭化物
[2] 前記炭化物複合体が面積率で、2.0%以上であることを特徴とする[1]に記載の熱間圧延用ロール外層材。
[3] 遠心鋳造用鋳型の回転軸に垂直な断面において遠心鋳造用鋳型の回転軸を中心として点対称とならない部分を有する非軸対称の遠心鋳造用鋳型を用いて、前記成分組成の溶湯を鋳込み、[1]または[2]に記載の熱間圧延用ロール外層材を形成することを特徴とする熱間圧延用ロール外層材の製造方法。
[4] 外層、内層の2層以上を有する熱間圧延用複合ロールであって、前記外層が[1]または[2]に記載の熱間圧延用ロール外層材からなることを特徴とする熱間圧延用複合ロール。
[5] 前記[3]に記載の熱間圧延用ロール外層材の製造方法により得られた外層材を用いることを特徴とする熱間圧延用複合ロールの製造方法。
本発明によれば、耐摩耗性、耐疲労性および耐焼付き性に優れた熱間圧延用ロール外層材が得られ、ロール寿命の向上や圧延品質の向上等に寄与する。
図1は、遠心鋳造用鋳型の回転軸を中心として軸対称な遠心鋳造用鋳型の一例を示す概略側面図である。 図2は、遠心鋳造用鋳型の回転軸を中心として非軸対称な遠心鋳造用鋳型の一例を示す概略側面図である。 図3は、リング状試験材からEBSD測定用試験片を採取する位置を模式的に示す図である。 図4は、落重式摩擦熱衝撃試験で使用した試験機の構成を模式的に示す図である。 図5は、熱間摩耗試験で使用した試験機の構成、熱間摩耗試験用試験片(摩耗試験片)を模式的に示す図である。 図6は、熱間摩耗試験用試験片(摩耗試験片)から断面観察用試験片を採取する位置を模式的に示す図である。
まず、本発明の熱間圧延用複合ロールの外層(外層材)の組成限定理由について説明する。なお、以下、質量%は、とくに断らない限り、単に%と記す。
C:1.5~2.3%
Cは、固溶して基地の硬さを増加させるとともに、炭化物形成元素と結合し硬質炭化物を形成し、その結果、ロール外層材の耐摩耗性を向上させる作用を有する。C含有量が1.5%未満では、炭化物量が不足するため、耐摩耗性が低下する。このため、C含有量は1.5%以上とする。C含有量は1.6%以上が好ましい。一方、2.3%を超える含有は、炭化物の粗大化や共晶炭化物量を過度に増加させ、疲労亀裂の発生・成長を促進し、深いヒートクラックの形成等に起因して耐疲労性を低下させ、また、炭化物量の増加による残留応力の増大により、ロール製造中または圧延使用中にロールが折損する可能性がある。このため、C含有量は2.3%以下に限定する。なお、好ましくは、2.2%以下である。
Si:0.3~2.0%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、溶湯の鋳造性を向上させる元素である。また、Siは基地中に固溶して、基地を強化する作用がある。このような効果を得るためには、0.3%以上の含有を必要とする。Si含有量は好ましくは0.4%以上である。一方、2.0%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となり、さらには、基地組織を脆化させ、耐疲労性が劣化する場合もある。このため、Si含有量は2.0%以下に限定する。なお、好ましくは、1.8%以下である。
Mn:0.3~2.0%
Mnは、SをMnSとして固定し、Sを無害化する作用を有するとともに、一部は基地組織に固溶し、焼入れ性を向上させる効果を有する元素である。また、Mnは基地中に固溶して、基地を強化(固溶強化)する作用がある。このような効果を得るためには、0.3%以上の含有を必要とする。Mn含有量は好ましくは0.4%以上である。一方、2.0%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり、さらには材質を脆化する場合もある。このため、Mn含有量は2.0%以下に限定する。なお、好ましくは、1.7%以下である。
Cr:3.5~7.0%
Crは、Cと結合して主に共晶炭化物(M型炭化物、M23型炭化物)を形成し、耐摩耗性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、3.5%以上の含有を必要とする。Cr含有量は好ましくは3.8%以上である。一方、7.0%を超える含有は、粗大な共晶炭化物が増加するため、耐疲労性を低下させる。このため、Cr含有量は7.0%以下に限定する。なお、好ましくは、6.5%以下である。
Mo:3.0~6.0%
Moは、Cと結合して硬質な炭化物(MC型炭化物、MC型炭化物)を形成し、耐摩耗性を向上させる元素である。また、Moは、V、NbとCが結合した硬質なMC型炭化物中に固溶して、炭化物を強化するとともに、共晶炭化物中にも固溶し、それら炭化物の破壊抵抗を増加させる。このような作用を介してMoは、ロール外層材の耐摩耗性を向上させる。このような効果を得るためには、3.0%以上の含有を必要とする。Mo含有量は好ましくは3.5%以上である。一方、6.0%を超える含有は、粗大な共晶炭化物を形成させ、耐疲労性を低下させる。このため、Mo含有量は6.0%以下に限定する。なお、好ましくは、5.0%以下である。
V:3.0~5.0%
Vは、ロールとしての耐摩耗性と耐疲労性とを兼備させる元素である。Vは、極めて硬質な炭化物(MC型炭化物)を形成し、耐摩耗性を向上させる元素である。このような効果は、3.0%以上の含有で顕著となる。このため、V含有量は3.0%以上とする。V含有量は好ましくは3.3%以上である。一方、5.0%を超える含有は、MC型炭化物を粗大化させ、耐焼付き性を低下させる。このため、V含有量は5.0%以下に限定する。なお、好ましくは、4.7%以下である。
Nb:0.1~2.0%
Nbは、MC型炭化物に固溶してMC型炭化物を強化し、MC型炭化物の破壊抵抗を増加させる作用を介し、耐摩耗性を向上させる。また、NbはMC型炭化物の遠心鋳造時の偏析を抑制する作用を併せ有する。このような効果は、0.1%以上の含有で顕著となる。このため、Nb含有量は0.1%以上とする。Nb含有量は好ましくは0.2%以上である。一方、含有量が2.0%を超えると、粗大なMC型炭化物が形成され、耐焼付き性を悪化させる。このため、Nb含有量は2.0%以下に限定する。なお、好ましくは、1.8%以下である。
Al:0.01~0.10%
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、ポロシティ等の内部欠陥を防止する作用を有する。このような効果は、0.01%以上の含有で顕著となる。このため、Al含有量は0.01%以上とする。Al含有量は好ましくは0.02%以上である。一方、0.10%を超えて含有すると、粗大なAl系酸化物が形成され、耐疲労性が低下する。そのため、Al含有量は、0.10%以下に限定する。なお、好ましくは0.09%以下である。
Ni:0.02~2.00%
Niは、基地中に固溶し、熱処理中のオーステナイトの変態温度を低下させ、基地の焼入れ性を向上させる元素である。このような効果は、0.02%以上の含有で顕著となる。Ni含有量は好ましくは0.05%以上である。2.00%を超えて含有すると、オーステナイトの変態温度が低くなりすぎて、熱処理後にオーステナイトが残留しやすくなる。オーステナイトが残留すると、耐摩耗性が劣化する。そのため、Ni含有量は、2.00%以下に限定する。なお、焼入れ性の観点から、好ましくは、1.80%以下である。
N:0.050%以下
Nは、原料および溶解・鋳造の工程において大気中から混入する元素であり、0.050%を超えて含有すると、粗大な窒化物が形成して耐疲労性が低下する。そのため、N含有量は、0.050%以下に限定する。好ましくは0.045%以下である。
残部はFeおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、S、P、Cu、Ca、Sb、Zr、Oが挙げられる。これらは、原料や溶解中に耐火物等から混入する。
上記した成分以外に、Ti:0.50%以下、B:0.090%以下、Co:1.0%以下、W:1.5%以下およびZr:0.50%以下のいずれか1種または2種以上を含有しても良い。
Ti:0.50%以下
Tiは、溶湯中の酸素と結びついて酸化物を作りやすい元素であり、この酸化物が核となって炭化物を基地中に微細・均一に形成させる作用を有している。このような作用を介して、耐摩耗性の向上に寄与する。このような効果は、0.50%以下の含有で顕著となる。そのため、Ti含有量は、0.50%以下に限定する。好ましくは、Ti含有量は0.40%以下である。また、このような効果を得るためには、Tiは0.01%以上含有することが好ましく、さらに好ましくは0.02%以上である。
B:0.090%以下
Bは、基地中に固溶し基地の焼入れ性を向上させる元素である。このような効果は、0.090%以下の含有で顕著となる。0.090%を超えて含有すると、ホウ炭化物が形成して焼入れ性向上効果が飽和し、耐疲労性も低下する。また、Bが中間層や内層に混入すると、中間層や内層を脆化させる場合がある。そのため、B含有量は、0.090%以下に限定する。好ましくは0.080%以下であり、より好ましくは0.070%以下である。なお、焼入れ性の観点から、B含有量は、0.001%以上含有することが好ましく、より好ましくは0.002%以上である。
Co:1.0%以下
Coは、基地中に固溶し、基地の硬さを上昇させることで耐摩耗性を向上させる作用を有する元素である。このような効果は、1.0%以下の含有で顕著となる。1.0%を超えて含有しても、効果が飽和してしまい、経済的に不利となる。そのため、Co含有量は、1.0%以下に限定する。好ましくは0.9%以下である。なお、このような効果を得るためには、Coは0.1%以上含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2%以上である。
W:1.5%以下
Wは、基地中に固溶し、基地を強化して耐肌荒れ性を向上させる作用を有する元素であり、且つMC型炭化物またはMC型炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる。一方、1.5%を超えて含有すると、効果が飽和するだけでなく、粗大なMC型炭化物またはMC型炭化物が形成され、疲労摩耗が顕著に生じ、耐摩耗性を低下させる。以上のことから、W含有量は1.5%以下とする必要がある。W含有量は、好ましくは1.2%以下である。
Zr:0.50%以下
ZrはCと結合してMC型炭化物を形成する元素であり、耐摩耗性を向上させる。一方、0.50%を超えて含有すると、効果が飽和するだけでなく、粗大なMC型炭化物が形成され、耐疲労性を低下させる。以上のことから、Zr含有量は0.50%以下とする必要がある。Zr含有量は好ましくは0.30%以下である。
本発明の熱間圧延用ロール外層材の成分組成は下記(1)式および(2)式を満足することが必要である。
0.85≦%Cr/(%Mo+%W/2)≦1.15 ・・・ (1)
(%Cr+%Mo+%W)/(%V+%Nb)≧2.2・・・ (2)
ここで、%Cr、%Mo、%W、%V、%Nbは各元素の含有量(質量%)であり、含有しない元素は0とする。
上記(1)式および(2)式を満足することで耐摩耗性、耐疲労性および耐焼付き性に優れた熱間圧延用ロール外層材を得ることが可能となる。具体的にいうと、(%Cr/(%Mo+%W/2))が0.85未満ではMC型炭化物の量が増加し、M型炭化物が形成されにくくなるため、後述するような炭化物複合体が形成されなくなるため、0.85以上とする必要がある。好ましくは0.88以上である。一方、(%Cr/(%Mo+%W/2))が1.15超えではM型炭化物の量が増加し、MC型炭化物が形成されにくくなるため、後述するような炭化物複合体が形成されなくなるため、1.15以下とする必要がある。好ましくは1.12以下である。また、((%Cr+%Mo+%W)/(%V+%Nb))が2.2未満ではMC型炭化物の量が増加し、M型炭化物およびMC型炭化物が形成されにくくなることで、後述する炭化物複合体の量が好適範囲を外れるため、2.2以上とする必要がある。好ましくは2.3以上である。上限は特に限定されるものではないが、3.8以下であることが好ましい。
また、本発明の熱間圧延用ロール外層材は、A群(MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物)から少なくとも一つ以上選択される炭化物およびB群(M型炭化物、M23型炭化物)から少なくとも一つ以上選択される炭化物を有する、炭化物複合体として形成しているものを母材組織中に分散させることが必要である。炭化物複合体が分散すると、耐焼付き性を大きく向上させることが可能となる。上記の炭化物複合体が存在すると、MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物、M型炭化物、M23型炭化物に隣接する基地の面積が減少し、炭化物複合体があたかも一つの粗大な炭化物のような形態で形成されるため、耐焼付き性を向上させることが可能である。単一の炭化物を粗大に形成させて耐焼付き性を向上させる場合、耐疲労性が低下するが、炭化物複合体を形成させることで耐焼付き性と耐疲労性を両立することが可能となる。特に、炭化物複合体が面積率で2.0%以上であると、焼付き性が著しく向上する。そのため、炭化物複合体が面積率で2.0%以上とすることが好ましい。
本発明において、炭化物複合体とは、A群(MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物)から少なくとも一つ以上選択される炭化物およびB群(M型炭化物、M23型炭化物)から少なくとも一つ以上選択される炭化物が、隣接しているものを指す。特に限定されるものではないが、A群から少なくとも一つ以上選択される炭化物(MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物)とB群(M型炭化物、M23型炭化物)から少なくとも一つ以上選択される炭化物が隣接するとは、両者の炭化物が互いに接触している状態を指すが、接触していなくても、A群から少なくとも一つ以上選択される炭化物(MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物)とB群(M型炭化物、M23型炭化物)から少なくとも一つ以上選択される炭化物の間の最短距離が2μm以下であれば、接触しているのと同等の効果が得られる。また、これらの炭化物が特定の位置に集積しているのではなく、組織全体に均等に分散していることが好ましい。さらに、一つの炭化物複合体の大きさは円相当径に換算して10μm以上、150μm以下であることが好ましい。なお、本発明の熱間圧延用ロール外層材には、上記炭化物複合体以外に、炭化物複合体を形成していない炭化物(MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物、M型炭化物、M23型炭化物がそれぞれ単独で分散している)も存在する。
炭化物複合体の判定は、SEM/EBSD法の測定結果をもとに評価することが可能である。ここでは、以下に記載の方法で評価を行うことができる。
SEM/EBSD法の測定は、熱間圧延用ロール外層材の円周方向の任意の5か所から採取した試験片について、ロール表面側を研磨した後、加速電圧15kV、倍率150倍、ステップサイズ0.5μmで600×600μmの領域で行う。EBSD測定で得られたEBSDパターンについて、MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物、M型炭化物、M23型炭化物の内、どの炭化物と最も良く一致するかをEBSD測定装置のソフトウェア(例えば、株式会社TSLソリューションズ製のOIM Data Collection)で解析する。
得られた結果を用いて、A群(MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物)に属する炭化物を赤色、B群(M型炭化物、M23型炭化物)に属する炭化物を青色、上記以外の相を黒色、隣接する測定データとの方位差が15°以上の境界を白色で表示した組織画像を得る。上記した組織画像の処理は、SEM/EBSD法の測定で得られたデータをEDAX社製のOIM Analysisを用いて解析することで得られる。この組織画像を用いて、白色の線を境に赤色の領域と青色の領域が隣り合っている場合において、赤色の領域と青色の領域を併せた領域を炭化物複合体とする。
炭化物複合体の面積率は、上記の手法で抽出された炭化物複合体の面積C(μm)を測定し、SEM/EBSD法の測定面積(600×600μm)で除した、C/(600×600)×100%の計算式で算出することができ、円周方向5か所の平均の面積率をその試験片の面積率とする。
また、粗大なMC型炭化物が生成すると焼付きが生じやすくなるため、MC型炭化物のサイズは円相当径で30μm以下が好ましく、より好ましくは25μm以下である。
本発明の熱間圧延用ロール外層材において、基地(炭化物以外の組織)は面積率で90%以上がベイナイトおよび/または焼戻しマルテンサイトであることが好ましい。ベイナイトおよび/または焼戻しマルテンサイトの割合が面積率で90%未満であると、耐摩耗性や耐疲労性が低下する。残部組織としては、オーステナイト、フェライト、パーライトが挙げられる。
つぎに、本発明の熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロールの製造方法について説明する。
熱間圧延用ロール外層材を鋳造する場合、まず、鋳型の内面に耐火物を1~5mm厚で被覆したのち、鋳型を所定の回転数で回転させ、上記した熱間圧延用ロール外層材の成分組成の溶湯(単に外層材溶湯と称する)を、所定の肉厚となるように注湯し、遠心鋳造する。なお、上記の耐火物には例えばジルコンを主材とした耐火物が挙げられる。
中間層を形成する場合には、外層材の凝固途中あるいは完全に凝固したのち、鋳型を回転させながら、中間層組成の溶湯を注湯し、遠心鋳造することが好ましい。外層あるいは中間層が完全に凝固したのち、鋳型の回転を停止し鋳型を立ててから、内層材を静置鋳造して、複合ロールとすることが好ましい。これにより、ロール外層材の内面側が再溶解され外層と内層、あるいは外層と中間層、中間層と内層とが溶着一体化した複合ロールとなる。
中間層を形成する場合は、中間層材として、黒鉛鋼、高炭素鋼、亜共晶鋳鉄等を用いることが好ましい。中間層と外層とは同じように一体溶着されており、外層材溶湯が中間層材溶湯へ10~35%の範囲で混入する。内層への外層成分の混入量を抑える観点から、外層と中間層の溶着を阻害しない範囲で、外層成分の中間層への混入量はできるだけ低減しておくことが肝要となる。なお、外層材溶湯が中間層材溶湯に混入する割合は、外層材溶湯の全体量に対して、中間層材溶湯を注湯したことで再溶解した外層材の量((中間層材溶湯を注湯したことで再溶解した外層材の量)/(外層材溶湯の全体量)×100%)で算出することができる。
以上より、外層、内層の2層以上を有する熱間圧延用複合ロールを得ることができる。特に、外層、中間層、内層の3層構造または外層、内層の2層構造を有する熱間圧延用複合ロールを得ることが好ましい。
図1は、従来技術である、遠心鋳造用鋳型の回転軸を中心として軸対称な遠心鋳造用鋳型の一例を示す概略側面図であり、図2は、本発明である遠心鋳造用鋳型の回転軸を中心として非軸対称な遠心鋳造用鋳型の一例を示す概略側面図である。図1において、1は軸対象の遠心鋳造用鋳型、2aはローラー、3aは回転軸、5aは溶湯供給管である。図2において、4は非軸対象の遠心鋳造用鋳型、2bはローラー、3bは回転軸、5bは溶湯供給管である。
従来の遠心鋳造法では、図1に示すように、遠心鋳造用鋳型の回転軸3aを中心として軸対称の遠心鋳造用鋳型1に溶湯供給管5aから前記外層材溶湯を注ぎ、外層を形成させる。本発明の熱間圧延用ロール外層材の製造では、図2に示すように、非軸対称の遠心鋳造用鋳型4の回転軸3bを中心として非軸対称の遠心鋳造用鋳型4に溶湯供給管5bから外層材溶湯を注ぎ、ロール外層材を形成させることが必要である。遠心鋳造用鋳型4の回転軸を中心として点対称とならない部分を有する非軸対称の遠心鋳造用鋳型4を回転させると、遠心鋳造用鋳型4の重心が回転軸を通らないため、遠心鋳造用鋳型4に振動が生じる。そのため、当該鋳型に外層材溶湯を鋳込むことで、凝固中の外層材溶湯に振動を付与することができ、固体の再配列が生じる結果、MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物の中から1種以上の炭化物と、M型炭化物またはM23型炭化物の中から1種以上の炭化物とが隣接する領域である、炭化物複合体を形成するようになる。さらに、鋳型の振動によって基地組織が微細になり、絞りトラブルが発生しても、クラックが発生・進展しにくくなり、耐クラック性に優れた熱間圧延用ロール外層材を得ることができる。なお、鋳型の振動の有無は、後述するようにレーザー距離計(変位計)等を用いてレーザー距離計と鋳型外表面の間の距離を計測することによって測定することができる。
遠心鋳造法では、遠心鋳造用鋳型と接するローラーを回転させて遠心鋳造用鋳型を回転させるため、遠心鋳造用鋳型のローラーと接する箇所の形状は遠心鋳造用鋳型を回転させるうえで重要である。そのため、非軸対称の遠心鋳造用鋳型4を用いる場合であっても、遠心鋳造用鋳型4のローラー2bと接する箇所の形状は軸対称であることが必要であり、遠心鋳造用鋳型4のローラー2bと接していない箇所の形状が非軸対称となるようにする。
遠心鋳造用鋳型4に発生する振動の大きさ(振幅)は、レーザー距離計(変位計)等を用いてレーザー距離計と鋳型外表面の間の距離を計測することによって測定することができ、本発明の効果を得るためには、遠心鋳造用鋳型4が回転軸3bの垂直方向に100μm以上変位するような振動を付与することが必要である。このような振動が発生するように、遠心鋳造用鋳型4の形状を決定する。レーザー距離計等で遠心鋳造用鋳型4の振動の振幅を正確に測定するため、振動の振幅を測定する位置は、遠心鋳造用鋳型4が回転軸3bを中心として軸対称の位置であることが必要である。例えば、図1または図2において、ローラー2aまたは2bの延長線上の位置にレーザー距離計を設置し、レーザー距離計と鋳型外表面間の距離を測定する。測定された距離データのうち、最大値と最小値の差を振動の振幅とする。なお、遠心鋳造用鋳型4の回転数によって振動の振幅の値が変化するため、振動の振幅を測定する場合は、遠心鋳造を行う回転数で鋳型を回転させた状態で行うことが好ましい。遠心鋳造用鋳型4に発生する振動の振幅を正確に評価するため、レーザー距離計と鋳型外表面の間の距離を測定する場合には、サンプリング周期を0.1s以下とすることが好ましい。また、鋳型外表面の表面粗さが振動の振幅の値に影響する可能性が有るため、非軸対称の鋳型の振動の振幅を測定する場合は、軸対称の鋳型と鋳型外表面の表面粗さが同一になるように機械加工することが必要である。
本発明の熱間圧延用複合ロールは、鋳造後、熱処理(焼入れ、焼戻し)を施すことが好ましい。熱処理は、900~1100℃に加熱し空冷あるいは衝風空冷する焼入れ工程と、さらに450~570℃に加熱保持した後、冷却(空冷、衝風空冷、炉冷)する焼戻し工程を2回以上行うことが好ましい。あるいは、鋳造後、焼入れを行わず、400~520℃に加熱保持した後、冷却(空冷、衝風空冷、炉冷)する焼戻し工程を2回以上行っても良い。
なお、本発明の熱間圧延用複合ロールにおける外層材表面の好ましい硬さは、75~86HS(ショア硬さ)である。75HSよりも硬さが低いと、耐摩耗性が劣化しやすくなるため、75HS以上が好ましい。より好ましくは76HS以上である。逆に硬さが86HSを超えると、熱間圧延中に熱間圧延用ロール表面に形成されたクラックを研削により除去し難くなる。より好ましい硬さは85HS以下である。
本発明の熱間圧延用ロール外層材は、遠心鋳造法により製造され、そのままリングロール、スリーブロールとすることもできるが、熱間仕上げ圧延スタンド用として好適な、熱間圧延用複合ロールの外層材として適用される。また、本発明の熱間圧延用複合ロールは、外層と、該外層と溶着一体化した内層とからなる。なお、外層と内層との間に中間層を配してもよい。すなわち、外層と溶着一体化した内層に代えて、外層と溶着一体化した中間層および該中間層と溶着一体化した内層としてもよい。本発明では、中間層の組成はとくに限定されないが、C:1.5~3.0質量%の高炭素材とすることが好ましい。
表1の試験鋼No.1~27に示すロール外層材溶湯を高周波誘導炉で溶解し、遠心鋳造法により、リング状試験材6(外径250mm、内径170mm、奥行き70mm)を作製した。遠心鋳造用鋳型には、遠心鋳造用鋳型の厚みを周方向で1~5mm変化させて作製した非軸対称の遠心鋳造用鋳型を用いた。なお、当該鋳型の内径は250mmであり、鋳型厚みを周方向で変化させているため、鋳型の外径が周方向で変化している。遠心鋳造用鋳型は円盤状の鋼材(外径350mm)に固定され、円盤状の鋼材を介してモーターと接続されている。円盤状の鋼材の中心と回転軸は一致しており、円盤状の鋼材の外表面からおよそ10mm離れた位置にレーザー距離計を設置し、サンプリング周期0.1sで円盤状の鋼材とレーザー距離計の間の距離を測定し、遠心鋳造用鋳型の振動の振幅を測定した。外層材溶湯を鋳込む前にレーザー距離計で測定した遠心鋳造用鋳型の振動の振幅((レーザー距離計で測定されたレーザー距離計と遠心鋳造用鋳型の間の距離の最大値)-(レーザー距離計で測定されたレーザー距離計と遠心鋳造用鋳型の間の距離の最小値))は202μmであった。
鋳込み温度は1420℃、リング状試験材外表面における遠心力は重力倍数で120Gとした。鋳造後、1000℃から焼入れ、510℃の焼戻し処理を3回行った。得られたリング状試験材から、硬さ試験片、EBSD測定用試験片、落重式摩擦熱衝撃試験片および熱間摩耗試験片を採取して、硬さ試験、EBSD測定、落重式摩擦熱衝撃試験および熱間摩耗試験を実施した。基準材(従来例であり、比較鋼である)として、表1の試験鋼No.28に示す成分について、軸対称の遠心鋳造用鋳型を用いて、リング状試験材を作製し、鋳造後、950℃から焼入れ、500℃で焼戻し処理を2回行った。外層材溶湯を鋳込む前にレーザー距離計で測定した遠心鋳造用鋳型の振動の振幅は58μmであった。
硬さ試験は次の通りとした。リング状試験材6の任意の位置から20×20×10mmの硬さ試験片を採取した(10mmはリング状試験材の半径方向である)。得られた硬さ試験片について、20×20mmの面を硬さ測定面とし、JIS Z 2244の規定に準拠して、ビッカース硬さ計(試験力:50kgf(490N))でビッカース硬さHV50を測定し、JIS B 7731の換算式で換算ショア硬さVHS(HS)を算出した。なお、測定点は各10点とし、最高値、最低値を削除した8点の平均値を算出し、その試験材の硬さとした。
EBSD測定は、次の通りとした。図3に示すように、リング状試験材6の外表面から10mm内部の位置から10×10×5mm(5mmはリング状試験材の半径方向である)のEBSD測定用試験片7を5個採取した。得られた試験片について、10×10mmの面を鏡面研磨後に加速電圧15kV、倍率150倍、ステップサイズ0.5μmで、600×600μmの領域のEBSD測定を行った。なお、EBSD測定前に、MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物、M型炭化物、M23型炭化物が測定されるように、株式会社TSLソリューションズ製のOIM Data Collectionの設定を行った。得られたデータをEDAX社製のOIM Analysisを用いて画像処理を行い、A群(MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物)に属する炭化物を赤色、B群(M型炭化物、M23型炭化物)に属する炭化物を青色、上記以外の相を黒色、隣接する測定データとの方位差が15°以上の境界を白色で表示した組織画像を得た。この組織画像を用いて、白色の線を境に赤色の領域と青色の領域が隣り合っている場合、赤色の領域と青色の領域を併せた領域を炭化物複合体と判定し、600×600μmの領域内の炭化物複合体の面積C(μm)を算出した。炭化物複合体の面積率は、面積CをSEM/EBSD法の測定面積(600×600μm)で除した、C/(600×600)×100%の計算式で算出し、5個の試験片の平均の面積率を、その試験材の面積率とした。
落重式摩擦熱衝撃試験方法は次の通りとした。得られたリング状試験材6から落重式摩擦熱衝撃試験片12(30×20×20mm)を採取した。落重式摩擦熱衝撃試験は、図4に示すように、高さ1mの位置にある重錘8(50kg)をラック9に落下させた時のエネルギーを利用して軟鋼製の相手片10を取り付けたピニオン11を回転させ、試験片12に相手片10を強く擦り付けた。試験後の試験片表面の写真を撮影し、相手片10が付着した面積と相手片10が接触した面積をそれぞれ測定し、焼付き面積率(=(相手片10が付着した面積)/(相手片10が接触した面積)×100%)を算出して、耐焼付き性を評価した。焼付き面積率が45%未満の時に「〇」とし、耐焼付き性は合格と判断した。
熱間摩耗試験は次の通りとした。得られたリング状試験材6から熱間摩耗試験片13(外径60mmφ、肉厚10mm)を採取した。
熱間摩耗試験は、図5に示すように、試験片13と相手片16との2円盤転がりすべり方式で行った。試験片13を冷却水14で水冷しながら700rpmで回転させ、回転する該試験片13に、高周波誘導加熱コイル15で800℃に加熱した相手片(材質:S45C、外径:190mmφ、幅:15mm、C1面取り)16を荷重490Nで接触させながら、すべり率:9%で120分間転動させた。試験後の試験片13の摩耗量(試験前の摩耗試験片の外周13Aと試験後の摩耗試験片の外周13Bから算出)を測定し、従来技術で製造したNo.28を基準とし、基準値に対する各試験片の摩耗量の比を、摩耗比(=(基準片の摩耗量)/(各試験片の摩耗量))を算出して耐摩耗性を評価した。耐摩耗性は、摩耗比が1.0倍以上の時に「〇」とし、耐摩耗性は合格と判断した。
耐疲労性は熱間摩耗試験で評価した。得られたリング状試験材6から熱間摩耗試験片13(外径60mmφ、肉厚10mm)を採取した。熱間摩耗試験は、図5に示すように、試験片13と相手片16との2円盤転がりすべり方式で行った。試験片13を冷却水14で水冷しながら10rpmで回転させ、回転する該試験片13に、高周波誘導加熱コイル15で1000℃に加熱した相手片(材質:S45C、外径:190mmφ、幅:15mm、C1面取り)16を荷重980Nで接触させながら、すべり率:5%で240分間転動させた。図6に示すように、試験後の試験片の任意の3か所から断面観察用試験片17を採取し、各断面観察用試験片のいずれか一つの切断面を鏡面研磨したのち光学顕微鏡で観察を行い、熱間摩耗試験片13の表面(相手片16との接触面)に形成されたクラック18の深さを測定した。なお、試験片の端部に存在するクラック18は試験片材質ではなく試験片形状に起因して発生したものであるため、クラック18の一部分あるいはクラック全体が試験片両側1mmの範囲に含まれる場合は、当該クラック18を測定対象から除外した。最大のクラック深さが1.2mm未満の時に「〇」とし、耐疲労性は合格と判断した。
総合評価は、耐摩耗性、耐疲労性および耐焼付き性がともに「〇」である場合を合格とした。
Figure 2024042197000001
Figure 2024042197000002
表2より、本発明例は従来技術の比較例No.28と同等以上の耐摩耗性を有しながら、優れた耐疲労性および耐焼付き性を有していることが分かる。
比較例のNo.11はCの含有量が本発明の範囲を下回っていたため、硬さが低下し、摩耗比が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.12はSiの含有量が本発明の範囲を下回っていたため、摩耗比が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.13はMnの含有量が本発明の範囲を下回っていたため、摩耗比が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.14はVの含有量が本発明の範囲を下回っていたため、MC型炭化物の量が減少したと考えられる。その結果、摩耗比が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.15はVの含有量が本発明の範囲を上回っていたため、粗大なMC型炭化物が形成されたと考えられ、焼付き面積率が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.16はCrの含有量が本発明の範囲を下回っていたため、耐焼付き性が所望の値に達しなかった。また、炭化物の全体量が減少したと考えられ、摩耗比が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.17はCrの含有量が本発明の範囲を上回っていたため、最大クラック深さが所望の値に達しなかった。
比較例のNo.18はMoの含有量が本発明の範囲を下回っていたため、耐焼付き性が所望の値に達しなかった。また、炭化物の量が減少したため、摩耗比が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.19はMoの含有量が本発明の範囲を上回っていたため、最大クラック深さおよび焼付き面積率が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.20はNiの含有量が本発明の範囲を下回っていたため、焼入れ性が不足し、摩耗比が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.21はNiの含有量が本発明の範囲を上回っていたため、オーステナイトが多量に残留して硬さが低下し、摩耗比が所望の値に達しなかった。また、硬さの低下によって、落重式摩擦熱衝撃試験を行った時に落重式摩擦熱衝撃試験片の表面が僅かに変形したと考えられる。その結果、焼付き面積率も所望の値に達しなかった。また最大クラック深さも所望の値に達しなかった。
比較例のNo.22はNbの含有量が本発明の範囲を下回っていたため、摩耗比が所望の値に達しなかった。また最大クラック深さも所望の値に達しなかった。
比較例のNo.23はNbの含有量が本発明の範囲を上回っていたため、粗大なMC型炭化物が形成され、焼付き面積率が所望の値に達しなかった。また最大クラック深さも所望の値に達しなかった。
比較例のNo.24はWの含有量が本発明の範囲を上回っていたため、最大クラック深さおよび耐焼付き性が所望の値に達しなかった。また、粗大なMC型炭化物およびMC型炭化物が形成されたため、摩耗比が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.25は(2)式が本発明の範囲を下回っていたため、耐焼付き性が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.26はTiの含有量が本発明の範囲を上回っていたため、粗大なTi系炭化物が形成され、耐焼付き性が所望の値に達しなかった。また最大クラック深さも所望の値に達しなかった。
比較例のNo.27は(1)式が本発明の範囲を上回っていたため、耐焼付き性が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.28は(1)式および(2)式が本発明の範囲外であり、耐焼付き性が所望の値に達しなかった。また最大クラック深さも所望の値に達しなかった。
したがって、本発明によれば、耐摩耗性、耐疲労性および耐焼付き性に優れた熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロールを製造することが可能となる。その結果、被圧延材の表面品質の著しい向上およびロール寿命の向上を達成できるという効果もある。
1 遠心鋳造用鋳型(軸対称)
2a、2b ローラー
3a、3b 回転軸
4 遠心鋳造用鋳型(非軸対称)
5a、5b 溶湯供給管
6 リング状試験材
7 EBSD測定用試験片
8 重錘
9 ラック
10 相手片
11 ピニオン
12 落重式摩擦熱衝撃試験片
13 熱間摩耗試験片(試験片)
13A 試験前の摩耗試験片の外周
13B 試験後の摩耗試験片の外周
14 冷却水
15 高周波誘導加熱コイル
16 相手片
17 断面観察用試験片
18 クラック

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:1.5~2.3%、
    Si:0.3~2.0%、
    Mn:0.3~2.0%、
    Cr:3.5~7.0%、
    Mo:3.0~6.0%、
    V:3.0~5.0%、
    Nb:0.1~2.0%、
    Al:0.01~0.10%、
    Ni:0.02~2.00%、
    N:0.050%以下、
    を含有し、
    あるいは、さらに、
    Ti:0.50%以下、
    B:0.090%以下、
    Co:1.0%以下、
    W:1.5%以下、
    Zr:0.50%以下、
    のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、
    残部Feおよび不可避的不純物からなり、
    Cr、Mo、W、V、Nbの含有量が下記(1)式および(2)式を満足する成分組成を有し、
    且つ、下記A群およびB群からそれぞれ一つ以上選択される炭化物を有する炭化物複合体が分散することを特徴とする熱間圧延用ロール外層材。
    0.85≦%Cr/(%Mo+%W/2)≦1.15 ・・・ (1)
    (%Cr+%Mo+%W)/(%V+%Nb)≧2.2・・・ (2)
    ここで、%Cr、%Mo、%W、%V、%Nbは各元素の含有量(質量%)であり、含有しない元素は0とする。
    A群:MC型炭化物、MC型炭化物、MC型炭化物
    B群:M型炭化物、M23型炭化物
  2. 前記炭化物複合体が面積率で、2.0%以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延用ロール外層材。
  3. 遠心鋳造用鋳型の回転軸に垂直な断面において遠心鋳造用鋳型の回転軸を中心として点対称とならない部分を有する非軸対称の遠心鋳造用鋳型を用いて、前記成分組成の溶湯を鋳込み、請求項1または2に記載の熱間圧延用ロール外層材を形成することを特徴とする熱間圧延用ロール外層材の製造方法。
  4. 外層、内層の2層以上を有する熱間圧延用複合ロールであって、前記外層が請求項1または2に記載の熱間圧延用ロール外層材からなることを特徴とする熱間圧延用複合ロール。
  5. 請求項3に記載の熱間圧延用ロール外層材の製造方法により得られた外層材を用いることを特徴とする熱間圧延用複合ロールの製造方法。
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