JP3762095B2 - 多層回路基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は多層回路基板に関し、特に携帯電話機などで使用されるVCO(電圧制御発振器)やPLL(フェーズロックループ)モジュール、フィルターモジュールなどに用いられる誘電体同軸共振器を備えた多層回路基板に関する。
【0002】
【従来技術】
従来の誘電体同軸共振器を搭載した回路基板を図8に示す。この従来の誘電体同軸共振器を搭載した回路基板では、複数のチップ部品61が実装された基板51の表面に、例えばVCOやPLLモジュール等の高周波回路モジュールを構成するための誘電体同軸共振器62を実装している。
【0003】
ところが、この従来の回路基板では、誘電体同軸共振器62を回路基板51とは別に形成して、回路基板51上に実装してVCOやPLLモジュール等を形成していることから、高周波回路モジュールが大型化するという問題があった。特に、誘電体同軸共振器62などを回路基板51の表面に実装すると、この回路基板51の表面部を金属製の蓋体などで覆蓋しなければならず、高周波モジュールが大型化することになる。
【0004】
そこで、近年においては、高周波モジュールの小型化を図るべく、誘電体同軸共振器を内蔵した多層回路基板が、特開平9−191206号公報に開示されている。この公報に開示された多層回路基板を図9に示す。
【0005】
この回路基板では、複数のセラミック誘電体層51a〜51eを積層して多層回路基板を構成しているが、この複数のセラミック誘電体層51a〜51eのうち、中間のセラミック誘電体層51b、51c、51dの表面に環状の導体層52b、52c、52dを設け、この環状の導体層52b、52c、52d部分の複数箇所に、セラミック誘電体51b、51c、51dの厚み方向に貫通するビアホール53b、53c、53dを形成して、このビアホール53b、53c、53d内に導電材料を充填して誘電体同軸共振器の環状アース電極にすると共に、この環状に形成されたビアホール53b、53c、53dの略中心部分に、同じくセラミック誘電体層51b、51c、51dの厚み方向に貫通する孔54b、54c、54dを形成して、この孔54b、54c、54d内に導電材料を充填して誘電体同軸共振器の柱状内導体にしたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平9−191206号公報に開示された誘電体同軸共振器を内蔵した多層回路基板では、ビアホール53b、53c、53dで充填された導体から構成される環状アース電極の内部のセラミック誘電体と、環状アース電極の外部のセラミック誘電体とは同一材料からなるものであり、比誘電率が同一であり、誘電体同軸共振器の特性向上や寸法を重視して比誘電率を高くすると、回路基板では不要な容量結合が発生し、一方、回路基板での不要な容量結合を抑制することを重視して比誘電率を低くすると、誘電体同軸共振器の特性が劣化したり、同軸共振器が大型化するという問題があった。
【0007】
即ち、高い比誘電率を有するセラミック誘電体により同軸共振器を構成すると、特性が良好となり、同軸共振器の小型化に有利であり回路モジュールの小型化に寄与できるが、セラミック誘電体の比誘電率が高い場合には同軸共振器を構成する以外の伝送線路において、特に細く長い線路を形成する際に回路パターンの高密度化の為に線路間を小さくしようとすると、線路間に不必要な容量結合が発生し、回路特性に影響を与えることとなり、設計の制約を受けるという問題があった。
【0008】
逆に、低い比誘電率を有するセラミック誘電体により同軸共振器を構成すると、同軸共振器以外の伝送線路における不要な容量結合の発生を抑制できるが、同軸共振器の特性が劣化したり、同軸共振器が大型化するという問題があった。
【0009】
つまり、同軸共振器の環状アース電極の内部のセラミック誘電体では、同軸共振器の特性向上および小型化のため比誘電率が高く、環状アース電極の外部のセラミック誘電体では、同軸共振器以外の伝送線路における不要な容量結合の発生を抑制すべく、比誘電率が小さいことが要求されるが、このような同軸共振器を内蔵した多層基板は、従来のグリーンシート積層法では作製することが困難であった。
【0010】
また、上記特開平9−191206号公報に開示された多層回路基板では、セラミック誘電体層51a〜51e内に同軸共振器を作り込んでいることから、金属製の蓋体などで同軸共振器を覆蓋した高周波モジュールよりも小型化できるものの、導電材料が充填された多数のビアホール53b、53c、53dを環状に配列して同軸共振器の環状アース電極を形成していることから、セラミック誘電体層51b、51c、51dの幅方向において隣接するビアホール53b、53c、53e間に隙間ができ、ビアホール53b、53c、53d間の電磁場的結合や線路のインピーダンス不整合によって不要な共振が発生し、同軸共振器としての特性が悪化するという問題があった。
【0011】
特に、この従来の回路基板では、セラミックグリーンシートに、パンチなどで孔を開けてビアホール53b、53c、53dを形成しており、環状に設けられたビアホール53b、53c、53dの内側の領域をセラミックグリーンシート内に残すために、製造工程の点からも、環状アース電極はセラミック誘電層体の幅方向で不連続にならざるを得なかった。
【0012】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、誘電体同軸共振器を含むフィルターモジュールの小型化が可能で、かつ他の回路特性も安定であるとともに、特性の良好な同軸共振器を内蔵した多層回路基板を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る多層回路基板では、セラミック誘電体層の積層体内に、環状アース電極とその内部を貫通する柱状内導体からなる同軸共振器を設け、前記セラミック誘電体層、前記環状アース電極及び前記柱状内導体とを同時焼成してなる多層回路基板において、前記積層体内に導電材料が充填された環状溝を前記セラミック誘電体層の積層方向に設けることにより前記セラミック誘電体層の幅方向に連続する環状アース電極を前記セラミック誘電体層の積層方向に形成するとともに、前記環状溝の略中心部分に導電材料が充填された柱状孔を前記セラミック誘電体層の積層方向に設けることにより前記柱状内導体を形成してなり、前記環状アース電極の一端部と前記柱状内導体の一端部を前記セラミック誘電体層間のアース電極に接続し、さらに、前記環状アース電極の内外のセラミック誘電体が異なる材料からなり、前記環状アース電極の内部のセラミック誘電体の比誘電率が、前記環状アース電極の外部のセラミック誘電体の比誘電率よりも高いものである。
【0014】
また、本発明に係る多層回路基板では、積層体の表面部に導体配線を設けると共に、この積層体内の導体配線と対峙する部分に内部配線を設けてもよい。
【0015】
また、本発明に係る多層回路基板では、積層体内のセラミック誘電体層間にストリップライン型共振線路を設けると共に、この積層体内の他のセラミック誘電体層間のストリップライン型共振線路と対峙する部分に容量用電極を設けてもよい。同軸共振器以外の部分でも高い比誘電率が要求されるコンデンサ部分やストリップラインにより共振器を構成する部分の誘電体として、高い比誘電率を有する誘電体を用いても良い。
【0016】
さらに、本発明に係る多層回路基板では、積層体の表面部にチップ部品を搭載してもよい。
【0017】
【作用】
上記のように構成すると、同軸共振器を構成する環状アース電極の内部には比誘電率の高い誘電体材料を用い、それ以外の部分には比較的比誘電率の低い誘電体材料を用いたので、同軸共振器の特性を向上し、かつ小型化できるとともに、他の回路パターンの特性への影響を抑えることができる。尚、同軸共振器以外の部分でも高い比誘電率が要求されるコンデンサ部分やストリップラインにより共振器を構成する部分のセラミック誘電体として、高い比誘電率を有する誘電体材料を用いても良い。
【0018】
また、セラミック誘電体層の幅方向に連続した環状アース電極をセラミック誘電体層の積層方向に形成でき、従来技術のような隣接するビアホール間の電磁場的結合や線路のインピーダンス不整合による不要な共振が発生することはなく、小型で特性の良好な同軸共振器を内蔵した多層回路基板を提供できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の多層回路基板の一実施形態を示す分解斜視図であり、図2は断面図である。図1および図2おいて、1(1a〜1d)はセラミック誘電体層、2(2b、2c)は環状溝、3(3b〜3d)は柱状孔である。
【0020】
このセラミック誘電体層1(1a〜1d)は、複数層、例えば4層積層して積層体が構成される。最下層のセラミック誘電体層1aにはアース電極4が設けられ、二層目と三層目のセラミック誘電体層1b、1cには導電材料が充填された環状溝2b、2cが設けられ、二層目と三層目と最上層のセラミック誘電体層1b、1c、1dには導電材料が充填された柱状孔3b、3c、3dが設けられ、最上層のセラミック誘電体層1dには電極5が設けられている。
【0021】
アース電極4は、最下層のセラミック誘電体層1aの略全面に設けられている。環状溝2(2b、2c)はセラミック誘電体層1b、1cの厚み方向において、セラミック誘電体層1b、1cを貫通して設けられている。また、この環状溝2の略中心部分には、柱状孔3b、3c、3dがセラミック誘電体層1b、1c、1dの厚み方向においてセラミック誘電体1b、1c、1dを貫通して設けられている。
【0022】
それぞれの環状溝2b、2cと柱状孔3b、3c、3d内には導電材料が充填され、各層の環状溝2b、2c内と柱状孔3b、3c、3d内の導電材料がセラミック誘電体層1a〜1dの積層方向でそれぞれ連続するように形成されている。また、最下層のアース電極4は、二層目のセラミック誘電体層1bに形成された導電材料が充填された環状溝2bと接続され、最上層の電極5は、三層目のセラミック誘電体層1cに形成された導電材料が充填された柱状孔3cと接続される。この場合、環状溝2b、2c内の導電材料が同軸共振器の環状アース電極6となり、柱状孔3b、3c、3d内の導電材料が同軸共振器の柱状内導体7となる。
【0023】
環状溝2b、2cと柱状孔3b、3c、3dに充填される導電材料や電極4、5を構成する導電材料は、金、銀、銅もしくはその合金のうち少なくとも1つの金属材料の粉末と、低融点ガラス成分と、有機バインダーと、有機溶剤とを均質に混練した導電ペーストをセラミック誘電体層1a〜1dと同時に焼成したものなどで構成される。
【0024】
このように、セラミック誘電体層1b、1cに、セラミック誘電体層1b、1cの厚み方向に貫通した環状溝2b、2cを設けて導電材料を充填して共振器の環状アース電極6を形成すると、セラミック誘電体層1b、1cの幅方向に連続した環状アース電極6を形成できる。
【0025】
そして、本発明では、環状アース電極6の内部のセラミック誘電体8b、8cの比誘電率が、環状アース電極6の外部のセラミック誘電体、即ちセラミック誘電体層1b、1cの比誘電率よりも高く形成されている。
【0026】
つまり、環状アース電極6の内部のセラミック誘電体8b、8cと、環状アース電極6の外部のセラミック誘電体層1b、1cとでは、誘電体材料を異ならせている。ここで、環状アース電極6の内部のセラミック誘電体8b、8c、即ち高誘電率誘電体としては、例えば、Mg、Ca、Tiを含有する酸化物を主成分とし、これに焼結助剤として硼素化合物、アルカリ金属化合物、及び硼珪酸アルカリ土類系ガラスが添加された、800℃〜1100℃程度の低温で焼成可能なセラミック材料が用いられ、その比誘電率は15以上、更に好ましくは20以上である。
【0027】
一方、環状アース電極6の外部のセラミック誘電体層1b、1c(以下、低誘電率誘電体ということもある)や、セラミック誘電体層1a、1dは、例えばアルミナ、ムライト、コージェライト等のセラミック材料と、硼珪酸アルカリあるいはアルカリ土類金属系のガラス材料とからなり、800℃〜1100℃程度の低温での焼成が可能なように、セラミック材料が30〜70重量%程度の比率のガラスセラミック材料であり、その誘電率は10以下であることが望ましい。
【0028】
尚、セラミック誘電体層1a〜d、セラミック誘電体8b、8cとしては、上記した以外のセラミック材料あるいはガラスセラミック材料であっても良いことは勿論である。
【0029】
本発明に係る多層回路基板は、上述のようなセラミック原料粉末に、焼結前の脱バインダ工程で消失する光硬化可能なモノマー、有機バインダー、さらに有機溶剤または水とを混練したスリップ材料を用いて多層化することにより形成される。
【0030】
光硬化可能なモノマーは露光によって光重合される必要があり、遊離ラジカルの形成、連鎖生長付加重合が可能で、2級もしくは3級炭素を有したモノマーが好ましく、例えば少なくとも1つの重合可能なエチレン系基を有するブチルアクリレートが有効である。また、テトラエチレングリコールジアクリレート等のポリエチレングリコールジアクリレートおよびそれらに対応するメタクリレートも有効である。この光硬化可能なモノマーは、露光で硬化し、現像で露光した領域以外の部分が容易に除去できるような範囲で添加され、例えば固形分100重量部に対して5〜15重量部以下である。
【0031】
有機バインダは、スリップ材料の粘性を決めるものであり、アクリル酸もしくはメタクリル酸系重合体のようなカルボキシル基、アルコール性水酸基を備えたエチレン性不飽和化合物が用いられる。添加量としては固形分100重量部に対して25重量部以下が好ましい。なお、水系スリップ材料とする場合は、モノマーおよびバインダに、親水性の官能基、例えばカルボキシル基を付加すればよい。その付加量は酸価で表せば2〜300であり、好ましくは5〜100である。
【0032】
また、スリップ材料に、増感剤、光開始系材料等を必要に応じて添加してもよい。例えば光開始系材料としては、ベンゾフェノン類、アシロインエステル類化合物などが挙げられる。
【0033】
本発明の多層回路基板は、図3(a)に示すように、支持基板30上に上記したセラミック誘電体層1のスリップ材料を薄く塗布(薄層化)し、誘電体膜31aを形成する。この後、露光処理を施し、膜を硬化させる。
【0034】
支持基板30としては、ガラス基板、有機フィルム、アルミナセラミックなどが例示できる。この支持基板30は、焼成工程前に取り外されるが、特にアルミナセラミックなどの場合には、セラミック誘電体層1a〜1dの焼成と同時に焼成を行い、多層回路基板の完成品の一部を構成するようにしても構わない。スリップ材料の塗布方法としては、ドクターブレード法、ロールコート法、スクリーン印刷法などがある。乾燥は120℃以下で行うことが望ましい。必要な場合は、露光、現像により溝や孔を形成し、次いで導電材料を塗布して乾燥し、ビアホール導体や配線導体を形成する。
【0035】
次に、誘電体膜31aの上に、図3(b)に示すように、上記した導電性ペーストを用いてアース電極4となる導体膜41をスクリーン印刷法などで形成する。
【0036】
次に、導体膜41の上にセラミック誘電体層1aのスリップ材料を塗布して乾燥し、誘電体膜31bを形成する。セラミック誘電体1bには、環状溝2b内にセラミック誘電体8bを有するため、先ず、図3(c)に示すように、誘電体膜31bの環状溝2b内部を全てくり抜く。つまり、誘電体膜31bに環状溝2bに該当する部分の外側部分を露光し、硬化させ、環状溝2b内部に該当する部分を現像し、除去することによりくり抜き、凹部42を形成する。
【0037】
露光処理は、フォトマスクを用いて誘電体膜31bの一部を露光してスリップ材料中に含有させた光硬化モノマーを硬化させる。この露光処理は、例えばフォトマスクを誘電体膜31bに近接または載置して、凹部42に該当する部分以外の領域に、低圧、高圧、超高圧の水銀灯系の露光光を照射することにより行う。
【0038】
これにより、凹部42に該当する部分以外の領域では、スリップ材料中のモノマーが光重合反応を起こして硬化し、凹部42に該当する部分の誘電体膜31bが現像処理によって除去可能な溶化部となる。
【0039】
次に、誘電体膜31bのうち、光硬化モノマーが硬化しなかった領域を除去することにより、現像処理を行う。この現像処理は、クロロセン等の溶剤を例えばスプレー現像法やパドル現像法によって、光硬化モノマーの非硬化部分の誘電体膜を洗浄除去することによって行う。
【0040】
この後、セラミック誘電体8bのスリップ材料を、凹部42に充填し、乾燥し、高誘電率誘電体膜38bを形成する。その後、図3(e)に示すように、環状溝2bおよび柱状孔3bに該当する部分を露光現像により除去し、環状溝2bおよび柱状孔3bを形成する。次に、環状溝2bおよび柱状孔3bに上記した導電性ペーストを充填する。充填方法は、例えばスクリーン印刷方法で行なう。
【0041】
この後、図3(f)に示すように、誘電体膜31bの上面に、セラミック誘電体層1のスリップ材料を塗布して乾燥し、誘電体膜31cを形成する。この誘電体膜31cにも、上記と同様、高誘電率誘電体膜38cを形成するとともに、環状溝2cおよび柱状孔3cを形成し、導電性ペーストを充填する。その後、誘電体膜31cの上面に、セラミック誘電体層1のスリップ材料を塗布して乾燥し、誘電体膜31dを形成する。この誘電体膜31dには、上記と同様にして柱状孔3dを形成し、導電性ペーストを充填する。この誘電体膜31dの上面に、柱状孔3d内の導体と接続するように導電膜51を形成し、図3(f)に示すような積層成形体を作製する。
【0042】
最後に焼成を行なう。焼成工程は脱バインダ過程と焼成過程からなり、脱バインダ過程(〜600℃)で誘電体膜31a〜dや導電ペースト内の有機成分が揮発する。その後、所定雰囲気、所定温度、例えば850〜1050℃で誘電体膜31a〜d、高誘電率誘電体膜38b、38c、導体膜41、環状溝2b、2cおよび柱状孔3b、3c内の導電体を同時に焼成することにより、本発明の多層回路基板が得られる。
【0043】
図4および図5に他の実施形態を示す。この実施形態では、最下層のセラミック誘電体層1aにアース電極4を設け、二層目のセラミック誘電体層1bに環状溝2bと柱状孔3bを厚み方向に形成し、三層目のセラミック誘電体1cに環状溝2cと柱状孔3cを形成すると共に、第二のアース電極4cを設け、最上層のセラミック誘電体層1dに導体配線56a、56bを設けると共に、チップ部品9を搭載している。すなわち、内部配線を構成する第二のアース電極4cと最上層の導体配線56a、56bは、セラミック誘電体層1dを介して対峙して設けられている。
【0044】
この形態でも、環状アース電極6の内部のセラミック誘電体8b、8cは、環状アース電極6の外部のセラミック誘電体層1よりも比誘電率が高い材料から形成されている。
【0045】
このように内部配線を構成する第二のアース電極4cと最上層の導体配線56a、56bをセラミック誘電体層1dを介して対峙して設けると、最上層のセラミック誘電体層1dの主表面に形成された導体配線56a、56bは、三層目のセラミック誘電体層1c上に形成された第二のアース電極4cによりマイクロストリップ線路を形成でき、伝送路としてのインピーダンス制御が可能となる。また、最上層のセラミック誘電体層1dの主表面には、導体配線56a、56bの他に、VCOやPLLモジュール等を構成するに必要なチップ部品9等が実装されている。このような構造をとることにより、上記形態と同様な効果が得られるととともに、セラミック誘電体層1a〜1dの積層方向に形成され環状アース電極6、この環状アース電極6の内側に形成されたセラミック誘電体層1の積層方向に形成された柱状内導体7とする誘電体同軸共振器をセラミック多層回路基板内に形成した小型なVCOやPLL回路モジュールのような高周波回路モジュールを形成することができる。
【0046】
また、同じ三層目のセラミック誘電体層1cに環状溝2c、柱状孔3cを設けて導電材料を充填し、さらに第二のアース電極4cを形成する工程で環状溝2cと柱状孔3cの導電材料上にアース電極4cと同じ厚みの導電材料の層を設けてもよい。このように構成すると、環状溝2c部分および柱状孔3c部分の導電材料の厚みと内部配線を構成する第二のアース電極4cを形成した部分の厚みを同じにでき、セラミック誘電体層1dの柱状孔3dとの接続を確実にできる。
【0047】
この多層回路基板でも、セラミックのスリップ材料の塗布とパターニングと導電ペーストの塗布を繰り返して積層体を形成して焼成することにより形成される。
【0048】
尚、所望により、導体配線56a、56b間、導体配線56a、56bと第二のアース電極4c間を、環状アース電極6内のセラミック誘電体8b、8cと同様の誘電体材料で構成しても良い。
【0049】
図6および図7に第3の実施形態を示す。この実施形態では、最下層のセラミック誘電体層1aにアース電極4を設け、二層目のセラミック誘電体層1bに環状溝2bと柱状孔3bを形成すると共に、第二のアース電極10と共振線路11を形成し、三層目のセラミック誘電体層1cに環状溝2cと柱状孔3cを形成すると共に、共振線路11との間で容量を発生させる二つの容量用電極12を設け、四層目のセラミック誘電体層1dに環状溝2dと柱状孔3dを形成すると共に、第三のアース電極13を形成し、最上層のセラミック誘電体1eに導体配線16、17、18を設けると共に、チップ部品19、20、21を搭載した。導体配線16、17は、入出力用の電極であり、これらの電極とICの容量用電極12とがビアホール導体22、23により接続されている。この場合、四層目のセラミック誘電体層1d上に形成される第三のアース電極13が内部配線を構成し、三層目のセラミック誘電体層1cに形成された二つの容量用電極12、セラミック誘電体層1bの共振線路11が他の内部配線を構成する。
【0050】
この形態でも、環状アース電極6の内部のセラミック誘電体8b、8cは、環状アース電極6の外部のセラミック誘電体層1よりも比誘電率が高い材料から形成されている。
【0051】
最上層のセラミック誘電体層1eの主表面に形成された導体配線16、17、18は、四層目のセラミック誘電体層1d上に形成された内部配線を構成するアース電極13によりマイクロストリップ線路を形成でき、伝送路としてのインピーダンス制御が可能となる。また、最上層のセラミック誘電体層1eの主表面には、導体配線16、17、18の他に、VCOやPLLモジュール等を構成するに必要なチップ部品19、20、21が実装されている。このような構造をとることにより、導電材料が充填された環状溝2b、2c、2dをセラミック誘電体層1a〜1eの積層方向に形成された環状アース電極6、環状溝2b、2c、2dの略中心部分に導電材料が充填された柱状孔3b、3c、3dをセラミック誘電体1a〜1eの積層方向に形成した柱状内導体7とする誘電体同軸共振器と、共振線路11、容量用電極12、導体配線16、17、ビアホール導体22、23、アース電極4、13により形成される積層型ストリップラインフィルタをセラミック多層回路基板内に同時に形成できるため、小型なVCOやPLL回路モジュールのような高周波回路モジュールを低コストで形成することができる。
【0052】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る多層回路基板によれば、積層体内に導電材料が充填された環状溝をセラミック誘電体層の積層方向に設けることにより環状アース電極を形成するとともに、環状溝の略中心部分に導電材料が充填された柱状孔をセラミック誘電体層の積層方向に設けることにより柱状内導体を形成してなり、環状アース電極の内部のセラミック誘電体の比誘電率を、環状アース電極の外部のセラミック誘電体の比誘電率よりも高くしたので、環状の外導体を積層体の厚み方向に形成でき、小型で特性の良好な誘電体同軸共振器を内蔵できるとともに、他の回路パターンの特性への影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多層回路基板の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係る多層回路基板の一実施形態を示す断面図である。
【図3】図1の多層回路基板の製造工程を示す説明図である。
【図4】本発明に係る多層回路基板の他の実施形態を示す分解斜視図である。
【図5】本発明に係る多層回路基板の他の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る多層回路基板のその他の実施形態を示す分解斜視図である。
【図7】本発明に係る多層回路基板のその他の実施形態を示す断面図である。
【図8】従来の同軸共振器を備えた回路基板を示す斜視図である。
【図9】従来の他の同軸共振器を備えた回路基板を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1(1a〜1e)・・・セラミック誘電体層
2(2b〜2d)・・・環状溝
3(3b〜3d)・・・柱状孔
6・・・環状アース電極
7・・・柱状内導体
8b、8c・・・セラミック誘電体
Claims (4)
- セラミック誘電体層の積層体内に、環状アース電極とその内部を貫通する柱状内導体からなる同軸共振器を設け、前記セラミック誘電体層、前記環状アース電極及び前記柱状内導体とを同時焼成してなる多層回路基板において、前記積層体内に導電材料が充填された環状溝を前記セラミック誘電体層の積層方向に設けることにより前記セラミック誘電体層の幅方向に連続する環状アース電極を前記セラミック誘電体層の積層方向に形成するとともに、前記環状溝の略中心部分に導電材料が充填された柱状孔を前記セラミック誘電体層の積層方向に設けることにより前記柱状内導体を形成してなり、前記環状アース電極の一端部と前記柱状内導体の一端部を前記セラミック誘電体層間のアース電極に接続し、さらに、前記環状アース電極の内外のセラミック誘電体が異なる材料からなり、前記環状アース電極の内部のセラミック誘電体の比誘電率が、前記環状アース電極の外部のセラミック誘電体の比誘電率よりも高いことを特徴とする多層回路基板。
- 積層体の表面部に導体配線を設けると共に、この積層体内の前記導体配線と対峙する部分に内部配線を設けたことを特徴とする請求項1に記載の多層回路基板。
- 積層体内のセラミック誘電体層間にストリップライン型共振線路を設けると共に、この積層体内の他のセラミック誘電体層間の前記ストリップライン型共振線路と対峙する部分に容量用電極を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の多層回路基板。
- 積層体の表面部にチップ部品を搭載したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の多層回路基板。
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