JP3763384B2 - エンジンマウント装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、振動体であるエンジンアセンブリを車体側のメンバ等に取付ける際に用いられるエンジンマウント装置に関するものであり、特に、インシュレータにつながるエンジン側連結部材(第一の連結部材)の位置ずれを防止し、これによって、エンジンアセンブリ搭載時に、その位置決めが的確に行なわれるようにしたエンジンマウント装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のエンジンマウント装置においては、本エンジンマウント装置の搬送時等においてゴム状インシュレータにつながるエンジン側連結部材が位置ずれ(角度位置ずれ)を生じ、エンジン搭載時に位置決めが正確に行なわれないという問題点がある。このような位置ずれの問題を解消するために、エンジン側連結部材あるいは当該エンジン側連結部材の一部に設けられたストッパゴムと、当該ストッパゴムの接触するストッパホルダ(ブラケット)との間に、ゴムシート等からなる弾性材を挟んだ状態で全体を組付け、上記ストッパゴムとストッパホルダとの間に予備圧縮力を与えるようにしているものがある。この予備圧縮力の作用によって、エンジン側連結部材の角度位置ずれを抑止するようにしているものである。また、これとは別に、ストッパゴムとストッパホルダとの間に、凹部及び凸部からなる機械的な相対変位規制手段を設け、これによってエンジン側連結部材の角度位置ずれを防止するようにしているものがある(特開平10−252828号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記ゴムシート等を挟み込むタイプのものにおいては、エンジンマウント装置組付け時に、別途ゴムシートを挟み込ませる作業が必要となるとともに、更に、車両への搭載後において上記挟み込まれたゴムシートを取り除く作業が必要となる等作業効率が良くないと言う問題点を有する。また、余分なゴムシートを用意しなければならず、エンジンマウント装置として、全体的にコストアップにならざるを得ないと言う問題点を有する。また、特開平10−252828号公報に記載のもののような相対変位規制手段を設けるようにしたものにおいては、それぞれの部材に設けられた凹凸部の係合作用(嵌合作用)により、ある程度の抵抗力が生じ、これによって角度位置ずれをある程度までは防止することができるが、エンジンへの装着後(エンジン搭載後)における一般使用時において、上記ストッパゴムとストッパホルダとの間に斜め方向の動きが生じた場合、上記いずれか一方の部材に設けられた凸部が他方の部材であるストッパゴムのところに頻繁に接触することとなる。すなわち、両者間のクリアランスが実質的に少なくなるので、ストッパ当り現象が頻繁に起こることとなり、緩衝機能を十分に発揮させることができないと言う問題点がある。このような問題点を解決するために、上記ストッパゴムに潤滑性(すべり性)に優れた高摺動性ゴムを用い、これによって、上記エンジン側連結部材の角度位置ずれによって生じたインシュレータゴムのねじりトルクを利用し、上記エンジン側連結部材を元の位置に戻すようにした位置決め機構部を有するエンジンマウント装置を提供しようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、
振動体であるエンジン側に連結される第一の連結部材と、車体側のメンバ等に連結される第二の連結部材と、これら第一の連結部材と第二の連結部材との間に設けられるものであって上記エンジン側からの振動を吸収及び遮断する役目を果たすゴム状インシュレータ等からなるエンジンマウント装置において、
前記第一の連結部材には、エンジン搭載時にエンジン側のブラケットに連結されるものであって上記第一の連結部材の一部を形成する連結ブラケットがボルト等の締結手段にて一体的に結合され、前記連結ブラケットのところに、上記エンジン側からの大振幅の振動を抑止するストッパゴムを設けるとともに、当該ストッパゴムの一部に隆起部または凹陥部を設け、一方、当該ストッパゴムと対向するように形成されるものであって本エンジンマウント装置の組付け時においては上記ストッパゴムと常時接触するように形成されたストッパホルダを設け、更に、当該ストッパホルダのところに、本エンジンマウント装置の組付け時において上記ストッパゴムに設けられた上記隆起部または凹陥部と係合するように形成されたリセス部または凸部からなる係合部を設け、
前記ストッパホルダは、前記第二の連結部材に一体的に連結される剛体状の板状の部材から成り、前記リセス部は、前記ストッパホルダの両板面のうち前記ストッパゴムと接触する側の一方の板面部分を凹ませるとともに他方の板面部分を突出させて構成され、前記凸部は、前記ストッパホルダの両板面のうち前記ストッパゴムと接触する側の一方の板面部分を突出させるとともに他方の板面部分を凹ませて構成され、
本エンジンマウント装置が組立てられた状態で、前記第一の連結部材の一部を形成する連結ブラケットに前記ゴム状インシュレータをねじり廻すような力が加わって、上記隆起部あるいは凹陥部が前記係合部から一時的に外れても、前記ゴム状インシュレータのところに生じた捩り反力によって上記連結ブラケットが元の位置へと戻されて、上記隆起部または凹陥部と係合部とが相互に係合し合うようになる角度位置ずれ防止手段を設け、
前記角度位置ずれ防止手段は、上記隆起部または凹陥部と、前記リセス部または凸部からなる係合部とを円錐台状に形成し、かつ、上記ストッパゴムを、そのゴム母材成分中に2ないし30重量パーセントの脂肪酸アミドを有する高摺動性素材からなるようにして構成されていることを特徴とする。
【0005】
このような構成を採ることにより、本発明のものにおいては、エンジンマウントアセンブリ状態、すなわち、組立状態において、上記隆起部等が上記係合部に係合することとなり、インシュレータにつながる第一の連結部材(エンジン側連結部材)は、その位置が正確に規制されることとなる。また、仮に位置ずれ(角度位置ずれ)が生じたとしても、上記ストッパゴムは潤滑性に優れた高摺動性ゴム材からなるものであり、上記ストッパホルダとの間においてすべり易くなっているので、インシュレータゴムのねじり作用によって生ずる回転力(復元力)によって、上記ストッパゴムとストッパホルダとの間は、ストッパゴムのすべり作用により元の位置(状態)へと戻されることとなる。すなわち、ストッパゴム側に設けられた隆起部等はストッパホルダ側の係合部のところに収まることとなる。その結果、エンジン搭載時において、エンジン側ブラケットとの間にて上記第一の連結部材(エンジン側連結部材)の位置合せが正確に行なわれることとなり、エンジン搭載作業の効率化を図ることができるようになる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図1ないし図3を基に説明する。本実施の形態に関するものの、その構成は、図1に示す如く、振動体を成すエンジン側に連結される第一の連結部材(エンジン側連結部材)1と、車体側のメンバ等に連結される第二の連結部材(車体側連結部材)3と、これらエンジン側連結部材1と車体側連結部材3との間に設けられるものであって上記エンジン側からの振動を吸収及び遮断するインシュレータ2と、からなることを基本とするものである。
【0007】
このような基本構成からなるものにおいて、上記インシュレータ2はゴム状弾性体からなるものであり、上記第一の連結部材であるエンジン側連結部材1に加硫接着手段等により一体的に結合されるようになっているものである。そして、このようなゴム状のインシュレータ2に一体的に結合されるエンジン側連結部材1には、後にエンジン搭載時にエンジン側のブラケット(エンジン側ブラケット)9に連結されるものであって上記第一の連結部材(エンジン側連結部材)1の一部を形成する連結ブラケット11がボルト等の締結手段8にて一体的に結合されるようになっているものである。
【0008】
このような構成からなる第一の連結部材を形成するエンジン側連結部材1あるいは連結ブラケット11のところには、図1に示す如く、ストッパゴム12が加硫接着手段等により一体的に設けられるようになっているものである。このストッパゴム12はエンジン側からの入力振動の振幅が異常に大きくなったときに、この異常振幅を有する振動を抑え込むようになっているものである。そして、このようなストッパゴム12の一部には、後に述べるストッパホルダ5に設けられた係合部51と係合する隆起部15が設けられるようになっている。また、このようなストッパゴム12と対向するところにはストッパホルダ5が設けられるようになっている。このストッパホルダ5は、車体側連結部材3に一体的に連結される剛体状の部材からなるものであり、本エンジンマウント装置がアセンブリされた状態(組付けられた状態)においては、上記ゴム状インシュレータ2の弾性反発力によって上記ストッパゴム12が常時押し付けられるようになっているものである。また、本ストッパホルダ5の一部には上記ストッパゴム12の隆起部15等に対向するように凹陥状のリセス部等からなる係合部51が設けられるようになっている。従って、エンジンマウント装置として組立てられた状態においては本ストッパホルダ5と上記ストッパゴム12とは常に接触し合うとともに、上記ストッパゴム12に設けられた隆起部15と本ストッパホルダ5に形成されたリセス状の係合部51とは常に係合し合うようになっているものである。
【0009】
このような構成からなるものにおいて、上記ストッパゴム12、特に、上記ストッパホルダ5の係合部51と係合作用をする隆起部15の周りは、潤滑性に優れた高摺動性ゴム材にて形成されるようになっているものである。そして、本実施の形態のものにおいては、この高摺動性ゴム材として、ゴム母材中に2〜30重量パーセントの脂肪酸アミドを有するものが採用されるようになっている。なお、この脂肪酸アミドに関しては、更に潤滑性を高めさせるようにするためには、上記脂肪酸アミドの量を5〜30重量パーセントの値に限定するのが好ましい。
【0010】
なお、このようなストッパゴム12とストッパホルダ5との間の係合状態は、図1及び図2に示すような構成のものの外に、例えば図3に示すようなものも考えられる。すなわち、このものは、上記とは逆に、ストッパゴム12側に凹陥部15’が設けられるとともに、ストッパホルダ5側には凸部51’からなる係合部が設けられるようになっているものである。そして、この凸部51’からなる係合部のところがストッパゴム12に設けられた凹陥部15’のところに係合するようになっているものである。
【0011】
このような構成からなる本エンジンマウント装置の第一の連結部材1の一部を形成する連結ブラケット11のところには、エンジン本体に取付けられるエンジン側ブラケット9との連結(結合)に供せられるスタッドボルト状の締結手段99が設けられるようになっている。この連結ブラケット11の先端部に設けられた締結手段99を介して、本エンジンマウント装置とエンジンとの結合が行なわれるようになっているものである。
【0012】
次に、このような構成からなる本実施の形態のものについての、その作用等について説明する。まず、本エンジンマウント装置がエンジンと車体側のメンバとの間に設置された状態においては、エンジン側からの重さ(荷重)の入力により、上記インシュレータ2が撓んで、エンジン側連結部材1及び連結ブラケット11等は、図1の二点鎖線図示のように変位をする。その結果、ストッパゴム12に設けられた隆起部15あるいは凹陥部15’とストッパホルダ5の係合部51との間の係合関係は解除され(開放され)、連結ブラケット11等は自由状態となる。従って、エンジン側からの入力振動は連結ブラケット11及びエンジン側連結部材1を介してゴム状インシュレータ2へと伝播される。そして、このインシュレータ2のところで吸収または遮断されることとなる。また、エンジン側からの大振幅の入力振動は、上記ストッパゴム12のストッパホルダ5への接触によって抑え込まれることとなる。
【0013】
このようなエンジンマウント装置としての一般的な作用のほかに、本実施の形態のものにおいては、本エンジンマウント装置が組立てられた状態にて搬送段階にあるような場合において、上記連結ブラケット11のところに不当な力が加わって上記ストッパゴム12の隆起部15とストッパホルダ5の係合部51との間の係合状態が外れたとしても、上記隆起部15のところが滑り移動をして、すぐに元の状態に戻って来る。従って、本連結ブラケット11及びゴム状インシュレータ2につながるエンジン側連結部材1等が不適当な位置にずれたままの状態となるようなことが無い。
【0014】
すなわち、図2において、連結ブラケット11の先端部のところに本連結ブラケット11及びエンジン側連結部材1につながるゴム状インシュレータ2をねじり廻すような力(モーメント)が加わったとすると、上記連結ブラケット11のところに設けられたストッパゴム12の隆起部15あるいは図3に示す凹陥部15’のところが、ストッパホルダ5に設けられた係合部51のところから一時的に外れることとなる。しかしながら、上記ストッパゴム12の隆起部15等は潤滑性に優れた高摺動性ゴム材にて形成されているので、ストッパホルダ5との間において滑り性が良い。その結果、上記インシュレータ2のところに生じた捩り反力(トルク)によって上記連結ブラケット11は元の状態(位置)へと戻されることとなる。すなわち、ストッパゴム12に設けられた隆起部15等は直ちに元の位置であるストッパホルダ5の係合部51のところへと戻され、ここで相互に係合し合うこととなる。このように、連結ブラケット11等は、その位置ずれ、特に角度位置ずれを起したままの状態に保持されるようなことが無い。従って、エンジン側ブラケット9と上記連結ブラケット11の先端部に設けられた締結手段(スタッドボルト)99との位置関係がずれた状態のままに放置されるようなことが無く、このようなエンジンマウント装置を介してのエンジン搭載作業等は円滑に行なわれることとなる。すなわち、エンジン搭載作業の効率化を図ることができるようになる。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、振動体であるエンジン側に連結される第一の連結部材と、車体側のメンバ等に連結される第二の連結部材と、これら第一の連結部材と第二の連結部材との間に設けられるものであって上記エンジン側からの振動を吸収及び遮断する役目を果すゴム状インシュレータ等からなるエンジンマウント装置に関して、上記第一の連結部材を形成する部材のところに、上記エンジン側からの大振幅の振動を抑止するストッパゴムを設けるとともに、当該ストッパゴムの一部に隆起部または凹陥部を設け、一方、当該ストッパゴムと対向するように形成されるものであって本エンジンマウント装置の組付け時においては上記ストッパゴムと常時接触するように形成されたストッパホルダを設け、更に、当該ストッパホルダのところに、本エンジンマウント装置の組付け時において上記ストッパゴムに設けられた上記隆起部または凹陥部と係合するように形成されたリセス部または凸部からなる係合部を設け、更に、このような構成からなるものにおいて上記ストッパゴムを、そのゴム母材成分中に2ないし30重量パーセントの脂肪酸アミドを有する高摺動性素材からなるようにした構成を採ることとしたので、エンジンマウントアセンブリ状態、すなわち、組立状態において、上記隆起部または凹陥部が上記係合部に常に係合した状態となっており、インシュレータにつながる第一の連結部材(エンジン側連結部材)は、その位置ずれ(角度位置ずれ)を生ずることがないようになった。
【0016】
すなわち、本エンジンマウント装置が組立てられた状態で搬送段階にあるような場合において、上記連結ブラケットのところに不当な力が加わって一時的に上記係合関係が外れるようなことがあったとしても、上記隆起部等は滑り運動をして元の状態に戻り、直ちに係合部のところに係合するようになった。従って、本連結ブラケット及びゴム状インシュレータにつながるエンジン側連結部材は、不適当な位置に角度位置ずれ等を起したままの状態に放置されるようなことがなくなった。その結果、エンジン搭載作業時において、エンジン側ブラケットとの間にて、上記第一の連結部材(エンジン側連結部材)の位置合せが正確に行なわれるようになり、エンジン搭載作業の効率化を図ることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の主要部を成すストッパゴム及びストッパホルダ周りの構成を示す展開斜視図である。
【図3】本発明にかかるストッパゴム及びストッパホルダ周りの係合部に関する他の実施例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 第一の連結部材(エンジン側連結部材)
11 連結ブラケット
12 ストッパゴム
15 隆起部
15’ 凹陥部
2 インシュレータ(ゴム状インシュレータ)
3 第二の連結部材(車体側連結部材)
5 ストッパホルダ
51 係合部
51’ 凸部
8 締結手段
9 エンジン側ブラケット
99 締結手段
Claims (1)
- 振動体であるエンジン側に連結される第一の連結部材と、車体側のメンバ等に連結される第二の連結部材と、これら第一の連結部材と第二の連結部材との間に設けられるものであって上記エンジン側からの振動を吸収及び遮断する役目を果たすゴム状インシュレータ等からなるエンジンマウント装置において、
前記第一の連結部材には、エンジン搭載時にエンジン側のブラケットに連結されるものであって上記第一の連結部材の一部を形成する連結ブラケットがボルト等の締結手段にて一体的に結合され、前記連結ブラケットのところに、上記エンジン側からの大振幅の振動を抑止するストッパゴムを設けるとともに、当該ストッパゴムの一部に隆起部または凹陥部を設け、一方、当該ストッパゴムと対向するように形成されるものであって本エンジンマウント装置の組付け時においては上記ストッパゴムと常時接触するように形成されたストッパホルダを設け、更に、当該ストッパホルダのところに、本エンジンマウント装置の組付け時において上記ストッパゴムに設けられた上記隆起部または凹陥部と係合するように形成されたリセス部または凸部からなる係合部を設け、
前記ストッパホルダは、前記第二の連結部材に一体的に連結される剛体状の板状の部材から成り、前記リセス部は、前記ストッパホルダの両板面のうち前記ストッパゴムと接触する側の一方の板面部分を凹ませるとともに他方の板面部分を突出させて構成され、前記凸部は、前記ストッパホルダの両板面のうち前記ストッパゴムと接触する側の一方の板面部分を突出させるとともに他方の板面部分を凹ませて構成され、
本エンジンマウント装置が組立てられた状態で、前記第一の連結部材の一部を形成する連結ブラケットに前記ゴム状インシュレータをねじり廻すような力が加わって、上記隆起部あるいは凹陥部が前記係合部から一時的に外れても、前記ゴム状インシュレータのところに生じた捩り反力によって上記連結ブラケットが元の位置へと戻されて、上記隆起部または凹陥部と係合部とが相互に係合し合うようになる角度位置ずれ防止手段を設け、
前記角度位置ずれ防止手段は、上記隆起部または凹陥部と、前記リセス部または凸部からなる係合部とを円錐台状に形成し、かつ、上記ストッパゴムを、そのゴム母材成分中に2ないし30重量パーセントの脂肪酸アミドを有する高摺動性素材からなるようにして構成されていることを特徴とするエンジンマウント装置。
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