JP3764879B2 - ポリスルホン系樹脂溶液組成物及びこれを用いた積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリスルホン系樹脂溶液組成物及びこれを用いた積層体に関し、更に詳しくは、基材表面に塗布したときに、平滑な塗布層を形成し、かつ有害な成分を発生させることがないポリスルホン系樹脂溶液組成物、及びこのポリスルホン系樹脂溶液組成物を基材表面に塗布、乾燥して得られた積層体に関する。
得られた積層体は、光学特性や表面特性に優れているので耐熱性光学用フィルム等として利用される。
【0002】
【従来の技術】
ポリスルホン系樹脂は、耐熱性、寸法安定性、機械的特性、耐クリープ性、難燃性、人体安全性、耐酸性、耐アルカリ性等において優れ、かつ溶解度パラメーター(SP値)も非常に高く特異の性質を有するので、プリントサーキットボード、コネクター、コイルボビン、ブッシング、コンデンサーフィルム、アルカリ電池ケース等の電気・電子部品、バッテリーキャップ、ヒューズ、センサー、イグニション部品等の自動車部品、限外濾過モジュール、ケミカルポンプ、メッキ用ロール等の工業用品、等の成型品として広く用いられている。
【0003】
また、ポリスルホン系樹脂は、上記のような優れた特性を生かし、被覆材、塗料、接着剤及びフィルムとしても利用されるが、それらを製造するときには、通常はポリスルホン系樹脂を溶剤に溶かし溶液組成物を準備し、これをそのまま、又は基材表面に塗布、乾燥して製品としている。
代表的な製品としては、液晶表示素子用透明電極基板を作るために用いられる耐熱性光学用フィルムがある。
【0004】
従来、液晶表示素子用透明電極基板としては、光学特性にすぐれ、研磨により極めて表面平滑性に優れているガラス基板が採用されてきたが、ガラスは比重が大きく割れ易いので、ガラス基板自体を厚くしなければならず、液晶表示素子を小型化、軽量化、耐衝撃性にすることが困難であり、ガラス基板の有する欠点を改善する方法として、高分子フィルムを用いることが提案されている。(例えば、特許文献1、2参照。)
【0005】
特許文献1、2には、ガラス基板の代わりに導電性酸化金属物質を蒸着した長尺のポリエステルフィルムを用いて液晶表示素子を連続して製造することが示されているが、ガラス基板のような表面平滑性に優れたポリエステルフィルムは得られていない。
特に、高精密な表示を得るためにSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子とした場合には、間隔を0.1μm単位で制御された基板間の液晶の複屈折性を利用して表示を行うために、高分子フィルムの表面平滑性が極めて重要な問題となる。
【0006】
また、上記のポリエステルフィルムの問題点を改善するものとして、ポリスルホン系樹脂からなる少なくとも第1層と、該層よりガラス転移温度の低い光学的に透明な材料(ポリスルホン系樹脂)からなる第2層とを積層してなる耐熱性と透明性に優れた光学プラスチック積層シートが提案されている。(例えば、特許文献3参照。)
【0007】
しかしながら、ここに開示されている積層シートは、各層を構成するプラスチックとして耐熱性、光学特性に優れたポリスルホン系樹脂を採用した点では従来技術より改善されているものの、積層シートを溶融共押出法により成形したり、各層を単独にて溶剤キャスティング法や溶融押出法により必要とする厚みにフィルム化した後ラミネートすることにより得ている。このような方法では、得られた積層シートの表面平滑性が不十分である。
【0008】
一方、ポリスルホン系樹脂の溶液組成物については、強酸性の不活性液体(DMSO(ジメチルスルホオキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド))を主体とし、環式脂肪族ケトンと高揮発性脂肪族ケトンを併用した混合溶剤を用いることが提案されている。(例えば、特許文献3参照。)
【0009】
しかしながら、この溶液組成物は、コーティング表面平滑性に劣り、塗布、乾燥したとき蒸発し、廃棄のため燃焼されたときに、SOXやNOX等の有害成分を発生する問題がある。
【0010】
【特許文献1】
特開昭53−68099
【特許文献2】
特開昭54−126559
【特許文献3】
特開昭49−110725
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、基材表面に塗布したときに、平滑な塗布層を形成し、かつ有害な成分を発生させることがないポリスルホン系樹脂溶液組成物、及びこのポリスルホン系樹脂溶液組成物を基材表面に塗布、乾燥して得られた積層体を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題に鑑み、各種の溶剤からなる混合溶剤を準備し、これにポリスルホン系樹脂を溶解した溶液組成物をつくり、基材フィルムに塗布、乾燥し、積層体を作り、耐熱性光学用フィルムとしての評価を行ったところ、特定の組み合わせの混合溶剤を用いた場合に良好な結果を与えることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ラクトン類(A)と環状ケトン類(C)と沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(D)とからなる混合溶剤に、少なくとも1種のポリスルホン系樹脂を溶解させてなるポリスルホン系樹脂溶液組成物であって、
混合溶剤(100容量部)中におけるラクトン類(A)、環状ケトン類(C)、及び脂肪族ケトン(D)の混合量(容量部)をそれぞれa、c、dとすると、下記の式(1)〜(4)を同時に満足することを特徴とするポリスルホン系樹脂溶液組成物が提供される。
【0014】
80≧a≧10 (1)
70≧c≧5 (2)
50≧d≧5 (3)
a+c+d=100 (4)
【0015】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ポリスルホン系樹脂の配合量が、混合溶剤100重量部に対して1〜30重量部であることを特徴とするポリスルホン系樹脂溶液組成物が提供される。
【0016】
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明のポリスルホン系樹脂溶液組成物を、基材の少なくとも一方の面に塗布、乾燥させてポリスルホン系樹脂塗膜層を形成してなることを特徴とする積層体が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリスルホン系樹脂溶液組成物、及びこれを用いた積層体について、各項目毎に詳細に説明する。
【0018】
1.混合溶剤
本発明において、混合溶剤とは、ポリスルホン系樹脂を溶解し、ポリスルホン系樹脂溶解液を造ることができる混合された溶剤である。
本発明の混合溶剤は、ラクトン類(A)と、環状ケトン類(C)と、沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(D)とから構成され、混合溶剤(100容量部)中におけるラクトン類(A)、環状ケトン類(C)、及び脂肪族ケトン(D)の混合量(容量部)をそれぞれa、c、dとすると、下記の式(1)〜(4)を同時に満足すること満足することが必要である。
80≧a≧10 (1)
70≧c≧5 (2)
50≧d≧5 (3)
a+c+d=100 (4)
【0019】
上記の式(1)〜(4)を同時に満足する範囲を図1の3成分相図に示す。まず、3成分相図の読み方について説明する。
3成分相図は、正三角形であり、正三角形の左側斜辺上にラクトン類(A)の、混合溶剤(100容量部)中の混合量(容量部)が、0容量部(正三角形の頂点)から100容量部(底辺の左端)まで、10容量部刻みに目盛られており、例えばラクトン類(A)の10容量部を示す線分は、図2のaとbを結んだ線分であり、80容量部を示す線分は、図2のcとdを結んだ線分であり、ラクトン類(A)は上記(1)式の範囲であるから図2のドット(各小三角形の中の・)のある領域である。
【0020】
同様に、正三角形の右側斜辺上に、環状ケトン類(C)の混合溶剤(100容量部)中の量(容量部)が、0容量部(底辺の右端)から100容量部(三角形の頂点)まで、10容量部刻みに目盛られており、例えば環状ケトン類(C)の5容量部を示す線分は、図3のeとfを結んだ線分であり、70容量部を示す線分は、図3のgとhを結んだ線分であり、環状ケトン類(C)は上記(2)式の範囲であるから図3のドット(各小三角形の中の・)のある領域である。
【0021】
また、正三角形の底辺上に、脂肪族ケトン(D)の混合溶剤(100容量部)中の量(容量部)が、0容量部(底辺の左端)から100容量部(底辺の右端)まで、容量部刻みに目盛られており、例えば、脂肪族ケトン(D)の5容量部を示す線分は、図4のiとjを結んだ線分であり、50容量部を示す線分は、図4のkとlを結んだ線分であり、脂肪族ケトン(D)は上記(3)式の範囲であるから図4のドット(各小三角形の中の・)のある領域である。
る。
【0022】
したがって、図2〜4の共通ドット範囲は、図5に示すようになり、共通ドット範囲内の各線分の交点、i、ii、iii、iv、v及びviで表すと、これらの交点を結んだ線分で囲まれた内部が、上記の式(1)〜(4)を同時に満足する範囲と一致し、本発明の特許請求範囲となる。
各交点における各溶剤の組成は図5から読み取ると下記のようになる。
【0023】
交点 ラクトン類(A) 環状ケトン類(C) 脂肪族ケトン(D)
i 25容量部 70容量部 5容量部
ii 10容量部 70容量部 20容量部
iii 10容量部 40容量部 50容量部
iv 45容量部 5容量部 50容量部
v 80容量部 5容量部 15容量部
vi 80容量部 15容量部 5容量部
【0024】
i、ii、iii、iv、v及びviで表す交点を結んだ線分で囲まれた範囲の外部における混合溶剤では、ポリスルホン系樹脂を溶解できないか、又はポリスルホン系樹脂を膨潤しゲル化させるだけで好ましくない。
また、ラクトン類(A)と、環状ケトン類(C)と、沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(D)との3種の中から2種を選んだ2成分系混合溶剤では、本発明の目的を達成することはできず、さらにたとえ3成分系混合溶剤であっても、上記の式(1)〜(4)を満足しない範囲のものは同様に本発明の目的を達成することはできず、好ましくない。
この理由については定かではないが、特定比率の3成分系混合溶剤の場合は、ポリスルホン系樹脂の溶解度が相乗効果によって増加し、かつ膨潤しただけのポリスルホン系樹脂を貧溶媒である沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(D)中に分散させ、また沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(D)は低粘度であるので、溶解液の粘度を低下させ、塗布するときに低粘度であるから表面が平滑になると推定される。
【0025】
1.1 ラクトン類(A)又は含芳香環ケトン類(B)
本発明において、ラクトン類(A)又は含芳香環ケトン類(B)は、下記に詳細に述べる溶剤群から1種又は2種以上を用いてもよい。
【0026】
1.1.1 ラクトン類(A)
本発明において、ラクトン類(A)とは、環内にエステル基(−CO−O−)をもつ環状化合物であり、β−プロピオラクトン(100〜102℃)、γ−ブチロラクトン(206℃)、γ−バレロラクトン(206〜207℃)、δ−バレロラクトン(218〜220℃)、ε−カプロラクトン(235.3℃)、エチレンカーボネート(238℃)、プロピレンカーボネート(90℃、at 5mmHg)、ヒノキチオール(140〜141℃、at 10mmHg)、ジケテン(127.4℃)等が例示される。ただし、カッコ内の数値は、測定圧力を記載したもの以外は、103.3kPa(=760mmHg)における沸点であり、これらより1種又は2種以上を用いてもよい。
代表的なラクトン類として、γ−ブチロラクトンの化学式(1)を以下に示す。
【0027】
【化1】
【0028】
1.1.2 含芳香環ケトン類(B)
本発明において、含芳香環ケトン類(B)とは、芳香環基をもつケトン類であり、アセトフェノン(202℃)、p−メチルアセトフェノン(228℃)、プロピオフェノン(218℃)、1−フェニル−1−ブタノン(218〜221℃)、イソプロピルフェニルケトン(217℃)、ベンズアルデヒド(179℃)、o−ヒドロキシベンズアルデヒド(196〜197℃)、m−ヒドロキシベンズアルデヒド(191℃、at 50mmHg)、p−ヒドロキシベンズアルデヒド(116〜117℃)、ベンジルメチルケトン(216℃)、等が例示される。ただし、カッコ内の数値は、測定圧力を記載したもの以外は、103.3kPa(=760mmHg)における沸点であり、これらより1種又は2種以上を用いてもよい。
代表的な含芳香環ケトン類として、アセトフェノンの化学式(2)を以下に示す。
【0029】
【化2】
【0030】
1.2 環状ケトン類(C)
本発明において、環状ケトン類(C)とは、環内にケトン基(−CO−)をもつ環状化合物であり、シクロブタノン(100〜102℃)、シクロペンタノン(130℃)、シクロヘキサノン(156.7℃)、ヘプタノン(179〜181℃)、メチルシクロヘキサノン(165〜166℃)、シクロオクタノン(74℃、at 1.6kPa)、シクロノナノン(Bp.93〜95℃、at 1.6kPa、)、シクロデカノン(Bp.107℃、at 1.7kPa)、シクロウンデカノン(Bp.108℃、at 1.6kPa)、シクロドデカノン(Bp.125℃、at 1.6kPa)、シクロトリデカノン(Bp.138℃、at 1.6kPa)等が例示される。ただし、カッコ内の数値は、測定圧力を記載したもの以外は、103.3kPa(=760mmHg)における沸点であり、これらより1種又は2種以上を用いてもよい。
代表的な環状ケトン類として、シクロヘキサノンの化学式(3)を以下に示す。
【0031】
【化3】
【0032】
1.3 脂肪族ケトン(D)
本発明において、脂肪族ケトン(D)とは、沸点が150℃以下の脂肪族ケトンであり、アセトン(100〜102℃、)、メチルエチルケトン(100〜102℃)、メチルプロピルケトン(100〜102℃、)、メチルイソブチルケトン(100〜102℃)、メチルn−ブチルケトン(100〜102℃))、メチルsec−ブチルケトン(100〜102℃)、ジイソブチルケトン(100〜102℃)、ピナコロン(106.4℃)、メチルイソアミルケトン(144.9℃)、ジエチルケトン(101.8℃)、ジイソプロピルケトン(125.0℃)、エチル−プロピルケトン(123.2℃)、ブチル−エチルケトン(147.3℃)等が例示される。ただし、カッコ内の数値は、103.3kPa(=760mmHg)における沸点であり、これらより1種又は2種以上を用いてもよい。
代表的な脂肪族ケトン(C)として、メチルエチルケトンの化学式(4)を以下に示す。
【0033】
【化4】
【0034】
2.ポリスルホン系樹脂
本発明において、ポリスルホン系樹脂とは、主鎖に芳香環基とその結合基としてスルホン基を有する熱可塑性樹脂であり、ポリスルホン樹脂とポリエーテルスルホン樹脂に大別される。
【0035】
2.1 ポリスルホン樹脂
本発明においてポリスルホン樹脂(PSFと呼称することもある。)とは、代表的には下記の化学式(5)で表されるような構造をもつポリマーである。
【0036】
【化5】
上記の化学式(5)で表されるポリマーは、原料として、ビスフェノールAのアルカリ金属塩と、ビスフェノールSの塩素化化合物を使用し、脱塩化ナトリウム反応で得ているが、ビスフェノールAを、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−オキシド、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−スルファイド、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−メタン、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−パーフロロプロパン、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル等に置換することにより、下記の化学式(6)〜(13)で表されるポリマーが得られ、本発明において使用することができる。
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
PSFとしては、ユーデル(登録商標、米国アモコ社が製造し、テイジンアモコエンジニアリング(株)が輸入販売)、及びユーデルP−3500(登録商標、日産化学工業(株)の製造販売)が、市販品として利用できる。
【0046】
2.2 ポリエーテルスルホン樹脂
本発明において、ポリエーテルスルホン樹脂(PESと呼称することもある。)とは、代表的には下記の化学式(14)で表されるような構造をもつポリマーである。
【0047】
【化14】
【0048】
PESは、ジフェニルエーテルクロロスルホンのフリーデルクラフツ反応により得られる。
PESとしては、ウルトラゾーンE(登録商標、ドイツBASF社が製造し、三井化学(株)が輸入販売)、レーデルA(登録商標、米国アモコ社が製造し、テイジンアモコエンジニアリング(株)が輸入販売)、及びスミカエクセル(登録商標、住友化学(株)の製造販売)が、市販品として利用できる。
【0049】
3.ポリスルホン系樹脂溶液組成物
本発明において、ポリスルホン系樹脂溶液組成物とは、ラクトン類(A)と環状ケトン類(C)と沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(D)とからなる混合溶剤に、少なくとも1種のポリスルホン系樹脂を溶解したものであり、基材の少なくとも一方の面に、塗布、乾燥させてポリスルホン系樹脂塗膜層と基材とからなる積層体を製造するために利用する。
ポリスルホン系樹脂溶液組成物中のポリスルホン系樹脂の配合量は、混合溶剤100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは5〜20重量部である。配合量が、1重量部未満であると、粘度は低くなり塗布しやすくなり、溶液組成物の寿命は長くなるものの、塗膜の厚さが1μm未満となり、好ましくなく、30重量部を超えると、粘度が高くなり均一な厚さの塗膜がえられず、また溶液組成物の寿命が短くなり望ましくない。
また、ポリスルホン系樹脂溶液組成物には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料、滑剤、防カビ剤、防錆剤、レベリング剤等を必要に応じて添加することができる。レベリング剤の例としては、パーフルオロアルキルスルホン酸カルシウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸カリウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸アンモニウム塩、パーフルオロアルキルエチレノキシド、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フッ素化アルキルエステル等を挙げることができる。
本発明のポリスルホン系樹脂溶液組成物は、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、チタニウム等の金属板、ガラス板、金属棒、金属部品、コイル等にコーテイグし、耐熱性、耐薬品性、耐衝撃性、耐引掻性等に優れた製品とすることができ、それらは一般産業機械器具部品、電気・電子部品、自動車部品、事務機器部品、厨房器具類、化学・薬品プラントの配管・貯槽等として利用される。また、金属線の表面に被覆し耐熱性・耐薬品性のワイヤーとして利用できる。また、塗料としても利用できる。
【0050】
4.基材
本発明において、基材とは、フィルム、シート、板、棒、パイプ、コイル、ワイヤー、織布、不織布、紙等であり、積層体の機械的強度を担い、その少なくとも一方の面にポリスルホン系樹脂層を積層させる。
【0051】
基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4メチルペンテン1、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリ−p−フェニレンテレフタラミド、ポリアミド、ポリエーテルフーテルケトン、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化三フッ化エチレン、ポリ四フッ化エチレン、ポリパラキシレン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ユリア樹脂等のプラスチックス;鉄、アルミニウム、銅、チタン、スズ、亜鉛等の金属;ガラス、セラミックス、コンクリート、岩石等の無機物;木材、竹等が例示される。
【0052】
これらの樹脂フィルムの中で、ポリエチレンテレフタレートフィルムがコストやフィッシュアイや厚薄ムラの問題がなく、腰があるので取扱性に優れ、ポリスルホン系樹脂層との接着性にすぐれ、強い密着強度で積層されることが可能であるので最も好ましい基材フィルムである。
【0053】
樹脂フィルムの原料樹脂は、一種であっても、二種以上を混合してもよい。樹脂フィルムの厚みは、例えば1〜200μm、好ましくは3〜150μm、更に好ましくは12〜100μm、特に好ましくは20〜80μmである。1μm未満であると、フィルムの腰がなく取扱性が悪く、200μmを超えると腰が強すぎロール巻きが困難となり、また材料費がかさみ過剰品質となりコストアップとなり好ましくない。
【0054】
基材フィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料、滑剤、防カビ剤、防錆剤等を添加してもよい。
また、ポリスルホン系樹脂塗膜層との界面の接着性を向上させるために、コロナ放電処理やアンダーコート処理等を行ってもよい。
【0055】
5.ポリスルホン系樹脂塗膜層
本発明のポリスルホン系樹脂塗膜層は、光学用フィルムなどとして使用される。光学用フィルムとして使用する場合は、表面平滑性にすぐれていることが必要である。
また、ポリスルホン系樹脂塗膜層は、ドープから容易に溶剤キャスト法で1〜15μmの薄膜としてポリエチレンテレフタレートフィルム上に積層でき、ドライラミネート法に比較し、低コストに高品位の表面保護フィルムを提供することができる。
【0056】
6.積層体
本発明の積層体は、基材フィルムの少なくとも一方の面に、ポリスルホン系樹脂塗膜層を有するものである。
本発明の積層体は、厚さが1〜200μmの基材フィルムの少なくとも一方の面に、ポリスルホン系樹脂のドープを塗布・乾燥し、厚さが0.1〜100μm、好ましくは0.5〜75μm、さらに好ましくは1〜50μmのポリスルホン系樹脂層を積層させることによって製造される。これらの積層体は、光学用フィルムなどとして使用される。
【0057】
7.積層体の製造方法
本発明の積層体は、基材フィルム上にポリスルホン系樹脂溶液組成物を塗布した後、乾燥処理を行うことにより、製造することができる。塗布方法としては、ロールコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティング、エアーナイフコーティング、ワイヤーバーコーティング等が利用できる。基材フィルム上にポリスルホン系樹脂溶液組成物を塗布する時の溶液温度は、生産コスト上20〜50℃が好ましい。
また、乾燥方法としては、50〜150℃で0.1〜5分乾燥させることが好ましい。
【0058】
7.1 ワイヤーバー
本発明において用いるワイヤーバーは特にその構造は限定されないが、図7(A)に示すように、直径5〜25mmの丸い棒状体(ロッド)3に液粘度や塗布膜厚に応じて直径20〜1000μm程度のワイヤー2を密に巻き付けたものである。
このようなワイヤーバーは、図7(B)に示すように、ワイヤーの頂点を結んだ線とワイヤー間に断面が逆三角形状の空間5が多数形成される。この空間5にポリスルホン系樹脂溶液組成物が満たされ基材フィルムの塗布面4aに転写される。
【0059】
7.2 ワイヤーバーを備えた塗布装置
本発明において用いるワイヤーバーを備えた塗布装置は特にその構造は限定されないが、図8(A)または(B)に示すような塗布装置が好ましい。
図8(A)に示す塗布装置は、溶解液導入菅10からポリスルホン系樹脂溶液組成物9を貯槽12に導入し、大径のバックアップロール8にて緩やかに溶液組成物9を掻き上げ、小径のワイヤーバー1に供給されるために、泡が生じたり、溶液組成物9が偏在したりしなく、所定の溶液組成物9をワイヤーバー1に供給することができる。また、ドクターブレイド7を備えているので、所定量以上の溶液組成物9は掻きおとすことができるので、塗布される溶液組成物9の量を更に正確にコントロールできるので、塗布膜の表面平滑度を向上させることができる。
溶解液排出菅11により、連続的に溶解液9が排出されるので、溶液組成物の成分比率を一定に保つことや、表面平滑性を阻害するゲルの生成を防止することができる。
ワイヤーバー1の空間5に溶液組成物9が満たされ、これが素材フィルム塗布面4aに均一に転写され、その後乾燥され積層体が得られる。
【0060】
図8(B)に示す塗布装置は、図8(A)に示す塗布装置の一部を改造したものである。図8(A)の塗布装置より大径のワイヤーバー1を用いているので、表面平滑度はやや劣るものの、塗布膜の厚い積層体が製造できる利点がある。
なお、凹面架台13の凹面形状は、大径のワイヤーバー1の外形形状と同一であり、両者の間隔は数mmのオーダーであるので溶液組成物9のワイヤーバー1への付着量を精密にコントロールすることができ、表面平滑性のすぐれた積層体を得ることができる。
【0061】
8.積層体の用途
本発明の積層体は、液晶表示素子用透明電極のベースフィルム等に用いられる表面平滑性および外観の優れた耐熱性光学フィルム等として用いることができる。
【0062】
【実施例】
以下に、本発明のポリスルホン系溶解液及び積層体を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例1
γ−ブチロラクトン40vol%、シクロヘキサノン30vol%及びメチルエチルケトン30vol%からなる混合溶剤100部(図6にてXとして表示。)に、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)(住友化学工業(株)製、スミカエクセル(登録商標)PES5003P)10wt%を添加し24時間攪拌してポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物を製造した。
次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)(帝人デュポン(株)製、テトロン(登録商標)S(厚さ100μ))を基材フィルムとし、上記のポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物を、図7に示すワイヤーバーを有する塗布装置(図8(A)に示す。)で、乾燥塗膜の厚みが2μmになるようにコーティングを行った。
コーティング後、オーブン中で150℃、5分間乾燥させ、塗膜にべたつきがないことを確認し、乾燥終了とした。
評価結果を表1に示した。
【0064】
実施例2
γ−ブチロラクトン30vol%、シクロヘキサノン50vol%及びメチルエチルケトン20vol%からなる混合溶剤100部(図6にてYとして表示。)に、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)(住友化学工業(株)製、スミカエクセル(登録商標)PES5003P)5wt%を添加し24時間攪拌してポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物を製造した。
次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)(帝人デュポン(株)製、テトロン(登録商標)S(厚さ100μ))を基材フィルムとし、上記のポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物を、図7に示すワイヤーバーを有する塗布装置(図8(A)に示す。)で、乾燥塗膜の厚みが2μmになるようにコーティングを行った。
コーティング後、オーブン中で150℃、5分間乾燥させ、塗膜にべたつきがないことを確認し、乾燥終了とした。
評価結果を表1に示した。
【0065】
実施例3(参考例)
アセトフェノン40vol%、シクロヘキサノン30vol%及びメチルエチルケトン30vol%からなる混合溶剤100部(図6にてZとして表示。)に、ポリスルホン樹脂(PSF)(日産化学工業(株)製、ユーデル(登録商標)P−3500)を5wt%添加し24時間攪拌してポリスルホン樹脂溶液組成物を製造した。
次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)(帝人デュポン(株)製、テトロン(登録商標)S(厚さ100μ))を基材フィルムとし、上記のポリスルホン樹脂溶液組成物を、図7に示すワイヤーバーを有する塗布装置(図8(A)に示す。)で、乾燥塗膜の厚みが2μmになるようにコーティングを行った。
コーティング後、オーブン中で150℃、5分間乾燥させ、塗膜にべたつきがないことを確認し、乾燥終了とした。
評価結果を表1に示した。
【0066】
比較例1
γ−ブチロラクトン20vol%及びメチルエチルケトン80vol%からなる混合溶剤100部(図6にてSとして表示。)に、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)(住友化学工業(株)製、スミカエクセル(登録商標)PES5003P)を10wt%を添加し24時間攪拌してポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物を製造した。ポリエーテルスルホン樹脂の未溶解物が残ったので、コーティングは行わなかった。
評価結果を表1に示した。
【0067】
比較例2
シクロヘキサノン80vol%及びメチルエチルケトン20vol%からなる混合溶剤(図6にてTとして表示。)に、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)(住友化学工業(株)製、スミカエクセル(登録商標)PES5003P)を10wt%を添加し24時間攪拌してポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物を製造した。溶解後10時間の放置で白化・増粘が観察されたので、コーティングは行わなかった。
評価結果を表1に示した。
【0068】
比較例3
ジメチルホルムアミド20vol%、シクロヘキサノン40vol%及びメチルエチルケトン40vol%からなる混合溶剤100部に、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)(住友化学工業(株)製、スミカエクセル(登録商標)PES5003P)を10wt%を添加し24時間攪拌してポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物を製造した。
次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)(帝人デュポン(株)製、テトロン(登録商標)S(厚さ100μ))を基材フィルムとし、上記のポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物を、図7に示すワイヤーバーを有する塗布装置(図8(A)に示す。)で、乾燥塗膜の厚みが2μmになるようにコーティングを行った。
コーティング後、オーブン中で150℃、5分間乾燥させ、塗膜にべたつきがないことを確認し、乾燥終了とした。
評価結果を表1に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
溶液状態
溶解○:未溶解物がなく、溶解後10時間密封し、液に変化のないもの。
不溶×:未溶解物が残るもの。
ゲル化×:溶解後10時間の放置で白化・増粘が見られるもの。
フィルム外観
良好○:乾燥後、膜が平滑なもの。
凹凸×:乾燥後、膜が波打って平滑性に欠けるもの。
【0071】
評価結果
実施例1〜3:溶液組成物が安定し、コーティング後の面も平滑で良好。
比較例1 :液中に未溶解分が残り、塗布できない。
比較例2 :液が増粘して、塗布できない。
比較例3 :塗布膜がの波打が目立ち外観不良。
【0072】
実施例4
実施例1で製造した積層体を使用し、その用途である液晶表示素子を下記の工程で作成した。
実施例1で製造した積層体上に、DCマグネトロン法により、初期真空度3×10−4Paの状態から酸素/アルゴンガス9%の混合ガスを導入して3×10−1Paの条件下においてスパッタリングを行い500Å厚のSiO2を得た。続いて、透明導電膜として、同じくDCマグネトロン法により初期真空度3×10−4Paの状態から酸素/アルゴンガス4%の混合ガスを導入して1×10−1Paの条件下においてスパッタリングを行いIn/In+Snの原子比が0.98である酸化インジウム錫(ITO)からなる透明導電膜を得た。測定の結果、膜厚は1600Å、非抵抗は4×10−4Ω−cmであった。ITOを成膜後、レジストを塗布して現像し、エッチング液として10vol%HCL、液温40℃中でパターンエッチングし、対角長さ3インチ、L/S=150/50μmの表示パターンを形成した。パターン形成後、STN用配向膜を塗布し、150℃2hrの焼成処理を行った後、240度ツイストの配向となるようラビング処理を行った。ラビング処理後、スペーサーを散布し、シール剤を塗布し、130℃でシール硬化させてセル化し、STN用液晶組成物を注入した。偏光板をコントラストの最大となる位置に貼り合わせて液晶表示素子を作製した。
【0073】
評価結果
この液晶表示素子を駆動電圧0Vから±5Vで点灯試験を行ったところ、液晶のセルギャップ異常による表示ムラは見られず良好な表示を示した。
【0074】
【発明の効果】
本発明のポリスルホン系樹溶液組成物は、溶液組成物が安定し、液中に未溶解分が残ったり、液が増粘したり、ゲル化することなく、塗布基材表面に塗布したときに、平滑な塗布層を形成し、かつ有害な成分を発生させることがない効果がある。
また、このポリスルホン系樹脂溶液組成物を基材表面に塗布、乾燥して得られた積層体は、表面平滑性に優れ、光学的な特性にすぐれているので耐熱性光学用フィルムとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の混合溶剤を構成する3成分相図。
【図2】 ラクトン類(A)が、80≧a≧10を満足する範囲を示す図。
【図3】環状ケトン類(C)が、70≧c≧5を満足する範囲を示す図。
【図4】脂肪族ケトン(D)が、50≧d≧5を満足する範囲を示す図。
【図5】図3〜5の共通範囲を示す図。
【図6】実施例及び比較例にて用いた溶剤混合物の組成を示す図。
【図7】ワイヤーバーの概念図。図(A)は断面図であり、図(B)は側面図の一部を示す。
【図8】ワイヤーバーを有する塗布装置の概念図。図(A)は小径のワイヤーバーを有する塗布装置の概念図であり、図(B)は大径のワイヤーバーを有する塗布装置の概念図平面図。
【符号の説明】
1 ワイヤーバー(断面図)
1’ ワイヤーバー(側面図)
2 ワイヤー
3 ロッド(バー)
4 基材フィルム
4a 基材フィルムの溶液組成物塗布面
5 ワイヤーの頂点を結んだ線とワイヤー間にできる空間
6 基材フィルムの送りロール
7 ドクターブレイド
8 バックアップロール
9 ポリスルホン系樹脂溶液組成物
10 溶液組成物導入管
11 溶液組成物排出管
12 貯槽
13 凹面架台
14 攪拌機
15 小径のワイヤーバーを有する塗布装置
16 大径のワイヤーバーを有する塗布装置
Claims (3)
- ラクトン類(A)と環状ケトン類(C)と沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(D)とからなる混合溶剤に、少なくとも1種のポリスルホン系樹脂を溶解させてなるポリスルホン系樹脂溶液組成物であって、
混合溶剤(100容量部)中におけるラクトン類(A)、環状ケトン類(C)、及び脂肪族ケトン(D)の混合量(容量部)をそれぞれa、c、dとすると、下記の式(1)〜(4)を同時に満足することを特徴とするポリスルホン系樹脂溶液組成物。
80≧a≧10 (1)
70≧c≧5 (2)
50≧d≧5 (3)
a+c+d=100 (4) - ポリスルホン系樹脂の配合量が、混合溶剤100重量部に対して1〜30重量部であることを特徴とする請求項1に記載のポリスルホン系樹脂溶液組成物。
- 請求項1又は2に記載のポリスルホン系樹脂溶液組成物を、基材の少なくとも一方の面に塗布、乾燥させてポリスルホン系樹脂塗膜層を形成してなることを特徴とする積層体。
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