JP3892141B2 - 黒鉛と燐化鉄を有するハイス系鋳鉄材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間圧延用複合ロールの外層材として好適なハイス系鋳鉄材に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間圧延用ロールとして、圧延使用層である外層を耐焼付性及び耐摩耗性にすぐれたハイス系鋳鉄材で形成し、内層を強靭性にすぐれる鉄鋼材で形成した複合ロールが広く使用されている。
この外層材として、出願人は、黒鉛を有するハイス系鋳鉄材を以前に提案した(特開平6−256889号公報等)。この鋳鉄材は、黒鉛とMC型炭化物を有しており、黒鉛による自己潤滑性によって低摩擦と耐焼付性を確保し、MC型炭化物の存在によりすぐれた耐摩耗性を具備している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年の操業条件の苛酷化に伴ない、熱間圧延用ロールは、所定の耐摩耗性を確保しつつ、低摩擦と耐焼付性についてより一層の改善が要請されている。
前記ハイス系鋳鉄材において、低摩擦と耐焼付性を向上させるには黒鉛量を増やすことが有効であるが、黒鉛量が増えると、圧延使用時、ロール表面において黒鉛のミクロ的な欠け落ちの影響が大きくなるため、黒鉛を起点とする摩耗が顕著になり、たとえ高硬度を有していても耐摩耗性の劣化を招く不都合がある。
【0004】
本発明の目的は、黒鉛量を増やすことなく、所定の耐摩耗性を確保しつつ、摩擦係数が小さく、耐焼付性にすぐれる圧延用複合ロールの外層材を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明のハイス系鋳鉄材は、重量%にて、C:2.2〜3.6%、Si:1.0〜2.8%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.25〜0.9%、Ni:0.5〜10.0%、Cr:2.0〜10.0%、Mo:0.1〜10.0%、W:0.1〜10.0%、V、Nbの一種又は二種を合計量で1.5〜10.0%、残部実質的にFeからなり、組織中に黒鉛と燐共晶の燐化鉄(Fe3P)を有するようにしたものである。
本発明のハイス系鋳鉄材は、必要に応じて、前記合金成分の他に、Co:0.5〜10.0%、又はAl:0.01〜0.50%、Ti:0.01〜0.50%、Zr:0.01〜0.50%のうちの一種若しくは二種以上、又はB:0.01〜0.50%を含有することができる。
【0006】
組織中における黒鉛の面積率は、摩擦係数の低減化及び耐焼付性について所望の効果を得るために、1.5〜5.0%が望ましい。なお、黒鉛のミクロ的な欠け落ち量を実質的に影響を受けない程度にとどめ、黒鉛を起点とする耐摩耗性の劣化を防ぐ見地からは、1.5〜3.0%にすることがより望ましい。
【0007】
組織中における燐化鉄の面積率は、摩擦係数の低減化と耐焼付性の向上を図るために、0.2〜4.0%が望ましい。なお、燐化鉄が多くなると硬度が低下する傾向にあり、鋳鉄基地の強度低下を招くため、0.2〜3.0%にすることがより望ましい。
【0008】
【作用】
本発明のハイス系鋳鉄材は、Cr、Mo、W、Nb、V、Fe及びCが相互に結合した高硬度の複合炭化物が基地中に存在するため、すぐれた耐摩耗性を具えている。
また、組織中に黒鉛の他に燐共晶の燐化鉄を有しており、この燐化鉄は結晶粒界に晶出し、融点が低く軟らかいため、熱間圧延中にロール表面からミクロ的に離脱して自己潤滑に寄与し、低摩擦と耐焼付性が改善される。黒鉛では、黒鉛のミクロ的な欠け落ちにより、黒鉛を起点とした摩耗が認められるのに対し、燐化鉄ではそのような傾向はないから、適量の黒鉛と燐化鉄を組織中に共存させることにより、耐摩耗性を損なうことなく、所望の低摩擦係数と耐焼付性を確保することができる。
【0009】
【成分限定理由の説明】
C:2.2〜3.6%
Cは、主としてFe及びCrと結合してM7C3型の高硬度複合炭化物を形成すると共に、V、Nbと結合してMC型炭化物、Fe、Cr、Mo、Wなどと結合してM6C型、M2C型或はM3C型の炭化物を形成する。このうち、MC型炭化物は特に硬く、耐摩耗性に大きく寄与する。また、後述の黒鉛化促進元素であるSiの作用により、凝固中に黒鉛となって晶出したり、熱処理中に微細黒鉛となって組織中に析出する。2.2%に満たないと炭化物量が不足し、また好適な黒鉛量が得られなくなり、一方含有量が3.6%を超えると炭化物量と黒鉛量が過多となり、材質が脆くなる。このため、Cの含有量は、2.2〜3.6%に規定する。
【0010】
Si:1.0〜2.8%
Siは、湯流れ性の確保と、黒鉛の晶出と析出のために必要な元素である。含有量が1.0%に満たないと、所望の効果が得られない。一方、Siは焼入れ熱処理において焼入れ性を減じる元素でもあり、本発明のように黒鉛と燐共晶の燐化鉄とにより低摩擦と耐焼付性を確保する材料では2.8%で十分である。
【0011】
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、硬化能を増す働きがある。また、Sと結合してMnSを生成し、Sによる脆化を防止するのに有効な元素である。一方、含有量が多くなりすぎると靭性の低下を招くため、含有量は0.1〜2.0%に規定する。
【0012】
P:0.25〜0.9%
Pは、一般に材質の機械的性質を劣化させる元素として知られているが、本発明のハイス系鋳鉄材にあっては、Pを積極的に含有させることによって、主としてFeと結合して燐共晶の燐化鉄(Fe3P)を生成させる。この燐共晶の燐化鉄が熱間圧延中にロール表面から離脱して、ロールと圧延材の間の摩擦特性を改善する。含有量が0.25%より少ないとこの効果を発揮できない。一方、含有量が0.9%を超えると脆くなり、熱間圧延ロール材てして適さなくなる。このため、Pの含有量は、0.25〜0.9%とする。
【0013】
Ni:0.5〜10.0%
Niは基地組織の改良と、黒鉛を晶出・析出させる目的で添加する。0.5%未満では黒鉛量が過少であり、一方10.0%を超えるとSiの場合と同様黒鉛が過多となり、また残留オーステナイトが増加し、後の熱処理によっても強靱組織にすることが難しくなり、耐摩耗性が劣化する。このため、含有量は0.5〜10.0%に規定する。
【0014】
Cr:2.0〜10.0%
Crは、Fe、Mo、V、Nb、Wと共にCと結合して、高硬度複合炭化物を形成し高温における耐摩耗性の向上に寄与する。また、一部は基地中に固溶して焼入れ性及び耐摩耗性を改善する。含有量が2.0%に満たないとその効果が少なく、一方10.0%を超えると靭性の劣化をきたす。このため、含有量は2.0〜10.0%に規定する。
【0015】
Mo:0.1〜10.0%
Moは、Fe、Cr、V、Nb、Wと共にCと結合して、主としてM7C3型、M6C型、M2C型の複合炭化物を形成し、常温及び高温硬度を高めて耐摩耗性の向上に寄与する。また、MoはWに比較して少量添加でその効果を発揮する。しかし、0.1%未満ではその効果を十分に得られず、一方、10.0%を超えると靭性の低下をきたし、好ましくない。このため、含有量は、0.1〜10.0%に規定する。
【0016】
W:0.1〜10.0%
Wも同様に、Fe、Cr、Mo、V、Nbと共にCと結合して、複合炭化物を形成し、常温及び高温硬度を高めて耐摩耗性の向上に寄与する。このため、少なくとも0.1%以上含有させる。一方、あまりに多く含有すると、靭性の低下をきたし、耐ヒートクラック性を悪化させる。また、遠心力鋳造の際、マクロ偏析が生成し易くなる。このため、上限は10.0%に規定する。
【0017】
V、Nb:一種又は二種を合計量で1.5〜10.0%
VとNbは、Fe、Cr、Mo、Wと共にCと容易に結合して、主としてMC型の複合炭化物を形成し、常温及び高温硬度を高めて耐摩耗性の向上に寄与する。また、このMC型炭化物は、厚さ方向に枝状に生成するから、基地の塑性変形を抑制し、機械的性質、さらには耐クラック性の向上にも寄与する。このため、V及び/又はNbを合計量で1.5%以上含有させる。一方、あまりに多く含有すると、靭性の低下を招くと共に、遠心力鋳造の際、マクロ偏析を生成し易くなる。このため、V及び/又はNbの合計量の上限は10.0%に規定する。
【0018】
本発明にかかるハイス系鋳鉄材は、上記の合金成分のほか、残部はFe、及び不可避的に混入する不純物からなる。例えば、Sは原料より不可避的に混入するが、材質を脆くするので少ない程好ましく、S:0.1%以下にするのがよい。本発明の鋳鉄材は、前記合金成分の他に、必要に応じて、Co:0.5〜10.0%、又はAl:0.01〜0.50%、Ti:0.01〜0.50%、Zr:0.01〜0.50%のうちの一種若しくは二種以上、又はB:0.01〜0.50%を含有することができる。
【0019】
Co:0.5〜10.0%
Coは、基地を改善する上で大きな効果がある。また、CoはCの拡散を抑制する特殊な作用があり、炭化物形成には無関係に基地に固溶して強靱性を増すと共に、高温硬度を高めて耐摩耗性の向上に寄与する。さらに、Coは炭化物生成元素のオーステナイト中への固溶量を増大させるため、基地の硬度と焼戻し抵抗が増大する。これらの効果を期待するには0.5%以上の含有が必要であるが、10.0%を超えて含有してもその効果は飽和し、経済的に不利である。このため、上限は10.0%とする。
なお、高合金の鋳鉄材料を遠心力鋳造によって鋳造し、複合ロールを製作する場合、炭化物の分布が不均一になり易いため、鋳造条件の適正化が必要であるが、本発明のCoを含有する高合金材料の場合、Coは上述のように炭化物の形成には無関係に基地に固溶するため、炭化物の不均一性を大きくすることなく、上述の優れた効果を期待できる。
【0020】
Al、Ti、Zr:各々0.01〜0.50%
Al、Ti、Zrは、溶湯中で酸化物を生成して、溶湯中の酸素含有量を低下させ、製品の健全性を向上させると共に、生成した酸化物が結晶核として作用するために凝固組織の微細化に効果がある。0.01%未満ではこの効果は十分でなく、一方、0.50%を超えて含有すると介在物となって残留し、好ましくない。尚、Al、Ti、Zrは、本発明では主として鋳造組織の微細化による耐摩耗性改善のために添加されるものであり、単に脱ガスを目的として添加されるものではない。
【0021】
B:0.01〜0.50%
Bは溶湯中の酸素と結合して、脱酸効果を示す。その他、生成した酸化物を核とする凝固組織の微細化効果、および基地中に溶け込んだBによる焼入れ性の増大効果を有する。圧延ロールのような大質量の鋳物の場合、冷却温度を速くすることが困難な場合があるが、焼入れ性の増大によって、焼入れ組織を得易くなる。0.01%未満ではこのような効果が十分ではなく、一方0.50%を超えると材質が脆くなり好ましくない。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の鋳鉄材は、外層と中実状内層または円筒状内層とが溶着された二層複合ロール、あるいは外層と内層との間に中間層を鋳造した三層複合ロールの外層材として好適に使用される。
【0023】
内層材としては、高級鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、黒鉛鋼、鋳鋼等の強靱性を有する鋳鋼材が使用される。特に、黒鉛晶出材である前三者が好適である。外層の黒鉛の存在と相まって熱伝導性ひいては放熱性に優れ、圧延時のロールの熱変形を防止することができるからである。また、これらの黒鉛晶出鉄鋼材は、ヤング率が約19000kg/mm2以下であるため、過負荷時にロールの偏平化によって負荷を吸収し、耐事故性を向上することができる。また、低温歪取り焼鈍によって、外層熱処理時の残留応力を容易に軽減することができる。また、良好な靱性を有するため、衝撃的な圧延トルクに対しても耐えることができる。
【0024】
高級鋳鉄の好適な組成例として、C:2.5〜4.0%(重量%、以下同じ)、Si:0.8〜2.5%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:3.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、W、V、Nbを総計で4%以下、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。
ダクタイル鋳鉄の好適な組成例として、C:2.5〜4.0%(重量%、以下同じ)、Si:1.3〜3.5%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:3.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、W、V、Nbを総計で4%以下、Mg:0.02〜0.1%、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。
黒鉛鋼の好適な組成例として、C:1.0〜2.3%(重量%、以下同じ)、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:3.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、W、V、Nbを総計で4%以下、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。
【0025】
中間層は、外層の合金成分が内層に混入するのを軽減することを目的の一つとして形成されるが、それ自体も30kg/mm2程度以上の強度が必要である。強度が不足すると、外層と中間層との境界部が破断し、外層が剥離する。従って、中間層には外層から多量の合金成分が混入しても高強度な材質とする必要がある。かかる理由から、中間層材としてアダマイト材を使用することが望ましい。
アダマイト材の好適な組成例として、C:1.0〜2.5%(重量%、以下同じ)、Si:0.2〜3.0%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:4.0%以下、Cr:4.0%以下、Mo4.0%以下、W、V、Nbを総計で12%以下、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。
【0026】
本発明のハイス系鋳鉄材を外層に用いた複合ロールの場合、鋳造後、外層に所定の熱処理が施される。例えば、オーステナイト化温度から650〜400℃までの温度域を100℃/Hr以上の冷却速度で急冷し、良好な焼入れ組織を得た後、450〜600℃の温度で1回乃至数回の焼戻しが行なわれる。
【0027】
外層の加熱方法としては、ロール全体を加熱炉に入れて加熱する方法、外層外周面の回りに誘導加熱コイルや多数のガスバーナを配置しておき、これらによって外層のみを急速加熱する方法がある。前者は昇温に時間がかかり、外層表面に厚い酸化膜ができ、外層の歩留りが低下する。更に、鋳鉄材質の内層の溶損を回避して加熱するには1100℃(望ましくは1000℃)以下の加熱に止めなければならず、このため炭化物を基地中に十分固溶させることが難しく、以後の熱処理によっても十分な硬度を得難いという問題がある。これに対して、外層のみの加熱方法によれば、中間層の形成と相まって、外層を1100℃以上に、内層を1100℃未満に確実に止めることができるので、内層の部分溶融や、結晶粒の粗大化による強度低下を防止することができる。また、内層(軸芯部)の中心に向かうほど低温となるため、オーステナイト化温度に加熱後、外層の熱を内部へ逃がすことができ、焼入れの際、外層深部の冷却速度を大きくすることができる。
【0028】
【実施例】
次に本発明の具体的実施例を掲げる。内径120mm、深さ120mmの砂型の中で、表1に記載した鋳鉄材を1425℃の温度で鋳込んだ。なお、表1中、No.1、 No. 2、 No. 3、 No. 6及び No. 8は発明例、 No. 4、 No. 5、 No. 7及び No. 9は参考例、No.10は黒鉛と燐化鉄の両方を有しない比較例、No.11〜No.14は黒鉛のみを有する比較例である。
【0029】
【表1】
【0030】
各試料より組織観察試験片を採取し、ミクロ組織を顕微鏡観察し、晶出した黒鉛と燐共晶の燐化鉄(Fe3P)の面積率を測定した。その結果を表2に示す。
【0031】
次に、各試料を1100℃で1時間保持後、強制空冷により焼入れし、その後500℃で10時間の熱処理を3回繰り返した。ロックウエル硬度計により、各試料の表面硬度を測定した結果を表2に併せて示す。
【0032】
さらに、各試料から摩擦試験片を採取し、ファレックス試験により摩擦係数を測定した。ファレックス試験とは、試験片を回転させながら一対のVブロックで挟持押圧して、回転トルクの大きさ、変動により摩擦係数を調べるものである。使用したブロックの材質はS45Cである。
摩擦係数の測定結果を表2に併せて示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2の結果を考察する。黒鉛と燐化鉄の両方を晶出していない比較例のNo.10は、摩擦係数が0.35もある。摩擦係数が大きいと、圧延中、被圧延材との間で摩擦を起こし、焼付を生じ易くなる。なお、この摩擦係数は少なくとも0.30以下であることが好ましい。発明例のNo.1と比較例のNo.14、参考例のNo.4と比較例のNo.12、参考例のNo.7と比較例のNo.13をそれぞれ比較すると、黒鉛面積率がほぼ同じであっても、燐化鉄を含む本発明の供試材は摩擦係数が小さくなっており、燐化鉄の存在による低摩擦化の効果が認められる。また、発明例のNo.1、No.3及びNo.8は、黒鉛面積率が1.8〜3.0%、燐化鉄面積率が2.0〜3.0%であり、硬度はHRC59.0〜59.9であり、摩擦係数は0.24〜0.26である。一方、比較例のNo.11、No.12及びNo.13は、黒鉛の面積率が4.4〜5.0%であり、硬度はHRC60.0〜63.0であり、摩擦係数は0.24〜0.26である。これらの発明例と比較例を対照すると、組織中に燐化鉄を晶出させることにより、約0.25程度の摩擦係数を得るのに必要な黒鉛量を約40〜60%低減できることがわかる。なお、燐化鉄の晶出は、硬度の低下を招く不利があるが、熱間圧延では被圧延材は高温状態にあり、未だ硬化していないから、冷間圧延の場合ほどロールの高硬度は必要とされず、HRC約56以上あれば十分であると考えられる。
【0035】
【発明の効果】
このように、組織中に黒鉛と燐化鉄を有する本発明のハイス系鋳鉄材は、黒鉛量を増やすことなく、低摩擦化を達成することができるので、黒鉛増量による悪影響、即ち、黒鉛の欠け落ち部分から摩耗が進展するという不都合を大幅に回避することができる。また、所定の硬度を具備しているから、低摩擦と耐焼付性が特に重要視される熱間圧延条件下で使用される圧延用複合ロールの外層材として好適である。
Claims (6)
- 重量%にて、C:2.2〜3.6%、Si:1.0〜2.8%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.508〜0.9%、Ni:0.5〜10.0%、Cr:2.0〜10.0%、Mo:0.1〜10.0%、W:0.1〜10.0%、V、Nbの一種又は二種を合計量で1.5〜10.0%、残部Fe及び不可避的不純物からなり、組織中に黒鉛と燐化鉄を有し、前記黒鉛の面積率は1.5〜3.0%であることを特徴とするハイス系鋳鉄材。
- 重量%にて、C:2.2〜3.6%、Si:1.0〜2.8%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.508〜0.9%、Ni:0.5〜3.42%、Cr:2.0〜10.0%、Mo:0.1〜10.0%、W:0.1〜10.0%、V、Nbの一種又は二種を合計量で1.5〜10.0%、残部Fe及び不可避的不純物からなり、組織中に黒鉛と燐化鉄を有し、前記黒鉛の面積率は1.5〜3.0%であることを特徴とするハイス系鋳鉄材。
- Coを0.5〜10.0%含有している請求項1又は2に記載のハイス系鋳鉄材。
- Al:0.01〜0.50%、Ti:0.01〜0.50%、Zr:0.01〜0.50%のうち、一種又は二種以上を含有している請求項1乃至3の何れかに記載のハイス系鋳鉄材。
- Bを0.01〜0.50%含有している請求項1乃至4の何れかに記載のハイス系鋳鉄材。
- 燐化鉄の面積率は2.0〜4.0%である請求項1乃至5の何れかに記載のハイス系鋳鉄材。
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