JP3762513B2 - ポリエステル繊維の接着処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル繊維とゴム、詳しくはポリエステル繊維とエチレンプロピレン系ゴム(EPDM)との接着処理方法に関するものであり、該接着処理方法が適用可能な製品として、繊維補強層や繊維基布を有する、ゴムホース、ダイヤフラム、Vベルト、コンベヤベルトなどを挙げることができる。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート繊維に代表されるポリエステル繊維は、高強度、高ヤング率を有しており、それを活かしてタイヤ、ホース、ベルト等のゴム補強用繊維として広く利用されている。
【0003】
しかしながら、ポリエステル繊維はその表面が比較的不活性であるため、ゴムとの接着力が低く、該接着性を改良するために、ポリエステル繊維をエポキシ化合物やイソシアネート化合物等で処理する方法(特開昭54−77794号公報、特開昭60−99076号公報、特開昭60−21924号公報)などが採用されている。
【0004】
また、ホース、ベルト分野においては、自動車のエンジンルームの温度が高くなるので、ゴム材質の面からも高温特性に優れたものが開発されつつある。その一つとしてエチレンプロピレン系ゴムがあるが、該ゴムは化学構造に二重結合が少なく、反応性に乏しいために接着が非常に困難であるという問題があった。
【0005】
このため、該ゴムとの接着に際しては、上記化合物に代えて、極性の高いクロロスルホン化ポリエチレンラテックスや特殊クロロフェノール化合物を使用して該ゴムとの反応性を高める方法(特公平3−20136号公報、特開平7−138880号公報)などが提案されているが、いずれの方法においても十分に満足できる接着力を得られていないのが実情である。
【0006】
一方、特開平5−125671号公報には、ポリアリルアミン化合物をポリエステル繊維に付与し、ポリウレタン系樹脂、含ハロゲン系ビニル樹脂或いはエチレン酢ビといった汎用性樹脂類との接着性を高める一浴接着処理方法が開示されているが、該方法をそのまま上記ゴムとの接着に適用した場合、その接着レベルはゴム補強用途では十分に満足できるものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的とするところは、特にエチレンプロピレン系ゴムマトリックスとの接着性の改良されたポリエステル繊維の接着処理方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、エチレンプロピレン系ゴムにポリエステル繊維を接着させるに際し、エポキシ化合物と、樹脂接着に使用されるポリアリルアミン化合物とを併用するとき、エチレンプロピレン系ゴムポリエステル繊維との接着性が格段に向上できること究明した。
【0009】
かくして本発明によれば、ポリエステル繊維を、ポリエポキシド化合物を含む処理剤で処理した後、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む処理剤で処理し、次いで下記一般式で表されるポリアリルアミン化合物を含む処理剤で処理することを特徴とするポリエステル繊維の接着処理方法が提供される。
【0010】
【化2】
Figure 0003762513
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等である。
【0012】
該ポリエステル繊維のデニール、フィラメント数、断面形状、繊維物性、微細構造、添加剤含有の有無、ポリマー性状(分子量、末端カルボキシル基濃度等)がなんら限定を受けるものでないことは言うまでもない。
【0013】
また、本発明において使用するポリエポキシド化合物は、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を該化合物100gあたり0.2g当量以上含有する化合物であり、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、レゾルシン・ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類と前期ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、或いは過酢酸または過酸化水素等で不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物などが挙げられる。
【0014】
上記化合物の具体例としては3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキセンメチル3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジペートなどが挙げられる。
【0015】
中でも、多価アルコールとエピクロロヒドリンの反応生成物、即ち多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が優れた性能を発現するので好ましい。該化合物は通常乳化液として使用に供せられる。乳化液又は溶液にするには、該化合物をそのままあるいは必要に応じて少量の溶媒に溶解したものを、公知の乳化剤、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて乳化又は溶解する。
【0016】
上記ポリエポキシド化合物の付着量は繊維重量に対し0.1〜10重量%が好ましい。更に好ましくは0.5〜5重量%の範囲である。
【0017】
該付着量が0.1重量%未満ではポリエポキシド化合物の効果が十分発揮されず、ポリエステル繊維とエチレンプロピレン系ゴムとの間で満足できる接着性能が得られない。一方、ポリエポキシド化合物の付着量が10重量%を越えると繊維が非常に硬くなり、後で付与する処理剤の含浸性が低下する結果、接着性能が低下する。
【0018】
このポリエポキシド化合物は製糸工程において紡糸油剤等と一緒にあらかじめ付与することも可能である。この際のポリエポキシド化合物の付着量は0.1〜0.5重量%が最も好ましい。
【0019】
本発明で使用するレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)は、レゾルシン・ホルマリン(RF)をアルカリ又は酸性触媒下で反応させて得られる初期縮合物、特殊クロロフェノール化合物、ゴムラテックス、ブロックドポリイソシアネート化合物の混合物である。
【0020】
レゾルシン、ホルマリン、ゴムラテックスの配合比率については公知技術のいずれを適用しても効果は得られる。
【0021】
また、特殊クロロフェノール化合物とレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスの配合比率は被着ゴムの配合により微妙に変化するが、一般的には前述のRFと特殊クロロフェノール化合物の配合割合は50/50〜80/20(重量比)が好ましい。
【0022】
ここで用いられる特殊クロロフェノール化合物はパラクロロフェノール及びレゾルシンをホルムアルデヒドと共縮合した化合物であり、下記構造式で表される3核体(I)、5核体(II)、7核体(III)を主成分とする化合物が好ましい。
【0023】
【化3】
Figure 0003762513
【0024】
また、RFLで使用するゴムラテックスとしては、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスとポリブタジエンラテックスとを配合したものが好ましく例示される。これらゴムラテックスの配合割合は被着ゴムの特性によって変更する必要があるが、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックス/ポリブタジエンラテックスは通常70/30〜30/70(重量比)で用いるのが一般的である。しかしながら、その配合は特に限定されない。
【0025】
レゾルシン・ホルマリンとゴムラテックスの配合比率は、公知技術のいずれを適用しても効果は得られる。
【0026】
また、RFL中にはブロックドポリイソシアネート化合物を添加して使用することが好ましい。このブロックドポリイソシアネート化合物はポリイソシアネート化合物とブロック化剤との付加化合物であり、加熱によりブロック成分が遊離して活性なポリイソシアネート化合物を生ぜしめるものである。
【0027】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート、あるいはこれらポリイソシアネートと活性水素原子を2個以上有する化合物例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等とをイソシアネート基(−NCO)とヒドロキシル基(−OH)の比が1を越えるモル比で反応させて得られる末端イソシアネート基含有のポリアルキレングリコールアダクトポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0028】
中でも、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートの如き芳香族ポリイソシアネートが優れた性能を発現するので好ましい。
【0029】
また、上記ブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、クレゾール、レゾルシノール等のフェノール類、ジフェニルアミン、キシリジン等の芳香族第2級アミン類、フタル酸イミド類、カプロラクタム、バレロラクタム等のラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類および酸性亜硫酸ソーダなどが挙げられる。これらの添加剤は通常分散剤を使用して水分散系で使用され、単独あるいは併用して添加される。
上記のRFLは通常、全固形分を10〜25wt%含有するように調整される。
【0030】
さらに、本発明で用いられるポリアリルアミン(以下PAAという場合がある)化合物とはアリルアミンの重合体で側鎖にアミノ基を有し、下記一般式で表される基本骨格でペンダント基を有するポリマーである。
【0031】
【化4】
Figure 0003762513
【0032】
上記PAA化合物は特開昭58−201811号公報に示されているもので、数平均分子量Mnは2000〜100000、好ましくは2500〜50000である。
【0033】
該化合物はラジカル重合法により製造されるためMnが2000未満の領域では安定した製品を得ることが難しく、一方Mnが100000を越える場合は処理剤粘度が増加して取扱性が低下する。
【0034】
上記PAA化合物は通常水溶液として使用される。この際、接着性を阻害しない範囲で界面活性剤やブロックドイソシアネート化合物等を添加してもよい。
【0035】
しかしながらRFLと混合することは、ポリアリルアミン化合物がカチオン性を示すため、ラテックス成分の凝集沈殿が生じるので好ましくない。
【0036】
PAA化合物を含む処理剤は、通常全固形分が1〜20wt%、好ましくは3〜10wt%となるように調整される。
【0037】
ポリエポキシド化合物を含む処理剤およびRFL、並びにPAA化合物を含む処理剤で処理するとは、ローラーとの接触もしくはノズルからの噴霧による塗布または浸漬などの任意の方法を用いてポリエステル繊維へ上記化合物を付着せしめることを言う。
【0038】
この際、ポリエポキシド化合物については、製糸工程においてあらかじめ該化合物を付与したいわゆる前処理糸を用いても構わない。
【0039】
ポリエステル繊維に対する固形分付着量は、ポリエポキシド化合物を含む処理剤が0.1〜10wt%、好ましくは0.5〜5wt%、RFLが0.5〜10wt%、好ましくは1〜5wt%、PAA化合物を含む処理剤が0.1〜5.0wt%、好ましくは1.0〜2.0wt%が好適である。
【0040】
固形分付着量を制御するには圧接ローラーによる絞り、スクレイパー等によるかき落とし、空気吹き付けによる吹き飛ばし、吸引、ビーターによる叩き等の手段を用いればよい。
【0041】
また、本発明をゴムホース用途に用いる場合、RFL及びPAA化合物を含む処理剤はブレード工程を経てホース成形がなされたものに付与することも可能である。
【0042】
本発明においては、該ポリエステル繊維をポリエポキシド化合物を含む処理剤で処理した後は50〜180℃で0.5〜5分間、好ましくは1〜3分間乾燥し、ついで180℃から該ポリエステル繊維の融点より10℃低い温度、好ましくは220〜250℃の温度で0.5〜5.0分、好ましくは1〜3分間、熱処理を行なう。
【0043】
また、RFLを含む処理剤で処理した後は、80〜180℃で0.5〜5分間、好ましくは1〜3分間乾燥し、ついで150〜260℃、好ましくは220〜250℃の温度で0.5〜5.0分、好ましくは1〜3分間、熱処理する。
【0044】
更に、PAA化合物を含む処理剤は処理の最終段階で付与し、110℃未満の温度で1分以上、好ましくは1〜2分熱処理する。
【0045】
ポリエポキシド化合物を含む処理剤とRFLについては、熱処理温度が低すぎるとゴム類との接着が不十分となる。一方、熱処理温度が高すぎるとPAAの樹脂が非常に硬くなること、更にはポリエステル繊維が溶融、融着したり著しく硬くなったり、強力劣化を起こしたりして実用に供し得なくなる。
【0046】
【発明の作用】
本発明により得られたポリエステル繊維は、表面がエポキシ基を含む処理剤で被覆されており、一方、繊維の表面近傍には被着ゴムであるエチレンプロピレン系ゴムと親和性を有するPAA化合物が繊維表面を覆っているため、接着性に優れる。
【0047】
また、これにRFLを併用することにより接着剤層の凝集力を高めることができ、耐熱性などの向上に寄与し、接着性を更に高めることができる。その結果ゴム補強用繊維としてポリエステル繊維本来の優れた特性を十分に発揮することができる。
【0048】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、これに限定されるものではない。尚、実施例における評価方法は下記の通りである。
【0049】
(1)コード剥離接着力
処理コードとゴムとの接着力の大小を表す値で、得られた接着処理コードを、1インチ間に25本並べ、エチレンプロピレン系未加硫ゴムに埋め込み、面圧5kg/cm2、温度80℃で予備プレスを行なった後、水分の影響をうけないようにポリエステルシート及びゴムで被覆して150℃で30分間蒸気加硫する。
【0050】
このテストピースを用い、コードをゴムから200mm/minの速度で剥離させるときに要した力をkg/インチで示したものである。
【0051】
[実施例1]
RFL処理剤として苛性ソーダ水溶液,アンモニア水溶液を加えた水に酸性触媒で反応せしめたレゾルシン・ホルマリン初期縮合物スミカノール700S(住友化学(株)製、65%水溶液)を添加して十分に撹拌し分散させる。
【0052】
次にニッポール2518FS(日本ゼオン(株)製、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマー水乳化物)およびニッポールLX−111NF(日本ゼオン(株)製、ポリブタジエンゴムラテックス55%水乳化物)を、上記レゾルシン・ホルマリン初期縮合分散液と固形分比率で1:4(ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマー/ポリブタジエンゴムラテックス=3:7(重量比))、更にホルマリンをR/F比が1:2(モル比)となるよう添加して均一に混合する。
【0053】
次にこのRFL混合液中にエラストロンBN−69(第一工業製薬(株)製、ジフェニルメタンジイソシアネートメチルエチルケトオキシムブロック33%水分散物)をRFLと固形分比率で6:1となるよう加えて混合したものを20℃で24時間熟成させた。
【0054】
さらに、使用直前にデナボンドE(ナガセ化成工業(株)製、特殊クロロフェノール化合物20%溶液)をRFLと固形分比率で2.5:1となるよう添加し、十分撹袢して使用した。
【0055】
PAA化合物を含む処理剤としては、PAA−10C(日東紡(株)製、10%水溶液)を使用した。
【0056】
処理剤の粘度、付着量のコントロールは処理剤への水の添加希釈により調節した。
【0057】
次に、製糸工程においてポリエポキシド化合物をあらかじめ付与したポリエチレンテレフタレート前処理糸(帝人株式会社製、〔η〕=0.89、1500デニール/250フィラメント)のマルチフィラメント1本を10T/10cmで撚糸しコードを得た。
【0058】
このコードをコンピュートリーター処理機(CAリツラー(株)製、タイヤコード処理機)を用いて、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む処理剤、及びポリアリルアミン化合物を含む処理剤にそれぞれ浸漬した後、熱処理して処理コードを得た。
【0059】
この際、RFLの熱処理は170℃で2分間乾燥し、続いて235℃で1分間、更に240℃で1分間、また、PAA化合物の熱処理は105℃で1分間実施した。
【0060】
該ポリエステル処理コードにはRFLの固形分が2.5wt%、PAAが1.0wt%付着していた。
【0061】
かくして得られた処理コードについて前述の方法で加硫し、接着力の測定を行なった。
【0062】
尚、評価に用いたゴムの配合組成は以下の通りである。
EPDM 100部
HAF−カーボンブラック 120部
プロセスオイル(パラフィン系) 90部
亜鉛華 5部
ステアリン酸 3部
ジクミルパーオキサイド 3部
加硫促進剤 2.5部
【0063】
結果を表1に示す。
【0064】
[実施例2〜、比較例1〜
実施例1において、RFLおよびPAA化合物の付着量を表1に示す如く変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0065】
尚、比較例3〜4はPAA化合物による処理を行なわなかった場合である。結果を表1に併せてしめす。
【0066】
【表1】
Figure 0003762513

Claims (2)

  1. ポリエステル繊維を、ポリエポキシド化合物を含む処理剤で処理した後、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む処理剤で処理し、次いで下記一般式で表されるポリアリルアミン化合物を含む処理剤で処理することを特徴とするポリエステル繊維の接着処理方法。
    Figure 0003762513
  2. ポリアリルアミン化合物を含む処理剤を付与した後、110℃未満の温度で1分間以上熱処理する請求項1記載のポリエステル繊維の接着処理方法。
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