JP3760774B2 - 電力変換装置及び多相負荷の駆動制御方法 - Google Patents

電力変換装置及び多相負荷の駆動制御方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多相負荷をインバータ主回路によって駆動する電力変換装置及び多相負荷の駆動制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図20は、例えば電気自動車の走行に使用される多相交流モータを駆動するインバータ装置の電気的構成を示すものである。この図20において、6つのIGBT1〜6が三相ブリッジ接続されてインバータ主回路7が構成され、そのインバータ主回路7の直流母線7a,7bは、駆動用バッテリ8の正極端子,負極端子に夫々接続されている。その、インバータ主回路7の出力端子7u,7v,7wは三相の多相交流モータ(例えば、同期モータやインダクションモータ,ブラシレスモータなど)9の各相巻線(図示せず)に夫々接続されている。また、各IGBT1〜6のコレクタエミッタ間には、フリーホイールダイオードD1〜D6が逆並列接続されている。
【0003】
指令値発生器10は、電圧指令値U*,V*,W*のデータが記憶されているROMを中心として構成されており、例えば、インバータ主回路7の出力端子7u〜7wと多相交流モータ(以下、単にモータと称す)9の各相巻線との間に配置される電流センサ(図示せず)の出力信号におけるゼロクロス点や、ロータリエンコーダ或いはレゾルバなどの出力信号に基づいて交流モータ9を構成するロータの位相θを検出し、その位相に基づいてU,V,W各相についての電圧指令値U*,V*,W*を読み出し、PWM波形発生器11に出力するようになっている。尚、電圧指令値U*,V*,W*は、例えば正弦波の振幅に基づく指令値である。
【0004】
図21は、PWM波形発生器11の詳細な電気的構成を示す機能ブロック図である。指令値発生器10より出力される電圧指令値U*,V*,W*は、コンパレータ12a,12c,12eの非反転入力端子並びにコンパレータ12b,12d,12fの反転入力端子に与えられており、コンパレータ12a,12c,12eの反転入力端子並びにコンパレータ12b,12d,12fの非反転入力端子には、搬送波発生器13より出力されるPWM変調の搬送波(三角波)が与えられている。
【0005】
尚、コンパレータ12a〜12fは、電圧指令値U*,V*,W*及び搬送波が何れもデジタルデータとして出力される場合はマグニチュードコンパレータであり、両者が何れもアナログデータとして出力される場合はアナログコンパレータである。
【0006】
そして、コンパレータ12a,12c,12eからは、搬送波のレベルよりも電圧指令値U*,V*,W*のレベルが高い場合にハイレベルとなる信号C1,C3,C5が出力され、コンパレータ12b,12d,12fからは、信号C1,C3,C5の反転信号C2,C4,C6が出力されてデッドタイム発生器14に与えられる。デッドタイム発生器14は、例えば、1つのアームについて正側,負側のIGBTが同時にオン状態となることを防止するために、両者何れもがオフ状態となるデッドタイムを設けるため、信号C1/C3/C5,C2/C4/C6間のオンオフタイミングを修正するものである。
【0007】
デッドタイム発生器14からは、ゲート信号G1′〜G6′が出力され、それらのゲート信号G1′〜G6′は、フォトカプラなどからなるドライバ15を介して各IGBT1〜6のゲートにゲート信号G1〜G6として与えられるようになっている。
【0008】
この制御方式では、例えばU相について考えると、指令値U*が搬送波である三角波より大きい場合はIGBT1がオン,IGBT2がオフとなり、DC電源の正側の電位が出力される。逆にU*が三角波より小さい場合はIGBT1がオフ、IGBT2がオンとなり、DC電源の負側の電位が出力される。この動作により各搬送波の周期で指令値に比例した時間の間、DC電源の正側の電圧が出力される。
【0009】
そして、図22に示すように、電圧指令値U*,V*,W*が正弦波ならばパルス幅が正弦波にPWM変調された電圧が出力され出力電流を略正弦波にすることができる。また、搬送波の周波数が高いほどより理想的な正弦波の波形に近い電流を出力でき、当該周波数を15kHz以上にすれば、モータ9の磁気的騒音を大幅に低減することができる。そのため、インバータ主回路7には、このような高速スイッチングが可能であるIGBT1〜6が使用されている。
【0010】
しかしながら、インバータ主回路7が大電力で駆動される場合には電力変換損失による発熱が大きいため、水冷などによる冷却が必要であり、システムの小型化、低コスト化の障害となっている。また、電力変換損失には、IGBT1〜6におけるスイッチング損失が大きな割合を占めている。スイッチング損失は、スイッチング周波数が高くなるほど増加するので、十分高い周波数で使用することができないという問題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
斯様な問題を解決するため、特願平11−369662号において、出力電流波形の歪みを極力抑制するようにバランスを取りながらインバータ主回路におけるスイッチングを部分的な期間に停止させることで、スイッチング損失の低減を図るようにした技術が提案されている。
【0012】
具体的には、三相の電圧指令値U*,V*,W*の内何れか二相の指令値がほぼ等しい期間において、それら二相の指令値を最大または最小に固定することによってスイッチングを停止させるようにしている。また、同期間において、二相の指令値を最大または最小に固定する期間と三相の電圧指令値の内何れか一相のみを最大または最小に固定する期間とを交互に行うことで、スイッチング損失の低減を図ると共に出力電流波形の歪みをより低減するようにしている。
【0013】
しかしながら、この先行技術では、スイッチングを停止させる期間を出力電流のレベルとは無関係に設定しているため、負荷に流れる電流量が比較的大きい期間にスイッチングを行っている場合があり、スイッチング損失の低減効果を十分に得ることができなかった。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、インバータ主回路を構成するスイッチング素子について、スイッチング損失の発生をより効果的に抑制することができる電力変換装置、及び多相負荷の駆動制御方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の電力変換装置によれば、指令値変換手段は、指令値出力手段によって出力される少なくとも何れか二相の電圧指令値がほぼ等しくなる期間に、当該少なくとも何れか二相の電圧指令値が等しく最大または最小となるように変換する第1変換期間と、その内の一相の電圧指令値のみを最大または最小となるように変換する第2変換期間とを交互に繰り返すように出力する。すると、位相変化手段は、指令値変換手段によって第1,第2変換期間を交互に繰り返す変換期間が設定された位相を変化させ、制御信号出力手段は、設定位相が変化された変換期間を有する電圧指令値により搬送波をパルス幅変調することで、多相負荷にスイッチング素子を介して相電圧を印加するインバータ主回路にスイッチング制御信号を出力する。
【0016】
即ち、位相変化手段が、指令値変換手段が設定した変換期間の位相を変化させることで、インバータ主回路のスイッチング素子によるスイッチングの回数が抑制される期間の設定位相、または、スイッチング素子によるスイッチングが指令値出力手段によって出力される電圧指令値に基づいて行われる期間の位相が変化することになる。従って、スイッチング素子において発生するスイッチング損失がより低減されるように変換期間の設定位相を調整することが可能となり、スイッチング損失の低減効果をより高めることができる。
【0017】
請求項2記載の電力変換装置によれば、位相変化手段は、変換期間の設定位相を、電圧指令値とインバータ主回路から多相負荷に流れる出力電流との位相差に基づいて変化させるので、両者の位相差に応じて変換期間を適切な位相に設定することでスイッチング素子に発生するスイッチング損失をより低減させることができる。
【0018】
請求項3記載の電力変換装置によれば、位相変化手段は、指令値変換手段における電圧指令値の変換対象とならない期間が、前記電圧指令値に対応する相の出力電流のゼロクロス点にかかるように、変換期間の設定位相を変化させる。
【0019】
即ち、指令値変換手段における電圧指令値の変換対象とならない期間では、その電圧指令値は最大または最小となるように変換されず、スイッチング素子によるスイッチング動作が行われるため、該所定期間を出力電流のゼロクロス点付近に設定することでスイッチング損失を低減することができる。逆に、電圧指令値が変換対象となる期間は出力電流が大きくなる期間にかかるようになり、当該期間におけるスイッチング素子のスイッチング動作が抑制されることで、スイッチング損失を更に低減することができる。
【0020】
請求項4記載の電力変換装置によれば、位相変化手段は、変換期間の設定位相を、電圧指令値と外部より与えられる電流指令値との位相差に基づいて変化させるので、請求項2と同様に、両者の位相差に応じて変換期間を適切な位相に設定することでスイッチング素子に発生するスイッチング損失をより低減させることができる。
【0021】
請求項5記載の電力変換装置によれば、位相変化手段は、指令値変換手段における電圧指令値の変換対象とならない期間が、前記電圧指令値に対応する相の電流指令値のゼロクロス点にかかるように変換期間の設定位相を変化させるので、請求項3と同様に、スイッチング損失を更に低減することができる。
【0022】
請求項6記載の電力変換装置によれば多相負荷を多相交流モータとするので、インバータ主回路によって多相交流モータを駆動する場合に生じるスイッチング損失を低減することができる。
【0023】
請求項7記載の電力変換装置によれば、指令値変換手段は、第2変換期間を第1変換期間のn倍とし、第1変換期間では、変換対象以外の相についての電圧指令値を第2変換期間で変換対象とする相の電圧指令値との線間電圧を維持するようにレベルシフトし、第2変換期間では、第1変換期間においてのみ変換対象となる相についての電圧指令値を、第2変換期間で変換対象とする相の電圧指令値との線間電圧を(1+1/n)倍とするようにレベルシフトする。
【0024】
従って、第1,第2変換期間の夫々において電圧指令値が最大または最小に変換されることで生じる歪みを、変換対象以外の指令値をレベルシフトすることにより補正することができる。また、例えば、第2変換期間を第1変換期間のn (>1)倍とすれば、第2変換期間における指令値のレベルシフトは前記線間電圧の2倍未満となるので、過変調状態となって相電流波形に歪みが生じることを防止できる。
【0025】
請求項8記載の電力変換装置によれば、位相変化手段は、第2変換期間における電圧指令値が出力可能な値を超えない範囲で変化させる位相量を設定する。即ち、指令値変換手段が第2変換期間で変換対象とする相の電圧指令値との線間電圧をレベルシフトする場合に、位相変化手段が変換期間の設定位相を過度に大きく変化させると、線間電圧が大きくなる期間にレベルシフトが行われ過変調状態となって相電流波形に歪みが生じることになる。従って、位相変化手段が、第2変換期間における電圧指令値が出力可能な値を超えない範囲を限度として変換期間を変化させる位相量を設定することで、指令値変換手段が第2変換期間でレベルシフトを行う場合でも、過変調状態に陥ることを防止できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例について図1乃至図18を参照して説明する。尚、図20及び図21と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。また、本発明は、特願平11−369662号において提案されている先行技術をベースにしているため、先ずその先行技術について図7乃至図18を参照して説明する。
【0027】
電気的構成の機能ブロックを示す図7において、指令値発生器10とPWM波形発生器11に代わるPWM波形発生器21との間には、指令値変換器22が介挿されている。指令値変換器22は、指令値発生器21及びPWM波形発生器21と共に例えばDSP(Digital Signal Processor)などで構成されており、図9乃至図15に示すフローチャートの演算プログラムに従って、指令値発生器10より出力される電圧指令値U*,V*,W*より新たな電圧指令値U**,V**,W**を変換生成し、PWM波形発生器21に出力するように構成されている。また、PWM波形発生器21は、クロック信号ck1,ck2を指令値変換器22に出力するようになっている。
【0028】
ここで、図8を参照して、クロック信号ck1は、周期がPWM信号の搬送波周期の2倍であって、前記搬送波のレベルが“0”の時点に同期して立ち上がるクロック信号である。また、クロック信号ck2は、そのクロック信号ck1に対して位相が90°遅れとなるクロック信号である。そして、指令値変換器22は、クロック信号ck1,ck2のレベルをも参照して電圧指令値U*,V*,W*の変換処理を行うようになっている。
【0029】
また、指令値変換器22には、指令値発生器10と共に位相指令値θ*が与えられている。ここで、位相指令値θ*は、交流モータ9のロータの位相θに基づいて図示しない位相指令値発生器において生成されるものであり、交流モータ9の駆動状態に応じて位相θに進み成分や遅れ成分が付加されている。尚、位相指令値θ*に代えて位相θをそのまま用いても良い。
【0030】
次に、図7に示す構成の作用について図9乃至図18をも参照して説明する。指令値発生器10は、U相の電圧指令値U*の位相を位相指令値θ*の変化に同期させて出力しており、電圧指令値V*,W*は、電圧指令値U*の値を夫々2π/3遅れ,2π/3進んだ値として出力している。
【0031】
ここで、図17(a)は、電圧指令値U*,V*,W*の波形データと、PWM波形発生器11においてPWM変調される搬送波の波形を重ねて示すものであるが、図示の都合上、搬送波の周期は実際よりも長くなっている。また、縦軸の振幅を±1としているが、実際のデータは、例えば8ビットであれば−1〜+1の振幅レベルを“0〜255”にシフトして出力するようにしている。
【0032】
また、図17(b)は、図17(a)中に矢印で示した部分(電圧指令値U*の位相π/2付近)を拡大して示すもので、電圧指令値V*,W*の値が交差している近傍であり、両者の値が比較的近似している領域である。
【0033】
図9乃至図15は、指令値変換器22における演算プログラムのフローチャートを示すものである。図9において、指令値変換器22は、各相電圧指令値U*,V*,W*と共に位相指令値θ*を読み込むと(ステップA1),以降のステップA2〜A7においては、位相指令値θ*が何れの区間(電気角)内にあるのかを判定する。
【0034】
即ち、ステップA2〜A7における6つの区間は、何れも三相の指令値の内何れか二相の指令値がほぼ等しくなる区間であり、電気角π/6,π/2,5π/6,7π/6,3π/2,11π/6を中心とする範囲である(図16参照)。また、各ステップA2〜A7における“±φ”は、区間幅(変換期間)を設定するための位相量である。
【0035】
そして、指令値変換器22は、例えば図17(b)に示すように電圧指令値V*,W*が近似しており、且つ、電圧指令値U*が正である期間において、V,W相の指令値レベルを“0”に変換した指令値V**,W**を出力する第1変換期間と、V,W相の指令値レベルの何れか一方だけを“0”に変換した指令値V**,W**を出力する第2変換期間とを交互に繰り返す変換期間に設定する(図17
(c)参照)。
【0036】
即ち、図17(b)に示す期間は、電気角π/2を中心とする位相区間に対応している。従って、指令値変換器22はステップA3で「YES」と判断し、続いて、図11に示すように指令値V*とW*との差の結果が負(V*<W*)であるか否かを判断する(ステップA17)。そして、負である場合は(「YES」)ステップA18に移行して、クロック信号ck2のレベルが“1(ハイレベル)”であるか否かを判断する。
【0037】
クロック信号ck2のレベルが“1”であれば(「YES」)ステップA19に移行して、変換電圧指令値U**,V**,W**を以下のように変換生成する。◎
U**=U*−V*−1 …(1)
V**=W**=−1(データ値“0”) …(2)
斯様に指令値を設定することで、V相とW相とPWM信号の変調度が0%,即ちデューティが0%となってV相とW相はスイッチングされなくなる。尚、変換電圧指令値U**は、元の指令値におけるU相とV相との線間電圧を維持するようにレベルシフトされており、U相のみがスイッチングされる一相変調期間(第1変換期間)となっている。
【0038】
一方、ステップA18においてクロック信号ck2のレベルが“0(ロウレベル)”であれば(「NO」)ステップA20に移行して、変換電圧指令値U**,V**,W**を以下のように変換生成する。
U**=U*−V*−1 …(3)
V**=−1 …(4)
W**=2(W*−V*)−1 …(5)
この場合、V相だけがスイッチングされなくなり、U,W相がスイッチングされる二相変調期間となっている。また、変換電圧指令値W**は、元の指令値におけるW相とV相との線間電圧の2倍の電圧を出力するようにレベルシフトされている。即ち、1つ前の搬送波周期において指令値W**が“−1”に固定された分を補うためである。
【0039】
また、ステップA17において、指令値V*とW*との差の結果が正(V*>W*)である場合は(「NO」)ステップA21に移行して、ステップA18と同様にクロック信号ck2のレベルが“1”であるか否かを判断する。クロック信号ck2のレベルが“1”であれば(「YES」)ステップA22に移行して、(3)式を(6)式に置き換えて実行する。
U**=U*−W*−1 …(6)
【0040】
一方、ステップA21においてクロック信号ck2のレベルが“0”であれば(「NO」)ステップA23に移行して、変換電圧指令値U**,V**,W**を以下のように変換生成する。
U**=U*−W*−1 …(7)
V**=2(V*−W*)−1 …(8)
W**=−1 …(9)
即ち、ステップA22及びA23における処理は、ステップA19及びA20の処理に対して指令値V*とW*との大小関係が入れ替わることに基づくものである。
【0041】
このようにして変換生成された電圧指令値U**,V**,W**が図17(c)に示すものである。即ち、期間dにおいて電圧指令値V*とW*とが交差して両者の大小関係が入れ替わるため、前半の期間a〜dではV*<W*であり、後半の期間d〜gではV*>W*となっている。そして、期間b,d,f(クロック信号ck2のレベルが“1”の時)においては、変換電圧指令値V**,W**を最小レベルに固定し電圧指令値U**のみで一相変調を行う(第1変換期間)。
【0042】
一方、クロック信号ck2のレベルが“0”となる前半の期間a,cでは、変換電圧指令値V**だけを最小レベルに固定し、変換電圧指令値U**,W**で二相変調を行い、後半の期間e,gにおいては、変換電圧指令値W**だけを最小レベルに固定し変換電圧指令値U**,V**のみで一相変調を行う(第2変換期間)。従って、一相変調と二相変調とが搬送波周期毎に交互に実行されるようになる (即ち、n=1である)。
【0043】
また、電圧指令値V*,W*が近似しており、且つ、電圧指令値U*が負である期間は、電気角3π/2を中心とする位相区間に対応している。従って、指令値変換器22はステップA6で「YES」と判断し、続いて、図14に示すように指令値V*とW*との差の結果が正(V*>W*)であるか否かを判断する (ステップA38)。そして、正である場合は(「YES」)ステップA39に移行して、クロック信号ck1のレベルが“1(ハイレベル)”であるか否かを判断する。
【0044】
クロック信号ck1のレベルが“1”であれば(「YES」)ステップA40に移行して、電圧指令値U**,V**,W**を以下のように変換生成する。
U**=U*−V*−1 …(10)
V**=W**=1(データ値“255”) …(11)
斯様に指令値を設定することで、V相とW相とのPWM信号の変調度が100%,即ちデューティが100%となってV相とW相はスイッチングされなくなる。また、変換電圧指令値U**は、ステップA19の場合と同様に元の指令値におけるU相とV相との線間電圧を維持するようにレベルシフトされている。そして、この期間も、U相のみがスイッチングされる一相変調期間(第1変換期間)となっている。
【0045】
一方、ステップA39においてクロック信号ck1のレベルが“0(ロウレベル)”であれば(「NO」)ステップA41に移行して、変換電圧指令値U**,V**,W**を以下のように変換生成する。
U**=U*−V*+1 …(12)
V**=1 …(13)
W**=2(W*−V*)+1 …(14)
この場合も、ステップA20と同様に、V相だけがスイッチングされず、U,W相がスイッチングされる二相変調期間となっている。また、変換電圧指令値W**は、元の指令値におけるW相とV相との線間電圧の2倍の電圧を出力するようにレベルシフトされている。
【0046】
以上に一例を示したように、各判断ステップA2〜A7において「YES」と判断する場合と電圧指令値U*,V*,W*との関係は、以下のように対応している。
ステップA2:U=W,V<0
ステップA3:V=W,U>0
ステップA4:U=V,W<0
ステップA5:U=W,V>0
ステップA6:V=W,U<0
ステップA7:U=V,W>0
尚、等号“=”は、「ほぼ等しい」、の意味で使用している。
【0047】
そして、他の4つのケースについては、電圧指令値の対応する相を入れ替えた表現となる。即ち、ステップA2で「YES」と判断した場合で(図10参照)、且つ、W*>U*である場合に実行されるステップA12(第1変換期間)では、各相指令値は以下のように変換され、
U**=1 …(15)
V**=V*−W*+1 …(16)
W**=1 …(17)
ステップA13(第2変換期間)では、以下のように変換される。
U**=2(U*−W*)+1 …(18)
V**=V*−W*+1 …(19)
W**=1 …(20)
【0048】
また、W*<U*である場合に実行されるステップA15(第1変換期間)では、各相指令値は以下のように変換され、
U**=1 …(21)
V**=V*−U*+1 …(22)
W**=1 …(23)
ステップA16(第2変換期間)では、以下のように変換される。
U**=1 …(24)
V**=V*−U*+1 …(25)
W**=2(W*−U*)+1 …(26)
【0049】
一方、上記ケースの極性が反転し、ステップA5で「YES」と判断した場合で(図13参照)、且つ、W*<U*である場合に実行されるステップA33 (第1変換期間)では、各相指令値は以下のように変換され、
U**=−1 …(27)
V**=V*−W*−1 …(28)
W**=−1 …(29)
ステップA34(第2変換期間)では、以下のように変換される。
U**=2(U*−W*)−1 …(30)
V**=V*−W*−1 …(31)
W**=−1 …(32)
【0050】
また、W*>U*である場合に実行されるステップA36(第1変換期間)では、各相指令値は以下のように変換され、
U**=−1 …(33)
V**=V*−U*−1 …(34)
W**=−1 …(35)
ステップA37(第2変換期間)では、以下のように変換される。
U**=−1 …(36)
V**=V*−U*−1 …(37)
W**=2(W*−U*)−1 …(38)
【0051】
更に、ステップA4で「YES」と判断した場合で(図12参照)、且つ、U*>V*である場合に実行されるステップA26(第1変換期間)では、各相指令値は以下のように変換され、
U**=1 …(39)
V**=1 …(40)
W**=W*−U*+1 …(41)
ステップA27(第2変換期間)では、以下のように変換される。
U**=1 …(42)
V**=2(V*−U*)+1 …(43)
W**=W*−U*+1 …(44)
【0052】
また、U*<V*である場合に実行されるステップA29(第1変換期間)では、各相指令値は以下のように変換され、
U**=1 …(45)
V**=1 …(46)
W**=W*−V*+1 …(47)
ステップA30(第2変換期間)では、以下のように変換される。
U**=2(U*−V*)+1 …(48)
V**=1 …(49)
W**=W*−U*+1 …(50)
【0053】
一方、上記ケースの極性が反転し、ステップA7で「YES」と判断した場合で(図15参照)、且つ、U*<V*である場合に実行されるステップA46 (第1変換期間)では、各相指令値は以下のように変換され、
U**=−1 …(51)
V**=−1 …(52)
W**=W*−U*−1 …(53)
ステップA47(第2変換期間)では、以下のように変換される。
U**=−1 …(54)
V**=2(V*−U*)−1 …(55)
W**=W*−U*−1 …(56)
【0054】
また、U*>V*である場合に実行されるステップA49(第1変換期間)では、各相指令値は以下のように変換され、
U**=−1 …(57)
V**=−1 …(58)
W**=W*−V*−1 …(59)
ステップA50(第2変換期間)では、以下のように変換される。
U**=2(U*−V*)−1 …(60)
V**=−1 …(61)
W**=W*−V*−1 …(62)
【0055】
そして、指令値変換器22がステップA2〜A7の何れにおいても「NO」と判断した場合はステップA8に移行し、電圧指令値U*,V*,W*をそのまま変換電圧指令値U**,V**,W**としてステップA9に移行し、それらの変換電圧指令値U**,V**,W**をPWM波形発生器21に出力する。
以上のようにして指令値変換器22により変換された電圧指令値U**,V**,W**の波形を、図18(d),(e),(f)に示す。
【0056】
以上のように、指令値変換器22は、三相の電圧指令値U*,V*,W*の内、何れか二相の指令値レベルが近似する期間に、一相変調を行う第1変換期間と二相変調を行う第2変換期間とを同一の時間比率で交互に実行する。そして、第1変換期間では、変換対象以外の相(例えば、(1)〜(5)式の例ではU相)の電圧指令値を、第2変換期間で変換対象とする相(同V相)の電圧指令値との線間電圧を維持するようにレベルシフトし、第2変換期間では、変換対象とする相(V)を、変換対象以外の相(U,W)についての電圧指令値との線間電圧が最大となる相に設定すると共に、第1変換期間でのみ変換対象となる相(W)の電圧指令値を、第2変換期間で変換対象とする相(V)の電圧指令値との線間電圧を2倍とするようにレベルシフトする。
【0057】
斯様に制御することで、従来よりもスイッチングの回数を減少させることができると共に、第1,第2変換期間の夫々において電圧指令値が最大または最小に変換されることで生じる歪み(線間電圧の不足)を変換対象以外の指令値をレベルシフトすることで補正し、モータ9に出力される相電流波形の歪みをより低減してモータ9の駆動を一層低振動且つ低騒音で行うことが可能となる。
【0058】
次に、以上の技術をベースにした本発明の構成について説明する。電気的構成を示す図1において、インバータ主回路7のU相出力端子7uとモータ9との間には、例えば変流器などからなる電流検出器23が介挿されており、その電流検出器23が検出したU相電流の検出信号Iuは、図7における指令値変換器22に代わる指令値変換器(指令値変換手段,位相変化手段)24に出力されている。その他の構成は、図7に示すものと同様である。
【0059】
次に、本実施例の作用について図2乃至図6をも参照して説明する。図2において、指令値変換器24は、ステップA1と同様に電圧指令値U*,V*,W*及び位相指令値θ*を読み込むと(ステップB0)、変化位相量αを決定する(ステップB1)。
【0060】
図3は、変化位相量αを決定するためのフローチャートである。指令値変換器24は、電流検出器23が出力するU相電流検出信号Iuを読み込むと(ステップC1)、その検出信号Iuを出力電流位相θIUに変換する(ステップC2)。ここでの変換は、例えば略正弦波状を示す検出信号Iuの最大値(U相電流の最大振幅)を記憶しておき、その最大値に対する比に基づいて変換する。
【0061】
続いて、指令値変換器24は、ステップB0で読み込んだ位相指令値θ*を電圧位相θVU* とし、電圧−電流位相差Δθを(63)式によって求める(ステップC3)。
Δθ=θVU* −θIU …(63)
そして、変化位相量αを(64)式によって求める(ステップC4)。
α=Δθ−π/2 …(64)
【0062】
このステップC4における変化位相量αの決定は、以下の理由に基づく。図4(a)は、指令値変換器24が出力する変換電圧指令値U**の波形であり、図4(b)は、U相出力電流(Iu)の波形である。通常、インバータによってモータの巻線に電圧を印加することで電流を通電し駆動すると、その電圧,電流間の位相は、電圧が電流に対して進み位相となる傾向を示す。例えば、図4(a),(b)においては、電圧位相が電流位相に対してπ/6進んだ状態となっている。
【0063】
指令値変換器24が出力する変換電圧指令値U**は、前述のように、第1,第2変換期間を交互に繰り返してインバータ主回路7におけるスイッチングを抑制する変換期間を有している。例えば、指令値U**の位相π/2を中心とする設定位相量±φの期間においては、前半(−φ側)がU相のみ1相変調する期間及びU,W相で2相変調する期間であり、後半(+φ側)がU相のみ1相変調する期間及びU,V相で2相変調する期間である。従って、この期間ではU相は常にスイッチングされており、前記期間に隣接するのがU相のスイッチングが完全に停止される期間となっている。
【0064】
そして、指令値U**と出力電流Iuとの位相関係を参照すると、U相のスイッチングが行われている(π/2±φ)の期間は、出力電流Iuのピーク付近にかかっている。そのため、当該期間におけるスイッチング損失の抑制は充分であるとは言えない。
【0065】
そこで、本実施例では、変化位相量αを導入することによって変換期間を進み位相側にずらすようにする。例えば、図4(c)には、変化位相量αを−π/6に設定して変換期間をずらした場合の指令値U**の波形である。この波形では、U相のスイッチングが行われる期間が出力電流Iuのゼロクロス点により接近している。また、U相のスイッチングが停止する期間は、出力電流のピーク付近により近付いている。このため、スイッチング損失はより小さくなる。
【0066】
以上の原理に基づいて、スイッチング損失を最小にすることを考えると、指令値U**について連続してスイッチングが行われる期間の中心位相を、出力電流Iuのゼロクロス点に一致させることが最適であると考えられる。従って、指令値変換器24は、電圧−電流位相差Δθを求め、その位相差Δθに変化位相量αを加えた場合に、スイッチング期間の中心位相が出力電流Iuに対してトータルでπ/2だけ進むように設定することで前記中心位相が出力電流Iuのゼロクロス点に一致するようにしている。
【0067】
即ち、以上の処理は、U相の電圧指令値U*が指令値変換器24において変換対象とならない(最大または最小に変換されない)期間に、U相の出力電流Iuのゼロクロス点がかかるように変換期間の設定位相を変化させる処理である。
【0068】
再び、図3を参照して、指令値変換器24は、ステップC4で変化位相量αを決定すると、続くステップC5において、変化位相量αの絶対値と上限値αmax とを比較し、絶対値|α|が上限値αmax 未満であれば(「NO」)ステップC4で求めた位相量αをそのまま用いるようにする(ステップC6)。一方、絶対値|α|が上限値αmax を超えている場合は(「YES」)、位相量αを上限値αmax で制限する(ステップC7)。即ち、
α=α・αmax /|α| …(65)
とする。ここで、(65)式の右辺で“α/|α|”をαmax に乗じているのは、正負の符号を付与するためである。
【0069】
また、上限値αmax は、以下の原理に基づいて定められる。前述のように、変換期間においては、線間電圧を補償するため指令値のレベルシフトを行っている。例えば、ステップA13では、
U**=2(U*−W*)+1 …(18)
となっている。そして、変化位相量αを大きく設定すると、その分だけ電圧指令値U*,W*の差が大きくなるため、変化位相量αをあまりに大きく設定すると、(18)式で定まる指令値U は出力可能な範囲を超えて過変調状態に陥ることになる。
【0070】
例えば、図5及び図6は、設定位相量φ=π/6,変化位相量α=−π/3の場合の各相変換電圧指令値U**,V**,W**を示すが、振幅Va が比較的小さい図5の場合には各相変換電圧指令値U**,V**,W**は出力可能な範囲に設定されているが、振幅Va が比較的大きい図5の場合には、各相変換電圧指令値U**,V**,W**は変換期間において出力可能な値域を超えて過変調状態となっている。
【0071】
このように過変調状態が生じると、出力電流波形の歪みが大きくなるため好ましくない。従って、過変調状態を抑制する範囲で上限値αmax を定めている。具体的には、上限値αmax は(66)式で決定される。
αmax =sin−1(1/(√3・Va ))−φ …(66)
【0072】
例えば、U,V各相の電圧指令値U*,V*の差は、平衡三相交流の線間電圧に等しいので、
U*−V*=Va sinθ …(67)
となる。尚、(67)式のθは、指令値U*,V*の交点で0(rad)となる位相である。また、Va は、電圧指令値の振幅レベルを設定する変数である。そして、変換期間における補正は、(18)式に示すように線間電圧の2倍で行うので、その補正結果が正弦波の相対振幅値2(−1〜+1)を超えないように抑えれば良い。即ち、
2√3・Va sin(φ+αmax )=2 …(68)
となり、(68)式から(66)式を導出している。
【0073】
再び、図2を参照する。以上のように、ステップB1において変化位相量αを求めると、以降のステップB2〜B7は、ステップA2〜A7に示す各位相区間に変化位相量αを加えたものである。従って、各変換期間の設定位相は、変化位相量α分だけ進み位相側に変化する。
【0074】
そして、指令値変換器24は、ステップB2〜B7において何れも「NO」と判断した場合はステップB8において電圧指令値U*,V*,W*をそのまま変換電圧指令値U**,V**,W**としてPWM波形発生器(指令値出力手段)21に出力する。また、各ステップB2〜B7において「YES」と判断し、図10乃至図15に示す処理を実行した後は、ステップB9に移行して変換した電圧指令値U**,V**,W**を出力する。
その結果、例えば図5に示すように、変化位相量αに基づいて各相変換電圧指令値U**,V**,W**の変換期間が変化するようになる。
【0075】
以上のように本実施例によれば、指令値変換器24は、三相の電圧指令値U*,V*,W*の内、何れか二相の指令値レベルが比較的近似する期間において、それら二相の指令値レベルを最大または最小に固定し一相変調を行う第1変換期間と、それら二相の内何れか一相の指令値レベルを最大または最小に固定して二相変調を行う第2変換期間とを同一の時間比率で交互に実行する変換期間を設定し、更に、変換期間が設定された位相を変化位相量αによって変化させた変換電圧指令値U**,V**,W**により搬送波をパルス幅変調することで、インバータ主回路7にスイッチング制御信号を出力する。
【0076】
従って、インバータ主回路7のIGBT1〜6によるスイッチング動作の回数が抑制される期間の設定位相が変化するので、IGBT1〜6において発生するスイッチング損失をより低減できる期間に変換期間の設定位相を調整することが可能となり、スイッチング損失の低減効果をより高めることができる。
【0077】
そして、指令値変換器24は、変換期間の設定位相を、電圧指令値U*と出力電流Iuとの位相差Δθに基づいて、変換電圧指令値U**について連続的にスイッチングが行われる期間の中心位相が、出力電流Iuのゼロクロス点に一致するように変換期間の設定位相を変化させるようにした。即ち、前記中心位相を含む前後の所定期間はIGBT1〜6によるスイッチング動作が行われるため、該所定期間を出力電流Iuのゼロクロス点付近に設定することでスイッチング損失を低減することができる。逆に、電圧指令値の変換期間は出力電流が大きくなる期間にかかるようになり、当該期間におけるスイッチング動作が抑制されるため、スイッチング損失を更に低減することができる。
【0078】
また、本実施例によれば、指令値変換器24は、第1変換期間では、変換対象以外の相(例えば、(1)〜(5)式の例ではU相)の電圧指令値を、第2変換期間で変換対象とする相(同V相)の電圧指令値との線間電圧を維持するようにレベルシフトし、第2変換期間では、変換対象とする相(V)を、変換対象以外の相(U,W)についての電圧指令値との線間電圧が最大となる相に設定すると共に、第1変換期間でのみ変換対象となる相(W)の電圧指令値を、第2変換期間で変換対象とする相(V)の電圧指令値との線間電圧を2倍とするようにレベルシフトした。
【0079】
従って、従来よりもスイッチングの回数を減少することができると共に、第1,第2変換期間の夫々において電圧指令値が最大または最小に変換されることで生じる歪み(線間電圧の不足)を変換対象以外の指令値をレベルシフトすることで補正して、モータ9に出力される相電流波形を歪みがより少ないものにすることができるので、モータ9の駆動を一層低振動且つ低騒音で行うことが可能となる。また、指令値変換器23は、変換期間を搬送波周期の2倍に設定するので、変換処理を搬送波に同期したタイミングで容易に実行することができる。
【0080】
そして、指令値変換器24は、指令値をレベルシフトする補正を行う場合は、第2変換期間における電圧指令値が最大値または最小値を超えない範囲で変化位相量αを設定するので、第2変換期間でレベルシフトを行う場合でも過変調状態に陥ることを防止できる。
【0081】
(第2実施例)
図19は本発明の第2実施例を示すものであり、例えば電気自動車の駆動用に用いられるブラシレスモータ(多相交流モータ)を駆動制御するための周知の制御系(電流制御)に本発明を適用した場合の機能ブロック図である。即ち、電流指令値iq*は、スロットルの開度信号やモータの回転速度等に応じてECU(Electronic Control Unit) により与えられるトルク指令値であり、電流指令値id*は、指令値iq*に応じてテーブルより読み出されて与えられる磁束指令値である。
【0082】
これらの電流指令値id*,iq*は、減算器25a,25bに被減算値として夫々与えられている。電流検出値iu,iv,iwは、インバータ主回路の出力電流を電流センサにより検出したものであり、uvw/d−q変換部26に与えられている。uvw/d−q変換部26は、位相検出値θに基づいて電流検出値iu,iv,iwをd−q軸(回転座標軸)のベクトル成分に変換(三相/二相変換)し、二相電流値id,iqを減算器25a,25bに減算値として出力する。
【0083】
減算器25a,25bの出力信号は、例えばPI制御などを行う電流制御部27a,27bに与えられて電圧指令値vd′*,vq′*に変換され、減算器28a,加算器28bに被減算値,被加算値として夫々与えられている。非干渉化部29は、uvw/d−q変換部26が出力する二相電流値id,iqに基づいてブラシレスモータに発生する逆起電力を検出すると、その逆起電力を減算器28a,28bに減算値,被加算値として出力する。そして、減算器28a,加算器28bの出力信号は、電圧指令値vd*,vq*としてd−q/uvw変換部30に与えられている。
【0084】
d−q/uvw変換部30は、位相検出値θに基づいて電圧指令値vd*,vq*を三相の電圧指令値U*,V*,W*に変換し(二相/三相変換)し、その電圧指令値U*,V*,W*を指令値変換器24に出力する。そして、指令値変換器24は、電圧指令値U*,V*,W*を変換電圧指令値U**,V**,W**に変換してPWMパターン発生器11に出力する。以降の構成は第1実施例等と同様である。
尚、第2実施例の構成は、ハードウエア,ソフトウエアの何れによっても可能である。
以上のように第2実施例によれば、本発明をブラシレスモータの電流制御を行う場合にも適用することができる。
【0085】
本発明は上記し且つ図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
位相変化量αは、電圧−電流位相差Δθとの和によって、何れかの電圧指令値について変換手段の変換対象とならない期間が、前記電圧指令値に対応する相の出力電流のゼロクロス点にかかるように、π/2を上限として設定すれば良い。
変換期間の設定は、位相指令値θ*若しくは位相量θに基づくものに限らず、電圧指令値U*,V*,W*の値を比較することで行っても良い。
指令値出力手段と指令値変換手段とを一体に構成しても良い。
第2実施例において、非干渉化部30は必要に応じて設ければ良い。また、第2実施例の電流制御に限ることなく、速度制御や位置制御、またはブラシレスモータに対するものとは全く異なる制御方式でも、最終的に電圧指令値を出力するものであれば適用できる。
また、以上の各実施例では、三角波比較PWMで説明したが、変調方式はこのような搬送波をベースにしたものに限ることはなく、スイッチングによってパルス幅を変えることで電力を変換するものであれば他の変調方式でも良い。
デジタル制御する場合は、二相を固定することによる線間電圧の不足分をメモリに蓄えておき、1相のみ固定する期間にリアルタイムで重畳させるようにしても良い。
スイッチング素子はIGBTに限ることなく、例えばパワートランジスタやパワーMOSFETなどでも良い。
電流センサやホールIC,ロータリエンコーダやレゾルバなどを用いてモータ9のロータの位置情報を得るものに限らず、例えばモータ9の誘起電圧を分圧抵抗やコンパレータなどにより検出してロータの位置情報を得る、所謂センサレス駆動方式を採用しても良い。
【0086】
出力電流の検出値Iuに代えて、外部より与えられる電流指令値と、電圧指令値との位相差に基づいて変化位相量αを決定しても良い。
n=1に限ることなく、nは正の実数に適宜設定すれば良い。
指令値変換手段を中心とする構成は、DSPを用いるものに限らず、CPUを用いて構成するものでも良い。
例えば、三相交流モータにおいて何れか一相のみを固定し、二相だけで変調を行う二相変調方式を常時行っているものについて、その状態から更に一相を固定することにより、上記各実施例と同様に所定の期間だけ二相を固定するようにしても良い。この場合、スイッチング回数を更に低減することができる。
四相以上の多相交流モータに適用しても良い。
電気自動車やハイブリッド電気自動車などに使用される多相交流モータに限ること無く、UPS(Uninterruptible Power Supply :無停電電源) など多相の線間電圧を出力するものであれば適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例であり、電力変換装置の電気的構成を示す機能ブロック図
【図2】指令値変換器の制御内容を示すフローチャート
【図3】図2に示すステップB1の詳細を示すフローチャート
【図4】(a)は位相変化量α=0の場合の変換電圧指令値U**、(b)はU相出力電流Iu、(c)は位相変化量α=−π/6の場合の変換電圧指令値U**を示す図
【図5】(a)は振幅Va が比較的小さい場合の電圧指令値U*,V*,W*、(b)〜(d)は、位相変化量α=−π/6の場合の変換電圧指令値U**,V**,W**を示す図
【図6】(a)〜(c)は、振幅Va が比較的大きく、位相変化量α=−π/6の場合の変換電圧指令値U**,V**,W**を示す図
【図7】本実施例のベースとなる技術を説明するための図1相当図
【図8】(a)はPWM変調の搬送波、(b)は搬送波に同期したクロック信号ck1、(c)はクロック信号ck1に対して90°遅れ位相のクロック信号ck2を示す図
【図9】図2相当図(その1)
【図10】図2相当図(その2)
【図11】図2相当図(その3)
【図12】図2相当図(その4)
【図13】図2相当図(その5)
【図14】図2相当図(その6)
【図15】図2相当図(その7)
【図16】電圧指令値U*,V*,W*を重ね合わせて示す図
【図17】(a)は図16相当図、(b)は(a)の一部を拡大して示す図、(c)は (b)に対応する変換電圧指令値U**,V**,W**を示す図
【図18】(a)〜(c)は電圧指令値U*,V*,W*を示し、(d)〜(f)は変換電圧指令値U**,V**,W**を示す図
【図19】本発明の第2実施例であり、電気自動車の駆動用に用いられるブラシレスモータを駆動制御する制御系に本発明を適用した場合の機能ブロック図
【図20】従来技術を示す図1相当図
【図21】PWM波形発生器の詳細な構成を示す図
【図22】図17(a),(b)相当図
【符号の説明】
1〜6はIGBT(スイッチング素子)、7はインバータ主回路、9は多相交流モータ、10は指令値発生器(指令値出力手段)、11はPWM波形発生器 (制御信号出力手段)、21はPWM波形発生器(制御信号出力手段)、24は指令値変換器(指令値変換手段,位相変化手段)を示す。

Claims (16)

  1. 多相負荷にスイッチング素子を介して相電圧を印加するインバータ主回路と、
    各相毎に電圧指令値を出力する指令値出力手段と、
    この指令値出力手段によって出力される電圧指令値の内、少なくとも何れか二相の電圧指令値がほぼ等しくなる期間において、当該少なくとも何れか二相の電圧指令値が等しく最大または最小となるように変換する第1変換期間と、その内の一相の電圧指令値のみを最大または最小となるように変換する第2変換期間とを交互に繰り返すように出力する指令値変換手段と、
    この指令値変換手段によって前記第1変換期間と前記第2変換期間とを交互に繰り返す変換期間が設定された位相を変化させる位相変化手段と、
    この位相変化手段によって設定位相が変化された変換期間を有する電圧指令値によって搬送波をパルス幅変調することで、前記インバータ主回路にスイッチング制御信号を出力する制御信号出力手段とを備えていることを特徴とする電力変換装置。
  2. 前記位相変化手段は、前記変換期間の設定位相を、前記電圧指令値と前記インバータ主回路から前記多相負荷に流れる出力電流との位相差に基づいて変化させることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
  3. 前記位相変化手段は、前記指令値変換手段における電圧指令値の変換対象とならない期間が、前記電圧指令値に対応する相の出力電流のゼロクロス点にかかるように、前記変換期間の設定位相を変化させることを特徴とする請求項2記載の電力変換装置。
  4. 前記位相変化手段は、前記変換期間の設定位相を、前記電圧指令値と外部より与えられる電流指令値との位相差に基づいて変化させることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
  5. 前記位相変化手段は、前記指令値変換手段における電圧指令値の変換対象とならない期間が、前記電圧指令値に対応する相の電流指令値のゼロクロス点にかかるように、前記変換期間の設定位相を変化させることを特徴とする請求項4記載の電力変換装置。
  6. 前記多相負荷は多相交流モータであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の電力変換装置。
  7. 前記指令値変換手段は、前記第2変換期間を前記第1変換期間のn(nは、正の実数)倍とし、
    前記第1変換期間においては、変換対象以外の相についての電圧指令値を、前記第2変換期間において変換対象とする相の電圧指令値との線間電圧を維持するようにレベルシフトし、
    前記第2変換期間においては、前記第1変換期間においてのみ変換対象となる相についての電圧指令値を、第2変換期間において変換対象とする相の電圧指令値との線間電圧を(1+1/n)倍とするようにレベルシフトすることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の電力変換装置。
  8. 前記位相変化手段は、前記第2変換期間における電圧指令値が出力可能な値を超えない範囲で、変化させる位相量を設定することを特徴とする請求項7記載の電力変換装置。
  9. 多相負荷に対して各相毎に電圧指令値を出力し、
    これらの電圧指令値の内、少なくとも何れか二相の電圧指令値がほぼ等しくなる期間において、当該少なくとも何れか二相の電圧指令値が等しく最大または最小となるように変換する第1変換期間と、その内の一相の電圧指令値のみを最大または最小となるように変換する第2変換期間とを交互に繰り返すように出力し、
    前記第1変換期間と前記第2変換期間とを交互に繰り返す変換期間が設定されている位相を変化させ、
    設定位相が変化された変換期間を有する電圧指令値によって搬送波をパルス幅変調することで、前記多相負荷にスイッチング素子を介して相電圧を印加するインバータ主回路にスイッチング制御信号を出力することを特徴とする多相負荷の駆動制御方法。
  10. 前記変換期間の設定位相を、前記電圧指令値と前記インバータ主回路から前記多相負荷に流れる出力電流との位相差に基づいて変化させることを特徴とする請求項9記載の多相負荷の駆動制御方法。
  11. 前記電圧指令値の変換対象とならない期間が、当該電圧指令値に対応する相の出力電流のゼロクロス点にかかるように、前記変換期間の設定位相を変化させることを特徴とする請求項10記載の多相負荷の駆動制御方法。
  12. 前記変換期間の設定位相を、前記電圧指令値と外部より与えられる電流指令値との位相差に基づいて変化させることを特徴とする請求項10記載の多相負荷の駆動制御方法。
  13. 前記電圧指令値の変換対象とならない期間が、当該電圧指令値に対応する相の電流指令値のゼロクロス点にかかるように、前記変換期間の設定位相を変化させることを特徴とする請求項12記載の多相負荷の駆動制御方法。
  14. 前記多相負荷は多相交流モータであることを特徴とする請求項9乃至13の何れかに記載の多相負荷の駆動制御方法。
  15. 前記指令値変換手段は、前記第2変換期間を前記第1変換期間のn(nは、正の実数)倍とし、
    前記第1変換期間においては、変換対象以外の相についての電圧指令値を、前記第2変換期間において変換対象とする相の電圧指令値との線間電圧を維持するようにレベルシフトし、
    前記第2変換期間においては、前記第1変換期間においてのみ変換対象となる相についての電圧指令値を、第2変換期間において変換対象とする相の電圧指令値との線間電圧を(1+1/n)倍とするようにレベルシフトすることを特徴とする請求項9乃至14の何れかに記載の多相負荷の駆動制御方法。
  16. 前記第2変換期間における電圧指令値が出力可能な値を超えない範囲で、変化させる位相量を設定することを特徴とする請求項15記載の多相負荷の駆動制御方法。
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