JP2002338708A - ポリエステルフィルム - Google Patents

ポリエステルフィルム

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勝三 三橋
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 優れた電気絶縁特性を有し、フィルムコンデ
ンサ用途をはじめとする各種電気部品用途において好適
なポリエステルフィルムを提供する。 【解決手段】 フィルム中の灰化残存物量が1000p
pm以下であることを特徴とするポリエステルフィル
ム。灰化残存物量は100ppm以下であることが好ま
しい。また、フィルムのガラス転移点は100℃以上で
あることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気絶縁性に優れ
たポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルフィルムは、その優れた強
度と絶縁抵抗などから絶縁性を必要とする各種電気部品
に使用されてきた。例えば、フィルムコンデンサ用途、
フレキシブルプリント配線基板用途、電線被覆用途など
が挙げられる。これらの用途で使用されるポリエステル
フィルムは、高電圧が長時間印加されても絶縁性を保持
することが求められており、特に絶縁性が低下する高温
域における保持時間あるいは印加電圧の増加圧力がます
ます高まっている。かかる要求に応えるべく、従来最も
良く使用されてきたポリエチレンテレフタレートに代え
て、ポリエチレンナフタレートなど新規素材が使用され
る例が増えてきており、一定の成果は上げてはいるが、
尚も更なる絶縁特性の向上が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記実情に
鑑みなされたものであって、その解決課題は、優れた電
気絶縁特性を有し、フィルムコンデンサ用途をはじめと
する各種電気部品用途において好適なポリエステルフィ
ルムを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
に鑑み鋭意検討の結果、フィルム中の灰化残存物量を極
限まで低減することによって絶縁特性を著しく向上させ
うることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち、本発明の要旨は、フィルム中の
灰化残存物量が1000ppm以下であることを特徴と
するポリエステルフィルムに存する。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうポリエステルとは、ジカルボン酸成分とグ
リコール成分とが重縮合されたポリマーであって、ジカ
ルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、
フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’
−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、あ
るいはアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4
−シクロヘキシルジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸
が挙げられ、グリコールの例としては、エチレングリコ
ール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、
トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、テ
トラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、
1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0007】本発明のフィルムは、灰化残存物量が10
00ppm以下、好ましくは500ppm以下、さらに
好ましくは100ppmである。灰化残存物量が100
0ppmを超えると、電気絶縁性が低下するため好まし
くない。一般的にポリエステルフィルムに含まれるもの
のうち、灰化処理した際に残存する主な無機化合物成分
として、ポリエステル重合に関わる成分と、滑り性付与
のため形成される表面突起の核剤としての粒子成分とが
挙げられる。前者として最も一般的なものは三酸化アン
チモン/正リン酸/酢酸マグネシウム等々の混合系であ
り、通常400〜600ppm以上含まれている。後者
の例としては、無定形シリカ、球状シリカ、天然炭酸カ
ルシウム、合成炭酸カルシウム、アルミナ、カオリン、
タルク等々が挙げられ、一般的には300ppm以上含
有される。
【0008】特にコンデンサ用等のように厚さが10μ
mに満たない薄番手においては、表面突起形成能が著し
く低下するため、通常3000ppm以上の粒子が含有
される。ところが、重合触媒系も滑剤粒子系もポリエス
テルが本来有する電気絶縁特性を損ねるという点では等
しく負因子となっており、本発明のフィルムは両者およ
び多目的で含有される他無機成分を含め、1000pp
m以下としなければならない。かかる灰化残存物量を実
現するためには、前述の2要素の少なくとも一方の要素
をほとんど無視できるようにすれば良い。
【0009】滑剤粒子の含有量を著しく低減するために
は、使用するポリエステルに粒子を含有を極力低減させ
れば良い。ただし、単に無粒子系や極少粒子系としただ
けでは、滑り性が極端に低下するためフィルム製造時お
よびフィルム使用時におけるハンドリングに支障が出
る。そこで、押出成形後延伸前の工程において、滑剤粒
子を含有するコート層を設けることで、滑り性を付与す
る方法などの措置を取ることが必要となる。かかる手法
に使用される滑剤粒子は成分としてはフィルム含有に使
用されるものをそのまま使用することができ、サイズを
コート層厚みに合わせ、その粒径を数十nmレベルとし
た上で、厚さ数十nmのコート層に数重量%含有されて
いれば十分である。一方、重合触媒系の含有量を著しく
低減するためには、重合主触媒を最も一般的なアンチモ
ン化合物ではなくチタン化合物とする等の処方を取るこ
とが好ましい。重合主触媒のチタン化合物の例として
は、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネー
ト、等々が挙げられ、チタン元素量として数ppmあれ
ば工業的に生産可能な重合時間内で十分にポリエステル
の製造が可能である。
【0010】本発明のフィルムは、耐熱性の観点からガ
ラス転移温度が100℃以上、可能であれば110℃以
上であることが推奨される。ガラス転移温度が100℃
以上であれば、室温よりも高い温度雰囲気下、特に湿潤
かつ高温雰囲気下において優れた電気絶縁特性を発揮す
る。ガラス転移温度が100℃であって、工業的にフィ
ルム製造が可能な好ましいポリエステル素材の例として
エチレンナフタレート単位、すなわち2,6−ナフタレ
ンジカルボン酸成分とエチレングリコール成分とが縮合
したエステル単位を主たる成分とするポリエステルが挙
げられる。とりわけエステル単位の97モル%以上がエ
チレンナフタレートであるポリエチレンナフタレートが
好適である。本発明で得られるポリエステルフィルムに
は、発明の主旨を損ねない限りにおいて、各種表面処理
を行うことができる。前述の滑り性付与のための易滑コ
ート層の他に、要すれば紫外線吸収剤等々の耐候性コー
ト層、遮光コート層等を設けてもよい。また、染料など
の有機化合物をフィルム中に含有させてもよい。
【0011】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の
実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例に
おいて、「部」とあるのは重量部の意味である。
【0012】(1)灰化残存物量[ppm] 試料フィルムを秤量した上で硫酸を適当量含ませた上
で、白金坩堝内に入れガスバーナーで灰化処理を行っ
た。得られた灰化残存物を秤量し、元の試料フィルムに
対する比率を求め灰化残存物量とした。
【0013】(2)ガラス転移温度[℃] 試料フィルムを窒素雰囲気下溶融した後液体窒素に浸漬
し急冷固化したガラス固体を調製する。得られたガラス
固体を昇温速度10℃/分にてDSC測定を行い、ガラ
ス転移温度を求めた。
【0014】(3)残存率[%] 試料フィルムよりをアルミ箔と重ね合わせて巻き回し、
端面にメタリコンを施した後、各電極端子にリ−ドを取
りつけてコンデンサーを作製する。得られたコンデンサ
を135℃大気圧下にて500Vの直流電圧を印加し続
け、5時間後に尚も絶縁特性を保持している素子の比率
すなわち残存率を求めた。残存率が80%以上であるも
のを高温絶縁性良好、90%以上であるものを高温絶縁
性優良とした。
【0015】(ポリエステルの製造) ・ポリエステルA 2,6−ナフタレンジカルボン酸100部とエチレング
リコール70部とを反応器に仕込み、エステル交換を行
った。すなわち、反応開始温度を225℃、内圧を0.
9kg/cm3とし反応を開始し、その後徐々に反応温
度を上昇させ、4時間後に260℃まで昇温し、エステ
ル交換反応を終了させた。次いで正燐酸をポリエステル
樹脂の理論収量に対して燐原子として18ppmとなる
ように、次いで酢酸コバルト4水和物をポリエステル樹
脂の理論収量に対してコバルト原子として15ppmと
なるように、さらにテトラ−n−ブチルチタネートを、
ポリエステル樹脂の理論収量に対してチタン原子として
5ppmとなるようにそれぞれ順次添加し、重縮合反応
を行った。すなわち、反応温度を260℃から徐々に高
めるとともに圧力を常圧から徐々に減じ、2時間後に温
度を280℃、圧力を1mmHg以下とし、所定の時間
経った時点で反応を停止し、ポリエステルAを得た。ポ
リエステルAの固有粘度は0.61dl/gであった。
【0016】・ポリエステルB テトラ−n−ブチルチタネート添加後、凝集シリカ(平
均粒径0.3μm)のエチレングリコールスラリーを添
加した他はポリエステルAと同様にしてポリエステルB
を得た。ポリエステルBの固有粘度は0.61dl/
g、含有シリカ濃度は300ppmであった。
【0017】・ポリエステルC 重合主触媒をテトラ−n−ブチルチタネート5ppmに
代えて、三酸化アンチモン300ppmとした他はポリ
エステルAと同様にしてポリエステルCを得た。ポリエ
ステルCの固有粘度は0.60dl/gであった。
【0018】・ポリエステルD 三酸化アンチモン添加後、無定形シリカ(平均粒径1.
3μm)のエチレングリコールスラリーを添加した他は
ポリエステルCと同様にしてポリエステルDを得た。ポ
リエステルDの固有粘度は0.62dl/g、含有シリ
カ濃度は5000ppmであった。
【0019】・ポリエステルE 2,6−ナフタレンジカルボン酸100部に代えて、テ
レフタル酸100部とした他はポリエステルAと同様に
してポリエステルEを得た。ポリエステルEの固有粘度
は0.70dl/gであった。
【0020】実施例1 ポリエステルAをベント式2軸押出機にて290℃で溶
融し、Tダイよりシート状に押し出した。押し出し後直
ちに冷却ドラム上で50℃まで急冷し実質的に非晶質の
フィルムを得た。得られた非晶質フィルムに日産化学
(株)製シリカ微粒子SL−YLを水分散系ポリエステ
ル塗布剤と混合したものをコーティングした。塗布層の
乾燥後、ロール延伸機にて長手方向に130℃で4.0
倍延伸し、さらにテンター延伸機にて、横方向に160
℃で4.0倍延伸を施した後、引き続きテンター内で幅
方向に7%の弛緩を施しながら240℃1秒間の熱固定
を施し、さらに幅を固定して160℃1秒間の熱固定を
施した後、室温まで冷却して巻き取りフィルム製品とし
た。得られたフィルムは、厚さ3.7μm、固有粘度
0.57dl/gであった。
【0021】実施例2 ポリエステルAに代えて、ポリエステルBを使用したほ
かは実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得
た。得られたフィルムは、厚さ3.7μm、固有粘度
0.57dl/gであった。
【0022】実施例3 ポリエステルAに代えて、ポリエステルCを使用したほ
かは実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得
た。得られたフィルムは、厚さ3.7μm、固有粘度
0.56dl/gであった。
【0023】比較例1 ポリエステルAに代えて、ポリエステルDを使用したほ
かは実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得
た。得られたフィルムは、厚さ3.7μm、固有粘度
0.58dl/gであった。
【0024】比較例2 ポリエステルAに代えて、ポリエステルAとポリエステ
ルEとを重量比60:40で混合したポリエステルを使
用し、さらに縦延伸温度を130℃に代えて85℃、横
延伸温度を160℃に代えて100℃としたほかは実施
例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。得られ
たフィルムは、厚さ3.7μm、固有粘度0.62dl
/gであった。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】本発明のポリエステルフィルムは、優れ
た電気絶縁特性を有し、フィルムコンデンサ用途をはじ
めとする各種電気部品用途のポリエステルフィルムとし
て好適であり、その工業的価値は非常に高い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 義和 滋賀県坂田郡山東町井之口 347番地 三 菱化学ポリエステルフィルム株式会社中央 研究所内 Fターム(参考) 4F071 AA43 AA86 AF39 AF53 AH12 BC01 4F210 AA24 AC03 AG01 AH33 AR06 AR12 QA02 QA03 QC06 QG01 QW07

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フィルム中の灰化残存物量が1000p
    pm以下であることを特徴とするポリエステルフィル
    ム。
  2. 【請求項2】 フィルム中の灰化残存物量が100pp
    m以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエス
    テルフィルム。
  3. 【請求項3】 ガラス転移温度が100℃以上であるこ
    とを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエ
    ステルフィルム。
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