JP3764905B2 - 密閉形蓄電池用合成樹脂電槽・ふた - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、力学強度、耐熱性のバランスに優れ、かつ水蒸気バリヤー性に優れた密閉形蓄電池用電槽・ふた(以下電槽と記す)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
蓄電池は、自動車、大型車、特殊車両等の車両や、各種電気製品、産業機器の動力源として幅広く使われている。また、鉛蓄電池を始め、ニッケルーカドミウム電池、リチウム電池等各種電池の需要が大きくなってきている。それに伴い、蓄電池電槽の大型化、デザインの多様化、軽量化、薄肉化等の要求が出ており、それに使われる材料にも、成形性、強度、耐熱性といった要求が厳しくなってきている。
【0003】
従来は、蓄電池電槽向け樹脂として、例えば、ABS(アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体)が使われている。ABSは、成形性に優れ、剛性、強度、寸法精度のバランスにも優れた樹脂であり、この為、蓄電池電槽用樹脂として多くの実績がある。しかしながら、ABSでは耐熱性や強度の不足する場合もあり、こういった場合には、変性ポリフェニレンエーテルが用いられている。この変性ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルとポリスチレンの混合物であり、その割合を任意に変えることにより、目的とする耐熱性を得ることができ、また、難燃性の付与が比較的容易な為、難燃性が必要とされる場合にも適している。
【0004】
しかしながら、どちらの樹脂も、水蒸気バリヤー性に劣る(水蒸気を透過してしまう)という欠点がある。
【0005】
これは、蓄電池の中に含まれる電解液中の水分が、長期間の使用中に、水蒸気として蒸発し、蓄電池電槽を透過し、外部に散逸してしまう現象である。
【0006】
蓄電池の使用環境が高温かつ低湿度になり、期待される寿命も長くなる傾向の中で蓄電池の電解液が減少する傾向はますます増加する方向にある。電解液が減少すると、蓄電池の内部抵抗は大きくなり、放電性能に重大な支障をきたす為、このような現象は好ましくなく、極力、水蒸気の透過の少ない樹脂の使用が望まれている。
【0007】
一方、この観点から、ポリプロピレンを使用することも考えられる。ポリプロピレンは、水蒸気バリヤー性に優れ、かつ、成形性に優れた樹脂である。しかしながら、機械的強度、耐熱性の点からは、必ずしも十分とは言えず、タルク等の無機フィラーを配合する研究がなされているが、タルクを配合すると耐衝撃性が低下する問題が生じていた。そのバランスを改良するため、タルクとエチレンプロピレンゴムを配合した組成物の記載が、特開昭60ー3420号公報にある。しかし、これらの組成物を用いた成形体も、力学強度、寸法特性のバランスにおいて、必ずしも充分ではなく、また、難燃性が必要とされる場合には、難燃性の付与が困難であり、多量の難燃剤を配合しなければならないという欠点があった
。
【0008】
この様な状況のもと、蓄電池電槽材料としては、必ずしも満足のいくものはないのが現状であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもと、成形性、機械的強度、耐熱性のバランスに優れ、かつ水蒸気バリヤー性に優れた蓄電池電槽を提供することを目的としてなされたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂50〜95重量部、(b)高密度ポリエチレン5〜50重量部からなる樹脂組成物を成形してなり、(a)成分がマトリックス(連続相)を形成し(b)成分がドメインを形成する形態(A)と、(b)成分がマトリックス(連続相)を形成し(a)成分がドメインを形成する形態(B)とが、分散して存在する成形体であって、前記成型体の表層付近は形態(B)であり、その内側は形態(A)であり、湿度90%での水蒸気透過係数が25℃において0.7g・mm/m2・24h以下であることを特徴とする密閉形蓄電池用合成樹脂電槽とすることによって上記課題を解決することである。
また、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂50〜95重量部、(b)高密度ポリエチレン5〜50重量部からなる樹脂組成物を成形してなり、(a)成分がマトリックス(連続相)を形成し(b)成分がドメインを形成する形態(A)と、(b)成分がマトリックス(連続相)を形成し(a)成分がドメインを形成する形態(B)とが、分散して存在する成形体であって、前記成型体の表層付近は形態(B)であり、その内側は形態(A)であり、湿度90%での水蒸気透過係数が25℃において0.7g・mm/m 2 ・24h以下であることを特徴とする密閉形蓄電池用合成樹脂ふたとすることによって上記課題を解決することである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
ポリフェニレンエーテル系樹脂(a)
本発明で用いるポリフェニレンエーテル系樹脂とは、ポリフェニレンエーテル、または、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂の混合物である。
【0013】
ここで、本発明で用いるポリフェニレンエーテルとは、
【数1】
の一般式で示される構造を有する単独重合体又は共重合体である。
【0014】
【数1】
(式中、Q1 は各々ハロゲン原子、第一級若しくは第二級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基又はハロ炭化水素オキシ基を表し、Q2 は各々水素原子、ハロゲン原子、第一級若しくは第二級アルキル基、アリール基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基又はハロ炭化水素オキシ基を表し、mは10以上の数を表す)で示される構造を有する単独重合体又は共重合体である。Q1 及びQ2 の第一級アルキル基の好適な例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−アミル、イソアミル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、2,3−ジメチルブチル、2−、3−若しくは4−メチルペンチル又はヘプチルである。第二級アルキル基の好適な例は、イソプロピル、sec−ブチル又は1−エチルプロピルである。多くの場合、Q1 はアルキル基又はフェニル基、特に炭素数1〜4のアルキル基であり、Q2 は水素原子である。)
好適なポリフェニレンエーテルの単独重合体としては、例えば、2,6―ジメチル―1,4―フェニレンエ−テル単位からなるものである。好適な共重合体としては、上記単位と2,3,6―トリメチル―1,4―フェニレンエ−テル単位との組合せからなるランダム共重合体である。多くの好適な、単独重合体又はランダム共重合体が、特許及び文献に記載されている。例えば、分子量、溶融粘度及び/又は耐衝撃強度等の特性を改良する分子構成部分を含むポリフェニレンエーテルもまた好適である。
【0015】
ここで使用するポリフェニレンエーテルは、クロロホルム中で測定した、30℃の固有粘度が0.2〜0.8dl/gであるものが好ましい。より好ましくは固有粘度が0.2〜0.7dl/gのものであり、とりわけ好ましくは0.25〜0.6dl/gのものである。固有粘度が0.2dl/g未満では組成物の耐衝撃性が不足し、0.8dl/gを越えると成形性が不満足である。
【0016】
また、本発明で用いるスチレン系樹脂とはポリスチレン、またはゴム強化ポリスチレンである。これらの配合量はポリフェニレンエーテルとこれらスチレン系樹脂の合計を100重量%したときに、10〜90重量%が好ましい。
【0017】
10重量%未満だと成形性が不満足であり、90重量%を越えると耐熱性が低下しすぎ好ましくない。
【0018】
また、本発明で用いる高密度ポリエチレンとは、エチレンの単独重合体、もしくはエチレンを主成分とする、αーオレフィンとの共重合体である。上記αーオレフィンは、例えば、プロピレン、ブテンー1、ペンテンー1、ヘキセンー1、ヘプテンー1、オクテンー1等であり、入手の簡便さからC3−C8のものが好ましい。
【0019】
本発明で用いる、高密度ポリエチレンは、JIS K−6760による密度が0.940〜0.980g/cm3 であることが好ましく、より好ましくは、0.945〜0.970g/cm3 、とりわけ好ましくは、0.950〜0.965g/cm3 である。密度が0.940g/cm3 未満だと耐熱性、剛性が不足し、0.980を越えるものは製造が困難である。
【0020】
また、高密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR;190℃、荷重2.16kg)は0.05ー100g/10分の範囲が好ましく、より好ましくは、0.1ー80g/10分、とりわけ好ましくは0.5ー50g/10分の範囲である。MFRの値がこれより低い範囲では成形加工性に難点があり、これより高い範囲では機械的強度のレベルが好ましくない。
【0021】
また、本発明においては、衝撃強度を向上させる為に、ビニル芳香族化合物重合体ブロックAと共役ジエン化合物重合体Bとからなるブロック共重合体および/またはその水素添加物を添加することが好ましい。ここで言うブロック共重合体とは、ビニル芳香族化合物に由来する連鎖ブロックAと共役ジエンに由来するブロックBを各々少なくとも一個有する構造を持つビニル芳香族化合物ー共役ジエンブロック共重合体であり、ブロックAおよびBの配列は、線状構造、或いは分技構造、テーパー構造をなすものを含む。また、これらの構造のうちの一部にビニル芳香族化合物と共役ジエンとのランダム共重合体部分に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。これらのうちで線状構造をなすものが好ましく、トリブロック構造をなすものがより好ましい。
【0022】
また、ブロック共重合体の水素添加物とは、ブロックB脂肪族不飽和基が水素添加により減少したブロック共重合体であり、水素添加されずに残存している不飽和結合の割合は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましいが限定されるものでない。また、水素添加していないブロック共重合体と併用してもよい。
【0023】
ビニル芳香族化合物としては、好ましくは、スチレン、αーメチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンであり、さらに好ましくは、スチレンである。
【0024】
共役ジエンとしては、好ましくは、1、3ーブタジエン、イソプレン、2ーメチルー1、3ブタジエンである。
【0025】
ブロック共重合体の具体例として、スチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体、スチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体等があり、これらは複数種使用してもよい。
【0026】
ビニル芳香族化合物ー共役ジエンブロック共重合体の中で、ビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合は、10ー70重量%の範囲が好ましく、15ー50重量%の範囲がより好ましい。
【0027】
これらブロック共重合体およびその水素添加物は、それらの分子量の目安として、25℃におけるトルエン溶液粘度の値が、30000ー10cpsの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは10000ー30cpsである。30000cpsより大きい範囲では最終組成物の成形加工性に難点が生じ、また、10cpsより小さい値の範囲では、機械的強度レベルが低く好ましくない。
【0028】
さらに、本発明組成物に必要に応じ添加しうる他の成分として、例えば、熱可塑性樹脂に周知の酸化防止剤、耐候性改良剤、増核剤、耐衝撃改良剤、可塑剤、流動性改良剤等が使用できる。また、有機充填剤、補強剤、無機充填剤、例えば、ガラス繊維、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、シリカ、クレー等の添加は剛性、耐熱性寸法特性等の向上に有効である。実用のために、各種着色剤、およびそれらの分散剤なども周知のものが使用できる。また、本発明では、実用上、難燃性を付与する為に難燃剤を添加することが好ましい。本発明で用いる難燃剤としては、各種公知のものを用いることができ、特に限定されるものでは無く、その配合量は目的とする難燃レベルを得るために必要とされる量である。好ましくは、リン系、ハロゲン系、無機系の難燃剤、難燃助剤、及びこれらを併用して用い、樹脂成分100重量部に対して、1〜50重量部を配合する。
【0029】
[樹脂成形体の構造]
本発明は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(a) と結晶性樹脂(b) を含む組成物からなり、成分(a) が、少なくともマトリックス(連続相)を形成する形態と、成分(b) が少なくともマトリックス(連続相)を形成する形態とが、分散して存在することを特徴とするものである。
【0030】
例えば、成分(a) が、マトリックス(連続相)を形成し、成分(b) が、ドメインを形成するもの(A)、また、成分(b) が、マトリックス(連続相)を形成し、成分(a) が、ドメインを形成するもの(B)、成分(a),成分(b) が、相互に連続相をとる形態(C)が考えられ、成分(a) が、少なくともマトリックス(連続相)を形成する形態と、成分(b) が、少なくともマトリックス(連続相)を形成する形態とが、分散して存在するというのは、組成物およびその成形体の色々な場所で形態(A)が出現したり、形態(B)が出現したり、形態(C)が出現したりすることである。
【0031】
例えば、成形体の表層付近は、形態(A)で、その内側は、形態(B)が出現するもの、またその反対で、表層付近は、形態(B)で、その内側では、形態(A)をとるというものが挙げられる。勿論、形態(A)、(B)、(C)が成形体の厚み方向で、2度以上出現してもかまわない。また(C)のみの形態も考えられる。
【0032】
ここで、この形態(A)、(B)、(C)の確認は、組成物または成形体を四酸化ルテニウムにより染色し、超薄切片を作り、透過型電子顕微鏡を用いて観察を行う方法により実施できる。
【0033】
[構成成分の組成比]
以上に述べた成分(a)、(b)の組成比は、(a)+(b)の合計量を100体積%とし、下記のとうりである。
【0034】
成分(a):50〜95重量%、好ましくは60〜95重量%、とりわけ好ましくは70〜95重量%である。
【0035】
成分(b):5〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、とりわけ好ましくは5〜30重量%である。
【0036】
成分(a)が50重量%未満では、耐熱性、剛性、難燃性不満足であり、一方、成分(b)が5重量%未満では、水蒸気透過性が不満足である。
【0037】
[各成分の溶融せん断粘度比および溶融せん断粘度比のせん断速度依存性]
本発明組成物中における形態は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(a)が少なくともマトリックス(連続相)を形成する形態と、高密度ポリエチレン(b)が少なくとも マトリックス(連続相)を形成する形態とが、分散して存在するものである。
【0038】
本発明の形態をとりうる条件は、ある組成比において280℃、γ30の時の成分(a)と成分(b)の溶融剪断粘度比(A)が海海構造をとる粘度比の値(W1 )より大きい時は、300℃、γ300の時の成分(a)と成分(b)の溶融剪断粘度比(B)が海海構造をとる粘度比(W2 )より小さくなるかまたは、(A)が(W1 )より小さい時は、(B)が(W2 )より大きくなることである。
【0039】
本発明の形態をとり得るに好ましい条件は、成分(a)と成分(b)の体積比が15/85〜95/5の範囲内であり、かつ(A)が(W1 )より大きく100より小さい時は、(B)が(W2 )より小さくなるか、または(A)が(W1 )より小さく0.1より大きい時は、(B)が(W2 )より大きくなることである。
【0040】
さらに好ましい条件としてしては、成分(a)と成分(b)の体積比が25/75〜95/5の範囲内であり、かつ(A)が(W1 )より大きく50より小さい時は、(B)が(W2 )より小さくなるか、または(A)が(W1 )より小さく0.2より大きい時は、(B)が(W2 )より大きくなることである。
【0041】
さらに好ましい条件としてしては、成分(a)と成分(b)の体積比が35/65〜90/10の範囲内であり、かつ(A)が(W1 )より大きく20より小さい時は、(B)が(W2 )より小さくなるか、または(A)が(W1 )より小さく0.6より大きい時は、(B)が(W2 )より大きくなることである。
【0042】
ここで言う溶融剪断粘度とは、JIS K7210の参考試験として記載されている方法、すなわち、溶融した樹脂を一定速度で毛細管から押しだした時のせん断粘度(ずり粘度)のことであり、具体的装置としては、高化式フローテスター(インストロンキャピラリーレオメーター)がある。この装置を用いて、例えば、種々の温度で、ノズル径は1mm、ノズル長さは10mmに設定し、押し出し速度を変化させて測定することができる。
【0043】
[組成物の製造および成形法]
本発明の熱可塑性樹脂組成物を得るための方法としては、各種混練機、例えば、一軸および多軸混練機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラム等で、上記成分を混練した後、冷却固化する方法や適当な溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素およびその誘導体に上記成分を添加し、溶解する成分同志あるいは、溶解する成分と不溶解成分を懸濁状態でまぜる溶液混合法等が用いられる。工業的コストからは、溶融混練法が好ましいが限定されるものではない。
【0044】
本発明組成物の成形方法は、特に限定されるものでなく、熱可塑性樹脂組成物について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、中空成形、押し出し成形、シート成形、熱成形、回転成形、積層成形等の成形方法が適用できる。
【0045】
[成形体の水蒸気透過性]
本発明における成形体の水蒸気透過係数は、25℃でJIS K7129のB法に基づき測定した、湿度90%での値が、0.7g・mm/m2 ・24h以下であり、好ましくは0.6g・mm/m2 ・24h以下、とりわけ好ましくは0.5g・mm/m2 ・24h以下である。
【0046】
この値が0.7g・mm/m2 ・24hを越えると、後で述べるドライアップに至る期間が短く好ましくない。
【0047】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって、詳しく説明するが、本発明はこれらの範囲内に限定されるものでは無い。
【0048】
各成分として、次に示すものを用いた。
【0049】
1.ポリフェニレンエーテル:
ポリ-2,6- ジメチル-1,4- フェニレンエーテル(三菱ガス化学社製 30 ℃クロロホルム中で測定したときの固有粘度が、0.40dl/gのもの)
(以下PPEと略記する)
2.ポリスチレン:
三菱化学社製 HT478(ゴム強化ポリスチレン)
(以下PSと略記する)
3.高密度ポリエチレン:
三菱化学社製 三菱ポリエチ-HD HY340 MFR:1.4
(以後 PE−1と略記する。)
昭和電工社製 ショーレックススーパー4551H MFR:0.02)
(以後 PE−2と略記する。)
4.ビニル芳香族化合物ー共役ジエンブロック共重合体水添物:
シェル社製 クレイトンG1652(スチレンーブタジエンースチレン共 重合体水添物 スチレン含量30重量%)
(以下SEBSと略記する。)
5.難燃剤:
アルベマール社製 Saytex8010(以下S8010と略記する)
住友金属鉱山社製 三酸化アンチモン(以下Sb2 O3 と略記する)
第八化学社製 トリフェニルフォスフェート(以下TPPと略記する)
6.ポリプロピレン:
三菱化学社製 三菱ポリプロBC03C(以下PPと略記する)
7.ABS:
三菱化学社製 タフレックスTFX−210(以下ABSと略記する)
[一般物性評価方法]
樹脂成分を二軸押出機(日本製鋼所製) を用いて、シリンダー温度210℃、スクリュー回転数250rpmで、溶融混練し、樹脂組成物を得た。
【0050】
次にこの樹脂組成物を、射出成形機(日本製鋼所製、型締め力55T )を用い、シリンダー温度240℃、金型温度60℃の条件で、射出成形し、成形品を作成し、以下の方法で評価を行った。
【0051】
結果を表1に示す。
【0052】
(1) アイゾット衝撃試験
ASTM D256に従い、切り欠き付きアイゾット衝撃試験を行った。
【0053】
(2) 曲げ弾性率
ASTM D790による曲げ試験法に従い三点曲げ試験を行った。
【0054】
(3) 熱変形温度
ASTM D648に従い、18.6kg/cm2の条件で、荷重たわみ試験を行った。
【0055】
(4) 燃焼試験
UL94に従い、1/16インチ厚みの試験片で試験を行った。
【0056】
[水蒸気透過性]
上記樹脂組成物を、射出成形機(日本製鋼所製、型締150T)を用い、シリンダー温度240℃、金型温度60℃の条件で、150mm×150mmで厚み1mmのシートを成形し、25℃においてJIS K7129のB法に基づき、湿度90%の評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
[形態観察]
射出成形で得た試験片を切り出し、射出成形方向に、垂直に面だし操作を行い、四酸化ルテニウム、及び四酸化オスミウムにより染色を行い、超薄切片ミクロトームにより、0.1μの厚さの超薄切片を作成する。これを透過型電子顕微鏡(TEM:日本電子社製 JEM100CX)により観察した。
【0058】
その一例を図1、2に示す。図1、2は、実施例1の組成物の成形体を前記の前処理の後、倍率10,000倍で観察した写真であり図1は表層より0.2mm 内側、 図2は表層より1.0mm 内側を観察している。図中、白く見える部分がPPE/PSであり、黒く見える部分がPE、サラミ状に見える部分がHIPS由来のブタジェンゴムである。
【0059】
図1ではPEがマトリックスであり、図2ではPPE/PSがマトリックスであり、これから成分(a)マトリックスと成分(b)マトリックスが混在していることがわかる。
【0060】
[蓄電池としての評価]
7アンペア アワー 密閉形鉛蓄電池を試作して、試験評価をおこなった。
【0061】
試作に使用した電槽材料はABS樹脂(比較例ー4)、ポリプロピレン樹脂(比較例ー5)、従来のポリフェニレンエーテル樹脂(比較例ー1)および本発明による樹脂(実施例ー1)の4種類である。試作した蓄電池を湿度30%、温度60℃の環境で寿命試験をおこなった。寿命試験中の容量試験は1時間率でおこなった。結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
ABS電槽を使用した蓄電池は電槽から電解液が透過し内部抵抗が増加、つまりドライアップにより寿命となった。極板はまだ放電機能を維持できる状態であった。ポリプロピレン樹脂を使用した蓄電池は高温のために蓄電池の内圧に勝てず、電槽が膨らんで内部抵抗が増大して急速に容量が低減した。従来のポリフェニレンエーテル樹脂を使用した蓄電池は曲げ強度がABS樹脂と同等、かつ水蒸気透過係数は約60%であるのでにくらべて, ドライアップに至る期間が増大したが、なお不十分なレベルであった。これに対して、本発明による樹脂を使用した蓄電池は曲げ強度はABS樹脂と同等、かつ水蒸気透過係数は約30%に低減できたのでドライアップに至ることはなく、極板で寿命とすることができたため、最大の寿命性能となった。
【0063】
このように、密閉形蓄電池では使用期間中に水を補うことができないので、ドライアップで寿命となる場合には寿命性能は蓄電池極板の有する本来の寿命とすることができないことがわかった。電槽材質により電解液の透過を抑えることは蓄電池の寿命性能を増大するのに有効であることがわかった。
【0064】
【発明の効果】
本発明は密閉形蓄電池に適した電槽樹脂を適用してドライアップを抑制することで、密閉形蓄電池の長寿命化が可能となった。小型蓄電池は該表面積が大きいために、特にドライアップし易い傾向があるが、小型蓄電池が市場のあらゆる場所で使用されるには長寿命化が必要条件であり、本発明により安価でかつ長寿命の密閉形鉛蓄電池を提供することが可能となった。その工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の組成物の成形体の表層より0.2mm 内側を透過型電子顕微鏡を用いて倍率10,000倍で撮影した写真である。
【図2】実施例1の組成物の成形体の表層より1.0mm 内側を透過型電子顕微鏡を用いて倍率10,000倍で撮影した写真である。
【符号の説明】
なし
Claims (2)
- (a)ポリフェニレンエーテル系樹脂50〜95重量部、(b)高密度ポリエチレン5〜50重量部からなる樹脂組成物を成形してなり、(a)成分がマトリックス(連続相)を形成し(b)成分がドメインを形成する形態(A)と、(b)成分がマトリックス(連続相)を形成し(a)成分がドメインを形成する形態(B)とが、分散して存在する成形体であって、前記成型体の表層付近は形態(B)であり、その内側は形態(A)であり、湿度90%での水蒸気透過係数が25℃において0.7g・mm/m2・24h以下であることを特徴とする密閉形蓄電池用合成樹脂電槽。
- (a)ポリフェニレンエーテル系樹脂50〜95重量部、(b)高密度ポリエチレン5〜50重量部からなる樹脂組成物を成形してなり、(a)成分がマトリックス(連続相)を形成し(b)成分がドメインを形成する形態(A)と、(b)成分がマトリックス(連続相)を形成し(a)成分がドメインを形成する形態(B)とが、分散して存在する成形体であって、前記成型体の表層付近は形態(B)であり、その内側は形態(A)であり、湿度90%での水蒸気透過係数が25℃において0.7g・mm/m 2 ・24h以下であることを特徴とする密閉形蓄電池用合成樹脂ふた。
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