JP3760568B2 - 弁開閉時期制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の動弁装置において吸気弁又は排気弁の開閉時期を制御するために使用される弁開閉時期制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の弁開閉時期制御装置の一つとして、内燃機関のシリンダヘッドに回転自在に組付けられる弁開閉用の回転軸(カムシャフトとこれに一体的に設けた内部ロータからなる)に所定範囲で相対回転可能に外装されクランク軸からの回転動力が伝達される回転伝達部材と、前記回転軸に取り付けられたベーンと、前記回転軸と前記回転伝達部材との間に形成され前記ベーンによって進角用室と遅角用室とに二分される流体圧室と、前記進角用室に流体を給排する第1流体通路と、前記遅角用室に流体を給排する第2流体通路と、前記回転伝達部材に形成され内部に前記回転軸に向けてばね付勢されたロックピンを収容する退避孔と、前記回転軸に形成され前記回転軸と前記回転伝達部材の相対位相が所定の位相で同期したとき前記ロックピンの頭部が嵌入される受容孔と、この受容孔に流体を給排する第3流体通路とを備えたものがあり、例えば特開平1−92504号公報や実開平2−50105号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した各公報に開示されている弁開閉時期制御装置においては、第3流体通路を通して受容孔に供給される圧力流体によってロックピンがばね付勢力に抗して移動してロックピンによるロックが解除される構成となっており、また第3流体通路への流体の給排と第1流体通路及び第2流体通路への流体の給排が同時に行われる構成となっているため、ロックピンの移動によるロック解除に先だって変位変換作動(回転軸と回転伝達部材の相対回転)が開始することがあり、この場合にはロックピンと受容孔間に過大なフリクションが発生し、ロックピンの移動によるロック解除が的確に行われないことがある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した問題に対処すべくなされたものであり、内燃機関のシリンダヘッドに回転自在に組付けられる弁開閉用の回転軸と、この回転軸に所定範囲で相対回転可能に外装されクランク軸からの回転動力が伝達される回転伝達部材と、前記回転軸又は前記回転伝達部材の一方に取り付けられたベーンと、前記回転軸と前記回転伝達部材との間に形成され前記ベーンによって進角用室と遅角用室とに二分される流体圧室と、前記進角用室に流体(作動油でも加圧空気でもよい)を給排する第1流体通路と、前記遅角用室に流体を給排する第2流体通路と、前記回転伝達部材又は前記回転軸に形成され内部に前記回転軸又は前記回転伝達部材に向けてばね付勢されたロックピンを収容する退避孔と、前記回転軸又は前記回転伝達部材に形成され前記回転軸と前記回転伝達部材の相対位相が所定の位相で同期したとき前記ロックピンの頭部が嵌入される受容孔と、この受容孔に流体を給排する第3流体通路とを備えて、内燃機関の吸気弁又は排気弁の開閉時期を制御するために使用される弁開閉時期制御装置において、前記第1流体通路または第2流体通路を前記退避孔に連通させて、前記ロックピンが前記受容孔から抜け出て前記退避孔に退避した状態にて前記第1流体通路または第2流体通路と前記第3流体通路が前記受容孔と前記退避孔を通して連通するように構成したことに特徴がある。
【0005】
【発明の作用・効果】
本発明による弁開閉時期制御装置においては、ロックピンが受容孔から抜け出て退避孔に退避した状態にて第1流体通路または第2流体通路と第3流体通路が受容孔と退避孔を通して連通するように構成したため、ロックピンの頭部が受容孔に嵌入している状態では、第3流体通路を通して受容孔に圧力流体が供給されてロックピンがばね付勢力に抗して移動し、ロックピンが受容孔から抜け出て退避孔に退避した状態にて、第3流体通路から受容孔と退避孔を通して第1流体通路または第2流体通路に圧力流体が供給される。したがって、ロックピンの移動によるロック解除が行われた後に変位変換作動(回転軸と回転伝達部材の相対回転)が開始することとなり、変位変換作動によりロックピンのロック解除が阻害される不具合は全く生じない。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図6に示した本発明による弁開閉時期制御装置は、当該内燃機関のシリンダヘッド110に回転自在に支持されたカムシャフト10とこれの先端部(図1の左端部)に一体的に設けた内部ロータ20からなる弁開閉用の回転軸と、この回転軸に所定範囲で相対回転可能に外装された外部ロータ30、フロントプレート40、リアプレート50、及びリアプレート50に一体的に形成したタイミングスプロケット51等からなる回転伝達部材と、内部ロータ20に組付けた4枚のベーン60と、外部ロータ30に組付けたロックピン70等によって構成されている。なお、タイミングスプロケット51には、周知のように、図示省略したクランク軸からクランクスプロケットとタイミングチェーンを介して図3の時計方向に回転動力が伝達されるように構成されている。
【0007】
カムシャフト10は、吸気弁(図示省略)を開閉する周知のカム(図示省略)を有していて、内部にはカムシャフト10の軸方向に延びる進角通路11と遅角通路12が設けられている。進角通路11は、図1に示したように、カムシャフト10に設けた径方向の通路13及び環状の通路14とシリンダヘッド110に設けた接続通路111を介して切換弁100の接続ポート101に接続されている。また、遅角通路12は、図1に示したように、カムシャフト10に設けた環状の通路15とシリンダヘッド110に設けた接続通路112を介して切換弁100の接続ポート102に接続されている。
【0008】
切換弁100は、ソレノイド103へ通電することによってスプール104をスプリング105に抗して移動できるものであり、非通電時には当該内燃機関によって駆動されるオイルポンプPに接続された供給ポート106が接続ポート102に連通するとともに、接続ポート101が排出ポート107に連通するように、また通電時には供給ポート106が接続ポート101に連通するとともに、接続ポート102が排出ポート107に連通するように構成されている。このため、ソレノイド103の非通電時にはオイルポンプPから遅角通路12に作動油が供給され、通電時にはオイルポンプPから進角通路11に作動油が供給される。なお、オイルポンプPの吸い込み側と排出ポート107は当該内燃機関の油溜Tに接続されている。
【0009】
内部ロータ20は、単一の取付ボルト81によってカムシャフト10に一体的に固着されていて、4枚の各ベーン60をそれぞれ径方向に取付けるためのベーン溝21を有するとともに、図1〜図3に示した状態、すなわちカムシャフト10及び内部ロータ20と外部ロータ30の相対位相が所定の位相(最遅角位置)で同期したときロックピン70の頭部が所定量嵌入される受容孔22と、この受容孔22に進角通路11から作動油を給排する通路23と、各ベーン60によって区画された進角用室R1に作動油を給排する通路24と、各ベーン60によって区画された遅角用室R2に遅角通路12から作動油を給排する通路25を有している。受容孔22は、内部ロータ20の外周に径方向に形成されている。なお、各ベーン60は、ベーン溝21の底部に収容したベーンスプリング61(図1参照)によって径外方に付勢されている。
【0010】
外部ロータ30は、内部ロータ20の外周に所定範囲で相対回転可能に組付けられていて、その両側にはフロントプレート40とリアプレート50が接合され、4本の連結ボルト82によって一体的に連結されている。また、外部ロータ30の内周には所定の周方向間隔で4個の突部31が径方向内方に向けてそれぞれ突出形成されていて、これら突部31の内周面が内部ロータ20の外周面に摺接する構成で外部ロータ30が内部ロータ20に回転自在に支承されており、一つの突部31には、ロックピン70とスプリング71を収容する退避孔32が外部ロータ30の径方向に形成されるとともに、この退避孔32の内端に連通する連通凹部33が周方向に形成されている。連通凹部33は、フロントプレート40に形成した凹部41と環状溝42を介して、進角用室R1に作動油を給排する通路24に連通している。
【0011】
各ベーン60は、両プレート40,50間にて内部ロータ20のベーン溝21に径方向へ移動可能に取付けられ、先端にて外部ロータ30の内周壁に摺動可能に当接していて、外部ロータ30の各突部31と内部ロータ20との間に形成される流体圧室Roを進角用油室R1と遅角用油室R2とに二分しており、図3の左及び上の突部31の回転方向端面にそれぞれ形成したストッパ31aに当接することにより、当該弁開閉時期制御装置により調整される位相(相対回転量)が制限されるようになっている。
【0012】
ロックピン70は、退避孔32内に軸方向へ摺動可能に組付けられていて、スプリング71によって内部ロータ20に向けて付勢されている。スプリング71はロックピン70とリテーナ72間に介装されていて、リテーナ72は退避孔32内にてクリップ73により抜け止め固定されている。
【0013】
上記のように構成した本実施形態の弁開閉時期制御装置においては、図1に示した状態、すなわちロックピン70の頭部が受容孔22に所定量嵌入して、最遅角位置にて内部ロータ20と外部ロータ30の相対回転を規制しているロック状態にて、切換弁100のソレノイド103が通電されて、切換弁100からカムシャフト10の進角通路11に作動油が供給されると、同作動油が通路23を通して受容孔22に供給されて、ロックピン70がスプリング71に抗して移動し受容孔22から抜け出て退避孔32に退避した状態(図2及び図3参照)で、通路23から受容孔22と退避孔32と連通凹部33と凹部41と環状溝42と通路24を通して各進角用油室R1に作動油が供給され、また各遅角用油室R2から各通路25と遅角通路12と切換弁100等を通して作動油が排出されて、図4〜図6に示したように内部ロータ20等回転軸が外部ロータ30等回転伝達部材に対して進角側に相対回転する。
【0014】
したがって、本実施形態においては、ロックピン70のスプリング71に抗した移動によるロック解除が行われた後に変位変換作動(内部ロータ20等回転軸と外部ロータ30等回転伝達部材の相対回転)が開始することとなり、変位変換作動によりロックピン70のロック解除が阻害される不具合は全く生じない。なお、図5及び図6の状態にて、切換弁100のソレノイド103が非通電とされて、切換弁100からカムシャフト10の遅角通路12に作動油が供給されると、遅角通路12から通路25を通して各遅角用油室R2に作動油が供給されるとともに、各進角用油室R1と通路24と環状溝42と凹部41と連通凹部33と退避孔32と受容孔22と通路23と進角通路11と切換弁100等を通して作動油が排出されて、内部ロータ20等回転軸が外部ロータ30等回転伝達部材に対して遅角側に相対回転する。このときには、各進角用油室R1から通路23に流れる作動油によってロックピン70がスプリング71に抗して押動されて退避孔32に退避した状態に保持される。
【0015】
上記実施形態においては、リアプレート50の外周にタイミングスプロケット51を一体的に設けて、クランク軸からクランクスプロケットとタイミングチェーンを介して回転動力が伝達されるものに本発明を実施したが、本発明は外部ロータ30の外周にタイミングプーリを一体的に設けて(別部材で構成して一体的に固着することも可能)、クランク軸からクランクプーリとタイミングプーリを介して回転動力が伝達されるものにも同様に実施し得るものである。
【0016】
また、上記実施形態においては、進角用油室R1が最小容積となる状態(図1〜図4に示した最遅角状態)にて外部ロータ30に組付けたロックピン70の頭部が内部ロータ20の受容孔22に嵌入されるように構成したが、遅角用油室R2が最小容積となる状態(図6に示した最進角状態)にて外部ロータ30に組付けたロックピン70の頭部が内部ロータ20の受容孔22に嵌入されるように構成して実施することも可能である。この場合には、通路23を遅角通路12に連通させるとともに、通路23を受容孔22と退避孔32と連通凹部33と凹部41と環状溝42を通して通路25に連通させる必要があり、また通路24を進角通路11に直接連通させる必要がある。
【0017】
また、上記実施形態においては、吸気弁用のカムシャフト10に組付けられる弁開閉時期制御装置に本発明を実施したが、本発明は排気弁用のカムシャフトに組付けられる弁開閉時期制御装置にも同様に実施し得るものである。また、上記実施形態においては、内部ロータ20にベーン70を取り付けるとともに、外部ロータ30にロックピン70とスプリング71を収容して実施したが、内部ロータにロックピンとスプリングを収容するとともに、外部ロータにベーンを取り付けるようにして実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による弁開閉時期制御装置の一実施形態を示す縦断側面図である。
【図2】 図1に示したロックピンが退避孔に退避した状態の縦断側面図である。
【図3】 図2の3−3線に沿った断面図である。
【図4】 図2の4−4線に沿った端面図である。
【図5】 図4の状態から内部ロータ等回転軸が外部ロータ等回転伝達部材に対して所定量進角側に相対回転した状態の端面図である。
【図6】 図4の状態から内部ロータ等回転軸が外部ロータ等回転伝達部材に対して最大量進角側に相対回転した状態の端面図である。
【符号の説明】
10…カムシャフト、20…内部ロータ、22…受容孔、23…通路(第3流体通路)、24…通路(第1流体通路)、25…通路(第2流体通路)、30…外部ロータ、32…退避孔、33…連通凹部、40…フロントプレート、41…凹部、42…環状溝、50…リアプレート、51…タイミングスプロケット、60…ベーン、70…ロックピン、71…スプリング、100…切換弁、110…シリンダヘッド、Ro…作動室(流体圧室)、R1…進角用油室(進角用室)、R2…遅角用油室(遅角用室)。
Claims (1)
- 内燃機関のシリンダヘッドに回転自在に組付けられる弁開閉用の回転軸と、この回転軸に所定範囲で相対回転可能に外装されクランク軸からの回転動力が伝達される回転伝達部材と、前記回転軸又は前記回転伝達部材の一方に取り付けられたベーンと、前記回転軸と前記回転伝達部材との間に形成され前記ベーンによって進角用室と遅角用室とに二分される流体圧室と、前記進角用室に流体を給排する第1流体通路と、前記遅角用室に流体を給排する第2流体通路と、前記回転伝達部材又は前記回転軸に形成され内部に前記回転軸又は前記回転伝達部材に向けてばね付勢されたロックピンを収容する退避孔と、前記回転軸又は前記回転伝達部材に形成され前記回転軸と前記回転伝達部材の相対位相が所定の位相で同期したとき前記ロックピンの頭部が嵌入される受容孔と、この受容孔に流体を給排する第3流体通路とを備えて、内燃機関の吸気弁又は排気弁の開閉時期を制御するために使用される弁開閉時期制御装置において、前記第1流体通路または第2流体通路を前記退避孔に連通させて、前記ロックピンが前記受容孔から抜け出て前記退避孔に退避した状態にて前記第1流体通路または第2流体通路と前記第3流体通路が前記受容孔と前記退避孔を通して連通するように構成したことを特徴とする弁開閉時期制御装置。
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