JPH1143735A - 耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材 - Google Patents

耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材

Info

Publication number
JPH1143735A
JPH1143735A JP21554197A JP21554197A JPH1143735A JP H1143735 A JPH1143735 A JP H1143735A JP 21554197 A JP21554197 A JP 21554197A JP 21554197 A JP21554197 A JP 21554197A JP H1143735 A JPH1143735 A JP H1143735A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
graphite
cast iron
iron material
test
crystallized
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP21554197A
Other languages
English (en)
Inventor
Yutaka Tsujimoto
豊 辻本
Yoshito Seto
良登 瀬戸
Takeru Morikawa
長 森川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kubota Corp
Original Assignee
Kubota Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kubota Corp filed Critical Kubota Corp
Priority to JP21554197A priority Critical patent/JPH1143735A/ja
Publication of JPH1143735A publication Critical patent/JPH1143735A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Reduction Rolling/Reduction Stand/Operation Of Reduction Machine (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 圧延用複合ロールの外層材として使用される
黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材について、高耐摩耗性を確保す
ると共に、耐肌荒れ性のの向上を図る。 【解決手段】 本発明のハイス系鋳鉄材は、重量%に
て、C:1.8〜3.6%、Si:1.0〜3.5%、M
n:0.1〜2.0%、Cr:2.0〜10.0%、Mo:
0.1〜10.0%、W:0.1〜10.0%、V、Nbの
一種又は二種を合計量で1.5〜10.0%、ランタノイ
ド元素群の中の少なくとも一種を合計量で0.21〜2.
0%含有し、残部Fe及び不可避の不純物からなる。必
要に応じて、前記合金成分の他に、Co:0.5〜10.
0%、及び/又はAl:0.01〜0.50%、Ti:
0.01〜0.50%、Zr:0.01〜0.50%のうち
一種又は二種以上、及び/又はB:0.01〜0.50%
を含有することができる。組織中に晶出する黒鉛は、平
均粒径が約10μm以下、面積率は約0.1〜7%であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧延用複合ロール
の外層材として好適な黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材に関す
る。
【0002】
【従来の技術】圧延用複合ロールの外層材として、従来
より、硬度が高く耐摩耗性にすぐれるハイス系鋳鉄が使
用されている。ハイス系鋳鉄材のこの高硬度特性は、晶
出する炭化物の寄与によるものであるが、炭化物は炭素
量が多いことから、一方では比較的脆いという性質があ
る。このため、熱間圧延のように、ロール表面に対して
熱負荷による昇温と降温が繰り返されると、鋳鉄基地と
炭化物の熱膨張率の相違から、比較的脆い炭化物は、ミ
クロ的な欠け落ちを生じ易い。この炭化物のミクロ的な
欠け落ち摩耗は、ロール表面の肌荒れの原因になり、圧
延製品の表面性状を悪化させる不都合がある。
【0003】ところで、黒鉛は、摩擦係数を小さくし、
衝撃荷重を緩和する作用があり、炭化物のミクロ的な欠
け落ちを抑制する効果を有する。そこで、出願人は、圧
延用複合ロールの外層材として、Cr、Mo、V、N
b、W等の高硬度複合炭化物形成元素を含有すると共
に、黒鉛化促進元素であるSiを所定量含有したハイス
系鋳鉄材を以前に提案した(特開平6−256888号
公報)。この鋳鉄材は、複合炭化物と黒鉛が晶出した組
織を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の黒鉛晶
出ハイス系鋳鉄材では、炭化物のミクロ的な欠け落ちは
大幅に抑制されたものの、圧延時に黒鉛周辺部が優先的
に摩耗する問題があった。黒鉛自体が摩耗すると、ロー
ル表面の耐肌荒れ性向上は期待できなくなる。本発明者
らは、従来の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材の場合、晶出する
黒鉛の平均粒径が約20〜50μmと比較的大きいこと
に着目し、黒鉛の粒径を微細化することができれば、黒
鉛の摩耗を可及的に抑制できるのではないかと考え、本
発明に至った。
【0005】本発明の目的は、高硬度複合炭化物と黒鉛
を組織中に有するハイス系鋳鉄材において、晶出する黒
鉛を微細化することにより耐肌荒れ性を向上させると共
に、高温ですぐれた耐摩耗性を確保することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1に記載した本発明の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄
材は、重量%にて、C:1.8〜3.6%、Si:1.0
〜3.5%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:2.0〜1
0.0%、Mo:0.1〜10.0%、W:0.1〜10.
0%、V、Nbの一種又は二種を合計量で1.5〜10.
0%、ランタノイド元素群の中の少なくとも一種を合計
量で0.21〜2.0%を含有し、残部Fe及び不可避の
不純物からなる。
【0007】本発明の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材は、必要
に応じて、前記合金成分の他に、Co:0.5〜10.0
%、及び/又はAl:0.01〜0.50%、Ti:0.
01〜0.50%、Zr:0.01〜0.50%のうち一
種又は二種以上、及び/又はB:0.01〜0.50%を
含有することができる。なお、組織中に晶出する黒鉛
は、平均粒径が約10μm以下、面積率は約0.1〜7
%であり、望ましくは平均粒径が約2〜8μm、面積率
は約2〜4%である。
【0008】
【作用】本発明の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材は、Cr、M
o、W、Ta、Nb、V、Fe及びCが相互に結合した
高硬度の複合炭化物が基地中に存在しており、常温及び
高温における硬度が高く、耐摩耗性にすぐれている。本
発明の鋳鉄材に含まれるランタノイド元素は、晶出した
黒鉛を微細化する作用がある。また、初晶オーステナイ
ト中でのMC型炭化物の晶出量を減らす一方で、共晶領
域でのMC型炭化物の量を増やす働きがあり、特に高温
で高硬度が得られるので、高温での耐摩耗性が向上す
る。本発明の鋳鉄材は、組織中に、微細な黒鉛が所定量
晶出しているので、圧延用複合ロールの外層材として使
用されたとき、黒鉛の作用によって衝撃荷重が緩和さ
れ、炭化物のミクロ的な欠け落ちが抑制される効果を有
する。また、黒鉛の平均粒径が微細化されているため、
黒鉛を起点とした摩耗は著しく軽減され、すぐれた耐肌
荒れ性を発揮する。
【0009】本発明の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材は、Co
の含有によって基地が強化され、Al、Ti、Zrの含
有によって凝固組織が一層微細化され、またBの含有に
よって焼入れ性が向上する。
【0010】
【成分限定理由の説明】
C:1.8〜3.6% Cは、主としてFe及びCrと結合してM73型の高硬
度複合炭化物を形成すると共に、Mo、V、Nb、Wな
どと結合して、MC型、M6C型、M2C型等の高硬度複
合炭化物を形成する。また、後述の黒鉛化促進元素であ
るSiの作用により、また熱処理により微細な黒鉛とな
って組織中に析出する。1.8%に満たないと炭化物量
が減少すると共に好適な黒鉛量が得られなくなり、一方
含有量が3.6%を超えると炭化物量及び黒鉛量が過多
となり、材質が脆くなる傾向があるため、Cの含有量
は、1.8〜3.6%に規定する。
【0011】Si:1.0〜3.5% Siは、湯流れ性の確保及び黒鉛を晶出・析出させるた
めに必要な元素である。含有量が1.0%に満たない
と、所望の効果が得られない。一方、3.5%を超える
と黒鉛量が過多となり、黒鉛を起点とする摩耗が著しく
なる虞れがある。このため、含有量は1.0〜3.5%に
規定する。なお、黒鉛の晶出を促進するには、鋳込み前
のSi量を上記成分範囲よりも少なめにしておいて、鋳
込み時に接種を行ない、最終製品の成分で上記範囲内に
調整するのが好ましい。
【0012】Mn:0.1〜2.0% Mnは、硬化能を増す働きがある。また、Sと結合して
MnSを生成し、Sによる脆化を防止するのに有効な元
素である。一方、含有量が多くなりすぎると靭性の低下
を招くため、含有量は0.1〜2.0%に規定する。
【0013】Cr:2.0〜10.0% Crは、Fe、Mo、V、Nb、Wなどと共にCと結合
して、高硬度複合炭化物を形成し高温における耐摩耗性
の向上に寄与する。また、一部は基地中に固溶して焼入
れ性及び耐摩耗性を改善する。含有量が2.0%に満た
ないとその効果が少なく、一方10.0%を超えると好
適な黒鉛量を得ることが困難となる。このため、含有量
は2.0〜10.0%に規定する。
【0014】Mo:0.1〜10.0% Moは、Fe、Cr、V、Nb、Wなどと共にCと結合
して、主としてM7C型、M6C型、M2C型の複合炭化
物を形成し、常温及び高温硬度を高めて耐摩耗性の向上
に寄与する。また、MoはWに比較して少量添加でその
効果を発揮する。しかし、0.1%未満ではその効果を
十分に得られず、一方、10.0%を超えると好適な黒
鉛量が得られなくなり、好ましくない。このため、含有
量は、0.1〜10.0%に規定する。
【0015】W:0.1〜10.0% Wも同様に、Fe、Cr、Mo、V、Nbなどと共にC
と結合して、複合炭化物を形成し、常温及び高温硬度を
高めて耐摩耗性の向上に寄与する。このため、少なくと
も0.1%以上含有させる。一方、あまりに多く含有す
ると、好適な黒鉛量を得ることが困難になる。このた
め、上限は10.0%に規定する。
【0016】V、Nb:一種又は二種を合計量で1.5
〜10.0% VとNbは、Fe、Cr、Mo、Wなどと共にCと容易
に結合して、主としてMC型の炭化物を形成し、常温及
び高温硬度を高めて耐摩耗性の向上に寄与する。また、
このMC型炭化物は、厚さ方向に枝状に生成するから、
基地の塑性変形を抑制し、機械的性質、さらには耐クラ
ック性の向上にも寄与する。このため、V及び/又はN
bを1.5%(両方を含む場合は合計量)以上含有させ
る。一方、あまりに多く含有すると、炭化物が偏析を起
こし易くなり、所定の黒鉛量を得ることが難しくなる。
このため、V及び/又はNbの上限は10.0%(両方を
含む場合は合計量)に規定する。
【0017】ランタノイド元素:少なくとも一種を合計
量で0.21〜2.0% ランタノイド元素とは、原子番号57から71までの1
5種類の希土類元素、La、Ce、Pr、Nd、Pm、
Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Y
b、Luを意味し、各元素は外側の電子配置が類似して
おり、互いによく似た性質を有している。La、Ce、
Nd、Prなどのランタノイド元素は、晶出した黒鉛を
微細化する作用があり、炭化物のミクロ的な欠け落ちを
抑制して、ロール表面の耐肌荒れ性の向上に極めて有効
である。また、初晶オーステナイト中でのMC型炭化物
の晶出量を減らす一方、共晶領域でのMC型炭化物の量
を増やす働きがあり、特に高温での硬度を高める作用が
あり、高温での耐摩耗性を向上させる。これらの効果を
発揮させるために、La、Ce、Nd、Prなどのラン
タノイド元素は、少なくとも0.21%(複数種類を含有
するときは合計量で)以上含有させるものとするが、0.
25%以上がより望ましく、0.3%以上がさらに望ま
しい。しかし、含有量があまり多くなると、介在物が増
えて材料の清浄度が低下し、鋳造欠陥の原因となる虞れ
がある。このため、上限は2.0%(複数種類を含有する
ときは合計量で)に規定するが、清浄度の点からは1.8
%以下がより望ましく、1.6%以下がさらに望まし
い。ところで、鋳鉄材の溶製に際しては、ランタノイド
元素の原料として、通常はミッシュメタルが使用され
る。ミッシュメタルを使用する場合、ランタノイド元素
は、CeとLaが約60〜80%を占め、残部にはN
d、Prを含む他、微量のPm、Sm、Eu、Gd、T
bなどが含まれる。なお、ランタノイド元素は溶湯の粘
性を高める効果もある。圧延用複合ロールを鋳造する場
合、一般的には遠心力鋳造を用いて行われるが、溶湯中
の粘性が高くなると、遠心分離による重量偏析が少なく
なるため、ロールの外層表面側での層状偏析が軽減され
る利点を有する。
【0018】請求項1に記載された本発明のハイス系鋳
鉄材は、上記成分を含有し、残部はFe及び不可避的に
混入する不純物からなる。例えば、P、Sは原料より不
可避的に混入するが、材質を脆くするので少ない程好ま
しく、P:0.2%以下、S:0.1%以下にするのがよ
い。本発明の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材は、必要に応じ
て、前記合金成分の他に、Co:0.5〜10.0%、及
び/又はAl:0.01〜0.50%、Ti:0.01〜
0.50%、Zr:0.01〜0.50%のうち一種又は
二種以上、及び/又はB:0.01〜0.50%を含有す
ることができる。
【0019】Co:0.5〜10.0% Coは、基地を改善する上で大きな効果がある。Coは
Cの拡散を抑制する特殊な作用があり、炭化物形成には
無関係に基地に固溶して強靱性を増すと共に、高温硬度
を高めて耐摩耗性の向上に寄与する。また、炭化物生成
元素のオーステナイト中への固溶量を増大させるため、
基地の硬度と焼戻し抵抗が増大する。このため、必要に
応じて0.5%以上含有させる。しかし、10.0%を超
えて含有してもその効果は飽和し、経済的に不利であ
る。このため、必要に応じて含有させる場合でも、上限
は10.0%とする。
【0020】Al、Ti、Zr:各々0.01〜0.50
% Al、Ti、Zrは、溶湯中で酸化物を生成して、溶湯
中の酸素含有量を低下させ、製品の健全性を向上させる
と共に、生成した酸化物が結晶核として作用するために
凝固組織の微細化に効果がある。このため、必要に応じ
て、一種又は二種以上を含有することが望ましい。各元
素は、含有量が0.01%に満たないと、その効果は十
分でなく、一方、0.50%を超えて含有すると介在物
となって残留し、好ましくない。なお、Al、Ti、Z
rの添加は、前述のように主として鋳造組織の微細化に
よる耐摩耗性改善のために添加されるものであり、単に
脱ガスを目的として添加されるものではない。
【0021】B:0.01〜0.50% Bは、溶湯中の酸素と結合して脱酸効果を示す。その
他、生成した酸化物を核とする凝固組織の微細化効果、
及び基地中に溶け込んだBによる焼入れ性の改善効果を
有する。圧延ロールのような大質量の鋳物の場合、冷却
温度を速くすることが困難な場合があるが、Bの添加に
より、焼入れ性の増大により良好な焼入れ組織を得易く
なる。このため、必要に応じて含有させるものとする
が、含有量が0.01%に満たないとその効果が十分で
なく、一方0.50%を超えると材質が脆くなり好まし
くない。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明のハイス系鋳鉄材は、外層
が中実状内層又は円筒状内層に、溶着又は焼き嵌めされ
た二層複合ロール、あるいは外層と内層との間に中間層
を鋳造形成した三層複合ロールの外層材として好適に使
用される。内層材として、高級鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、
黒鉛鋼等の強靱性を有する材料が使用され、中間層材と
してアダマイト材が使用される。中実複合ロールは、金
型遠心力鋳造法により外層、必要に応じて中間層を鋳造
した後、その内部に内層が静置鋳造することにより作製
できる。スリーブ状のロールの場合、内層も遠心力鋳造
により作製される。遠心力鋳造法には、金型の回転軸が
水平方向の横型、斜め方向の傾斜型、鉛直方向の縦型の
各種の方法を用いることができる。また、遠心力鋳造法
以外にも、公知の連続肉盛溶接法(Continuous Pouring
Process)を用いることもできる。
【0023】本発明のハイス系鋳鉄材を外層に用いた複
合ロールの場合、鋳造後、外層に所定の熱処理が施され
る。例えば、オーステナイト化温度から650〜400
℃までの温度域を100℃/Hr以上の冷却速度で急冷
し、良好な焼入れ組織を得た後、500〜600℃の温
度で1回乃至数回の焼戻しが行なわれる。
【0024】
【実施例】高周波誘導溶解炉にて、表1に示す各種成分
組成の合金溶湯を溶製し、遠心力鋳造に付して供試用の
中空円筒体を得た。遠心力鋳造時の金型回転数はGナン
バーが140、鋳込み温度は1355℃であり、 得ら
れた供試材は外径240mm、内径140mm、長さ200
mmである。次に、各供試材を1050℃で1時間加熱
し、600℃/Hrの冷却速度で焼入れし、520℃で
10時間の焼戻しを3回繰り返した。表1中、供試No.
1〜No.11は本発明の実施例、No.11はCe、Laを
全く含まない比較例、No.12はCeとLaの含有量が
本発明の規定よりも少ない比較例である。なお、本発明
の実施例中、Pm、Sm、Eu、Gd、Tbを含有する
ものがあるが、その量は極く微量であるため、測定対象
から除外している。
【0025】◎
【表1】
【0026】各供試材より組織観察用の試料を採取し、
ミクロ組織を顕微鏡観察し、晶出黒鉛の平均粒径と面積
率を測定した。その結果を表2に示す。実施例No.2と
比較例No.21の供試材については、それらの金属組織
を顕微鏡写真(×400)により、夫々、図1及び図2に
示す。図1と図2の顕微鏡写真の中で、黒く見えるのが
黒鉛である。図1の供試材No.2はCeとLaを合計量
で1.95%含有しているのに対し、図2の供試材No.2
1はCeとLaを全く含有しておらず、これらの比較か
ら、CeとLaの含有により黒鉛が微細化されることが
わかる。
【0027】次に、各試料を1100℃で1時間保持し
た後、強制空冷により焼入れし、その後540℃で10
時間の熱処理を3回繰り返した後、ロックウエル硬度計
のCスケールで表面硬度を測定した。その結果を表2に
併せて示す。
【0028】表面の肌荒れ状態は次の要領にて調べた。
まず、各円筒体から供試用のリングを軸心に直交する方
向に切り出し、該リングを1100℃で1時間保持した
後、強制空冷により焼入れし、その後540℃で10時
間の焼戻しをする熱処理を3回繰り返した。熱処理後、
試験用リングの外径と内径の機械加工仕上げを行ない、
図3に示す高温摩耗試験装置を用いて、試験用リングに
摩耗を生じさせた後、表面粗さを測定した。
【0029】図3において、摩耗試験装置は、下段に試
験ロール(1)、上段に外径が試験ロール(1)よりも大きい
加圧ロール(2)が互いに反対方向に回転可能に配備され
た構成であり、加圧ロール(2)を試験ロール(1)に押し当
てつつ回転駆動させると、直径差により試験ロール(1)
がスリップしながら回転するようにしたものである。試
験ロール(1)は、軸(11)の胴部(12)に試験用リング(13)
が固定されており、加圧ロール(2)は、軸(21)の胴部(2
2)に加圧リング(23)が固定され、加圧リング(23)の幅方
向中央部には周方向に突条(24)が形成されている。加圧
ロール(2)の上半分は、突条(24)を囲むように高周波コ
イル(3)(図3では仮想線で示す)が配備され、試験中、
加圧ロール(2)の突条(24)は加熱される。試験ロール(1)
には、冷却水管(4)を通じて冷却用の水が吹き付けられ
る。なお、試験ロール(1)の胴部(12)の外径は70mm、
試験リング(13)の外径は210mmである。加圧ロール
(2)は、加圧リング(23)の材質がSS41、突条(24)は
外径230mm、幅5mmである。試験中、加圧ロール(1)
に対して3トンの荷重が負荷された。軸(21)の回転速度
は50rpm、回転時間は60分である。上記の要領にて
試験用リング(13)の表面に摩耗を生じさせた後、、表面
粗度計(サーフコム590A−3D、株式会社東京精密
製)を用いて、夫々の試験用リング(13)の表面粗さを測
定した。測定は、試験用リング(13)の摩耗を生じた円周
表面の任意の4箇所につき、長さ3mm亘って測定した。
第1位置乃至第4位置の測定結果及びそれらの平均値を
表2に併せて示す。
【0030】◎
【表2】
【0031】表2の結果から明らかなように、本発明の
供試材No.1〜No.12は、比較例の供試材No.21〜No.
22と比べて、500℃の温度で高硬度を具えているこ
とがわかる。これは、Cr、Mo、W、V及び/又はN
b等の高硬度複合炭化物形成元素とLa、Ce、Nd、
Prなどのランタノイド元素の含有による相乗効果によ
り、高硬度複合炭化物の共晶領域が増大したためと推測
される。高温における高硬度を具えた鋳鉄材は、圧延用
複合ロールの外層材として使用されたとき、ロール表面
は高温圧延材との接触による摩耗抵抗性が大きく、すぐ
れた耐摩耗性を発揮する。
【0032】表2はまた、発明例の供試材No.1〜No.1
1は、比較例のNo.21及びNo.22と比べて、黒鉛の平
均粒径は微細であることを示している。これも、La、
Ce、Nd、Prなどのランタノイド元素の含有効果に
よるものと考えられる。なお、黒鉛の微細化効果とし
て、本発明の供試材No.1〜No.11は、比較例の供試材
No.21及びNo.22よりも、表面粗さが良好であること
を示している。このように、本発明のハイス系鋳鉄材
は、圧延用複合ロールの外層材として使用されたとき、
ロール表面の耐肌荒れ性にすぐれることがわかる。ま
た、適量に晶出した黒鉛は、耐焼付性の点でも良好であ
る。
【0033】
【発明の効果】本発明の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材は、晶
出黒鉛が微細であり、高温において高い硬度を具えてい
る。従って、本発明の鋳鉄材を外層として用いた複合ロ
ールは、圧延に際して、非常にすぐれた耐摩耗性と耐肌
荒れ性を発揮し、熱間圧延あるいは冷間圧延用の圧延用
複合ロールの外層材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】供試材表面の肌荒れ状況を調べるために使用さ
れ、高温条件下で供試材表面に摩耗を生じさせる摩耗試
験装置の説明図である。
【図2】発明例である供試材No.2の金属組織を示す図
面代用顕微鏡写真(×400)である。
【図3】比較例である供試材No.21の金属組織を示す
図面代用顕微鏡写真(×400)である。
【符号の説明】
(1) 試験ロール (2) 加圧ロール (3) 高周波コイル (4) 冷却水管 (13) 試験用リング (24) 突条
【手続補正書】
【提出日】平成9年8月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正内容】
【0031】表2の結果から明らかなように、本発明の
供試材No.1〜No.11は、比較例の供試材No.21〜No.
22と比べて、500℃の温度で高硬度を具えているこ
とがわかる。これは、Cr、Mo、W、V及び/又はN
b等の高硬度複合炭化物形成元素とLa、Ce、Nd、
Prなどのランタノイド元素の含有による相乗効果によ
り、高硬度複合炭化物の共晶領域が増大したためと推測
される。高温における高硬度を具えた鋳鉄材は、圧延用
複合ロールの外層材として使用されたとき、ロール表面
は高温圧延材との接触による摩耗抵抗性が大きく、すぐ
れた耐摩耗性を発揮する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】発明例である供試材No.2の金属組織を示す図
面代用顕微鏡写真(×400)である。
【図2】比較例である供試材No.21の金属組織を示す
図面代用顕微鏡写真(×400)である。
【図3】供試材表面の肌荒れ状況を調べるために使用さ
れ、高温条件下で供試材表面に摩耗を生じさせる摩耗試
験装置の説明図である。
【符号の説明】 (1) 試験ロール (2) 加圧ロール (3) 高周波コイル (4) 冷却水管 (13) 試験用リング (24) 突条

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%にて、C:1.8〜3.6%、S
    i:1.0〜3.5%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:
    2.0〜10.0%、Mo:0.1〜10.0%、W:0.
    1〜10.0%、V、Nbの一種又は二種を合計量で1.
    5〜10.0%、ランタノイド元素群の中の少なくとも
    一種を合計量で0.21〜2.0%、残部Fe及び不可避
    の不純物からなり、耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイ
    ス系鋳鉄材。
  2. 【請求項2】 Co:0.5〜10.0%を含有している
    請求項1に記載の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材。
  3. 【請求項3】 Al:0.01〜0.50%、Ti:0.
    01〜0.50%、Zr:0.01〜0.50%のうち一
    種又は二種以上を含有している請求項1又は2に記載の
    黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材。
  4. 【請求項4】 B:0.01〜0.50%を含有している
    請求項1乃至3の何れかに記載の黒鉛晶出ハイス系鋳鉄
    材。
JP21554197A 1997-07-24 1997-07-24 耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材 Withdrawn JPH1143735A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP21554197A JPH1143735A (ja) 1997-07-24 1997-07-24 耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP21554197A JPH1143735A (ja) 1997-07-24 1997-07-24 耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH1143735A true JPH1143735A (ja) 1999-02-16

Family

ID=16674147

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP21554197A Withdrawn JPH1143735A (ja) 1997-07-24 1997-07-24 耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH1143735A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2475558C1 (ru) * 2012-01-12 2013-02-20 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
EP2660344A1 (en) 2012-05-04 2013-11-06 Akers AB Centrifugally cast roll for last finishing stands in hot strip mills
CN107287495A (zh) * 2017-07-17 2017-10-24 西安工业大学 一种耐磨食品机械材料及其制备方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2475558C1 (ru) * 2012-01-12 2013-02-20 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
EP2660344A1 (en) 2012-05-04 2013-11-06 Akers AB Centrifugally cast roll for last finishing stands in hot strip mills
WO2013164469A1 (en) 2012-05-04 2013-11-07 Åkers AB Centrifugally cast roll for last finishing stands in hot strip mills
CN107287495A (zh) * 2017-07-17 2017-10-24 西安工业大学 一种耐磨食品机械材料及其制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR930009983B1 (ko) 내마모 복합롤 및 그 제조방법
JP3766202B2 (ja) 耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材
JP2000160277A (ja) 複合ロール
JPH09209073A (ja) H型鋼圧延ロール用複合スリーブ
JP3268210B2 (ja) 黒鉛を有するハイス系鋳鉄材
JP3751433B2 (ja) 高温での耐摩耗性にすぐれるハイス系鋳鉄材
JP3892141B2 (ja) 黒鉛と燐化鉄を有するハイス系鋳鉄材
JP2835259B2 (ja) 黒鉛を有するハイス系鋳鉄材及び複合ロール
JP3268238B2 (ja) 耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材
JPH1143735A (ja) 耐肌荒れ性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材
JP2000178675A (ja) 複合ロール
JP2601746B2 (ja) 遠心鋳造製スリーブロールとその製造方法
JP2002161331A (ja) 遠心鋳造製圧延用複合ロールの外層材
JP2002088445A (ja) 複合ロール
JP2835260B2 (ja) 黒鉛を有するハイス系鋳鉄材及び複合ロール
JP3746610B2 (ja) 高温での耐摩耗性にすぐれるハイス系鋳鉄材
JP3280270B2 (ja) 熱間圧延用ロール
JP3155398B2 (ja) 複合ロール
JP3002313B2 (ja) 複合ロール
JPH1177118A (ja) H型鋼圧延用複合スリーブ
JP2974822B2 (ja) 遠心力鋳造複合ロール
JP3358664B2 (ja) 複合ロール
JP3219987B2 (ja) 耐肌荒性にすぐれる黒鉛晶出ハイス系鋳鉄材
JP2986236B2 (ja) 強靱な内層を備えた複合ロール
JP2003183766A (ja) 熱間加工用工具材

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20041005