JP3760497B2 - ルテニウム錯体の回収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ルテニウム錯体の回収方法に関する。詳しくは、本発明は、ルテニウム錯体を触媒として有機カルボニル化合物を水素化し、その反応生成液から得られる触媒液を特定の条件下で抽出処理し、ルテニウム錯体を濃縮分離して回収する方法に関する。回収されたルテニウム錯体は水素化反応に再使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
第三級有機リン系化合物を配位子として有するルテニウム錯体は、均一触媒反応による各種カルボニル化合物の水素化反応に使用されている。
このルテニウム錯体触媒は、化学的に比較的安定であり、反応生成物と触媒液とを蒸留により分離し、触媒液を反応域へ循環して再使用したり、或いは反応生成物をガスストリッピングにより反応域から流出させて分離し、触媒液を反応域に残留させたままで連続的に反応を行わせることができる。しかしながら、これらの反応においては種々の高沸点副生物が生成することは避けられず、これらの反応を連続的に実施する場合には触媒液中に蓄積する高沸点物質を除くために、触媒液の一部を連続的又は間欠的に反応系から抜出すことが必要である。
【0003】
当然の事ながら、この抜出した液にはルテニウムが含まれているため、廃棄するためにはその処理が必要となる。しかしながら、ルテニウムを含有する液は燃焼させると、有毒で腐食性の強いRuO4 が生成するため、焼却処理は制限される。また、産業廃棄物処理業者等に処理を依頼すると、処理液の質量見合いで費用がかかるため、処理量が多い場合経済的に不利になる。従って、この処理される抜出し液中のルテニウムを濃縮できれば、その経済的効果は非常に大きい。更には、もしこの抜出し液から、ルテニウム錯体を効率よく回収でき、これを反応に再利用できれば、廃液処理にかかる負担を大幅に軽減できる上、経済的にも触媒費を大幅に減ずることができ、また排出するルテニウムの絶対量が減るので環境汚染防止の上からも好ましく、その効果は絶大なものがある。しかし、そのためには、反応液から活性な形態を保持したままルテニウム錯体触媒を分離回収することが必要となる。
【0004】
従来、ロジウム等の第VIII族金属を分離回収する方法として、例えば強酸による抽出法(特公昭46−43219号公報)或いは過酸化物による分解法(米国特許第3,547,964号明細書、特開昭51−63388号公報)等が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方法では、何れも酸を使用するため装置材質の腐食の問題があり、また、触媒を活性な形態のまま分離回収するという面からも問題があった。
これらの問題点を解決する方法として本出願人は先に特開平7−275716号公報に提案した。この方法は第三級有機リン化合物を配位子として有するルテニウム錯体触媒を用いて有機化合物を水素化反応して得られた反応液から反応生成物と反応溶媒を除去して得た触媒液を水と非極性有機溶媒で抽出処理し、ルテニウム錯体を含有する有機溶媒層を相分離して、ルテニウム錯体を回収する方法である。この方法では水素化反応液から反応生成物と反応溶媒を蒸留分離する際、ルテニウム錯体触媒が二度熱処理を受け、ルテニウム錯体触媒の失活が懸念され、特に反応溶媒を蒸留分離する際には蒸留塔の塔底温度を220℃以下に厳密に管理する必要があり、蒸留塔の運転条件が制約されていた。
本発明の課題は上記水素化反応液中のルテニウム錯体触媒が極力熱処理を受けて触媒の失活を生起する懸念のない方法でルテニウム錯体を効率よく、経済的に回収し、且つそれを必要に応じて水素化反応に再利用する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、水素化反応生成液から所望の生成物を除去して得られる反応溶媒を含有する触媒液を水と非極性有機溶媒で特定温度以上で抽出処理することにより、ルテニウム錯体を非極性有機溶媒相に一方、反応溶媒を水相にそれぞれ抽出回収し得ることを見出し、また、このようにして回収されたルテニウム錯体は、水素化反応に再利用することができることも見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は、第三級有機リン系化合物を配位子として有するルテニウム錯体の存在下、有機カルボニル化合物を水素化して得られる反応生成液から目的生成物を除去して得た反応溶媒を含有する触媒液を水及び非極性有機溶媒を用いて40℃以上で抽出処理し、ルテニウム錯体を含有する非極性有機溶媒相と反応溶媒を含有する水相とに分離し、次いで該非極性有機溶媒相から非極性有機溶媒を留去してルテニウム錯体を濃縮分離することを特徴とするルテニウム錯体の回収方法にある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の態様】
1.水素化反応
本発明は、少なくとも1種の第三級有機リン系化合物を配位子として有するルテニウム錯体を含む有機カルボニル化合物の水素化反応生成液から、ルテニウム錯体を濃縮分離し、必要に応じて分離回収したルテニウム錯体をその水素化反応に再利用するものであるが、この水素化反応としてはカルボニル化合物の水素化、例えば脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸無水物、脂肪族ジカルボン酸ジエステル等の水素化反応が挙げられる。特に、第三級有機リン系化合物を配位子として有するルテニウム錯体を均一系触媒として使用し、無水コハク酸を水素化してγ−ブチロラクトンを生成する反応液からルテニウム錯体を濃縮分離し、再度水素化反応に使用する場合に有効である。
【0008】
(ルテニウム錯体触媒)
水素化反応に用いるルテニウム錯体触媒、特に無水コハク酸を水素化してγ−ブチロラクトンを生成する触媒は、通常(イ)ルテニウム、(ロ)第三級有機ホスフィン及び(ハ)pka値が2より小さい酸の共役塩基を含有し、場合により中性配位子を含有しているルテニウム錯体であり、その調製に用いる各成分の具体例は次の通りである。
【0009】
(イ)ルテニウム
ルテニウムとしては、金属ルテニウム及びルテニウム化合物の何れも使用することができる。ルテニウム化合物としては、ルテニウムの酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、無機酸塩、有機酸塩又は錯化合物が使用され、具体的には、例えば二酸化ルテニウム、四酸化ルテニウム、二水酸化ルテニウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、ヨウ化ルテニウム、硝酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、トリス(アセチルアセトン)ルテニウム、ヘキサクロロルテニウム酸ナトリウム、テトラカルボニルルテニウム酸ジカリウム、ペンタカルボニルルテニウム、シクロペンタジエニルジカルボニルルテニウム、ジブロモトリカルボニルルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ヒドリドルテニウム、ビス(トリ−n−ブチルホスフィン)トリカルボニルルテニウム、ドデカカルボニルトリルテニウム、テトラヒドリドデカカルボニルテトラルテニウム、オクタデカカルボニルヘキサルテニウム酸ジセシウム、ウンデカカルボニルヒドリドトリルテニウム酸テトラフェニルホスホニウム等が挙げられる。これ等の金属ルテニウム及びルテニウム化合物の使用量は、水素化反応溶液1リットル中のルテニウムとして0.0001〜100ミリモル、好ましくは、0.001〜10ミリモルである。
【0010】
(ロ)第三級有機ホスフィン
有機ホスフィンは、主触媒である(イ)のルテニウムの電子状態を制御したり、ルテニウムの活性状態を安定化するのに寄与するものと考えられる。
有機ホスフィンの具体例としては、トリ−n−オクチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、ジメチル−n−オクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリシクロヘキシルホスフィンのようなトリシクロアルキルホスフィン類、トリフェニルホスフィンのようなトリアリールホスフィン類、ジメチルフェニルホスフィンのようなアルキルアリールホスフィン類、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンのような多官能性ホスフィン類が挙げられる。有機ホスフィンの使用量は通常、ルテニウム1モルに対して、3〜1000モル程度、好ましくは5〜100モルである。即ち、ルテニウム1モルに対し有機ホスフィンは通常3モル配位すると考えられるが、本発明では配位に必要なモル数以上の有機ホスフィンを用いるのが好ましい。反応系内でのこの過剰の有機ホスフィンの存在形態は必ずしも明らかではないが、系内に存在する基質等と何等かの結合をしているものと推定される。また、有機ホスフィンは、それ自体単独で、或いはルテニウム触媒との複合体の形で水素化反応系に供給することができる。
【0011】
(ハ)pka値が2より小さい酸の共役塩基
pka値が2より小さい酸の共役塩基は、ルテニウム触媒の付加的促進剤として作用し、触媒調製中又は反応系中において、pka値が2より小さい酸の共役塩基を生成するものであればよく、その供給形態としては、pka値が2より小さいブレンステッド酸又はその各種の塩等が用いられる。具体的には例えば、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、過塩素酸、燐酸、ホウフッ化水素酸、ヘキサフルオロ燐酸、タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステン酸、シリコンタングステン酸、ポリケイ酸、フルオロスルホン酸等の無機酸類、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ラウリルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、或いはこれ等の酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が挙げられる。また、これ等の酸の共役塩基が反応系で生成すると考えられる酸誘導体、例えば酸ハロゲン化物、酸無水物、エステル、酸アミド等の形で添加しても同様の効果が得られる。
これ等の酸又はその塩の使用量は、ルテニウム1モルに対して0.01〜1000モル、好ましくは0.1〜100モル、更に好ましくは0.5〜20モルの範囲である。
【0012】
上記(イ)、(ロ)及び(ハ)の成分の外に、場合により含有することができる中性配位子としては、水素;エチレン、プロピレン、ブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ブタジエン、シクロペンタジエン、シクロオクタジエン、ノルボナジエン等のオレフィン類;一酸化炭素、ジエチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノン、プロピオン酸、カプロン酸、酪酸、安息香酸、酢酸エチル、酢酸アリル、安息香酸ベンジル、ステアリン酸ベンジル等の含酸素化合物;酸化窒素、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、シクロヘキシルイソニトリル、ブチルアミン、アニリン、トルイジン、トリエチルアミン、ピロール、ピリジン、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、1,1,3,3−テトラメチル尿素、N−メチルピロリドン、カプロラクタム、ニトロメタン等の含窒素化合物;二硫化炭素、n−ブチルメルカプタン、チオフェノール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、チオフェン、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等の含硫黄化合物;トリブチルホスフィンオキシド、エチルジフェニルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、ジエチルフェニルホスフィネート、ジフェニルメチルホスフィネート、ジフェニルエチルホスフィネート、o,o−ジメチルメチルホスホノチオレート、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の有機ホスフィン以外の含燐化合物が挙げられる。
【0013】
(反応溶媒)
ルテニウム錯体触媒を用いる水素化反応において、原料物質自体を溶媒として反応を実施することができるが、原料の反応性、反応系の処理操作を考慮し原料物質以外に他の反応溶媒を使用するのが有利である。
このような反応溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類、メタノール、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類;フェノール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トルイル酸等のカルボン酸類;酢酸メチル、酢酸n−ブチル、安息香酸ベンジル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のカルボン酸アミド;ヘキサメチル燐酸トリアミド、N,N,N′,N′−テトラエチルスルファミド等のその他のアミド類;N,N′−ジメチルイミダゾリドン、N,N,N,N−テトラメチル尿素等の尿素類;ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類;γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類;トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグライム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)、18−クラウン−6等のポリエーテル類が挙げられる。
この中でも、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルのような水溶性のエーテル類が好ましい。
【0014】
(水素化反応方法)
この水素化反応を行うには、反応容器に原料物質並びに有機ホスフィンの濃度を予め調節した前記の触媒成分を含む触媒液を導入し、更に水素を通入する。水素は窒素或いは二酸化炭素等の反応に不活性なガスで希釈されたものであってもよい。反応温度は、通常50〜250℃、好ましくは100〜200℃である。
反応系内の水素分圧は特に限られるものではないが、工業的実施上は通常0.1〜100kg/cm2 、好ましくは1〜50kg/cm2 である。反応生成液から蒸留、抽出等の通常の分離手段により目的生成物を分離する。
分離後の残留物は、必要に応じその中に含まれる触媒組成濃度を定常的に点検して、液中の有機ホスフィン濃度を常に前記の所定濃度に保持するように、循環過程において適宜有機ホスフィンを補給して反応器に循環する。
【0015】
2.抽出処理
本発明方法では、前記のような水素化反応生成液からルテニウム錯体を濃縮分離するに際し、先ず水素化反応液から目的生成物を蒸留分離し、反応溶媒を含有する触媒液を得る。例えば、無水コハク酸の水素化反応では、目的生成物のγ−ブチロラクトンを反応液から蒸留分離した後、反応溶媒及びルテニウム錯体を含有する触媒液が得られる。次いで、上記で得られた反応溶媒を含有する触媒液(以下濃縮液と称す)に水及び非極性有機溶媒を加えて抽出処理する。
この処理により水溶性の有機化合物を水相に分配せしめる一方、ルテニウム錯体を有機溶媒相に抽出し、この有機溶媒相を分取する。
水相には、反応液中に含まれている有機化合物のうち、例えば基質そのもののカルボン酸や水溶性のエステル、更にはこれらの重合物である水溶性ポリエステル等の水溶性高沸点物が抽出される。なお、反応溶媒が水溶性であれば、これも水相中に移行する。
【0016】
(非極性有機溶媒)
水と共に使用する有機溶媒としては、水と分離する比較的低極性、即ち、非極性溶媒が使用される。
非極性有機溶媒としては、20℃における誘電率(ε)が6以下、好ましくは4以下の有機溶媒であって、その沸点が50〜200℃、好ましくは50〜150℃のもの、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン(クメン)等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、エチルフェニルエーテル、メチルフェニルエーテル(アニソール)等のエーテル類、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン等のオキサン類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ジクロロメタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素等である。
【0017】
(抽出方法)
上記濃縮液を水と非極性有機溶媒とで抽出処理する際の処理の順序は特に制限されず、
1)該濃縮液を先ず水で抽出処理した後、水相を分離し、油相(残留物)を非極性有機溶媒で抽出処理する
2)該濃縮液に水と非極性有機溶媒とを同時に添加して抽出処理する
のいずれかの方法を採用して実施される。
上記抽出処理は次の分離処理と組合わせて、通常の液液抽出処理に用いられる方法、例えば回分又は連続方式、並流又は向流接触、一段又は多段階の方法のいずれかの組合せによって実施される。
【0018】
上記濃縮液と水及び非極性有機溶媒との抽出処理温度としては40〜120℃、好ましくは50〜100℃の範囲であり、また抽出時間としては10分〜5時間、望ましくは30分〜3時間の範囲である。
上記抽出処理温度が40℃未満では抽出効率が悪く、且つ抽出時間が大幅に長くなるので工業的でない。
上記抽出処理において濃縮液と水及び非極性有機溶媒との接触効率を上げるために撹拌を行ってもよい。
また、上記の抽出処理における水及び非極性有機溶媒の使用量は該濃縮液/水/非極性有機溶媒の重量比で通常1:0.2〜10:0.2〜10の範囲内で使用される。
【0019】
該抽出処理を該濃縮液と水及び該有機溶媒とで同時に処理する場合、撹拌後、エマルジョン状態であった内容液が有機溶媒相と水相に分液する。このうち、ルテニウム錯体は、主に有機溶媒相に分配され、一方、水相に分配するルテニウム錯体はごく僅かである。典型的な場合、80%以上のルテニウム錯体が有機溶媒相に分配される。
上記抽出処理後の抽出液の分離処理は通常の油水分離方法、例えば、静置分離や遠心分離等の方法により実施される。該油水分離により得られた有機溶媒相から有機溶媒を蒸留等により留去することにより、ルテニウム錯体が高濃度に濃縮されたオイル状の残留物が得られる。
【0020】
(酸処理)
この残留物にはルテニウム錯体が高濃度で含まれているので、これを水素化反応に循環使用出来れば工業的に極めて有用である。ところで、このようにして得られたルテニウム錯体が高濃度に濃縮された残留物には、高温の水素化反応条件下におくと有機ホスフィンを遊離する物質が含まれている。この物質は水素化反応液中には無く、ルテニウム錯体を水と有機溶媒で処理して濃縮分離する過程において有機ホスフィン誘導体から変性して生成したものと考えられる。従って、回分反応において、この回収されたルテニウム錯体を主たる触媒として用いる場合には、反応系に大量の遊離の有機ホスフィンが存在することになり水素化反応に好ましくない影響を及ぼす。即ち、有機ホスフィン及び基質の無水コハク酸の双方が高濃度で存在すると両者は容易に反応してしまい、水素化反応が阻害される。
【0021】
かかる場合には、回収されたルテニウム錯体を含む残留物を水素化反応に再使用する前に酸で処理するのが好ましい。この酸処理により、有機ホスフィンは酸との反応物に変換され、水素化反応に供しても反応系内で何等の悪影響を及ぼさなくなる。
使用する酸としては、前記の触媒を調製する際に使用されるpka値が2より小さい酸であれば使用することができるが、これらのうちメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ラウリルスルホン酸等のアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸が好ましく、特にp−トルエンスルホン酸が好ましい。
【0022】
酸の使用量は酸の種類によって異なるが、通常、残留物に含まれる反応条件下で遊離する有機ホスフィンと当量(遊離酸量として)乃至それ以上である。
残留物を酸で処理するに当り、水素化反応に使用する反応溶媒に残留物を溶解して処理するのが効果的である。反応溶媒の使用量は特に制限されないが、水素化反応条件における溶媒濃度とほぼ等しくするのが好ましい。
酸による処理は、通常20〜300℃、好ましくは、100〜250℃の範囲で行われ、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で処理するのが好ましい。
以上のように酸処理をして回収したルテニウム錯体を含有する溶液は、これに無水コハク酸等の基質を加えて水素化反応を実施することができ、その反応活性は、新しく調製した触媒と同等であり、有効に触媒として回収されるのである。
なお、典型的な連続反応の場合には、大量に循環される循環液と反応生成液との混合物中に基質と回収されたルテニウム触媒とが導入されることになるので、反応系での基質及び有機ホスフィンの濃度は低くなり、回分反応の場合の如き反応阻害は生じない。
【0023】
(水相の蒸留処理)
一方、上記抽出処理後油水分離によって得られる水相は蒸留処理によって水を塔頂より留出させ、側流より反応溶媒と有効成分(例えば、無水コハク酸の水素化反応液の場合にはγ−ブチロラクトンや無水コハク酸)を抜出して回収し、塔底より高沸物を缶出させる。該塔頂より留出させた水は上記抽出処理に循環して再使用することができる。また、側流より抜出した反応溶媒と有効成分を含有する回収溶媒は上記水素化反応の反応溶媒として再使用することができる。上記水相の蒸留処理は特にルテニウム錯体触媒を殆んど含有していないので、蒸留時における触媒失活の問題はなく、従って塔頂圧としては通常、大気圧〜減圧下で操作される。特に塔底内の高沸物を熱分解して有効成分として回収する温度条件を採用することもできる。
【0024】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び参考例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
参考例1
ルテニウム−トリオクチルホスフィン−パラトルエンスルホン酸系触媒を用いた無水コハク酸の水素化反応を次の通り行った。
反応は図1に示す気液分離器1、蒸留塔2付きの循環装置を使用して行った。触媒容器3に0.056重量%のトリス(アセチルアセトン)ルテニウム、0.51重量%のトリオクチルホスフィン、0.22重量%のパラトルエンスルホン酸をトリグライム(トリエチレングリコール ジメチルエーテル)に溶解し、窒素雰囲気下200℃で2時間加熱処理し、新触媒容器5に入れ新フィード触媒液とした。この触媒液を1000ml/時の流量で、内容積2リットルのオートクレーブ(反応器)8に供給し、気液分離器1で気液分離後、蒸留塔2の缶出液として回収リサイクルしておいた。
一方、水素圧縮機6より0.6Nm3 /時の水素ガスをオートクレーブに送り20気圧に調整した。オートクレーブを205℃へ昇温し、無水コハク酸80重量%、γ−ブチロラクトン20重量%から成る原料液を125g/時の流量で連続的に供給した。
反応液は140℃に冷却後、常圧で気液分離した後、蒸留塔で生成物の水及びγ−ブチロラクトンと触媒液を分離し、触媒液は触媒容器に戻すが、反応開始7日後よりそのうちの一部の流れとして8.67g/時の流量で触媒液を抜出し、抜出し触媒容器4に保存した。
又、抜出し触媒液の組成は以下の通りであった。
無水コハク酸+コハク酸 7重量%
γ−ブチロラクトン 1重量%
トリグライム 33重量%
高沸点物質 60重量%
Ru濃度 160ppm
【0026】
実施例1
参考例1で得られた無水コハク酸の水素化反応の抜出し触媒液(組成;トリグライム;33%、γ−ブチロラクトン;1%、無水コハク酸及びコハク酸の合計;7%、高沸点物質;60%、Ru含有量;160ppm)757.8g、水309.4g、及びヘプタン757.6gを撹拌機付き抽出槽に入れ、内温50℃で1時間撹拌した。静置すると約2分でヘプタン相及び水相の二相に分液した。この二相を各々分離し、その質量と含有ルテニウム濃度をICP分析により定量し次の結果を得た。
この時のヘプタン相/水相へのルテニウム分配比は88/12であった。
ヘプタン相のヘプタンをエバポレーションで留去し、35.38gの残物を得た。これは仕込んだ触媒液を基準とすると4.7%に濃縮されたことになる。
【0027】
比較例1
実施例1で抽出を内温50℃の代りに室温(20℃)で行った以外実施例1と同様な実験を行った。その結果振りまぜた後静置しても白濁するのみで内容液は全く分液しなかった。
【0028】
実施例2
実施例1で得られた水相1000gを、減圧蒸留装置に入れ減圧連続蒸留により留出液として塔頂より水に富む成分を側流より反応溶媒であるトリグライム(TRGM)と無水コハク酸(SAH)及びγ−ブチロラクトン(GBL)を主成分とする液を回収した。各組成は以下の通りであった。
なお、蒸留条件は次の通りである。
▲1▼ 塔頂:22℃、20mmHg 留出量293g
▲2▼ 側流五段液抜出 90℃ 側流抜出し:237g
▲3▼ 塔底:208℃、30mmHg 塔底抜出し:470g
【0029】
【発明の効果】
本発明方法によれば、第三級有機リン系化合物を配位子として有するルテニウム錯体を水素化反応生成液から効率よく且つ経済的に回収することができ、且つ回収したルテニウム錯体を必要に応じて水素化反応に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1 気液分離器
2 蒸留塔
3 触媒容器
4 抜出し触媒容器
5 新触媒容器
6 水素圧縮機
7 原料容器
8 反応器
Claims (5)
- 第三級有機リン系化合物を配位子として有するルテニウム錯体の存在下、有機カルボニル化合物を水素化して得られる反応生成液から目的生成物を除去して得た反応溶媒を含有する触媒液を水及び非極性有機溶媒を用いて40℃以上で抽出処理し、ルテニウム錯体を含有する非極性有機溶媒相と反応溶媒を含有する水相とに分離し、次いで該非極性有機溶媒相から非極性有機溶媒を留去してルテニウム錯体を濃縮分離することを特徴とするルテニウム錯体の回収方法。
- 反応溶媒を含有する水相から水及び反応溶媒を蒸留により分離回収する請求項1に記載のルテニウム錯体の回収方法。
- 有機カルボニル化合物が脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸無水物又は脂肪族ジカルボン酸エステルである請求項1又は2に記載のルテニウム錯体の回収方法。
- 非極性有機溶媒として脂肪族炭化水素を用いる請求項1ないし3のいずれか1項に記載のルテニウム錯体の回収方法。
- 抽出処理を40〜120℃で行う請求項1ないし4のいずれか1項に記載のルテニウム錯体の回収方法。
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