JP3759805B2 - 床材及びこれを使用したマンション - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、床材及びこれを使用したマンションに関し、詳しくは防音性能が良好でかつ歩行感に優れた床材及びこれを使用したマンションに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、集合住宅の床材としては、カーペット、ジュウタン等がよく用いられていた。しかし、カーペットやジュウタンは、カビやダニが発生しやすく、かつ汚れ易い事から、近年、掃除がし易く、衛生的な硬質板状体を用いた床材の要望が高まっている。
しかしながら、硬質板状体を用いた床材は、衝撃による音が発生しやすく、階下への生活音つまり歩行音や物の落下音が伝わりやすいという問題点を有していた。
【0003】
上記のような問題点を解消する方法として硬質板状体裏面に発泡体や、不織布等の多孔体を緩衝層として積層した床材が数多く提案されている。例えば実公昭52ー30125号公報に記載の床材は、硬質板状体の裏面に、発泡倍率3〜10倍の軟質高発泡体および1.5〜3倍未満の軟質低発泡体を順次形成した床材である。また、実公平3ー21395号公報に記載の床材は、硬質板状体の裏面に隣接する上下の緩衝層の発泡倍率を相互に異ならせたものであり、この緩衝層が10〜50倍の高発泡層と5〜20倍の低発泡層とからなる床材である。衝撃力を受けた場合、これらの緩衝層は変形し、衝撃作用時間が延長することにより、衝撃力のピーク値や衝撃固有周波数を低下させ、衝撃による音や振動の伝搬を防止し防音性を向上させるものであるが、硬質板状体の剛性が大きいため、高い防音性を発現するためには緩衝層を厚くする必要がある。したがって、防音性の高い床材は荷重に対する沈み込みが大きくなり、床材上面の歩行時に『船酔い現象』と称される違和感を覚えるという新しい問題が発生した。
【0004】
一方、沈み込みの小さい床材として、例えば実開昭56ー3945号公報には、厚さ0.3〜15mmの硬質板状体の裏面に20〜100mmの発泡体を積層した床材が提案されている。しかしながら、本床材に使用される発泡体は特に限定されず、通常使用される均質な発泡体では、力学的に等方性を有し、沈み込みを小さくするために高い圧縮弾性率を付与すると曲げ弾性率がおのずと高くなり、高い防音性は期待できない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、防音性と沈み込みという2つの相反する問題点があり、高い防音性を付与するためには、緩衝性を大きく付与する高倍率の発泡合成樹脂シートの厚みを増加する必要があるが、防音性と沈み込み防止を両立することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、防音性能を満足しながら、歩行感にも優れた床材及びこれを使用したマンションを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載(本発明1)の床材は、熱可塑性樹脂発泡体の片面に、硬質板状体が積層されてなる床材であって、上記熱可塑性樹脂発泡体が、熱可塑性樹脂よりなる連続発泡層と、連続発泡層の少なくとも片面上に複数配置される熱可塑性樹脂よりなる高発泡体と、高発泡体の外表面を被覆する熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜とを備え、前記複数の高発泡体が互いに前記低発泡薄膜を介して熱融着されているものである。
【0008】
本発明1に使用される熱可塑性樹脂発泡体を構成する連続発泡層、高発泡体及び低発泡薄膜及びに用いられる樹脂としては、発泡可能な熱可塑性樹脂であれば、特に限定されるものではない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「ポリエチレン」とは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、またはこれらの混合物をいう。)、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ブロック状ポリプロピレン(以下、「ポリプロピレン」とは、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ブロック状ポリプロピレン、またはこれらの混合物をいう。)等のオレフィン系樹脂、及びエチレン酢酸ビニル樹脂等のオレフィン系共重合体;ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、及びこれらの共重合体等が挙げられ、これらは、単独で用いられても、併用されてもよい。
【0009】
上記熱可塑性樹脂の中でも、得られる熱可塑性発泡体の平滑性を高め得るので、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂またはこれらの混合物が好ましく、表面平滑性と、得られる床材の歩行時の沈み込みの防止を両立するためには、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレンまたはこれらの少なくとも一方を含む混合物が特に好ましい。
【0010】
さらに、上記熱可塑性樹脂は、必要に応じて架橋されていてもよい。架橋されることによって、発泡時の破泡が防止でき、発泡倍率が増加し、床材の軽量化につながるからである。
【0011】
上記熱可塑性樹脂発泡体を構成する連続発泡層、高発泡体及び低発泡薄膜に用いられる樹脂は、同一の樹脂である必要性はないが、得られる床材が歩行時及び重量物を載置したときに破壊しにくい点から、同種の樹脂を用いることが好ましい。この際、特に高発泡体及び低発泡薄膜に用いられる樹脂は、同一の樹脂で形成されるのが接着性の点で好ましい。
【0012】
上記熱可塑性樹脂発泡体には、必要に応じて、床材の剛性を高めるために、ガラス短繊維、炭素短繊維、ポリエステル短繊維等の補強材;炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスパウダー等の充填材等を添加してもよい。
【0013】
上記熱可塑性樹脂発泡体の形状は特に限定されないが、通常板状又はシート状である。
【0014】
上記熱可塑性樹脂発泡体の発泡倍率は、低すぎると、床材の軽量化が図れず、高すぎると、床材の沈み込み量が増加するので、2〜30倍が好ましく、より好ましくは3〜20倍、特に好ましくは5〜10倍である。
【0015】
上記熱可塑性樹脂発泡体の厚みは、薄すぎると防音性能が低下し、厚すぎると床材の沈み込み量が増加するので、3〜50mmが好ましく、さらに好ましくは3〜30mm、特に好ましくは5〜10mmである。
【0016】
上記連続発泡層の発泡倍率は、低すぎると、床材の軽量化が困難になり、且つ弾性率が増大するため、防音性能が低下し、高すぎると床材の沈み込み量が増加し、又、歩行時及び重量物を載置したときに破壊しやすくなるので、1.1〜10倍が好ましく、さらに好ましくは2〜8倍であり、2〜7倍が特に好ましい。
【0017】
上記連続発泡層の厚みは、薄すぎると、得られる床材が歩行時及び重量物を載置したときに破壊しやすくなり、厚すぎると相対的に熱可塑性樹脂発泡体中に占める割合が増え、床材の軽量化が困難になり、防音性能が低下するので、100μm〜5mmが好ましく、さらに好ましくは300μm〜3mmであり、500μm〜2mmが特に好ましい。
なお、連続発泡層の厚みは均一である必要はない。連続発泡層の厚みが不均一な場合には、ここでいう連続発泡層の厚みとは、熱可塑性樹脂発泡体の縦断面をとったときの、連続発泡層の平均厚さをいう。
【0018】
上記高発泡体の発泡倍率は、低すぎると、床材の軽量化が困難になり、且つ弾性率が増大するため、防音性能が低下し、高すぎると床材の沈み込み量が増加し、又、歩行時及び重量物を載置したときに破壊しやすくなるので、2〜100倍が好ましく、さらに好ましくは5〜50倍であり、10〜35倍が特に好ましい。
【0019】
上記高発泡体の大きさは、小さすぎると床材の軽量化が困難になり、大きすぎると得られる床材が歩行時及び重量物を載置したときに破壊しやすくなるので3〜50mmが好ましく、さらに好ましくは5〜30mmである。
なお、高発泡体の大きさは均一である必要はない。ここでいう高発泡体の大きさとは、熱可塑性樹脂発泡体の横断面をとったときの、高発泡体の個々についての最大値をいい、大きさが不均一である場合は高発泡体の個々についての最大値の平均値いう。
【0020】
上記低発泡薄膜の発泡倍率は、低すぎると、床材の軽量化が困難になり、且つ弾性率が増大するため、防音性能が低下し、高すぎると床材の沈み込み量が増加し、又、歩行時及び重量物を載置したときに破壊しやすくなるので、1.1〜10倍が好ましく、さらに好ましくは1.2〜7倍であり、1.2〜5倍が特に好ましい。
低発泡薄膜の発泡倍率は、一般に高発泡体の発泡倍率の1/2以下である。
【0021】
上記低発泡薄膜の厚みは、薄すぎると高発泡体部分が相対的に大きくなり、得られる床材の圧縮強度が低下し、厚すぎると防音性能が低下するので、30〜500μmが好ましく、さらに好ましくは40〜400μmであり、50〜400μmが特に好ましい。
なお、低発泡薄膜の厚みは均一である必要はない。連続発泡層の厚みが不均一な場合には、ここでいう連続発泡層の厚みとは、熱可塑性樹脂発泡体の横断面をとったときの、低発泡薄膜の平均厚さをいう。
【0022】
上記熱可塑性樹脂発泡体を製造する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、発泡剤を含有した発泡性熱可塑性樹脂組成物を所定の容器中で発泡させ、一面を除いた外表面が熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜が被覆されている高発泡体を製造し、これを上記低発泡薄膜を介して熱融着し、別途製造した熱可塑性樹脂よりなる連続発泡シート層を熱融着等により積層してもよいが、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が平面的に配置され、上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡性熱可塑性樹脂薄膜を介して一体的に連結されている発泡性熱可塑性樹脂シート状体を、発泡剤の分解温度以上に加熱し発泡させることにより得る方法が好ましい。
【0023】
上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体を構成する発泡性熱可塑性樹脂粒状体及び発泡性熱可塑性樹脂薄膜に用いられる熱可塑性樹脂としては、上記熱可塑性樹脂樹脂発泡体に使用される樹脂と同様のものが使用される。
【0024】
上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体に用いられる熱可塑性樹脂と、発泡性熱可塑性樹脂薄膜に用いられる熱可塑性樹脂とは、同一の樹脂である必要性はないが、発泡性及び接着性等の観点から、同種の樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体に用いられる熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂樹脂発泡体の項で述べたように、発泡倍率の向上及び得られる熱可塑性樹脂発泡体の軽量化を図り得るため、架橋されているものを用いることが好ましい。架橋方法としては、特に限定されず、例えば、▲1▼シラングラフト重合体を熱可塑性樹脂に溶融混練後、水処理を行い、架橋する方法、▲2▼熱可塑性樹脂に過酸化物を該過酸化物の分解温度より低い温度で溶融混練後、過酸化物の分解温度以上に加熱して架橋する方法、▲3▼放射線を照射して架橋する方法等が挙げられる。但し、後述する高架橋樹脂と、低(無)架橋樹脂を得るためには、▲1▼のシラングラフト重合体を用いた架橋方法が好ましい。
【0026】
上記シラングラフト重合体としては、特に限定されず、例えば、シラングラフトポリエチレンやシラングラフトポリプロピレン等を例示することができる。
【0027】
前述の水処理方法は、水中に浸漬する方法のほか、水蒸気にさらす方法も含まれ、かかる場合、100℃より高い温度で処理する場合には、加圧下において行えばよい。
【0028】
上記水処理の際の水及び水蒸気の温度が低いと、架橋反応速度が低下し、また、高すぎると発泡性熱可塑性樹脂が熱でくっついてしまうので、50〜130℃が好ましく、90〜120℃が特に好ましい。
【0029】
また、水処理する際の時間が短いと、架橋反応が完全に進行しない場合があるので、水処理時間は0.5〜12時間の範囲とすることが好ましい。
【0030】
シラングラフト重合体を混合する方法は、均一に混合し得る方法であれば、特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂及びシラングラフト重合体を1軸または2軸押出機に供給し、溶融混練する方法、ロールを用いて溶融混練する方法、ニーダーを用いて溶融混練する方法等が挙げられる。
【0031】
シラングラフト重合体の添加量が多すぎると、架橋がかかりすぎ、得られる熱可塑性樹脂発泡体の発泡倍率が低下し、また、少なすぎると、セルが破泡し、均一な発泡セルが得られなくなるので、シラングラフト重合体の添加量は、全熱可塑性樹脂中5〜50重量%が好ましく、10〜35重量%が特に好ましい。
【0032】
また、シラングラフト重合体を用いてシラン架橋する場合には、必要に応じてシラン架橋触媒を用いてもよい。シラン架橋触媒は、シラングラフト重合体同士の架橋反応を促進するものであれば、特に限定されず、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸錫、オレイン酸錫、オクタン錫鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、オクタン酸コバルト、ナフテン酸鉛、カブリル酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0033】
上記シラン架橋触媒の添加量が多くなると、得られる熱可塑性樹脂発泡体の発泡倍率が低下し、また、少なくなると、架橋反応速度が低下し、水処理に時間を要するので、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、シラン架橋触媒の添加量は、0.001〜10重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましい。
【0034】
上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体に用いられる熱可塑性樹脂は、上述したように特に限定されないが、発泡剤と、互いにほとんど相溶性を有しない高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂との混合物であることが好ましい。この場合、発泡時には低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂が流動し易いので、得られる熱可塑性樹脂発泡体の表面平滑性が高められる。
【0035】
上記互いにほとんど相溶性を有さない上記2種類の樹脂に使用される熱可塑性樹脂(架橋前)としては、前述した熱可塑性樹脂の内2種類〔以下、樹脂そのものの架橋性能には拘らず、高架橋熱可塑性樹脂を形成する樹脂を「高架橋性樹脂」、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂を形成する樹脂を「低(無)架橋性樹脂」という〕を適宜選択して用いることができる。
【0036】
上記、高架橋性樹脂と、低(無)架橋性樹脂のメルトインデックス(MI)の差が、大きくなると、架橋して得られる高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂とが非常に粗く分散するため、得られる発泡体の発泡倍率が低下し、小さくなると、架橋して得られる高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂の相溶性が高くなり、得られる熱可塑性樹脂発泡体の表面平滑性が低下することがあるため、高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂とが互いに相溶せずに均一微細に分散し、かつ高発泡倍率の熱可塑性樹脂発泡体を得るには、MIの差は5〜13g/10分が好ましく、7〜11g/10分がより好ましい。
【0037】
なお、本明細書におけるMIは、JIS K7210に従って、測定された値である。
架橋して得られる高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂とが均一微細に分散し、かつ表面平滑性に優れた高発泡倍率の熱可塑性樹脂発泡体を得るためには、高架橋性樹脂と、低(無)架橋性樹脂との混合比率は重量比で、2:8〜8:2であることが好ましい。
【0038】
高架橋熱可塑性樹脂の架橋度が高すぎると、架橋がかかりすぎ、得られる熱可塑性樹脂発泡体の発泡倍率が低下し、逆に、低すぎると発泡時にセルが破泡し、均一なセルが得られないことがあるので、架橋度の指標となる到達ゲル分率で5〜40重量%が好ましく、10〜35重量%がより好ましい。
【0039】
低架橋または無架橋熱可塑性樹脂の架橋度が高いと、架橋がかかりすぎ、得られる熱可塑性樹脂発泡体の流動性が低下し、熱可塑性樹脂発泡体の表面平滑性が低くなることがあるので、架橋度の指標となるゲル分率で5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
【0040】
なお、本明細書におけるゲル分率とは、架橋樹脂成分を120℃のキシレン中に24時間浸漬した後の残渣重量のキシレン浸漬前の架橋樹脂成分の重量に対する重量百分率をいう。
【0041】
互いにほとんど相溶性を有さない、高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂の混合物を調製する方法としては、上記2種類の熱可塑性樹脂を混合し、高架橋性樹脂のみを、または低(無)架橋性樹脂より高架橋性樹脂を優先的に架橋することにより達成される。
【0042】
高架橋性樹脂のみを、または低(無)架橋性樹脂より高架橋性樹脂を優先的に架橋する方法としては、例えば、▲1▼高架橋性樹脂のみを、または低(無)架橋性樹脂より高架橋性樹脂を優先的に架橋する架橋剤を用いて架橋する方法、▲2▼第1段階で、架橋性官能基を有する、高架橋性樹脂と同種の架橋性樹脂とを混合し架橋して、高架橋熱可塑性樹脂を形成させた後、第2段階で、これを低(無)架橋性樹脂と混合する方法等が挙げられる。
【0043】
もっとも、高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂とが均一微細に分散できること、高架橋性樹脂を優先的に架橋し易いこと、並びに熱可塑性樹脂を容易に調製し得ることから、高架橋性樹脂とほとんど同じメルトインデックスを有し、かつ架橋性官能基を有する、高架橋性樹脂と同種の架橋性樹脂を、高架橋性樹脂及び低(無)架橋性樹脂と共に混合した後、架橋させる方法が最も好ましい。
【0044】
高架橋性樹脂とほとんど同じメルトインデックスを有した、架橋性官能基を有する、高架橋性樹脂と同種の架橋性樹脂としては、反応性官能基を有し、架橋することができる熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。このような官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基等の不飽和基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、シラネート基等を有する前述した熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0045】
架橋性樹脂の具体的な例としては、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、シラン変性ポリエチレン、シラン変性ポリプロピレン等が挙げられる。高架橋性樹脂のみに、または低(無)架橋性樹脂より高架橋性樹脂を優先的に架橋することが容易なこと、及び混合後の架橋が容易なことから、シラン変性ポリエチレン、シラン変性ポリプロピレンが最も好ましい。
【0046】
高架橋性樹脂と、架橋性官能基を有する架橋性樹脂とのメルトインデックスの差は、大きすぎると高架橋性樹脂のみに、または低(無)架橋性樹脂より高架橋性樹脂を優先的に架橋することが困難になるので、2g/10分以下が好ましく、1g/10分以下がさらに好ましい。
【0047】
上記架橋性官能基を有する架橋性樹脂を架橋する方法としては、過酸化物を用いて架橋する方法、イソシアネートを用いて架橋する方法、アミンを用いて架橋する方法、反応性官能基を加水分解した後、水架橋する方法等が挙げられる。
【0048】
混合後の架橋が容易なことから、反応性官能基を加水分解した後水架橋する方法が最も好ましい。
【0049】
発泡剤
本発明において、上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体及び発泡性熱可塑性樹脂薄膜に含有される発泡剤として熱分解型の発泡剤が用いられる。
【0050】
上記熱分解型発泡剤としては、用いられる熱可塑性樹脂の溶融温度より高い分解温度を有するものであれば、特に限定されず、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、アジド化合物、ほう水素化ナトリウム等の無機系熱分解型発泡剤;アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、ジアゾアミノベンゼン、N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P−トルエンスルホニルヒドラジド、P,P´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トリヒドラジノトリアジン等が挙げられ、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系エチレン樹脂を用いる場合は、分解温度や分解速度の調整が容易でガス発生量が多く、衛生上優れているアゾジカルボンアミドが好ましい。
【0051】
上記熱分解型発泡剤の添加量が多すぎると、破泡し、均一なセルが形成されず、逆に少なすぎると十分に発泡しなくなることがあるため、熱分解型発泡剤は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、1〜25重量部の割合で含有させることが好ましい。
【0052】
他に添加し得る成分
熱可塑性樹脂発泡体の強度を高めるために、上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体及び発泡性熱可塑性樹脂薄膜に用いられる上記熱可塑性樹脂には、必要に応じて、ガラス短繊維、炭素短繊維、ポリエステル短繊維等の補強材;炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスパウダー等の充填材等を添加してもよい。
【0053】
補強材として、上記短繊維を添加する場合、補強材の添加割合が多すぎると、発泡時にセルが破壊し、高発泡倍率の発泡体を得ることができなくなるので、その配合割合は、熱可塑性樹脂100重量部に対し20重量部以下が好ましく、10重量部以下が特に好ましい。
【0054】
短繊維の長さが長すぎると、発泡時にセルが破壊し、高発泡倍率の発泡体を得ることができず、短すぎると、得られる発泡体を補強する効果が十分に得られなくなることがあるため、短繊維の長さは、1〜20mmが好ましく、3〜5mmが特に好ましい。
【0055】
また、上記充填剤を添加する場合、添加量が多いと、発泡時にセルが破壊し、高発泡倍率の発泡体を得ることができず、また、少ないと、得られる発泡体を補強する効果が充分に得られないことがある。従って、充填剤の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、100重量部以下が好ましく、50重量部以下が特に好ましい。
【0056】
発泡性熱可塑性樹脂シート状体
発泡性熱可塑性樹脂シート状体は、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が平面的に略均一に配置しており、上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡性熱可塑性樹脂薄膜を介して一体的に連結されているものである。上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体の形状は、特に限定されず、例えば、六方体、円柱状、球状体などが挙げられるが、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡する際に、発泡を均一に行わせるには、円柱状が最も好ましい。
【0057】
発泡性熱可塑性樹脂粒状体が円柱状の場合、その径は、目的とする発泡体の発泡倍率や厚さによっても異なるため特に限定されるものではないが、大きすぎると発泡速度が低下し、小さすぎると発泡時の加熱で円柱が溶融し、変形し易く一次元発泡性を発現できなくなり、厚み精度、重量精度のばらつきが大きくなる。また表面平滑性も低下する。従って、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が円柱の場合、その径は、1〜30mmが好ましく、2〜20mmの範囲が特に好ましい。
【0058】
発泡性熱可塑性樹脂粒状体が円柱状の場合、その高さは、目的とする発泡体の発泡倍率や厚さによっても異なるため特に限定されるものではないが、高すぎると発泡速度が低下し、低すぎると発泡性熱可塑性樹脂薄膜と同時に発泡するため、幅方向及び長手方向において大きく膨張することになる。従って、円柱状の発泡性熱可塑性樹脂粒状体の高さは1〜30mmが好ましく、2〜20mmが特に好ましい。
【0059】
発泡性熱可塑性樹脂粒状体間の距離は、目的とする発泡体の発泡倍率や厚さ等によっても異なるため、特に限定されるものではないが、上記距離が長すぎると発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡した時に充填不足が発生する可能性があり、短すぎると発泡時膨張できる面積が不足し、幅方向及び長手方向において大きく膨張しがちとなる。従って、発泡性熱可塑性樹脂粒状体間の中心間距離は、2〜50mmが好ましく、3〜30mmが特に好ましい。
【0060】
最終的に得られる発泡体の厚み精度、重量精度を向上し、高い表面平滑性を付与し、発泡倍率を均一化するには、上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体は、発泡性熱可塑性樹脂シート状体において平面的に略均一に配置されることが必要である。熱可塑性樹脂粒状体を平面的に略均一に配置する態様としては、特に限定されるものではなく、格子状に配置されていてもよいが、千鳥状に配置されていると、個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡して得られる高発泡体が六角柱の形状となるため、擬似的なハニカム構造を構成することになる。そのため、得られる発泡体の表面平滑性が高められ、圧縮強度が向上する。従って、好ましくは、発泡性熱可塑性樹脂粒状体は、千鳥状に配置される。
【0061】
上記発泡性熱可塑性樹脂薄膜の厚みは、目的とする発泡体の発泡倍率や厚み等によっても異なるため、特に限定されるものではないが、厚くなりすぎると、発泡時に発泡性熱可塑性樹脂粒状体を移動させ、幅方向及び長手方向における膨張が大きくなり、薄すぎると発泡性熱可塑性樹脂粒状体を保持できなくなる。従って、発泡性熱可塑性樹脂薄膜の厚みは、0.05〜3mmが好ましく、0.1〜2mmが特に好ましい。
【0062】
発泡性熱可塑性樹脂シート状体の製造方法
上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、1)発泡性熱可塑性樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂及び発泡剤などを射出成形機に供給し、熱分解型発泡剤の分解温度より低い温度で溶融混練し、発泡性熱可塑性樹脂粒状体の形状に応じた凹部を有する金型に射出した後冷却する方法等が挙げられるが、2)発泡性熱可塑性樹脂シート状体を構成する熱可塑性樹脂及び発泡剤などを押出機に供給し、熱分解型発泡剤の分解温度より低い温度で溶融混練した後、軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂を、該シート状発泡性熱可塑性樹脂の厚みより狭いクリアランスを有し、少なくとも一方の外周面に多数の凹部が均一に配設された異方向に回転する一対の賦形ロールに導入し、前記凹部に軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂の一部を圧入した後、冷却、離型する方法が最も好ましい。
【0063】
上記2)の方法をさらに詳しく説明する。
先ず、軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂を得るには、通常、押出機により発泡性熱可塑性樹脂を溶融混練押出しする方法やカレンダーロールを用いて溶融化する方法が挙げられ、押出機を用いた溶融化が連続重量精度、定量性の点から最も好ましい。
【0064】
軟化状態の発泡性熱可塑性樹脂の形態は、連続的に成形できる形態であれば特に限定されず、シート形態、多数のストランド形態等が挙げられるが、流れ直角方向(幅方向)の定量性の点からシート形態が最も好ましい。
【0065】
賦形ロールは、得られる発泡性熱可塑性樹脂シート状体の重量精度、厚み精度の向上のため、又、上述したように熱可塑性樹脂粒状体が略均一に配置されるために、賦形ロールの外周面の凹部の配設は、略均一に配置されることが好ましい。この場合、賦形ロール外周面全体で略均一であれば特に限定されないが、上述したように、熱可塑性樹脂粒状体を千鳥状に配置するためには、格子または千鳥に配設されていることが最も好ましい。
【0066】
賦形ロールの外周面の凹部の形状は、特に限定されず、例えば、六方体状、円柱状、球状体等が挙げられるが、凹部を成形し易い点、発泡性熱可塑性樹脂粒状体を均一に成形し易い点、冷却後の離型が行い易い点から円柱状が最も好ましい。
【0067】
賦形ロールの外周面の凹部の形状が円柱状であるとき、円柱の径は、目的とする発泡性熱可塑性樹脂シート状体の形状により変化するため、特に限定されないが、大きすぎると冷却後の離型が行い難く、発泡性熱可塑性樹脂薄膜が破れ、小さすぎると冷却後の離型時に発泡性熱可塑性樹脂粒状体が破壊するため、1mm〜30mmが好ましく、2mm〜20mmが特に好ましい。
【0068】
賦形ロールの外周面の凹部の形状が円柱状であるとき、円柱の高さは、目的とする発泡性熱可塑性樹脂シート状体の形状により変化するため、特に限定されないが、高すぎると冷却後の離型が行い難く、発泡性熱可塑性樹脂薄膜が破れ、低すぎると一次元発泡を行える発泡性熱可塑性樹脂シート状体が形成できないため、1mm〜30mmが好ましく、2mm〜20mmが特に好ましい。
【0069】
賦形ロールのクリアランスは、軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂の厚みより狭いことが必要である。よって、この範囲であれば、目的とする発泡性熱可塑性樹脂シート状体の形状により変化するため、特に限定されないが、厚すぎると、一次元発泡を行える発泡性熱可塑性樹脂シート状体が形成できなくなり、薄すぎると冷却後の離型時に発泡性熱可塑性樹脂薄膜が破れ易いため、0.05mm〜3mmが好ましく、0.1mm〜2mmが特に好ましい。
【0070】
軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂の一部を凹部への圧入する方法は、1対の賦形ロールのクリアランスを変化させないことにより、軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂に賦形ロールからの圧力が付与されて成し遂げられる。
【0071】
一部を圧入され賦形された軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂の冷却方法は、発泡性熱可塑性樹脂の融点以下に下げることができれば、特に限定されず、例えば賦形ロール内部に冷却水を流すなどの方法がある。
【0072】
前記熱可塑性樹脂発泡体は、好ましくは上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体を、前記発泡剤の分解温度以上に加熱し発泡させ、得られた発泡体を冷却することにより、製造することができる。
【0073】
すなわち、上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体を発泡させると、発泡性熱可塑性樹脂粒状体の部分が発泡するが、このとき、発泡性粒状体の外表面は発泡により生じる気泡を保持し難いため内部に比べ発泡倍率が低くなり、低発泡薄膜となる。このような低発泡薄膜は、粒状体の内部の発泡により、隣接する粒状体の低発泡薄膜と近接し熱融着する。この結果、発泡性粒状体の内部の高い発泡倍率の高発泡体の外表面を低発泡薄膜が被覆した状態となり、かつ複数の高発泡体が互いに低発泡薄膜を介して熱融着されている状態となる。
【0074】
また発泡性熱可塑性樹脂シート状体の発泡性粒状体を連結している発泡性熱可塑性樹脂薄膜は、連続発泡層となり、この連続発泡層の上に高発泡体が複数配置された状態となる。なお、連続発泡層も厚みが薄く、気泡保持が困難であるため低発泡になる。
【0075】
このようにして、熱可塑性樹脂よりなる連続発泡層と、該連続発泡層の少なくとも片面上に複数配置される熱可塑性樹脂よりなる高発泡体と、該高発泡体の外表面を被覆する熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜とを備え、上記複数の高発泡体が互いに上記低発泡薄膜を介して熱融着されている熱可塑性樹脂発泡体を得ることができる。
しかしながら、上記熱可塑性樹脂発泡体は、上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体を発泡して製造される熱可塑性樹脂発泡体に限定されるものではない。
【0076】
硬質板状体
本発明1に使用される硬質板状体は、床材に通常負荷される荷重で容易に破損、損傷を起こさない材料であれば特に限定されず、例えば、
1)木単板、合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、ハードボード、平行合板(L.V.L)等の木質材料、
2)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などよりなる樹脂材料、
3)繊維強化熱硬化樹脂、繊維強化熱可塑性樹脂などの複合材料、
等が挙げられる。
【0077】
上記硬質板状体には、必要に応じて、突板、合成樹脂又は合成樹脂発泡シート、化粧紙、合成樹脂含浸シートなどの表面化粧材を接着、積層してもよい。さらに意匠性、木質感、耐傷性などを付与するために、印刷、塗装、着色、コーティング等を行ってもよい。
【0078】
上記硬質板状体には、熱可塑性樹脂発泡体との積層面に任意方向に延長する凹溝が設けられてもよく、これにより硬質板状体の曲げ剛性をさらに低下させ、防音性をより向上させることが可能である。凹溝の形状は通常U字状、V字状、コの字状等に形成され、その溝幅は、1〜5mm程度である。
【0079】
上記硬質板状体には、その周縁の全部または一部に、核矧ぎ、相欠きなど従来公知の接合法のための加工が施されていてもよい。
【0080】
硬質板状体の厚みは、薄すぎると、歩行時や重量物載置時に破壊しやすく、厚すぎると防音性が低下するため、2〜12mmが好ましく、より好ましくは2〜9mmであり、もっとも好ましくは2〜6mmである。
【0081】
本発明1の床材は、上記熱可塑性樹脂発泡体の片面に、上記硬質板状体が積層されてなる床材である。
【0082】
上記硬質板状体の厚みと熱可塑性樹脂発泡体の厚みとの比は、硬質板状体の厚みが熱可塑性樹脂発泡体の厚みに比べて、薄すぎると床材の剛性が増加するため防音性が低下し、又、厚すぎると歩行時の沈み込みが大きくなるので、硬質板状体の厚みに対し、好ましくは、1〜10倍、さらに好ましくは1〜5倍、最も好ましくは1〜3倍である。
【0083】
床材の厚みは、特に限定されないが、厚すぎると部屋の天井が低くなり、且つ歩行時の沈み込みも大きくなるため、65mm以下であることが好ましい。
【0084】
本発明1の床材は、前述の熱可塑性樹脂発泡体と硬質板状体を積層することにより形成されるが、緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性等の向上のために、硬質板状体と熱可塑性樹脂発泡体間、あるいは熱可塑性樹脂発泡体の裏面にさらに、樹脂シート、織布あるいは不織布、発泡シート等を単体、であるいは複数積層されてもよい。
【0085】
緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性等の向上のために積層される樹脂シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンビニルアセテート、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂及びこれらの共重合体の樹脂シート:不飽和ポリエステル、ウレタン、エポキシ等の熱硬化性樹脂の樹脂シート、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンープロピレンゴム等の加硫、非加硫ゴムの樹脂シートなどが挙げられる。また、上記樹脂シートには、上記樹脂に無機、有機あるいは金属材料を充填した複合樹脂シートも含まれる。
【0086】
上記樹脂シートは、厚すぎると床材の沈み込みが大きくなり、薄すぎると緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性の効果が発現できないため、30μm〜10mmが好ましく、50μm〜5mmがさらに好ましく、100μm〜3mmが最も好ましい。
【0087】
緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性等の向上のために積層される織布あるいは、不織布としては、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、アラミド等の有機繊維などからなるものが挙げられる。
【0088】
上記織布あるいは不織布は、厚すぎると床材の沈み込みが大きくなり、薄すぎると緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性などの効果が発現できないため、30〜1000g/m2 が好ましく、50〜800g/m2 がさらに好ましく、80〜500g/m2 が最も好ましい。
【0089】
緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性等の向上のために積層される発泡シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンビニルアセテート、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ウレタン等の樹脂及びこれらの共重合体からなるものが挙げられる。
【0090】
上記発泡シートは、厚すぎると床材の沈み込みが大きくなり、薄すぎると緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性の効果が発現できないため、300μm〜10mmが好ましく、500μm〜5mmがさらに好ましく、1〜3mmが最も好ましい。
【0091】
熱可塑性樹脂発泡体と硬質板状体の積層方法
熱可塑性樹脂発泡体と硬質板状体の積層方法としては、接着剤や粘着剤を用いた積層方法があげられる。使用される接着剤としては、酢酸ビニル系やビニルエステル系接着剤、クロロプレン系接着剤等が挙げられ、粘着剤としては、アクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0092】
また、接着性、粘着性の向上のため、熱可塑性樹脂発泡体の少なくとも片面をコロナ処理、あるいはプライマー処理を行うことも好ましい。
【0093】
床材の施工方法
本発明1の床材は、コンクリート等の床下地面材に直接接着または、粘着施工する方法以外に、根太または支柱上に敷設された合板、パーティクルボード等の上面に接着剤、または粘着剤で施工してもよい。
【0094】
請求項2記載(本発明2)の床材は、高発泡体が厚み方向には重ならないように単一の層として配置されており、面方向(二次元的)においては前記低発泡薄膜を介して互いに熱融着されていること以外は、本発明1と同様である。
【0095】
上記高発泡体は、上記連続発泡層の少なくとも片面に配置され、かつ厚み方向(一次元的)には重ならないように単一の層として配置されており、面方向(二次元的)においては上記低発泡薄膜を介して互いに熱融着されているものが好ましい。
【0096】
高発泡体が、上記のように配置されていると、熱可塑性樹脂発泡体の厚み方向に均一となり、かつ熱可塑性樹脂発泡体の厚さ方向に熱可塑性樹脂低発泡薄膜が連続した疑似トラス構造になるため、熱可塑性樹脂発泡体の圧縮強度がさらに向上し、かつ圧縮強度のばらつきも減少する。
【0097】
高発泡体を上記のように配置するには、前記発泡性熱可塑性樹脂粒状体を略均一の高さに配置した発泡性熱可塑性樹脂シート状体を、前記した方法により発泡させるとよい。
【0098】
本発明2に使用される硬質板状体は、本発明1に使用されたものと同様のものが使用される。
【0099】
請求項3記載(本発明3)の床材は、高発泡体が、連続発泡層の両面にそれぞれ配置されされていること以外は、本発明1及び2と同様である。
このような高発泡体を有する熱可塑性樹脂発泡体は、表面及び裏面が同様の表面平滑性となる。
【0100】
高発泡体を上記のように配置するには、前記発泡性熱可塑性樹脂粒状体の高さ方向におけるほぼ中心部が、発泡性熱可塑性樹脂薄膜に連結されて一体化されてなる発泡性熱可塑性樹脂シート状体を前記した方法により発泡させるとよい。このような構成では、最終的に得られる発泡体の表裏面が同様の表面平滑性を有することになるため好ましい。なお、発泡性熱可塑性樹脂粒状体の高さ方向における中心部とは、必ずしも高さ方向に沿った中心位置とは限らず、発泡性熱可塑性樹脂粒状体の重心を中心とした部分をいうものとする。
【0101】
本発明3に使用される硬質板状体も、本発明1及び2使用されたものと同様のものが使用される。
【0102】
請求項4記載(本発明4)の床材は、高発泡体が平面的に略均一に配置されていること以外は、本発明1〜3と同様である。
【0103】
高発泡体を上記のように配置するには、前記発泡性熱可塑性樹脂粒状体を、例えば、格子状、千鳥状のように、平面的に略均一に、等間隔に配置されてなる発泡性熱可塑性樹脂シート状体を前記した方法により発泡させるとよい。このように、発泡性熱可塑性樹脂粒状体がすることにより、個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡してられる高発泡体が、角柱となり、熱可塑性樹脂発泡体の表面平滑性が良好となり、かつ圧縮強度も高くなる。得られる熱可塑性樹脂発泡体の厚み精度、重量精度が向上され、発泡倍率が均一化される。
【0104】
本発明4に使用される硬質板状体も、本発明1〜3使用されたものと同様のものが使用される。
【0105】
請求項5記載(本発明5)の床材は、高発泡体が千鳥状に配置されていること以外は、本発明1〜4と同様である。
【0106】
高発泡体を上記のように配置するには、前記発泡性熱可塑性樹脂粒状体を、千鳥状に、等間隔に配置されてなる発泡性熱可塑性樹脂シート状体を前記した方法により発泡させるとよい。このように、発泡性熱可塑性樹脂粒状体がすることにより、個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡してられる高発泡体が、六角柱状の形状となり、各高発泡体4aは低発泡薄膜4bを介して熱融着されている構造となり、疑似的なハニカム状の熱可塑性樹脂発泡体が得られる。このようなハニカム状の熱可塑性樹脂発泡体は、表面平滑性に優れ、圧縮強度、曲げ強度が特に優れた熱可塑性樹脂発泡体となる。
【0107】
本発明5に使用される硬質板状体も、本発明1〜4使用されたものと同様のものが使用される。
【0108】
請求項6記載(本発明6)のマンションは、本発明1〜5の床材が床スラブに直貼されているものである。
【0109】
上記床材は、マンションのコンクリート等の床スラブに直接接着剤又は粘着剤などで直貼される。上記床材の厚みは一般に5〜20mmが適当であり、12mmと15mmが標準サイズとして多用される。
【0110】
(作用)
本発明1の床材は、熱可塑性樹脂発泡体の片面に、硬質板状体が積層されてなる床材であって、上記熱可塑性樹脂発泡体が、熱可塑性樹脂よりなる連続発泡層と、連続発泡層の少なくとも片面上に複数配置される熱可塑性樹脂よりなる高発泡体と、高発泡体の外表面を被覆する熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜とを備え、前記複数の高発泡体が互いに前記低発泡薄膜を介して熱融着されているものであるから、高い圧縮強度が発現できる。加えて、連続発泡層が個々の高発泡体を繋ぐように熱融着されているため、低発泡薄膜間の融着界面で剥離・破壊することがない。従って、軽量であり且つ曲げ弾性率が小さく、軽量性と防音性を具備した床材でありながら、歩行時の沈み込みが小さくなる。加えて、連続発泡層が個々の高発泡体を繋ぐように熱融着されているため、歩行時や重量物積載時の破壊が起こりにくい。従って、歩行時の「船酔い現象」を無くすことができ、防音性能に優れ、かつ歩行感の良い床材となる。
【0111】
本発明2の床材は、本発明1の床材において、高発泡体が厚み方向には重ならないように単一の層として配置されており、面方向においては前記低発泡薄膜を介して互いに熱融着されているものであるから、熱可塑性樹脂発泡体の厚み方向に均一となり、且つ熱可塑性樹脂発泡体の厚さ方向に熱可塑性樹脂製低発泡薄膜が連続した疑似トラス構造になるため、熱可塑性樹脂発泡体の圧縮強度がさらに向上し、床材の沈み込みがさらに小さくなり、歩行感がさらに良好のものとなる。
【0112】
本発明3の床材は、本発明1又は2の床材において、高発泡体が、連続発泡層の両面にそれぞれ配置されているものであるから、熱可塑性樹脂発泡体の表裏面が同様の表面平滑性となる。このような熱可塑性樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂発泡体の厚み方向のほぼ中心に連続発泡層が形成されているため、表裏面が同様の表面平滑性となり、且つ曲げ弾性率が低下し、防音性がさらに優れた床材となる。
【0113】
本発明4の床材は、本発明1〜3の床材において、高発泡体が平面的に略均一に配置されているものであるから、個々の高発泡体が角柱となっており、熱可塑性樹脂発泡体の厚み精度、重量精度のばらつきが少なく且つ圧縮強度および強度ばらつきも向上するため、床材の沈み込みがさらに小さくなり、歩行感がさらに良好のものとなる。
【0114】
本発明5の床材は、本発明1〜4の床材において、高発泡体が、千鳥配置されており、複数の六角柱状の高発泡体が低発泡薄膜を介して熱融着されている構造となり、全体としてハニカム状の熱可塑性樹脂発泡体が得られることになり、曲げ弾性率が低く圧縮強度優れた熱可塑性樹脂発泡体となることで、防音性と沈み込み防止を高レベルで両立した床材となる。
【0115】
本発明6のマンションは、本発明1〜5の床材が床スラブに直貼されているものであるから、防音性能が良好で歩行感に優れた床を具備する点において、居住感に優れたものとなる。
【0116】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体の一例を説明するための部分切欠断面図である。
この発泡性熱可塑性樹脂シート状体を例にとり以下に説明する。発泡性熱可塑性樹脂シート状体1では、円柱状の発泡性熱可塑性樹脂粒状体2が、発泡性熱可塑性樹脂薄膜3により一体的に連結されている。言い方を変えれば、上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体1は、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2で構成される柱状突出部が、発泡性熱可塑性樹脂薄膜3の一方面から突出するように形成されている形状を有する。
【0117】
図2は、本発明4に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体における発泡性熱可塑性樹脂粒状体が配置されている形態を説明するための平面図である。
【0118】
上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体1では、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2は、図2に平面図で示すように平面的に略均一(格子状)に配置されている。
上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体の形状は、特に限定されず、例えば、六方体、円柱状、球状体などが挙げられるが、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡する際に、発泡を均一に行わせるには、図1,2に示すように円柱状の形状が最も好ましい。
【0119】
熱可塑性樹脂粒状体を平面的に略均一に配置する態様としては、特に限定されるものではなく、図2に示したように格子状に配置されていてもよく、図3に示すように千鳥状に配置されていてもよい。発泡性熱可塑性樹脂粒状体が格子状に配置されている場合には、個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡して得られる粒状発泡体が四角柱の形状となり、発泡体の表面平滑性が良好となり、かつ圧縮強度も高くなる。
【0120】
また、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が千鳥状に配置されている場合には、個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡して得られる粒状発泡体が六角柱の形状となるため、擬似的なハニカム構造を構成することになる。そのため、得られる発泡体の表面平滑性が高められ、圧縮強度が向上する。従って、好ましくは、発泡性熱可塑性樹脂粒状体は、千鳥状に配置される。
【0121】
また、発泡性熱可塑性樹脂粒状体と発泡性熱可塑性樹脂薄膜との一体化についても、特に限定されるものではなく、発泡性熱可塑性樹脂シート状体1では、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2が、発泡性熱可塑性樹脂薄膜3により一体的に連結されている。また、好ましくは、図4に断面図で示すように個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体2の高さ方向におけるほぼ中心部が、発泡性熱可塑性樹脂薄膜3に連結されて一体化される。このような構成では、最終的に得られる発泡体の表裏面が同様の表面平滑性を有することになるため好ましい。なお、発泡性熱可塑性樹脂粒状体の高さ方向における中心部とは、必ずしも高さ方向に沿った中心位置とは限らず、発泡性熱可塑性樹脂粒状体の重心を中心とした部分をいうものとする。
【0122】
図5は、本発明に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体を製造する工程を説明するための略図的側面図である。
発泡性熱可塑性樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂及び熱分解型発泡剤などを押出機11に供給し、熱分解型発泡剤の分解温度より低い温度で溶融混練した後、ダイ12からシート状に押し出し、軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂を、発泡性熱可塑性粒状体の形状に対応した凹部13aを有し、クリアランスが保持された賦形ロール13と賦形ロール14とで賦形しつつ冷却することにより、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2で構成される柱状突出部が、発泡性熱可塑性樹脂薄膜3の一方面から突出するように形成されている形状の発泡性熱可塑性樹脂シート状体が得られる。
【0123】
上記のようにして得られた発泡性熱可塑性樹脂シート状体から熱可塑性樹脂発泡体を得るには、上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体をその発泡剤の分解温度以上に加熱し発泡させ、得られた発泡体を冷却する。
【0124】
図6は、本発明3に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体を製造する工程を説明するための要部拡大図である。前述した、発泡性熱可塑性樹脂粒状体のほぼ高さ方向中心部において発泡性熱可塑性樹脂薄膜を介して個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体を連結する場合には、上記の方法においては、図5の賦形ロール13、14に替えて、図6に示すように、一対の賦形ロール13,13として、何れもが発泡性熱可塑性樹脂粒状体の形状に応じた凹部13a,13aを有するものを用いればよい。
【0125】
図7(a)〜(c)は、本発明に使用され得る熱可塑性樹脂シート状体を発泡させる各工程の一例を説明するための各断面図、図8(a)及び(b)は、本発明の発泡性熱可塑性樹脂シート状体を発泡させて発泡体を得る工程を説明するための各断面図である。
図7(a)に示すように、上記のようにして得た発泡性熱可塑性樹脂シート状体1を、フッ化エチレン樹脂等よりなるシート15上に配置し、さらに上方にフッ化エチレン樹脂シート16を重ね、押圧成形することにより熱可塑性樹脂発泡体を得ることができる。上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体では、平面的に配置された発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡性熱可塑性樹脂薄膜を介して一体的に連結されている。従って、図7(a)及び(b)に示すように、発泡剤の分解温度以上に加熱した場合、先ず熱容量の小さい発泡性熱可塑性樹脂薄膜3のみが発泡し、熱容量の大きい発泡性熱可塑性樹脂粒状体2は発泡しない状態となる。この場合、発泡した熱可塑性樹脂薄膜3´が、発泡していない発泡性熱可塑性樹脂粒状体2の存在により、面内方向にほとんど膨張できず、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2間において発泡性熱可塑性樹脂薄膜3が波打ち、かつ発泡倍率が低下することになる。この熱可塑性樹脂薄膜の発泡後、図7(c)、並びに図8(a)及び(b)に示すように、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2間の隙間を埋めるように、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2が発泡して個々の発泡粒状体2´となり、それによって発泡性熱可塑性樹脂シート状体1の面内方向における膨張を引き起こすことなく、疑似一次元的な発泡によりシート状の熱可塑性樹脂発泡体4を得ることができる。
【0126】
図9は本発明に使用される熱可塑性樹脂発泡体の一例を示す略図的縦断面図である。
図9に示すように、熱可塑性樹脂発泡体4は、熱可塑性樹脂よりなる連続発泡層4cの少なくとも片面上に発泡倍率の高い熱可塑性樹脂よりなる高発泡体4aが複数配置されており、この高発泡体4aの外表面は発泡倍率の低い熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜4bにより被覆されている。また隣接する高発泡体4aは、低発泡薄膜4bを介して熱融着されている。
【0127】
上述のように、上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体を一体的に連結する発泡性熱可塑性樹脂薄膜(図1における3)が連続発泡層4cとなり、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡し、その外表面が低発泡薄膜4bとなり、その内部が高発泡体4aとなる。隣接する低発泡薄膜4bは熱融着されて一体的となる。従って、高発泡体4aは、その外表面を低発泡薄膜4b及び4cで被覆され一体化されている。
【0128】
図10は、本発明4に使用される熱可塑性樹脂発泡体を示す略図的横断面図である。
上記熱可塑性樹脂発泡体は、図10に示すように、連続発泡層4cの両面に高発泡体4aがそれぞれ配置され、かつそれぞれの面において厚み方向に重ならないように高発泡体4aが単一の層として配置されている。また高発泡体4aは、長さ方向及び幅方向(二次元的)に、低発泡薄膜4bを介して熱融着されている。このような熱可塑性樹脂発泡体は、表面及び裏面を同様の表面平滑性とすることができる。
【0129】
図11は本発明5に使用される熱可塑性樹脂発泡体の一例を示す略図的横断面図、図12は、本発明3に使用される熱可塑性樹脂発泡体の一例を示す略図的縦断面図である。
【0130】
上述のように、熱可塑性樹脂発泡体の厚み精度、重量精度の向上及び圧縮強度のばらつきの低減のためには、複数の高発泡体が発泡体の横断面方向において平面的に略均一に配置されていることが好ましい。複数の高発泡体を平面的に略均一に配置する態様としては、特に限定されるものではなく、図11に示すように格子状に配置されてもよいが、図12に示すように千鳥状に配置されてるのがさらに好ましい。
【0131】
複数の高発泡体が格子状に配置されている場合には、図11に示すように、個々の発泡体4aは四角柱の形状となり、熱可塑性樹脂発泡体の表面平滑性が良好となり、かつ圧縮強度も高くなる。
【0132】
また、複数の高発泡体が、千鳥状に配置されている場合、図12に示すように、複数の高発泡体4aは六角柱状の形状となり、各高発泡体4aは低発泡薄膜4bを介して熱融着されている構造となり、全体としてハニカム状の熱可塑性樹脂発泡体が得られる。このようなハニカム状の熱可塑性樹脂発泡体は、表面平滑性に優れ、圧縮強度、曲げ強度が特に優れた熱可塑性樹脂発泡体となる。
【0133】
図13は、本発明1〜5の床材の一例を示す断面図である。
本発明1〜5の床材は、上記のようにして得られた熱可塑性樹脂発泡体の片面に、硬質板状体が積層されてなる床材である。
上記床材の各層を積層するには、上記熱可塑性樹脂発泡体の片面に接着剤を塗布するか、両面テープを貼り、硬質板状体5を積層することにより一体化するとよい。
【0134】
【実施例】
本発明を実施例をもって、さらに詳しく説明する。
実施例1
熱可塑性樹脂発泡体
高密度ポリエチレン(三菱化学社製、商品名「HY340」、MI=1.5g/10分)50重量%、シラングラフトポリプロピレン(三菱化学社製、商品名「XPM800H」、MI=11g/10分、架橋後のゲル分率80重量%)20重量%、ポリプロピレン(三菱化学社製、商品名「MA3」、メルトインデックス(MI)=11g/10分)30重量%からなる熱可塑性樹脂100重量部、アゾジカルボンアミド(大塚化学社製、商品名:SO−20、分解温度210℃)5重量部及びシラン架橋触媒としてのジブチル錫ジラウレート0.1重量部を含有する組成物を、図5に示した2軸押出機11に供給した。
【0135】
2軸押出機11としては、径44mmのものを用いた。2軸押出機11において、上記組成物を180℃で溶融混練し、面長500mm、リップ1.0mmのTダイ12により軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂を押し出した。
【0136】
さらに、深さ約5mm、直径4mmの円柱状の凹部13aが1個/cm2 の密度になるように、賦形ロール13のみにランダムに配置された、径250mm、面長500mmのロール13,14(クリアランス1mm)間で該発泡性熱可塑性樹脂シート状体を賦形しつつ冷却し、さらに発泡性熱可塑性シート状体を98℃の水中に2時間浸漬した後乾燥することにより、実測高さ、平均5mm、標準偏差1mm;直径4mmの円柱状の発泡性熱可塑性樹脂粒状体2が1個/cm2 の密度になるように、ランダムに構成された発泡性熱可塑性樹脂シート状体1を得た。
【0137】
上記のようにして得た発泡性熱可塑性樹脂シート状体1では、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2が発泡性熱可塑性樹脂薄膜3により連結されて、全体として発泡性熱可塑性樹脂シート状体1が構成されていた。
【0138】
得られた発泡性熱可塑性樹脂シート状体1を300×900mmに切断し、図7に示したように、ポリフッ化エチレンシート15上に配置し、さらにポリフッ化エチレンシート16をその上面に配置して、ハンドプレスにより、ポリフッ化エチレンシート15、16間が6.0mmの厚みとなるようにして、210℃で10分間加熱発泡した後、30℃の冷却プレスで10分間冷却し、発泡倍率10倍、厚み6.0mmの熱可塑性樹脂発泡体を得た。
【0139】
この発泡体は、熱可塑性樹脂よりなる連続発泡層と、連続発泡層の少なくとも片面上に複数配置される熱可塑性樹脂よりなる高発泡体と、高発泡体の外表面を被覆する熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜とを備え、前記複数の高発泡体が互いに前記低発泡薄膜を介して熱融着されているものとなったが、発泡性熱可塑性樹脂の極一部が低発泡薄膜の外部まで溶出し、高発泡体が厚み方向に重なった状態で形成されていた。
【0140】
なお、得られた熱可塑性樹脂発泡体の発泡倍率、発泡体の厚みは以下の方法で測定した。
【0141】
(発泡倍率)
JIS K6767に準拠して発泡倍率を測定した。
(発泡体の厚み)
ノギスを用い、得られた熱可塑性樹脂発泡体の厚みを測定した。
【0142】
床材の作製
ラワン合板に、厚み0.2mmの突き板(北三社製、商品名「ホワイトオーク」)を水性ビニルウレタン系樹脂(光陽産業社製、商品名「KR120」)で接着し、厚み3.0mmの硬質板状体を得た。
得られた硬質板状体にアクリル系粘着剤(積水化学工業社製、商品名「#5782)を用いて上記熱可塑性樹脂発泡体を接着積層し、床材(厚み9.0mm)を得た。
【0143】
実施例2〜7
ロール凹部配置態様を表1に示すようにしたこと、ロール13の円柱状の凹部13aの深さを5mmにしたこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂発泡体を得た。この発泡体は、熱可塑性樹脂よりなる連続発泡層と、連続発泡層の少なくとも片面上に複数配置される熱可塑性樹脂よりなる高発泡体と、高発泡体の外表面を被覆する熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜とを備え、前記複数の高発泡体が互いに前記低発泡薄膜を介して熱融着されているものとなり、且つ高発泡体は厚み方向に重ならない、単一の層として形成されていた(図9参照)。
【0144】
なお、表中ロール凹部配置態様が「ランダム」とあるのは、凹部13aが1個/cm2 の密度になるように、ランダムに配置されたことを示し、「格子」とあるのは凹部13aが10mm間隔に格子状(図2参照)に、「千鳥」とあるのは凹部13aが10mm間隔に千鳥状(図3参照)に配置されたことを示す。さらに、「一方」とあるのは凹部13aが賦形ロール13のみに、「双方」とあるのは凹部13aが賦形ロール13、14の双方に配置されたことを示した。
【0145】
さらに実施例1と同様にして、硬質板状体に得られた熱可塑性樹脂発泡体を接着積層し、図13に示した床材(厚み9.0mm)を得た。
【0146】
比較例1
床材を、ラワン合板に実施例1と同様の0.2mmの突き板を接着して得られた、厚み9.0mmの硬質板状体とした。
【0147】
比較例2
実施例1と同様にして得られた軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂を、凹部を有しない、径250mm、面長500mmのロール(クリアランス1mm)間で冷却し、さらに98℃の水中に2時間浸漬した後乾燥することにより、厚み1.0mmの発泡性熱可塑性樹脂シートを得た。得られた発泡性熱可塑性樹脂シートを実施例1と同様にして発泡させたところ厚み1.3mmの発泡体となった。得られた発泡体を5枚重ねて積層し、加熱圧着して厚み6.0mmの熱可塑性樹脂発泡体を得た。得られた熱可塑性樹脂発泡体からを実施例1と同様にして硬質板状体に得られた熱可塑性樹脂発泡体を接着積層し、図13に示した床材を得た。
【0148】
実施例1〜7、比較例2で得られた熱可塑性樹脂発泡体を以下の評価に供し、その結果を表1に纏めて示した。
【0149】
熱可塑性樹脂発泡体の評価
▲1▼25%圧縮強度
JIS K6767に準拠して25%圧縮強度を測定した。
【0150】
▲2▼表面状態
得られた熱可塑性樹脂発泡体を、官能評価により4段階で評価し、以下の記号を表1に記した。
◎:表裏面とも格子状又はハニカム状の高発泡体が形成され、表裏とも同一の表面状態であった。
○:表裏面とも格子状又はハニカム状の高発泡体が形成されているか、表裏とも同一の表面状態であった。
△:表裏面とも略均一な表面状態であった。
×:不均一な表面状態であった。
【0151】
▲3▼表面平滑性
得られた熱可塑性樹脂発泡体を、官能評価により4段階で評価し、以下の記号を表1に記した。
◎:表裏面とも極めて平滑であった。
○:表裏面とも平滑であった。
△:片面に小さな凹凸が存在したが、概ね平滑であった。
×:表面に大きな凹凸が存在した。
【0152】
実施例1〜7、比較例1、2で得られた床材を以下の評価に供し、その結果を表1に纏めて示した。
【0153】
床材の評価
▲1▼沈み込み量
得られた床材を200×200mmに切断し、硬質板状体側にφ50mmの鋼製円柱圧子を載置し、2m/minの速度で80kgfの圧縮荷重を負荷したときの沈み込み量を測定した。
【0154】
▲2▼防音性能
JIS A1418に準拠して軽量床衝撃騒音レベルを測定した。
【0155】
【表1】
【0156】
実施例1と実施例2の結果を比較すると、熱可塑性樹脂発泡体が厚さ方向に単一層の高発泡体を有する場合、複層の高発泡体を有するものと比べて圧縮強度、表面平滑性に優れていることがわかる。その結果、単一層の高発泡体を有するものの方が、沈み込み量の小さい床材となる。
【0157】
実施例2〜4間、実施例5〜7間の結果を比較すると、高発泡体が平面的に略均一に配置されている熱可塑性樹脂発泡体においては、ランダムに配置されているものと比較して、圧縮強度、表面状態が優れ、この熱可塑性樹脂発泡体を用いて床材を形成すると、より沈み込み量の小さなものとなる。又、高発泡体が千鳥状に配置されていると、さらに圧縮強度に優れ、沈み込み量の小さな床材となる。
【0158】
実施例2〜4と実施例5〜7間の結果を比較すると、連続発泡体層の両面に高発泡体が配置されている熱可塑性樹脂発泡体においては、連続発泡体層の片面に高発泡体が配置されているものと比較して、表面状態に優れ、得られる床材は、より防音性能にすぐれた床材となる。
【0159】
【発明の効果】
本発明1の床材は、上述の如き構成とされているので、防音性能に優れ、かつ歩行感の良い床材となる。
【0160】
本発明2の床材は、本発明1の床材において上述の如き構成とされているので、歩行感がさらに良好のものとなる。
【0161】
本発明3の床材は、本発明1または2の床材において上述の如き構成とされているので、防音性能がさらに良好のものとなる。
【0162】
本発明4の床材は、本発明1〜3の床材において上述の如き構成とされているので、歩行感がさらに良好のものとなる。
【0163】
本発明5の床材は、本発明1〜4の床材において上述の如き構成とされているので、歩行感がさらに良好のものとなる。
【0164】
本発明6のマンションは、本発明1〜5の床材を直貼りしているので、居住感に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体の一例を説明するための部分切欠断面図である。
【図2】本発明4に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体における発泡性熱可塑性樹脂粒状体が配置されている形態を説明するための平面図である。
【図3】本発明5に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体における発泡性熱可塑性樹脂粒状体が配置されている形態を説明するための平面図である。
【図4】本発明3に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体の一例を説明するための部分切欠断面図である。
【図5】本発明に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体を製造する工程を説明するための略図的側面図である。
【図6】本発明3に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体を製造する工程を説明するための要部拡大図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明に使用され得る熱可塑性樹脂シート状体を発泡させる各工程の一例を説明するための各断面図である。
【図8】(a)及び(b)は、本発明の発泡性熱可塑性樹脂シート状体を発泡させて発泡体を得る工程を説明するための各断面図である。
【図9】本発明に使用される熱可塑性樹脂発泡体の一例を示す略図的縦断面図である。
【図10】本発明4に使用される熱可塑性樹脂発泡体を示す略図的縦横面図である。
【図11】本発明5に使用される熱可塑性樹脂発泡体の一例を示す略図的横断面図である。
【図12】本発明3に使用される熱可塑性樹脂発泡体の一例を示す略図的縦断面図である。
【図13】本発明1〜5の床材の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 発泡性熱可塑性樹脂シート状体
2 発泡性熱可塑性樹脂粒状体
3 発泡性熱可塑性樹脂薄膜
4 熱可塑性樹脂発泡体
4a 高発泡体
4b 低発泡薄膜
4c 連続発泡層
5 硬質板状体
【発明の属する技術分野】
本発明は、床材及びこれを使用したマンションに関し、詳しくは防音性能が良好でかつ歩行感に優れた床材及びこれを使用したマンションに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、集合住宅の床材としては、カーペット、ジュウタン等がよく用いられていた。しかし、カーペットやジュウタンは、カビやダニが発生しやすく、かつ汚れ易い事から、近年、掃除がし易く、衛生的な硬質板状体を用いた床材の要望が高まっている。
しかしながら、硬質板状体を用いた床材は、衝撃による音が発生しやすく、階下への生活音つまり歩行音や物の落下音が伝わりやすいという問題点を有していた。
【0003】
上記のような問題点を解消する方法として硬質板状体裏面に発泡体や、不織布等の多孔体を緩衝層として積層した床材が数多く提案されている。例えば実公昭52ー30125号公報に記載の床材は、硬質板状体の裏面に、発泡倍率3〜10倍の軟質高発泡体および1.5〜3倍未満の軟質低発泡体を順次形成した床材である。また、実公平3ー21395号公報に記載の床材は、硬質板状体の裏面に隣接する上下の緩衝層の発泡倍率を相互に異ならせたものであり、この緩衝層が10〜50倍の高発泡層と5〜20倍の低発泡層とからなる床材である。衝撃力を受けた場合、これらの緩衝層は変形し、衝撃作用時間が延長することにより、衝撃力のピーク値や衝撃固有周波数を低下させ、衝撃による音や振動の伝搬を防止し防音性を向上させるものであるが、硬質板状体の剛性が大きいため、高い防音性を発現するためには緩衝層を厚くする必要がある。したがって、防音性の高い床材は荷重に対する沈み込みが大きくなり、床材上面の歩行時に『船酔い現象』と称される違和感を覚えるという新しい問題が発生した。
【0004】
一方、沈み込みの小さい床材として、例えば実開昭56ー3945号公報には、厚さ0.3〜15mmの硬質板状体の裏面に20〜100mmの発泡体を積層した床材が提案されている。しかしながら、本床材に使用される発泡体は特に限定されず、通常使用される均質な発泡体では、力学的に等方性を有し、沈み込みを小さくするために高い圧縮弾性率を付与すると曲げ弾性率がおのずと高くなり、高い防音性は期待できない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、防音性と沈み込みという2つの相反する問題点があり、高い防音性を付与するためには、緩衝性を大きく付与する高倍率の発泡合成樹脂シートの厚みを増加する必要があるが、防音性と沈み込み防止を両立することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、防音性能を満足しながら、歩行感にも優れた床材及びこれを使用したマンションを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載(本発明1)の床材は、熱可塑性樹脂発泡体の片面に、硬質板状体が積層されてなる床材であって、上記熱可塑性樹脂発泡体が、熱可塑性樹脂よりなる連続発泡層と、連続発泡層の少なくとも片面上に複数配置される熱可塑性樹脂よりなる高発泡体と、高発泡体の外表面を被覆する熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜とを備え、前記複数の高発泡体が互いに前記低発泡薄膜を介して熱融着されているものである。
【0008】
本発明1に使用される熱可塑性樹脂発泡体を構成する連続発泡層、高発泡体及び低発泡薄膜及びに用いられる樹脂としては、発泡可能な熱可塑性樹脂であれば、特に限定されるものではない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「ポリエチレン」とは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、またはこれらの混合物をいう。)、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ブロック状ポリプロピレン(以下、「ポリプロピレン」とは、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ブロック状ポリプロピレン、またはこれらの混合物をいう。)等のオレフィン系樹脂、及びエチレン酢酸ビニル樹脂等のオレフィン系共重合体;ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、及びこれらの共重合体等が挙げられ、これらは、単独で用いられても、併用されてもよい。
【0009】
上記熱可塑性樹脂の中でも、得られる熱可塑性発泡体の平滑性を高め得るので、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂またはこれらの混合物が好ましく、表面平滑性と、得られる床材の歩行時の沈み込みの防止を両立するためには、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレンまたはこれらの少なくとも一方を含む混合物が特に好ましい。
【0010】
さらに、上記熱可塑性樹脂は、必要に応じて架橋されていてもよい。架橋されることによって、発泡時の破泡が防止でき、発泡倍率が増加し、床材の軽量化につながるからである。
【0011】
上記熱可塑性樹脂発泡体を構成する連続発泡層、高発泡体及び低発泡薄膜に用いられる樹脂は、同一の樹脂である必要性はないが、得られる床材が歩行時及び重量物を載置したときに破壊しにくい点から、同種の樹脂を用いることが好ましい。この際、特に高発泡体及び低発泡薄膜に用いられる樹脂は、同一の樹脂で形成されるのが接着性の点で好ましい。
【0012】
上記熱可塑性樹脂発泡体には、必要に応じて、床材の剛性を高めるために、ガラス短繊維、炭素短繊維、ポリエステル短繊維等の補強材;炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスパウダー等の充填材等を添加してもよい。
【0013】
上記熱可塑性樹脂発泡体の形状は特に限定されないが、通常板状又はシート状である。
【0014】
上記熱可塑性樹脂発泡体の発泡倍率は、低すぎると、床材の軽量化が図れず、高すぎると、床材の沈み込み量が増加するので、2〜30倍が好ましく、より好ましくは3〜20倍、特に好ましくは5〜10倍である。
【0015】
上記熱可塑性樹脂発泡体の厚みは、薄すぎると防音性能が低下し、厚すぎると床材の沈み込み量が増加するので、3〜50mmが好ましく、さらに好ましくは3〜30mm、特に好ましくは5〜10mmである。
【0016】
上記連続発泡層の発泡倍率は、低すぎると、床材の軽量化が困難になり、且つ弾性率が増大するため、防音性能が低下し、高すぎると床材の沈み込み量が増加し、又、歩行時及び重量物を載置したときに破壊しやすくなるので、1.1〜10倍が好ましく、さらに好ましくは2〜8倍であり、2〜7倍が特に好ましい。
【0017】
上記連続発泡層の厚みは、薄すぎると、得られる床材が歩行時及び重量物を載置したときに破壊しやすくなり、厚すぎると相対的に熱可塑性樹脂発泡体中に占める割合が増え、床材の軽量化が困難になり、防音性能が低下するので、100μm〜5mmが好ましく、さらに好ましくは300μm〜3mmであり、500μm〜2mmが特に好ましい。
なお、連続発泡層の厚みは均一である必要はない。連続発泡層の厚みが不均一な場合には、ここでいう連続発泡層の厚みとは、熱可塑性樹脂発泡体の縦断面をとったときの、連続発泡層の平均厚さをいう。
【0018】
上記高発泡体の発泡倍率は、低すぎると、床材の軽量化が困難になり、且つ弾性率が増大するため、防音性能が低下し、高すぎると床材の沈み込み量が増加し、又、歩行時及び重量物を載置したときに破壊しやすくなるので、2〜100倍が好ましく、さらに好ましくは5〜50倍であり、10〜35倍が特に好ましい。
【0019】
上記高発泡体の大きさは、小さすぎると床材の軽量化が困難になり、大きすぎると得られる床材が歩行時及び重量物を載置したときに破壊しやすくなるので3〜50mmが好ましく、さらに好ましくは5〜30mmである。
なお、高発泡体の大きさは均一である必要はない。ここでいう高発泡体の大きさとは、熱可塑性樹脂発泡体の横断面をとったときの、高発泡体の個々についての最大値をいい、大きさが不均一である場合は高発泡体の個々についての最大値の平均値いう。
【0020】
上記低発泡薄膜の発泡倍率は、低すぎると、床材の軽量化が困難になり、且つ弾性率が増大するため、防音性能が低下し、高すぎると床材の沈み込み量が増加し、又、歩行時及び重量物を載置したときに破壊しやすくなるので、1.1〜10倍が好ましく、さらに好ましくは1.2〜7倍であり、1.2〜5倍が特に好ましい。
低発泡薄膜の発泡倍率は、一般に高発泡体の発泡倍率の1/2以下である。
【0021】
上記低発泡薄膜の厚みは、薄すぎると高発泡体部分が相対的に大きくなり、得られる床材の圧縮強度が低下し、厚すぎると防音性能が低下するので、30〜500μmが好ましく、さらに好ましくは40〜400μmであり、50〜400μmが特に好ましい。
なお、低発泡薄膜の厚みは均一である必要はない。連続発泡層の厚みが不均一な場合には、ここでいう連続発泡層の厚みとは、熱可塑性樹脂発泡体の横断面をとったときの、低発泡薄膜の平均厚さをいう。
【0022】
上記熱可塑性樹脂発泡体を製造する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、発泡剤を含有した発泡性熱可塑性樹脂組成物を所定の容器中で発泡させ、一面を除いた外表面が熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜が被覆されている高発泡体を製造し、これを上記低発泡薄膜を介して熱融着し、別途製造した熱可塑性樹脂よりなる連続発泡シート層を熱融着等により積層してもよいが、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が平面的に配置され、上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡性熱可塑性樹脂薄膜を介して一体的に連結されている発泡性熱可塑性樹脂シート状体を、発泡剤の分解温度以上に加熱し発泡させることにより得る方法が好ましい。
【0023】
上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体を構成する発泡性熱可塑性樹脂粒状体及び発泡性熱可塑性樹脂薄膜に用いられる熱可塑性樹脂としては、上記熱可塑性樹脂樹脂発泡体に使用される樹脂と同様のものが使用される。
【0024】
上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体に用いられる熱可塑性樹脂と、発泡性熱可塑性樹脂薄膜に用いられる熱可塑性樹脂とは、同一の樹脂である必要性はないが、発泡性及び接着性等の観点から、同種の樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体に用いられる熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂樹脂発泡体の項で述べたように、発泡倍率の向上及び得られる熱可塑性樹脂発泡体の軽量化を図り得るため、架橋されているものを用いることが好ましい。架橋方法としては、特に限定されず、例えば、▲1▼シラングラフト重合体を熱可塑性樹脂に溶融混練後、水処理を行い、架橋する方法、▲2▼熱可塑性樹脂に過酸化物を該過酸化物の分解温度より低い温度で溶融混練後、過酸化物の分解温度以上に加熱して架橋する方法、▲3▼放射線を照射して架橋する方法等が挙げられる。但し、後述する高架橋樹脂と、低(無)架橋樹脂を得るためには、▲1▼のシラングラフト重合体を用いた架橋方法が好ましい。
【0026】
上記シラングラフト重合体としては、特に限定されず、例えば、シラングラフトポリエチレンやシラングラフトポリプロピレン等を例示することができる。
【0027】
前述の水処理方法は、水中に浸漬する方法のほか、水蒸気にさらす方法も含まれ、かかる場合、100℃より高い温度で処理する場合には、加圧下において行えばよい。
【0028】
上記水処理の際の水及び水蒸気の温度が低いと、架橋反応速度が低下し、また、高すぎると発泡性熱可塑性樹脂が熱でくっついてしまうので、50〜130℃が好ましく、90〜120℃が特に好ましい。
【0029】
また、水処理する際の時間が短いと、架橋反応が完全に進行しない場合があるので、水処理時間は0.5〜12時間の範囲とすることが好ましい。
【0030】
シラングラフト重合体を混合する方法は、均一に混合し得る方法であれば、特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂及びシラングラフト重合体を1軸または2軸押出機に供給し、溶融混練する方法、ロールを用いて溶融混練する方法、ニーダーを用いて溶融混練する方法等が挙げられる。
【0031】
シラングラフト重合体の添加量が多すぎると、架橋がかかりすぎ、得られる熱可塑性樹脂発泡体の発泡倍率が低下し、また、少なすぎると、セルが破泡し、均一な発泡セルが得られなくなるので、シラングラフト重合体の添加量は、全熱可塑性樹脂中5〜50重量%が好ましく、10〜35重量%が特に好ましい。
【0032】
また、シラングラフト重合体を用いてシラン架橋する場合には、必要に応じてシラン架橋触媒を用いてもよい。シラン架橋触媒は、シラングラフト重合体同士の架橋反応を促進するものであれば、特に限定されず、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸錫、オレイン酸錫、オクタン錫鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、オクタン酸コバルト、ナフテン酸鉛、カブリル酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0033】
上記シラン架橋触媒の添加量が多くなると、得られる熱可塑性樹脂発泡体の発泡倍率が低下し、また、少なくなると、架橋反応速度が低下し、水処理に時間を要するので、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、シラン架橋触媒の添加量は、0.001〜10重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましい。
【0034】
上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体に用いられる熱可塑性樹脂は、上述したように特に限定されないが、発泡剤と、互いにほとんど相溶性を有しない高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂との混合物であることが好ましい。この場合、発泡時には低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂が流動し易いので、得られる熱可塑性樹脂発泡体の表面平滑性が高められる。
【0035】
上記互いにほとんど相溶性を有さない上記2種類の樹脂に使用される熱可塑性樹脂(架橋前)としては、前述した熱可塑性樹脂の内2種類〔以下、樹脂そのものの架橋性能には拘らず、高架橋熱可塑性樹脂を形成する樹脂を「高架橋性樹脂」、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂を形成する樹脂を「低(無)架橋性樹脂」という〕を適宜選択して用いることができる。
【0036】
上記、高架橋性樹脂と、低(無)架橋性樹脂のメルトインデックス(MI)の差が、大きくなると、架橋して得られる高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂とが非常に粗く分散するため、得られる発泡体の発泡倍率が低下し、小さくなると、架橋して得られる高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂の相溶性が高くなり、得られる熱可塑性樹脂発泡体の表面平滑性が低下することがあるため、高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂とが互いに相溶せずに均一微細に分散し、かつ高発泡倍率の熱可塑性樹脂発泡体を得るには、MIの差は5〜13g/10分が好ましく、7〜11g/10分がより好ましい。
【0037】
なお、本明細書におけるMIは、JIS K7210に従って、測定された値である。
架橋して得られる高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂とが均一微細に分散し、かつ表面平滑性に優れた高発泡倍率の熱可塑性樹脂発泡体を得るためには、高架橋性樹脂と、低(無)架橋性樹脂との混合比率は重量比で、2:8〜8:2であることが好ましい。
【0038】
高架橋熱可塑性樹脂の架橋度が高すぎると、架橋がかかりすぎ、得られる熱可塑性樹脂発泡体の発泡倍率が低下し、逆に、低すぎると発泡時にセルが破泡し、均一なセルが得られないことがあるので、架橋度の指標となる到達ゲル分率で5〜40重量%が好ましく、10〜35重量%がより好ましい。
【0039】
低架橋または無架橋熱可塑性樹脂の架橋度が高いと、架橋がかかりすぎ、得られる熱可塑性樹脂発泡体の流動性が低下し、熱可塑性樹脂発泡体の表面平滑性が低くなることがあるので、架橋度の指標となるゲル分率で5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
【0040】
なお、本明細書におけるゲル分率とは、架橋樹脂成分を120℃のキシレン中に24時間浸漬した後の残渣重量のキシレン浸漬前の架橋樹脂成分の重量に対する重量百分率をいう。
【0041】
互いにほとんど相溶性を有さない、高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂の混合物を調製する方法としては、上記2種類の熱可塑性樹脂を混合し、高架橋性樹脂のみを、または低(無)架橋性樹脂より高架橋性樹脂を優先的に架橋することにより達成される。
【0042】
高架橋性樹脂のみを、または低(無)架橋性樹脂より高架橋性樹脂を優先的に架橋する方法としては、例えば、▲1▼高架橋性樹脂のみを、または低(無)架橋性樹脂より高架橋性樹脂を優先的に架橋する架橋剤を用いて架橋する方法、▲2▼第1段階で、架橋性官能基を有する、高架橋性樹脂と同種の架橋性樹脂とを混合し架橋して、高架橋熱可塑性樹脂を形成させた後、第2段階で、これを低(無)架橋性樹脂と混合する方法等が挙げられる。
【0043】
もっとも、高架橋熱可塑性樹脂と、低架橋もしくは無架橋熱可塑性樹脂とが均一微細に分散できること、高架橋性樹脂を優先的に架橋し易いこと、並びに熱可塑性樹脂を容易に調製し得ることから、高架橋性樹脂とほとんど同じメルトインデックスを有し、かつ架橋性官能基を有する、高架橋性樹脂と同種の架橋性樹脂を、高架橋性樹脂及び低(無)架橋性樹脂と共に混合した後、架橋させる方法が最も好ましい。
【0044】
高架橋性樹脂とほとんど同じメルトインデックスを有した、架橋性官能基を有する、高架橋性樹脂と同種の架橋性樹脂としては、反応性官能基を有し、架橋することができる熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。このような官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基等の不飽和基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、シラネート基等を有する前述した熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0045】
架橋性樹脂の具体的な例としては、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、シラン変性ポリエチレン、シラン変性ポリプロピレン等が挙げられる。高架橋性樹脂のみに、または低(無)架橋性樹脂より高架橋性樹脂を優先的に架橋することが容易なこと、及び混合後の架橋が容易なことから、シラン変性ポリエチレン、シラン変性ポリプロピレンが最も好ましい。
【0046】
高架橋性樹脂と、架橋性官能基を有する架橋性樹脂とのメルトインデックスの差は、大きすぎると高架橋性樹脂のみに、または低(無)架橋性樹脂より高架橋性樹脂を優先的に架橋することが困難になるので、2g/10分以下が好ましく、1g/10分以下がさらに好ましい。
【0047】
上記架橋性官能基を有する架橋性樹脂を架橋する方法としては、過酸化物を用いて架橋する方法、イソシアネートを用いて架橋する方法、アミンを用いて架橋する方法、反応性官能基を加水分解した後、水架橋する方法等が挙げられる。
【0048】
混合後の架橋が容易なことから、反応性官能基を加水分解した後水架橋する方法が最も好ましい。
【0049】
発泡剤
本発明において、上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体及び発泡性熱可塑性樹脂薄膜に含有される発泡剤として熱分解型の発泡剤が用いられる。
【0050】
上記熱分解型発泡剤としては、用いられる熱可塑性樹脂の溶融温度より高い分解温度を有するものであれば、特に限定されず、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、アジド化合物、ほう水素化ナトリウム等の無機系熱分解型発泡剤;アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、ジアゾアミノベンゼン、N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P−トルエンスルホニルヒドラジド、P,P´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トリヒドラジノトリアジン等が挙げられ、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系エチレン樹脂を用いる場合は、分解温度や分解速度の調整が容易でガス発生量が多く、衛生上優れているアゾジカルボンアミドが好ましい。
【0051】
上記熱分解型発泡剤の添加量が多すぎると、破泡し、均一なセルが形成されず、逆に少なすぎると十分に発泡しなくなることがあるため、熱分解型発泡剤は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、1〜25重量部の割合で含有させることが好ましい。
【0052】
他に添加し得る成分
熱可塑性樹脂発泡体の強度を高めるために、上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体及び発泡性熱可塑性樹脂薄膜に用いられる上記熱可塑性樹脂には、必要に応じて、ガラス短繊維、炭素短繊維、ポリエステル短繊維等の補強材;炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスパウダー等の充填材等を添加してもよい。
【0053】
補強材として、上記短繊維を添加する場合、補強材の添加割合が多すぎると、発泡時にセルが破壊し、高発泡倍率の発泡体を得ることができなくなるので、その配合割合は、熱可塑性樹脂100重量部に対し20重量部以下が好ましく、10重量部以下が特に好ましい。
【0054】
短繊維の長さが長すぎると、発泡時にセルが破壊し、高発泡倍率の発泡体を得ることができず、短すぎると、得られる発泡体を補強する効果が十分に得られなくなることがあるため、短繊維の長さは、1〜20mmが好ましく、3〜5mmが特に好ましい。
【0055】
また、上記充填剤を添加する場合、添加量が多いと、発泡時にセルが破壊し、高発泡倍率の発泡体を得ることができず、また、少ないと、得られる発泡体を補強する効果が充分に得られないことがある。従って、充填剤の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、100重量部以下が好ましく、50重量部以下が特に好ましい。
【0056】
発泡性熱可塑性樹脂シート状体
発泡性熱可塑性樹脂シート状体は、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が平面的に略均一に配置しており、上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡性熱可塑性樹脂薄膜を介して一体的に連結されているものである。上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体の形状は、特に限定されず、例えば、六方体、円柱状、球状体などが挙げられるが、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡する際に、発泡を均一に行わせるには、円柱状が最も好ましい。
【0057】
発泡性熱可塑性樹脂粒状体が円柱状の場合、その径は、目的とする発泡体の発泡倍率や厚さによっても異なるため特に限定されるものではないが、大きすぎると発泡速度が低下し、小さすぎると発泡時の加熱で円柱が溶融し、変形し易く一次元発泡性を発現できなくなり、厚み精度、重量精度のばらつきが大きくなる。また表面平滑性も低下する。従って、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が円柱の場合、その径は、1〜30mmが好ましく、2〜20mmの範囲が特に好ましい。
【0058】
発泡性熱可塑性樹脂粒状体が円柱状の場合、その高さは、目的とする発泡体の発泡倍率や厚さによっても異なるため特に限定されるものではないが、高すぎると発泡速度が低下し、低すぎると発泡性熱可塑性樹脂薄膜と同時に発泡するため、幅方向及び長手方向において大きく膨張することになる。従って、円柱状の発泡性熱可塑性樹脂粒状体の高さは1〜30mmが好ましく、2〜20mmが特に好ましい。
【0059】
発泡性熱可塑性樹脂粒状体間の距離は、目的とする発泡体の発泡倍率や厚さ等によっても異なるため、特に限定されるものではないが、上記距離が長すぎると発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡した時に充填不足が発生する可能性があり、短すぎると発泡時膨張できる面積が不足し、幅方向及び長手方向において大きく膨張しがちとなる。従って、発泡性熱可塑性樹脂粒状体間の中心間距離は、2〜50mmが好ましく、3〜30mmが特に好ましい。
【0060】
最終的に得られる発泡体の厚み精度、重量精度を向上し、高い表面平滑性を付与し、発泡倍率を均一化するには、上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体は、発泡性熱可塑性樹脂シート状体において平面的に略均一に配置されることが必要である。熱可塑性樹脂粒状体を平面的に略均一に配置する態様としては、特に限定されるものではなく、格子状に配置されていてもよいが、千鳥状に配置されていると、個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡して得られる高発泡体が六角柱の形状となるため、擬似的なハニカム構造を構成することになる。そのため、得られる発泡体の表面平滑性が高められ、圧縮強度が向上する。従って、好ましくは、発泡性熱可塑性樹脂粒状体は、千鳥状に配置される。
【0061】
上記発泡性熱可塑性樹脂薄膜の厚みは、目的とする発泡体の発泡倍率や厚み等によっても異なるため、特に限定されるものではないが、厚くなりすぎると、発泡時に発泡性熱可塑性樹脂粒状体を移動させ、幅方向及び長手方向における膨張が大きくなり、薄すぎると発泡性熱可塑性樹脂粒状体を保持できなくなる。従って、発泡性熱可塑性樹脂薄膜の厚みは、0.05〜3mmが好ましく、0.1〜2mmが特に好ましい。
【0062】
発泡性熱可塑性樹脂シート状体の製造方法
上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、1)発泡性熱可塑性樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂及び発泡剤などを射出成形機に供給し、熱分解型発泡剤の分解温度より低い温度で溶融混練し、発泡性熱可塑性樹脂粒状体の形状に応じた凹部を有する金型に射出した後冷却する方法等が挙げられるが、2)発泡性熱可塑性樹脂シート状体を構成する熱可塑性樹脂及び発泡剤などを押出機に供給し、熱分解型発泡剤の分解温度より低い温度で溶融混練した後、軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂を、該シート状発泡性熱可塑性樹脂の厚みより狭いクリアランスを有し、少なくとも一方の外周面に多数の凹部が均一に配設された異方向に回転する一対の賦形ロールに導入し、前記凹部に軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂の一部を圧入した後、冷却、離型する方法が最も好ましい。
【0063】
上記2)の方法をさらに詳しく説明する。
先ず、軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂を得るには、通常、押出機により発泡性熱可塑性樹脂を溶融混練押出しする方法やカレンダーロールを用いて溶融化する方法が挙げられ、押出機を用いた溶融化が連続重量精度、定量性の点から最も好ましい。
【0064】
軟化状態の発泡性熱可塑性樹脂の形態は、連続的に成形できる形態であれば特に限定されず、シート形態、多数のストランド形態等が挙げられるが、流れ直角方向(幅方向)の定量性の点からシート形態が最も好ましい。
【0065】
賦形ロールは、得られる発泡性熱可塑性樹脂シート状体の重量精度、厚み精度の向上のため、又、上述したように熱可塑性樹脂粒状体が略均一に配置されるために、賦形ロールの外周面の凹部の配設は、略均一に配置されることが好ましい。この場合、賦形ロール外周面全体で略均一であれば特に限定されないが、上述したように、熱可塑性樹脂粒状体を千鳥状に配置するためには、格子または千鳥に配設されていることが最も好ましい。
【0066】
賦形ロールの外周面の凹部の形状は、特に限定されず、例えば、六方体状、円柱状、球状体等が挙げられるが、凹部を成形し易い点、発泡性熱可塑性樹脂粒状体を均一に成形し易い点、冷却後の離型が行い易い点から円柱状が最も好ましい。
【0067】
賦形ロールの外周面の凹部の形状が円柱状であるとき、円柱の径は、目的とする発泡性熱可塑性樹脂シート状体の形状により変化するため、特に限定されないが、大きすぎると冷却後の離型が行い難く、発泡性熱可塑性樹脂薄膜が破れ、小さすぎると冷却後の離型時に発泡性熱可塑性樹脂粒状体が破壊するため、1mm〜30mmが好ましく、2mm〜20mmが特に好ましい。
【0068】
賦形ロールの外周面の凹部の形状が円柱状であるとき、円柱の高さは、目的とする発泡性熱可塑性樹脂シート状体の形状により変化するため、特に限定されないが、高すぎると冷却後の離型が行い難く、発泡性熱可塑性樹脂薄膜が破れ、低すぎると一次元発泡を行える発泡性熱可塑性樹脂シート状体が形成できないため、1mm〜30mmが好ましく、2mm〜20mmが特に好ましい。
【0069】
賦形ロールのクリアランスは、軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂の厚みより狭いことが必要である。よって、この範囲であれば、目的とする発泡性熱可塑性樹脂シート状体の形状により変化するため、特に限定されないが、厚すぎると、一次元発泡を行える発泡性熱可塑性樹脂シート状体が形成できなくなり、薄すぎると冷却後の離型時に発泡性熱可塑性樹脂薄膜が破れ易いため、0.05mm〜3mmが好ましく、0.1mm〜2mmが特に好ましい。
【0070】
軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂の一部を凹部への圧入する方法は、1対の賦形ロールのクリアランスを変化させないことにより、軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂に賦形ロールからの圧力が付与されて成し遂げられる。
【0071】
一部を圧入され賦形された軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂の冷却方法は、発泡性熱可塑性樹脂の融点以下に下げることができれば、特に限定されず、例えば賦形ロール内部に冷却水を流すなどの方法がある。
【0072】
前記熱可塑性樹脂発泡体は、好ましくは上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体を、前記発泡剤の分解温度以上に加熱し発泡させ、得られた発泡体を冷却することにより、製造することができる。
【0073】
すなわち、上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体を発泡させると、発泡性熱可塑性樹脂粒状体の部分が発泡するが、このとき、発泡性粒状体の外表面は発泡により生じる気泡を保持し難いため内部に比べ発泡倍率が低くなり、低発泡薄膜となる。このような低発泡薄膜は、粒状体の内部の発泡により、隣接する粒状体の低発泡薄膜と近接し熱融着する。この結果、発泡性粒状体の内部の高い発泡倍率の高発泡体の外表面を低発泡薄膜が被覆した状態となり、かつ複数の高発泡体が互いに低発泡薄膜を介して熱融着されている状態となる。
【0074】
また発泡性熱可塑性樹脂シート状体の発泡性粒状体を連結している発泡性熱可塑性樹脂薄膜は、連続発泡層となり、この連続発泡層の上に高発泡体が複数配置された状態となる。なお、連続発泡層も厚みが薄く、気泡保持が困難であるため低発泡になる。
【0075】
このようにして、熱可塑性樹脂よりなる連続発泡層と、該連続発泡層の少なくとも片面上に複数配置される熱可塑性樹脂よりなる高発泡体と、該高発泡体の外表面を被覆する熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜とを備え、上記複数の高発泡体が互いに上記低発泡薄膜を介して熱融着されている熱可塑性樹脂発泡体を得ることができる。
しかしながら、上記熱可塑性樹脂発泡体は、上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体を発泡して製造される熱可塑性樹脂発泡体に限定されるものではない。
【0076】
硬質板状体
本発明1に使用される硬質板状体は、床材に通常負荷される荷重で容易に破損、損傷を起こさない材料であれば特に限定されず、例えば、
1)木単板、合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、ハードボード、平行合板(L.V.L)等の木質材料、
2)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などよりなる樹脂材料、
3)繊維強化熱硬化樹脂、繊維強化熱可塑性樹脂などの複合材料、
等が挙げられる。
【0077】
上記硬質板状体には、必要に応じて、突板、合成樹脂又は合成樹脂発泡シート、化粧紙、合成樹脂含浸シートなどの表面化粧材を接着、積層してもよい。さらに意匠性、木質感、耐傷性などを付与するために、印刷、塗装、着色、コーティング等を行ってもよい。
【0078】
上記硬質板状体には、熱可塑性樹脂発泡体との積層面に任意方向に延長する凹溝が設けられてもよく、これにより硬質板状体の曲げ剛性をさらに低下させ、防音性をより向上させることが可能である。凹溝の形状は通常U字状、V字状、コの字状等に形成され、その溝幅は、1〜5mm程度である。
【0079】
上記硬質板状体には、その周縁の全部または一部に、核矧ぎ、相欠きなど従来公知の接合法のための加工が施されていてもよい。
【0080】
硬質板状体の厚みは、薄すぎると、歩行時や重量物載置時に破壊しやすく、厚すぎると防音性が低下するため、2〜12mmが好ましく、より好ましくは2〜9mmであり、もっとも好ましくは2〜6mmである。
【0081】
本発明1の床材は、上記熱可塑性樹脂発泡体の片面に、上記硬質板状体が積層されてなる床材である。
【0082】
上記硬質板状体の厚みと熱可塑性樹脂発泡体の厚みとの比は、硬質板状体の厚みが熱可塑性樹脂発泡体の厚みに比べて、薄すぎると床材の剛性が増加するため防音性が低下し、又、厚すぎると歩行時の沈み込みが大きくなるので、硬質板状体の厚みに対し、好ましくは、1〜10倍、さらに好ましくは1〜5倍、最も好ましくは1〜3倍である。
【0083】
床材の厚みは、特に限定されないが、厚すぎると部屋の天井が低くなり、且つ歩行時の沈み込みも大きくなるため、65mm以下であることが好ましい。
【0084】
本発明1の床材は、前述の熱可塑性樹脂発泡体と硬質板状体を積層することにより形成されるが、緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性等の向上のために、硬質板状体と熱可塑性樹脂発泡体間、あるいは熱可塑性樹脂発泡体の裏面にさらに、樹脂シート、織布あるいは不織布、発泡シート等を単体、であるいは複数積層されてもよい。
【0085】
緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性等の向上のために積層される樹脂シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンビニルアセテート、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂及びこれらの共重合体の樹脂シート:不飽和ポリエステル、ウレタン、エポキシ等の熱硬化性樹脂の樹脂シート、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンープロピレンゴム等の加硫、非加硫ゴムの樹脂シートなどが挙げられる。また、上記樹脂シートには、上記樹脂に無機、有機あるいは金属材料を充填した複合樹脂シートも含まれる。
【0086】
上記樹脂シートは、厚すぎると床材の沈み込みが大きくなり、薄すぎると緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性の効果が発現できないため、30μm〜10mmが好ましく、50μm〜5mmがさらに好ましく、100μm〜3mmが最も好ましい。
【0087】
緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性等の向上のために積層される織布あるいは、不織布としては、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、アラミド等の有機繊維などからなるものが挙げられる。
【0088】
上記織布あるいは不織布は、厚すぎると床材の沈み込みが大きくなり、薄すぎると緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性などの効果が発現できないため、30〜1000g/m2 が好ましく、50〜800g/m2 がさらに好ましく、80〜500g/m2 が最も好ましい。
【0089】
緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性等の向上のために積層される発泡シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンビニルアセテート、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ウレタン等の樹脂及びこれらの共重合体からなるものが挙げられる。
【0090】
上記発泡シートは、厚すぎると床材の沈み込みが大きくなり、薄すぎると緩衝性、制振性、遮音性、不陸改善性の効果が発現できないため、300μm〜10mmが好ましく、500μm〜5mmがさらに好ましく、1〜3mmが最も好ましい。
【0091】
熱可塑性樹脂発泡体と硬質板状体の積層方法
熱可塑性樹脂発泡体と硬質板状体の積層方法としては、接着剤や粘着剤を用いた積層方法があげられる。使用される接着剤としては、酢酸ビニル系やビニルエステル系接着剤、クロロプレン系接着剤等が挙げられ、粘着剤としては、アクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0092】
また、接着性、粘着性の向上のため、熱可塑性樹脂発泡体の少なくとも片面をコロナ処理、あるいはプライマー処理を行うことも好ましい。
【0093】
床材の施工方法
本発明1の床材は、コンクリート等の床下地面材に直接接着または、粘着施工する方法以外に、根太または支柱上に敷設された合板、パーティクルボード等の上面に接着剤、または粘着剤で施工してもよい。
【0094】
請求項2記載(本発明2)の床材は、高発泡体が厚み方向には重ならないように単一の層として配置されており、面方向(二次元的)においては前記低発泡薄膜を介して互いに熱融着されていること以外は、本発明1と同様である。
【0095】
上記高発泡体は、上記連続発泡層の少なくとも片面に配置され、かつ厚み方向(一次元的)には重ならないように単一の層として配置されており、面方向(二次元的)においては上記低発泡薄膜を介して互いに熱融着されているものが好ましい。
【0096】
高発泡体が、上記のように配置されていると、熱可塑性樹脂発泡体の厚み方向に均一となり、かつ熱可塑性樹脂発泡体の厚さ方向に熱可塑性樹脂低発泡薄膜が連続した疑似トラス構造になるため、熱可塑性樹脂発泡体の圧縮強度がさらに向上し、かつ圧縮強度のばらつきも減少する。
【0097】
高発泡体を上記のように配置するには、前記発泡性熱可塑性樹脂粒状体を略均一の高さに配置した発泡性熱可塑性樹脂シート状体を、前記した方法により発泡させるとよい。
【0098】
本発明2に使用される硬質板状体は、本発明1に使用されたものと同様のものが使用される。
【0099】
請求項3記載(本発明3)の床材は、高発泡体が、連続発泡層の両面にそれぞれ配置されされていること以外は、本発明1及び2と同様である。
このような高発泡体を有する熱可塑性樹脂発泡体は、表面及び裏面が同様の表面平滑性となる。
【0100】
高発泡体を上記のように配置するには、前記発泡性熱可塑性樹脂粒状体の高さ方向におけるほぼ中心部が、発泡性熱可塑性樹脂薄膜に連結されて一体化されてなる発泡性熱可塑性樹脂シート状体を前記した方法により発泡させるとよい。このような構成では、最終的に得られる発泡体の表裏面が同様の表面平滑性を有することになるため好ましい。なお、発泡性熱可塑性樹脂粒状体の高さ方向における中心部とは、必ずしも高さ方向に沿った中心位置とは限らず、発泡性熱可塑性樹脂粒状体の重心を中心とした部分をいうものとする。
【0101】
本発明3に使用される硬質板状体も、本発明1及び2使用されたものと同様のものが使用される。
【0102】
請求項4記載(本発明4)の床材は、高発泡体が平面的に略均一に配置されていること以外は、本発明1〜3と同様である。
【0103】
高発泡体を上記のように配置するには、前記発泡性熱可塑性樹脂粒状体を、例えば、格子状、千鳥状のように、平面的に略均一に、等間隔に配置されてなる発泡性熱可塑性樹脂シート状体を前記した方法により発泡させるとよい。このように、発泡性熱可塑性樹脂粒状体がすることにより、個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡してられる高発泡体が、角柱となり、熱可塑性樹脂発泡体の表面平滑性が良好となり、かつ圧縮強度も高くなる。得られる熱可塑性樹脂発泡体の厚み精度、重量精度が向上され、発泡倍率が均一化される。
【0104】
本発明4に使用される硬質板状体も、本発明1〜3使用されたものと同様のものが使用される。
【0105】
請求項5記載(本発明5)の床材は、高発泡体が千鳥状に配置されていること以外は、本発明1〜4と同様である。
【0106】
高発泡体を上記のように配置するには、前記発泡性熱可塑性樹脂粒状体を、千鳥状に、等間隔に配置されてなる発泡性熱可塑性樹脂シート状体を前記した方法により発泡させるとよい。このように、発泡性熱可塑性樹脂粒状体がすることにより、個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡してられる高発泡体が、六角柱状の形状となり、各高発泡体4aは低発泡薄膜4bを介して熱融着されている構造となり、疑似的なハニカム状の熱可塑性樹脂発泡体が得られる。このようなハニカム状の熱可塑性樹脂発泡体は、表面平滑性に優れ、圧縮強度、曲げ強度が特に優れた熱可塑性樹脂発泡体となる。
【0107】
本発明5に使用される硬質板状体も、本発明1〜4使用されたものと同様のものが使用される。
【0108】
請求項6記載(本発明6)のマンションは、本発明1〜5の床材が床スラブに直貼されているものである。
【0109】
上記床材は、マンションのコンクリート等の床スラブに直接接着剤又は粘着剤などで直貼される。上記床材の厚みは一般に5〜20mmが適当であり、12mmと15mmが標準サイズとして多用される。
【0110】
(作用)
本発明1の床材は、熱可塑性樹脂発泡体の片面に、硬質板状体が積層されてなる床材であって、上記熱可塑性樹脂発泡体が、熱可塑性樹脂よりなる連続発泡層と、連続発泡層の少なくとも片面上に複数配置される熱可塑性樹脂よりなる高発泡体と、高発泡体の外表面を被覆する熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜とを備え、前記複数の高発泡体が互いに前記低発泡薄膜を介して熱融着されているものであるから、高い圧縮強度が発現できる。加えて、連続発泡層が個々の高発泡体を繋ぐように熱融着されているため、低発泡薄膜間の融着界面で剥離・破壊することがない。従って、軽量であり且つ曲げ弾性率が小さく、軽量性と防音性を具備した床材でありながら、歩行時の沈み込みが小さくなる。加えて、連続発泡層が個々の高発泡体を繋ぐように熱融着されているため、歩行時や重量物積載時の破壊が起こりにくい。従って、歩行時の「船酔い現象」を無くすことができ、防音性能に優れ、かつ歩行感の良い床材となる。
【0111】
本発明2の床材は、本発明1の床材において、高発泡体が厚み方向には重ならないように単一の層として配置されており、面方向においては前記低発泡薄膜を介して互いに熱融着されているものであるから、熱可塑性樹脂発泡体の厚み方向に均一となり、且つ熱可塑性樹脂発泡体の厚さ方向に熱可塑性樹脂製低発泡薄膜が連続した疑似トラス構造になるため、熱可塑性樹脂発泡体の圧縮強度がさらに向上し、床材の沈み込みがさらに小さくなり、歩行感がさらに良好のものとなる。
【0112】
本発明3の床材は、本発明1又は2の床材において、高発泡体が、連続発泡層の両面にそれぞれ配置されているものであるから、熱可塑性樹脂発泡体の表裏面が同様の表面平滑性となる。このような熱可塑性樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂発泡体の厚み方向のほぼ中心に連続発泡層が形成されているため、表裏面が同様の表面平滑性となり、且つ曲げ弾性率が低下し、防音性がさらに優れた床材となる。
【0113】
本発明4の床材は、本発明1〜3の床材において、高発泡体が平面的に略均一に配置されているものであるから、個々の高発泡体が角柱となっており、熱可塑性樹脂発泡体の厚み精度、重量精度のばらつきが少なく且つ圧縮強度および強度ばらつきも向上するため、床材の沈み込みがさらに小さくなり、歩行感がさらに良好のものとなる。
【0114】
本発明5の床材は、本発明1〜4の床材において、高発泡体が、千鳥配置されており、複数の六角柱状の高発泡体が低発泡薄膜を介して熱融着されている構造となり、全体としてハニカム状の熱可塑性樹脂発泡体が得られることになり、曲げ弾性率が低く圧縮強度優れた熱可塑性樹脂発泡体となることで、防音性と沈み込み防止を高レベルで両立した床材となる。
【0115】
本発明6のマンションは、本発明1〜5の床材が床スラブに直貼されているものであるから、防音性能が良好で歩行感に優れた床を具備する点において、居住感に優れたものとなる。
【0116】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体の一例を説明するための部分切欠断面図である。
この発泡性熱可塑性樹脂シート状体を例にとり以下に説明する。発泡性熱可塑性樹脂シート状体1では、円柱状の発泡性熱可塑性樹脂粒状体2が、発泡性熱可塑性樹脂薄膜3により一体的に連結されている。言い方を変えれば、上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体1は、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2で構成される柱状突出部が、発泡性熱可塑性樹脂薄膜3の一方面から突出するように形成されている形状を有する。
【0117】
図2は、本発明4に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体における発泡性熱可塑性樹脂粒状体が配置されている形態を説明するための平面図である。
【0118】
上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体1では、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2は、図2に平面図で示すように平面的に略均一(格子状)に配置されている。
上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体の形状は、特に限定されず、例えば、六方体、円柱状、球状体などが挙げられるが、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡する際に、発泡を均一に行わせるには、図1,2に示すように円柱状の形状が最も好ましい。
【0119】
熱可塑性樹脂粒状体を平面的に略均一に配置する態様としては、特に限定されるものではなく、図2に示したように格子状に配置されていてもよく、図3に示すように千鳥状に配置されていてもよい。発泡性熱可塑性樹脂粒状体が格子状に配置されている場合には、個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡して得られる粒状発泡体が四角柱の形状となり、発泡体の表面平滑性が良好となり、かつ圧縮強度も高くなる。
【0120】
また、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が千鳥状に配置されている場合には、個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡して得られる粒状発泡体が六角柱の形状となるため、擬似的なハニカム構造を構成することになる。そのため、得られる発泡体の表面平滑性が高められ、圧縮強度が向上する。従って、好ましくは、発泡性熱可塑性樹脂粒状体は、千鳥状に配置される。
【0121】
また、発泡性熱可塑性樹脂粒状体と発泡性熱可塑性樹脂薄膜との一体化についても、特に限定されるものではなく、発泡性熱可塑性樹脂シート状体1では、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2が、発泡性熱可塑性樹脂薄膜3により一体的に連結されている。また、好ましくは、図4に断面図で示すように個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体2の高さ方向におけるほぼ中心部が、発泡性熱可塑性樹脂薄膜3に連結されて一体化される。このような構成では、最終的に得られる発泡体の表裏面が同様の表面平滑性を有することになるため好ましい。なお、発泡性熱可塑性樹脂粒状体の高さ方向における中心部とは、必ずしも高さ方向に沿った中心位置とは限らず、発泡性熱可塑性樹脂粒状体の重心を中心とした部分をいうものとする。
【0122】
図5は、本発明に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体を製造する工程を説明するための略図的側面図である。
発泡性熱可塑性樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂及び熱分解型発泡剤などを押出機11に供給し、熱分解型発泡剤の分解温度より低い温度で溶融混練した後、ダイ12からシート状に押し出し、軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂を、発泡性熱可塑性粒状体の形状に対応した凹部13aを有し、クリアランスが保持された賦形ロール13と賦形ロール14とで賦形しつつ冷却することにより、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2で構成される柱状突出部が、発泡性熱可塑性樹脂薄膜3の一方面から突出するように形成されている形状の発泡性熱可塑性樹脂シート状体が得られる。
【0123】
上記のようにして得られた発泡性熱可塑性樹脂シート状体から熱可塑性樹脂発泡体を得るには、上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体をその発泡剤の分解温度以上に加熱し発泡させ、得られた発泡体を冷却する。
【0124】
図6は、本発明3に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体を製造する工程を説明するための要部拡大図である。前述した、発泡性熱可塑性樹脂粒状体のほぼ高さ方向中心部において発泡性熱可塑性樹脂薄膜を介して個々の発泡性熱可塑性樹脂粒状体を連結する場合には、上記の方法においては、図5の賦形ロール13、14に替えて、図6に示すように、一対の賦形ロール13,13として、何れもが発泡性熱可塑性樹脂粒状体の形状に応じた凹部13a,13aを有するものを用いればよい。
【0125】
図7(a)〜(c)は、本発明に使用され得る熱可塑性樹脂シート状体を発泡させる各工程の一例を説明するための各断面図、図8(a)及び(b)は、本発明の発泡性熱可塑性樹脂シート状体を発泡させて発泡体を得る工程を説明するための各断面図である。
図7(a)に示すように、上記のようにして得た発泡性熱可塑性樹脂シート状体1を、フッ化エチレン樹脂等よりなるシート15上に配置し、さらに上方にフッ化エチレン樹脂シート16を重ね、押圧成形することにより熱可塑性樹脂発泡体を得ることができる。上記発泡性熱可塑性樹脂シート状体では、平面的に配置された発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡性熱可塑性樹脂薄膜を介して一体的に連結されている。従って、図7(a)及び(b)に示すように、発泡剤の分解温度以上に加熱した場合、先ず熱容量の小さい発泡性熱可塑性樹脂薄膜3のみが発泡し、熱容量の大きい発泡性熱可塑性樹脂粒状体2は発泡しない状態となる。この場合、発泡した熱可塑性樹脂薄膜3´が、発泡していない発泡性熱可塑性樹脂粒状体2の存在により、面内方向にほとんど膨張できず、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2間において発泡性熱可塑性樹脂薄膜3が波打ち、かつ発泡倍率が低下することになる。この熱可塑性樹脂薄膜の発泡後、図7(c)、並びに図8(a)及び(b)に示すように、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2間の隙間を埋めるように、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2が発泡して個々の発泡粒状体2´となり、それによって発泡性熱可塑性樹脂シート状体1の面内方向における膨張を引き起こすことなく、疑似一次元的な発泡によりシート状の熱可塑性樹脂発泡体4を得ることができる。
【0126】
図9は本発明に使用される熱可塑性樹脂発泡体の一例を示す略図的縦断面図である。
図9に示すように、熱可塑性樹脂発泡体4は、熱可塑性樹脂よりなる連続発泡層4cの少なくとも片面上に発泡倍率の高い熱可塑性樹脂よりなる高発泡体4aが複数配置されており、この高発泡体4aの外表面は発泡倍率の低い熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜4bにより被覆されている。また隣接する高発泡体4aは、低発泡薄膜4bを介して熱融着されている。
【0127】
上述のように、上記発泡性熱可塑性樹脂粒状体を一体的に連結する発泡性熱可塑性樹脂薄膜(図1における3)が連続発泡層4cとなり、発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡し、その外表面が低発泡薄膜4bとなり、その内部が高発泡体4aとなる。隣接する低発泡薄膜4bは熱融着されて一体的となる。従って、高発泡体4aは、その外表面を低発泡薄膜4b及び4cで被覆され一体化されている。
【0128】
図10は、本発明4に使用される熱可塑性樹脂発泡体を示す略図的横断面図である。
上記熱可塑性樹脂発泡体は、図10に示すように、連続発泡層4cの両面に高発泡体4aがそれぞれ配置され、かつそれぞれの面において厚み方向に重ならないように高発泡体4aが単一の層として配置されている。また高発泡体4aは、長さ方向及び幅方向(二次元的)に、低発泡薄膜4bを介して熱融着されている。このような熱可塑性樹脂発泡体は、表面及び裏面を同様の表面平滑性とすることができる。
【0129】
図11は本発明5に使用される熱可塑性樹脂発泡体の一例を示す略図的横断面図、図12は、本発明3に使用される熱可塑性樹脂発泡体の一例を示す略図的縦断面図である。
【0130】
上述のように、熱可塑性樹脂発泡体の厚み精度、重量精度の向上及び圧縮強度のばらつきの低減のためには、複数の高発泡体が発泡体の横断面方向において平面的に略均一に配置されていることが好ましい。複数の高発泡体を平面的に略均一に配置する態様としては、特に限定されるものではなく、図11に示すように格子状に配置されてもよいが、図12に示すように千鳥状に配置されてるのがさらに好ましい。
【0131】
複数の高発泡体が格子状に配置されている場合には、図11に示すように、個々の発泡体4aは四角柱の形状となり、熱可塑性樹脂発泡体の表面平滑性が良好となり、かつ圧縮強度も高くなる。
【0132】
また、複数の高発泡体が、千鳥状に配置されている場合、図12に示すように、複数の高発泡体4aは六角柱状の形状となり、各高発泡体4aは低発泡薄膜4bを介して熱融着されている構造となり、全体としてハニカム状の熱可塑性樹脂発泡体が得られる。このようなハニカム状の熱可塑性樹脂発泡体は、表面平滑性に優れ、圧縮強度、曲げ強度が特に優れた熱可塑性樹脂発泡体となる。
【0133】
図13は、本発明1〜5の床材の一例を示す断面図である。
本発明1〜5の床材は、上記のようにして得られた熱可塑性樹脂発泡体の片面に、硬質板状体が積層されてなる床材である。
上記床材の各層を積層するには、上記熱可塑性樹脂発泡体の片面に接着剤を塗布するか、両面テープを貼り、硬質板状体5を積層することにより一体化するとよい。
【0134】
【実施例】
本発明を実施例をもって、さらに詳しく説明する。
実施例1
熱可塑性樹脂発泡体
高密度ポリエチレン(三菱化学社製、商品名「HY340」、MI=1.5g/10分)50重量%、シラングラフトポリプロピレン(三菱化学社製、商品名「XPM800H」、MI=11g/10分、架橋後のゲル分率80重量%)20重量%、ポリプロピレン(三菱化学社製、商品名「MA3」、メルトインデックス(MI)=11g/10分)30重量%からなる熱可塑性樹脂100重量部、アゾジカルボンアミド(大塚化学社製、商品名:SO−20、分解温度210℃)5重量部及びシラン架橋触媒としてのジブチル錫ジラウレート0.1重量部を含有する組成物を、図5に示した2軸押出機11に供給した。
【0135】
2軸押出機11としては、径44mmのものを用いた。2軸押出機11において、上記組成物を180℃で溶融混練し、面長500mm、リップ1.0mmのTダイ12により軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂を押し出した。
【0136】
さらに、深さ約5mm、直径4mmの円柱状の凹部13aが1個/cm2 の密度になるように、賦形ロール13のみにランダムに配置された、径250mm、面長500mmのロール13,14(クリアランス1mm)間で該発泡性熱可塑性樹脂シート状体を賦形しつつ冷却し、さらに発泡性熱可塑性シート状体を98℃の水中に2時間浸漬した後乾燥することにより、実測高さ、平均5mm、標準偏差1mm;直径4mmの円柱状の発泡性熱可塑性樹脂粒状体2が1個/cm2 の密度になるように、ランダムに構成された発泡性熱可塑性樹脂シート状体1を得た。
【0137】
上記のようにして得た発泡性熱可塑性樹脂シート状体1では、発泡性熱可塑性樹脂粒状体2が発泡性熱可塑性樹脂薄膜3により連結されて、全体として発泡性熱可塑性樹脂シート状体1が構成されていた。
【0138】
得られた発泡性熱可塑性樹脂シート状体1を300×900mmに切断し、図7に示したように、ポリフッ化エチレンシート15上に配置し、さらにポリフッ化エチレンシート16をその上面に配置して、ハンドプレスにより、ポリフッ化エチレンシート15、16間が6.0mmの厚みとなるようにして、210℃で10分間加熱発泡した後、30℃の冷却プレスで10分間冷却し、発泡倍率10倍、厚み6.0mmの熱可塑性樹脂発泡体を得た。
【0139】
この発泡体は、熱可塑性樹脂よりなる連続発泡層と、連続発泡層の少なくとも片面上に複数配置される熱可塑性樹脂よりなる高発泡体と、高発泡体の外表面を被覆する熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜とを備え、前記複数の高発泡体が互いに前記低発泡薄膜を介して熱融着されているものとなったが、発泡性熱可塑性樹脂の極一部が低発泡薄膜の外部まで溶出し、高発泡体が厚み方向に重なった状態で形成されていた。
【0140】
なお、得られた熱可塑性樹脂発泡体の発泡倍率、発泡体の厚みは以下の方法で測定した。
【0141】
(発泡倍率)
JIS K6767に準拠して発泡倍率を測定した。
(発泡体の厚み)
ノギスを用い、得られた熱可塑性樹脂発泡体の厚みを測定した。
【0142】
床材の作製
ラワン合板に、厚み0.2mmの突き板(北三社製、商品名「ホワイトオーク」)を水性ビニルウレタン系樹脂(光陽産業社製、商品名「KR120」)で接着し、厚み3.0mmの硬質板状体を得た。
得られた硬質板状体にアクリル系粘着剤(積水化学工業社製、商品名「#5782)を用いて上記熱可塑性樹脂発泡体を接着積層し、床材(厚み9.0mm)を得た。
【0143】
実施例2〜7
ロール凹部配置態様を表1に示すようにしたこと、ロール13の円柱状の凹部13aの深さを5mmにしたこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂発泡体を得た。この発泡体は、熱可塑性樹脂よりなる連続発泡層と、連続発泡層の少なくとも片面上に複数配置される熱可塑性樹脂よりなる高発泡体と、高発泡体の外表面を被覆する熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜とを備え、前記複数の高発泡体が互いに前記低発泡薄膜を介して熱融着されているものとなり、且つ高発泡体は厚み方向に重ならない、単一の層として形成されていた(図9参照)。
【0144】
なお、表中ロール凹部配置態様が「ランダム」とあるのは、凹部13aが1個/cm2 の密度になるように、ランダムに配置されたことを示し、「格子」とあるのは凹部13aが10mm間隔に格子状(図2参照)に、「千鳥」とあるのは凹部13aが10mm間隔に千鳥状(図3参照)に配置されたことを示す。さらに、「一方」とあるのは凹部13aが賦形ロール13のみに、「双方」とあるのは凹部13aが賦形ロール13、14の双方に配置されたことを示した。
【0145】
さらに実施例1と同様にして、硬質板状体に得られた熱可塑性樹脂発泡体を接着積層し、図13に示した床材(厚み9.0mm)を得た。
【0146】
比較例1
床材を、ラワン合板に実施例1と同様の0.2mmの突き板を接着して得られた、厚み9.0mmの硬質板状体とした。
【0147】
比較例2
実施例1と同様にして得られた軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂を、凹部を有しない、径250mm、面長500mmのロール(クリアランス1mm)間で冷却し、さらに98℃の水中に2時間浸漬した後乾燥することにより、厚み1.0mmの発泡性熱可塑性樹脂シートを得た。得られた発泡性熱可塑性樹脂シートを実施例1と同様にして発泡させたところ厚み1.3mmの発泡体となった。得られた発泡体を5枚重ねて積層し、加熱圧着して厚み6.0mmの熱可塑性樹脂発泡体を得た。得られた熱可塑性樹脂発泡体からを実施例1と同様にして硬質板状体に得られた熱可塑性樹脂発泡体を接着積層し、図13に示した床材を得た。
【0148】
実施例1〜7、比較例2で得られた熱可塑性樹脂発泡体を以下の評価に供し、その結果を表1に纏めて示した。
【0149】
熱可塑性樹脂発泡体の評価
▲1▼25%圧縮強度
JIS K6767に準拠して25%圧縮強度を測定した。
【0150】
▲2▼表面状態
得られた熱可塑性樹脂発泡体を、官能評価により4段階で評価し、以下の記号を表1に記した。
◎:表裏面とも格子状又はハニカム状の高発泡体が形成され、表裏とも同一の表面状態であった。
○:表裏面とも格子状又はハニカム状の高発泡体が形成されているか、表裏とも同一の表面状態であった。
△:表裏面とも略均一な表面状態であった。
×:不均一な表面状態であった。
【0151】
▲3▼表面平滑性
得られた熱可塑性樹脂発泡体を、官能評価により4段階で評価し、以下の記号を表1に記した。
◎:表裏面とも極めて平滑であった。
○:表裏面とも平滑であった。
△:片面に小さな凹凸が存在したが、概ね平滑であった。
×:表面に大きな凹凸が存在した。
【0152】
実施例1〜7、比較例1、2で得られた床材を以下の評価に供し、その結果を表1に纏めて示した。
【0153】
床材の評価
▲1▼沈み込み量
得られた床材を200×200mmに切断し、硬質板状体側にφ50mmの鋼製円柱圧子を載置し、2m/minの速度で80kgfの圧縮荷重を負荷したときの沈み込み量を測定した。
【0154】
▲2▼防音性能
JIS A1418に準拠して軽量床衝撃騒音レベルを測定した。
【0155】
【表1】
【0156】
実施例1と実施例2の結果を比較すると、熱可塑性樹脂発泡体が厚さ方向に単一層の高発泡体を有する場合、複層の高発泡体を有するものと比べて圧縮強度、表面平滑性に優れていることがわかる。その結果、単一層の高発泡体を有するものの方が、沈み込み量の小さい床材となる。
【0157】
実施例2〜4間、実施例5〜7間の結果を比較すると、高発泡体が平面的に略均一に配置されている熱可塑性樹脂発泡体においては、ランダムに配置されているものと比較して、圧縮強度、表面状態が優れ、この熱可塑性樹脂発泡体を用いて床材を形成すると、より沈み込み量の小さなものとなる。又、高発泡体が千鳥状に配置されていると、さらに圧縮強度に優れ、沈み込み量の小さな床材となる。
【0158】
実施例2〜4と実施例5〜7間の結果を比較すると、連続発泡体層の両面に高発泡体が配置されている熱可塑性樹脂発泡体においては、連続発泡体層の片面に高発泡体が配置されているものと比較して、表面状態に優れ、得られる床材は、より防音性能にすぐれた床材となる。
【0159】
【発明の効果】
本発明1の床材は、上述の如き構成とされているので、防音性能に優れ、かつ歩行感の良い床材となる。
【0160】
本発明2の床材は、本発明1の床材において上述の如き構成とされているので、歩行感がさらに良好のものとなる。
【0161】
本発明3の床材は、本発明1または2の床材において上述の如き構成とされているので、防音性能がさらに良好のものとなる。
【0162】
本発明4の床材は、本発明1〜3の床材において上述の如き構成とされているので、歩行感がさらに良好のものとなる。
【0163】
本発明5の床材は、本発明1〜4の床材において上述の如き構成とされているので、歩行感がさらに良好のものとなる。
【0164】
本発明6のマンションは、本発明1〜5の床材を直貼りしているので、居住感に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体の一例を説明するための部分切欠断面図である。
【図2】本発明4に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体における発泡性熱可塑性樹脂粒状体が配置されている形態を説明するための平面図である。
【図3】本発明5に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体における発泡性熱可塑性樹脂粒状体が配置されている形態を説明するための平面図である。
【図4】本発明3に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体の一例を説明するための部分切欠断面図である。
【図5】本発明に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体を製造する工程を説明するための略図的側面図である。
【図6】本発明3に使用され得る発泡性熱可塑性樹脂シート状体を製造する工程を説明するための要部拡大図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明に使用され得る熱可塑性樹脂シート状体を発泡させる各工程の一例を説明するための各断面図である。
【図8】(a)及び(b)は、本発明の発泡性熱可塑性樹脂シート状体を発泡させて発泡体を得る工程を説明するための各断面図である。
【図9】本発明に使用される熱可塑性樹脂発泡体の一例を示す略図的縦断面図である。
【図10】本発明4に使用される熱可塑性樹脂発泡体を示す略図的縦横面図である。
【図11】本発明5に使用される熱可塑性樹脂発泡体の一例を示す略図的横断面図である。
【図12】本発明3に使用される熱可塑性樹脂発泡体の一例を示す略図的縦断面図である。
【図13】本発明1〜5の床材の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 発泡性熱可塑性樹脂シート状体
2 発泡性熱可塑性樹脂粒状体
3 発泡性熱可塑性樹脂薄膜
4 熱可塑性樹脂発泡体
4a 高発泡体
4b 低発泡薄膜
4c 連続発泡層
5 硬質板状体
Claims (6)
- 熱可塑性樹脂発泡体の片面に、硬質板状体が積層されてなる床材であって、上記熱可塑性樹脂発泡体が、熱可塑性樹脂よりなる連続発泡層と、連続発泡層の少なくとも片面上に複数配置される熱可塑性樹脂よりなる高発泡体と、高発泡体の外表面を被覆する熱可塑性樹脂よりなる低発泡薄膜とを備え、前記複数の高発泡体が互いに前記低発泡薄膜を介して熱融着されていることを特徴とする床材。
- 前記高発泡体が厚み方向には重ならないように単一の層として配置されており、面方向においては前記低発泡薄膜を介して互いに熱融着されていることを特徴とする請求項1に記載の床材。
- 前記高発泡体が、前記連続発泡層の両面にそれぞれ配置されされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の床材。
- 前記高発泡体が平面的に略均一に配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の床材。
- 前記高発泡体が千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の床材。
- 請求項1〜5の何れかに記載の床材が床スラブに直貼されていることを特徴とするマンション。
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