JP2005290533A - 高耐摩耗性ロール材及び高耐摩耗性複合ロール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 重量%にて、C:3.1〜3.7%、Si:0.3〜1.0%、Mn:0.1〜1.5%、Ni:2.5〜5.0%、Cr:1.0〜2.5%、Mo:0.1〜1.0%、Al:0.01〜0.2%、N:0.005〜0.05%、及び、Ti、Nb、Vから選択される少なくとも1種を合計量で0.2〜2.5%を含み、残部実質的にFeであり、V:1.5%以下、Nb:2.5%以下、Ti:0.5%以下、2.9%≦C−(0.24×V+0.13×Nb+0.25×Ti)+0.33×Si+0.52×Al+0.86×N≦4.0%を満たす。
【選択図】 図1
Description
その種の材料として、高合金グレン鋳鉄やハイス系材料が使用されている(例えば特許文献1、2参照)。
しかしながら、高合金グレン鋳鉄は、熱膨張率が小さく、耐クラック性にすぐれるが、耐摩耗性が十分ではない問題があった。また、ハイス系材料は、耐摩耗性にはすぐれるが、熱膨張率が大きく、耐クラック性に劣る問題があった。
V:1.0%未満、Nb:2.5%以下、Ti:0.5%以下、2.9%≦C−(0.24×V+0.13×Nb+0.25×Ti)+0.33×Si+0.52×Al+0.86×N≦4.0%を満たす。
V:1.0未満、Nb:2.5%以下、Ti:0.5%以下、2.9%≦C−(0.24×V+0.13×Nb+0.25×Ti)+0.33×Si+0.52×Al+1.1×B+0.86×N≦4.0%を満たす。
C:3.1〜3.7%
Cは主としてFeと結合し、セメンタイトを形成すると共に、V、Nb、Tiと結合してMC型炭化物を形成する。また、晶出及び析出黒鉛となって摩擦係数を低減する効果がある。しかしながら、含有量が3.1%未満では黒鉛化が促進されず、3.7%を越えると黒鉛が粗大且つ過多となり、耐肌荒れ性及び耐摩耗性の劣化を招く。Cの含有量は3.3〜3.5%がさらに望ましい。
Siは湯流れ性の確保と黒鉛の晶出、析出のために必要な元素である。しかしながら、0.3%未満ではその効果が十分でなく、1.0%を越えると黒鉛が過多となり黒鉛を起点とする摩耗が激しくなり、耐摩耗性が劣化する。Siの含有量は0.4〜0.9%がより望ましい。なお、鋳込み時に、0.05〜0.15%程度の接種を行ない、最終製品の成分では上記範囲に調整することが望ましい。
Mnは硬化能を増し、また、原材料中に不可避的に含まれるSと結合してMn
Sを生成し、Sによる劣化を防ぐ元素である。Sは原材料中に0.1%程度含有されるため、Mnは0.1%以上含有させることが望ましい。しかしながら、1.5%を越えると靭性の低下を招くため好ましくない。Mnの含有量は0.3〜0.9%がより望ましい。
Niは基地組織の改良と黒鉛を晶出、析出させる目的で含有させる。2.5%未満であると黒鉛量が過少となりやすく、5.0%を越えるとSiの場合と同様に黒鉛が過多となり、また、残留オーステナイトが増加し、後の熱処理によっても強靭組織にすることが難しくなり、耐摩耗性が低下する。Niの含有量は4.0〜4.9%がより望ましい。
Crは一部が基地中に固溶して焼入れ性を改善し、耐摩耗性を向上させる。又、セメンタイトにも固溶し、セメンタイトの硬度を向上させる。1.0%未満であれば、このような作用を得ることができず、2.5%を越えると黒鉛化を阻害する。Crの含有量は1.5〜1.9%がより望ましい。
Moは、主に基地に固溶し、焼入れ性を改善し、耐摩耗性を向上させる。しかしながら、0.1%未満ではこのような効果が不十分であり、1.0%を越えると黒鉛化を阻害する。Moの含有量は0.3〜0.8%がより望ましい。
AlはNと結びついて、AlNを形成し、黒鉛晶出の核となる。黒鉛は、溶湯中に分散しているAlNを基点として晶出する。従って、AlNの核が基地中に多数分散して存在することにより、晶出する黒鉛も微細に分散する。また、AlNは溶湯中の酸素とも結合して溶湯中の酸素含有量を低減するため、Si接種の効果も大きくなる。さらに、Alは組織の均一性を高める効果もある。含有量が、0.01%未満であればその効果を十分に得ることができず、0.2%を越えると、このような効果が飽和すると共に、材質を劣化させる。0.01〜0.1%がより望ましい。
V、Nb、TiはCと結合し、MC型炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる。しかしながら、合計量が0.2%未満であればその効果が不十分となる。一方、合計量が2.0%を越えるとMC型炭化物が過多となり、摩擦係数が大きくなると共に、黒鉛化を阻害する影響も高くなる。各元素は、V:0.8%以下、Nb:0.8%以下、Ti:0.2%以下がより望ましい。また、V、Nb、Tiの含有量は少なくとも1種を合計量で0.4〜2.0%とすることがより望ましい。
なお、Vなどの含有により、ロール作製中の割れ(主として鋳造割れ)などが発生しやすくなるが、Alや後述のBの含有により防止できる。
Nは合金の溶製上不可避的に混入する元素であるが、Al又は選択的に含有されるBと結合して、黒鉛晶出の核となるAlN又はBNを形成する。0.005%未満ではAl又はBと結合するのに十分ではないため組織の微細化及び黒鉛化を達成できない。一方、0.05%を越えると、窒化物を形成し、材質を劣化させる。0.01〜0.03%がより望ましい。
BはNと結びついてBNを形成し、黒鉛晶出の核になるため、必要に応じて選択的に含有させる。黒鉛は、前述のAlNと同様に溶湯中に分散しているBNを起点として晶出する。従って、BNの核が基地中に多数分散して存在することにより、晶出する黒鉛も微細に分散する。また、BNは、黒鉛と同じ稠密六方構造であるため、固体潤滑作用を有する。さらに、Bは組織の均一性を高める効果がある。0.01%未満であればその効果が十分ではなく、0.1%を越えるとその効果は飽和すると共に、黒鉛量が過多になり、材質の劣化や黒鉛を起点とする肌荒れが起こりやすい。Bの含有量は0.01〜0.05%がより望ましい。
また、基本的な組成が高合金グレン鋳鉄と重複するため、高合金グレン鋳鉄とほぼ同程度のすぐれた熱膨張率を具備する。
遠心力鋳造の場合、遠心力鋳造用金型の中に上記組成となるように溶湯を鋳込んで中空状に形成することができる。得られたロール材は、遠心力鋳造金型から取り出して、熱処理、機械加工を施すことによって、単層の圧延用ロールとして用いることができる。
また、必要に応じて、溶湯を鋳込んだ後、次に内層溶湯を鋳込むことにより、外層のロール材と内層が冶金的に一体化された圧延用複合ロールを形成することもできる。
この場合、内層材料として、ねずみ鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、黒鉛鋼、又は、2.0%以下のCを含有する鋳鋼を例示できる。
さらに、外層の鋳造後、内層を鋳込む前に、中間層を鋳込むことにより、外層、中間層、内層が冶金的に一体化した圧延用複合ロールを形成することができる。中間層の成分として、C:2.5〜4.0%、Si:0.5〜3.5%、Mn:0.2〜1.5%、Ni:0%を越えて3.0%以下、Cr:0%を越えて2.5%以下、Mo:0%を越えて2.0%以下、Mg:0.02〜0.1%以下、及び、V、Nb、Ti、Al、Bから選択される少なくとも1種を合計量で0%を超えて2.0%以下を含むダクタイル鋳鉄や、C:1.0〜2.5%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Ni:0%を越えて1.5%以下、Cr:0%を越えて2.5%以下、Mo:0%を越えて2.0%以下、及び、V、Nb、Ti、Al及びBの少なくとも1種を合計量で0%を越えて1.5%以下、及び、残部実質的にFeからなる黒鉛を有する材料を例示できる。
任意の面のすべてについて、平均粒面積を求めることは困難であるため、該面の任意の領域、例えば、1.9mm×1.4mmの領域のミクロ組織写真を撮影し、画像解析して、黒色に見える部分の面積及び個数を測定すればよい。このとき、黒色に見える部分は、黒鉛と黒鉛晶出の核となるAlN及びBNである。しかしながら、黒鉛とAlN、BNとを見分けることは困難であるから、本願では、黒鉛、AlN及びBNの合計を黒鉛粒としている。
なお、上記において、任意の面とは、ロール材の断面、例えば、縦断面、横断面等や、ロール材の外表面、端面をも含むものとする。
黒鉛の平均粒面積が400μm2以下となることにより、図1(a)に示すように、ロール材の基地(10)中に粗大な黒鉛粒(12)が晶出しているのではなく、図1(b)に示すように、微細な黒鉛粒(14)が多数晶出しているため、ロール材基地(10)にクラック(16)が発生しても、クラック(16)が黒鉛粒(14)に当たることによって、クラックの先端は尖った形ではなく、ほぼ球状となり、クラックの進展を遅らせる(点線で示す)ことができ、耐クラック性を高めることができる。一方、図1(a)のように粗大な黒鉛粒(12)の場合、黒鉛粒(12)どうしの間隔が大きいため、クラック(16)が発生したときに、クラック(16)が黒鉛粒(12)に当たらずに延びていくため、耐クラック性に劣る。また、黒鉛面積率が同じ場合、黒鉛の粒度が細かい図1(b)の方が、黒鉛粒子間の距離が短くなり、クラック進展の際にクラックが黒鉛に当たり、進展速度が低下する確率が高くなる。
黒鉛の面積率及びMC型炭化物の面積率は、上記と同様に、ある面の任意の領域の画像解析により測定することができる。なお、黒鉛の面積率については、黒鉛とAlN、BNとの見分けは困難であるから、黒鉛、AlN及びBNの合計を黒鉛の面積率として測定すればよい。
黒鉛の平均粒面積、黒鉛面積率及びMC型炭化物の面積率は、試験片の1.9mm×1.4mmの部分についてミクロ組織写真を撮影し、画像解析を行なうことによって実施した。
基地硬さは、マイクロビッカース硬度計を用いて荷重50gfの条件で測定した。
摩擦係数及び摩耗重量は、ファレックス試験機を用いて測定した。測定条件は、相手材をSS400とし、試験荷重を50kgf、保持時間3分で実施した。摩擦係数は、測定された荷重とトルクから算出し、摩耗重量は、試験前後での重量減少量を比較した。
一方、比較例1〜7は、組成範囲が本発明から外れいるか、黒鉛の平均粒面積、黒鉛の面積率、又は、MC型炭化物の面積率が本発明の既定値を満足していない。その結果、基地硬さが低くなったり、摩擦係数が高くなったり、摩耗重量が大きくなるなど、圧延用ロールとしての十分な性能を具備できないことがわかる。通板性を安定させるには、摩擦係数は0.33以下が望ましい。
(12) 黒鉛粒
(14) 黒鉛粒
(16) クラック
Claims (8)
- 重量%にて、C:3.1〜3.7%、Si:0.3〜1.0%、Mn:0.1〜1.5%、Ni:2.5〜5.0%、Cr:1.0〜2.5%、Mo:0.1〜1.0%、Al:0.01〜0.2%、N:0.005〜0.05%、及び、Ti、Nb、Vから選択される少なくとも1種を合計量で0.2〜2.5%を含み、残部実質的にFeであり、
V:1.0%未満、Nb:2.5%以下、Ti:0.5%以下、2.9%≦C−(0.24×V+0.13×Nb+0.25×Ti)+0.33×Si+0.52×Al+0.86×N≦4.0%を満たす高耐摩耗性ロール材。 - 重量%にて、C:3.1〜3.7%、Si:0.3〜1.0%、Mn:0.1〜1.5%、Ni:2.5〜5.0%、Cr:1.0〜2.5%、Mo:0.1〜1.0%、B:0.01〜0.1%、N:0.005〜0.05%、Al:0.01〜0.2%、及び、Ti、Nb、Vから選択される少なくとも1種を合計量で0.2〜2.5%を含み、残部実質的にFeであり、
V:1.0%未満、Nb:2.5%以下、Ti:0.5%以下、2.9%≦C−(0.24×V+0.13×Nb+0.25×Ti)+0.33×Si+0.52×Al+1.1×B+0.86×N≦4.0%を満たす高耐摩耗性ロール材。 - ロール材の任意の面に出現する黒鉛の平均粒面積が400μm2以下である請求項1又は請求項2に記載の高耐摩耗性ロール材。
- ロール材の任意の面に出現する黒鉛の面積率が0.5〜5.0%であり、MC型炭化物の面積率が1.0%以下である請求項1乃至請求項3の何れかに記載の高耐摩耗性ロール材。
- 基地硬さが550Hv以上である請求項1乃至請求項4の何れかに記載の高耐摩耗性ロール材。
- 請求項1乃至請求項5の何れかに記載の高耐摩耗性ロール材を外層とし、該外層の内側に、ねずみ鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、黒鉛鋼、又は、2.0%以下のCを含有する鋳鋼からなる内層を具える高耐摩耗性複合ロール。
- 内層と外層との間に、C:2.5〜4.0%、Si:0.5〜3.5%、Mn:0.2〜1.5%、Ni:0%を越えて3.0%以下、Cr:0%を越えて2.5%以下、Mo:0%を越えて2.0%以下、Mg:0.02〜0.1%以下、及び、V、Nb、Ti、Al、Bから選択される少なくとも1種を合計量で0%を超えて2.0%以下を含み、残部実質的にFeからなるダクタイル鋳鉄の中間層を具える請求項6に記載の高耐摩耗性複合ロール。
- 内層と外層との間に、C:1.0〜2.5%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Ni:0%を越えて1.5%以下、Cr:0%を越えて2.5%以下、Mo:0%を越えて2.0%以下、及び、V、Nb、Ti、Al、Bから選択される少なくとも1種を合計量で0%を超えて2.0%以下を含み、残部実質的にFeからなる黒鉛を有する中間層を具える請求項6に記載の高耐摩耗性複合ロール。
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